(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、3層構造体を備える水離解性繊維シートであって、上記3層構造体の表層及び裏層が水分散性繊維を含む繊維層であり、上記3層構造体の中層が水溶性フィルムであり、JIS P 4501:2006に準拠して測定されるほぐれやすさが10秒以上600秒以下、水の保持時間が30秒以上であることを特徴とする水離解性繊維シートである。
【0015】
「水離解性繊維シート」とは、水に浸漬した際に離解性を示す繊維含有シートをいう。以下、当該水離解性繊維シートについて詳説する。
【0016】
<中層>
3層構造体中の中層は水溶性フィルムである。中層を水溶性フィルムとすることで、表層から浸透した水分を中層で一定期間保持し、裏層への水の浸透を抑制するため、当該水離解性繊維シートの強度が保持される。また、過剰の水分により水溶性を示すことで一定時間液体を保持した後は容易に水に離解することができる。
【0017】
水溶性フィルムとしては、例えば、
ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、ポリエチレンオキサイド(PEO)系フィルム、ポリビニルピロリドン(PVP)系フィルム、カルボキシメチルセルロース(CMC)系フィルム等の合成フィルム;
プルランフィルム、オブラート、ゼラチンフィルム、キチン・キトサン系フィルム、カゼインフィルム、アルギン酸ナトリウムフィルム等の天然フィルム等が挙げられる。
【0018】
これらの中では、より高い水溶性を示す合成フィルムが好ましく、PVA系フィルムがより好ましい。PVA系フィルムには冷水可溶タイプと温水可溶タイプとがあるが、5℃程度の冷水に可溶なPVA系フィルムが水への溶解性に優れるため特に好ましい。また、PVA系フィルムは熱接着性を有するため、表層及び裏層の繊維シートを熱ラミネート処理等により熱接着させることで本願発明の3層構造体を備える水離解性繊維シートをより容易に得ることができるため好ましい。
【0019】
上記中層の厚さとしては、10μm以上100μm以下が好ましく、30μm以上90μm以下がより好ましい。上記中層の厚さを上記範囲とすることで、当該水離解性繊維シートは水を保持する。上記中層の厚さが上記上限を超えると、水離解性が劣るおそれがある。上記中層の厚さが上記下限未満であると、水を保持する時間が短くなり、容器としての機能が損なわれるおそれがある。
【0020】
<表層及び裏層>
上記3層構造体の表層及び裏層が水分散性繊維を含む繊維層である。3層構造体は表層及び裏層を備えることで、水溶性フィルムに水分が付着して起こる当該水離解性繊維シートの強度低下を抑制することができる。
【0021】
通常、水溶性フィルムに水分が付着すると、水離解性繊維シートの強度が低下するが、水溶性フィルム(中層)を表層及び裏層で挟み込むことで、水分と接する表層が水分の浸透を抑え、水溶性フィルムに水分が付着し難くなる。さらに、表層から浸透した水分を水溶性フィルム(中層)がゲル状になることで一定期間保持し、裏層への水分の浸透を抑制することで裏層の強度低下を防止し、その結果水離解性繊維シートの強度が保持される。また、一定期間経過後、当該水離解性繊維シート全体を水に浸漬することで、裏層側からも水が浸透し、当該水離解性繊維シートは優れた水離解性を有することができる。
【0022】
上記3層構造体の表層及び裏層を形成する繊維シートに用いる水分散性繊維としては木材繊維が好ましい。木材繊維は水中での離解性に優れるため、水離解性繊維シートの水離解性をより向上させることができる。
【0023】
木材繊維としては、例えば、
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等の化学パルプ、
ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ、
茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ、
古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)等が挙げられる。これらは使用に際しては単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0024】
これらの中では、より強度に優れる化学パルプが好ましく、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)がより好ましい。
【0025】
