(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
(基本構成)
図1(a)、(b)は、実施の形態に係るタッチ式入力装置200を備える電子機器100を示す斜視図である。電子機器100は、携帯電話端末、タブレット端末、携帯型オーディオプレイヤ、据え置き型ゲーム機器の無線コントローラ、ノート型コンピュータ、ヘッドセット、ヘッドホン、ヘッドマウントディスプレイ、デジタルスチルカメラであり、無線通信機能を備える。
【0017】
図1(a)は電子機器100の外観を示す。電子機器100の筐体102には、入力領域104が設けられる。この入力領域104は、入力インタフェースとして利用可能であり、そこにはボタン、キー、スイッチ、スライドバーなど(以下、ボタンと総称する)が割り当てられる。なお入力領域104は、必ずしも外部から目視で確認できる態様で設けられる必要はなく、筐体102のデザインを損なわないように、外部からは認識できなくても構わない。
【0018】
図1(b)には、電子機器100の筐体102の内部が示される。上述のように電子機器100は無線通信機能を有しており、したがって電子機器100は、無線通信用のアンテナ素子(放射導体ともいう)10を備える。このアンテナ素子10は、送信用アンテナであっても受信用アンテナであっても送受兼用アンテナであってもよい。また無線通信の方式は何ら限定されるものではなく、アンテナ素子10は、セルラー用アンテナ、GPS用アンテナ、無線LAN(Local Area Network)用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、ワンセグ用アンテナ、ラジオ用アンテナ、その他のアンテナのいずれであってもよい。
【0019】
図1(b)に示すように、アンテナ素子10は、筐体102の内側に設けられており、少なくともその一部が、入力領域104とオーバーラップするよう配置される。アンテナ素子10は、その一端である給電端12において無線部20と接続され、その他端である開放端14は開放されている。アンテナ素子10は、L字型あるいはスパイラル型のモノポールアンテナであってもよいし、逆Fアンテナであってもよく、その形状や構造は特に限定されない。アンテナ素子10は、入力装置200の一部を構成する。
【0020】
図2は、電子機器100を示すブロック図である。
電子機器100は、アンテナ素子10、無線部(RF部)20、ベースバンドプロセッサ40、アプリケーションプロセッサ50、サウンドプロセッサ52、オーディオ出力装置54、オーディオ入力装置56、ディスプレイ装置58、ユーザインタフェース装置60および入力検出部30を備える。
【0021】
ベースバンドプロセッサ40およびアプリケーションプロセッサ50は、電子機器100を統合的に制御する。これらは1チップ化されてもよい。
【0022】
無線部20は、アンテナ素子10を利用して、図示しない基地局との間で無線通信する。より具体的には無線部20は、ベースバンドプロセッサ40から出力されるベースバンド信号を変調し、高周波信号に変換して、アンテナ素子10から送信周波数の電波を放射せしめる。また無線部20は、アンテナ素子10が受信した基地局からの受信信号を復調し、ベースバンド信号に変換してベースバンドプロセッサ40に出力する。無線部20およびベースバンドプロセッサ40は、公知の技術を用いればよい。
【0023】
ユーザインタフェース装置60は、タッチパネルやキーボードおよびその制御ICなどを含む。アプリケーションプロセッサ50は、ユーザインタフェース装置60からのユーザ入力を検出する。
【0024】
ディスプレイ装置58は、LCD(液晶ディスプレイ)あるいは有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイと、その制御IC(ディスプレイドライバ)を含み、アプリケーションプロセッサ50により生成された画像データを表示する。
【0025】
サウンドプロセッサ52は、音声信号の入出力を制御する。サウンドプロセッサ52は、アプリケーションプロセッサ50により生成されたオーディオ信号をアナログ信号に変換し、スピーカやヘッドホンなどのオーディオ出力装置54に出力する。またサウンドプロセッサ52は、マイクなどのオーディオ入力装置56に入力されたアナログオーディオ信号をデジタル信号に変換し、アプリケーションプロセッサ50に出力する。
