(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
後端側に穿刺器具への接続部、前端側に穿刺針カバー部、中間部に破断部を有するランセット本体と、前記ランセット本体の破断部の前後に渡ってこのランセット本体に埋め込まれた穿刺針と、前記ランセット本体の中間部外周に装着されたランセットケースとを備え、
前記ランセット本体の前端には、このランセット本体の前記破断部より前方側を、このランセット本体の前記破断部より後方側から分離させる分離体を設け、
前記分離体は、前記ランセット本体の前端側において、このランセット本体に直交する方向の基台面部と、この基台面部の左右側において、前記ランセット本体側に延長された側面部と、これら両側面部の後端側から内方側に向けて可動自在に折り曲げられた可動面部と、これら左右の可動面部の内方側に可動自在に取り付けられた取付部とを有し、
前記左右の可動面部の内方側を前記ランセット本体側に傾斜させた状態で、前記取付部を前記ランセット本体に一体化し、
前記分離体の左右に設けた側面部の後端側は、外方に向けて弾性変形可能な構成とし、
前記分離体の左右の可動面部には、この左右の可動面部を接続する接続梁を設け、この接続梁は、前記ランセット本体の破断部が破断された後に破断される構成とした穿刺針カートリッジ。
前記接続梁は、前記左右の可動面部に対して垂直状態となった薄板形状とし、この薄板形状の接続梁の両端を左右の可動面部に一体化した請求項1に記載の穿刺針カートリッジ。
前記分離体を構成する前記基台面部、前記側面部、前記可動面部、前記取付部、前記接続梁を合成樹脂により一体形成した請求項1から5のいずれか一つに記載の穿刺針カートリッジ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を説明するが、この実施形態の説明に先立ち、前提となる構成について説明する。
(前提例の1)
図1は、本例の穿刺器具1を示し、たとえば血糖値を測定するために、人体に針を穿刺し血液を流出させる器具である。この穿刺器具1は、長い筒状の本体ケース2の前端開口部3に、
図2の穿刺針カートリッジ4を装着して穿刺を行う。この穿刺に関する動作には、穿刺針カートリッジ4の装着動作、穿刺動作、穿刺針カートリッジ4の廃棄動作の3つの動作がある。
【0017】
本例において、先ず、第1の装着動作では、
図3に示すように、使用者が穿刺器具1を例えば右手で握り、穿刺器具1の前端開口部3を直立させた穿刺針カートリッジ4に向けて押し下げる。すると、穿刺針カートリッジ4が穿刺器具1に装着される。
次に、第2の穿刺動作では、
図4に示すように、使用者が穿刺針カートリッジ4を例えば左手の指に押し当て、穿刺器具1を握った右手の親指で本体ケース2の操作ボタン5を押すと穿刺が行われ、穿刺した部位に血液を流出させる。
【0018】
最後に、第3の廃棄動作では、
図5に示すように、使用者が再び操作ボタン5を押すことで、穿刺器具1から穿刺針カートリッジ4が廃棄される。
このように、本例においては、穿刺器具1を片手で持った状態で、1つのボタンだけで、一連の穿刺関連動作(装着動作、穿刺動作、廃棄動作)を、行うことが出来るので、きわめて使い勝手がよく、その結果として、一連の穿刺関連動作の操作性を高めることができる。
【0019】
以下、先ず、
図6〜
図9を用いて、穿刺針カートリッジ4の説明を行い、次に、
図10〜
図12を用いて穿刺器具1の説明を行う。
穿刺針カートリッジ4は、
図6に示すように、ほぼ円柱形状のランセット本体6と、ほぼ円筒形状のランセットケース7により構成される。
円柱状のランセット本体6は樹脂製で、その後端側に穿刺器具1への接続部8、前端側に円柱状の穿刺針カバー部9、中間部に破断部10を有しており、このランセット本体6の破断部10の前後に渡って、ランセット本体6に穿刺針11(
図17から
図21にも図示)が埋め込まれている。さらに、ランセット本体6の穿刺針カバー部9の外周には、外周方向に向けて突出するガイド突起12を180度対向した位置に2個(複数個)設けている。
【0020】
この円柱状のランセット本体6に対して、円筒状で樹脂製のランセットケース7が、ランセット本体6後端に設けた接続部8側から被せられ、
図7に示すように、前記ランセット本体6の中間部外周に装着される。
円筒状のランセットケース7の内面には、
図6に示すように、その前端から後方に向けて、ガイド突起12によってこのランセットケース7が旋回力を受ける螺旋状の案内部13を設けている。なお、案内部13は、2個のガイド突起12に対応する位置、つまりガイド突起12と同じく180度対向した位置に2個(複数個)設けている。
【0021】
図8はランセットケース7の内面側の展開図で、螺旋状の案内部13部分を示している。案内部13は、円筒状のランセットケース7の内面に、180度の間隔でランセットケース7の前端から後方に向けて設けている。
このため、ランセットケース7を前方向(
図7、
図8の矢印C方向)に摺動させると、螺旋状の案内部13はガイド突起12上を矢印D方向に摺動し、ランセットケース7にランセット6回りの旋回力を発生させることができる。
【0022】
また、
図6に示すように、ランセット本体6の破断部10よりも後方側には、外周方向に向けて突出する摺動突起14を、180度対向させて2個(複数個)設けると共に、ランセットケース7には、摺動突起14を前後方向に摺動案内する摺動溝15を、180度対向させて2個(複数個)設けた。
このため、ランセットケース7が前方向に摺動すると、2個の摺動突起14は各々の摺動溝15内を後方側に摺動する。
【0023】
さらに、ランセットケース7の前端側外周部には、
図2に示すように、接続部8に向けて開口した環状の凹部7aを設け、この凹部7aの底部に環状の当接面7bを設けた。
このため、穿刺針カートリッジ4の装着動作時に、穿刺器具1の前端部を環状の凹部7aに差し込み、この前端部で当接面7bを押すことができる。
すると、ランセットケース7が、
図9(a)に示すように、前方向(
図9の矢印C方向)に摺動させられるとともに、その内面側では、
図9(b)、(c)に示すように、螺旋状の案内部13がガイド突起12上を摺動するので、このランセットケース7に時計方向(矢印B方向)の旋回力を発生させることができる。つまり、ランセットケース7は、前方向に摺動することでランセット本体6の回りを時計方向に回転するものとなる。
【0024】
なお、
図9(b)は、ランセットケース7が、
図9(a)の状態から時計方向に90度回転した状態を示し、
図9(c)は、180度回転した状態を示している。
このランセットケース7の旋回力を利用して、破断部10部分をねじ切って破断させ、穿刺針11を表出させる。
具体的には、時計方向に回転するランセットケース7は、
図9(b)に示す摺動溝15の摺動壁面15aを介して、ランセット本体6の摺動突起14を時計方向に回動させる。この摺動突起14は、ランセット本体6の破断部10よりも後方側を時計方向に回動させる。
【0025】
その一方、前方向に摺動するランセットケース7は、