水分散性繊維のろ水度(フリーネス)としては、通常600mL以上730mL以下であり、650mL以上710mL以下が好ましい。このように水分散性繊維のろ水度を上記範囲とすることで、当該水離解性繊維シートの水離解性がより高まる傾向がある。水分散性繊維のろ水度が上記上限を超えると、当該水離解性繊維シートの引張強度が低下し、液体保持性が低下するおそれがある。水分散性繊維のろ水度が上記下限未満であると、当該水離解性繊維シートの水離解性が低下するおそれがある。
【0026】
上記表層及び裏層それぞれの厚さとしては、50μm以上200μm以下が好ましく、60μm以上180μm以下がより好ましい。上記表層及び裏層の厚さを上記範囲とすることで、当該水離解性繊維シートは十分な強度を示す。上記表層及び裏層の厚さが上記上限を超えると、水離解性が劣るおそれがある。上記表層及び裏層の厚さが上記下限未満であると、強度が劣るおそれがある。
【0027】
また、表層及び裏層を形成する繊維シートは、内添サイズ剤を含有させることが好ましい。内添サイズ剤を含有させることで、後述する撥水剤及び表面サイズ剤を塗工する場合、撥水剤及び表面サイズ剤の浸透を抑制し、サイズ効果を容易に高めることができ好ましい。
【0028】
内添サイズ剤としては、例えばアルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系、ロジン系サイズ剤等が挙げられ、サイズ効果が高く、液体保持性がより向上するアルキルケテンダイマー系サイズ剤が好ましい。これらは使用に際しては単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0029】
当該水離解性繊維シートの表層及び裏層を形成する繊維シートには、内添サイズ剤を対パルプ固形分1トン当たりの固形分質量基準で、0.1kg/トン以上2kg/トン以下添加することが好ましく、0.2kg/トン以上1kg/トン以下添加することがより好ましい。内添サイズ剤の添加量が上記上限を超えると、所定のサイズ性を得られないおそれがあり、他方内添サイズ剤の添加量が上記下限未満であると、サイズ度が高くなりすぎ水離解性が低下するおそれや、抄紙系内での発泡による泡地合が発生するおそれがある。
【0030】
表層及び裏層を形成する繊維シートの少なくともいずれか一方の面に撥水剤及び表面サイズ剤を含む塗工液を塗工することが好ましい。このように表層及び裏層を形成する繊維シートの少なくともいずれか一方の面に撥水剤及び表面サイズ剤を含む塗工液を塗工することで、水との接触面の耐水性を向上させることができる。特に、表層及び裏層を形成する繊維シートの一方の面のみに撥水剤及び表面サイズ剤を含む塗工液を塗工し、塗工液を塗工した面が、表層の中層に接しない面(表面)及び裏層の中層に接する面になるように積層することが、より容易に水離解性及び液体保持性が共に優れた水離解性繊維シートが得られ好ましい。
【0031】
撥水剤としては、例えばパラフィン系ワックスエマルジョン、ポリエチレン系ワックスアマルジョン等のワックス系エマルジョン、フッ素系樹脂、シリコーン、アクリル系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、スチレンブタジエン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が挙げられ、より撥水性に優れるワックス系エマルジョンが好ましい。これらは使用に際しては単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0032】
表面サイズ剤としては、例えばスチレン系、オレフィン系、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、ロジン系サイズ剤等が挙げられ、高いサイズ性、中性である点から、アルキルケテンダイマー系サイズ剤が好ましい。これらは使用に際しては単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0033】
表面サイズ剤と撥水剤との配合比率は、固形分換算で、通常0.5質量部:100質量部以上10質量部:100質量部以下であり、1質量部:100質量部以上8質量部:100質量部以下が好ましい。上記配合比率を上記範囲とすることで、当該水離解性繊維シートに必要な適度な耐水性を得ることができ好ましい。配合比率が上記上限を超えると、当該水離解性繊維シートの水離解性が低下するおそれがある。配合比率が上記下限未満であると、液体保持性が劣るおそれがある。
【0034】
撥水剤と表面サイズ剤を含む塗工液の塗工量は固形分換算で、片面あたり通常0.05g/m
2以上10g/m
2以下であり、0.1g/m
2以上2g/m
