(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
なお、本明細書において、重合前のモノマー成分のことを「〜単量体」といい、「単量体」を省略することもある。
また、重合体を構成する構成単位のことを「〜単量体単位」といい、単に「〜単位」と表記することもある。
【0012】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、
重合反応器内に、1種又は複数種の単量体(以下、重合単量体と記載する場合がある。)、分子量調整剤、重合開始剤、及び必要に応じて溶媒を投入し、
第1の熱可塑性樹脂の重合工程(a)と、第2の熱可塑性樹脂の重合工程(b)とを、連続して行う、熱可塑性樹脂の製造方法であって、
前記重合工程(a)後、前記重合工程(b)前に、前記1種又は複数種の単量体、及び前記分子量調整剤からなる群より選ばれる、少なくともいずれか一の仕込み比率を変更する切り替え工程(c)を有し、
前記重合工程(a)における全単量体100質量%に対する、所定の単量体の仕込み比率をX質量%とし、
前記重合工程(a)における全単量体100質量部に対する、前記重合工程(a)において配合する分子量調整剤の仕込み比率をG質量部とし、
前記重合工程(a)における全単量体100質量部に対する、前記重合工程(a)において配合する重合開始剤の仕込み比率をM質量部とし、
前記重合工程(b)における全単量体100質量%に対する、前記重合工程(b)において配合する前記所定の単量体の仕込み比率をY質量%とし、
前記重合工程(b)における全単量体100質量部に対する、前記重合工程(b)において配合する分子量調整剤の仕込み比率をH質量部とし、
前記重合工程(b)における全単量体100質量部に対する、前記重合工程(b)において配合する重合開始剤の仕込み比率をN質量部としたとき、
前記切り替え工程(c)は、以下の(条件1)を満足するものとする。
(条件1):
下記工程(c−1)、工程(c−2)を順次行うものとし、切り替え工程(c)は、前記工程(c−1)における全単量体100質量%に対する、前記工程(c−1)において配合する前記所定の単量体の仕込み比率をZ質量%としたときの、前記X質量%との差分|Z−X|、及び前記工程(c−1)において配合する全単量体100質量部に対する、前記工程(c−1)において配合する分子量調整剤の仕込み比率をI質量部としたときの、前記G質量部との差分|I−G|のうちの、少なくともいずれか一方が、それぞれ、前記Y質量%、前記X質量%の差分|Y−X|、前記H質量部、前記G質量部の差分|H−G|よりも大きくなるように、仕込み比率を変更し、維持する工程(c−1)と、
重合反応器内へ供給する前記所定の単量体の仕込み比率、及び前記分子量調整剤の仕込み比率を、それぞれ、Y質量%、H質量部に変更する工程(c−2)と、
を含む。
なお、前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の熱可塑性樹脂は、異なる種類の熱可塑性物、又は同種であるが組成の異なる熱可塑性樹脂であるものとする。
【0013】
(重合工程(a))
重合工程(a)においては、重合反応器内に、1種又は複数種の単量体、分子量調整剤、重合開始剤、必要に応じて溶媒を投入し、所定の組成の第1の熱可塑性樹脂の重合を行う。
【0014】
<重合反応器>
前記重合反応器としては、例えば、混合装置、温度調節装置を備え、連続的に原料の供給と反応液の排出を行うことができる供給口と排出口を備えた容器を単独又は複数直列に接続した構成の反応器を用いることができる。
前記供給口に、重合原料を連続的に供給し、排出口から反応液を連続的に排出する。
重合反応器は連続重合が可能であれば特に限定されるものではない。例えば、ダブルヘリカルリボン、ピッチドバドル、タービン、アンカー型等の攪拌翼により均一に攪拌可能で、均一な反応液組成が得られる完全混合型反応器を用いることができる。
【0015】
<熱可塑性樹脂>
重合工程(a)、及び後述する重合工程(b)により製造する熱可塑性樹脂としては、連続重合により得られる樹脂であれば、特に限定されない。
例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シンジオタクテックポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合体)、メタクリル系樹脂、AS系樹脂(アクリロニトリル−スチレン系共重合体)、BAAS系樹脂(ブタジエン−アクリロニトリル−アクリロニトリルゴム−スチレン系共重合体、MBS系樹脂(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン系共重合体)、AAS系樹脂(アクリロニトリル−アクリロニトリルゴム−スチレン系共重合体)、MS系樹脂(メチルメタクリレート−スチレン系共重合体)等が挙げられる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、特に、メタクリル系樹脂、MS系樹脂の製造方法として好適に利用できる。
なお、上述したように、重合工程(a)により製造される第1の熱可塑性樹脂と、後述する重合工程(b)により製造される第2の熱可塑性樹脂とは、種類又は組成が異なっている。
【0016】
<単量体>
重合工程(a)及び後述する重合工程(b)により製造される熱可塑性樹脂としては、メタクリル系樹脂が好適な樹脂として挙げられる。
当該メタクリル系樹脂は、重合用の単量体として、メタクリル酸エステル単量体と、当該メタクリル酸エステル単量体に共重合可能な他のビニル単量体を用い、これらを共重合することにより製造できる。
