(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193053
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】LED照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20170828BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20170828BHJP
【FI】
F21S2/00 435
F21S2/00 433
F21Y115:10
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-172792(P2013-172792)
(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公開番号】特開2015-41553(P2015-41553A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】593070631
【氏名又は名称】有限会社シマテック
(74)【代理人】
【識別番号】100102336
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 匡男
【審査官】
竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−066032(JP,A)
【文献】
特開2006−091821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射方向の表面に中央部分を除いて放射状および同心円状に複数の細い溝が設けられた透明な円板であり、
前記溝の断面はほぼ角の丸い長方形であり、かつ前記溝の内部表面には非常に細かい凹凸が形成されており、
中央部分が切除されて開口部が形成されている
導光板と、
前記導光板の光の照射方向とは反対側の表面に配置され、前記中央部分を除いて表面を覆う光反射手段と、
前記導光板の側面の周囲から導光板内へ光を照射する複数のLED光源手段と
を備えたことを特徴とするLED照明装置。
【請求項2】
更に、前記導光板の光の照射方向の表面に中央部分を除いて光拡散手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載のLED照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)照明装置に関するものであり、特に、製品検査等に好適なLED照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラによって製品の画像を取り込んで、製品の傷や印刷された文字等を識別する場合に、照明光の照射角度によって傷や文字と背景とのコントラストが大きく変化することが知られている。そして、製品の表面の材質や仕上げの方法などによって、例えば傷や文字と背景とのコントラストが最大となる最適な照射角度は異なる。そこで、製品検査等のために、例えばLEDを使用し、広い角度に照明光を照射することができる照明装置が提案されている。
【0003】
下記の特許文献1には、本発明者が先に出願したLED照明装置が記載されている。このLED照明装置は全体がドーナツ状であり、中心軸に垂直な一方の面およびこの一方の面と続く内面下部が開放されている基台、基台の内部に装着され、基台の中心軸方向に光を照射する複数のLED素子が装着されたリング状の印刷配線基板、基台の開放面に嵌合して基台の中心軸と平行に移動可能であり、複数のLED素子と基台の中心軸の間に配置され、LED素子側の断面が円弧状である略ドーナツ状のレンズとを備える。レンズを移動させることにより、光の照射角度の広い範囲をカバーし、かつレンズの集光機能により明るいという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−286716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のLED照明装置においては、明るい光の照射角度の範囲が狭いので、特定の方向(角度)から照明をしたい場合には都合が良いが、あらゆる方向から同時に照明を当てることができず、特に同軸落射照明に近い光の成分が少ないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決し、簡単な構造で光の照射角度の広い範囲をカバーすることができるLED照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のLED照明装置は、少なくとも一方の表面に中央部分を除いて放射状に複数の細い溝が設けられた透明な円板である導光板と、前記導光板の光の照射方向とは反対側の表面に配置され、前記中央部分を除いて表面を覆う光反射手段と、前記導光板の周囲から導光板内へ光を照射する光源手段とを備えたことを主要な特徴とする。
【0008】
また、前記したLED照明装置において、更に、前記導光板の少なくとも一方の表面に前記中央部分を除いて同心円状に設けられた複数の細い溝を備えた点にも特徴がある。
【0009】