図9(b)、(c)に示すように、その螺旋状の案内部13がランセット本体6のガイド突起12を押し、ランセット本体6の破断部10よりも前方側を反時計方向(案内部13の回転方向とは反対方向で、矢印B方向とは反対方向)に回動させる。
したがって、ランセットケース7が前方向へ摺動すると、穿刺針11が埋め込まれた破断部10は、その前後の接続部によって逆方向の回動力を受け、
図9(a)の状態からねじ切りが開始されて、
図9(b)から(c)に移行する状態で破断する。
【0026】
すなわち、本例の穿刺針カートリッジ4は、この穿刺針カートリッジ4を穿刺器具1に装着する動作に伴い、穿刺針カートリッジ4内においてランセット本体6の破断部10よりも後方側を時計方向に回動させ、前方側を反時計方向に回動させる。この2つの逆方向の回動により破断部を破断させる回動機構を、この穿刺針カートリッジ4自身が有するものである。
【0027】
このため、片手で握った穿刺器具1の前端開口部3を、ただ単に直立させた穿刺針カートリッジ4に向けて押し下げるだけで、穿刺針カートリッジ4を接続部8で穿刺器具1に装着できるとともに、その破断部10の前後の接続部に逆方向の力を発生させ、破断部10を確実に破断させることができる。
したがって、穿刺針カートリッジ4から穿刺針カバー部9を容易に取り除くことができ、ランセット本体6に穿刺針11を表出させることができる。
【0028】
その結果として、以降の穿刺動作が適切に行われるようにすることができる。
また、上述のごとく、装着動作時には、穿刺針カートリッジ4自体が破断部10の前後部分を逆方向に回動させるので、穿刺針カートリッジ4はただ単に直立させていればよく、穿刺針カートリッジ4を固定しておく必要などはない。その結果として、使い勝手の良いものとなる。
【0029】
さらに、ランセット本体6はその前端に、
図2に示すように、円板形状の基台部16を有している。この基台部16には、ランセットケース7の前端に対向する部分に、円柱状の穿刺針カバー部9を挟んで2個の板バネ17(弾性体の一例)を、この基台部16と一体的に設けた。
このため、装着動作の終了時には、
図9(c)に示すように、破断部10部分が完全にねじ切られ、基台部16の2個の板バネ17が、ランセットケース7の前端と基台部16に挟まれて蓄力された状態となる。
【0030】
この時、板バネ17は基台部16を後方側(
図9の上方向)に押し上げ、使用者に装着動作の終了を知らせるとともに、使用者に次の動作、つまり押し下げた穿刺器具1の持ち上げ動作を案内することができるものとなり、使い勝手のよいものとなる。
そして、使用者が穿刺器具1を持ち上げると、基台部16の板バネ17の蓄力が開放され、この開放力により、
図17に示すように、穿刺針カバー部9がすでにねじ切られた破断部10部分から弾けるように外される。すると、ランセット本体6の前端部分に穿刺針11が表出する。
【0031】
このように、自動的に穿刺針カバー部9を外すことができるので、この点からも使い勝手の良いものとなる。
なお、本例の基台部16は、穿刺針カバー部9よりも大きく構成しているので、穿刺針カートリッジ4を安定的に直立させることができ、装着動作を容易にしている。
次に、穿刺針カートリッジ4を装着する穿刺器具1について説明する。
【0032】
図10は、筒形状をした穿刺器具1を軸方向に分解した図である。
本例における穿刺器具1の本体ケース2は、前端開口部3および後端開口部18を有する筒状体で、ケースピース2aとケースピース2bから構成されている。この本体ケース2内に収納される部品を、
図11を用いて説明する。
本体ケース2内に収納される部品の内、最も大きな部品は、前端側にホルダ挿入筒20を有するメインロッド19である。
【0033】
このメインロッド19の前側には、ランセットホルダ22を有する射出ロッド21を装着する。射出ロッド21は、その前端側に、
図2の穿刺針カートリッジ4のランセット本体6を装着する円筒形状のランセットホルダ22を有している。
この射出ロッド21には、ケースピース2a側に長板形状の作動ロッド23を装着する。この作動ロッド23は後端側にロック爪24を有している。
図12は、射出ロッド21に作動ロッド23が装着された状態を、ケースピース2a側から見た図である。
【0034】
本例の射出ロッド21は、作動ロッド23を本体ケース2の前後方向に摺動自在に装着するとともに、この作動ロッド23は、作動スプリング27(付勢体の一例)により
図10のロック体28方向に付勢している。
より詳細には、作動ロッド23の前端側と後端側に、前後方向に長い長孔25を2個設け、この長孔25を射出ロッド21の2個の軸部26に係合させて、作動ロッド23を本体ケース2の前後方向に摺動自在としている。また、この作動ロッド23の前端部と射出ロッド21の後端部を作動スプリング27により連結し、作動ロッド23を後方側へと付勢する、つまり、
図10のロック体28方向に付勢する。
【0035】
また、
図11に示すように、射出ロッド21は、ケースピース2b側で、その後端側の軸部29に、穿刺カム30の軸支部31を嵌合させる。
そして、
図10に示すように、射出ロッド21前端側のランセットホルダ22をメインロッド19のホルダ挿入筒20に差し込むと、射出ロッド21は、メインロッド19により本体ケース2の前後方向に摺動自在に保持される。この
図10においては、ホルダ挿入筒20に挿入されたランセットホルダ22の先端側の状態がよく分かるようにするため、ホルダ挿入筒20の一部を切り欠いて表示している。
【0036】
メインロッド19には、射出ロッド21を本体ケース2の前方側(前端開口部3側)に付勢するメインスプリング34(付勢体の一例)を設けている。
より詳細には、射出ロッド21上の穿刺カム30に軸部32を設け、この軸部32とメインロッド19前端側の軸部33を、メインスプリング34で連結し、射出ロッド21を前方側に付勢する。このため、射出ロッド21は、このメインスプリング34の付勢力により前端開口部3に向けて摺動し、これにより穿刺動作が行われる。
【0037】
本体ケース2は、この本体ケース2の後端開口部18の内外に摺動自在に設けた操作ボタン5を備えている。操作ボタン5は、前端に操作体35を有し、その後端側の円筒部にボタンスプリング36を内包している。
本例の操作ボタン5において、その操作体35には、前端側の中央部にロック体28の押出爪40に当接する平面部50を設けるとともに、この平面部50に隣接する後方側への上傾斜面部51、下傾斜面部52を設けている。
【0038】
このため、操作ボタン5が操作されると、操作体35により前方側のロック体28を操作することができる。
このロック体28は、本例の特徴的な部品で、操作ボタン5の操作により、ロック体28が「穿刺動作」と「廃棄動作」を切り替えて実施するものである。
具体的には、ロック体28は、操作ボタン5と射出ロッド21の間で、メインロッド19後方側に設けた軸部37部分に回動自在に軸支させている。また、ロック体28は、
図10、
図11、
図13〜
図21に示すように扇形状で、その要の部分に軸支部38を有し、この軸支部38を、扇部側を操作ボタン5に向けた状態で、メインロッド19の軸部37に嵌合させている。
