(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193064
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】乗用型田植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
A01C11/02 350H
A01C11/02 311U
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-184752(P2013-184752)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-50956(P2015-50956A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秦 啓二
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−170818(JP,A)
【文献】
特開2011−155947(JP,A)
【文献】
実開昭57−062516(JP,U)
【文献】
特開2009−247298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の後部に苗載台を備える植付装置を昇降自在に連結すると共に、機体の前部寄りに予備苗を収容した苗箱を載置する予備苗載台を備え、前記予備苗載台に載置した苗箱から予備苗をスクレーパによって掬い取り、前記苗載台に苗補給する乗用型田植機において、
前記予備苗載台は、機体から立設したフレームと、フレームの上下複数段に固設したステーと、ステーに装着したホルダを備え、
前記ホルダを、その苗箱載置面の周囲に設けた外壁で苗箱の落下を防止するように構成し、
滑り止めストッパをその滑り止め作用をなす先端側の作用部を苗箱の略全幅に亘って設け、該滑り止めストッパを苗箱、又は苗に作用する作用状態と、非作用状態とに切替自在に装着すると共に、
前記作用状態では、前記作用部で前記ホルダの前壁上で苗箱の前縁部の側壁を前側から受け止めて、苗箱が前記ホルダの外壁を乗り越えて落下することを防止する滑り止め作用状態と、
予備苗をスクレーパによって掬い取って空となった苗箱の落下が防止されるように、前記作用部による苗箱の受け止め箇所を複数に重ねた苗箱上面に変更した空箱押さえ状態と、
前記ホルダ上にロール状に巻いた予備苗を前記作用部で直接受け止めるべく受け止め高さを変更したろール苗保持状態と、
に変更可能にするべく前記ステーに回動可能に取り付けたことを特徴とする乗用型田植機。
【請求項2】
前記滑り止めストッパは、ステーの先端部に着脱自在に装着し、同じくステーの先端側に嵌合して装着するホルダの端面を受け止めて、ホルダのステーからの抜け止めを行うように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の乗用型田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の前部寄りに予備苗載台を設ける乗用型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機においては、機体の前部寄りの側部に予備苗(マット苗)を収容した苗箱を載置する予備苗載台を設けることが一般的に知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような予備苗載台を設ける乗用型田植機では、植付け作業中に苗載台の苗が少なくなった場合に予備苗載台に載置した苗箱からスクレーパ(苗すくい板)を用いて予備苗を掬い取って苗載台に苗補給することができるため、植付け作業の効率を高めることができるだけでなく、機体の前部寄りに予備苗載台を設けることにより畦から予備苗載台への予備苗供給作業が容易になる。
【0003】
前記予備苗載台は、通常、苗箱を載置する樹脂製のホルダを備え、このホルダの前端部、後端部、或いは左右側端部に苗箱の載置面より立ち上がる壁を一体的に成型することにより、苗箱の予備苗載台からのずり落ちを防止するようにしている。また、歩行型田植機においては、予備苗の位置ずれや浮き上がりを防止しながら、機体後方側から予備苗が入った苗箱を予備苗載台に供給したり苗箱を取り出したりするために、予備苗載台の苗載置面の前後及び両横側に苗箱の位置ずれを抑制する滑り止めストッパを設けると共に、苗載置面の前側に苗箱の浮き上がりを抑制をする浮き止めストッパを設けることが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−247298号公報
