(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記本体は、前記第1の支持機構により回転可能に支持される前記本体の前記第1の回転軸線を中心とする回転駆動を行う第1のアクチュエータと、前記第2の支持機構により回転可能に支持される前記ヘッドの前記第2の回転軸線を中心とする回転駆動を行う第2のアクチュエータと、を収容することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の移動体追尾装置。
本体と、前記本体を水平な第1の回転軸線を中心として回転可能に支持する第1の支持機構と、追尾対象である移動体から所定の情報を取得するための情報取得手段を備えるヘッドと、前記本体に設けられ、前記本体に対して前記第1の回転軸線と直交する直交方向もしくは該直交方向と平行な方向に延びる第2の回転軸線を中心として回転可能なように前記ヘッドを支持する第2の支持機構と、を備える移動体追尾装置による移動体追尾方法であって、前記移動体追尾装置は、前記第1の回転軸線が東西方向と平行となるように配置されており、
前記ヘッドの回転方向と追尾対象である移動体の移動方向とが一致する角度となるように、前記第1の回転軸線を中心として前記本体を回転させ、
前記第2の回転軸線を中心として前記ヘッドを回転させつつ、前記ヘッドに備わる前記情報取得手段により前記移動体の前記情報を取得することを特徴とする移動体追尾方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、赤道付近の陸地では、太陽の軌道が天頂付近を通過する場合がある(
図22〜
図28を参照)。したがって、上記従来の構成を有する移動体追尾装置9を赤道付近の陸地に設置し、移動体としての太陽を追尾しようとする場合、以下のような二通りの問題が生じ得る。
【0007】
まず、第1の問題点について説明する。
図22〜
図28は、従来の構成を有する移動体追尾装置9を赤道付近の陸地に設置した場合における太陽の追尾状況の一例を示す図である。
【0008】
一般に、
図21に示すような構成を有する従来の移動体追尾装置9では、天頂よりも北側の空を通過中の太陽の追尾を行なう際には本体正面が北側を向き、天頂よりも南側の空を通過中の太陽の追尾を行なう際には本体正面が南側を向く。
【0009】
したがって、例えば太陽が天頂付近を通過する際には、太陽が天頂付近を通過後には移動体追尾装置の本体正面は、北側か南側のいずれかに向くことになるが、このような姿勢制御はいわゆる「特異点問題」を引き起こす。
【0010】
上記特異点問題が発生すると、移動体追尾装置は、太陽が天頂付近にある際に本体正面を北側および南側のいずれに向ければよいか判断できず停止してしまう(
図25および
図29を参照)。このような場合、移動体追尾装置は、演算結果に基づいて、追尾対象が天頂付近を通過した後に、天頂よりも南側の空に移動してゆく追尾対象を捕捉するために、急激な姿勢変更を行なわなければならない(
図26〜
図28を参照)。
【0011】
続いて、第2の問題点について説明する。一般に、従来の移動体追尾装置を所望の設置場所に設置する場合、移動体追尾装置の機構に予め対応付けられている座標系(東西南北等の方位や傾斜)と設置時の装置の実際の姿勢とは一致していることが望ましい。例えば、
図21に示す従来の移動体追尾装置9は、本体910を回転させるための垂直軸B1を有しており、移動体追尾装置9を設置する際には、この垂直軸B1が実際に垂直な状態で設置されることが望ましい。
【0012】
しかしながら、実際に移動体追尾装置を設置する際には、設置場所の地面の形状変化や移動、装置自体の製造誤差などの要因から、常に高精度な設置姿勢を保つことが難しい場合がある。移動体追尾装置にて演算により推測される現在の太陽の位置が例えば天頂よりも南側の空だと推測された場合でも、設置誤差によって装置自体が傾斜していると、移動体追尾装置自体の機械的な座標系上では天頂よりも北側の空に位置しているように見えることがあり得る。このような場合、移動体追尾装置9は、演算結果に基づいて、追尾対象を追尾するために天頂よりも南側の空に装置本体910を向けて追尾動作を始めたにも拘わらず、実際には装置の座標系から見た天頂よりも北側の空にある太陽を追尾するために大幅な姿勢変更を行なわなければならない。しかし、設置環境によっては、高精度な設置を作業者に要求することが困難な場合もあり、ある程度の設置誤差や経時的な設置姿勢等の変動は許容できることが望ましい。
【0013】
このように、上記のような問題に遭遇すると、従来の移動体追尾装置9は、垂直軸B1を中心とする急激な方向転換を行なわなければならない(
図25〜
図28を参照)。このような急激な姿勢変更を行なっている間は、移動体である太陽の追尾は不可能であり、これは追尾対象の連続的な追尾が要求される場合に特に問題となる。
【0014】
さらに、上述のような急激な姿勢変更を行なうためには、移動体追尾装置本体を垂直軸B1を中心として急速に回転させるための大きなトルクを発生できるモータが必要となる。このような大きなトルクを出力できるモータの採用は、装置の大型化および高コスト化の原因となるため避けたい。