【0039】
さらに、ロック体28は、
図10、
図11に示すように、扇の先端側で作動ロッド23側(以後、扇下方側とも称す)に、作動ロッド23のロック爪24に係合する係合爪39を有し、扇の先端側で作動ロッド23と反対側(以後、扇上方側とも称す)に、操作ボタン5の前端側に当接する押出爪40を有している。
また、このロック体28の係合爪39を作動ロッド23のロック爪24方向(この
図10における時計回り方向で、以後、時計方向と称す)に付勢するロック体スプリング41(付勢体の一例)を、コイルバネで形成し、ロック体28の軸支部38に取り付けている。
【0040】
なお、
図10では、ロック体28の係合爪39がロック爪24に係合し、射出ロッド21の前方側への摺動(射出)がロックされた状態となっている。
このロック体28を回動させて穿刺動作と、廃棄動作を切り替えるのであるが、この切り替え動作については、後で詳細に説明する。
本体ケース2の前端側には、円筒形状のブッシュ42を本体ケース2の軸回りに回動自在に装着する。具体的には、ブッシュ42の後方側に設けた回転リング43を、本体ケース2の溝44に挿入し、本体ケース2に回転自在に装着している。このブッシュ42に、メインロッド19のホルダ挿入筒20を挿入する。
【0041】
この状態でケースピース2aとケースピース2bを合致させる。
以上の構成において、以下、
図13〜
図17を用いて「装着動作」を説明し、次に
図18を用いて「穿刺動作」を説明し、
図19〜
図21を用いて「廃棄動作」を説明する。
図13は、本体ケース2の初期状態を示す図である。
初期状態とは、使用者が、
図3に示すように、穿刺器具1を握り、この穿刺器具1を直立させた穿刺針カートリッジ4に向けて押し下げた時の状態である。
【0042】
穿刺針カートリッジ4の後方側が、穿刺器具1の前端開口部3から本体ケース2内へ挿入される時に、本体ケース2内では、メインロッド19が、操作ボタン5が内包するボタンスプリング36により前方側へと押されている。そして、このメインロッド19に装着した射出ロッド21のケースストッパ当て45が本体ケース2の前ケースストッパ46に当接した位置で、メインロッド19は停止している。
【0043】
メインロッド19の中央で、メインスプリング34は、射出ロッド21の穿刺カム30を前方側に引っ張る。このため、穿刺カム30は軸支部31を中心に反時計方向(
図13における反時計回り方向で、以後、反時計方向と称す)に回転し、その停止爪47を射出ロッド21のリブ48に当接させて停止する。
また、メインスプリング34は、穿刺カム30を介して射出ロッド21を前方側へ引っ張る。射出ロッド21は、穿刺カム30がメインロッド19の穿刺カムストッパ49に当接した位置で、メインロッド19に対して停止する。
【0044】
本例のメインロッド19には、その後方側に軸支したロック体28が時計方向(ロック体スプリング41の付勢方向)に回動された際に、ロック体28の押出爪40が操作ボタン5の平面部50に対向する位置で回動を止めるロックピース下ストッパ53(ストッパ部の一例)を設けた。
このため、ロック体スプリング41により時計方向に回動させられたロック体28は、その扇上方側の押出爪40をロックピース下ストッパ53に当接させて停止する。
【0045】
図14は、穿刺針カートリッジ4が本体ケース2内へ押し込まれた状態を示す図である。
図14の穿刺針カートリッジ4の状態は、
図9(a)と対応している。
穿刺針カートリッジ4が本体ケース2内へ押し込まれると、ランセット本体6が、その接続部8で射出ロッド21のランセットホルダ22に係合される。これにより穿刺針カートリッジ4が穿刺器具1に装着される。
【0046】
これ以降、穿刺針カートリッジ4が本体ケース2内へさらに押し込まれると、ランセット本体6が射出ロッド21を後方側へと押していく。射出ロッド21が、穿刺カム30、メインスプリング34を介して、メインロッド19を後方側へと押すと、メインロッド19は、
図11に示すように、その後端部54が本体ケース2のメインロッドストッパ55に当接して停止する。すると、この
図14に示す状態となる。
【0047】
さらに射出ロッド21が押し込まれると、射出ロッド21は、停止したメインロッド19内を後方側へと摺動する。このため、射出ロッド21の穿刺カム30はメインスプリング34を引き伸ばし、このメインスプリング34には穿刺力(つまり穿刺のための射出力)が畜力される。
一方、穿刺針カートリッジ4では、破断部10部分でねじ切りが開始される。
【0048】
具体的には、本体ケース2の前端側で、ブッシュ42の前端に設けた環状の押当面42aがランセットケース7の環状の凹部7aに差し込まれ、
図2に示す環状の当接面7bに当接する。そして、穿刺針カートリッジ4が本体ケース2内へ押し込まれると、ブッシュ42の押当面42aが当接面7bを押し、ランセットケース7を基台部16に向かって摺動させる。この摺動により、上述したごとく、ランセットケース7内面の案内部13がガイド突起12上を螺旋状に摺動し、ランセット本体6の破断部10の前後の接続部に逆方向の力を発生させ、破断部10部分でねじ切りが開始される。
【0049】
なお、ブッシュ42もランセットケース7の回転に伴って回転する。
図15は、ランセットケース7がランセット本体6に対して90度旋回した状態(
図9のb状態)を示す図である。
この時、穿刺針カートリッジ4では、破断部10部分が、ねじ切り寸前の状態となっている。
【0050】
穿刺器具1では、射出ロッド21が後方側へと移動し、作動ロッド23後方側のロック爪24がロック体28の係合爪39に当接する。
本例の作動ロッド23は、その後端側のロック爪24でロック体28の係合爪39を、ロック体スプリング41による付勢方向とは反対方向に回動させる。そして、その後、係合爪39がロック体スプリング41により付勢方向へ回動するのを阻止するために、この作動ロッド23のロック体28の係合爪39に対向する面を回動阻止部23aとした。
【0051】
このため、
図15に示す状態から、射出ロッド21が後方へと移動すると、ロック爪24がロック体28の扇下方の係合爪39を押し上げ、係合爪39は反時計方向に回動する。その後、
図16に示すように、ロック爪24が係合爪39を押し越すと、係合爪39は時計方向に回動するが、作動ロッド23の回動阻止部23aに当接させて回動を停止させることができる。
【0052】
図16は、ランセットケース7がランセット本体6に対して180度旋回した状態(
図9のc状態)を示す図である。
射出ロッド21は、停止しているメインロッド19内を後方側へ摺動し、そのケースストッパ当て45が本体ケース2の後ケースストッパ56に当接すると停止する。メインスプリング34は最大に引き延ばされ、穿刺力が畜力された状態となる。
【0053】
穿刺針カートリッジ4では、破断部10部分が完全にねじ切られる。また、基台部16の2個の板バネ17が、ランセットケース7の前端と基台部16に挟まれて蓄力された状態となる。
図17は、穿刺針カートリッジ4の装着動作の完了を示す図である。