【特許文献2】特開2006−81552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、乗用型田植機においては、前述のとおり機体の前部寄りに予備苗載台を設け、畦から直接、又は機体の前部に移動した作業者によって予備苗を収容した苗箱を機体前方側から予備苗載台のホルダに供給している。しかし、ホルダに苗箱を載置する際にホルダの特に前端部に設ける滑り止め用の壁を高くすると苗箱を高く持ち上げなければならないと共に、苗箱の底面が壁に引っ掛かり易く、円滑な予備苗の供給作業を妨げる。
【0006】
また、特許文献2に記載されているように苗箱の浮き上がりを抑制する浮き止めストッパをホルダの前方側に設ける場合は、苗箱をストッパを越えた後方側から前方側に差し込んで供給しなければならないので、予備苗の供給作業を前方側から行うことが困難となり、乗用型田植機にあっては実質的に採用することができない。さらに、苗箱から予備苗をスクレーパを用いて掬い上げる場合、浮き止めストッパが邪魔になって予備苗を掬い上げることができないため、ホルダから一旦苗箱を持ち上げた後に予備苗を取り出すことになって、苗載台への苗補給時間にロスを生ずる。
【0007】
そして、特許文献1に記載されている乗用型田植機において、苗箱から予備苗をスクレーパを用いて掬い上げる場合には、苗箱を載置したホルダの機体後方側から予備苗の後端寄りを持ち上げて予備苗の根部と苗箱底面との間にスクレーパを差し込み、そのままスクレーパを前方側に押し込むことによって予備苗を根切りしながら苗箱から引き剥がすことになる。しかし、根張りが良い苗だとスクレーパの押し込む力を強くしなければならず、この押し込み力によって苗箱がホルダの前壁を越えて予備苗ごとホルダから落下してしまう場合があり、この場合、落下した苗箱の回収に時間を浪費したり、予備苗が損傷する等の問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題に鑑み、予備苗の予備苗載台への供給作業を従来と何ら変わることなく円滑に行うことができるようにすると共に、根張りの良い予備苗であっても予備苗載台のホルダに載置した苗箱からスクレーパを用いて確実に掬い取ることができる乗用型田植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため第1に、機体の後部に苗載台を備える植付装置を昇降自在に連結すると共に、機体の前部寄りに予備苗を収容した苗箱を載置する予備苗載台を備え、前記予備苗載台に載置した苗箱から予備苗をスクレーパによって掬い取り、前記苗載台に苗補給する乗用型田植機において、前記予備苗載台は、機体から立設したフレームと、フレームの上下複数段に固設したステーと、ステーに装着したホルダを備え、前記ホルダ
を、その苗箱載置面の周囲に設けた外壁で苗箱の落下を防止するように構成し、滑り止めストッパを、その滑り止め作用をなす先端側の作用部を苗箱の略全幅に亘って設け、該滑り止めストッパを苗箱、又は苗に作用する作用状態と、非作用状態とに切替自在に装着すると共に、前記作業状態では、前記作用部で前記ホルダの前壁上で苗箱の前縁部の側壁を前側から受け止めて、苗箱が前記ホルダの外壁を乗り越えて落下することを防止する滑り止め作用状態と、予備苗をスクレーパによって掬い取って空となった苗箱の落下が防止されるように、前記作用部による苗箱の受け止め箇所を複数に重ねた苗箱上面に変更した空箱押さえ状態と、前記ホルダ上にロール状に巻いた予備苗を前記作用部で直接受け止めるべく受け止め高さを変更したロール苗保持状態とに変更可能にするべく、前記ステーに回動可能に取り付けたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、第2に、前記滑り止めストッパは、
ステーの先端部に着脱自在に装着し、同じくステーの先端側に嵌合して装着するホルダの端面を受け止めて、ホルダのステーからの抜け止めを行うように構成してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の乗用型田植機によれば、予備苗載台のホルダに載置した苗箱を