【0015】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、追尾対象である移動体の移動軌跡に拘わらず、連続的な追尾動作を可能とするとともに、装置全体としての低コスト化に寄与することのできる移動体追尾技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、追尾対象である移動体を追尾する移動体追尾装置であって、
本体と、前記本体を水平な第1の回転軸線を中心として回転可能に支持する第1の支持機構と、追尾対象である移動体から所定の情報を取得するための情報取得手段を備えるヘッドと、前記本体に設けられ、前記本体に対して前記第1の回転軸線と直交する直交方向もしくは該直交方向と平行な方向に延びる第2の回転軸線を中心として回転可能なように前記ヘッドを支持する第2の支持機構と、を備える移動体追尾装置に関する。
【0017】
また、本発明の一態様は、本体と、前記本体を水平な第1の回転軸線を中心として回転可能に支持する第1の支持機構と、追尾対象である移動体から所定の情報を取得するための情報取得手段を備えるヘッドと、前記本体に設けられ、前記本体に対して前記第1の回転軸線と直交する直交方向もしくは該直交方向と平行な方向に延びる第2の回転軸線を中心として回転可能なように前記ヘッドを支持する第2の支持機構と、を備える移動体追尾装置による移動体追尾方法であって、前記移動体追尾装置は、前記第1の回転軸線が東西方向と平行となるように前記移動体追尾装置を配置されており、前記ヘッドの回転方向と追尾対象である移動体の回転方向とが一致する角度となるように、前記第1の回転軸線を中心軸として前記本体を回転させ、前記第2の回転軸線を中心軸として前記ヘッドを回転させつつ、前記ヘッドに備わる前記情報取得手段による前記移動体からの情報の取得を行わせる移動体追尾方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
以上に詳述したように、本発明によれば、追尾対象である移動体の移動軌跡に拘わらず、連続的な追尾動作を可能とするとともに、装置全体としての低コスト化に寄与することのできる移動体追尾技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1の全体構成を示す概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1の正面を斜め上方から見た図である。
【
図3】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1の正面図である。
【
図4】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1の側面図である。
【
図5】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1の平面図である。
【
図6】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1に備わる各種機能を例示する機能ブロック図である。
【
図7】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1における処理の流れの一例を示すフローチャート図である。
【
図8】太陽の方位および高度の計算方法について説明するための図である。
【
図9】太陽の方位および高度の計算方法について説明するための図である。
【
図10】太陽の方位および高度の計算方法について説明するための図である。
【
図11】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図12】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図13】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図14】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図15】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図16】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図17】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図18】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図19】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図20】本発明の実施の形態による移動体追尾装置1による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図21】従来の移動体追尾装置1の全体構成を示す概略斜視図である。
【
