(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記無機系顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムの内の少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項3に記載の受光デバイス。
【背景技術】
【0002】
近年、小型化および高性能化の進む受光デバイスにおいて、実装をより高精度に行うことが求められている。受光デバイスの一例としては、カメラモジュール、近接センサー、および距離測定センサーが挙げられる。
【0003】
このような要求に応えるため、受光デバイスにおいては、レンズ(光学系)を有する光学部と、撮像素子を有する受光部とを、樹脂により接着する技術が知られている。
【0004】
特許文献1には、透光性基板の周縁部を遮光すると共に、該透光性基板と他部品との連結を図る連結遮光手段を有するカメラモジュールが開示されている。
【0005】
特許文献2には、レンズを支持する光学系支持体と、撮像素子が実装されている第2基板とが、接着剤により接着されてなる撮像装置が開示されている。ここで、該光学系支持体は、撮像素子に当接する当接部を有している。該当接部は、光学系支持体の撮像素子に対する位置決めを正確に行うことを可能とするものである。
【0006】
ところで、受光デバイスにおいて、光学部と受光部とを高精度に実装するために、アクティブ・アラインメントと呼ばれる工程が採用される場合がある。アクティブ・アラインメントとは、例えば撮像素子の出力画像を評価しながら、光学部の位置を微調整した後、光学部と受光部とを接着する工程である。アクティブ・アラインメントについては、特許文献1においても言及されている。
【0007】
特許文献1に開示されているカメラモジュールは、鏡筒またはレンズと透光性基板とが当接しているため、アクティブ・アラインメントに不向きである。該当接により、鏡筒(レンズ)の透光性基板に対する、高さおよび傾きが規定されてしまうためである。特に、特許文献1では、アクティブ・アラインメントをカメラモジュールの製造工程から省くことを図っている。このことからも、特許文献1に開示されているカメラモジュールがアクティブ・アラインメントに不向きであることは明らかである。
【0008】
同様に、特許文献2に開示されている撮像装置は、光学系支持体の当接部と撮像素子とが当接しているため、アクティブ・アラインメントに不向きである。該当接により、光学系支持体の撮像素子に対する、高さおよび傾きが規定されてしまうためである。
【0009】
一方、特許文献3には、光学系筐体に筐体傾斜部を有しているカメラモジュールが開示されている。該光学系筐体は、該筐体傾斜部を介して結合部材によりセンサー基体に結合されている。
【0010】
具体的に、特許文献3に開示されているカメラモジュールは、光学系筐体に筐体傾斜部が設けられているため、結合部材の結合領域が増大する。これにより、優れた光学特性および高い耐衝撃性を有するカメラモジュールを実現している。
【0011】
また、特許文献3には、結合部材が、紫外線による硬化機能および熱による硬化機能を有する樹脂(接着剤)であることが開示されている。これにより、アラインメント後における光学系筐体のセンサー基体に対する固定が容易かつ確実なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔発明の要旨〕
カメラモジュールにおいて高精度な実装を必要とする場合、アクティブ・アラインメント等、光学部と受光部との位置合わせを行う。ここで、一旦位置合わせを行った後に、光学部と受光部との相対的な位置関係が変動してしまうことを避ける必要がある。このため、光学部と受光部とを、UV硬化性樹脂により接着することによって、受光部に光学部を仮固定することが考えられる。
【0022】
また、受光デバイスにおいては、外光に対する遮光性が十分であることが求められる。
【0023】
ここで、UV硬化性樹脂が、遮光性に優れた黒色の樹脂である場合、UV硬化性樹脂に含まれる黒色塗料が紫外線を吸収してしまい、UV硬化性樹脂の硬化が不十分になる恐れがある。この結果、上記の仮固定が不十分となり、光学部と受光部との相対的な位置関係の変動を許してしまう恐れがある。
【0024】
一方、UV硬化性樹脂が、透光性に優れた透明または半透明の樹脂である場合、UV硬化性樹脂は十分に硬化する。しかしながらこの場合、外光がUV硬化性樹脂を簡単に通過し、受光デバイスにおける外光に対する遮光性が不十分となる。
【0025】
そこで、十分な仮固定と、外光に対する十分な遮光性とを両立するために、出願人は鋭意検討を行い、その結果、UV硬化性樹脂に光散乱特性を持たせることを案出した。