2以下が好ましい。上記塗工量を上記範囲とすることで、当該水離解性繊維シートに必要な適度な耐水性を得ることができる傾向がある。塗工量が上記上限を超えると、当該水離解性繊維シートの水離解性が低下するおそれがある。塗工量が上記下限未満であると、液体保持性が劣るおそれがある。
【0035】
上記表層及び裏層それぞれの坪量としては、通常30g/m
2以上120g/m
2以下であり、35g/m
2以上110g/m
2以下が好ましい。このように表層及び裏層の坪量を上記範囲とすることで、当該水離解性繊維シートは液体保持性と十分な水解性を示す傾向がある。上記表層及び裏層の坪量が上記上限を超えると、水離解性が劣るおそれがある。上記表層及び裏層の坪量が上記下限未満であると、液体保持性が劣るおそれがある。
【0036】
JIS P 8135:1998に準拠して測定される上記表層及び裏層に用いる繊維シートの縦方向の湿潤引張強度としては、0.5kN/m以下が好ましく、0.15kN/m以上0.5kN/m以下がより好ましい。このように上記表層及び裏層に用いる繊維シートの湿潤引張強度を上記範囲とすることで、水離解性を保ちつつ、液体保持性を維持することができる。上記湿潤引張強度が上記上限を超えると、水離解性が劣るおそれがある。上記湿潤引張強度が上記下限未満であると、液体保持性が劣るおそれがある。
【0037】
3層構造体を備える水離解性繊維シートであって、上記3層構造体の表層及び裏層が水分散性繊維を含む繊維層であり、上記3層構造体の中層が水溶性フィルムであり、上記表層及び裏層の厚さが50μm以上200μm以下であり、上記中層の厚さが10μm以上100μm以下であることに加え、JIS P 8140:1998に準拠して測定される表層表面の吸水度が0.01g/m
2以上40g/m
2以下とすることにより、水離解性及び液体保持性に優れた水離解性繊維シートがより容易に得られ好ましい。
【0038】
当該水離解性繊維シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の製紙用薬品を表層及び裏層を形成する繊維シート中に任意に含むこともできる。製紙用薬品としては、例えばアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤、填料、消泡剤、染料、pH調整剤、スライムコントロール剤等が挙げられる。
【0039】
<水離解性繊維シートの製造方法>
当該水離解性繊維シートは、特に限定されず、例えば公知の製造方法に従って得ることができる。
【0040】
一例を挙げれば、当該水離解性繊維シートの製造方法は、
繊維成分として水分散性繊維を含む繊維シートを抄紙する工程(抄紙工程)と、
片面に撥水剤及び表面サイズ剤を含む塗工液を塗工して表層、裏層用繊維シートを作製する工程(塗工工程)と、
中層を水溶性フィルムとし、表層は撥水剤及び表面サイズ剤を含む塗工液を塗工した面の反対面を水溶性フィルムと接するように、裏層は撥水剤及び表面サイズ剤を含む塗工液を塗工した面を水溶性フィルムと接するように上記繊維シートを重ね合わせ、熱ラミネート処理する工程(熱ラミネート処理工程)とを備える。
【0041】
当該水離解性繊維シートは、上記製造方法で得られた上記表層表面を内面として容器を形成することで水離解性及び液体保持性が共に優れた水離解性繊維シートが得られ好ましい。
【0042】
(抄紙工程)
本工程では、繊維成分として水分散性繊維を含む繊維シートを抄紙する。また、上記水分散性繊維スラリーに内添サイズ剤を内添し、湿式抄紙することが好ましい。湿式抄紙方法としては、特に限定されず、例えば製紙の際に用いられる公知の方法等が挙げられる。また、湿式抄紙の際に使用する抄紙機としては、特に限定されず、例えば円網抄紙機(丸網抄紙機)、短網抄紙機、長網抄紙機、傾斜短網抄紙機、ツインワイヤー式抄紙機等が挙げられる。
【0043】
これらの中では、より均一に繊維を分散させることができる円網抄紙機が好ましい。
【0044】
抄紙の際に使用するドライヤーとしては、特に限定されず、例えばヤンキードライヤー、エアードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外線方式ドライヤー等が挙げられる。
【0045】
これらの中では、ヤンキードライヤーが好ましい。タッチロール等でヤンキードライヤー内の熱ロールに湿紙を密着させて乾燥を行うことで、熱ロールに密着させた面の平滑性を向上させることができる傾向があり、ヤンキー面に撥水剤及び表面サイズ剤からなる塗工液を塗工することで、容易にサイズ効果を高めることができ好ましい。
【0046】
(塗工工程)