図22】従来の移動体追尾装置による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図23】従来の移動体追尾装置による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図24】従来の移動体追尾装置による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図25】従来の移動体追尾装置による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図26】従来の移動体追尾装置による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図27】従来の移動体追尾装置による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図28】従来の移動体追尾装置による太陽追尾動作について説明するための図である。
【
図29】従来の移動体追尾装置による太陽追尾動作について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0021】
本実施の形態による移動体追尾装置1は、例えば
図1に示すように、本体110と、第1の支持機構130と、ヘッド120と、第2の支持機構140と、モータM1と、モータM2と、台座190と、制御部900と、GPS信号受信部112と、ケーブル800Pと、ケーブル800Fと、を備えている。なお、説明の便宜上、ケーブル800Pおよびケーブル800Fは、
図1以外の図面上では図示せず省略している。
【0022】
本体110は、直方体形状の筐体111を備え、この筐体111内に制御回路等の各種電気部品、アクチュエータ、ギア等の駆動機構などを収容している。
図1〜
図5に示すように、筐体111は、天板111b、底板111f、側面板111a、111cおよび111eと、側面板111cに形成された開口部に着脱可能に装着される背面カバー111dを備えている。
【0023】
第1の支持機構130は、本体110を、水平な第1の回転軸線A1を中心として回転可能に支持する。ここでは、台座190上に立設される一対の板状部材132によって、ベアリング等を備える回転支持機構131を介して本体110を支持する構成を例示しているが、これに限られるものではなく、結果として本体110を第1の回転軸線A1を中心として回転可能に支持することができれば他の支持機構を採用してもよい。
【0024】
また、ヘッド120は、追尾対象である移動体としての太陽を撮像するための撮像手段122と、太陽からの光を受光するための受光部121としてのファイバコリメータと、を備える。これら撮像手段122および受光部121が、情報取得手段に相当する。なお、ここでは撮像手段122として、スポット状の光の位置を検出するPSD(Position Sensitive Detector)を採用する場合を例に挙げるが、必ずしもこれに限られるものではなくCCD等の他の撮像装置を採用することが可能である。撮像手段122は、ヘッド120の筐体に形成されているピンホール122hを介して進入する光を受光する。受光部121にて受光された光は、ヘッド120の天板123に形成された不図示の孔部に挿通される光ファイバーケーブルFに導かれる。光ファイバーケーブルFは、本体110およびケーブル800F内を通って受光部121と所定の分析機器との間を光伝送可能に繋いでいる。また、ヘッド120と本体110の間には、本体110を介して電源ケーブル800Pからの電力をヘッド120内の電気素子に給電するためのケーブルPが設けられている。
【0025】
第2の支持機構140は、本体110の前面側の側面板111a上に設けられ、本体110に対して第1の回転軸線A1と直交する直交方向もしくは該直交方向と平行な方向(側面板111aに対する法線方向)に延びる第2の回転軸線A2を中心として回転可能なようにヘッド120を支持する。
【0026】
第2の支持機構140は、ベアリング等の回転支持機構を備え、第2の回転軸線A2が本体110において第1の回転軸線A1よりもGPS信号受信部112に近い位置に位置するようにヘッド120を回転自在に支持する(
図4を参照)。これにより、第2の回転軸線A2は、移動体追尾装置1の通常使用時において、第1の回転軸線A1よりも高い高さ位置に位置することになる。
【0027】
このような構成とすることにより、本体110を第1の回転軸線A1を中心として回転させる場合に、ヘッド120を本体110に対して常に上方(天板111b寄りの位置)に位置させることができる。すなわち、本構成によれば、太陽のように上方に位置する移動体を追尾する場合に、第1の支持機構130によって視界を遮られることなく広い視野で追尾対象の撮像を行うことができる。また、第2の回転軸線A2を第1の回転軸線A1とは異なる高さ位置に配置することにより、本体110内に設置されるモータM1とモータM2を高さ方向において異なる位置に配置することが可能となり、移動体追尾装置1全体としての小型化にも寄与することができる。