なお、本実施形態の熱可塑性樹脂の製造方法において用いる単量体としては、以下のメタクリル酸エステル単量体、当該メタクリルエステル単量体に共重合可能な他のビニル単量体に限定されるものではなく、上述した各種熱可塑性樹脂を構成する単量体単位を形成する各種単量体を用いることができる。
【0017】
[メタクリル酸エステル単量体]
メタクリル酸エステル単量体としては、下記一般式(1)で示される単量体が好ましい例として挙げられる。
【0019】
前記一般式(1)中、R
1はメチル基を表す。
また、R
2は炭素数が1〜12の基を表し、炭素上に水酸基を有していてもよい。
メタクリル酸エステル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸(2−エチルヘキシル)、メタクリル酸(t−ブチルシクロヘキシル)、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸(2,2,2−トリフルオロエチル)等が挙げられ、代表的なものはメタクリル酸メチルである。
上記メタクリル酸エステル単量体は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
[メタクリル酸エステル単量体に共重合可能な、他のビニル単量体]
メタクリル系樹脂を構成する、上述したメタクリル酸エステル単量体に共重合可能な他のビニル単量体としては、下記一般式(2)で表されるアクリル酸エステル単量体が好ましい例として挙げられる。
【0022】
前記一般式(2)中、R
3は水素原子であり、R
4は炭素数が1〜18のアルキル基である。
【0023】
前記一般式(2)で表されるアクリル酸エステル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
特に、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチルが好ましく、さらには、アクリル酸メチルが入手しやすく、より好ましい。
【0024】
また、前記メタクリル酸エステル単量体に共重合可能な、前記式(2)のアクリル酸エステル単量体以外の他のビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸やメタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、桂皮酸等の不飽和基含有二価カルボン酸及びそれらのアルキルエステル;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、о−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、イソプロペニルベンセン(α−メチルスチレン)等のスチレン系単量体;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド等;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ジビニルベンゼン等の多官能モノマー等が挙げられる。
上記メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なアクリル酸エステル単量体や、上記例示したアクリル酸エステル単量体以外のビニル系単量体は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
熱可塑性樹脂を構成する、上述したメタクリル酸エステル単量体に共重合可能な他のビニル単量体単位の含有量は、耐熱性と流動性の観点より、メタクリル系樹脂中において、メタクリル酸エステル単量体20〜100質量%に対して、0〜80質量%であることが好ましい。より好ましくは0.1〜80質量%であり、さらにより好ましくは0.5〜70質量%であり、さらにより好ましくは1〜60質量%であり、よりさらに好ましくは2〜50質量%である。
熱可塑性樹脂においては、耐熱性、加工性等の特性を向上させる目的で、上記例示したビニル単量体以外のビニル系単量体を適宜添加して共重合させてもよい。
【0026】
<分子量調整剤>
熱可塑性樹脂を製造する際には、本発明の目的を損わない範囲で、分子量の制御を行うことができる。
分子量の制御方法としては、下記の分子量調整剤を用いる方法が挙げられる。
分子量調整剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルキルメルカプタン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤、ジチオカルバメート類、トリフェニルメチルアゾベンゼン、テトラフェニルエタン誘導体等のイニファータ等を用いることができる。また、これらの添加量を調整することにより、分子量を調整することも可能である。
前記分子量調整剤を用いる場合、取扱性や安定性の観点から、アルキルメルカプタン類が好適に用いられる。当該アルキルメルカプタン類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。
これらは、目的とする熱可塑性樹脂の分子量に応じて適宜添加することができるが、一般的には使用する全単量体の総量100質量部に対して0.001質量部〜3質量部の範囲で用いられる。
【0027】
また、その他の分子量制御方法としては、重合方法を適宜変更する方法、後述する重合開始剤の量を調整する方法、重合温度を調整する方法等が挙げられる。
これらの分子量制御方法は、一種の方法のみを用いてもよく、二種以上の方法を併用してもよい。
【0028】
<重合開始剤>
本実施形態において熱可塑性樹脂を製造する際には、重合開始剤を用いる。
重合開始剤としては、ラジカル重合を行う場合は、以下に限定されるものではないが、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'−アゾビス−4−メトキシ−2,4−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ系の一般的なラジカル重合開始剤を挙げることができる。
これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
これらのラジカル開始剤と適当な還元剤とを組み合わせてレドックス系開始剤として用いてもよい。
これらの重合開始剤は、使用する全単量体の総量100質量部に対して、0〜1質量部の範囲で用いるのが一般的であり、重合を行う温度と重合開始剤の半減期を考慮して適宜選択することができる。
塊状重合法やキャスト重合法、懸濁重合法を行う場合には、熱可塑性樹脂の着色を防止できるという観点から、重合開始剤としては、過酸化系開始剤のラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等を好適に用いることができ、ラウロイルパーオキサイドが特に好適に使用される。
また、メタクリル系樹脂の溶液重合方法を一例として挙げると、90℃以上の高温下で溶液重合を行う場合には、重合開始剤としては、半減期が10時間になる温度(10時間半減期温度)が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤等を用いることが好ましい。このような重合開始剤としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0029】
<溶媒>
熱可塑性樹脂を製造する際には、重合反応器内に溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、上述した1種又は複数種の単量体と非反応性で、かつ重合単量体に対して溶解性があり、重合単量体より沸点が高い溶媒が好ましい。
メタクリル系樹脂を溶液重合法により製造する場合を一例として挙げると、蒸留塔ボトム及び蒸留塔内部で、メタクリル酸メチル単量体、メタクリル酸メチル単量体と共重合可能な単量体、さらには除去すべき不純物を溶解させ、かつ、メタクリル酸メチル単量体、メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体より高い沸点を有している液体であることが好ましい。このような溶媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン等の芳香族化合物;オクタン、デカン等の脂肪族化合物;デカリン等の脂環族化合物;酢酸ブチル、酢酸ペンチル等のエステル化合物;1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2− テトラクロロエタン等のハロゲン化合物等が挙げられる。
溶媒の沸点は、メタクリル酸メチル単量体及びメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の沸点より高いことが好ましく、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃ 以上、さらにより好ましくは30℃以上沸点が高いものとする。
上述した各種溶媒の中でも、特にアルキルベンゼンが、重合に悪影響を及ぼすことがなく、かつ重合で生成する不純物の溶解性も高いため、好ましい。
また、アルキルベンゼンの中でも、トルエン、キシレン、エチルベンゼンが好ましく、特にキシレン、エチルベンゼンが、適度な沸点を有し、脱揮にも負荷が少なく、又、重合に悪影響を及ぼすこともなく、重合で生成する不純物の溶解性も高く、かつ工業的に安価に入手することができるため、より好ましい。
溶媒の量は、溶媒の沸点によっても異なるが、重合時の全混合物の質量(100質量%)に対して60質量%以下であることが好ましく、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、さらにより好ましくは10質量%以下である。下限は0.1質量%である。0.1質量%であっても溶媒の沸点が高ければ、蒸留塔ボトムは溶媒が主成分となり、ここでの重合によるトラブルは防止できる。
溶媒量が全混合物の質量(100質量%)に対して60質量%以下とすることにより、実用上良好な耐熱分解性が得られ、0.1質量%以上とすることにより、重合反応器の底部で重合反応が起こることを防止でき、安定した重合工程を実施できる。
溶媒は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0030】
<重合方法>
重合工程(a)、及び後述する重合工程(b)は、特に制限されないが、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合法、及び乳化重合法からなる群より選ばれるいずれかの方法により重合反応を実施でき、好ましくは塊状重合、溶液重合及び懸濁重合法であり、より好ましくは溶液重合法、塊状重合法であり、さらに好ましくは溶液重合法である。
本実施形態の熱可塑性樹脂の製造方法においては、後述する切り替え工程(c)を介して、重合工程(a)及び重合工程(b)において連続重合を行うものであり、生産性の観点から、連続溶液重合又は連続塊状重合が好ましい。
重合温度は、重合方法に応じて適宜最適の温度を選択することができる。メタクリル系樹脂を溶液重合する場合を一例として挙げると、重合温度は、好ましくは50℃以上200℃以下であり、より好ましくは60℃以上180℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上170℃以下である。
【0031】
(切り替え工程(c))
本実施形態においては、上記重合工程(a)の後、後述する重合工程(b)前に、重合反応器内へ供給する成分として、前記1種又は複数の単量体、及び前記分子量調整剤からなる群より選ばれる、少なくともいずれか一の原料の仕込み比率を変更する、切り替え工程(c)を実施する。