、作用状態と非作用状態に切替え自在に装着した滑り止めストッパによって滑り止めして、予備苗載台のホルダからの落下を防止することができる。従って、根張りの良い予備苗であっても予備苗載台のホルダに載置した苗箱からスクレーパを用いて確実に掬い取ることができ、ホルダから落下した苗箱の回収に時間を浪費したり、無駄に予備苗を損傷させて使い物にならなくするといった不具合を解消することができる。
【0013】
なお
、滑り止めストッパを作用状態から非作用状態に切替えることにより、予備苗載台は通常の予備苗載台と何ら変わりなく使用することができる。従って、滑り止めストッパに何ら邪魔されることなく機体の前方側から労力少なく、予備苗を予備苗載台に円滑に供給することができる。さらに、この場合は、特に根張りの良い苗でない限りホルダに形成した既存の滑り止め壁によって苗箱のホルダからの落下を十分に防止することができるから、前述の苗箱の回収、或いは予備苗の損傷も発生することがない。
【0014】
また、前記滑り止めストッパを、苗箱から予備苗をスクレーパによって掬い上げる際に邪魔にならないように
ホルダの前壁上で苗箱の前縁部の側壁を前側から受け止めて、苗箱が前記ホルダの外壁を乗り越えて落下することを防止する滑り止め作用状態で機体前部寄りの苗箱の側縁部のみを受け止めるように構成すると、機体の前方側から予備苗を予備苗載台に通常より多少高く持ち上げるだけで供給することができる。しかも、予備苗載台のホルダに載置した苗箱からスクレーパを用いて予備苗を掬い上げる際に、従来の苗箱の浮き上がりを抑制するストッパを設けるもののように、予備苗中にストッパが分け入っているため、ストッパが予備苗の上方を塞いでしまい、これを直接、掬い上げることができず、予備苗の苗載台への補給作業に時間がかかるといった不具合もなく、円滑に苗載台への苗補給を行うことができる。
【0015】
さらに、予備苗載台に対する予備苗の載置形態の一つとして、予め苗箱から掬い取った予備苗をロール状に巻いて持ち易くすると共に、これを直接、予備苗載台のホルダに単体として、或いは複数並べて載置しておき、苗載台への苗補給時にはホルダから取り出した予備苗をスクレーパを用いず、そのまま供給する場合がある。しかし、予備苗載台のホルダの滑り止め壁は、苗箱の滑り止めを想定した高さしかないため、植付け作業中における機体のピッチング、或いは機体振動によって、そのままではホルダから予備苗が落下する虞がある。
【0016】
そこで、前記滑り止めストッパの受け止め高さを高く変更して、ロール状に巻いた予備苗を滑り止めストッパによって直接、受け止めるように構成すると、予備苗のホルダからの落下を防止することができる。なお、滑り止めストッパをホルダの前方寄りに設ける場合は、予備苗がストッパの作用しないホルダの後方側から落下することが想定されるが、ホルダに載置する予備苗の向きを予備苗の巻き方向に基づいて、例えば、滑り止めストッパが存在する前方側に予備苗の巻回が解ける向きに載置することによって、後方側からの落下を少なくす
ることができる。
【0017】
また、予備苗をスクレーパによって掬い取って苗載台に苗補給を行った場合、ホルダ上に残された空の苗箱は軽くなって、機体のピッチングや走行振動によってホルダから落下する虞がある。そのため、特許文献1では空箱の押さえ体を専用に設けているためコストアップを招いていた。そこで、本発明では、前記滑り止めストッパの苗箱の受け止め箇所を機体前部寄りの側縁部から上面に変更することによって、コストアップを抑制しながら滑り止めストッパを空箱の押さえ体に兼用することができる。
【0018】
そして、前記滑り止めストッパを、予備苗載台のステーの先端部に着脱自在に装着し、同じくステーの先端側に嵌合して装着するホルダの端面を滑り止めストッパによって受け止めさせると、滑り止めストッパを装着するための専用のブラケットが不要となり、ホルダのステーからの抜け止めを行うゴムキャップ等の止め具に代えて簡単に滑り止めストッパをステーに取り付けることができる。また、滑り止めストッパがホルダの抜け止め具となるので、別にホルダの抜け止めを行う必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】左側の予備苗載台の斜め前方側からみた斜視図である。
【
図4】(a)は左側の予備苗載台の滑り止めストッパの取付け状態を示す斜め前方側からみた斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【
図5】滑り止めストッパの使用状態を示す側面図であり、(a)は苗箱の落下を防止する状態、(b)はロール状に巻いた予備苗の落下を防止する状態、(c)は空箱の落下を防止する状態を示すものである。
【
