特許第6193042号(P6193042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193042
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】電磁弁の駆動回路
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20170828BHJP
   F02M 51/00 20060101ALI20170828BHJP
   F02D 41/20 20060101ALI20170828BHJP
   H01F 7/18 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   F16K31/06 310A
   F16K31/06 310C
   F02M51/00 G
   F02D41/20 330
   H01F7/18 B
   H01F7/18 C
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-163056(P2013-163056)
(22)【出願日】2013年8月6日
(65)【公開番号】特開2014-66358(P2014-66358A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2016年7月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-194970(P2012-194970)
(32)【優先日】2012年9月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090310
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 正俊
(72)【発明者】
【氏名】中村 和人
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−014045(JP,A)
【文献】 特開2013−087717(JP,A)
【文献】 特開2003−086422(JP,A)
【文献】 特開2002−364768(JP,A)
【文献】 米国特許第05532526(US,A)
【文献】 特開2001−145346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11
F02M 51/00−51/08
F02D 41/00−41/40
H01F 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁の駆動コイルと、
前記駆動コイルの作動用高電圧を供給可能な高電圧蓄積手段と、
前記高電圧蓄積手段の高電圧を前記駆動コイルに印加する高電圧用スイッチング素子と、
前記駆動コイルへの保持電圧を電源手段から前記駆動コイルに印加する保持用スイッチング素子と、
前記駆動コイルに前記高電圧または前記保持電圧を印加可能にする駆動用スイッチング素子とを、
備えた電磁弁の駆動回路において、
前記駆動用スイッチング素子のオン、オフによって前記駆動コイルにサージ電圧を発生させ、このサージ電圧を前記高電圧蓄積手段に蓄積する蓄積用スイッチング素子を設け、蓄積手段を設け、この蓄積手段に前記サージ電圧を蓄積する別の蓄積用スイッチング素子を設け、前記蓄積手段に蓄積されたエネルギーを前記保持電圧に使用することを特徴とす
る電磁弁の駆動回路。
【請求項2】
電磁弁の駆動コイルと、
前記駆動コイルの作動用高電圧を供給可能な高電圧蓄積手段と、
前記高電圧蓄積手段の高電圧を前記駆動コイルに印加する高電圧用スイッチング素子と、
前記駆動コイルへの保持電圧を電源手段から前記駆動コイルに印加する保持用スイッチング素子と、
前記駆動コイルに前記高電圧または前記保持電圧を印加可能にする駆動用スイッチング素子とを、
備えた電磁弁の駆動回路において、
前記駆動用スイッチング素子のオン、オフによって前記駆動コイルにサージ電圧を発生させ、このサージ電圧を前記高電圧蓄積手段に蓄積する蓄積用スイッチング素子を設け、
前記高電圧を前記駆動コイルに印加するとき、前記駆動用スイッチング素子をオン、オフすることによってサージ電圧を発生させ、このサージ電圧を前記高電圧蓄積手段に蓄積することを特徴とする電磁弁の駆動回路。
【請求項3】