【0026】
入力検出部30は、アンテナ素子10の特性の変化にもとづき、入力領域104に対するユーザ入力を検出する。つまり、入力装置200は、アンテナ素子10および入力検出部30によって構成される。ユーザ入力の検出結果は、ベースバンドプロセッサ40に出力される。なお入力検出部30の機能は、ベースバンドプロセッサ40あるいはアプリケーションプロセッサ50に統合されてもよい。
【0027】
以上が入力装置200およびそれを備える電子機器100の基本構成である。続いてその原理を説明する。
ユーザの指が電子機器100の入力領域104に接触すると、アンテナ素子10の周波数特性が変化する。この周波数特性の変化は、アンテナ素子10とユーザの指との間に容量が形成され、インピーダンス整合が乱されることにより起こる。
【0028】
つまりユーザが入力領域104に接触しない状態(無入力状態ともいう)では、アンテナ素子10の周波数特性は設計値に準じたものとなっている。より具体的には、無入力状態においてアンテナ素子10の共振周波数は送信周波数あるいは受信周波数と一致しており、別の観点から言えば、アンテナ素子10と無線部20の間にはインピーダンス整合がとれている。
【0029】
一方でユーザが入力領域104に接触した状態(入力状態ともいう)では、アンテナ素子10の周波数特性が設計値から逸脱し、したがってその共振周波数が送信周波数(あるいは受信周波数f
RX)からシフトし、またアンテナ素子10と無線部20の間にインピーダンス不整合が生ずる。
【0030】
つまり入力検出部30は、無線部20からアンテナ素子10側を望んだインピーダンスの変化にもとづき、入力領域104に対するユーザ入力を検出する。
【0031】
図3は、アンテナ素子10の特性の一例であるリターンロスの周波数特性を示す図である。実線(i)で示すように、無入力状態では、インピーダンス整合がとれているため、無線部20からアンテナ素子10側を見たリターンロスは、受信周波数f
RXで極小値をとる(つまりリターンロスが大きいといえる)。一方、一点鎖線(ii)で示すように、入力状態ではインピーダンス不整合が発生し、リターンロスが極小値をとる共振周波数が受信周波数f
RXからシフトする。
【0032】
入力検出部30は、アンテナ素子10の周波数特性を所定の周期(たとえば数十Hz)で監視することにより、ユーザの入力の有無を検出することができる。「周波数特性」とは、詳しくは後述するが、アンテナを介した受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)、アンテナの受信感度、アンテナの通過特性(Sパラメータ、特にS21特性、S12特性)、反射特性(SパラメータのS11特性、VSWR:Voltage Standing Wave Ratio、あるいはリターンロス)などが利用しうる。
【0033】
以上が電子機器100によるユーザ入力の検出の原理である。
【0034】
続いて、電子機器100の具体的な構成および処理を、いくつかの実施例にもとづいて説明する。
第1の実施例では、受信用(あるいは送受兼用)アンテナと無線部20の受信部を利用して、ユーザ入力を検出する電子機器100について説明する。
第2の実施例では、送信用(あるいは送受兼用)アンテナと無線部20の送信部を利用して、ユーザ入力を検出する電子機器100について説明する。
【0035】
(第1の実施例)
図4は、第1の実施例に係る電子機器100aを示すブロック図である。
この電子機器100aは、アンテナ素子10の周波数特性として、RSSIを利用する。無線部20は、受信部21、送信部22、アンテナスイッチ23を備える。受信部21および送信部22は、アンテナスイッチ23によって時分割でアンテナ素子10と接続される。なおアンテナスイッチ23に代えて、デュプレクサが用いられる場合もある。
【0036】
受信部21は、受信器24、復調器25、受信信号強度測定部26を備える。受信器24は、LNA(低ノイズアンプ)やギルバートセルミキサー等を含み、アンテナ素子10が受信した微弱な信号を増幅し、ローカル周波数に変換する。復調器25は、受信器24が受信した信号を復調する。
【0037】
第1の実施例では、ユーザ入力の有無を判定するために、アンテナ素子10の周波数特性として、RSSIが利用される。