【0028】
また、第2の支持機構140は、通常使用時の設置された状態の移動体追尾装置1を見たときに、ヘッド120が本体110の南側を向く側面(実際の使用時に、本体110の下側に位置する頻度が高い側面)に配置されるようにヘッド120を支持する。
【0029】
本移動体追尾装置の追尾対象が例えば太陽のような天体である場合、移動体追尾装置は屋外に設置される場合が多い。本構成によれば、ヘッド120を、通常使用時には下方に位置する南側の側面上に配置することにより、屋外のような過酷な環境下においても、ヘッドの少なくとも一部の上方には本体110が位置するため、雨、雹、粉塵等がヘッド120に直接かかりにくく、ヘッド120に備わる撮像手段等の汚れ、故障、破損等を抑制することができる。
【0030】
GPS信号受信部112は、移動体追尾装置1全体における上部側に配置される。具体的に、ここではGPS信号受信部112は、天板111bの中央付近に設けられている。
【0031】
このように、直方体形状の本体の上部にGPS信号を受信するためのGPS信号受信部112を配置することにより、GPS(Global Positioning System)衛星からの信号を移動体追尾装置1自体の構成部品によって遮られることなく安定的に受信することができる。
【0032】
本体110は、第1の支持機構130により回転可能に支持される本体の第1の回転軸線A1を中心とする回転駆動を行う第1のアクチュエータM1と、第2の支持機構140により回転可能に支持されるヘッド120の第2の回転軸線A2を中心とする回転駆動を行う第2のアクチュエータM2と、を収容している。
【0033】
このように、本体110およびヘッド120の回転駆動を行うためのアクチュエータM1およびM2を本体110内に収容することにより、これらアクチュエータを風雨や粉塵等から保護することができる。また、特にヘッド120の回転駆動を行うためのアクチュエータM2をヘッド120内ではなく本体110内に収容したことにより、ヘッド120の小型化および軽量化を図ることができる。
【0034】
なお、アクチュエータM1およびアクチュエータM2による本体110およびヘッド120の回転駆動は、本体110およびヘッド120を対応するアクチュエータの駆動軸に直結させることで回転駆動力を直接伝達してもよいし、ギアトレインやベルト等の動力伝達機構を介して動力伝達する構成を採用してもよい。
【0035】
ケーブル800Pは、例えば、移動体追尾装置1を駆動するための電力を供給する電線を収容しており、ケーブル800Fは、受光部121にて受光される光を移動体追尾装置1外に配置される所定の分光解析装置へと導く光ファイバーF等を収容している。本実施の形態では、一例として、ケーブル800Pは本体110の一方の側面111eに形成された孔部を通って外部から装置への電力供給を行ない、ケーブル800Fは本体110の他方の側面111eに形成された孔部を通って、受光部121にて受光された光の装置外への転送を行なう。
【0036】
制御部900は、CPU901、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)902、MEMORY903、記憶装置904等を備えている。
【0037】
図6は、移動体追尾装置1について説明するための機能ブロック図である。
【0038】
座標データ取得部701は、GPS信号受信部112にて受信されるGPS信号に基づいて、移動体追尾装置1がどのような経度および緯度に設置されているかを把握する。
【0039】
日時データ取得部702は、移動体追尾装置1内に搭載可能な時計や、GPS信号受信部112にて受信される信号や、通信ケーブル800等を介して移動体追尾装置1に送信される時刻を示す信号に基づいて、現在の日付および時刻を特定する。
【0040】
太陽位置演算部703は、移動体追尾装置1が設置されている場所の経度および緯度と、現在の日付および時刻と、に基づいて、移動体追尾装置1から見た太陽の方位および高度を推測する。
【0041】
縦方向追尾制御部704は、第1の回転軸線A1を中心軸として本体110を回転させることにより、ヘッド120の回転方向と追尾対象である太陽の回転方向(軌道)とが一致する角度となるように本体を回転させる。
【0042】
横方向追尾制御部705は、第2の回転軸線A2を中心軸としてヘッド120を回転させて撮像手段による撮像方向(方位)を制御しつつ、ヘッド120に備わる撮像手段122による太陽の撮像を行わせる。
【0043】
補正処理部706は、追尾動作を行う際に、GPSの信号に基づいて移動体追尾装置1の設置位置に関する情報を補正することにより、追尾対象である太陽の方位と高度を正確に再計算する。
【0044】
本実施の形態による移動体追尾装置1において、CPU901は、移動体追尾装置1における各種処理を行う役割を有しており、またMEMORY903、記憶装置904等に格納されているプログラムを実行することにより種々の機能(