本工程では、片面に撥水剤及び表面サイズ剤を含む塗工液を塗工して表層、裏層用繊維シートを作製する。より具体的には、得られた繊維シートの片面(ヤンキー面)に撥水剤及び表面サイズ剤を含む塗工液を塗工し、さらに乾燥して繊維シートを得る。撥水剤及び表面サイズ剤を含む塗工液を塗工する塗工装置としては、特に限定されず、例えばサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、エアナイフコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター等が用いられる。これらは、オフマシンコーターはもちろんのことオンマシンコーターでも用いることができる。
【0047】
また、上記繊維シートには、例えばスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー設備で平坦化処理を施すことも可能である。
【0048】
(熱ラミネート処理工程)
本工程では、中層を水溶性フィルムとし、表層は撥水剤及び表面サイズ剤を含む塗工液を塗工した面の反対面を水溶性フィルムと接するように、裏層は撥水剤及び表面サイズ剤を含む塗工液を塗工した面を水溶性フィルムと接するように上記繊維シートを重ね合わせ、熱ラミネート処理する。上記熱ラミネート処理により、熱接着性を有する上記中層の水溶性フィルムにより表層及び裏層の繊維シートを熱接着させることができ、また表層表面の吸水度の微調整もできる。このように表層、中層、裏層を重ね合わせ熱接着させることで、表層の表面が容器を形成した際に、容器として形成した際に内面(液体と直接接する面)とし、表層表面及び裏層の中層に接する面の吸水度を上記範囲とすることができ、より容易に水離解性及び液体保持性が共に優れた水離解性繊維シートとなり好ましい。
【0049】
熱ラミネート処理設備としては、特に限定されず、例えば金属ロールと金属ロールとを組み合わせたカレンダー装置、金属ロールと樹脂ロールとを組み合わせたカレンダー装置、金属ロールとコットンロールとを組み合わせたカレンダー装置等が挙げられる。
【0050】
熱ラミネート処理時のロール温度等の加熱温度は、特に限定されず、通常140℃以上180℃以下であり、150℃以上170℃以下が好ましい。熱ラミネート時の温度を上記範囲とすることで、当該水離解性繊維シートの表層、中層、裏層の十分な接着強度が得られる傾向がある。熱ラミネート時の温度が上記上限を超えると、中層の水溶性フィルムの溶融が進み、フィルム厚さが薄くなり、液体保持性が低下するおそれがある。一方、熱ラミネート時の温度が上記下限未満であると、当該水離解性繊維シートの表層、中層、裏層の十分な接着が得られないおそれがある。
【0051】
熱ラミネート時の線圧は、特に限定されず、通常20kg/cm以上150kg/cm以下であり、90kg/cm以上140kg/cm以下が好ましい。線圧を上記範囲とすることで、当該水離解性繊維シートの表層、中層、裏層の十分な接着強度が得られる傾向がある。線圧が上記上限を超えると、嵩高さが失われ液体保持性が低下するおそれがある。線圧が上記下限未満であると、当該水離解性繊維シートの表層、中層、裏層の十分な接着が得られないおそれがある。
【0052】
<水離解性繊維シート>
当該水離解性繊維シートは、上述のような3層構造体を備えるため、水離解性に優れる。具体的には、当該水離解性繊維シートのJIS P 4501:2006に準拠して測定されるほぐれやすさは、10秒以上600秒以下であり、40秒以上590秒以下が好ましい。このように上記ほぐれやすさを上記範囲とすることで、相反する特性である液体保持性と水離解性とを共に向上させることができる。上記ほぐれやすさが上記上限を超えると、水離解性に劣る。上記ほぐれやすさが上記下限未満であると、液体保持性に劣る。当該水離解性繊維シートのほぐれやすさは、例えば表層、裏層の厚さ、坪量や中層の厚さ、表層、裏層の吸水度等で調整することができる。
【0053】
また、当該水離解性繊維シートを容器とした場合、水の保持時間は、30秒以上であり、30秒以上300秒以下が好ましく、60秒以上300秒以下がより好ましい。水の保持時間を上記範囲とすることで、水の保持性が優れることを示す。そのため、当該水離解性繊維シートを袋状に折り加工することで、一定時間水分を保持することができる。従って、当該水離解性繊維シートは、これらの特性が求められる用途、特に採尿バッグ等の容器として好適に用いることができる。当該水離解性繊維シートの水の保持時間は、例えば表層、裏層の厚さ、坪量や中層の厚さ、表層、裏層の吸水度等で調整することができる。
【0054】
JIS P 8140:1998に準拠して測定される当該水離解性繊維シートの表層表面の吸水度としては、0.01g/m
2以上40g/m