【0038】
受信信号強度測定部26は、アンテナ素子10が受信する信号の強度(つまりRSSI)を測定する。無線通信機能を有する電子機器の多くは、ダイバシティ制御やMIMO(Multiple Input Multiple Output)制御を目的として受信信号強度の測定機能を搭載する場合が多く、電子機器100はそれを入力検出に流用することができる。受信信号強度測定部26は公知技術を用いればよい。
【0039】
つまり、アンテナ素子10が基地局から受ける電波強度を一定と仮定すると、ユーザ入力が無い無入力状態においては、受信周波数におけるアンテナ利得が高く、したがってRSSIは大きくなる。一方、ユーザの入力状態では、受信周波数におけるアンテナ利得は低下し、したがってRSSIは低下する。したがって
図4の電子機器100aによれば、RSSIを参照することにより、ユーザ入力の有無を検出することができる。
【0040】
ここで、電子機器100aは必ずしも良好な無線環境下で使用されるとは限らない。つまりRSSIを参照する構成においては、RSSIの低下が、ユーザ入力によるものであるか、基地局からの電波強度が低下したものであるかの区別がつけられない可能性がある。この問題は、以下のアルゴリズムにより解決される。
【0041】
このアルゴリズムは、電子機器100aが複数のアンテナ素子10を有する場合において有効である。ここでは、受信信号強度測定部26は、複数のアンテナ素子10それぞれについてRSSIを測定する。入力検出部30は、複数アンテナ素子それぞれについて測定されたRSSIの相対的な関係にもとづいて、入力領域104に対するユーザ入力を検出する。
【0042】
理解の容易化のため、2本のアンテナ素子10(以下、第1アンテナと第2アンテナと称する)を想定し、両方が無線通信および入力ボタンに使用されるケースを考える。つまり電子機器100は、複数の入力領域(以下、第1入力領域、第2入力領域と称する)104を備え、入力領域104ごとにユーザ入力の有無が判定される。
【0043】
図5は、第1のアルゴリズムにもとづく入力判定のフローチャートである。
【0044】
入力検出部30は、以下の処理を所定の周期で繰り返し実行する。
【0045】
はじめに、受信信号強度測定部26は、第1アンテナ、第2アンテナそれぞれのRSSIを取得する。それらは、第1基準強度D
REF1、第2基準強度D
REF2としてメモリに保存される(S100)。しばらく時間が経過した後(S102)、受信信号強度測定部26は、現在の第1アンテナ、第2アンテナそれぞれのRSSIを取得する(S104)。それらは、第1検出強度D
1、第2検出強度D
2としてメモリに保存される。強度D
REF1、D
REF2、D
1、D
2は、RSSIが大きいほど、大きな値を有するものとする。
【0046】
続いて、入力検出部30は、第1検出強度D
1と第1基準強度D
REF1の差分ΔD
1、第2検出強度D
2と第2基準強度D
REF2の差分ΔD
2を算出する(S106)。
ΔD
1=D
REF1−D
1
ΔD
2=D
REF2−D
2
差分ΔD
1は、基準となる状態からの強度の変化量を示す。
【0047】
そして、差分ΔD
1が所定のしきい値a1より大きく(S108のY)、かつ差分ΔD
2がしきい値a2より大きい(S110のY)とき、つまり、第1アンテナおよび第2アンテナ両方のRSSIが低下した場合には、ユーザ入力とは無関係に無線環境が劣化したものと判定し(S112)、ステップS100に戻る。
【0048】
また差分ΔD
1が所定のしきい値a1より大きく(S108のY)、かつ差分ΔD
2がしきい値a2より小さい(S110のN)とき、つまり、第1アンテナのRSSIのみが低下し、第2アンテナのRSSIが実質的に低下していないときには、第1入力領域へのユーザ入力の可能性がある。入力検出部30は、差分ΔD
1をボタン入力判定用のしきい値b1と比較し、差分ΔD
1がしきい値b1より大きいとき(S114のY)、第1入力領域へのユーザ入力が発生したものと判定する(S116)。差分D
1がしきい値b1より小さいとき(S114のN)、第1入力領域へのユーザ入力は無いものと判定され、ステップS100に戻る。
【0049】
また差分ΔD
1がしきい値a1より小さく(S108のN)、かつ差分ΔD