図6にて示す各機能ブロックの機能を含む)を実現する役割も有している。なお、CPU901は、同等の演算処理を実行可能なMPU(Micro Processing Unit)により代替することも可能であることは言うまでもない。また、記憶装置904についても同様に、例えばフラッシュメモリ等の記憶装置により代替可能である。
【0045】
MEMORY903は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、VRAM(Video RAM)、フラッシュメモリ等から構成されることができ、移動体追尾装置1において利用される種々の情報やプログラムを格納する役割を有している。
【0046】
図7は、移動体追尾装置1における処理(移動体追尾方法)の流れについて説明するためのフローチャートである。
【0047】
まず、前提として、移動体追尾装置1は、第1の回転軸線A1が東西方向と概ね平行となり、且つ第1の回転軸線A1および第2の回転軸線A2の双方と直交する線(
図5における紙面に対する法線)が概ね垂直となるように設置されるものとする。
【0048】
GPS信号受信部112は、GPSから送信される信号を受信する。制御部900は、GPS信号受信部112にて受信される信号に基づいて、移動体追尾装置1がどのような経度および緯度に設置されているかを把握する(座標データ取得ステップ)(Act101)。
【0049】
制御部900は、移動体追尾装置1内に搭載可能な時計や、GPS信号受信部112にて受信される信号や、通信ケーブル800等を介して移動体追尾装置1に送信される時刻を示す信号などに基づいて、現在の日付および時刻(GPSデータ取得時刻)を特定する(日時データ取得ステップ)(Act102)。
【0050】
続いて、制御部900は、移動体追尾装置1が設置されている場所の経度および緯度と、上述のようにして特定される現在の日付および時刻と、に基づいて、移動体追尾装置1から見た太陽の方位および高度を算出する(太陽位置演算ステップ)(Act103)。以下、
図8〜
図10を用いて太陽の方位および高度の計算方法について説明する。
【0051】
具体的には、制御部900は、太陽位置演算ステップにおいて、座標データ取得ステップにて取得される移動体追尾装置1の設置位置の経度および緯度と、当該経度および緯度のデータ取得時の時刻に基づいて、当該移動体追尾装置1の設置場所から見たときに、どの方位および高度に太陽が位置するかを計算する。
【0052】
制御部900は、一例として、「平成23年 海上保安庁 コンピューター用天体位置計算式」および国立天文台の「太陽の高度、方位角および影の位置の概略値の求め方」等の公知の演算手法に基づき、太陽の位置(方位角AZ[rad]と高度角EL[rad])を算出する。もちろん、制御部900にて採用可能な演算アルゴリズムは上記事例に限られるものではなく、結果として太陽の高度と方位角を算出できれば他の計算手法を採用してもよい。
【0053】
地球から見た場合の、天体の高度および方位は、赤道座標系の座標(赤経、赤緯)から地球の自転を表す時角から算出できる。まず、赤経ra[rad]および赤緯δ[rad]を上記海上保安庁方式の天体位置計算式により求める。海上保安庁方式の天体位置計算式では、当該演算式に用いる所定のパラメータが海上保安庁から毎年発表される。したがって、例えば5年後等の未来の日時の天体位置を演算するための上記パラメータが提供されていない。そこで、本実施の形態では、海上保安庁方式の天体位置計算式を用いて未来の天体位置の演算を可能とするために、JPL(Jet Propulsion Laboratory)Ephemeridesに基づき、上記所定のパラメータを事前に求めている。
【0054】
続いて、グレゴリオ暦からユリウス日jdを算出する。
jd=[(1461×(y+4800+((m-14)/12)))/4]+[367×(m-2-12×((m-14)/12)))/12]-[3×((y+4900+((m-14)/12))/100)/4]+d-3275-0.5+(hour/24.0) ・・・(1)
【0055】
次に、修正ユリウス日nを算出する。
n = jd-2451545.0 ・・・(2)
【0056】
続いて、グリニッジ平均恒星時gmst [h]を算出する。
gmst = 6.6974243242 + 0.0657098283 × n + hour ・・・(3)
【0057】
次に、地方平均恒星時lmst [rad]を算出する。Longは、経度(度)である。
lmst = (gmst×15+Long)×(π/180) ・・・(4)
【0058】
続いて、地方平均恒星時lmstと赤経raから時角ω[rad]を算出する。
ω = lmst - ra ・・・(5)
【0059】
最後に、方位AZ(rad) 、高度EL(rad) を算出する。ここで、途中計算として時角ω、赤緯δと緯度Φから天頂角θ
zを計算する。
θ
z = cos
-1(cosΦcosωcosδ+ sinδsinΦ) ・・・(6)
Parallax = ((EarthMeanRadius(6371.01km))/ (AstronomicalUnit(149597890km)))×sin
-1θ
z ・・・(7)
θ
z = θ
z + Parallax ・・・(8)
【0060】