使用者が、押し下げていた穿刺器具1を持ち上げると、基台部16の板バネ17の蓄力が開放され、この開放力により、穿刺針カバー部9がすでにねじ切られた破断部10部分から弾けるように外される。その結果として、ランセット本体6の前端部分に穿刺針11を表出させることができる。
【0054】
すなわち、装着動作においては、片手で握った穿刺器具1を、直立させた穿刺針カートリッジ4に向けて押し下げると、穿刺器具1ではメインスプリング34に穿刺力が畜力され、穿刺針カートリッジ4では破断部10が破断する。その後、穿刺器具1を持ち上げると、穿刺針カバー部9が外されて穿刺針11が表出するのである。
したがって、穿刺器具1を握り、穿刺針カートリッジ4に向けて押し下げ、持ち上げるだけで、簡単に穿刺針カートリッジ4の装着動作を実施できる。
【0055】
穿刺器具1を持ち上げると、穿刺針カートリッジ4による射出ロッド21への押し込み力はなくなり、射出ロッド21はメインスプリング34に引かれて前方側へ移動する。このため、作動ロッド23のロック爪24も
図16の状態から前方側に移動し、この
図17に示すように、ロック爪24と係合爪39が係合してロック状態が形成される。
このロック状態により、射出ロッド21は前端開口部3側への摺動(射出)が止められ、穿刺の準備が完了する。つまり、この係合爪39とロック爪24の係合が解除されるとロック状態が解除され、射出ロッド21は前方側へと射出されることとなる。
【0056】
なお、作動ロッド23を挟んで、係合爪39とは反対側の本体ケース2部分には突起57が設けられ、この突起57が作動ロッド23を支持している。
図18は、穿刺動作を示す図である。
本例の作動ロッド23は、
図17に示すように、作動ロッド23のロック爪24を、ロック体28の扇下方側の係合爪39に係合させた時には、ロック体28の扇上方側の押出爪40を、操作ボタン5の上傾斜面部51に対向する位置に配置している。
【0057】
このため、
図18に示すように、使用者が、操作ボタン5を前方側に押す(操作する)と、操作体35の上傾斜面部51が押出爪40に当接し、この押出爪40が押し上げられて、ロック体28を反時計方向に回動させる。すると、係合爪39が回動してロック爪24との係合が外れ、ロック状態を解除することができる。
ロック状態が解除されると、射出ロッド21は、メインスプリング34に引っ張られて前端開口部3側へと勢いよく発射される。
【0058】
射出ロッド21は、そのケースストッパ当て45が前ケースストッパ46に当接するまで摺動する。穿刺器具1の前方側では、射出ロッド21に係合されたランセット本体6の穿刺針11が、穿刺針カートリッジ4の前端から射出され、穿刺が行われる。
この射出ロッド21の摺動中に、穿刺カム30は、その中央部が穿刺カムストッパ49に当接して時計方向に回動しメインスプリング34を引き伸ばす。次の瞬間、メインスプリング34は再収縮し、その結果として、射出ロッド21は、穿刺後に、
図19に示すように後端開口部18側へと引かれ、穿刺針11がランセットケース7内へと引き戻される。
【0059】
図18に戻って、本例の本体ケース2には、ロック体28の押出爪40が操作ボタン5の上傾斜面部51によって反時計方向(つまり、ロック体スプリング41の付勢力とは反対方向)に回動された際に、この反対方向への回動を止めるロックピース上ストッパ58(ストッパ部の一例)を設けた。
このため、使用者が操作ボタン5をさらに押し込むと、押出爪40が回動しロックピース上ストッパ58に当接する。この当接状態では、操作ボタン5を押し込めなくなるので、使用者は穿刺の終了を認識することができる。
【0060】
したがって、使用者は、操作ボタン5の押し込みを停止し、操作ボタン5から指を離すことになる。その結果として、操作ボタン5を押すだけで簡単に穿刺動作を実施できるものとなる。
さらに本例においては、本体ケース2を長筒状とし、この本体ケース2の軸上に、本体ケース2の後端開口部18の内外に摺動自在な操作ボタン5を設け、この本体ケース2の軸上で操作ボタン5を摺動させ、これにより穿刺動作を行わせる構成とした。
【0061】
このため、
図4に示すように、穿刺動作時には、穿刺針カートリッジ4を指に押し当てた状態で、長筒状の本体ケース2を掌で握り込んで安定させ、この安定状態から操作ボタン5を本体ケース2の軸上の穿刺位置に向けて押し込むことができる。
その結果として、極めて安定的な状態で穿刺を行うことができ、使い勝手の良いものとなる。
【0062】
図19は、穿刺動作の完了状態を示す図で、廃棄動作の始まりの図である。
使用者が操作ボタン5から指を離すと、操作ボタン5は内包したボタンスプリング36の復帰力により穿刺動作前の位置まで戻される。
本例のメインロッド19には、上述のように、ロック体28が時計方向(ロック体スプリング41の付勢方向)に回動された際に、ロック体28の押出爪40が操作ボタン5の平面部50に対向する位置で回動を止めるロックピース下ストッパ53(ストッパ部の一例)を設けた。
【0063】
このため、ロック体28の押出爪40は、ロックピース下ストッパ53により、操作ボタン5の平面部50に対向する位置で回動を停止する。したがって、操作ボタン5が再び押し込まれた時には、操作体35は、その平面部50で押出爪40を介してロック体28を操作することができる。
図20は、穿刺針カートリッジ4の廃棄動作を示す図である。
【0064】
本例のロック体28は、メインロッド19への軸支部38を、操作ボタン5の平面部50から傾斜した上傾斜面部51に対応する部位に位置させた。
このため、操作ボタン5が押されると、操作体35の平面部50がロック体28の押出爪40に当接し、この時、平面部50と押出爪40の当接部よりも、軸支部38は上傾斜面部51側に位置するので、押出爪40は時計方向に回転しようとする。しかし、この押出爪40は、ロックピース下ストッパ53に当接し回動が止められている。したがって、操作ボタン5が押されると、押出爪40、ロック体28の軸部37を介して、このロック体28とともにメインロッド19を前方側へと摺動させることができる。
【0065】
なお、射出ロッド21も、メインスプリング34に引かれて、メインロッド19とともに前方側へと摺動する。
本例のメインロッド19は、その前端側に、射出ロッド21のランセットホルダ22を収納するホルダ挿入筒20を設け、このホルダ挿入筒20の前端に、ランセット押出面59を設けた。
【0066】
このため、メインロッド19が前方側へ摺動すると、ランセット押出面59がランセットケース7の後端に当接し、穿刺針カートリッジ4を本体ケース2外へと押し出すことができる。
この押し出し動作中に、射出ロッド21は、そのケースストッパ当て45が前ケースストッパ46に当接し、本体ケース2に対して摺動を停止する。この射出ロッド21に装着された作動ロッド23も停止する。
【0067】
操作ボタン5がさらに押されると、メインロッド19とロック体28は前方側に摺動し、ロック体28の扇下方側の係合爪39が停止した作動ロッド23のロック爪24と当たる。
