(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成では、圧接コネクタは、複数のコンタクトを有しており、複数の被覆電線に結合される。各コンタクトは、互いに平行で且つ横並びに配列された状態で、コンタクトに保持されている。そして、各コンタクトのかしめ部は、横並びに一列に配置されている。すなわち、コンタクトの長手方向(被覆電線のうちコンタクトに結合されている部分が延びる方向)に関して、各コンタクトのかしめ部の位置は、揃えられている。
【0006】
そして、複数のコンタクトには、複数の被覆電線が一括して挿入される。コンタクトのかしめ部を被覆部にかしめる作業の際、パンチ工具の複数のかしめ加工部は、複数のコンタクトのかしめ部を一括して変形させる。このようなかしめ加工部の配列では、かしめ加工部の幅(コンタクトの横並び方向の長さ)を十分に確保できない。その結果、かしめ加工部は、かしめ部の両脇からかしめ部と接触することができず、かしめ部の真上から当該かしめ部に接触するおそれがある。
【0007】
パンチ工具のかしめ加工部は、かしめ部の両脇からかしめ部と接触した場合、かしめ部を被覆部に向けて適切に折り曲げることができる。しかしながら、かしめ加工部は、かしめ部の真上から当該かしめ部に接触すると、かしめ部を座屈させるように不適切に変形させることとなり、かしめ部を被覆部に強く食い込ませることができない。
【0008】
したがって、上記の不具合が生じないようにするためには、各かしめ加工部の幅を広くする必要がある。しかしながら、かしめ加工部の幅を広くするためには、複数のかしめ加工部の配置ピッチを広くする必要がある。この場合、かしめ加工部の配置ピッチの拡大にあわせて、複数のコンタクトの横並びの配置のピッチを大きくする必要があり、圧接コネクタが大型化してしまう。一方で、圧接コンタクトは、小型の電子機器に使われる場合などがあり、小型化の要請が強い。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、複数の被覆電線と複数のコンタクトとを一括して確実に結合することができ、且つ、小型化を達成することのできる圧接コネクタ、電線付き圧接コネクタ、および、圧接コネクタと被覆電線との接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる圧接コネクタは、芯線部を被覆部で被覆した構成をそれぞれ有する複数の被覆電線に接続される圧接コネクタであって、複数の前記被覆電線のそれぞれに対応して設けられ、所定の長手方向に延びる複数のコンタクトと、複数の前記コンタクトを前記長手方向と直交する所定の並列方向に並べた状態で保持するハウジングと、を備え、各前記コンタクトは、前記被覆部を切断するための圧接刃と、前記被覆部にかしめられるかしめ部と、を含み、前記並列方向に隣り合う2つの前記コンタクトにおいて、前記長手方向における前記かしめ部の位置が異ならされて
おり、前記ハウジングは、対応する1つの前記コンタクトが収容される第1孔部と、前記第1孔部とは前記並列方向に並んで配置される第2孔部であって、前記被覆電線を前記コネクタに結合する際に用いられる工具の一部が挿入されるように構成された第2孔部と、を含んでいる。
【0011】
この構成によると、複数の被覆電線を複数のコンタクトに一括して結合させる際、複数の被覆電線は、一括して、対応するコンタクトに挿入される。そして、たとえば、かしめ部にかしめ加工を行うためのかしめ用パンチのかしめ加工部は、複数のコンタクトのかしめ部をかしめることで、各かしめ部と対応する被覆電線とを結合させる。より具体的には、並列方向に隣り合う2つの前記コンタクトにおいて、長手方向におけるかしめ部の位置が異ならされている。そして、かしめ加工の際、かしめ用パンチの複数のかしめ加工部は、複数のコンタクトのかしめ部と向かい合うように配置される。この状態において、並列方向に隣り合う2つのかしめ加工部は、長手方向における位置が異ならされる。よって、各かしめ加工部が並列方向に長い形状であり、且つ、並列方向におけるかしめ加工部の配置のピッチが短い場合でも、かしめ加工部同士が接触することを抑制できる。その結果、並列方向におけるコンタクトの配置のピッチも短くでき、圧接コネクタの小型化を達成できる。さらに、前述したように、かしめ加工部を並列方向に長い形状にできるので、かしめ加工部は、より確実に、かしめ部の両脇から当該かしめ部に接触できる。よって、かしめ用パンチは、より確実に、かしめ部を曲げ変形させて当該かしめ部を被覆電線にかしめることができる。以上より、本発明によると、圧接コネクタにおいて、複数の被覆電線と複数のコンタクトとを一括して確実に結合することができ、且つ、小型化を達成することができる。
【0012】
(2)好ましくは、複数の前記コンタクトとして、第1コンタクトおよび第2コンタクトが設けられており、前記長手方向に関して、前記第1コンタクトにおける前記かしめ部の位置と、前記第2コンタクトにおける前記かしめ部の位置とが異なっており、前記第1コンタクトと前記第2コンタクトは、前記並列方向に交互に配置されている。
【0013】
この構成によると、第1コンタクトのかしめ部と、第2コンタクトのかしめ部とが、ジグザグ状に配列されることとなる。このような構成であれば、複数のコンタクトのかしめ部が全体として長手方向に占める長さを短くできる。よって、長手方向における圧接コネクタの全長をより短くでき、その結果、圧接コネクタを、より小型化できる。
【0014】
(3)好ましくは、前記長手方向における複数の前記コンタクトの前記圧接刃の位置が揃えられている。
【0015】
この構成によると、複数のコンタクトの圧接刃が全体として長手方向に占める長さを短くできる。よって、長手方向における圧接コネクタの全長をより短くでき、その結果、圧接コネクタを、より小型化できる。
【0016】
(4)好ましくは、各前記かしめ部は、前記並列方向に向かい合う一対の片部を有し、
前記一対の片部は、折り曲げられることで、前記一対の片部間に配置された前記被覆電線の前記被覆部に結合されている。
【0017】
この構成によると、一対の片部が被覆電線の被覆部にかしめられることで、コンタクトと被覆電線との結合力を、十分に確保できる。
【0018】
(5)より好ましくは、前記一対の片部は、折り曲げられる前の状態において、前記一対の片部の先端側に進むに従い前記一対の片部間の間隔が拡がる形状を有している。
【0019】
この構成によると、コンタクトに被覆電線を挿入する際、被覆電線をかしめ部の一対の片部間に挿入し易くできる。これにより、被覆電線をコンタクトに結合する作業を行い易い。しかも、並列方向に隣接するコンタクトのかしめ部は、長手方向の位置をずらされている。よって、一対の片部の先端部の形状が末広がり形状であっても、隣接するコンタクト同士の接触を防ぐことができる。よって、一対の片部の先端部間の間隔を、より広くしておくことができる。
【0020】
(6)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる電線付き圧接コネクタは、前記圧接コネクタと、複数の前記コンタクトのそれぞれに接続された複数の被覆電線と、を備え、各前記コンタクトは、前記被覆電線を収容するための一対の側部を含み、各前記被覆電線が前記圧接コネクタに接続される前の状態における各前記被覆電線の直径は、前記一対の側部間の間隔よりも大きく設定されている。