【0026】
〔実施の形態1〕
図1は、本実施の形態に係るカメラモジュールの構成を示す断面図である。
【0027】
図1に示すカメラモジュール(受光デバイス)100は、光学部1、受光部2、および樹脂3を備えている。
【0028】
光学部1は、レンズ部11、レンズ鏡筒12、筐体13、および周辺部品14を有している。受光部2は、撮像素子(回路素子)21、および基板22を有している。
【0029】
レンズ部11は、1枚または複数枚のレンズからなり、図示しない被写体を結像するものである。つまり、
図1には、レンズ部11を構成するレンズが3枚である例を示しているが、該レンズの枚数は、1枚または2枚であってもよいし、4枚以上であってもよい。
【0030】
レンズ鏡筒12は、レンズ部11を保持するハウジングである。
【0031】
筐体13は、カメラモジュール100の筐体であり、レンズ部11、レンズ鏡筒12、および周辺部品14を収納するものである。
【0032】
周辺部品14は、例えば、レンズ部11を保持したレンズ鏡筒12を移動させるアクチュエータを含んでいる。
【0033】
撮像素子21は、レンズ部11を通過した光が入射され、この光を受光するものである。撮像素子21は例えば、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)により構成されている。
【0034】
基板22は、撮像素子21を搭載する基板である。
【0035】
樹脂3は、光学部1と受光部2とを接着する接着剤である。具体的に、樹脂3は、筐体13における被写体から最も遠い面と、基板22における撮像素子21の搭載面とを接着している。撮像素子21を囲むように、該接着が行われる。
【0036】
ここで、樹脂3は、光散乱物質を含有した、透光性を有するUV硬化性樹脂である。換言すれば、樹脂3は、入射された光を散乱させる特性を有している、透明または半透明のUV硬化性樹脂である。樹脂3は、透明であっても半透明であってもよいが、透明であるほうが硬化効率は良好である。なお、樹脂3は例えば、白色または乳白色である。
【0037】
樹脂3は、光を散乱させる特性を有しているので、樹脂3に照射された紫外線を散乱させる。このとき、樹脂3に紫外線を吸収する塗料を含める必要がないので、樹脂3内部での紫外線の吸収を抑制することができ、これにより、樹脂3をより効率よく硬化させることができる。つまり、樹脂3は、光学部1と受光部2とを接着する樹脂として用いた場合、該樹脂の硬化効率が向上されたものであると言える。
【0038】
また、樹脂3は、光を散乱させる特性を有しているので、樹脂3に入射した外光を散乱させる。これにより、樹脂3に入射した外光が樹脂3を通過することを抑制し、外光の漏れを防止することができる。
【0039】
こうして、光学部1と受光部2とを、樹脂3により接着することによって、樹脂の硬化効率の向上と外光の漏れの防止とを両立したカメラモジュール100を実現することが可能となる。
【0040】
また、樹脂3はさらに、熱による硬化機能を有している。なお、樹脂3は、UV硬化性樹脂と、熱による硬化機能を有している樹脂(熱硬化性樹脂)とを混合したものであってもよいし、熱による硬化機能を有しているUV硬化性樹脂単体であってもよい。
【0041】
紫外線により樹脂3を硬化させる場合、樹脂3の中心付近を十分に硬化させることが難しい。樹脂3が熱による硬化機能を有していれば、紫外線による樹脂3の硬化に加え、熱により樹脂3を硬化させることができるため、樹脂3を十分に硬化させることが可能となる。具体的には、紫外線により樹脂3を硬化させることにより、光学部1と受光部2とを仮固定し、その後、熱により樹脂3を硬化させることにより、光学部1と受光部2とを完全に固定することができる。該仮固定により、光学部1と受光部2との相対的な位置関係が変動してしまうことを避けることができるため、アクティブ・アラインメントを好適に実施することができる。
【0042】
ここで、樹脂3に含まれる光散乱物質は、無機系顔料を含んでいるのが好ましい。より具体的に、光散乱物質に含まれる無機系顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムの内の少なくとも1つを含んでいるのが好ましい。
【0043】
無機系顔料を混合することにより、熱および圧力に起因する変形に対する耐性が高い樹脂3を実現することができる。この結果、光学部1と受光部2との接着後において、ストレス履歴に強いカメラモジュール100を実現することができる。
【0044】
ただし、樹脂3の材料はこれに限定されず、上記以外の無機系顔料を用いてもよいし、無機系顔料以外を用いてもよい。
【0045】
カメラモジュール100の動作について簡単に説明する。