本例のロック体28は、その扇下方側の係合爪39の前面側に、作動ロッド23のロック爪24を本体ケース2の前方側に押す押圧面60を設けた。
【0068】
また、本例の射出ロッド21は、上述のように、作動ロッド23を本体ケース2の前後方向に摺動自在に装着するとともに、この作動ロッド23は、作動スプリング27によりロック体28方向に付勢する。
このため、
図21に示すように、射出ロッド21が停止した状態においても、押圧面60がロック爪24を押し、作動ロッド23を前方側へと摺動させることができる。これにより、メインロッド19とロック体28は前方側への摺動を続けることができる。
【0069】
図21は、廃棄動作の完了状態を示す図である。
操作ボタン5がさらに押されると、本体ケース2の前方側で、ランセット押出面59がランセットケース7を前方側に押す。ランセットケース7は摺動突起14を介してランセット本体6を前方側へと引き、ランセット本体6の接続部8が停止している射出ロッド21のランセットホルダ22から引き抜かれる。そして、ランセット押出面59がランセットケース7を本体ケース2外へと完全に押し出すと、廃棄動作が完了する。
【0070】
その結果として、操作ボタン5を押すだけで穿刺針カートリッジ4の廃棄動作を実施できる。
その後、使用者が指を操作ボタン5から外せば、メインスプリング34の復帰力によってメインロッド19が後方へと引き戻され、
図13に示す初期状態に戻ることとなる。
すなわち、穿刺動作と廃棄動作において、本例のロック体28は、穿刺動作前に、
図17に示すように、押出爪40を操作体35の上傾斜面部51に対向する位置に配置する。一方、廃棄動作前に、
図20に示すように、押出爪40を操作ボタン5の平面部50に対向する位置に配置するものである。
【0071】
このため、ロック体28が、操作ボタン5の動作を二通りの動作、つまり、穿刺動作と廃棄動作に切り換えることができるのである。
したがって、
図3〜
図5に示したように、使用者は、一度、本体ケース2の中央部を握ってしまえば、その状態のまま、握りを持ち替えること無く、穿刺針カートリッジ4の装着動作、穿刺動作、廃棄動作をおこなうことができる。しかも、穿刺動作、廃棄動作は、1つの操作ボタン5で操作することができる。
【0072】
その結果として、一連の穿刺動作を片手で操作を行うことができ、極めて使い勝手が良く、一連の穿刺関連動作の操作性を高めることができる。
なお、穿刺針カートリッジ4において、摺動突起14は、
図17に示すように、穿刺動作前には、弾性変形してほぼ全体が摺動溝15内に入った状態となり、この状態から
図18に示すように穿刺が行われると、摺動突起14の先端は一度摺動溝から前方側へと抜け、再び、
図19に示すように後方側に引かれて摺動突起14のほぼ全体が摺動溝15内に入った状態となる。
【0073】
その後、
図20に示すように、穿刺針カートリッジ4が排出されると、摺動突起14は、その先端側を摺動溝15の外方にまで広げ、摺動溝15内を摺動する。
本例のランセットケース7には、
図20、
図21に示すように、その前方側内周部で、このランセットケース7の先端より後方側で穿刺針11の長さよりも奥側の位置に、ランセット本体6が前方に摺動した時に、このランセット本体6の摺動突起14の先端を当接させる摺動受61を設けている。
【0074】
このため、穿刺針カートリッジ4の排出後は、摺動突起14の先端と摺動受61が当接した位置で穿刺針11が止まるものとなり、穿刺針11が穿刺針カートリッジ4から突出することはない。
さてここで、まだ穿刺針カートリッジ4の装着動作に慣れていない使用者が、操作ボタン5に親指を乗せた状態で装着動作を行うと、装着動作の途中で操作ボタン5が押し込まれてしまう時がある。具体的には、
図14に示すように、前方側のランセット本体6がランセットホルダ22を介して射出ロッド21に係合した状態から、後方側の操作ボタン5が押し込まれる時がある。この時は、操作ボタン5が、その平面部50、押出爪40を介してロック体28を前方側へ摺動させるので、ロック体28の係合爪39が前方側のロック爪24に当たり、このロック爪24を射出ロッド21に向けて押し込むことになる。
【0075】
つまり、射出ロッド21は、射出ロッド21は、前方からランセット本体6の力を受け、後方から操作ボタン5の力を受けることになる。
そこで、本例の射出ロッド21は、作動ロッド23を本体ケース2の前後方向に摺動自在に装着した。
このため、操作ボタン5がさらに押しこまれると、係合爪39の押圧面60がロック爪24を介して作動ロッド23を前方側に押し、この作動ロッド23を射出ロッド21上で前方側へ摺動させる。つまり、射出ロッド21は、前後方向からの力を作動ロッド23の摺動により受け流すことができる。したがって、射出ロッド21自体が大きな力を受けることはなく、破損などの不適切な状態を発生させることはない。
【0076】
さらに、射出ロッド21は大きな力を受けることがないので、十分な強度を保持した状態で薄肉化、軽量化を計ることができる。この軽い射出ロッド21は小さな射出力で穿刺動作させることができるので、メインスプリング34の前方側への付勢力は小さくてすみ、したがって、穿刺動作時に、メインスプリング34に引かれた穿刺カム30がリブ48と衝突して発生するバチッという大きな衝突音を小さくすることができる。
【0077】
その結果として、使用者の穿刺に対する恐れを和らげるものとなり、この点からも使い勝手のよいものとなる。
以上説明したごとく、本例の穿刺針カートリッジ4は、後端側に穿刺器具1への接続部8、前端側に穿刺針カバー部9、中間部に破断部10を有するランセット本体6と、ランセット本体6の破断部10の前後に渡ってこのランセット本体6に埋め込まれた穿刺針11と、ランセット本体6の中間部外周に装着されたランセットケース7とを備えている。
【0078】
ランセット本体6の穿刺針カバー部9に、外周に向けて突出するガイド突起12を設けると共に、ランセットケース7の前端から後方に向けて、ガイド突起12によってこのランセットケース7が旋回力を受ける螺旋状の案内部13を設けている。
ランセット本体6の破断部10よりも後方側には外周方向に向けて突出する摺動突起14を設けると共に、ランセットケース7には摺動突起14を前後方向に摺動案内する摺動溝15を設けたものとなっている。
【0079】
このため、装着動作時の操作性を高めることができる。
すなわち、本例の穿刺針カートリッジ4は、この穿刺針カートリッジ4を穿刺器具1に装着する動作に伴い、穿刺針カートリッジ4内においてランセット本体6の破断部10よりも後方側を回動させ、それによって、破断部10を破断させる回動機構を、この穿刺針カートリッジ4自身が有するものである。
【0080】
このため、片手で握った穿刺器具1の前端開口部3を、ただ単に直立させたこの穿刺針カートリッジ4に向けて押し下げるだけで、穿刺針カートリッジ4が穿刺器具1に装着されるとともに、その破断部10が破断されて穿刺針11が表出する。その結果として、破断部10を確実に破断させ、それによって以降の穿刺動作が適切に行われるようにすることができる。
【0081】