前記重合工程(a)中における全単量体100質量%、すなわち重合工程(a)で仕込む全単量体100質量%に対する、重合工程(a)で仕込む所定の単量体の仕込み比率をX質量%とし、前記重合工程(a)における全単量体100質量部に対する前記重合工程(a)において配合する分子量調整剤の仕込み比率をG質量部とし、前記重合工程(a)における全単量体100質量部に対する、前記重合工程(a)において配合する重合開始剤の仕込み比率をM質量部とし、前記重合工程(b)における全単量体100質量%、すなわち重合工程(b)で仕込む全単量体100質量%に対する、前記重合工程(b)において配合する前記所定の単量体の仕込み比率をY質量%とし、前記重合工程(b)における全単量体100質量部に対する、前記重合工程(b)において配合する分子量調整剤の仕込み比率をH質量部とし、前記重合工程(b)における全単量体100質量部に対する、前記重合工程(b)において配合する重合開始剤の仕込み比率をN質量部としたときに、前記切り替え工程(c)は、以下の(条件1)を満足するものとする。
(条件1):
重合工程(b)における原料の仕込み比率よりも、重合工程(a)と重合工程(b)との原料の仕込み比率の差分に比して過剰に原料の仕込み比率を変更し、維持する工程(c−1)、重合工程(b)における仕込み比率に変更する工程(c−2)を順次行うものとし、切り替え工程(c)は、前記工程(c−1)における全単量体100質量%、すなわち工程(c−1)で仕込む全単量体100質量%に対する、前記工程(c−1)において配合する前記所定の単量体の仕込み比率をZ質量%としたときの、前記X質量%との差分|Z−X|及び前記工程(c−1)における全単量体100質量部に対する、前記工程(c−1)において配合する分子量調整剤の仕込み比率をI質量部としたときの、前記G質量部との差分|I−G|のうちの、少なくともいずれか一方が、それぞれ、前記Y質量%、前記X質量%との差分|Y−X|、前記H質量部、前記G質量部との差分|H−G|よりも大きくなるように、仕込み比率を変更し、維持する工程(c−1)と、重合反応器内へ供給する前記所定の単量体の仕込み比率、及び前記分子量調整剤の仕込み比率を、それぞれ、Y質量%、H質量部に変更する工程(c−2)と、を含む。
【0032】
<重合工程(b)における原料の仕込み比率よりも、重合工程(a)と重合工程(b)との原料の仕込み比率の差分に比して過剰に原料の仕込み比率を変更し、維持する工程(c−1)>
工程(c−1)においては、当該工程(c−1)における全単量体100質量%、すなわち工程(c−1)で仕込む全単量体100質量%に対する、前記工程(c−1)において配合する前記所定の単量体の仕込み比率をZ質量%としたときの、前記X質量%との差分|Z−X|、及び前記工程(c−1)において配合する全単量体100質量部に対する、前記工程(c−1)において配合する分子量調整剤の仕込み比率をI質量部としたときの、前記G質量部との差分|I−G|のうちの、少なくともいずれか一方が、それぞれ、前記Y質量%、前記X質量%の差分|Y−X|、前記H質量部、G質量部の差分|H−G|よりも大きくなるように、仕込み比率を変更し、維持する。
【0033】
先ず、単量体の仕込み比率が、重合工程(a)と重合工程(b)とで変更される場合の、切り替え工程(c)について以下に記載する。
<単量体を過剰量へ変更し維持する工程(c−1)>
連続重合による熱可塑性樹脂の製造方法において、全単量体100質量%に対して、所定の単量体としての任意の単量体AをX質量%含む第1の熱可塑性樹脂を重合する重合工程(a)を、前記所定の単量体としての前記単量体AをY(≠X)質量%含む第2の熱可塑性樹脂を重合する重合工程(b)へと切り替える、切り替え工程(c)を実施するものとする。
前記切り替え工程(c)は、工程(c−1)及び工程(c−2)からなるものとし、前記工程(c−1)においては、当該工程(c−1)における全単量体100質量%、すなわち工程(c−1)で配合する全単量体100質量%に対する、工程(c−1)で配合する前記任意の単量体Aの仕込み比率Z質量%の、前記X質量%との差分|Z−X|が、前記重合工程(a)と前記重合工程(b)における前記任意の単量体Aの仕込み比率であるX質量%とY質量%との差分|Y−X|よりも大きくなるように、仕込み比率を変更し維持する。
このとき、前記X(質量%)、前記Y(質量%)、前記Z(質量%)は、下記(i)式又は(ii)式に従うことが好ましい。
X<Yの場合、 Y<Z、かつ0.1≦Z−Y≦20 ・・・(i)
X>Yの場合、 Y>Z かつ0.1≦Y−Z≦20 ・・・(ii)
【0034】
さらに、切り替え工程(c)においては、工程(c−1)の仕込み比率を変更し維持する時間T1(分)が、切り替え工程(c)における重合反応器内の原料滞留時間θ(分)に対して、0.1≦T1/θ≦5.0の範囲であることが好ましい。
【0035】
なお、|Y−Z|(Y−Zの絶対値)は、原料変更の効率及び運転安定性の観点から、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下がより好ましく、13質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下がさらにより好ましい。
ここでの運転安定性とは、重合反応器内の均一混合性や運転条件、例えば、反応温度の安定性、さらには樹脂の品質安定性のことを意味する。
【0036】
また、任意の単量体Aの全単量体100質量%に対する仕込み比率(X質量%)を、前記工程(c−1)で、Z(質量%)に過剰に変更し維持する時間T1(分)は、上述したように、前記切り替え工程(c)における重合反応器内の原料滞留時間θ(分)に対して、0.1≦T1/θ≦5.0の範囲であることが好ましい。T1/θが0.1以上であることより、効率よく組成変更が可能となり、T1/θが5.0以下であることより、生産効率が維持される傾向にある。
