(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中間定着工程において、前記中間定着具の前記補修対象箇所の方向と反対側の端部と前記コンクリートとの間に無収縮モルタルが打設されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載のPC構造物の補修方法。
前記中間定着工程は、前記中間定着具として前記緊張材を覆う枠体が用いられるとともに、前記枠体の内部に膨張材が注入され、前記膨張材が膨張、硬化することで行われることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載のPC構造物の補修方法。
前記補修対象箇所において、前記緊張材により導入される前記プレストレスと異なる第2方向に導入されている他の方向のプレストレスを前記削除工程以後も維持するため、前記補修箇所に前記第2方向への張力を付与する張力付与工程をさらに有する請求項1乃至8の何れか1項記載のPC構造物の補修方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係るPC構造物の補修方法について詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るPC構造物の補修方法が適用されるPC箱桁1を示す上方斜視図である。PC箱桁1は、床版2の端部に張出し床版部21が形成されている。
【0025】
こうした床版2及び張出し床版部21の形成手順として、ポストテンション方式を例に説明する。ポストテンション方式とは、コンクリートの打設後にコンクリートにプレストレスの導入が行われる方式である。
【0026】
まず、型枠が設置されるとともに、PC箱桁1の伸長方向及び幅方向となる各方向に沿い、シース62(
図6参照)が張り巡らされる。
【0027】
次に、コンクリートが打設され、コンクリートが固まった後にシース62内に緊張材61(
図6参照)が通される。こうした緊張材61として、PC鋼棒やPC鋼線、PC鋼より線等が用いられる。
【0028】
そして、PC箱桁1の伸長方向及び幅方向の各端部で緊張材61を引っ張るとともにこの状態で緊張材61がPC箱桁1の各端部に所定の手段を用いて固定されることで、緊張材61に引張力が蓄えられ、この引張力によりコンクリートが圧縮されることでPC箱桁1が完成する。なお、以下の説明においては、緊張材61及びシース62を合わせてPC鋼材6と称する。
【0029】
本実施形態では、こうして完成したPC箱桁1の張出し床版部21について補修対象箇所である損傷箇所3が発生した場合が想定されている。そして、この損傷箇所3の古いコンクリートを除去した後、新たなコンクリートを打設する必要がある場合に、この損傷箇所3に付与されているプレストレスを維持しつつ、古いコンクリートの除去と新たなコンクリートの打設を行う方法について説明する。
【0030】
まず、損傷箇所3を含むコンクリートの除去範囲を決定するとともに、この範囲に含まれる横締めPC鋼材と主ケーブルの位置を、電磁波レーダや壁高欄の水切り部にはつりを行う等して把握することが行われる。
【0031】
次に、コンクリートの除去範囲の橋軸方向のプレストレスを維持するため、橋軸方向にいわゆる突っ張り棒の役割をするブラケット治具4を設置する。
図2は、PC箱桁1にブラケット治具を取り付けた様子を示す、(A)は下方斜視図、(B)は上方斜視図である。
【0032】
ブラケット治具4は、損傷箇所3を含むコンクリートの除去箇所を挟んで設けられた2つの固定手段としてのブラケット41、41と、ブラケット41、41に設けられた孔(不図示)を通じてこれらに掛け渡され固定される、棒鋼を加工し形成されたアンカーボルト42とにより構成されている。
【0033】
こうしたブラケット治具4は、
図2(A)に示す張出し床版部21の裏側又は
図2(B)に示す表側の少なくとも一方に設けられる。本実施形態においては、
図2(B)に示すように、張出し床版部21の表側にのみブラケット治具4を設けている。
【0034】
なお、本実施形態においてはこのブラケット治具4を用いるPC構造物の補修方法について説明しているが、本発明においてはこれに限らず、橋軸方向のプレストレスが存在しない、あるいはこのプレストレスを維持する必要の無い場合には、ブラケット治具4を省略することができる。すなわち、本発明においてはブラケット治具4は必須の構成ではない。
【0035】
次に、決定されたコンクリートの除去範囲内に含まれる、損傷箇所3の周辺部位のコンクリートのはつりが行われ、損傷箇所3を通るPC鋼材6が外部に露出される。