また、本例の穿刺針カートリッジ4を装着する穿刺器具1は、操作ボタン5と射出ロッド21間のメインロッド19部分に、ロック体28を回動自在に軸支させている。このロック体28は、作動ロッド23のロック爪24に係合する係合爪39と、操作ボタン5の前端側に当接する押出爪40を有し、このロック体28の係合爪39をロック爪24方向に付勢するロック体スプリング41を設けたものである。
【0082】
このため、先ず、操作ボタン5の操作で、ロック体28は回動させられ、この回動で係合爪39とロック爪24の係合を解除して射出ロッド21が射出されると、穿刺動作が実施される。次に、操作ボタン5の操作で、ロック体28は押出爪40を介して前端開口部3側に押され、押されたロック体28が軸支部を介してメインロッド19を押すと、穿刺針カートリッジ4の廃棄動作が実施される。
【0083】
つまり、1つの操作ボタン5の操作を、ロック体28が「穿刺動作」と穿刺針カートリッジの「廃棄動作」の二通りの動作に切り替えることが出来る。
その結果として、きわめて使い勝手がよく、一連の穿刺関連動作の操作性を高めることができる。
(前提例の2)
本前提例の2は、前提例の1に穿刺針カートリッジ4に工夫を加え、廃棄動作後の取り扱いを、さらに容易にしている。
【0084】
上述した前提例の1のランセットケース7には、
図20、
図21を経て廃棄された状態では、ランセット本体6が前方に摺動した時に、このランセット本体6に設けた摺動突起14の先端を当接させる摺動受61を設けている。
このため、穿刺針カートリッジ4の排出後、摺動突起14の先端と摺動受61が当接すると、ランセット本体6は前方側への摺動が止められる。したがって、穿刺針11が穿刺針カートリッジ4から突出することはなく、穿刺針カートリッジ4を安全な状態で取り扱うことができるものとなっている。
【0085】
しかしながら、
図22の矢印で示すように、使用者によりランセット本体6が力一杯に前方側に押し込まれる事がある。このような時に、摺動突起14は、使用者の力に抗しきれず外方へと広げられた後、後方へと曲がり、そのため、ランセット本体6が前方側へと進み、穿刺針11が穿刺針カートリッジ4から出てしまう惧れがあった。
そこで、本例におけるランセット本体6の摺動突起14は、
図23に示すように、長形状で、この摺動突起14には、ランセット本体6から外方に向けて突出する突出部62と、この突出部62に接続された接続部63と、この接続部63から前方側(破断部10側)に伸ばすとともにランセットケース7の摺動受61に当接させるストッパ部64とを設けている。また、接続部63はストッパ部64をランセット本体6の軸に垂直な方向に回動自在に接続している。つまり、接続部63を薄肉とし可撓性を持たせたので、ストッパ部64はランセット本体6の軸に垂直な方向に回動自在となっている。
【0086】
図24は、使用者によりランセット本体6が力一杯に前方側に押し込まれ、摺動突起14が、使用者の力に抗しきれず、ストッパ部64が外方に広げられた後、後方へと曲がり、ストッパ部64が突出部62上に折り重なった状態を示している。
この時、本例の穿刺針カートリッジ4は、突出部62上にストッパ部64が折り重なった状態において、ランセット本体6の外表面からランセットケース7の摺動受61までの間隔D1を、突出部62がランセット本体6から突出した高さD2に、ストッパ部64におけるランセット本体6の軸に垂直な方向の厚さD3aを加えた大きさよりも小さくした。
【0087】
このため、
図24から、さらに使用者がランセット本体6を力一杯に前方側に押し込んだとしても、ランセット本体6の外表面からランセットケース7の摺動受61までの間隔D1は、折り重なったストッパ部64の厚さD3aに突出部62の高さD2を加えた大きさよりも小さいので、これ以上、ランセット本体6が前方側に進むことはない。したがって、穿刺針11が穿刺針カートリッジ4から出てくることはない。
【0088】
その結果として、廃棄動作後の穿刺針カートリッジ4を安全な状態で取り扱うことができるものとなる。また、本例における長形状の摺動突起14は、その接続部63部分の曲げ強さを、突出部62部分および前記ストッパ部64部分よりも弱くした。
具体的には、
図23に示すように、接続部63部分の、摺動突起14の長軸に垂直な方向の厚さD4を、ストッパ部64部分の、摺動突起14の長軸に垂直な方向の厚さD3、および突出部62部分の、摺動突起14の長軸に垂直な方向の厚さD5よりも薄肉とした。この薄肉化により、接続部63部分の曲げ強さを、突出部62部分、ストッパ部64部分よりも弱くした。
【0089】
このため、摺動突起14は、最も弱くなった接続部63部分でストッパ部64を外方および後方側へと折り曲げることができるので、ストッパ部64と突出部62を折り重ねることができる。したがって、穿刺針11が穿刺針カートリッジ4から出てくることはない。
また、本例の摺動突起14は、
図23に示すように、接続部63から破断部10側にむけてランセット本体6に平行に折り曲げ、中部から前方側をランセット本体6の外方に拡げて、ストッパ部64を形成している。
【0090】
このため、ストッパ部64の中部から前方側にかけてランセット本体6の外方に拡がった部分は、
図24に示すように、ストッパ部64と突出部62を折り重ねた時には、その先端がランセット本体6に当接しブリッジを形成する。したがって、ストッパ部64と突出部62を適切に折り重ねることができ、穿刺針11が穿刺針カートリッジ4から出てくることはない。
【0091】
さらにまた、本例においては、
図25(a)に示すように、ランセット本体6に設けた摺動突起14のストッパ部64をランセットケース7の摺動受61に当接させた状態で、
図25(b)に示すように、ランセット本体6のガイド突起12をランセットケース7の螺旋状の案内部13に当接させた構成としている。これにより、ガイド突起12上を螺旋状の案内部13が確実に摺動するものとなる。
【0092】
具体的に説明すると、穿刺針カートリッジ4は、その製造時において以下の製造工程を有し、製造される。
まず、ランセットケース7をランセット本体6の外周部に被せて押し下げ、このランセットケース7の螺旋状の案内部13をランセット本体6のガイド突起12に当接させる。この状態から、ランセットケース7を回転させながら押し下げることで、破断部10でねじりを開始させる。
【0093】
その後、たとえばランセットケース7を30度回転させた位置では、
図25に示すように、ランセットケース7の摺動受61がランセット本体6の摺動突起14の下方側にまで下がるので、この位置でランセットケース7を解放する。すると、破断部10部分のねじりによる復元力がランセットケース7を逆回転させて押し上げようとするが、摺動突起14が、そのストッパ部64を摺動受61に当接させてランセットケース7を停止させる。
【0094】
このため、摺動突起14の弾性により、ランセットケース7を、螺旋状の案内部13がガイド突起12に適切に乗り上げた位置で静止させることができる。
その結果として、穿刺針カートリッジ4を取り扱っている時に、案内部13がガイド突起12から外れてしまうことなどはなく、その後の装着動作で、螺旋状の案内部13を、ガイド突起12上を適切に摺動させることができるものとなる。