【0021】
この構成によると、複数の被覆電線を複数のコンタクトに一括して結合させる際、複数の被覆電線は、一括して、対応するコンタクトに挿入される。そして、たとえば、かしめ部にかしめ加工を行うためのかしめ用パンチのかしめ加工部は、複数のコンタクトのかしめ部をかしめることで、各かしめ部と対応する被覆電線とを結合させる。より具体的には、並列方向に隣り合う2つの前記コンタクトにおいて、長手方向におけるかしめ部の位置が異ならされている。そして、かしめ加工の際、かしめ用パンチの複数のかしめ加工部は、複数のコンタクトのかしめ部と向かい合うように配置される。この状態において、並列方向に隣り合う2つのかしめ加工部は、長手方向における位置が異ならされる。よって、各かしめ加工部が並列方向に長い形状であり、且つ、並列方向におけるかしめ加工部の配置のピッチが短い場合でも、かしめ加工部同士が接触することを抑制できる。その結果、並列方向におけるコンタクトの配置のピッチも短くでき、圧接コネクタの小型化を達成できる。さらに、前述したように、かしめ加工部を並列方向に長い形状にできるので、かしめ加工部は、より確実に、かしめ部の両脇から当該かしめ部に接触できる。よって、かしめ用パンチは、より確実に、かしめ部を曲げ変形させて当該かしめ部を被覆電線にかしめることができる。以上より、本発明によると、電線付き圧接コネクタにおいて、複数の被覆電線と複数のコンタクトとを一括して確実に結合することができ、且つ、小型化を達成することができる。
【0022】
また、前述したように、並列方向におけるコンタクトの配置のピッチを短くできる結果、圧接コネクタの小型化が達成されている。すなわち、直径の大きい被覆電線のための圧接コネクタにおいても、当該圧接コネクタの小型化を実現できる。
【0023】
(7)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる圧接コネクタと被覆電線との接続方法は、芯線部を被覆部で被覆した構成をそれぞれ有する複数の被覆電線を圧接コネクタに接続するための、圧接コネクタと被覆電線との接続方法である。前記接続方法は、複数の前記被覆電線のそれぞれに対応して設けられ所定の長手方向に延びる複数のコンタクト、および、複数の前記コンタクトを前記長手方向と直交する所定の並列方向に並べた状態で保持するハウジング、を備える前記圧接コネクタを準備する、準備工程と、複数の前記被覆電線を一括して複数の前記コンタクトへ挿入し、複数の前記コンタクトに形成された圧接刃によって複数の前記被覆電線の前記被覆部を切断する、挿入工程と、各前記コンタクトに形成されているかしめ部を対応する前記被覆部にかしめる、かしめ工程と、を含み、
前記ハウジングは、対応する1つの前記コンタクトが収容される第1孔部と、前記第1孔部とは前記並列方向に並んで配置される第2孔部であって、前記被覆電線を前記コネクタに結合する際に用いられる工具の一部が挿入されるように構成された第2孔部と、を含み、前記かしめ工程では、前記並列方向に隣り合う2つの前記コンタクトにおいて、前記長手方向における前記かしめ部の位置が異なるように、かしめ作業が行われる。
【0024】
この構成によると、複数の被覆電線を複数のコンタクトに一括して結合させる際、挿入工程において、複数の被覆電線は、一括して、対応するコンタクトに挿入される。そして、かしめ工程において、たとえば、かしめ部にかしめ加工を行うためのかしめ用パンチのかしめ加工部は、複数のコンタクトのかしめ部をかしめることで、各かしめ部と対応する被覆電線とを結合させる。より具体的には、並列方向に隣り合う2つのコンタクトにおいて、長手方向におけるかしめ部の位置が異ならされている。そして、かしめ加工の際、かしめ用パンチの複数のかしめ加工部は、複数のコンタクトのかしめ部と向かい合うように配置される。この状態において、並列方向に隣り合う2つのかしめ加工部は、長手方向における位置が異ならされる。よって、各かしめ加工部が並列方向に長い形状であり、且つ、並列方向におけるかしめ加工部の配置ピッチが短い場合でも、かしめ加工部同士が接触することを抑制できる。その結果、並列方向におけるコンタクトの配置のピッチも短くでき、圧接コネクタの小型化を達成できる。さらに、前述したように、かしめ加工部を並列方向に長い形状にできるので、かしめ加工部は、より確実に、かしめ部の両脇から当該かしめ部に接触できる。よって、かしめ加工用パンチは、より確実に、かしめ部を曲げ変形させて当該かしめ部を被覆電線にかしめることができる。以上より、本発明によると、複数の被覆電線と複数のコンタクトとを一括して確実に結合することができ、且つ、圧接コネクタの小型化を達成することができる。
【0025】
(8)より好ましくは、前記準備工程において、各前記コンタクトの前記かしめ部は、前記並列方向に向かい合う一対の片部を有し、これら一対の片部は、前記一対の片部の先端側に進むに従い前記一対の片部間の間隔が拡がる形状を有している。
【0026】
この構成によると、コンタクトに被覆電線を挿入する際、被覆電線をかしめ部の一対の片部間に挿入し易くできる。これにより、被覆電線をコンタクトに結合する作業を行い易い。しかも、並列方向に隣接するコンタクトのかしめ部は、長手方向の位置をずらされている。よって、一対の片部の先端部の形状が末広がり形状であっても、隣接するコンタクト同士の接触を防ぐことができる。よって、一対の片部の先端部間の間隔を、より広くしておくことができる。
【0027】
(9)より好ましくは、前記接続方法は、前記かしめ工程に先立ち行われるリップ加工工程をさらに含み、前記リップ加工工程では、前記一対の片部の先端部間の間隔が狭くなるように前記一対の片部が変形される。
【0028】
この構成によると、リップ加工工程において、一対の片部における先端部間の間隔が狭くなるように一対の片部が変形される。その結果、かしめ工程において、かしめ用パンチなどによって、一対の片部の先端部を、より確実に被覆部へ向けて変形させることができる。換言すれば、かしめ工程において、かしめ用パンチのかしめ加工部などによって、一対の片部が座屈するような変形が生じることを抑制できる。よって、かしめ部と被覆部とを、より確実に結合させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、複数の被覆電線と複数のコンタクトとを一括して確実に結合することができ、且つ、圧接コネクタの小型化を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、圧接コネクタ、および電線付きコネクタとして、種々の用途に広く適用することができる。
【0032】
図1は、本発明の実施形態に係る圧接コネクタ1が、被覆電線2および相手側コネクタ100に接続されている状態を示す断面図である。
図1を参照して、圧接コネクタ1は、電子機器などに備えられる。圧接コネクタ1には、複数の被覆電線2(