また、本発明のLED照明装置は、少なくとも一方の表面に中央部分を除いて直交する辺と平行な複数の細い溝が設けられた透明な長方形の板である導光板と、前記導光板の光の照射方向とは反対側の表面に配置され、前記中央部分を除いて表面を覆う光反射手段と、前記導光板の周囲から導光板内へ光を照射する光源手段とを備えたことを主要な特徴とする。
【0010】
また、前記したLED照明装置において、更に、前記導光板の光の照射方向の表面に中央部分を除いて光拡散手段を設けた点にも特徴がある。また、前記したLED照明装置において、前記導光板の中央部分が切除されて開口部が形成されている点にも特徴がある。また、前記したLED照明装置において、前記導光板の中央部分の溝の無い領域の個数および形状が被照明物の撮影が必要な領域の形状に対応している点にも特徴がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明のLED照明装置は上記したような特徴によって、以下のような効果がある。
(1)従来の照明装置より光の照射角度の広い範囲を同時に照明可能であり、同軸落射照明に近い角度の光成分をより多く含む照明ができる。
(2)中央部にも導光板が存在する場合には、上部の反射シートにおいて反射した光が中央部の導光板下面において屈折して下方向へ照射されると共に、導光板下面の細かい凹凸によっても乱反射して下方向へ照射される。従って、溝がない中央部からも下面へ照射される光成分が存在し、同軸落射照明に近い角度の光成分を含む照明ができる。
【0012】
(3)導光板の中央部に達した光は中央部を通過して反対側の溝のある領域まで到達し、溝の表面で乱反射して下方向へも照射される。従って、従来よりも照明の効率が向上する。
(4)構造が簡単で安価に製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本発明のLED照明装置の実施例1の構成を示す平面図および断面図である。
【
図2】
図2は本発明のLED照明装置の使用例2の構成を示す平面図および断面図である。
【
図3】
図3は本発明のLED照明装置の使用例3の構成を示す平面図および断面図である。
【
図4】
図4は本発明のLED照明装置の使用例4の構成を示す平面図および断面図である。
【
図5】
図5は本発明のLED照明装置の使用例5の構成を示す平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下実施例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明のLED照明装置の実施例1の構成を示す平面図およびA−A部分の断面図である。本発明のLED照明装置10は、枠11、導光板12、複数のLED13を備えた印刷配線基板14からなる。
【0016】
枠11は、断面がコ字状のドーナツ(リング)形状であり、中心方向を向いた凹部の内部に複数の表面実装型LED13を備えた印刷配線基板14が配置されている。また、凹部には導光板12がはめ込まれて固着されており、複数のLED13からLED照明装置10の中心方向に放射された光は導光板12の側面から導光板12の内部に入射する。
【0017】
枠11は放熱効果を得るため例えばアルミニウム等の金属により一体に形成されている。枠11は、例えば外面にネジを切った孔を設けることにより図示しない支持装置にネジで固定される。
【0018】
表面実装型LED13用の回路が形成されているフレキシブル印刷配線基板14は、絶縁性の接着剤等によって枠11の内側(内面)に固着されている。光源手段であるLED13の色は白色を始め、所望の任意の色でもよいし、3原色の赤、青、緑が交互に配置されていてもよい。
【0019】
導光板12は枠11の内側に固着された円板状の透明な樹脂製の板である。導光板12の一方の表面(
図1においては照明方向の表面、下面)あるいは両方の表面には、中央部分20を除いて半径方向に放射状に配置された多数の細い溝15が設けられている。また、導光板12の照明方向とは反対側(
図1の断面図の上側)の表面には中央部分20を除いて光を反射する反射シート16が固着されている。中央部分の形状は円形の他、長方形でもよく、更に照明対象装置の形状に合わせた任意の形状であってもよい。
【0020】
本発明の照明装置10はリード線17によって図示しない定電流電源回路に接続されており、定電流電源回路は所定の電流値でLED13を複数個直列接続した直列回路を駆動してLED13が発光する。本発明の照明装置10は、
図1に示すように被照明物19の上部に配置され、様々な方向から被照明物19に光を照射する。そして例えば照明装置10の中央部の溝のない部分20を通して反対(上)側から図示しないカメラによって被照明物19の静止画を撮影する。
【0021】
実施例1において、光拡散手段を設けてもよい。光拡散手段としては例えば導光板12の表面あるいは裏面のどちらか一方、あるいは双方に中央部分を除いてサンドブラスト加工等を施し、表面で光が乱反射するようにする。あるいは導光板12の表面あるいは裏面のどちらか一方、あるいは双方に中央部分20を除いて光拡散シートを貼り付ける。光拡散手段を設けることにより、照度むらが減少する。
【0022】
半径方向に放射状に配置された多数の細い溝15は例えば周知のレーザー加工機によって形成される。溝15の断面はほぼ角の丸い長方形であり、溝15の内部表面には非常に細かい凹凸が形成されている。従って、LED13から照射された光は溝15に当たって乱反射するが、溝15が半径方向に放射状に形成されているので、溝15の表面への光の入射角度が浅く(小さく)なり、この結果、照明装置の中心方向へ反射する光成分が多くなる一方、周辺方向(外側)へはほとんど反射しない。従って、本発明の照明装置においては従来よりも中心部近傍へ到達する光量が増し、かつ中心部に近いほど単位面積当たりの溝の占める面積が増加するので中心部近傍から下方へ放出される光量が増加する。