請求項1または2記載の電磁弁の駆動回路において、
前記サージ電圧は、前記保持電圧を前記駆動コイルに印加するとき、発生することを特徴とする電磁弁の駆動回路。
【請求項4】
請求項1または2記載の電磁弁の駆動回路において、前記サージ電圧は、前記駆動コイルに通常通電しない期間に発生し、前記サージ電圧は、前記電磁弁が非駆動である大きさであることを特徴とする電磁弁の駆動回路
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁の駆動回路に関し、特に、駆動用電圧に駆動コイルのサージ電圧を利用するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁弁としては、例えばコモンレール方式の内燃機関用の燃料噴射装置において、コモンレール内に蓄積された高圧燃料を噴射する燃料噴射弁がある。この燃料噴射弁の駆動回路として、例えば特許文献1に開示されているものがある。特許文献1の技術では、コンデンサに既に蓄積されている高電圧を、燃料噴射弁の駆動コイルに印加して、印加直後から急激に駆動コイルの電圧を上昇させ、燃料噴射弁を開弁状態とする。コンデンサによる高電圧駆動が終了した後、駆動コイルに直流電源から駆動電流が供給され、開弁状態が維持される。燃料噴射弁の駆動終了の時点から次の駆動開始までの期間中に、直流電源に対して抵抗器と駆動コイルとスイッチング素子と抵抗器との直列回路を接続し、スイッチング素子に対して並列にコンデンサを接続し、スイッチング素子をオン、オフさせることによって、サージ電圧を発生させ、このサージ電圧によってコンデンサに高電圧エネルギーを充電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−21680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、サージ電圧を発生させる際に、抵抗器を介して電流が流れ、抵抗器によってエネルギーが無駄に消費される。
【0005】
本発明は、駆動コイルにサージ電圧を発生させてこれを回生する際に、無駄なエネルギー消費が発生することを阻止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の電磁弁の駆動回路は、電磁弁の駆動コイルを有している。この電磁弁として、種々の用途に用いられる電磁弁を使用することができる。この駆動コイルへの作動用高電圧を高電圧蓄積手段が供給可能とされている。高圧蓄積手段としては、例えば通常のコンデンサを使用することもできるし、充電可能なバッテリーを使用することもできる。前記高圧蓄積手段の高電圧を前記駆動コイルに高電圧用スイッチング素子が印加する。高電圧蓄積手段と前記駆動コイルとの間に、高電圧用スイッチング素子が介在することが望ましい。前記駆動コイルへの保持電圧を電源手段が発生し、この電源手段から前記駆動コイルに保持用スイッチング素子が保持電圧を印加する。この保持用スイッチング素子は、電源手段と駆動コイルとの間に介在することが望ましい。駆動用スイッチング素子が、前記駆動コイルに前記高電圧または前記保持電圧を印加可能にする。前記駆動用スイッチング素子がオン、オフすることによって前記駆動コイルにサージ電圧を発生させ、このサージ電圧を蓄積用スイッチング素子がオン、オフすることによって前記高電圧蓄積手段に蓄積する。この蓄積用スイッチング素子は、高電圧蓄積手段と前記駆動コイルとの間に介在することが望ましい。上述した各スイッチング素子としては、例えば所定の電圧が両端間に印加されたとき、自動的に導通する自励式スイッチング素子または、制御信号を受けたときに導通する他励式スイッチング素子を使用することができる。自励式スイッチング素子としては、単方向性導通素子、例えばダイオードを使用することができ、他励式スイッチング素子としては、例えばバイポーラトランジスタ、FETまたはIGBT等を使用することができる。
【0007】
このように構成された電磁弁の駆動回路では、駆動用スイッチング素子をオン、オフすることによってサージ電圧を発生させ、高電圧蓄積手段に高電圧エネルギーを蓄積している。
【0008】
蓄積手段が高電圧蓄積手段と別個に設けられている。この蓄積手段に前記サージ電圧を蓄積する別個の蓄積用スイッチング素子が設けられる。別個の蓄積手段としては、例えば通常のコンデンサを使用することもできるし、電気二重層コンデンサを使用することもできるし、充電可能なバッテリーを使用することもできる。別個の蓄積手段への蓄積は、例えば高電圧蓄積手段の電圧が予め定めた値となったときに、行うこともできる。