【0095】
(前提例の3)
本例における穿刺針カートリッジ4を
図26に示す。この穿刺針カートリッジ4は、
図2に示す前提例の1に係る穿刺針カートリッジ4において、その基台部16に代えて、ほぼ直方形状をした分離体65を設けたものである。
この分離体65は、
図26(a)に示すように、穿刺針カバー部9を接続した上面中央部を上方の穿刺針カバー部9側に向けて突出させた状態から、
図26(b)に示すように、下方、つまり穿刺針カバー部9側とは反対側に向けて下げた状態に変形動作させる構成としている。
【0096】
そして、この分離体65の変形動作、つまり、分離体65の上面中央部を上方から下方に変形させる動作により、上面中央部に接続した穿刺針カバー部9を穿刺針11から引き抜くことができる。
より具体的に説明すると、本例の穿刺針カートリッジ4において、ランセット本体6の前端には、このランセット本体6の破断部10より前方側(
図26の下側)を、このランセット本体6の破断部10より後方側(
図26の上側)から分離させる分離体65を設けている。
【0097】
この分離体65は、円柱形状をしたランセット本体6の前端側(
図26の下側)において、このランセット本体6の軸に直交する方向に、四角い薄板形状の基台面部66を有し、この基台面部66の左右の両側において、ランセット本体6側に延長された四角い薄板形状の側面部67を有している。さらに分離体65は、これら左右の両側面部67の後端側(
図26の上側)から内方側に向けて、可動自在に折り曲げられた四角い薄板形状の可動面部68を有し、これら左右の可動面部68の内方側に、左右の可動面部68に対して可動自在に取り付けられた長棒状の取付部69を有している。
【0098】
つまり、左右の可動面部68が分離体65の上面を形成し、この上面の中央部に取付部69が取り付けられている。
左右の可動面部68は、その内方側をランセット本体6側に傾斜させた状態とすることで、分離体65上面中央部の取付部69をランセット本体6側に突出させ、この突出した取付部69にランセット本体6の穿刺針カバー部9を接続している。そして、分離体65を構成する基台面部66、側面部67、可動面部68、取付部69を、ランセット本体6と共に合成樹脂により一体形成し、分離体65とランセット本体6を一体化している。
【0099】
また、分離体65と一体的に形成された薄板形状の側面部67は、その弾性を利用して、後端側つまり分離体65の上面部側を、外方に向けて弾性変形させることができる構成としている。
このため、分離体65の側面部67が外方へと弾性変形するので、分離体65の上面中央部を上方から下方へと変形動作させることができる。この変形動作については、後で詳細に説明する。
【0100】
さらに、側面部67と可動面部68間、および可動面部68と取付部69間には、薄肉部を設けている。このため、これら薄肉部で、側面部67と可動面部68間、可動面部68と取付部69間をスムーズに折り曲げる(可動させる)ことができるので、分離体65を容易に変形動作させることができる。
以上の構成において、以下、
図27を用いて、その動作を説明する。なお、
図27は穿刺針カートリッジ4と穿刺器具1の要部側面図であり、理解を容易にするため、穿刺器具1とランセットケース7を断面で表している。
【0101】
図27(a)に示すように、穿刺針カートリッジ4の後方側が、穿刺器具1の前端開口部3から挿入されると、本体ケース2の先端がランセットケース7を押し、ランセットケース7は分離体65に向かって摺動する。この摺動により、上述したごとく、破断部10部分でねじ切りが開始される。
そして、
図27(b)に示すように、ランセットケース7の前端側が、分離体65の突出した取付部69の位置まで摺動すると、破断部10部分がねじ切られる。
【0102】
図27(c)に示すように、本体ケース2がさらに下げられると、ランセットケース7の前端側が、分離体65の可動面部68上面に設けた凸部70に当接する。この凸部70はランセットケース7側に突出させており、この凸部70に当接したランセットケース7は、凸部70を介して左右の可動面部68を下方に押し込む。左右の可動面部68は、その内方側の傾斜が小さくなるように動くとともに、両側の側面部67を外方へと押し広げる。
【0103】
そして、
図27(d)に示すように、左右の可動面部の傾斜がなくなり平面となった時には、穿刺針カバー部9は、凸部70を突出させた分とほぼ同じ分だけ、ランセットケース7の前端から引き出された状態となる。このため、穿刺針カバー部9に覆われていた穿刺針11が、凸部70の突出分とほぼ同じ分だけ表出する。
さらに、本体ケース2が下げられると、左右の可動面部68は、その内方側を基台面部66側(
図27の下側)に傾斜させていく。この時、外方へと押し広げられていた側面部67が、その弾性復帰力により、もとの形状へと急激に復帰する。このため、
図27(e)に示すように、可動面部68の内方側は基台面部66側に引き下げられ、これにより取付部69も基台面部66側に急激に引き下げられる。すると、穿刺針カバー部9が破断部10部分から完全に外される。つまり、穿刺針カバー部9が穿刺針11から抜き取られた状態となり、結果的にランセット本体6の前端部分に穿刺針11が表出させられた状態となることができる(ただし、この時点では、まだ穿刺動作を行っていないので、穿刺針11はランセットケース7内に存在した状態となっている)。これにより、分離体65の変形動作が完了し、これ以降、分離体65はこの変形後の状態を保持する。
【0104】
この可動面部68の内方側が基台面部66側に引き下げられる動作は、側面部67の弾性復帰力により急激に行われるので、いわゆるクリック感を伴った動きになる。したがって、使用者はこのクリック感により、穿刺針カートリッジ4の装着動作が終了したことを認識することが出来る。
その後、本体ケース2を持ち上げると、
図27(f)に示すように、変形後の取付部69が穿刺針カートリッジ4から分離する。これにより、穿刺針カートリッジ4の装着動作が完了する。
【0105】
すなわち、本体ケース2を握り、穿刺針カートリッジ4に向けて押し下げ、持ち上げるだけで、簡単に穿刺針カートリッジ4の装着動作を実施でき、以降の穿刺動作が適切に行われるようにすることができる。
なお、穿刺針カートリッジ4は、上述した装着動作により穿刺器具1に装着された後、穿刺動作が行われ、廃棄動作により廃棄されるが、
図26(b)に示すように、一度分離した分離体65を穿刺針カートリッジ4に再装着し、廃棄まで保管することがある。
【0106】
そこで、本例の穿刺針カートリッジ4は、上述のごとく、一度使用すると分離体65を変形させる構造としている。
このため、一度使用した
図26(b)に示す使用済みの穿刺針カートリッジ4と、
図26(a)に示す未使用の穿刺針カートリッジ4を容易に判別することができるので、使用者は、次の測定時に、未使用の穿刺針カートリッジ4を使用することができる。
【0107】
さらに本例においては、使用者が誤って、一度使用した使用済みの穿刺針カートリッジ4を使用しようとした時も、その再使用を防止することができる。