T1/θは、より好ましくは0.3以上4.0以下であり、さらに好ましくは0.5以上3.0以下である。
【0037】
次に、分子量調整剤の仕込み比率が、重合工程(a)と重合工程(b)とで変更される場合における切り替え工程(c)について以下に記載する。
<分子量調整剤を過剰量へ変更し維持する工程(c−1)>
重合工程(a)においては、所定の分子量調整剤としての任意の分子量調整剤Fを、重合工程(a)で重合反応器内へ供給する全単量体100質量部に対してG質量部仕込むものとし、前記重合工程(b)においては、前記分子量調整剤Fを、当該重合工程(b)における全単量体100質量部、すなわち重合工程(b)で供給する全単量体100質量部に対してH質量部仕込むものとする。
前記切り替え工程(c)は、工程(c−1)及び後述する工程(c−2)からなるものとし、前記工程(c−1)においては、当該工程(c−1)における全単量体100質量部に対する前記任意の分子量調節剤Fの仕込み比率I質量部の、前記G質量部との差分|I−G|が、前記重合工程(a)と前記重合工程(b)における前記任意の分子量調整剤Fの仕込み比率である前記G質量部と前記H質量部との差分|H−G|よりも大きくなるように仕込み比率を変更し維持する。
このとき、前記G質量部、前記H質量部、前記I質量部は、(iii)式又は(iv)式に従うことが好ましい。
G<Hの場合、H<Iかつ0.01≦I−H≦2.0 ・・・(iii)
G>Hの場合、H>Iかつ0.01≦H−I≦2.0 ・・・(iv)
(G、H、Iは、それぞれ、重合工程(a)、重合工程(b)、工程(c−1)における、全単量体100質量部に対する、分子量調整剤の仕込み比率(質量部)を示す。)
【0038】
さらに、切り替え工程(c)の工程(c−1)において配合する分子量調整剤の仕込み比率を変更し維持する時間T2(分)が、切り替え工程(c)における重合反応器内の原料滞留時間θ(分)に対して、0.1≦T2/θ≦5.0の範囲であることが好ましい。
【0039】
また、|H−I|(H−Iの絶対値)は、原料の切替え効率及び運転安定性の点より、0.01質量部以上2.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下がより好ましく、0.7質量部以下がさらに好ましく、0.5質量部以下がさらにより好ましい。
【0040】
さらに、任意の分子量調整剤Fを過剰量に変更し維持する時間T2(分)は、上述したように、切り替え工程(c)における重合反応器内の原料滞留時間θ(分)に対して、0.1≦T2/θ≦5.0の範囲であることが好ましい。T2/θが0.1以上であることより、効率よく分子量調整剤Fの変更が可能となり、T1/θが5.0以下であることより、生産効率が維持される傾向にある。
T2/θは、より好ましくは、0.3以上4.0以下であり、さらに好ましくは、0.5以上3.0以下である。
【0041】
<重合工程(b)における仕込み比率に変更する工程(c−2)>
前記工程(c−1)の維持時間(T1、T2)経過後、重合反応器内へ供給する前記単量体及び/又は前記分子量調整剤の仕込み比率を、それぞれ、Y質量%、H質量部に変更する操作を行う。
【0042】
(切り替え工程(c)における重合開始剤の仕込み比率の変更)
本実施形態においては、上述した重合工程(a)において、任意の重合開始剤Pを、重合工程(a)における全単量体、すなわち重合工程(a)で仕込む全単量体100質量部に対してM質量部仕込むものとし、前記重合工程(b)において、前記任意の重合開始剤Pを、重合工程(b)における全単量体100質量部、すなわち重合工程(b)で仕込む全単量体100質量部に対してN質量部仕込むものとしたとき、前記切り替え工程(c)における工程(c−1)においては、当該工程(c−1)における全単量体100質量部に対する前記重合開始剤の仕込み比率O(質量部)と、前記M質量部との差分|O−M|が、前記重合工程(a)と前記重合工程(b)の前記重合開始剤の仕込み比率の差分|N−M|以下となるように仕込み比率を変更することが好ましい。
重合開始剤は、前記M質量部から前記N質量部へ一気に変更するのではなく、逐次的に変更することが好ましい。
上記のように、重合開始剤の仕込み比率の切り替えを行うことにより、重合反応の不安定化を抑制でき、配合比率の変更に要する時間がかえって短縮できる。
【0043】
本実施形態の熱可塑性樹脂の製造方法においては、上記切り替え工程(c)において、上述の(条件1)のように実施することにより、重合反応器内の材料組成を効率よく重合工程(b)の配合組成に切り替えることができる。
なお、重合反応器内の材料の組成の変更に要した時間、すなわち重合工程(a)における材料の組成から、重合工程(b)における材料の組成へと変更されるために要した時間は、熱可塑性樹脂の生産性の観点より、前記切り替え工程(c)における原料滞留時間θ(分)との関係において、2.5θ分以下であることが好ましく、2.3θ分以下であることがより好ましく、2.0θ以下であることがさらに好ましい。
ここでの組成変更に要した時間とは、重合反応器から払い出した、第1の熱可塑性樹脂を重合するための材料組成が、第2の熱可塑性樹脂を重合するための材料組成に変更された時間を言い、部分的な切替わりではなく、均一かつ安定的に樹脂組成がなされた時間を言う。
上述したように、本実施形態の熱可塑性樹脂の製造方法においては、重合反応器内の材料組成を効率よく切り替えられるため、目的とする組成比率を有する高品質の熱可塑性樹脂の生産効率を向上させることができ、目的とする組成比率を有さない低品質の熱可塑性樹脂の発生を低減化することができる。
【0044】
(重合工程(b))