図1では、被覆電線2は1つを図示)が結合されている。本実施形態では、圧接コネクタ1は、ソケットコネクタであり、レセプタクルコネクタとしての相手側コネクタ100に取り外し可能に接続される。
【0033】
相手側コネクタ100は、回路基板110などに実装されるコネクタである。圧接コネクタ1と相手側コネクタ100との接続により、複数の被覆電線2と回路基板110との電気的な接続が達成される。
【0034】
相手側コネクタ100は、ハウジング101と、複数のコンタクト102とを有している。
【0035】
ハウジング101は、たとえば、合成樹脂を用いて形成された一体成形品である。
【0036】
ハウジング101は、周壁103と、後壁104と、ロック爪105とを有している。
【0037】
周壁103は、細長い矩形の枠状に形成された部分であり、
図1の紙面と直交する方向(幅方向)に細長く延びている。周壁103は、圧接コネクタ1の一部が収容される空間を形成している。周壁103の上部に、ロック爪105が形成されている。
【0038】
ロック爪105は、周壁103の表面に形成された部分である。ロック爪105は、圧接コネクタ1の後述するロック爪11に掛けられることで、相手側コネクタ100からの圧接コネクタ1の抜けを規制する。
【0039】
周壁103の後部に、後壁104が形成されている。後壁104は、周壁103の後端を塞ぐように配置されている。周壁103には、複数の貫通孔部106が形成されている。なお、
図1では、複数の貫通孔部106のうちの1つを図示している。
【0040】
貫通孔部106は、ハウジング101の幅方向に間隔をあけて複数形成されている。各貫通孔部106は、1つのコンタクト102を保持している。
【0041】
各コンタクト102は、導電性を有する材料を用いて形成されている。より具体的には、各コンタクト102は、たとえば、銅合金を素材として構成されている。そして、各コンタクト102の表面には、たとえば、すずめっきまたは金めっきなどのめっき処理が施されている。各コンタクト102は、対応する貫通孔部106に保持されている。各コンタクト102の一部は、周壁103内に配置されている。各コンタクト102の別の一部は、ハウジング101の外部において、はんだなどを用いて回路基板110に固定されている。
【0042】
次に、圧接コネクタ1の構成を説明する。
【0043】
図2は、圧接コネクタ1および被覆電線2の斜視図である。
図1および
図2を参照して、圧接コネクタ1は、圧接型の電気コネクタであり、被覆電線2の被覆部3を切断することで、被覆部3の内部の芯線部4と接触することが可能である。
【0044】
各被覆電線2は、被覆部3と、芯線部4とを有している。
【0045】
被覆部3は、合成樹脂などの絶縁性の材料を用いて形成された、筒状の部材であり、弾力性を有している。被覆部3は、芯線部4を、芯線部4の周方向の全域に亘って覆っている。
【0046】
芯線部4は、金属などの導電材料を用いて形成されている。芯線部4の一端部は、圧接コネクタ1の後述するコンタクト6に接触している。芯線部4の他端部は、図示しない電子機器などに接続されている。
【0047】
圧接コネクタ1は、全体として、扁平に形成されている。なお、以下では、圧接コネクタ1の長さ方向を、長さ方向X1という。長さ方向X1は、本発明の「長手方向」の一例である。また、圧接コネクタ1の平面視において、長さ方向X1と直交する方向を、幅方向Y1という。幅方向Y1は、本発明の「並列方向」の一例である。また、長さ方向X1および幅方向Y1の双方と直交する方向を、厚み方向Z1という。
【0048】
圧接コネクタ1に被覆電線2および相手側コネクタ100のコンタクト102が装着されている状態において、各被覆電線2の一端部は、長さ方向X1と平行に配置され、相手側コネクタ100のコンタクト102も、長さ方向X1と平行に配置される。
【0049】
圧接コネクタ1は、ハウジング5と、ハウジング5に保持される複数のコンタクト6(61,62)とを有している。なお、本実施形態では、複数のコンタクト61,62を総称していう場合は、コンタクト6という。
【0050】
図3は、圧接コネクタ1の底面側を見た斜視図であり、圧接コネクタの一部を示している。
図4は、圧接コネクタ1の上面側を見た斜視図である。
図5は、圧接コネクタ1の背面図であり、被覆電線2が接続される前の状態を示している。
図6は、
図5のVI−VI線に沿う圧接コネクタ1の断面図であり、被覆電線2が接続される前の状態を示している。
図7は、
図5のVII−VII線に沿う断面図であり、被覆電線2が接続される前の状態を示している。
【0051】
図1、
図2および
図4を参照して、ハウジング5は、合成樹脂などの絶縁材料を用いて形成されている。ハウジング5は、射出成形などによって形成された、単一の部材である。ハウジング5は、複数(本実施形態では、6つ)のコンタクト6を保持している。より具体的には、ハウジング5は、複数のコンタクト6を長さ方向X1と直交する幅方向Y1に並べた状態で保持するように構成されている。ハウジング5は、幅方向Y1に対称な形状に形成されている。
【0052】
ハウジング5は、ロック部7と、ハウジング本体8とを有している。
【0053】
ロック部7は、支柱9と、ロック片10と、ロック爪11とを有している。
【0054】
支柱9は、ハウジング本体8の上面から突出した形状を有している。支柱9は、ロック片10に連続している。ロック片10は、板状の部材である。ロック片10は、支柱9を支点として揺動可能である。オペレータがこのロック片10を揺動させることで、ロック片10の前端部を持ち上げることができる。
【0055】
ロック片10の前端部の下面から、ロック爪11が突出している。ロック爪11は、相手側コネクタ100のロック爪105に受けられる部分として設けられている。ロック爪11は、幅方向Y1に延びる突起状の部分である。
【0056】
圧接コネクタ1が相手側コネクタ100に接続されている状態において、ロック爪11は、ロック爪105と長さ方向X1に向かい合っている。この状態において、圧接コネクタ1が相手側コネクタ100から引き抜かれる力を受けると、ロック爪11は、ロック爪105に引っ掛かる。これにより、圧接コネクタ1は、それ以上相手側コネクタ100から引き抜かれる方向に変位することを規制される。上記の構成を有するロック部7は、ハウジング本体8によって支持されている。
【0057】
図1〜
図4を参照して、ハウジング本体8は、外周壁12と、前壁13と、隔壁14と、第1貫通孔部15と、第2貫通孔部16と、を有している。
【0058】
外周壁12は、厚み方向Z1に扁平で、かつ、幅方向Y1に長く延びる矩形状に形成されている。外周壁12は、天壁17と、底壁18と、一対の側壁19,20とを有している。天壁17は、ロック部7の支柱9を受けている。天壁17は、底壁18と、厚み方向Z1に離隔して配置されている。
【0059】
底壁18には、複数の開口部が形成されており、底壁18から、複数のコンタクト6の一部が露呈している。一対の側壁19,20は、幅方向Y1における外周壁12の一対の端部を構成している。上記の構成を有する外周壁12の前端部に、前壁13が形成されている。
【0060】