すなわち、本例の穿刺針カートリッジ4は、上述のごとく、一度使用すると分離体65を変形させる構造としている。
このため、
図28に示すように、使用者が、使用済みの穿刺針カートリッジ4を、誤って本体ケース2に挿入したとしても、その分離体65は変形し、取付部69が基台面部66側に引き下げられた状態となっており、この取付部69に接続された穿刺針カバー部9はランセットケース7前端から基台面部66側に向けて再使用防止量Aだけ引き出された状態となっている。
【0108】
つまり、本来の押し込み量(つまり未使用の穿刺針カートリッジ4を使用した時のランセット本体6による射出ロッド21の後方側への押し込み量)に対して、再使用防止量Aだけ押し込み量を不足させた状態を形成している。
この押し込み量不足のため、本体ケース2内で、射出ロッド21後方のロック爪24の後方側への移動距離が不足し、ロック爪24がロック体28の係合爪39に係合することはない。したがって、メインスプリング34が穿刺力を畜力することはなく、穿刺動作が行われることもない。
【0109】
その結果として、使用済みの穿刺針カートリッジ4の不適切な再使用を防止できるものとなる。
なお、本例においては、再使用防止量Aの大きさは、ランセット本体6から表出する穿刺針11の表出長さよりも大きくしている。
このため、たとえ、使用済みの穿刺針カートリッジ4を誤って本体ケース2に挿入し、この
図28に示すように、穿刺針カバー部9が穿刺針11をカバーしない状態となったとしても、再使用防止量Aを穿刺針11の表出長さよりも大きくしたので、本体ケース2内で、射出ロッド21後方のロック爪24の移動距離を不足させることができ、ロック爪24がロック体28の係合爪39に係合することはない。
【0110】
以上のごとく、本発明の前提となる構成については、穿刺針カートリッジ4の回動機構によって破断部10で切断し、その後、穿刺針カバー部9を分離することで穿刺針11を露出させることができる。本発明は、破断部10の切断、穿刺針カバー部9の分離により穿刺針11を容易に露出させるものであり、以下、その点を実施の形態を用いて説明する。
【0111】
(実施の形態1)
本実施の形態における穿刺針カートリッジ4は、
図26に示す前提例の3に係る穿刺針カートリッジ4の基台部16に、
図29に示すように、左右の可動面部68を接続する接続梁71を設けたものである。なおこの
図29は、発明の理解を容易にするために、ランセットケース7を省略している。
【0112】
穿刺針カートリッジ4において、分離体65の左右の可動面部68には、この左右の可動面部を接続する接続梁71を設け、この接続梁71は、ランセット本体6の破断部10が破断された後に破断される構成とした。
このため、穿刺針カートリッジ4を穿刺器具1に装着する時、ランセット本体6の前端に設けた分離体65は、接続梁71によって左右の可動面部68が接続された状態となっている。したがって、分離体65の可動面部68を接続した安定状態で、ランセット本体6の破断部10を上述の回動機構により破断させることができる。
【0113】
その後、さらに穿刺器具1が穿刺針カートリッジ4に向けて押し下げられると、
図27のランセットケース7、取付部69、左右の可動面部68を介して、接続梁71は、下方へ押し下げられると共に、外方へと引っ張られ、その結果として、最後にはこの接続梁71が破断させられる。そして、この接続梁71が破断されると左右の可動面部68が個別に可動することとなるので、上述の変形動作をさせることができる。この変形動作により、穿刺針カバー部9が引き抜かれ、破断部10に穿刺針11が露出するのである。
【0114】
つまり、破断部10に穿刺針を確実に露出させることができるので、以降の穿刺動作が適切に行われるようにすることができる。
以下に詳細に説明する。
分離体65の左右の可動面部68には、ランセット本体6とは反対側に、左右の可動面部68を接続する接続梁71を設けている。この接続梁71は、左右の可動面部68に対して垂直状態となった薄板形状とし、この薄板形状の接続梁71の両端を左右の可動面部68に一体化している。接続梁71は、左右の可動面部68とともに、取付部69を一体的に接続している。なお、分離体65を構成する基台面部66、側面部67、可動面部68、取付部69、接続梁71は、ランセット本体6とともに、合成樹脂により一体形成している。
【0115】
図30は、穿刺針カートリッジ4の断面図で、前提例の3の
図27(b)に対応する。
図27(a)に示すように、穿刺針カートリッジ4の後方側が、穿刺器具1の前端開口部3から挿入されると、本体ケース2の先端がランセットケース7を押し、ランセットケース7は分離体65に向かって摺動し、破断部10部分でねじ切りが開始される。そして、
図27(b)に示すように、ランセットケース7の前端側が、取付部69の位置まで摺動すると、破断部10部分がねじ切られる。
【0116】
この時、本実施形態の分離体65は、
図30に示すように、左右の可動面部68を接続する接続梁71を設け、この左右の可動面部68とともに取付部69を一体的に接続している。つまり、分離体65の可動部分を動けない状態としている。
このため、穿刺針カートリッジ4を穿刺器具1に装着する時に、左右の可動面部68、取付部69が動くことはなく、そのため、円柱状のランセット本体6がグラグラと左右に揺れてしまうことなどは無い。その結果として、ランセット本体6の破断部10を、分離体65の可動部を動けなくした安定状態で、上述の回動機構により破断させることができる。
【0117】
さらに
図29に示すように、接続梁71には、分離体65の基台面部66と対向する側の端部に、ノッチ(切欠部)72を設け、このノッチ72を破断起点部としている。
このため、
図30に示す状態から、さらに穿刺器具1が穿刺針カートリッジ4に向けて押し下げられると、ランセットケース7、取付部69、左右の可動面部68を介して、接続梁71は、下方へ押し下げられると共に、分離体65の外方へと引っ張られる。
【0118】
すると、この押し下げ力と、引っ張り力により、
図31(a)に示す接続梁71では、ノッチ72部分を起点とした破断が開始される。具体的には、
図31(b)に示すように、ノッチ72から取付部69に向けてクラックKが走り、接続梁71が破断される。接続梁71が破断されると左右の可動面部68が個別に可動する状態となる。
このため、上述したように、分離体65では、取付部69を取り付けた左右の可動面部68の内方側が、ランセット本体6側に傾斜させた状態から、
図31(c)に示すように、ランセット本体6側とは反対側に傾斜させた状態へと変形動作する。この変形動作により、穿刺針カバー部9が引き抜かれ、破断部10に穿刺針11が露出するのである。
【0119】
以上のごとく、本実施形態においては、破断部10の切断、穿刺針カバー部9の分離により穿刺針11を容易に露出させることができるので、以降の穿刺動作が適切に行われるようにすることができる。
なお、
図31では、発明の理解を容易にするために、ランセットケース7を除いた状態を示している。