図6】(a)は左側の予備苗載台の滑り止めストッパの別実施形態の取付け状態を示す斜め前方側からみた斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように乗用型田植機1は、前輪2と後輪3を備えた機体4の後部にリンク機構5を介して植付装置6を昇降自在に連結して構成している。前記機体4は、エンジンフレーム7、シャシフレーム8、トランスミッションケース9、フロントアクスルケース(不図示)、リヤアクスルケース10等を一体的に連結して構成され、機体4の前部に設けるエンジンフレーム7は、トランスミッションケース9の前部寄りに取り付けられて、図示しないエンジンを防振ゴムを介してマウントしている。
【0021】
また、エンジンフレーム7の前部にはバンパ11が取り付けられていると共に、エンジンを囲むように後上方に向けて左右のパイプフレーム(不図示)が延出されている。そして、パイプフレームの後端は、トランスミッションケース9に取り付けたトルクジェネレータ(パワーステアリング)から立ち上がるステアリングコラム(不図示)の中途に取り付けられ、このパイプフレームには、燃料タンクや計器盤を備えるパネルカバー12が取り付けられる。なお、エンジンや燃料タンクは、ボンネット13、パネルカバー12、及び後方側に設けるパネルリヤカバー14によって覆っていると共に、パネルカバー12の上方に基部をコラムカバー15によって覆ったステアリングハンドル16を設けている。
【0022】
さらに、エンジンフレーム7の後方に位置するシャシフレーム8には、トランスミッションケース9、フロントアクスルケース、リヤアクスルケース10、バッテリ(不図示)、及び運転席17等が取り付けられ、前記したエンジンの動力は、プーリ及びベルトによりトランスミッションケース9に取り付けられた図示しない静油圧式無段変速装置(HST)と油圧ポンプに伝達される。また、静油圧式無段変速装置により変速された動力は、トランスミッションケース9に内装した主クラッチ機構及び副変速機構を経て、フロントアクスルとリヤアクスル10に伝達され、最終的に前輪2と後輪3が駆動される。さらに、上記主クラッチ機構に伝達された動力はトランスミッションケース9に内装した株間変速機構にも分配され、株間変速機構から植付PTOシャフト(不図示)及びプロペラシャフト18等を介して植付装置6に伝達される。
【0023】
また、エンジンフレーム7及びシャシフレーム8上には、作業者が機体上を移動する際の床面となる複数のステップ19,20,21,22が取り付けられている。これらのステップは、機体4前端からパネルリヤカバー14の後端に亘ってエンジンの左右側方に設けられたフロントステップ19,19と、運転席17前方の床面を形成するフロアステップ20と、フロアステップ20の側方に配設された左右のサイドステップ21,21と、運転席17の左右側方に位置してフロアステップ20よりも一段高く形成されたリヤサイドステップ22,22と、から構成され、各ステップには適宜、ステップマット23が敷設されている。
【0024】
一方、植付装置6は5条植えとなっており、前高後低状に傾斜して複数のマット苗を載置する苗載台24、苗載台24の下端から1株分づつ苗を植付爪(ビーク)25により掻き取って植え付けるロータリ植付機構26、走行跡や旋回跡を整地しながら植え付け箇所を均すフロート27等を備えて構成される。より詳細には、前記エンジンからの動力はトランスミッションケース9を経て、植付PTOシャフト及びプロペラシャフト18等を介して植付装置6のドライブケース28に入り、苗載台24を左右往復スライド駆動すると共に、苗載台24の縦送りベルト29を回転駆動してマット苗を下方に間欠的に縦送りする。また、ドライブケース28からロータリ植付機構26を構成するプランタケース30を経て、ロータリケース31が回転駆動され、ロータリケース31に取り付けたプランタアーム32に装着した植付爪25が苗載台24の下端から1株分づつ苗を掻き取ると共に、掻き取った苗をフォーク33で押し出して苗を圃場に植え付けるものである。
【0025】
さらに、機体4の前部寄りの左右両側部には、予備苗A(マット苗)を収容した苗箱Bを片側6枚、左右合わせて12枚載置可能な予備苗載台34が設けられている。この予備苗載台34は、
図3及び