【0009】
電磁弁によっては、駆動コイルに保持電圧を印加する時間を長くして、開弁または閉弁時間を長くすることがあるものがある。このような場合、保持電圧の印加時間が長くなると、高電圧蓄積手段に供給された高電圧エネルギーが高電圧蓄積手段の容量を超える可能性がある。その場合、例えば抵抗器によって容量を超えた高電圧エネルギーを消費することも考えられるが、エネルギーの無駄遣いとなる。そこで、別の蓄積手段を設け、容量を超えた高電圧エネルギーを蓄積して、無駄なエネルギー消費を回避している。
【0010】
更に、前記蓄積手段に蓄積されたエネルギーを前記保持電圧に使用する。このように蓄積手段に蓄積されたエネルギーを使用することによって、電源手段からの保持電圧の供給を減少させることができ、電源手段でのエネルギー消費を抑制することができる。
【0011】
本発明の他の態様は、上記の態様と同様に、駆動コイルと、高電圧蓄積手段、高電圧用スイッチング素子、保持用スイッチング素子、駆動用スイッチング素子、蓄積用スイッチング素子が設けられ、高電圧を前記駆動コイルに印加するとき、前記駆動用スイッチング素子をオン、オフすることによってサージ電圧を発生させ、このサージ電圧を前記高電圧蓄積手段に蓄積することもできる。
【0012】
このように構成すると、高電圧で駆動時にもエネルギーの回収を行うことができ、更に省エネルギー化を図ることができる。
【0013】
前記サージ電圧を、前記保持電圧を駆動コイルに印加するときに発生させることができる。このように保持電圧をオン、オフすることにより、特許文献1の技術とは異なり、コンデンサに高圧エネルギーを蓄積するための期間を特別に設けていない。そのため、蓄積期間中に無駄なエネルギー消費が発生しない。
【0014】
また、前記サージ電圧を、前記駆動コイルに通常通電しない期間、たとえば電磁弁を開弁しない期間に発生させることもできる。この場合、前記サージ電圧は、前記電磁弁が非駆動である大きさである。このように構成すると、駆動コイルに通常通電しない期間にも、高電圧蓄積手段にエネルギーを蓄積することができる。しかも、その際のサージ電圧の大きさでは、駆動弁が駆動されることはないので、このエネルギー蓄積が、駆動弁の正常な動作に悪影響を与えることはない。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明による電磁弁の駆動回路では、省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態の駆動回路のブロック図である。
図2図1の駆動回路においてピーク電流をソレノイドコイル2に流したときの電流経路を示す図である。
図3図1の駆動回路においてピーク電流をコンデンサ4に回生する際の電流経路を示す図である。
図4図1の駆動回路においてピーク電流を電気二重層コンデンサ22に回生する際の電流経路を示す図である。
図5図1の駆動回路においてDC/DC変換器40から保持電流をソレノイドコイル2に流したときの電流経路を示す図である。
図6図1の駆動回路において保持電流をコンデンサ4に回生する際の電流経路を示す図である。
図7図1の駆動回路において保持電流を電気二重層コンデンサ22に回生する際の電流経路を示す図である。
図8図1の駆動回路においてソレノイドコイル2に流れる電流を模式的に示した図である。
図9】本発明の第2の実施形態の電磁弁の駆動回路のブロック図である。
図10】本発明の第3の実施形態の電磁弁の駆動回路のブロック図である。
図11】本発明の第4の実施形態の電磁弁の駆動回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1の実施形態の電磁弁の駆動回路は、例えばコモンレール方式の内燃機関用の燃料噴射装置の燃料噴射弁を駆動するためのもので、燃料噴射弁の駆動コイル、例えばソレノイドコイル2を有している。このソレノイドコイル2の一端は、高電圧蓄積手段、例えばコンデンサ4の一端、例えば正極に、高電圧用スイッチング素子を介して接続されている。高電圧用スイッチング素子としては、例えば自励式スイッチング素子と他励式スイッチング素子との直列回路を使用することができる。自励式スイッチング素子としては、例えば単方向性素子、具体的にはダイオード6を使用することができ、他励式スイッチング素子としては、例えば半導体スイッチング素子、例えばIGBT8を使用することができる。ダイオード6は、コンデンサ4の正極側からソレノイドコイル2側に電流が流れる方向に配置されている。即ちアノードがコンデンサ4の正極側に、カソードがソレノイドコイル2側に位置している。IGBT8は、そのコレクタ―エミッタ導電路が、ダイオード6のカソード側とソレノイドコイル2の一端との間に位置するように接続されている。IGBT8は、後述する制御手段、例えば制御回路9によってオン・オフ制御される。