2がしきい値a2より大きい(S118のY)とき、つまり、第2アンテナのRSSIのみが低下し、第1アンテナのRSSIが実質的に低下していないときには、第2入力領域へのユーザ入力の可能性がある。入力検出部30は、差分ΔD
2をボタン入力判定用のしきい値b2と比較し、差分ΔD
2がしきい値b2より大きいとき(S120のY)、第2入力領域へのユーザ入力が発生したものと判定する(S122)。差分D
2がしきい値b2より小さいとき(S120のN)、第2入力領域へのユーザ入力は無いものと判定され、ステップS100に戻る。
【0050】
また、差分ΔD
2が所定のしきい値a1より小さく(S108のN)、かつ差分ΔD
2がしきい値a2より小さい(S118のN)とき、無線環境が良好でユーザ入力がないものと判定され、ステップS100に戻る。
【0051】
以上が判定フローである。
このように入力検出部30は、複数アンテナ素子それぞれの受信信号強度(RSSI)の相対的な関係にもとづいて、複数の入力領域に対するユーザ入力を検出する。これにより、無線環境が劣悪な場合に、ユーザ入力が誤検出されるのを防止できる。
【0052】
また、
図5のフローチャートにおいてステップS100の基準強度D
REF1、D
REF2の取得は、時々刻々と得られる強度をそのまま用いてもよいし、ある区間にわたり移動平均してもよいし、フィルタリングしてもよい。
【0053】
また、
図5のフローチャートと並行して、複数のアンテナに関して、以下で説明するダイバシティ制御を行ってもよい。
複数のアンテナのうち所定のひとつ(たとえば第1アンテナ)が、優先使用されるよう定められている。ユーザ入力が発生せず、電波状態が良好な通常状態では、第1アンテナANT1が使用される。第1アンテナANT1の電波環境が悪化し、第2アンテナANT2の電波環境の方が良好である場合、第2アンテナANT2が使用される。
図5のフローチャートにおいて第1アンテナおよび第2アンテナ両方のRSSIが低下した場合には、ユーザ入力とは無関係に無線環境が劣化したものと判定される(S112)。この場合も、第1アンテナANT1が使用される。
図5のフローチャートにおいて、第1入力領域(第1アンテナANT1)へのユーザ入力が発生したものと判定された場合(S116)、ユーザ入力が発生していない第2アンテナANT2が使用される。
図5のフローチャートにおいて、第2入力領域(第2アンテナANT2)へのユーザ入力が発生したものと判定された場合(S122)、ユーザ入力が発生していない第1アンテナANT1が使用される。
【0054】
これまでは、ひとつのアンテナ素子がひとつの入力領域とオーバーラップする場合、言い換えれば、ひとつのアンテナ素子をひとつのボタンあるいはスイッチとして機能させる場合を説明したが、ひとつのアンテナ素子に、複数のボタンあるいはスイッチの機能を持たせることも可能である。
【0055】
図6は、単一のアンテナ素子に複数のボタンの機能が割り当てられた電子機器100bを示す図である。電子機器100bは、2本のアンテナ素子10a、10bを備える。
【0056】
筐体102のディスプレイパネル106が設けられた面S1の、ディスプレイパネル106と隣接した領域には、複数(ここでは4個)の入力領域104a〜104dが設けられる。入力領域104a〜104dはそれぞれが独立したボタンに対応する。たとえば入力領域104a〜104dは、十字状に配置される。
【0057】
第1アンテナ素子10aは、それに割り当てられる4個の入力領域104a〜104dとオーバーラップするように形成される。
【0058】
また、筐体102のディスプレイパネル106が設けられた表面S1とは別の側面S2の、左手の人差し指で接触可能な箇所にも、複数(ここでは2個)の入力領域104e〜104fが設けられる。入力領域104e〜104fもそれぞれが独立したボタンに対応する。
【0059】
第2アンテナ素子10bは、それに割り当てられる2個の入力領域104e〜104fとオーバーラップするように形成される。
【0060】
図7(a)〜(d)は、複数の入力領域104a〜104dそれぞれをタッチしたときの、第1アンテナ素子10aのリターンロスの周波数特性の実測値を示す図である。(i)は無入力状態を、(ii)は入力状態を示す。
図7(a)〜(d)から分かるように、ユーザがタッチした位置に応じて、リターンロスの周波数特性は変化する。
【0061】
この例では、受信周波数f