図4に示すように、下端部をバンパ11とシャシフレーム8に連結してエンジンの側方に立設する前パイプ35aと後パイプ35bとで構成する逆U字状のフレーム35と、後パイプ35bに溶接したピン35c,35c・・に止めボルト36と緩み止めナット37を用いて、そのボス38aを固定した上下複数段のステー38,38・・と、ステー38のU字状バー(丸棒)38b,38cに、その下面に設けたボス部39a,39a・・を嵌合させて前後に位置決めすると共に、U字状バー38b,38cの先端部に装着したゴムキャップ40等の止め具で抜け止めしたホルダ39とで構成され、ホルダ39は後パイプ35bの外側に4枚、内側に2枚装着される。
【0026】
また、前記ホルダ39は合成樹脂によって一体成型され、ホルダ39の苗箱Bを載せる載置面39bの周囲には、前外壁39cと後外壁39dと内側壁39eを立ち上がらせている。このうち前外壁39cと後外壁39dは、矩形状になした苗箱Bの脚部kの前端と側端、及び後端と側端とが交差するコーナー部を受け止め、また、内側壁39eは苗箱Bの脚部kの他側の側端を受け止め、全体として苗箱Bのホルダ39からの落下を防止する。なお、左右の予備苗載台34は、後パイプ35b,35bの上部に止めボルト41によって固定する横パイプ42を介して相互に連結されると共に、各予備苗載台34には、スクレーパ(苗すくい板)Sを収納しておくホルダ43が設けられている。因みにスクレーパSは、長手方向の一側に把持部hを備えた合成樹脂、又は鉄板で形成される矩形状の平板で構成され、苗箱Bから予備苗を掬い取って持ち運ぶために用いられるものである。
【0027】
次に、本発明に係る苗箱Bのホルダ39からの落下を防止する滑り止めストッパ44について説明する。前述のようにホルダ39は、通常、ステー38のU字状バー38b,38c先端部に装着するゴムキャップ40,40で抜け止めされる。しかし、滑り止めストッパ44を予備苗載台34に装着する際には、機体前部寄りに設けるゴムキャップ40を取り外して、滑り止めストッパ44をゴムキャップ40の換わりにU字状バー38bの先端部に装着する。より具体的には、滑り止めストッパ44は、丸棒又はパイプの基部側を折曲してL字状になした基部にボス44aを備え、このボス44aをU字状バー38bの先端部に挿入した後、止めボルト45を用いて固定する。また、ボス44aを取り付け固定することによってホルダ39の端面は、ボス44aにより受け止められてステー38から抜け止めされる。
【0028】
これにより、滑り止めストッパ44は、苗箱Bの滑り止め作用をなす先端側の作用部44bがホルダ39の前外壁39cの先端部上方から他側の内側壁39eの先端近くまで水平に延出して、苗箱Bの前部側の側縁部aを略全幅に亘って受け止めることになる(作用状態)。また、滑り止めストッパ44が要らない場合は、前述と逆の手順によって滑り止めストッパ44を取り外すことができる。或いは、滑り止めストッパ44を一旦、取り外した後、作用部44bがホルダ39の下面に臨むように付け替えることにより、滑り止めストッパ44をホルダ39の上面から退避させることができる(非作用状態:
図5(a)C姿勢参照)。
【0029】
そして、以上のように構成する本発明の実施形態において、植付け作業を開始する際、或いは苗補給する際には、苗箱BからスクレーパSで掬い取ったマット苗AをスクレーパSに載せたまま、作業者が機体4のステップ19,20,21,22上を移動して苗載台24に苗補給を行い、また、畦から直接、又は機体4の前部に移動した作業者によって予備苗Aを収容した苗箱Bを機体前方側から予備苗載台34のホルダ39に載置して植付け作業を開始、又は再開する。そして、植付け作業中に苗載台24の苗が少なくなると、作業を中断して予備苗Aを苗載台24に補給することになる。また、その場合は、予備苗載台34のホルダ39に載置した苗箱BにスクレーパSを差し込んで予備苗Aを掬い取り、同様にステップ上を移動して苗載台24に苗補給する。
【0030】
ところで、苗箱Bに床土を入れて育苗したマット苗Aは、床土中で根絡みして型崩れが生じ難くなり、その取扱いが容易になる利点があるが、苗箱Bの底面に設けた排水孔から根が張り出すため、スクレーパSでマット苗Aを掬い上げる際に根切りしなければならないという欠点もある。そして、根張りが良い苗の場合には、根切りするための力が相当必要となり、この根切り作業を予備苗載台34のホルダ39に苗箱Bを載置したままスクレーパSで行うと、苗箱Bがホルダ39の前外壁39cを越えて予備苗Aごとホルダ39から落下してしまう虞がある。そこで、このような場合には、滑り止めストッパ44を予備苗載台34に予め装着することになる。
【0031】
この場合、滑り止めストッパ44は、