【0018】
ソレノイドコイル2の他端は、駆動用スイッチング素子、例えば他励式スイッチング素子、具体的には半導体スイッチング素子、より具体的にはIGBT10のコレクタ―エミッタ導電路を介してコンデンサ4の負極に接続されている。IGBT10は、制御回路9によってオン・オフ制御される。IGBT8、10がオンのとき、コンデンサ4の正極からの電流は、ダイオード6、IGBT8、ソレノイドコイル2、IGBT10を介してコンデンサ4の負極に流れる。
【0019】
また、ソレノイドコイル2の他端とIGBT10との接続点は、蓄積用スイッチング素子、例えばダイオード12とIGBT14との直列回路を介してコンデンサ4の正極に接続されている。ダイオード12は、自励式スイッチング素子、例えば単方向性素子の一例であり、IGBT14は、他励式スイッチング素子、例えば半導体スイッチング素子の一例である。ダイオード12は、ソレノイドコイル2の他端側からコンデンサ4の正極側に電流が流れる方向性に配置されている。即ちアノードがソレノイドコイル2の他端側に位置し、カソードがコンデンサ4の正極側に位置する方。IGBT14のコレクタ―エミッタ導電路が、ダイオード6のカソード側とコンデンサ4の正極側との間に位置するように接続されている。IGBT14は、制御回路9によってオン・オフ制御される。また、コンデンサ4の負極側とソレノイドコイル2の一端側との間に、自励式スイッチング素子、例えば単方向性素子、具体的にはダイオード16が接続されている。その接続は、コンデンサ4の負極側からソレノイドコイル2の一端側に電流が流れる方向性に行われている。即ちアノードがコンデンサ4の負極側に、カソードがソレノイドコイル2の一端側に、それぞれ位置する。IGBT14がオンのとき、ソレノイドコイル2の一端側からの電流は、ダイオード12、IGBT14、コンデンサ4、ダイオード16を介してソレノイドコイル2の他端に流れる。
【0020】
ソレノイドコイル2の他端とコンデンサ4の負極との間には、蓄積用スイッチング素子を介して蓄積手段も、ダイオード12、IGBT14、コンデンサ4の直列回路に並列に設けられている。蓄積用スイッチング素子は、ダイオード18とIGBT20との直列回路からなる。ダイオード18は、自励式スイッチング素子、例えば単方向性素子の一例であり、IGBT20は、他励式スイッチング素子、例えば半導体スイッチング素子の一例である。IGBT20は、制御回路9によってオン・オフ制御される。蓄積手段としては、例えば電気二重層コンデンサ22が使用されている。IGBT20がオンのとき、ソレノイドコイル2の一端からの電流は、ダイオード18、IGBT20、電気二重層コンデンサ22、ダイオード16を介してソレノイドコイル2の他端に流れる。
【0021】
ソレノイドコイル2の一端には、保持用スイッチング素子と逆流阻止素子との直列回路を介して電源手段の一端が接続されている。保持用スイッチング素子としては、自励式スイッチング素子、例えば単方向性素子、具体的にはダイオード24と、他励式スイッチング素子、例えば半導体スイッチング素子、具体的にはIGBT26とが使用されている。逆流阻止素子としては、単方向性素子、例えばダイオード28が使用され、電源手段としては例えばDC/DC変換器30が使用されている。DC/DC変換器30の一端は、例えば正極であり、他端が例えば負極であり、負極はコンデンサ4の負極側に接続されている。ダイオード26は、DC/DC変換器30側からのみ電流が流れる方向性に、即ちアノードがDC/DC変換器30の正極側に位置し、カソードがダイオード24のカソード側に位置するように配置されている。ダイオード24もソレノイドコイル2側に電流が流れる方向性に配置されている。即ちアノードが上述したようにダイオード28のカソード側に接続され、ダイオード28のカソードは、IGBT26のコレクタ―エミッタ導電路を介してソレノイドコイル2の一端に接続されている。IGBT26は、制御回路9によってオン・オフ制御される。IGBT26がオンのとき、DC/DC変換器28からダイオード28、24、IGBT26を介してソレノイドコイル2の一端に電流が流れる。