第1貫通孔部15は、コンタクト6が収容される孔部として設けられている。第1貫通孔部15は、複数箇所(本実施形態において、6箇所)に形成されており、これらの第1貫通孔部15が、幅方向Y1に沿って配列されている。本実施形態では、幅方向Y1に沿って、順に、3つの第1貫通孔部15、2つの第2貫通孔部16、3つの第1貫通孔部15、および、1つの第2貫通孔部16が配列されている。
【0061】
また、幅方向Y1に隣り合う貫通孔部(第1貫通孔部15または第2貫通孔部16)の間には、隔壁14が形成されている。各隔壁14は、天壁17から底壁18側へ向けて厚み方向Z1に沿って延びる板状の部分である。各第1貫通孔部15は、同様の構成を有している。
【0062】
図2および
図6を参照して、第1貫通孔部15は、ハウジング本体8を、長さ方向X1に貫通するように形成されている。前壁13から当該ハウジング本体8の後方に進むに従い、長さ方向X1と直交する断面での第1貫通孔部15の断面積が、段階的に大きくなっている。第1貫通孔部15には、第1開口部21、第2開口部22、および、第3開口部23が形成されている。
【0063】
第1開口部21は、前壁13に形成されており、相手側コネクタ100の対応するコンタクト102を挿入可能である。第1開口部21と長さ方向X1に並ぶようにして、第2開口部22が形成されている。
【0064】
第2開口部22は、被覆電線2が通過する部分として設けられている。第2開口部22は、ハウジング本体8の後方に向けて開放された開口部である。背面視において、第2開口部22は、U字状の溝形形状に形成されている。第2開口部22と連続するようにして、第3開口部23が形成されている。
【0065】
第3開口部23は、第1貫通孔部15への被覆電線2の挿入工程の際に、被覆電線2が通過する部分として設けられている。第3開口部23は、長さ方向X1におけるハウジング本体8の後端から当該ハウジング本体8の前方に向けて延びており、長さ方向X1において、ハウジング本体8の長さの半分程度の範囲に形成されている。第3開口部23は、底壁18の底面に開放されている。上記の構成を有する第1貫通孔部15は、コンタクト6および被覆電線2が挿入される部分である。一方、第2貫通孔部16は、コンタクト6および被覆電線2のいずれも挿入されない部分である。
【0066】
図2および
図7を参照して、第2貫通孔部16は、被覆電線2を圧接コネクタ1に結合する際に用いられる挿入・リップ加工用パンチ70(後述)が挿入される部分として形成されている。第2貫通孔部16は、複数箇所(本実施形態において、3箇所)に形成されており、これらの第2貫通孔部16が、幅方向Y1に沿って配列されている。各第2貫通孔部16は、同様の構成を有している。
【0067】
第2貫通孔部16は、ハウジング本体8を、長さ方向X1に貫通するように形成されている。第2貫通孔部16には、第1開口部24、第2開口部25、および、第3開口部26が形成されている。
【0068】
第1開口部24は、前壁13に形成されている。第1開口部24の形状は、第1開口部21の形状と同様である。第1開口部24と長さ方向X1に並ぶようにして、第2開口部25が形成されている。
【0069】
第2開口部25の形状は、第2開口部22の形状と同様であり、ハウジング本体8の後方に向けて開放されている。第2開口部25と連続するようにして、第3開口部26が形成されている。
【0070】
第3開口部26は、挿入・リップ加工用パンチ70が通過する部分として設けられている。第3開口部26は、長さ方向X1におけるハウジング本体8の後端から当該ハウジング本体8の前方に向けて延びている。第3開口部26は、底壁18の底面に開放されている。
【0071】
以上が、ハウジング5の概略構成である。次に、コンタクト6の構成を説明する。
【0072】
図8は、コンタクト6(61,62)の斜視図である。
図1〜
図3、
図5、
図6、および、
図8を参照して、コンタクト6は、被覆電線2の被覆部3と機械的かつ電気的に接続された状態で、相手側コネクタ100のコンタクト102に接触する部分として設けられている。
【0073】
コンタクト6は、複数設けられている。本実施形態では、コンタクト6の数は、被覆電線2の数と同じであり、且つ、第1貫通孔部15の数と同じである。コンタクト6は、複数の被覆電線2のそれぞれに対応して設けられている。各コンタクト6は、対応する第1貫通孔部15に挿入されており、当該第1貫通孔部15に保持されている。
【0074】
コンタクト6は、導電性を有する材料を用いて形成されている。より具体的には、コンタクト6は、たとえば、銅合金を素材として構成されている。そして、コンタクト6の表面には、たとえば、すずめっき又は金めっきなどのめっき処理が施されている。
【0075】
コンタクト6は、めっき処理が施された1枚の金属板に切断加工および曲げ加工などを施すことで形成されている。コンタクト6は、長さ方向X1に細長く延びる形状に形成されている。本実施形態では、各コンタクト6は、幅方向Y1に対称な形状に形成されている。
【0076】
コンタクト6は、底部31と、側部32,33と、接触部34と、抜け止め部35と、加圧部36と、圧接部37,38と、かしめ部39とを有している。
【0077】
底部31は、厚み方向Z1と直交するように延びる平板状の部分である。底部31は、ハウジング本体8の天壁17の内側面に受けられている。底部31の前端部は、ハウジング本体8の第1開口部21に隣接している。底部31の後端部は、第2開口部22に隣接している。幅方向Y1における底部31の一対の端部から、一対の側部32,33が延びている。
【0078】
一対の側部32,33は、底部31から、厚み方向Z1の一方側(ハウジング本体8の底壁18側)に向けて延びる、板状の部分である。一対の側部32,33は、対応する隔壁14に隣接している。すなわち、コンタクト6は、幅方向Y1に並ぶ一対の隔壁14,14に挟まれるように配置されている。一対の側部32,33の間に、対応する被覆電線2の一端部が収容される。一対の側部32,33の間隔は、一対の側部32,33間に被覆電線2が挿入される前の状態における被覆電線2の直径よりも小さく設定されている。このため、一対の側部32,33間に挿入された被覆電線2の被覆部3は、弾性変形した状態となる。一対の側部32,33の前端部には、接触部34が形成されている。
【0079】
接触部34は、相手側コネクタ100のコンタクト102に接触するための部分として設けられている。接触部34は、一対の側部32,33の一部が屈曲されることで形成されている。第1開口部21を通って第1貫通孔部15内に侵入したコンタクト102は、接触部34に挟まれ、当該接触部34と電気的に接続される。接触部34の後方に、抜け止め部35が形成されている。
【0080】
抜け止め部35は、コンタクト6がハウジング本体8から抜けることを防止するために設けられており、側部32,33から延びた突起状に形成されている。抜け止め部35は、底壁18に形成された第4開口部27に挿入されている。コンタクト6に、ハウジング本体8から引き抜かれる方向(後ろ向き)の力が作用したとき、抜け止め部35は第4開口部27の縁部に受けられる。これにより、コンタクト6は、それ以上ハウジング本体8から引き抜かれる方向へ移動することを規制される。抜け止め部35の後方に、加圧部36が形成されている。