上述した切り替え工程(c)後、1種又は複数種の単量体、分子量調整剤、重合開始剤、必要に応じて溶媒を用い、重合反応器内で、所定の組成の第2の熱可塑性樹脂の重合を行う。
重合反応器、単量体、分子量調整剤、重合開始剤、溶媒については、上述した重合工程(a)と同様のものを用いることができ、重合方法についても、重合工程(a)と同様の方法を適用できる。
【0045】
(添加剤)
本実施形態の熱可塑性樹脂の製造時には、樹脂の剛性や寸法安定性等の他の特性を付与するため、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を添加することができる。
添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系等の可塑剤;高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ、又はトリグリセリド系等の離型剤;ポリエーテル系、ポリエーテルエステル系、ポリエーテルエステルアミド系、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩等の帯電防止剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等の安定剤;難燃剤、難燃助剤、硬化剤、硬化促進剤、導電性付与剤、応力緩和剤、結晶化促進剤、加水分解抑制剤、潤滑剤、衝撃付与剤、摺動性改良剤、相溶化剤、核剤、強化剤、補強剤、流動調整剤、染料、増感材、着色用顔料、ゴム質重合体、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、充填剤、消泡剤、カップリング剤、防錆剤、抗菌・防黴剤、防汚剤、導電性高分子等が挙げられる。
【0046】
前記熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工安定剤等の酸化防止剤等が挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
具体的には、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリン)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミン)フェノール等が挙げられ、熱安定性効果の観点から、ペンタエリスリトールテラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
【0047】
前記紫外線吸収剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられ、紫外線吸収性能の観点から、好ましくはベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物である。
【0048】
上述した添加剤は、単独で用いてもよく、一種単独で用いても、二種以上を併用して用いてもよい。
添加方法としては、従来公知の方法を用いればよく、特に限定されるものではない。例えば、単量体及び/又は溶媒に溶解させた状態で重合反応器に添加する方法、添加剤を直接反応器に添加する方法、重合反応器から排出される樹脂に添加する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
〔評価方法〕
後述する実施例及び比較例により製造した熱可塑性樹脂の評価を下記により行った。
(1 熱可塑性樹脂の組成分析)
1H−NMR測定より、(i)メタクリル酸エステル単量体由来の繰り返し単位、(ii)メタクリル酸エステル単量体に共重合可能な少なくとも1種の他のビニル単量体由来の繰り返し単位を同定し、その存在量を算出した。
測定機器:ブルーカー株式会社製 DPX−400
測定溶媒:CDCl
3、又はd6−DMSO
測定温度:40℃
【0051】
(2 熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定)
熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)を下記の装置及び条件で測定した。
・測定装置:東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC−8320GPC)
・カラム:TSKguardcolumn SuperH−H 1本、TSKgel SuperHM−M 2本、TSKgel SuperH2500 1本を順に直列接続して使用した。
本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量は溶出する時間が遅い。
・検出器 :RI(示差屈折)検出器
(検出感度:3.0mV/min)
・カラム温度:40℃
・サンプル :0.02gのメタクリル系樹脂のテトラヒドロフラン10mL溶液
・注入量 :10μL
・展開溶媒 :テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/min
内部標準として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を、0.1g/L添加した。
・検量線用標準サンプルとして、単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymethyl methacrylate Calibration Kit PL2020−0101 M−M−10)を用いた。
ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準試料10 850
上記の条件で、熱可塑性樹脂の溶出時間に対する、RI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、7次近似式の検量線を基に熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0052】