【0022】
なお、電気二重層コンデンサ22の正極側とダイオード28のカソードとの間には、逆流阻止素子、例えば単方向性素子、例えばダイオード32が接続されている。ダイオード32は、そのアノードが電気二重層コンデンサ22の正極に接続され、カソードがダイオード28のカソードに接続されている。従って、DC/DC変換器28からの電流は、ダイオード32に阻止されて、電気二重層コンデンサ22には流れず、電気二重層コンデンサ22の正極からの電流は、ダイオード28に阻止されて、DC/DC変換器28側には流れず、ダイオード24、IGBT26を介してソレノイドコイル2の一端側に流れる。
【0023】
各IGBT8、10、14、20を制御するために、制御回路9には電流検出信号と電圧検出信号とが、供給されている。、電流検出信号は、電流検出器34によって検出されたソレノイドコイル2を流れる電流を表し、電圧検出信号は、電圧検出器36によって検出されたコンデンサ4の両端間電圧を表す。電流検出器34は、ソレノイドコイル2と直列に接続され、電圧検出器36はコンデンサ4に並列に接続されている。
【0024】
このように構成された駆動回路は次のように動作する。今、コンデンサ4には、初期電荷が充分に充電され、DC/DC変換器30の電圧よりも高い電圧に充電されているとする。この状態において、制御回路9が、IGBT8、10をオンさせると、図2に矢印で示すように、コンデンサ4の正極からダイオード6、IGBT8、ソレノイドコイル2、IGBT10を介してコンデンサ4の負極に大きなピーク電流が流れ始める。このピーク電流は、後述する保持電流よりも大きい。このピーク電流のソレノイドコイル2への供給によって、燃料噴射弁は、高速に動作し、例えば開弁状態となる。ソレノイドコイル2にピーク電流が流れたことにより、ソレノイドコイル2にエネルギーが蓄積される。
【0025】
このようにピーク電流がソレノイドコイル2に流れている間に、IGBT10をオフとし、IGBT14をオンとすることが複数回にわたって所定周期毎に繰り返される。即ち、PWM制御が行われる。これによって、ソレノイドコイル2に蓄積されたエネルギーによってサージ電圧が発生し、このサージ電圧による電流が図3に示すように、ダイオード12、IGBT14、コンデンサ4、ダイオード16を介してソレノイドコイル2に流れ、ソレノイドコイル2に蓄積されたエネルギーがコンデンサ4に蓄積され、エネルギーの回生が行われる。
【0026】
この回生によってコンデンサ4の電圧は徐々に上昇し、図1に示す電圧検出器36がコンデンサ4の両端間電圧が予め定めた値以上になったことを検出したとき、制御回路9は、IGBT14のオン、オフ制御を中止し、IGBT10がオフの時に、IGBT20のオンし、IGBT10がオンの時に、IGBT20をオフとする、オン、オフ制御を所定周期毎に繰り返す。即ち、PWM制御が行われる。IGBT20がオン時には、図4に示すように、ソレノイドコイル2からの電流がダイオード18、IGBT20、電気二重層コンデンサ22、ダイオード16を介してソレノイドコイル2に流れる。その結果、コンデンサ4に代えて、電気二重層コンデンサ22にエネルギーの回生が行われる。なお、ピーク電流が流れている間に、コンデンサ4の両端間電圧が予め定めた電圧以上にならない場合には、電気二重層コンデンサ22への充電は行われない。
【0027】
やがて、コンデンサ4からのピーク電流が所定値以下に低下したことが、図1に示す電流検出器34によって検出されると、制御回路9は、IGBT20をオフとし、IGBT26をオンとする。IGBT10はオンのままである。その結果、図5に示すようにDC/DC変換器30(図5ではバッテリーとして示してある)からダイオード24、IGBT26、ソレノイドコイル2、IGBT10を介してDC/DC変換器30に電流が流れ、ソレノイドコイル2には、開弁状態を維持する一定の保持電流が流れる。また、ソレノイドコイル2にはエネルギーが蓄積される。
【0028】