図3は、PC箱桁1のはつりによりPC鋼材6を露出させた状態を示す上方斜視図であり、
図4は、はつり部位5を示す拡大斜視図である。
【0036】
本実施形態においては、コンクリートのはつりはウォータージェットを用いて行われる。ウォータージェットを用いることで、コンクリート内部にあるPC鋼材6を損傷することなく、コンクリートのみを削ることができる。なお、本発明においてはこれに限らず、PC鋼材6を傷つけない方法であれば、いかなる手段を用いてはつりを行ってもよい。
【0037】
こうしてコンクリートのはつりを行うことで、はつり部位5に形成されるはつり穴51の内部においてPC鋼材6が露出した状態となる。
【0038】
次に、はつり穴51内に露出したPC鋼材6に、中間定着具7が取り付けられる。
図5は、露出したPC鋼材6に中間定着具7が取り付けられた様子を示す拡大斜視図であり、
図6は、PC鋼材6に取り付けられる中間定着具7を示す分解斜視図である。
【0039】
中間定着具7は、コンクリートの損傷箇所3の削除後においてもその他の既設部位のプレストレスを維持するために用いられる部材であり、上枠71及び下枠72と、これらを固定する固定用ボルト73と、上枠71と下枠72との間に挟まれるリング74とにより形成されている。
【0040】
上枠71と下枠72は同一の形状をした長板状の部材である。上枠71と下枠72には、それぞれ長手方向に対して垂直に広がる鍔部761、762が設けられているとともに、
図6に示す上枠71の下面と下枠72の上面において長手方向に沿い、断面半円状の長溝部711が設けられている。
【0041】
なお、上枠71と下枠72が固定された状態において、2つの長溝部711が合わさり形成される筒状の空間は、PC鋼材6の緊張材61を所定の間隔を空けて挿通可能なものとなる。
【0042】
また、この長溝部711の内周壁において、長溝部711に直行する方向には、内周溝部722が設けられている。なお、上枠71と下枠72が固定された状態において、2つの内周溝部722により形成される空間は、リング74を嵌合可能なものとなる。
【0043】
さらに、上枠71と下枠72には、それぞれ互いに対向する位置において
図6の上下方向に上枠71と下枠72を貫通するねじ穴731、732が設けられている。
【0044】
固定用ボルト73は、上枠71と下枠72とを互いに固定するための固定部材であり、ねじ穴731、732に螺合することでこれらの固定を行う。
【0045】
リング74は、上枠71の下面と下枠72の溝部が合わさったときにこれらの溝部により形成される内部空間を密閉する鋼製のシーリング用の部材であり、C字状の2つの断片により構成されている。
【0046】
こうして構成されている中間定着具7のPC鋼材6への取り付けについて説明する。
【0047】
中間定着具7のPC鋼材への取り付けの際には、まず、PC鋼材6のシース62が中間定着具7の長さ以上の範囲に亘り取り除かれ、当該範囲においてシース62の中にある緊張材61が外部に露出される。
【0048】
次に、この緊張材61が露出した部分に長溝部が嵌合するようにして、上枠71と下枠72とが緊張材61に取り付けられる。このとき、リング74が、上枠71と下枠72にそれぞれ設けられている内周溝部に嵌合される。
【0049】
次に、固定ボルト73が上枠71の下面と下枠72の貫通孔に挿入され、上枠71と下枠72との固定が行われる。
【0050】
そして、上枠71と下枠72との固定が行われた後、上枠71と下枠72との間に形成されている空間、すなわち、上枠71と下枠72の長溝部の内壁と緊張材61との間に形成されている空間に、所定の手段を用いて膨張材が充填される。
【0051】
この膨張材は、充填後に時間とともに膨張、硬化する性質を有するHEM(Highly Expansive Material)であり、このときの膨張圧により中間定着具7内部に挿通されている緊張材61と中間定着具7との固定を行うことで、中間定着具が緊張材61に付与されているプレストレスを受けることが可能となる。
【0052】
例えば、こうした膨張材の膨張圧が50MPa以上である場合には、緊張材61としてφ23のPC鋼棒を用いると、213kNの緊張力を付与した場合でも固定状態を保つことができる。
【0053】
なお、こうした膨張材による固定を効果的に行うためには、固定に供される緊張材61の露出部分の長さは、緊張材61の径の6倍以上である必要がある。
【0054】
このようにして中間定着具7のPC鋼材6への取り付けが行われた後、