【0081】
加圧部36は、コンタクト6をハウジング本体8に圧入固定するために設けられている。加圧部36は、一対の側部32,33の縁部に形成されており、ハウジング本体8の底壁18の内側面を加圧している。これにより、加圧部36と底壁18との摩擦接触力が高くされ、かつ、底部31と天壁17との摩擦接触力が高められている。加圧部36の後方に、圧接部37,38が形成されている。
【0082】
圧接部37,38は、被覆電線2の被覆部3を切断するために設けられている。各圧接部37,38は、コンタクト6の底部31から一対の側部32,33間の空間に向けて延びる形状に形成されている。圧接部37,38は、長さ方向X1に並んで配置されている。各圧接部37,38は、U字状に形成されている。
【0083】
各圧接部37,38は、幅方向Y1に互いに向かい合う圧接刃41,42を有している。
【0084】
圧接刃41,42において、互いに向かい合う部分の間隔は、芯線部4の直径と略同じに設定されており、接部37,38間に、芯線部4を配置可能である。圧接部37,38は、第3開口部23を通してハウジング本体8の外部に露呈しており、第3開口部23を通過した被覆電線2の被覆部3を、各圧接部37,38の圧接刃41,42によって切断する。圧接刃41,42によって被覆部3が切断されると、圧接刃41,42は、芯線部4に接触する。これにより、被覆電線2と圧接部37,38との電気的な接続が達成される。このとき、被覆電線2の一端部は、一対の側部32,33間に配置されている。圧接刃41,42の後方に、かしめ部39が形成されている。
【0085】
かしめ部39は、被覆電線2の一端部にかしめられることで当該被覆電線2を固定する部分として設けられている。各かしめ部39は、一対の片部43,44を有している。一対の片部43,44は、被覆電線2を、底部31と協働して挟むために設けられている。
【0086】
一対の片部43,44は、幅方向Y1に向かい合って配置されている。圧接コネクタ1が被覆電線2に結合される前の状態としての結合前状態において、一対の片部43,44は、一対の側部32,33から厚み方向Z1の一方(底壁17から離れる方向)に延びている。
【0087】
結合前状態における一対の片部43,44は、第1部分45,45と、第2部分46,46と、第3部分47,47とを有している。
【0088】
第1部分45,45は、厚み方向Z1における一対の側部32,33の一方の縁部から延びる部分として設けられており、互いに平行に延びている。この場合の第1部分45,45間の距離は、一対の側部32,33間の距離と同じに設定されている。第1部分45,45は、隔壁14,14間に配置されている。第1部分45,45から、第2部分46,46が延びている。
【0089】
第2部分46,46は、被覆電線2を一対の側部32,33間(コンタクト6内)に挿入する動作をより容易にするために設けられている。結合前状態において、圧接コネクタ1を背面視したとき、第2部分46,46は、テーパ状に形成されており、一対の片部43,44の先端に進むに従い当該第2部分46,46間の間隔が拡がる形状を有している。第2部分46,46は、第3開口部23を通して、第1貫通孔部15の外方に突出している。第2部分46,46の先端部は、対応する隔壁14,14と厚み方向Z1に並んでおり、第2部分46,46間の間隔は、被覆電線2の直径よりも大きくされている。第2部分46,46から、第3部分47,47が延びている。
【0090】
第3部分47,47は、被覆電線2がコンタクト6の一対の側部32,33間に挿入される際に、コンタクト6において被覆電線2に最初に接触する部分として設けられている。第3部分47,47は、厚み方向Z1と平行に延びており、第3部分47,47の全部が、ハウジング本体8の外方に位置している。第3部分47,47間の間隔は、被覆電線2の直径よりも大きい。これにより、被覆電線2は、スムーズに第3部分47,47間に挿入され得る。第3部分47,47の先端部の外側面には、面取り部が形成されている。
【0091】
本実施形態では、複数のコンタクト6は、かしめ部39の配置によって、第1コンタクト61と、第2コンタクト62とに分類される。より具体的には、第1コンタクト61は、第1コンタクト61の後端部にかしめ部39(391)を有している。一方、第2コンタクト62は、長さ方向X1における第2コンタクト62の中間部にかしめ部39(392)を有している。第1コンタクト61の構成と第2コンタクト62の構成との違いは、長さ方向X1におけるかしめ部39(391,392)の位置である。すなわち、第1コンタクト61におけるかしめ部391の位置と、第2コンタクト62におけるかしめ部392の位置とが異なっている。以下、第1コンタクト61と第2コンタクト62との関係を説明する。
【0092】
第1コンタクト61と第2コンタクト62とは、幅方向Y1に交互に配置されている。具体的には、
図2および
図3によく示されているように、
図2の左側において幅方向Y1に隣接する3つのコンタクト6は、幅方向Y1に沿って、第1コンタクト61、第2コンタクト62、第1コンタクト61の順に配列されている。また、
図2の右側において幅方向Y1に隣接する3つのコンタクト6は、幅方向Y1に沿って、第2コンタクト62、第1コンタクト61、第2コンタクト62の順に配列されている。
【0093】
上記の構成により、幅方向Y1に隣り合う2つのコンタクト6において、長さ方向X1におけるかしめ部39の位置が異ならされている。
【0094】
第1コンタクト61のかしめ部391は、前述したように、当該第1コンタクト61の後端部に配置されており、ハウジング本体8の第2開口部22に隣接している。一方、第2コンタクト62のかしめ部392は、当該第2コンタクト62の後端部と圧接部38との間に配置されており、ハウジング本体8の第2開口部22からは離隔している。
図6によく示されているように、圧接コネクタ1を幅方向Y1に見た場合において、かしめ部391とかしめ部392は、長さ方向X1の位置が重ならないように配置されている。本実施形態では、長さ方向X1において、かしめ部391の長さと、かしめ部392の長さとは、同じ値に設定されている。
【0095】
図2によく示されているように、かしめ部39が被覆電線2にかしめられた状態では、かしめ部39の一対の片部43,44は、一部を折り曲げられている。この状態では、一対の片部43,44は、被覆電線2の被覆部3に押し付けられており、コンタクト6と被覆電線2との強固な結合が達成されている。
【0096】
なお、
図3および
図8によく示されているように、第1コンタクト61と第2コンタクト62とは、かしめ部39のレイアウト以外の構成については、互いに同様の構成を有している。より具体的には、長さ方向X1に関して、各接触部34の位置、各抜け止め部35の位置、各加圧部36の位置、および、各圧接部37,38の位置は、揃えられている。
【0097】
次に、圧接コネクタ1と被覆電線2とを接続するための構成を説明する。
【0098】
図9は、本実施形態における圧接コネクタ1と被覆電線2とを接続するための処理の流れの一例を示すフローチャートである。本実施形態では、圧接コネクタ1と被覆電線2とは、