RXにおけるリターンロースは、入力領域104aをタッチしたとき−15dB、入力領域104bをタッチしたとき−7dB、入力領域104cをタッチしたとき−8.5dB、入力領域104dをタッチしたとき−10dBとなる。つまり同じ無線環境において電波を受信する場合、RSSIの値は、リターンロスの値に応じて変化する。
【0062】
したがって、入力領域104a〜104dそれぞれをタッチした4つの状態における受信周波数f
TXのリターンロスの値を予め取得しておくことにより、RSSIにもとづいて、いずれの入力領域104a〜104dがタッチされたかを判定することができる。
【0063】
複数のボタンが単一のアンテナ素子10に割り当てられる場合、
図5のフローチャートを以下のように修正すればよい。
第1アンテナ素子10aに関して、ステップS114のしきい値b1は、それに割り当てられたボタンの数だけ用意される。つまり
図7の構成では、しきい値b1は、b1a〜b1dの4値が用意される。そして各しきい値b1a〜b1dと、差分ΔD
1の比較結果にもとづいて、いずれの入力領域にユーザ入力があったかを判定できる。
【0064】
第2アンテナ素子10bに関して、ステップS120のしきい値b2は、それに割り当てられたボタンの数だけ用意される。つまり
図7の構成では、しきい値b1は、b2e、b2fの2値が用意される。そして各しきい値b2e、b2fと、差分ΔD
2の比較結果にもとづいて、いずれの入力領域にユーザ入力があったかを判定できる。
【0065】
図8は、2個のアンテナを備える電子機器100のRSSIと、ダイバシティ制御およびユーザ判定の結果の対応関係を示す図である。この例では、第1アンテナANT1に2個の領域(ボタン)w、xが割り当てられ、第2アンテナANT2に2個の領域(ボタン)y、zが割り当てられるものとする。
【0066】
状態1では、2個のアンテナANT1、ANT2のRSSIは標準的な値(100)であり、アンテナANT1が優先して通信に使用される。状態2では、アンテナANT1の感度が改善されており、アンテナANT1が優先して通信に使用される。状態3では、アンテナANT2の感度が改善されており、アンテナANT2が優先して通信に使用される。
【0067】
状態4では、2個のアンテナANT1、ANT2の両方のRSSIが低下する。これは、
図5のフローチャートのステップS110のYに相当し、ステップS112の無線環境の悪化と判断される。状態5では、2個のアンテナANT1、ANT2の両方のRSSIがさらに低下する。この場合も同様に無線環境の悪化と判断される。
【0068】
状態6、7では、アンテナANT1のRSSIのみが低下している。これは
図5のフローチャートのステップS114のYに相当し、アンテナANT1に割り当てられた入力領域へのユーザ入力と判定される。アンテナANT1のRSSIの低下量にもとづいて、ボタンwとxが判定される。
【0069】
状態8、9では、アンテナANT2のRSSIのみが低下している。これは
図5のフローチャートのステップS118のYに相当し、アンテナANT2に割り当てられた入力領域へのユーザ入力と判定される。アンテナANT2のRSSIの低下量にもとづいて、ボタンyとzが判定される。
【0070】
状態10、11では、アンテナANT1、ANT2双方のRSSIが低下している。これは、無線環境の劣化の可能性が高く、
図5の基準強度D
REF1、D
REF2も併せて低下する。状態10、11では、アンテナANT1のRSSIの方が大きく低下しており、ΔD
2は非常に小さく、ΔD
1のみ大きくなる。これは
図5のフローチャートのステップS114のYに相当し、アンテナANT1に割り当てられた入力領域へのユーザ入力と判定される。そしてアンテナANT1のRSSIの低下量にもとづいて、ボタンwとxが判定される。
【0071】
状態12、13では、アンテナANT1、ANT2双方のRSSIが低下している。これは、無線環境の劣化の可能性が高く、
図5の基準強度D
REF1、D
REF2も併せて低下する。状態12、13では、アンテナANT2のRSSIの方が大きく低下しており、ΔD
1は非常に小さく、ΔD
2のみ大きくなる。これは
図5のフローチャートのステップS120のYに相当し、アンテナANT1に割り当てられた入力領域へのユーザ入力と判定される。そしてアンテナANT2のRSSIの低下量にもとづいて、ボタンyとzが判定される。