図7に示すように、中間定着具7の鍔部761、762とはつり穴51の内壁との間に無収縮モルタル8が打設される。
図7は、中間定着具とはつり穴51の内壁との間に無収縮モルタル8が打設された様子を示す拡大斜視図である。
【0055】
この隙間に無収縮モルタル8が打設されることにより、中間定着具7の鍔部761、762とはつり穴51の内壁との間の不陸が効果的に整えられる。なお、中間定着具7の取り付け時には、無収縮モルタル8の打設を行いうるよう、中間定着具7の鍔部761、762とはつり部位5の内壁との間に30mm程度の隙間を空けるようにすることが好ましい。
【0056】
次に、
図8に示すように、中間定着具7から損傷箇所3を経てPC構造物1の端部に至るまで、中間定着具7が取り付けられた緊張材61に沿いコンクリートに切り込み9が入れられる。
図8は、PC箱桁1にはつり穴51から切り込み9を入れた状態を示す斜視図である。
【0057】
この作業ではまず、削除範囲の周囲の部分について、ウォータージェット等を用いてPC鋼材6を傷つけることのないように切り込みが行われる。
【0058】
そして、
図9に示すように、切り込みが行われた範囲内について、同様にウォータージェット等を用いてはつりが行われ、この範囲内にあるコンクリートが除去されると共にPC鋼材6が外部に露出される。
図9は、はつり部位を拡大しPC鋼材6を更に露出させた状態を示す拡大斜視図である。
図9に示すように、拡大されたはつり部位10において、PC鋼材6がPC箱桁1の端部に至るまで露出されている。
【0059】
こうして拡大されたはつり部位10においてPC鋼材6が露出した後、PC箱桁1の補修が行われる。以下、PC鋼材6の露出後に行われるPC箱桁1の補修方法について説明する。
【0060】
[実施例1]
この実施例では、補修箇所3内にあるPC鋼材6の一部が損傷しているためこれを切断し新しいものと交換する必要がある場合の補修方法について説明する。
【0061】
このとき、露出している既設のPC鋼材6の切断はその一部を残して行われ、残されたPC鋼材6の先端に新しい緊張材が接続されることで補修が行われる。
【0062】
なお、本実施例では、PC鋼材6の内部にある緊張材61としてPC鋼棒が用いられている場合が想定されている。
【0063】
図10は、拡大されたはつり部位のPC鋼材6が一部を残して切断された状態を示す拡大斜視図である。
図11は、
図10の状態のPC鋼材6にカップラー11を用いて新たなPC鋼棒12が接続される様子を示す拡大斜視図である。
【0064】
この実施例では、残されたPC鋼材6の緊張材61の先端に、新しい緊張材であるPC鋼材12が接続されることで補修が行われる。
【0065】
こうした補修では、まず、切断後に残されたPC鋼材6の緊張材61であるPC鋼棒の表面にねじ溝610を設けることが行われる。
【0066】
次に、接続具として用いられる、内部にこのねじ溝に嵌合可能なねじ山が設けられた円筒状のカップラー11に対して、ねじ溝が設けられた既設のPC鋼棒61の端部がねじ込まれる。
【0067】
次に、既設のPC鋼棒61に接続されている側と反対側から、カップラー11に対して、先端部分にねじ溝が設けられた新しいPC鋼棒12がねじ込まれる。
【0068】
こうしてカップラー11を介して、既設のPC鋼棒61と新しいPC鋼棒12との接続が行われる。
【0069】
そして、既設のPC鋼棒61と新しいPC鋼棒12との接続が行われた後、新しいPC鋼棒12の部分についてのプレストレスの導入と、新しいコンクリートの打設が行われることで、PC箱桁1の補修が完了する。
【0070】
このとき、新しいPC鋼棒12へのプレストレスの導入は、シースを用いたポストテンション方式によっても、予め新しいPC鋼棒12に緊張力を付与しておくプレテンション方式によって行われてもよい。
【0071】
このように、本実施例に係るPC構造物1の補修方法によると、緊張材61としてPC鋼棒が用いられている場合について、PC構造物1の既存の部位のプレストレスを維持しつつ、破損したPC鋼棒61の交換も行うとともに、新たに打設されるコンクリート部位へのプレストレスの導入も行うことができる。
【0072】
[実施例2]
この実施例では、上述した実施例と同様に補修箇所3内にあるPC鋼材6の一部が損傷しているためこれを切断し新しいものと交換する必要がある場合の補修方法について説明する。
【0073】
この実施例においても、露出している既設の緊張材61の切断はその一部を残して行われ、残された緊張材61の先端に新しい緊張材が接続されることで補修が行われる。
【0074】