〔実施例1〕
メタクリル酸メチル98質量%、所定の単量体:アクリル酸メチル(X質量%=)2.0質量%の、単量体10kg溶液100質量部に対し、溶媒としてエチルベンゼン10質量部、重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.010質量部、連鎖移動剤であるオクチルメルカプタン0.20質量部を追加し、ラボ完全混合型重合反応器(リフラックスコンデンサー付き、SUS316製)で重合温度140℃、原料滞留時間80分で重合し、重合転化率48%まで連続的に重合させた(重合工程(a))。
次に、切り替え工程(c)を実施した。
切り替え工程(c)においては、先ず、メタクリル酸メチル95質量%、所定の単量体:アクリル酸メチル(Z質量%=)5.0質量%とし、溶媒量、重合開始剤量、連鎖移動剤量は上述と同条件として重合を実施した(工程(c−1))。
当該切り替え工程(c)の工程(c−1)においては、原料の仕込み比率を変更し維持する時間(T1)=80分、重合温度を140℃とした。
なお、切り替え工程(c)においても、重合反応器に原料滞留時間(θ)は、80分とした。
原料の仕込み比率を変更し維持する時間(T1)=80分後は、目的とする組成比(メタクリル酸メチル96質量%、所定の単量体:アクリル酸メチル:Y質量%=4.0質量%)での仕込み比率に変え(工程(c−2))、連続的に重合を行った(重合工程(b))。
前記切り替え工程(c)の開始から、2.0θ分経過した後の重合反応器からの払い出しポリマーの組成比を1H−NMRで測定したところ、目的とするメタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=96質量%/4.0質量%の比率の熱可塑性樹脂が得られていることが分かった。また、重量平均分子量が10.2万であった。
【0053】
〔実施例2〜
5〕、
〔参考例6、7〕、〔比較例1〜3〕
実施例1と同様の重合反応器を用いて、重合温度を140℃とし、下記表1に記載の原
料滞留時間(θ)及び各原料を過剰量に変更し維持する時間(T1、T2)に従い、熱可
塑性樹脂を製造した。
単量体としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、スチレンを用い、重合開始
剤、分子量調整剤及び溶媒は実施例1と同様のものを使用した。
なお、表1中、重合工程(a)における全単量体100質量%に対する、所定の単量体
の仕込み比率をX(質量%)とし、重合工程(a)における全単量体100質量部に対す
る、前記重合工程(a)において配合する分子量調整剤の仕込み比率をG(質量部)とし
た。
重合工程(b)における全単量体100質量%に対する、前記重合工程(b)において
配合する前記所定の単量体の仕込み比率をY(質量%)とし、重合工程(b)における全
単量体100質量部に対する分子量調整剤の仕込み比率をH(質量部)とした。
切り替え工程(c)の、工程(c−1)における全単量体100質量%に対する、所定
の単量体の仕込み比率をZ(質量%)とし、工程(c−1)における全単量体100質量
部に対する、前記工程(c−1)で配合する分子量調整剤の仕込み比率をI(質量部)と
した。
比較例1においては、工程(c−1)において単量体量を|Y−Z|>0の条件で変更
せず、また維持する時間を(T1)=0とした。すなわち切り替え工程(c)を実施しな
かった。
比較例2においては、工程(c−1)において分子量調整剤量を過剰量添加せず、また
維持する時間(T2)=0とした。すなわち切り替え工程(c)を実施しなかった。
比較例3においては、工程(c−1)において単量体量を|Y−Z|>0の条件で変更
せず、また維持する時間を(T1)=0とした。すなわち切り替え工程(c)を実施しな
かった。
重合反応器からの払い出しポリマーを随時、1H−NMR及びGPCを用いて分析した
。
また、ポリマーの最終目的組成の変更に要した時間を測定した。
【0054】
〔実施例8〕
メタクリル酸メチル45質量%、所定の単量体:スチレン(X質量%=)55質量%の、単量体10kg溶液100質量部に対し、溶媒としてエチルベンゼン10質量部、重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.01質量部、連鎖移動剤であるオクチルメルカプタン0.2質量部を追加し、ラボ完全混合型重合反応機(リフラックスコンデンサー付き、SUS316製)で重合温度140℃、原料滞留時間80分で重合し、重合転化率35%まで連続的に重合させた(重合工程(a))。
次に切り替え工程(c)を実施した。
切り替え工程(c)においては、原料の組成を変更する際、原料の仕込み比率を変更し維持する時間(T1)=80分、メタクリル酸メチル60質量%、所定の単量体:スチレン(Z質量%=)40質量%の原料組成で、重合温度140℃下、重合反応器に原料滞留時間(θ)が70分となるように投入を行った(工程(c−1))。
原料の仕込み比率を変更し維持する時間(T1)=80分後は、メタクリル酸メチル55質量%、所定の単量体:スチレン(Y質量%=)45質量%の比率に変え(工程(c−2))、連続的に重合を行った(工程(b))。
前記切り替え工程(c)の開始から、2.5θ分経過した後の重合反応器からの払い出しポリマーの組成比を1H−NMRで測定したところ、目的とするメタクリル酸メチル/スチレン=55質量%/45質量%の比率のポリマーが得られていることが分かった。また、重量平均分子量が9.4万であった。
【0055】
〔実施例9〕