【0072】
以上、第1の実施例について説明した。
この電子機器100によれば、アンテナ素子10が配置される箇所を、ユーザ入力を検出可能な領域とすることができ、従来必要であった機械式のボタンや、タッチパネルが不要となる。
【0073】
機械式ボタンやタッチパネルは、ある程度の広い面を必要とするのに対して、アンテナ素子10を用いた入力インタフェースでは、アンテナ素子10を配置できるスペースさえあれば十分であるため、狭い領域にボタンを配置することができる。また、機械式ボタンやタッチパネルは、平面上にしか設けることができないという制約を受けるが、アンテナ素子10は3次元で任意の形状を形成できるため、筐体102の曲面に沿ってボタンを配置することも可能となる。つまり電子機器100のデザイン上、あるいは機能上の設計自由度を格段に高めることができる。
【0074】
機械式ボタンやタッチパネルは、外観上、認識しうる形態で構成せざるを得ないのにたいして、実施の形態に係る入力装置は、外観上認識しえない形態で構成することができる。これにより電子機器100のデザイン上の制約を緩和できる。
【0075】
また、機械式ボタンでは耐水性、防水性が問題となるが、アンテナ素子10はシーリングされた筐体102の内部に形成でき、耐水性、防水性を高めることができる。また実施の形態に係る入力装置200は、機械式ボタンのように可動部が存在しないため、耐久性、寿命の観点でも優れている。
【0076】
また、第1の実施例のように、ユーザの入力検出にRSSIを利用する場合、既存のハードウェア資源を流用できるため、実施の形態に係る入力装置200を構成するためのコストや回路面積の増大を抑制できる。
【0077】
(第1の実施例の変形例)
図7(a)〜(d)に示すように、ユーザ入力の有無、あるいはユーザが接触した位置に応じて、共振周波数の位置はシフトしていく。そこで、入力検出部30は、RSSIを監視することに代えて、もしくはそれに加えて、アンテナ素子10の共振周波数を測定してもよい。これによっても、ユーザ入力を検出できる。
【0078】
また、無線環境が劣悪な環境においてユーザ入力を検出するために、電子機器100自身が、受信周波数f
RXと同じ周波数のパイロット信号を発生し、パイロット信号に対するRSSIを測定してもよい。あるいは電子機器100が、据え置き型ゲーム機のコントローラである場合、無線環境が劣悪な環境において、ゲーム機器の本体から、パイロット信号を送信するようにしてもよい。
【0079】
(第2の実施例)
図9は、第2の実施例に係る電子機器100cを示すブロック図である。第2の実施例では、送信用(あるいは送受兼用)アンテナ10と無線部20の送信部22を利用して、ユーザ入力が検出される。
【0080】
送信部22は、変調器27、送信器28、アンテナ特性測定部29を備える。変調器27は、ベースバンドプロセッサ40からベースバンド信号を変調する。送信器28は、変調器27からの信号を周波数変換し、増幅して、アンテナスイッチ23を介してアンテナ素子10へと出力し、アンテナ素子10に送信周波数f
TXの電波を放射させる。
【0081】
送信用のアンテナ素子10についても、受信用のアンテナと同様に、ユーザが接触すると、その周波数特性が変化する。そこでアンテナ特性測定部29は、アンテナ素子10の特性、より具体的には反射特性を測定する。
【0082】
たとえばアンテナ特性測定部29は、送信周波数f
TXにおけるアンテナ素子10のリターンロスを取得する。アンテナ素子10と受信部21のインピーダンス整合がとれている状態つまり無入力状態では、反射はゼロであるから、リターンロスは実質的に大きく(−∞dB)、したがって送信器28がアンテナ素子10に対して送信した電力は、ほとんどが反射せずにアンテナ素子10から送信される。一方、ユーザ入力がある状態では、インピーダンス不整合により、送信器28がアンテナ素子10に送信した電力が反射して戻ってくる。送信器28がアンテナ素子10に対して出力した電力量は既知であるから、アンテナ素子10により反射される電力を測定することにより、送信周波数f
TXにおけるリターンロスを測定できる。アンテナ特性測定部29は、測定したリターンロスにもとづいて、ユーザ入力の有無を検出する。
【0083】
以上が第2の実施例に係る電子機器100cの構成である。