ただし、上述した実施例とは異なり、本実施例においてはPC鋼材6の内部にある緊張材61として、複数の鋼製の細線を用いて形成されたPC鋼線62が用いられる場合が想定されている。
【0075】
図12は、緊張材61がPC鋼線62であるときに中間定着具7から端部が露出する状態を示す拡大斜視図である。
図13は、
図12のPC鋼線62の端部が製頭処理された様子を示す(A)は拡大正面図、(B)は拡大側面図である。
【0076】
この実施例では、まず、
図13に示すように既設のPC鋼線62の端部に対して製頭処理(ボタンヘッド加工)が行われ、PC鋼線62の先端部分が潰れて拡径したヘッド部62aが形成される。
【0077】
次に、製頭処理されたPC鋼線62に対して接続具13を介して新しいPC鋼棒が接続される。
【0078】
図14は、
図13のPC鋼線に接続キャップが取り付けられた状態を示す拡大斜視図である。
図15は、接続キャップを示し、(A)は接続キャップの側面図、(B)は接続キャップにPC鋼線の端部が係止する様子を示す拡大側面図である。
【0079】
接続具13は、円筒状で内部空間133にねじ溝が形成されている本体部131と、本体部131に連続して形成されている先細のテーパ部132により構成されている。テーパ部132には複数の突条部134が長手方向をテーパ部132の先端部に向けて、周方向に並列に設けられている。
【0080】
PC鋼線62と接続具13との接続は、
図15(B)に示すように、テーパ部132の先端部分がPC鋼線62の方向に向いた状態で、PC鋼線62がそれぞれ接続具13の2つの突条部134の間に入り込むとともに、ヘッド部62がこの2つの突条部134に係止することで行われる。
【0081】
次に、接続具13に対して新しい緊張材61としてPC鋼棒が接続される。このPC鋼棒は、上述した実施例1と同様に、その先端部分にねじ溝が形成されていて、ねじ山が形成されている接続具13の内部空間133に螺合することで接続具13とPC鋼棒との接続が行われる。
【0082】
こうして既設のPC鋼線62と新しいPC鋼棒との接続が行われた後、新しいPC鋼棒の部分についてのプレストレスの導入と、新しいコンクリートの打設が行われることで、PC箱桁1の補修が完了する。
【0083】
このときの新しいPC鋼棒へのプレストレスの導入も、シースを用いたポストテンション方式によっても、予め新しいPC鋼棒に緊張力を付与しておくプレテンション方式によって行われてもよい。
【0084】
このように、本実施例に係るPC構造物1の補修方法によると、緊張材61としてPC鋼線が用いられている場合について、PC構造物1の既存の部位のプレストレスを維持しつつ、破損したPC鋼線の新しいPC鋼棒への交換も行い、新たに打設されるコンクリート部位へのプレストレスの導入も行うことができる。
【0085】
[実施例3]
この実施例でも、上述した実施例と同様に補修箇所3内にあるPC鋼材6の一部が損傷しているためこれを切断し新しいものと交換する必要がある場合の補修方法について説明するが、本実施例においてはPC鋼材6の内部にある緊張材61として、複数の鋼製の細線を用いて形成されたPC鋼より線が用いられる場合が想定されている。
【0086】
この実施例においても、露出している既設の緊張材61の切断はその一部を残して行われ、残された緊張材61の先端に新しい緊張材が接続されることで補修が行われる。
【0087】
図16は、既設のPC鋼より線と、新しいPC鋼より線又はPC鋼棒との接続に用いられる接続具14を示す、(A)が側面図、(B)が(A)のA−A断面図である。
【0088】
既設の緊張材61と新しい緊張材としてPC鋼より線またはPC鋼棒との接続は、
図16に示す接続具14を用いて行われる。
【0089】
接続具14は、筒状の本体部141と、本体部141の内部に挿入されているそれぞれ2つの中空のスリーブ142及びウェッジ143と、ウェッジ143同士を連結するバネ145とにより主に構成されている。
【0090】
本体部141は、長手方向両端部が開放端部となっていて、両端の開口部から本体部141を貫通する内部空洞が形成されている筒状の金属製の部材である。本体部141の側壁には、PC鋼より線の接続時に内部空洞における接続状態を目視確認できるよう、観察孔144が2箇所に設けられている。この本体部141の内部空洞には、内側から順に、ウェッジ143とスリーブ142とがそれぞれ2つずつ挿入される。
【0091】
ウェッジ143は、長手方向の一端部が先細のテーパ状となっていて、内部には、この先端部から外部に連通する円筒状の空間147が形成されている、金属製の円筒状の部材である。