メタクリル酸メチル85質量%、スチレン10質量%、所定の単量体:メタクリル酸(X質量%=)5.0質量%の、単量体10kg溶液100質量部に対し、溶媒としてエチルベンゼン10質量部、重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.010質量部、連鎖移動剤であるオクチルメルカプタン0.20質量部を追加し、ラボ完全混合型重合反応機(リフラックスコンデンサー付き、SUS316製)で重合温度140℃、原料滞留時間80分で重合し、重合転化率45%まで連続的に重合させた(重合工程(a))。
次に切り替え工程(c)を実施した。
当該切り替え工程(c)においては、原料の組成を変更する際、原料の仕込み比率を変更し維持する時間(T1)=80分、メタクリル酸メチル89質量%、スチレン10質量%、所定の単量体メタクリル酸(Z質量%=)1質量%の原料組成で、重合温度を140℃とし、重合反応器に原料滞留時間(θ)が80分となるように投入を行った(工程(c−1))。
原料の仕込み比率を変更し維持する時間(T1)=80分後は、目的とするメタクリル酸メチル87質量%、スチレン10質量%、メタクリル酸(Y質量%=)3.0質量%の比率に変え(工程(c−2))、連続的に重合を行った(重合工程(b))。
前記切り替え工程(c)の開始から、2.0θ分経過した後の重合反応器からの払い出しポリマーの組成比を1H−NMRで測定したところ、目的とするメタクリル酸メチル/スチレン/メタクリル酸=87質量%/10質量%/3.0質量%の比率のポリマーが得られていることが分かった。また、重量平均分子量が9.0万であった。
【0056】
〔
参考例10、実施例11〜15〕
実施例1と同様の重合反応器を用いて、重合温度を140℃とし、下記表1に記載の、
切り替え工程(c)のおける重合反応器内の原料滞留時間(θ)、及び切り替え工程(c
)の工程(c−1)における各原料を過剰量に変更し維持する時間(T1、T2)に従い
、熱可塑性樹脂を製造した。
重合に用いる単量体は、メタクリル酸メチル及びアクリル酸メチルのみとし、重合開始
剤、分子量調整剤及び溶媒は実施例1と同様のものを使用した。
なお、表1中、重合工程(a)における、全単量体100質量%に対する所定の単量体
(アクリル酸メチル)の仕込み比率をX(質量%)、重合工程(a)における全単量体1
00質量部に対する分子量調整剤の仕込み比率をG(質量部)、重合工程(a)における
全単量体100質量部に対する重合開始剤の仕込み比率をM(質量部)とした。
重合工程(b)における全単量体100質量%に対する、前記重合工程(b)において
配合する前記所定の単量体の仕込み比率をY(質量%)、重合工程(b)における全単量
体100質量部に対する、前記重合工程(b)において配合する分子量調整剤の仕込み比
率をH(質量部)、重合工程(b)における全単量体100質量部に対する、前記重合工
程(b)において配合する重合開始剤の仕込み比率をN(質量部)とした。
工程(c−1)における全単量体100質量%に対する、前記工程(c−1)において
配合する前記所定の単量体の仕込み比率をZ(質量%)、前記工程(c−1)において配
合する全単量体100質量部に対する、前記工程(c−1)において配合する分子量調整
剤の仕込み比率をI(質量部)とした。
このとき、重合開始剤については、M質量部からN質量部になるように逐次的に変更を
行った。
【0057】
〔実施例16〕
メタクリル酸メチル15質量、所定の単量体:スチレン(X質量%=)85質量%の、単量体10kg溶液100質量部に対し、溶媒としてエチルベンゼン10質量部、重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.020質量部、連鎖移動剤であるオクチルメルカプタン0.20質量部を追加し、ラボ完全混合型重合反応機(リフラックスコンデンサー付き、SUS316製)で重合温度140℃、原料滞留時間60分で重合し、重合転化率40%まで連続的に重合させた(重合工程(a))。
次に切り替え工程(c)を実施した。
当該切り替え工程(c)においては、原料の組成を変更する際、原料の仕込み比率を変更し維持する時間(T1)=90分、メタクリル酸メチル9.0質量%、所定の単量体:スチレン(Z質量%=)91質量%の原料組成で、重合温度を140℃とし、切り替え工程(c)における重合反応器内の原料滞留時間(θ)が80分となるように投入を行った(工程(c−1))。
前記原料の仕込み比率を変更し維持する時間(T1)=80分後は、目的とするメタクリル酸メチル11質量%、所定の単量体:スチレン(Y質量%=)89質量%の比率に変え(工程(c−2))、連続的に重合を行った(重合工程(b))。
前記切り替え工程(c)の開始から、2.4θ分経過した後の重合反応器からの払い出しポリマーの組成比を1H−NMRで測定したところ、目的とするメタクリル酸メチル/スチレン=11質量%/89質量%の比率のポリマーが得られていることが分かった。また、重量平均分子量が8.5万であった。
【0058】
〔実施例17〕
実施例16の切り替え工程(c)において、重合開始剤を0.020質量部から0.023質量部へ逐次的に変更した。その他の条件は、実施例16と同様に実施した。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示すように、実施例1〜
5、参考例6、7、実施例8〜9においては、組成変更に要した時間がいずれも短く、原料の切り替えが速やかに行われたことが分かった。
また、
参考例10、実施例11〜15においては、重合開始剤を逐次的に変更したことにより、実施例1〜
5、参考例6、7、実施例8〜9と同様に組成変更に要した時間が短縮できた。
さらに、実施例16、17においては、スチレン系樹脂の原料の切り替えを実施したが
、メタクリル系樹脂の原料の切り替えと同様に組成変更に要した時間が短縮できた。
比較例1〜3においては、本発明の切り替え工程を実施しなかったため、組成変更に要
した時間が短縮できなかった。