上記より、方位AZ(rad)および高度EL(rad)は、下記式により求められる。
AZ = tan
-1(-sinω/(tanδcosΦ- sinΦcosω)) ・・・(9)
EL = (π/2) - θ
z ・・・(10)
次に、第1の回転軸線A1を中心軸として本体110を回転させる角度SL(スラント)と第2の回転軸線A2を中心軸としてヘッド120を回転させる角度RT(ローテーション)とを、上記方位AZ(rad)および高度EL(rad)に基づいて算出する。なお、ここでの方位AZ(rad)および高度EL(rad)に基づく角度SLおよび角度RTの算出は、公知の座標変換演算によって実現可能である。
【0061】
次に、制御部900は、第1の回転軸線A1を中心軸として本体110を回転させることにより、算出した第1の回転軸を回転中心とする回転角度(角度SL(rad))となるように本体を回転させる(縦方向追尾ステップ)(Act104)。
【0062】
その後、制御部900は、第2の回転軸線A2を中心軸としてヘッド120を回転させて撮像手段による撮像方向(角度RT(rad))を制御しつつ、ヘッド120に備わる撮像手段122による太陽の撮像を行わせる(横方向追尾ステップ)(Act105)。
【0063】
なお、上述の縦方向追尾ステップおよび横方向追尾ステップを経て、撮像手段122によって追尾対象である太陽を撮像した際に、太陽が撮像手段としてのPSD122による撮像領域の中央に位置していない場合には、制御部900は、撮像手段122(PSD)における検出結果に基づいて、結果的に太陽が撮像手段122による撮像領域の中央となるように、第1の回転軸線A1および第2の回転軸線A2を中心軸として本体110およびヘッド120を回転させる。
【0064】
もちろん、制御部900による本体110およびヘッド120の回転角度の制御は、必ずしも縦方向(第1の回転軸)の追尾の後に横方向(第2の回転軸)の順に行なう必要はなく、例えば横方向(第2の回転軸)の追尾の後に縦方向(第1の回転軸)を制御してもよいし、縦方向(第1の回転軸)および横方向(第2の回転軸)の双方の追尾動作を同時に行わせてもよい。すなわち、結果として撮像手段122によって追尾対象である太陽を撮像可能な角度となるように本体110およびヘッド120の角度制御を行うことができればよい。
【0065】
制御部900は、1秒ごとに太陽位置を計算し追尾させるように本体110およびヘッド120を駆動制御する。追尾方法としては、上述の太陽位置演算ステップによる太陽位置計算結果とPSD122による検知結果の双方に基づき、太陽位置計算追尾を行った後、PSD122による検知結果に基づく姿勢補正制御を行うことにより、計算結果と実測値とのズレを補正する。
【0066】
ここで、制御部900による計算結果と実測値とのズレの補正方法について説明する。
【0067】
1日を通じた太陽位置を記憶装置904に毎時記録し、翌日の観測開始時に、記録されている前日の毎時分の太陽位置のデータに基づいて架台傾斜を計算する。5点以上の観測ができた場合に傾斜計算を行う。架台傾斜の計算結果は、EEPROM等の記憶装置904に保存する。
【0068】
ここでは、観測データからα、βの傾斜角を計算する(
図9を参照)。
【0069】
座標(x,y,z)、(a,b,c)は、原点を中心とした同一の単位球面上の座標と考えるものとする。
図10に示す数式の幾何学的意味は、座標系を右手系で考え、(a,b,c)の座標をx軸において右ねじの回転を与え、その後、y軸に関して右ねじの回転を与えた座標を示している。
【0070】
太陽方位・高度のずれからの傾きを計算することは、(x,y,z)、(a,b,c)を既知の変数として、ω
x、ω
yについて解くことに相当する。
【0071】
傾き後の方向座標(x,y,z)、傾き前の方向(a,b,c)を入力として、回転ω
x、ω
yを求める。計算方法は、上記の式をcosω
x、cosω
yに関しての2 つの2 次方程式を解くことに帰着させて、cosω
x、cosω
yを解く。1 つの2 次方程式は重解を持たないとすると、4 種類の解に絞れ、その中から、最も解に近いものを選択するという方式をとった。その方式のメリットとして、Newton 法のような反復計算を行わないため計算時間が、入力値に依存せず一定というメリットがある。また、解を求めるのと同時に計算結果を自己評価できる。
【0072】
なお、ここでは、解への影響が極めて少ないという観点から、二次の微小項は省略している。これにより、CPU901における演算負荷を大幅に低減することができる。
【0073】
傾きα、βとの対応については、傾き後の方向を(a,b,c)、傾き前の方向座標を(x,y,z)にとったものに相当する。その時の、α、βとω
x、ω
yの関係式を、
図9に示している。
【0074】
図11〜
図20は、赤道付近の陸地に設置された移動体追尾装置1によって太陽を追尾する場合の動作の一例を示す図である。なお、
図11〜
図15それぞれにおける移動体追尾装置1を側面から見た様子を
図16〜
図20に示している。
【0075】
太陽が位置a(
図11)から位置e(