【0092】
2つのウェッジ143が本体部141に挿入される際には、それぞれこのテーパ状の先端部を本体部141の外側に向けるようにして挿入される。このとき、2つのウェッジ143の間には、これらを離間する方向に付勢するスプリング145が設けられている。
【0093】
この2つのウェッジ143の外側から本体部141に対してスリーブ142が挿入される。
【0094】
スリーブ142は、長手方向両端部が開放され内部に空間147を有する円筒状の金属部材である。内部空間147を形成する内周面は、一端側から他端側にかけて内径が次第に小さくなるテーパ状となっている。
【0095】
こうした接続具14を用いたPC鋼より線の接続では、まず、本体部141に挿入された一方のウェッジ143の空間147に対して、既設のPC鋼より線の先端部を挿入することが行われる。
【0096】
次に、他方のウェッジ143の空間147に対して、新しい緊張材としてのPC鋼より線またはPC鋼棒が挿入される。
【0097】
次に、各ウェッジ143にPC鋼より線やPC鋼棒が挿入された状態において、ウェッジ143のテーパ状の先端部をスリーブ142の内部空間147で覆うようにして、スリーブ142が本体部141に挿入される。このとき、スリーブ142は、内部空間142のうち内径の大きな端部(大径部)をウェッジ143側に向けて挿入される。
【0098】
次に、本体部141にスリーブ142が挿入された状態において、スリーブ142の、内径の小さい端部側の端面を、金槌等を用いて叩くことで、スリーブ142を本体部141の内部空間に深く挿入していく。
【0099】
この挿入の過程において、ウェッジ143はスリーブ142の内部空間147に次第に進入して行くが、このとき、スリーブ142の内部空間147がテーパ面となっていて内径が次第に狭まるため、ウェッジ143は押し潰されていくことになる。
【0100】
こうしてウェッジ143が押し潰されることで、ウェッジ143の内壁が内部に挿入されているPC鋼より線やPC鋼棒に押し付けられる状態となり、その押圧力によりこれらを固定することができる。
【0101】
こうして既設のPC鋼より線と新しいPC鋼より線又はPC鋼棒との接続が行われた後、新しいPC鋼より線又はPC鋼棒の部分についてのプレストレスの導入と、新しいコンクリートの打設が行われることで、PC箱桁1の補修が完了する。
【0102】
このときの新しいPC鋼より線又はPC鋼棒へのプレストレスの導入も、ポストテンション方式によっても、プレテンション方式によって行われてもよい。
【0103】
このように、本実施例に係るPC構造物1の補修方法によると、緊張材61としてPC鋼より線が用いられている場合について、PC構造物1の既存の部位のプレストレスを維持しつつ、破損したPC鋼より線の新しいPC鋼より線又はPC鋼棒への交換も行い、新たに打設されるコンクリート部位へのプレストレスの導入も行うことができる。
【0104】
[実施例4]
この実施例では、補修箇所3内にあるPC鋼材6の一部が損傷しているためこれを切断し新しいものと交換する必要がある場合の補修方法について説明する。
【0105】
この実施例では、露出している既設のPC鋼材6は全て切除されるとともに、新しい緊張材が中間定着具7に設けられた固定用フック75とこれに取り付けられるカップラー77を介して接続されることで補修が行われる。
【0106】
また、本実施例に係る補修方法は、PC鋼材6の内部にある緊張材61の種類を問わず、あらゆる種類の緊張材61が採用されている場合について用いることができる。
【0107】
図17は、端部に固定用フック75が設けられた中間定着具7’が設けられたはつり部位5を示す拡大斜視図である。
図18は、
図17の中間定着具7’を示す斜視図である。
図19は、
図18の中間定着具7’にカップラー77が嵌め込まれた状態を示す斜視図である。
【0108】
本実施例においては、
図17に示すように、中間定着具7’から露出した既設のPC鋼材6が全て切除される。こうした状態で新しい緊張材61の接続を可能とするため、本実施例において用いられる中間定着具7’には、上部フック751と下部フック752により構成される、固定用フック75が設けられている。以下、この中間定着具7’について詳細に説明する。
【0109】
中間定着具7’は、上述した各実施形態において用いられていた中間定着具7と同一の構成である上枠71’及び下枠72’と、これらを固定する固定用ボルト73’と、上枠71’と下枠72’との間に挟まれるリング(不図示)とを備えている。中間定着具7’の固定は、上述した中間定着具7と同様に行われる。