図9に示すフローチャートの流れに沿って、接続される。なお、
図9のフローチャートを参照して説明する場合には、
図9以外の図も適宜参照する。
【0099】
圧接コネクタ1と被覆電線2とを接続するための工程は、準備工程(ステップS1)と、挿入工程(ステップS2)と、リップ加工工程(ステップS3)と、かしめ工程(ステップS4)と、を含んでいる。
【0100】
準備工程(ステップS1)では、単品の圧接コネクタ1が準備される。より具体的には、
図5などに示されているように、かしめ部39の一対の片部43,44が厚み方向Z1に沿って延びた状態の圧接コネクタ1が、準備される。
【0101】
次に、挿入工程(ステップS2)では、圧接コネクタ1に複数の被覆電線2が挿入される。そして、リップ加工工程(ステップS3)では、各かしめ部39の一対の片部43,44にリップ加工が施される。また、かしめ工程(ステップS4)では、各かしめ部39の一対の片部43,44が、被覆電線2の被覆部3にかしめられる。
【0102】
図10は、挿入・リップ加工工程に用いられる工具としての挿入・リップ加工用パンチ70、および圧接コネクタ1の斜視図である。
図11は、挿入工程の第1段階を示す背面図である。
図12は、挿入工程の第2段階を示す背面図である。
図13は、挿入工程の第3段階を示す背面図である。
図14は、
図13の主要部の拡大図である。
図15は、リップ加工工程を示す主要部の背面図である。
【0103】
図10を参照して、挿入工程およびリップ加工工程では、挿入・リップ加工用パンチ70が用いられる。挿入・リップ加工用パンチ70は、挿入工程において、複数の被覆電線2を一括して複数のコンタクト6に挿入するために用いられる。また、挿入・リップ加工用パンチ70は、かしめ工程に先立ち行われるリップ加工工程において、各コンタクト6の一対の片部43,44の第3部分47,47の先端部間の間隔が狭くなるように一対の片部43,44を変形させるために用いられる。
【0104】
挿入・リップ加工用パンチ70は、第1パンチ部71と、第2パンチ部72と、第3パンチ部73とを有している。第1パンチ部71と第2パンチ部72と第3パンチ部73は、互いに独立して変位可能に構成されている。なお、以下では、挿入・リップ加工用パンチ70が圧接コネクタ1と厚み方向Z1に向かい合っている状態を基準に説明する。
【0105】
第1パンチ部71は、挿入工程において複数の被覆電線2を複数のコンタクト6に一括して挿入するために設けられている。第1パンチ部71は、複数形成されており、幅方向Y1に沿って配列されている。第1パンチ部71の数は、第1貫通孔部15の数と第2貫通孔部16の数との合計と同じである。各第1パンチ部71は、対応する第1貫通孔部15または第2貫通孔部16と厚み方向Z1に向かい合っている。
【0106】
各第1パンチ部71は、厚み方向Z1に延びるブロック状に形成されており、ハウジング本体8の対応する第1貫通孔部15および第2貫通孔部16に進入する。各第1パンチ部71は、第1貫通孔部15内の圧接部37,38(
図10では図示せず)との接触を防止するための切り欠きを有している。第1パンチ部71の後方に第2パンチ部72が配置されている。
【0107】
第2パンチ部72は、挿入工程において各第1コンタクト61に被覆電線2を挿入し、且つ、リップ加工工程において各第2コンタクト62にリップ加工を施すために設けられている。
【0108】
長さ方向X1に関して、第2パンチ部72の長さは、第1パンチ部71の長さよりも小さく設定されている。長さ方向X1に関して、第2パンチ部72の位置は、第2コンタクト62のかしめ部392の位置と揃えられている。
【0109】
第2パンチ部72は、位置決め部721と、電線加圧部722と、リップ加工部723と、を有している。
【0110】
位置決め部721は、圧接コネクタ1対する第2パンチ部72の幅方向Y1における位置を規定するために設けられている。位置決め部721は、第2貫通孔部16の第3開口部26と厚み方向Z1に向かい合う位置にそれぞれ形成されている。各位置決め部721は、厚み方向Z1に沿って延びる細長い棒状に形成されており、対応する第2貫通孔部16に挿入可能である。各位置決め部721の先端部は、先細り形状に形成されており、対応する第2貫通孔部16へ挿入され易くなっている。位置決め部721と幅方向Y1に並ぶ箇所に、電線加圧部722が形成されている。
【0111】
電線加圧部722は、挿入工程において、被覆電線2を第1コンタクト61の一対の側部32,33間に挿入するために設けられている。電線加圧部722は、複数形成されている。各電線加圧部722は、対応する第1コンタクト61と厚み方向Z1に向かい合っている。各加圧部722の基端部は、テーパ状に形成されており、厚み方向Z1に沿って圧接コネクタ1側に進むに従い、幅方向Y1の長さが小さくなっている。また、各加圧部722の先端部は、突起状に形成されている。電線加圧部722と幅方向Y1に並ぶ箇所に、リップ加工部723が形成されている。
【0112】
リップ加工部723は、リップ加工工程において、第2コンタクト62のかしめ部39の一対の片部43,44にリップ加工を施すために設けられている。リップ加工部723は、複数形成されている。各リップ加工部723は、対応する第2コンタクト62と厚み方向Z1に向かい合っている。各リップ加工部723は、テーパ状に形成されており、厚み方向Z1に沿って圧接コネクタ1から遠ざかるに従い、幅方向Y1の長さが小さくなっている。上記の構成を有する第2パンチ部72と長さ方向X1に隣接する箇所に、第3パンチ部73が配置されている。
【0113】
第3パンチ部73は、挿入工程において各第2コンタクト62に被覆電線2を挿入し、且つ、リップ加工工程において各第1コンタクト61にリップ加工を施すために設けられている。
【0114】
長さ方向X1に関して、第3パンチ部73の長さは、第2パンチ部72の長さと同じに設定されている。長さ方向X1に関して、第3パンチ部73の位置は、第1コンタクト61のかしめ部391の位置と揃えられている。
【0115】
第3パンチ部73は、位置決め部731と、電線加圧部732と、リップ加工部733と、を有している。
【0116】
位置決め部731は、圧接コネクタ1に対する第3パンチ部73の幅方向Y1における位置を規定するために設けられている。位置決め部731の形状は、位置決め部721の形状と同じ形状に設定されている。位置決め部731は、第2貫通孔部16の第3開口部26と厚み方向Z1に向かい合う位置にそれぞれ形成されている。各位置決め部731は、対応する第2貫通孔部16に挿入可能である。位置決め部731と幅方向Y1に並ぶ箇所に、電線加圧部732が形成されている。
【0117】
電線加圧部732は、挿入工程において、被覆電線2を第2コンタクト62の一対の側部32,33間に挿入するために設けられている。電線加圧部732は、複数形成されている。各電線加圧部732は、対応する第2コンタクト62と厚み方向Z1に向かい合っている。各電線加圧部732の形状は、電線加圧部722の形状と同じに設定されている。具体的には、各電線加圧部732の基端部は、テーパ状に形成されており、厚み方向Z1に沿って圧接コネクタ1側に進むに従い、幅方向Y1の長さが小さくなっている。また、各電線加圧部732の先端部は、突起状に形成されている。電線加圧部732と幅方向Y1に並ぶ箇所に、リップ加工部733が形成されている。