図5(a)に示すように作用部44bが苗箱Bの前部側の側縁部a、特にその前面を受け止めるように固定し、これにより作用部44bはスクレーパSを介して機体前方側に強く押された苗箱Bを受け止めて、苗箱Bのホルダ39からの落下を防止することができる。また、作用部44bは苗箱Bに収容されたマット苗A上には臨んでいないので、根切りしたマット苗AをスクレーパSでそのまま上方に掬い上げて運搬することができ、予備苗Aの苗載台24への補給作業を円滑に行うことができる。
【0032】
しかも、滑り止めストッパ44は、丸棒又はパイプで形成した作用部44bがホルダ39の前外壁39cの先端部上方から他側の内側壁39eの先端近くまで水平に延出しているから、予備苗Aを収容した苗箱Bを機体前方側から予備苗載台34のホルダ39に載置する場合に、苗箱Bを作用部44bに載せて作用部44b上をスライドさせながらホルダ39に押し込むことにより、苗箱Bがホルダ39の前外壁39cに引っ掛かることもなく円滑に、また、労力少なく苗箱Bをホルダ39に迅速に載置することができる。なお、苗箱Bを滑り止めストッパ44に載せてスライドさせながらホルダ39に載置するためには、滑り止めストッパ44を設けないものより多少高く苗箱Bを持ち上げなければならないが、滑り止めストッパ44の作用部44bは、苗箱Bの側縁部aの高さ程度の直径しかないので、特に労力を余分に必要とするわけではなく、全体としてみた場合には、前述した利点が勝るものである。
【0033】
さらに、滑り止めストッパ44は、ステー38に止めボルト45を用いて固定しており、この固定角度を変更することによって作用部44bの高さを調節することができる。即ち、
図5(b)に示すように、予め苗箱Bから掬い取って葉側を内側に根側を外側にロール状に巻いた予備苗Aをホルダ39にそのまま載置する場合には、作用部44bの高さを高くして予備苗Aを直接、滑り止めストッパ44で受け止めるようにすると、予備苗Aのホルダ39からの落下を防止することができる。なお、その場合、滑り止めストッパ44が存在する前方側に予備苗Aの巻回が解ける向きに予備苗Aを載置することによって、ホルダ39の後方側からの予備苗Aの落下を少なくすることができる。
【0034】
また、
図5(c)に示すように、滑り止めストッパ44の固定角度を変更して、滑り止めストッパ44の苗箱Bの受け止め箇所を前部側の側縁部aの前面から苗箱Bの側縁部aの上面に変更することによって、滑り止めストッパ44を例えば、苗箱B(空箱)を1段乃至3段積層した際の押さえ体として機能させることができ、機体4のピッチングや走行振動によってホルダ39から落下する虞がある空箱Bの上下動を滑り止めストッパ44で抑制して、ホルダ39からの落下を防止することができる。
【0035】
次に、苗箱Bのホルダ39からの落下を防止する滑り止めストッパ44の別実施形態について説明する。
図6に示すように別実施形態の滑り止めストッパ44は、ステー38にその両端が止めボルト45を用いて固定される。即ち、滑り止めストッパ44は、丸棒又はパイプの両端がそれぞれL字状に折曲されて、それぞれの基部にボス44a,44aを備える。そして、一側のボス44aはこれまでと同様にU字状バー38bの先端部に挿入した後、止めボルト45を用いて固定するが、他側のボス44aはU字状バー38bの基部側に別途、設けたピン(不図示)に挿入した後、止めボルト45を用いて固定する。従って、別実施形態の滑り止めストッパ44は、ステー38に両端が固定されるため作用部44bが苗箱Bの押圧力によって折れ曲がることなく、確実に苗箱Bを受け止めることができる。
【0036】
なお、この場合、滑り止めストッパ44の両ボス44a,44aをU字状バー38bの先端と基部側のピンに共に挿入する必要があるから、U字状バー38bの基部側の形状を変更し、例えば滑り止めストッパ44の他側のボス44aをピンに深く挿入した状態で、一側のボス44aをU字状バー38bの先端に臨ませ、更に滑り止めストッパ44をピン側に戻して取り付けるようにする。また、何れの実施形態でも滑り止めストッパ44をステー38に着脱自在に取付け固定できるように構成したが、例えば、予備苗載台34のフレーム35、或いはホルダ39に滑り止めストッパ44を取り付けて、苗箱Bを受け止めることができるように変更することも適宜、行うことができるものであって、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
1 乗用型田植機
4 機体
6 植付装置
24 苗載台
34 予備苗載台
35 フレーム
38 ステー
39 ホルダ
44 滑り止めストッパ