2以下が好ましく、1g/m
2以上20g/m
2以下がより好ましい。このように上記表層表面の吸水度を上記範囲とすることで、当該水離解性繊維シートの十分な液体保持性を維持しつつ、水離解性の速度を向上させることができる。上記吸水度が上記上限を超えると、液体保持性が劣るおそれがある。上記吸水度が上記下限未満であると、水離解性が劣るおそれがある。当該水離解性繊維シートの表層表面の吸水度は、例えば表層表面に塗工する表面サイズ剤、撥水剤の種類や配合比、塗工量、内添サイズ剤の量、熱ラミネートの温度圧力等で調整することができる。なお、「表層表面」とは、容器として形成した際に内面(液体と直接接する面)となる側の表面をいう。
【実施例】
【0055】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において、測定は下記の方法により行った。
【0056】
<坪量(g/m
2)>
坪量(g/m
2)は、JIS P 8124:2011に記載の「紙及び板紙−坪量の測定方法」に準拠して測定した。
【0057】
<厚さ(μm)>
厚さ(μm)は、JIS P 8118:1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
【0058】
<吸水度(コッブ値)(g/m
2)>
吸水度(コッブ値)(g/m
2)は、JIS P 8140:1998「紙及び板紙−吸水度試験方法−コッブ法」に準拠して、接触時間10秒として、得られた水離解性繊維シートの表層の表側について測定した。また、表層用及び裏層用繊維シートの撥水剤及び表面サイズ剤を含む塗工液を塗工した面について測定した。
【0059】
<水の保持時間(秒)>
水の保持時間(秒)は、水離解性繊維シートを100mm角に断裁し、三角折りして水離解性繊維シートの表層表面が内面(液体と直接接する面)となるように容器を作り、温度23℃の10mLの蒸留水をいれ、容器から水滴が落ちるまでの時間を測定した。また、測定時に水滴が落ちるより先に紙やフィルムが離解した場合はその時間を測定した。
【0060】
<ほぐれやすさ(秒)>
ほぐれやすさ(秒)は、JIS P 4501:2006「トイレットペーパー」の4.5ほぐれやすさの試験に準拠して測定した。
【0061】
(実施例1)
JIS P 8121:1995「パルプ−ろ水度試験方法」に準拠したろ水度が680mLになるように叩解した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)100質量%の原料パルプスラリーを得た。この原料パルプスラリーに対し、内添サイズ剤(アルキルケテンダイマー系サイズ剤、星光PMC社の「1602」)を絶乾パルプ1トン当たり固形分で0.6kg/トン添加し、ヤンキードライヤーを有する丸網抄紙機で、坪量43.4g/m
2の繊維シートを抄造した。
さらに、得られた繊維シートの片面(ヤンキー面)にグラビアコーターで表面サイズ剤(アルキルケテンダイマー系サイズ剤、星光PMC社の「AD1602」)と、撥水剤(ワックス系エマルジョン、星光PMC社の「WR3932」)とを固形分比で5質量部:100質量部で含む塗工液を固形分換算での塗工量が1.6g/m
2となるように塗工し、坪量45g/m
2、厚さ90μm、ヤンキー面の吸水度8.0g/m
2の表層用及び裏層用の繊維シートを得た。中層を水溶性フィルム(PVA系フィルム、日本合成化学工業社の「ハイセロンC−200」、厚さ40μm)とし、表層は反ヤンキー面を水溶性フィルムと接するように、裏層はヤンキー面を水溶性フィルムと接するように重ね合わせ、熱ラミネート処理(ロール温度160℃、線圧100kg/cm)することで熱接着し、実施例1の水離解性繊維シートを得た。実施例1の水離解性繊維シートの表層表面の吸水度は3.5g/m
2、水の保持時間は120秒、ほぐれやすさは74秒であった。
【0062】
(実施例2〜10及び比較例1〜5)
表層、表層、裏層等を表1の通りとしたこと以外は、実施例1と同様にして評価を行った。なお、比較例2では水溶性フィルムを用いず、表層用繊維シートのみで離解性繊維シートを構成した。また、比較例5では水溶性フィルムと裏層繊維シートを熱ラミネート処理し水離解性繊維シートを作製した。水の保持時間は表層表面を内側になるように(液体と接するように)容器を作製し評価した。比較例5では、水溶性フィルム面を内側になるように(液体と接するように)容器を作製し評価した。水離解性繊維シートの物性については表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表2から、実施例のものは比較例のものに比べて水の保持時間及びほぐれやすさに優れることが分かる。