【0118】
リップ加工部733は、リップ加工工程において、第1コンタクト61のかしめ部39の一対の片部43,44にリップ加工を施すために設けられている。リップ加工部733は、複数形成されている。各リップ加工部733は、対応する第1コンタクト61と厚み方向Z1に向かい合っている。各リップ加工部733は、テーパ状に形成されており、厚み方向Z1に沿って圧接コネクタ1から遠ざかるに従い、幅方向Y1の長さが小さくなっている。
【0119】
図16は、かしめ用パンチ80と、リップ加工が施された後の圧接コネクタ1とを示す背面図である。
図16を参照して、本実施形態では、かしめ工程(ステップS4)において、かしめ用パンチ80が用いられる。なお、以下では、かしめ用パンチ80が圧接コネクタ1と厚み方向Z1に向かい合っている状態を基準に説明する。
【0120】
かしめ用パンチ80は、第1かしめ加工部81と、第2かしめ加工部82とを有している。
【0121】
第1かしめ加工部81は、第1コンタクト61のかしめ部391にかしめ加工を施すために設けられている。第1かしめ加工部81は、複数設けられている。各第1かしめ加工部81は、対応する第1コンタクト61のかしめ部391と厚み方向Z1に並んで配置されている。各第1かしめ加工部81は、厚み方向Z1に沿って圧接コネクタ1に向けて延びている。各第1かしめ加工部81の先端部には、一対の凹部81a,81bが形成されている。
【0122】
一対の凹部81a,81bは、リップ加工が施されたかしめ部391の一対の片部43,44を塑性変形させるために設けられている。一対の凹部81a,81bは、それぞれ、対応する第1コンタクト61のかしめ部391と厚み方向Z1に向かい合って配置されており、窪んだ湾曲状に形成されている。本実施形態では、長さ方向X1に沿って見て、一対の凹部81a,81bは、それぞれ、円弧状に形成されている。幅方向Y1に関して、一対の凹部81a,81bの全体としての長さは、リップ加工が施された状態の第1コンタクト61のかしめ部391における、一対の片部43,44の先端の全長よりも大きく設定されている。幅方向Y1における一対の凹部81a,81bのそれぞれの中間部が、対応する片部43,44と厚み方向Z1に向かい合っている。上記の構成を有する第1かしめ加工部81とは幅方向Y1の位置および長さ方向X1の位置が異なる箇所に、第2かしめ加工部82が配置されている。第2かしめ加工部82は、第1かしめ加工部81と一体に変位可能に構成されている。
【0123】
第2かしめ加工部82は、第2コンタクト62のかしめ部392にかしめ加工を施すために設けられている。第2かしめ加工部82は、複数設けられている。各第2かしめ加工部は、対応する第2コンタクト62のかしめ部392と厚み方向Z1に並んで配置されている。各第2かしめ加工部82は、厚み方向Z1に沿って圧接コネクタ1側に向けて延びている。各第2かしめ加工部82の先端部には、一対の凹部82a,82bが形成されている。
【0124】
一対の凹部82a,82bは、リップ加工が施されたかしめ部392の一対の片部43,44を塑性変形させるために設けられている。一対の凹部82a,82bの形状は、一対の凹部82a,82bの形状と同一であり、窪んだ湾曲状に形成されている。幅方向Y1に関して、一対の凹部82a,82bの全体としての長さは、リップ加工が施された状態の第2コンタクト62のかしめ部392における、一対の片部43,44の先端の全長よりも大きく設定されている。幅方向Y1における一対の凹部82a,82bのそれぞれの中間部が、対応する一対の片部43,44と厚み方向Z1に向かい合っている。
【0125】
前述したように、第1かしめ加工部81と第2かしめ加工部82とは、長さ方向X1における位置が異なっている。よって、第1かしめ加工部81および第2かしめ加工部82が幅方向Y1に広い形状であっても、第1かしめ加工部81と第2かしめ加工部82とは接触しない。
【0126】
次に、
図9のフローチャートに沿って圧接コネクタ1と被覆電線2とを接続する工程を、より具体的に説明する。
【0127】
図11に示すように、準備工程(ステップS1)において、圧接コネクタ1が準備される。次に、複数の被覆電線2が、圧接コネクタ1と厚み方向Z1に向かい合うように配置される。また、挿入・リップ加工用パンチ70が、被覆電線2と接触するように配置される。このとき、挿入・リップ加工用パンチ70の複数の第1パンチ部71は、厚み方向Z1に隣接する被覆電線2と接触する。また、挿入・リップ加工用パンチ70の第2パンチ部72の複数の電線加圧部722、および、第3パンチ部73の複数の電線加圧部732は、厚み方向Z1に隣接する被覆電線2と接触する。
【0128】
次に、挿入工程が行われる(ステップS2)。具体的には、第1〜第3パンチ部71〜73は、厚み方向Z1に沿って圧接コネクタ1に向けて変位される。これにより、
図12に示すように、各被覆電線2は、対応するコンタクト6のかしめ部39の一対の片部43,44の先端部(第3部分47,47)を通って、一対の側部32,33間に一括して挿入される。前述したように、各コンタクト6の第3部分47,47間の間隔は、被覆電線2の直径よりも広くされている。その結果、各被覆電線2は、対応するコンタクト6の一対の片部43,44間にスムーズに挿入される。
【0129】
そして、
図13および
図14に示すように、第1〜第3パンチ部71〜73は、各被覆電線2を、対応するコンタクト6の圧接部37,38に押し付ける(
図13および
図14において、圧接部37は圧接部38に隠れている)。これにより、各被覆電線2の被覆部3は、対応するコンタクト6の圧接部37,38の圧接刃41,42によって切断される。
【0130】
その後、各被覆電線2の芯線部4は、圧接部37,38の底部の近くまで挿入される。これにより、各被覆電線2の芯線部4と、対応するコンタクト6の圧接部37,38との電気的な接続が達成される。また、第2パンチ部72および第3パンチ部73の位置決め部721,731は、対応する第2貫通孔部16に挿入され、幅方向Y1における第2パンチ部72および第3パンチ部73の位置決めが達成される(
図13および
図14において、位置決め部721は、位置決め部731に隠れている)。
【0131】
このとき、各被覆電線2は、対応するコンタクト6の一対の側部32,33に挟まれている。この場合、第2パンチ部72においては、第1コンタクト61に挿入された被覆電線2を電線加圧部722が加圧している一方、リップ加工部723は、第2コンタクト62のかしめ部39を加圧していない。また、第3パンチ部73においては、第2コンタクト62に挿入された被覆電線2を電線加圧部732が加圧している一方、リップ加工部733は、第1コンタクト61のかしめ部39を加圧していない。
【0132】
次に、リップ加工工程が行われる(ステップS3)。リップ加工工程では、第1〜第3パンチ部71〜73が、厚み方向Z1に沿ってさらに圧接コネクタ1の天壁17側に変位される。これにより、