この保持電流が流れている間に、IGBT10をオフとし、IGBT14をオンとすることを所定周期毎に繰り返す。即ち、PWM制御が行われる。このIGBT10がオフで、IGBT14がオンのとき、ソレノイドコイル2にはサージ電圧が発生し、このサージ電圧によって発生した電流が、図6に示すように、ダイオード12、IGBT14、コンデンサ4、ダイオード16を介してソレノイドコイル2に流れ、コンデンサ4が充電される。即ち、エネルギー回生が行われる。
【0029】
コンデンサ4が充電され、その電圧が予め定めた電圧以上の値になると、IGBT14に代えて、IGBT20がオン、オフとされることが所定周期毎に繰り返される。むろん、IGBT20がオンの時、IGBT10はオフであり、IGBT20がオフの時、IGBT10はオンである。即ち、PWM制御が行われる。IGBT20がオンのとき、図7に示すようにソレノイドコイル2からの電流は、ダイオード18、IGBT20、電気二重層コンデンサ22、ダイオード16を介してソレノイドコイル2に流れ、電気二重層コンデンサ22を充電する。なお、コンデンサ4の両端間電圧が予め定めた電圧以上にならない場合には、電気二重層コンデンサ22への充電は行われない。
【0030】
所定の時間が経過して、燃料噴射弁の開弁状態を維持する必要が無くなると、全てのIGBTがオフとされ、燃料噴射弁は閉弁状態とされ、次回の燃料噴射弁の開弁に備える。
【0031】
これらのようにして、充電されたコンデンサ4の電圧は、上述したようなピーク電流を次回の開弁時にソレノイドコイル2に供給するために使用される。また、電気二重層コンデンサ22の電圧がDC/DC変換器30の電圧よりも大きくなると、保持電流をソレノイドコイル2に流す際に、図1に示すダイオード32を介して電気二重層コンデンサ22の電流がダイオード24、IGBT26へと流れる。この際、ダイオード28が設けられているので、電気二重層コンデンサ22の電流がDC/DC変換器30に流れることはない。即ち、電気二重層コンデンサ22は、保持電流を流すためのみに使用される。また、電気二重層コンデンサ22の電圧がDC/DC変換器30の電圧よりも低い場合でも、ダイオード32が設けられているので、電気二重層コンデンサ22がDC/DC変換器30によって充電されることもない。
【0032】
図8は、ソレノイドコイル2に流れる電流を概略的に示したもので、各ピーク電流が流れている期間及び保持電流が流れている期間それぞれに、駆動弁は開弁状態とされ、かつこれらの期間に上述したようにPWM制御による回生が行われ、コンデンサ4または電気二重層コンデンサ22への充電が行われる。このPWM制御による回生が行われているとき、図8には示していないが、各ピーク電流及び各保持電流には、IGBT14または20のオン、オフに応じて振動が生じている。
【0033】
この駆動回路によれば、コンデンサ4や電気二重層コンデンサ22に、これらを充電するためにソレノイドコイル2から電流が流れる経路中には、エネルギーを消費する抵抗器は全く配置されていない。従って、コンデンサ4や電気二重層コンデンサ22の充電時に無駄な電力消費を抑えることができ、省エネルギー化を図ることができる。しかも、燃料噴射弁の開弁状態を維持するために一定の保持電流をソレノイドコイル2に流している際、即ち定常状態において回生を行っており、保持電流の立ち上がりや立ち下がり時の過渡状態においてコンデンサ4等の充電を行うものではない。また、電気二重層コンデンサ22を設け、コンデンサ4が所定容量まで充電された際、電気二重層コンデンサ22に充電するように構成してあるので、ソレノイドコイル2に蓄積されたエネルギーを無駄なく使用することができる。特に、電気二重層コンデンサ22からの電流を保持電流として使用しているので、DC/DC変換器30でのエネルギー消費を抑えることができる。また、ピーク電流をソレノイドコイル2に流しているときにも、コンデンサ4等に回生しているので、更に省エネルギー化を図ることができる。
【0034】
図9に第2の実施形態の電磁弁の駆動回路を示す。この電磁弁の駆動回路は、第1の実施形態の電磁弁の駆動回路において、高圧用スイッチング素子を他励式スイッチング素子のIGBT8のみとし、蓄積用スイッチング素子を自励式のスイッチング素子のダイオード12のみとしたものである。他の構成は、第1の実施形態の電磁弁駆動回路の構成と同一である。同一部分には同一符号を付して、説明を省略する。この電磁弁の駆動回路も第1の実施形態の電磁弁の駆動回路と同様に動作するが、コンデンサ4に充電する場合、IGBT10がオン、オフ制御され、蓄積用スイッチング素子として機能する。
【0035】