【0023】
また、本発明の照明装置においては溝のない中央部にも導光板が存在するので、上部の反射シートにおいて反射した光が中央部の導光板下面において屈折して下方向へ照射されると共に、中央部の導光板下面に到達した光は導光板下面の微細な凹凸によっても乱反射して下方向へ照射される。従って、溝がない中央部からも下方向へ照射される光成分が存在し、同軸落射照明に近い角度の光成分を含む照明ができる。
【0024】
なお、図示しないカメラの焦点は被照明物19に合っているので、導光板下面の微細な凹凸はカメラには写らない。従って、サンドブラストなどによって画質が劣化しない程度に導光板の下面に微細な凹凸を施してもよい。このようにすれば同軸落射照明に近い角度の光成分がより増加する。
【0025】
更に導光板12の中央部に達した光は中央部を通過して反対側の溝15のある領域まで到達し、溝15の表面で乱反射して下方向へも照射される。従って、従来よりも照明の効率が向上する。
【0026】
導光板12の溝15は周知のレーザー加工機によって容易に製造可能であるので、照明装置を安価に製造可能であり、また、照明の目的に応じて溝のパターンや深さ、幅、溝を形成する領域を容易に変更可能である。
【実施例2】
【0027】
図2は、本発明のLED照明装置の実施例2の構成を示す平面図およびA−A部分の断面図である。実施例2は実施例1の構造に加えて、導光板12の両方の表面に、中央部分20を除いて同心円状に多数の溝18が形成されている。溝18の間隔は等間隔でもよいし、中心に近いほど間隔を狭くしてもよい。中央部分の形状は円形の他、長方形でもよく、更に照明対象装置の形状に合わせた任意の形状であってもよい。実施例2の構成においては、実施例1よりも照度のむらがより減少する。
【0028】
図2の実施例2においては半径方向の放射状の多数の細い溝15も導光板12の両面に設けられている例を開示したが、半径方向の溝を設ける面を下面(照射面)、上面、両面のいずれかとし、同心円状の溝を設ける面を下面、上面、両面のいずれかとしてもよいので、実施例2としては全部で9種類の形態が考えられる。
【実施例3】
【0029】
図3は、本発明のLED照明装置の実施例3の構成を示す平面図およびA−A部分の断面図である。実施例3は、実施例1の構成において導光板12の中央部分21を切除し開口とした例である。なお、実施例3の特徴は実施例2および後述する実施例4、5にも適用可能である。このような構造とすることにより、導光板12による反射や屈折がなくなり、より鮮明な画像が撮影できる。
【実施例4】
【0030】
図4は、本発明のLED照明装置の実施例4の構成を示す平面図およびA−A部分の断面図である。実施例4は、実施例2の1つの形態(下面にのみ半径方向および同心円状の溝を設ける形態)に被照明物19の撮影が必要な領域の形状に合わせて4つの溝の無い領域(正方形)25を設けた例である。なお、実施例4の特徴は実施例1、2(全ての形態)、3および後述する実施例5にも適用可能である。
【0031】
実施例4においては、導光板12の中央部分の溝の無い領域の個数および形状は被照明物の撮影が必要な領域の形状に対応して任意に決定可能である。例えば被照明物19の中心部分は撮影する必要がない場合には例えば
図4に示すように導光板の中心点近傍に溝15を設けることにより、中心点近傍から光を照射することができるので、従来よりも照射むらが減少し、より均一な照明が可能となる。
【実施例5】
【0032】
図5は、本発明のLED照明装置の実施例5の構成を示す平面図およびA−A部分の断面図である。実施例5は、導光板12の形状を長方形(板状の直方体)とし、長方形の直交する2辺とそれぞれ平行であり、互いに直交する溝15および溝18を設けた例である。LED13は各辺の外側に直線状に配置され、導光板12の側面から内部に光を照射する。中央の長方形の領域20を除いて横方向の溝15および縦方向の溝18が等間隔で設けられている。
【0033】
LED13の光軸と溝(15あるいは18)の方向が平行であるので、実施例1と同様に溝の表面での反射光は照明装置の中心方向へより多く反射され、中央部分20の近傍から下方へ照射される光の量が増加する。
図5においては溝15、18は両面に設けられているが、いずれか一方の面のみであってもよいし、横溝15を下面のみに、縦溝18を上面のみに設けてもよい。
【0034】
以上、実施例を説明したが、本発明には以下のような変形例も考えられる。実施例としては導光板は1枚である例を開示したが、2枚以上の導光板を重ねて配置してもよい。この場合には最上部の導光板以外の下方の導光板の反射板は除去する。2枚以上の導光板を重ねて配置することによって光量が増加すると共に照射角度をより広範囲にすることができ、照度むらも減少する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のLED照明装置は製品検査時等における照明に適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
10…LED照明装置
11…枠
12…導光板
13…LED
14…印刷配線基板
15、18…溝
17…リード線
19…被照明物