図15に示すように、第2パンチ部72の各リップ加工部723は、対応する第2コンタクト62のかしめ部392の一対の第3部分47,47を加圧することで、かしめ部392の一対の片部43,44の先端部間の間隔を狭くする。同様に、第3パンチ部73の複数のリップ加工部733は、対応する第1コンタクト61のかしめ部391の一対の第3部分47,47を加圧することで、かしめ部391の一対の片部43,44の先端部間の間隔を狭くする。
【0133】
次に、
図16に示すように、かしめ工程(ステップS4)では、まず、かしめ用パンチ80が、圧接コネクタ1と厚み方向Z1に向かい合うように配置される。
【0134】
次に、かしめ用パンチ80は、厚み方向Z1に沿って圧接コネクタ1に向けて変位される。これにより、各第1かしめ加工部81の凹部81a,81bは、対応する第1コンタクト61のかしめ部39の一対の片部43,44を、被覆電線2にかしめる。また、各第2かしめ加工部82の凹部82a,82bは、対応する第2コンタクト62の一対の片部43,44を、被覆電線2にかしめる。上記の構成により、圧接コネクタ1への複数の被覆電線2の接続作業が完了する。この際、幅方向Y1に隣り合う第1コンタクト61および第2コンタクト62において、長さ方向X1におけるかしめ部391,392の位置が異なっている。また、幅方向Y1に隣り合う第1かしめ加工部81および第2かしめ加工部82は、長さ方向X1における位置が異なって配置されている。
【0135】
以上説明したように、本実施形態にかかる圧接コネクタ1によると、複数の被覆電線2を複数のコンタクト6に一括して結合させる際、挿入工程において、複数の被覆電線2は、一括して、対応するコンタクト6に挿入される。そして、かしめ工程において、かしめ部39にかしめ加工を行うためのかしめ用パンチ80の複数のかしめ加工部81,82は、複数のコンタクト6のかしめ部39をかしめることで、各かしめ部39と対応する被覆電線2とを結合させる。より具体的には、幅方向Y1に隣り合う2つのコンタクト6において、長さ方向におけるかしめ部39の位置が異ならされている。そして、かしめ加工の際、かしめ用パンチ80の複数のかしめ加工部81,82は、複数のコンタクト6のかしめ部39と上下に向かい合うように配置される。この状態において、幅方向Y1に隣り合う2つのかしめ加工部81,82は、長さ方向X1における位置が異ならされる。よって、かしめ用パンチ80の各かしめ加工部81,82が幅方向Y1に長い形状であり、且つ、幅方向Y1におけるかしめ加工部81,82の配置ピッチが短い場合でも、かしめ加工部81,82同士が接触することを抑制できる。その結果、幅方向Y1におけるコンタクト6の配置ピッチも短くでき、圧接コネクタ1の小型化を達成できる。さらに、前述したように、各かしめ加工部81,82を幅方向Y1に長い形状にできるので、各かしめ加工部81,82は、より確実に、かしめ部39の両脇から当該かしめ部39に接触できる。よって、各かしめ加工部81,82は、より確実に、かしめ部39を曲げ変形させて当該かしめ部39を被覆電線2にかしめることができる。以上より、本実施形態によると、複数の被覆電線2と複数のコンタクト6とを一括して確実に結合することができ、且つ、圧接コネクタ1の小型化を達成することができる。
【0136】
また、圧接コネクタ1によると、第1コンタクト61のかしめ部391と、第2コンタクト62のかしめ部392とが、ジグザグ状に配列されることとなる。このような構成であれば、複数のコンタクト6のかしめ部39が全体として長さ方向X1に占める長さを短くできる。よって、長さ方向X1における圧接コネクタ1の全長をより短くでき、その結果、圧接コネクタ1を、より小型化できる。
【0137】
また、圧接コネクタ1によると、長さ方向X1における複数のコンタクト6の圧接刃41の位置、および圧接刃42の位置が揃えられている。この構成によると、複数のコンタクト6の圧接刃41,42が全体として長さ方向X1に占める長さを短くできる。よって、長さ方向X1における圧接コネクタ1の全長をより短くでき、その結果、圧接コネクタ1を、より小型化できる。
【0138】
また、圧接コネクタ1によると、かしめ工程において、各コンタクト6のかしめ部39の一対の片部43,44は、折り曲げられることで、一対の片部43,44間に配置された被覆電線2の被覆部3に結合される。この構成によると、一対の片部43,44が被覆電線2の被覆部3にかしめられることで、コンタクト6と被覆電線2との結合力を、十分に確保できる。
【0139】
また、圧接コネクタ1によると、各コンタクト6の一対の片部43,44は、折り曲げられる前の状態において、一対の片部43,44の先端側に進むに従い一対の片部43,44間の間隔が拡がる形状を有している。この構成によると、挿入工程において、コンタクト6に被覆電線2を挿入する際、被覆電線2をかしめ部39の一対の片部43,44間に挿入し易くできる。これにより、被覆電線2をコンタクト6に結合する作業を行い易い。しかも、幅方向Y1に隣接するコンタクト6のかしめ部39は、長さ方向X1の位置をずらされている。よって、一対の片部43,44の先端部(第3部分47,47)の形状が末広がり形状であっても、隣接するコンタクト6同士の接触を防ぐことができる。よって、一対の片部43,44の先端部間の間隔を、より広くしておくことができる。
【0140】
また、前述したように、幅方向Y1におけるコンタクト6の配置のピッチを短くできる結果、圧接コネクタ1の小型化が達成されている。すなわち、直径の大きい被覆電線2のための圧接コネクタ1においても、当該圧接コネクタ1の小型化を実現できる。
【0141】
また、圧接コネクタ1によると、リップ加工工程では、一対の片部43,44の先端部間の間隔が狭くなるように一対の片部43,44が変形される。この構成によると、リップ加工工程において、一対の片部43,44における先端部間の間隔が狭くなるように一対の片部43,44が変形される。その結果、かしめ工程において、かしめ用パンチ80によって、一対の片部43,44の先端部を、より確実に被覆部3へ向けて変形させることができる。換言すれば、かしめ工程において、かしめ用パンチ80のかしめ加工部81,82によって、一対の片部43,44が座屈するような変形が生じることを抑制できる。よって、かしめ部39と被覆部3とを、より確実に結合させることができる。
【0142】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上記実施形態に限られず、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。たとえば、次のように変更して実施してもよい。
【0143】
上述の実施形態では、相手側コネクタが回路基板に接続された形態、すなわち、ボード・トゥ・ワイヤタイプの接続形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、相手側コネクタが被覆電線に接続された形態、すなわち、ワイヤ・トゥ・ワイヤタイプの接続形態において本発明が適用されてもよい。