この電子機器100cによれば、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
それに加えて、この第2の実施例に係る電子機器100cは以下の利点を有する。第1の実施例のように、基地局からの電波を利用してアンテナ特性を測定する場合、圏外ではユーザ入力を検出できない。これに対して、第2の実施例では、自らが発生した信号にもとづいてアンテナ素子10の特性を測定しているため、無線環境に依存せずにユーザ入力を検出できる。
【0084】
(第2の実施例の変形例)
アンテナ特性測定部29は、VSWR(電圧定在波比)を測定してもよいし、反射係数(SパラメータのS11)、アンテナ効率を測定してもよい。あるいは、無線部20が、インピーダンスマッチングを調節するオートチューナを具備する場合、入力検出部30は、オートチューナによる制御量を参照することにより、アンテナ素子10の特性を測定してもよい。
【0085】
以上、本発明について、いくつかの実施の形態およびいくつかの実施例をもとに説明した。これらの実施の形態、実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0086】
(第1の変形例)
第1、第2の実施の形態では、ひとつの入力領域を独立したボタンとして使用する場合を説明したが、本発明はそれには限定されない。たとえば、ひとつの入力領域に、タッチパッドと同様の機能、つまり座標検出機能をもたせることも可能である。
【0087】
図1(b)に示すアンテナ素子10には、ひとつの入力領域104が対応づけられている。
図7を参照して説明したように、アンテナ素子10の特性は、ユーザが接触した座標に応じて変化する。そこで、入力検出部30によりアンテナ素子10の特性の変化量を測定することで、ユーザがタッチした座標を特定することができる。これば、入力領域を、1次元、あるいは2次元のタッチパッドとして扱うことができることを意味する。
【0088】
(第2の変形例)
入力検出部30は、アンテナ素子10の特性の変化量の時間波形を監視することで、ジェスチャ入力の検出も可能となる。たとえば
図1(b)の電子機器100において、入力領域104上をユーザの指が第1の方向にスライドした場合、RSSIは単調増加、あるいは単調増加するであろう。したがってRSSIの波形にもとづいて、スライド入力やフリック入力を検出できる。
【0089】
(第2の変形例)
第1の実施例と第2の実施例に係る電子機器100を組み合わせてもよい。すなわち、送信側と受信側の両方でアンテナ素子10の特性を測定することにより、より検出精度を高めることができる。
【0090】
(第3の変形例)
図10(a)〜(d)は、電子機器100の変形例を示す図である。
図10(a)の電子機器100dは、携帯電話端末あるいはタブレットPCであり、ディスプレイパネル106と隣接した領域に、複数のボタンが配置されている。複数のボタンは、(i)ホーム画面、ホームページへのアクセスする際に押下すべきホームボタンB1、(ii)前の画面やメニューに遷移し、あるいは直前の処理を取り消す際に押下すべきバックボタンB2、(iii)特定のメニュー画面を表示する際に押下すべきメニュー画面B3を含む。これらのボタンB1〜B3に対応する箇所がそれぞれ入力領域104a〜104cとなり、アンテナ素子10は、3つの領域104a〜104cを横切るように形成される。
【0091】
図10(b)の電子機器100eも、携帯電話端末あるいはタブレットPCであり、その筐体102のエッジ部分に入力領域104が設けられ、アンテナ素子10は、入力領域104とオーバーラップして形成されている。入力領域104aは、たとえば左手で筐体102を把持したときに親指が容易にアクセス可能な位置であり、入力領域104bは、人差し指が容易にアクセス可能な位置である。これらの入力領域104a、104bは、音量ボタンや電源ボタン、あるいはホームボタン、バックボタン、メニューボタン等に割り当てることができる。
【0092】
図10(c)の電子機器100fは、携帯型ゲーム端末である。ゲーム端末は、ディスプレイパネル106と隣接して、左親指で操作する方向キー(十字キー)110、右親指で操作する複数の操作ボタン(操作キー)B1〜B4、左人差し指あるいは中指で操作する操作キーB5、右人差し指あるいは中指で操作する操作キーB6などを備える。これらのキーのいずれか、あるいは複数を、機械式ボタンに代えて、アンテナ素子10を利用した入力装置で構成してもよい。