【0110】
また、上枠71’の一端側には上側鍔部761’が設けられているとともに、下枠72’についても上枠71’と同側の端部に下側鍔部762’が設けられている。そして、上枠71’と下枠72’とが合わさり固定された状態において、上側鍔部761’と下側鍔部762’とにより、鍔部76が形成される。
【0111】
一方、本実施例の中間定着具7’には、上述した各実施例の中間定着具7と異なり、上枠71’に上部フック751が溶接されて設けられているとともに、下枠72’には下部フック752が溶接されて設けられている。
【0112】
上部フック751は、L字状に屈曲した板状の金属部材であり、2つの上部フック751が上枠71’の上側鍔部761’が設けられている側とは反対側の端部において、先端部を互いに対向させて設けられている。
【0113】
下部フック752についても同様の材料、形状をしていて、2つの下部フック752が下枠72’の下側鍔部762’が設けられている側とは反対側の端部において、先端部を互いに対向させて設けられている。
【0114】
そして、
図19に示すように、こうした上部フック751と下部フック752とにより形成される固定用フック75に、カップラー77が取り付けられる。
【0115】
カップラー77は、金属板である長板状のベース771と、ベース771から突出し、表面にねじ溝が設けられた円柱状の金属部材である突起部772により構成されている。
【0116】
突起部772には、上述した実施例1において用いたカップラー11(
図11参照)を取り付けることができ、このカップラー11の突起部772と連結している側とは反対側の端部に、ねじ溝が設けられた新しいPC鋼棒12が取り付けられる。
【0117】
こうして既設の緊張材61と新しいPC鋼棒12との接続が行われた後、新しいPC鋼棒12の部分についてのプレストレスの導入と、新しいコンクリートの打設が行われることで、PC箱桁1の補修が完了する。
【0118】
このときの新しいPC鋼棒12へのプレストレスの導入も、シース62を用いたポストテンション方式によっても、予め新しいPC鋼棒に緊張力を付与しておくポストテンション方式によって行われてもよい。
【0119】
このように、本実施例に係るPC構造物1の補修方法によっても、PC構造物1の既存の部位のプレストレスを維持しつつ、破損した緊張材61を新しいPC鋼棒12に交換し、新たに打設されるコンクリート部位へのプレストレスの導入も行うことができる。
【0120】
ところで、上述した各実施例に係る補修方法において、新たに連結されたPC鋼材6に対してポストテンション方式でプレストレスを導入する場合、コンクリートの打設後に新しいPC鋼材6を引張ることで、これに対する緊張力が付与される。
【0121】
この際、中間定着具7(7’)やこれに取り付けられたカップラー11、接続具13又は固定用フック75とカップラー77が引っ張られ移動するが、これらの移動を阻害しないよう、コンクリートが打設されていないスペースを確保する必要がある。
【0122】
そこで、こうしたスペースを確保するため、中間定着具7(7’)及びこれに取り付けられ共に移動する構成部品の周辺をシースで覆う態様を採用してもよい。
図20は、中間定着具7(7’)及びこれに取り付けられ共に移動する構成部品がシース79で覆われた状態を示す斜視図である。
【0123】
シース79は中間定着具7(7’)及びこれに取り付けられ共に移動する構成部品の周辺を覆う内部空間を有し、下面が開放面となっているとともに長手方向両端部にPC鋼材6を通す孔部が設けられた箱状の枠体である。シース79は、金属や樹脂等、箱状に加工できる任意の材料により形成されている。
【0124】
こうしたシース79を用いることにより、中間定着具7(7’)及びこれに取り付けられた構成部品の周辺にこれらの移動を許容するスペースをシース79内部に確保することができ、新たに打設されるコンクリート部分へのプレストレスの導入に際してポストテンション方式を採用することができる。
【0125】
上述した本発明に係るPC構造物の補修方法によると、PC構造物の既存の部位のプレストレスを維持しつつ、新たに打設されるコンクリート部位へのプレストレスの導入も行うことができる。
【0126】
なお、上述した実施形態においては補修の際に補修対象箇所にあるPC鋼材6の交換を行っていたが、本発明においてはこれに限らず、既設のPC鋼材6を保存しつつ補修を行ってもよい。この場合でも、上述した実施形態に係る中間定着具7を用いることにより、既設のコンクリート部分に対して付与されているプレストレスを保存しつつ補修を行うことができる。