図10に第3の実施形態の電磁弁の駆動回路を示す。この電磁弁の駆動回路も、第1及び第2の実施形態の電磁弁の駆動回路と同様にコモンレール方式の内燃機関用の燃料噴射装置の燃料噴射弁を駆動するものである。但し、第1の実施形態の電磁弁の駆動回路と比較して、電気二重層コンデンサ22及び電気二重層コンデンサ22への蓄積用スイッチング素子であるダイオード18及びIGBT10が除去されている。その代わり、ソレノイド2に通常通電しない期間、たとえば燃料噴射弁の開弁状態を維持する必要が無い期間、具体的には図8に示す閉弁期間Aにも、コンデンサ4をソレノイド2の蓄積エネルギーによって充電するために、IGBT10をオンしたとき、IGBT14をオフとし、IGBT10をオフしたとき、IGBT14をオンとすることを繰り返す。このとき、ソレノイド2にサージ電圧が発生するが、そのとき流れる電流は、開弁している燃料噴射弁の開弁状態を維持することはできるが、燃料噴射弁を開弁させるのに必要な大きさには達していないので、燃料噴射弁が開弁されることはない。
【0036】
図11に第4の実施形態の電磁弁の駆動回路を示す。この電磁弁の駆動回路は、たとえばガスバルブを駆動するためのものである。ガスバルブを駆動する場合、コモンレール方式の内燃期間用の燃料噴射装置の噴射弁を駆動する場合よりも、ソレノイド2における消費電力が大きくなるので、コンデンサ4への充電用に充電用コイル38が追加されている。但し、第2の実施形態と同様に高圧用スイッチング素子を他励式スイッチング素子のIGBT8のみとし、蓄積用スイッチング素子を自励式のスイッチング素子のダイオード12のみとし、第3の実施形態の電磁弁の駆動回路と同様に、電気二重層コンデンサ22及び電気二重層コンデンサ22への蓄積用スイッチング素子であるダイオード18及びIGBT10が除去されている。
【0037】
充電用コイル38は、その一端が、ソレノイド2の一端(IGBT8側の端)に接続されている。充電用コイル38の他端は、駆動用スイッチング素子、例えば他励式スイッチング素子、具体的には半導体スイッチング素子、より具体的にはIGBT42のコレクタ―エミッタ導電路を介してコンデンサ4の負極に接続されている。さらに、充電用コイル38の他端とIGBT40との接続点は、蓄積用スイッチング素子、例えば自励式蓄積用スイッチング素子、具体的にはダイオード12を介してコンデンサ4の正極に接続されている。
【0038】
IGBT40は、IGBT10と同期して制御回路40によってオン、オフ制御される。従って、IGBT10、40がオンされたとき、コンデンサ4またはDC/DC変換器30からの電流がソレノイド2に流れると共に、充電用コイル38にも流れ、ソレノイド2と共に充電用コイル38にもエネルギーが蓄積される。そして、IGBT10、40がオフされたとき、ソレノイド2及び充電用コイル38から電流がダイオード12及びダイオード40を回してコンデンサ4に流れ、エネルギーの回生が行われる。
【0039】
上記の第1の実施形態では、高電圧蓄積手段としてコンデンサ4を、蓄積手段として電気二重層コンデンサ22を使用したが、これらに代えて、例えば充電可能なバッテリーを使用することもできる。電気二重層コンデンサ22に代えて、コンデンサ4と同様な通常のコンデンサを使用することもできる。また、第1の実施形態では、コンデンサ4が予め定めた電圧以上に電圧されたとき、電気二重層コンデンサ22に充電するように構成したが、コンデンサ4と電気二重層コンデンサ22とに同時に充電するように構成することもできる。その場合、IGBT14、20は同期させてオン、オフされる。上記の各実施形態では、半導体スイッチング素子としてIGBTを使用したが、これに限ったものではなく、例えばバイポーラトランジスタ、FET、例えばMOSFET等を使用することもできる。上記の各実施形態では、弁を開弁するために、本発明を使用したが、逆に弁を閉弁するために、本発明を使用することもできる。
【符号の説明】
【0040】
2 ソレノイド(駆動コイル)
4 コンデンサ(高電圧蓄積手段)
6 ダイオード(高電圧用スイッチング素子)
8 IGBT(高電圧用スイッチング素子)
10 IGBT(駆動用スイッチング素子)
12 ダイオード(蓄積用スイッチング素子)
14 IGBT(蓄積用スイッチング素子)
24 ダイオード(保持用スイッチング素子)
26 IGBT(保持用スイッチング素子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11