【0093】
図10(d)の電子機器100gは、据え置き型ゲーム端末の無線コントローラである。コントローラは、左親指で操作する方向キー(十字キー)110、右親指で操作する複数の操作ボタン(操作キー)B1〜B4、左人差し指あるいは中指で操作する操作キーB5、右人差し指あるいは中指で操作する操作キーB6、スタートボタンB7、セレクトボタンB8などを備える。これらのキーのいずれか、あるいは複数を、機械式ボタンに代えて、アンテナ素子10を利用した入力装置で構成してもよい。
【0094】
図10(e)の電子機器100hは、ノート型コンピュータである。ディスプレイパネル106が設けられた上側の筐体(上蓋)のサイドエッジには、入力領域104a、104bが設けられる。コンピュータ上で実行されるOS(Operating System)あるいはユーティリティソフトウェア、アプリケーションソフトウェアには、入力領域104a、104bを利用した入力操作が定義されている。たとえば、入力領域104a上で指をスライドさせる動作は、スクロールに割り当てることができる。また入力領域104a、104bを利用して、ユーザ認証を行うことも可能である。またユーザが、任意の入力操作を、入力領域104a、104bそれぞれに割り当て可能としてもよい。
【0095】
図11(a)〜(d)は、電子機器100の別の変形例を示す図である。
図11(a)の電子機器は、たとえば携帯型ゲーム機器100iである。携帯型ゲーム機器100iの筐体102には、ストラップ110を巻き付けるためのストラップ取り付け部112a、112bが設けられる。入力領域104a、104bはそれぞれ、ストラップ取り付け部112a、112bの曲面に沿って形成される。入力領域104a、104bは、電源ボタンやスクロールボタンなどに利用することができる。
【0096】
図11(b)の電子機器は、ワイヤレスヘッドホン100jである。ワイヤレスヘッドホン100jは、左右それぞれの耳を覆う筐体
102a、
102bを備える。筐体102の内部には、図示しない無線部やオーディオ用アンプが内蔵される。入力領域104は、筐体102の曲面に沿って形成される。入力領域104は、電源ボタン、ボリウムボタン、ミュートボタンなどに利用することができる。
【0097】
図11(c)の電子機器は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)100kである。筐体102の内部には、図示しない無線部、ディスプレイ装置、画像処理ICなどが内蔵される。入力領域104は、筐体102の曲面に沿って形成される。入力領域104は、電源ボタン、ボリウムボタン、ミュートボタン、視度調節用ボタン、画質調節用ボタンなどに利用することができる。
【0098】
図11(d)の電子機器は、デジタルスチルカメラ100lである。筐体102には、グリップ120が設けられる。たとえば入力領域104は、グリップ120に沿って形成される。一般的なデジタルスチルカメラ100lには、露出やシャッタスピード、絞りなどを調節し、あるいはメニュー画面を操作するためのダイヤルが設けられる。たとえば入力領域104には、このダイヤルの機能の一部を割り当てることができる。
【0099】
図11(a)〜(d)に示すように、アンテナ素子10は3次元で任意の形状を形成できるため、筐体102の曲面に沿ってボタンを配置することが容易となり、電子機器100のデザイン上、あるいは機能上の設計自由度を格段に高めることができる。
【0100】
そのほか、実施の形態に係る入力装置200は、さまざまな小型機器、ウェアラブルデバイスなどに実装することが可能である。
【0101】
(第4の変形例)
実施の形態に係るアンテナ素子10を利用した入力装置は、物理キーと異なり、ユーザが押下を確認しにくいという特性を有する。そこで電子機器100は、ユーザ入力を検出すると、ビープ音や振動によりそれをユーザに通知してもよいし、ディスプレイパネル106上に、ユーザの操作入力やボタンの機能に対応して定められたアイコンを表示してもよい。またアンテナ素子10を文字入力に利用する場合、ユーザが入力した文字をディスプレイパネル106に表示してもよい。
【0102】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。