図15)まで移動するまでの間、移動体追尾装置1は、ヘッド120を回転中心軸A2を中心として回転させるだけで、東側から西側へと移動してゆく太陽を追尾することができる。
【0076】
ところで、移動体追尾装置1が泥炭地のような地滑りが生じ易い土壌に設置される場合、地滑りの影響によって移動体追尾装置1の位置(経度、緯度)が変わってしまうことがある。このような場合、あるタイミングでGPSの信号と日時に基づいて推測される高度と方位に撮像手段122による撮像方向を向けても、その後の地すべり等によって移動体追尾装置1の向き、姿勢、位置等が変化してしまうと、撮像手段122による撮像範囲内に太陽が入らない場合がある。
【0077】
このような場合でも、追尾動作を開始する際にGPSの信号に基づいて移動体追尾装置1の設置位置に関する情報を補正することにより、追尾対象である太陽の方位と高度を正確に再計算することができ、撮像手段122による撮像範囲内に太陽を収めることが可能となる(補正ステップ)。制御部900は、上述のようにして再計算される太陽の方位と高度に基づいて本体110およびヘッド120を回転させる。
【0078】
なお、ここでの補正ステップによる補正処理は、毎日、毎週、毎月といった所定の期間毎に自動的に実行されるようにしてもよいし、ユーザが任意に補正処理の実行を指示できるようにしてもよい。ユーザが任意に実行指示できる場合、例えば地震の後など大きな位置ずれが生じている可能性が高いときに適宜補正処理を行なわせることができ、追尾対象の追尾精度の向上に寄与することができる。
【0079】
また、上述の補正ステップによる補正処理を行なうことで、例えば、移動体追尾装置1の設置場所の土壌の状況や作業環境が影響して、移動体追尾装置1を正確な設置角度や向きで設置できていない場合でも、GPS信号等の情報に基づいて正確に太陽を追尾することができる。
【0080】
上述の移動体追尾装置1での処理における各動作は、メモリ802に格納されている移動体追尾プログラムをCPU901に実行させることにより実現されるものである。
【0081】
なお、上述の各実施の形態では、追尾対象が太陽である場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、月等の他の天体、人工衛星、航空機、雲など、上空を移動するもの等を追尾対象とすることができる。
【0082】
また、上空を移動する追尾対象だけでなく、例えば本発明による移動体追尾装置を逆さにぶら下げる様に設置することにより、設置された移動体追尾装置よりも下方で移動する移動体を追尾することも可能であることは言うまでもない。
【0083】
さらに、上述の各実施の形態では、本発明による移動体追尾装置が、固定的に設置されている場合を例示したが、これに限られるものではなく、例えば車両、船舶、航空機、人工衛星などに搭載することも可能である。上述した補正ステップと同様の手順を踏むことにより、GPS信号に基づいて、時々刻々と変化する移動体追尾装置自体の経度および緯度をリアルタイムに把握し、その位置情報に基づいて追尾対象の推測位置を更新してゆくことにより、例えば船舶に設置された移動体追尾装置による太陽の追尾動作等を実現することもできる。
【0084】
更に、本実施の形態による移動体追尾装置を構成するコンピュータにおいて上述した各動作を実行させるプログラムを、移動体追尾プログラムとして提供することができる。本実施の形態では、発明を実施する機能を実現するための当該プログラムが、装置内部に設けられた記憶領域に予め記録されている場合を例示したが、これに限らず同様のプログラムをネットワークから装置にダウンロードしても良いし、同様のプログラムをコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶させたものを装置にインストールしてもよい。記録媒体としては、プログラムを記憶でき、かつコンピュータが読み取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であっても良い。具体的に、記録媒体としては、例えば、ROMやRAM等のコンピュータに内部実装される内部記憶装置、CD−ROMやフレキシブルディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカード等の可搬型記憶媒体、コンピュータプログラムを保持するデータベース、或いは、他のコンピュータ並びにそのデータベースや、回線上の伝送媒体などが挙げられる。またこのように予めインストールやダウンロードにより得る機能は装置内部のOS(オペレーティング・システム)等と共働してその機能を実現させるものであってもよい。
【0085】
なお、プログラムは、その一部または全部が、動的に生成される実行モジュールであってもよい。
【0086】
また、上述の各実施の形態にてプログラムをCPUやMPUに実行させることにより実現される各種処理は、その少なくとも一部を、ASICにて回路的に実行させることも可能であることは言うまでもない。
【0087】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。