【0046】
被写体(カメラモジュール100により撮影を行う対象)からの光がレンズ部11を通過することにより、この光が集光される。こうして、レンズ部11は、この被写体を結像する。
【0047】
撮像素子21は、上記被写体の像に対応する、レンズ部11を通過した光が入射され、この光を受光する。撮像素子21は、受光した光を電気信号に変換して、この電気信号を後続の回路に送る。該後続の回路にて各種信号処理が行われることで、被写体の画像を表示画面に表示したり、被写体の画像データを記録媒体に記録させたりすることができる。
【0048】
〔樹脂内の光の散乱〕
図2は、樹脂3内の光の散乱を示す断面図である。
【0049】
樹脂3は、カメラモジュール100の外部から樹脂3に入射した光31を散乱させる。
【0050】
光31が樹脂3に照射された紫外線である場合、上記の散乱により、樹脂3全体に紫外線が行き渡る。これにより樹脂3が効率よく硬化される。
【0051】
一方、光31が外光である場合、上記の散乱により、光31が樹脂3を通過することを抑制することができる。これによりカメラモジュール100内部への外光の漏れを抑制することができる。
【0052】
〔カメラモジュールの実装工程〕
図3は、カメラモジュール100の実装工程を示す斜視図であり、光学部1と受光部2とを樹脂3により接着する前を示している。
【0053】
図4は、カメラモジュール100の実装工程を示す斜視図であり、光学部1と受光部2とを樹脂3により接着した後を示している。
【0054】
アクティブ・アラインメントでは、光学部1と受光部2とを樹脂3により接着する前に、光学部1と受光部2との位置合わせを行う。
【0055】
具体的に、
図3に示すとおり、X方向(図中X)、Y方向(図中Y)、X軸回転方向(図中XR)、およびY軸回転方向(図中YR)について、受光部2に対して光学部1を移動させる。ここで、X方向およびY方向は、いずれもレンズ部11の光軸に対して垂直であり、かつ互いに垂直な方向である。こうして、光学部1と受光部2との相対的な位置関係を最適化する。そして、該最適化が有効な状態で、光学部1と受光部2とを、樹脂3により接着する。接着後、該最適化が有効な状態を維持したまま、樹脂3に紫外線を照射して樹脂3を硬化させる。必要に応じて、紫外線による樹脂3の硬化後、樹脂3を加熱して樹脂3をさらに硬化させる。該硬化が完了すると、カメラモジュール100が完成する(
図4参照)。
【0056】
〔実施の形態2〕
図5は、本実施の形態に係る感知センサーの構成を示す断面図である。
【0057】
図5に示す感知センサー(受光デバイス)200は、光学部101、受光部102、および樹脂3を備えている。
【0058】
光学部101は、発光側レンズ部111、受光側レンズ部(レンズ部)112、および筐体113を有している。受光部102は、発光素子121、受光素子(回路素子)122、および基板123を有している。
【0059】
発光側レンズ部111および受光側レンズ部112はそれぞれ、レンズ部11(
図1参照)と同様の構成である。発光側レンズ部111および受光側レンズ部112は、互いに発光側レンズ部111および/または受光側レンズ部112の光軸方向に重なり合わない位置に配置されている。
【0060】
筐体113は、感知センサー200の筐体であり、発光側レンズ部111および受光側レンズ部112を収納するものである。
【0061】
発光素子121は、例えば赤外線LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)により構成されており、光を出射するものである。発光素子121から出射された光は、発光側レンズ部111を通じて感知センサー200の外部に出射される。
【0062】
受光素子122は、受光側レンズ部112を通過した光が入射され、この光を受光するものである。受光素子122は例えば、フォトダイオードにより構成されている。
【0063】
基板123は、発光素子121および受光素子122を搭載する基板である。
【0064】
なお、筐体113は、発光側レンズ部111および発光素子121と、受光側レンズ部112および受光素子122との間に設けられている。そして、これにより、感知センサー200では、発光側と受光側とが分離して設けられている。
【0065】
樹脂3は、光学部101と受光部102とを接着している。具体的に、樹脂3は、筐体113における物体から最も遠い面と、基板123における発光素子121および受光素子122の搭載面とを接着している。発光素子121および受光素子122のそれぞれを囲むように、該接着が行われる。
【0066】
感知センサー200においては、光学部101と受光部102とを、カメラモジュール100(
図1参照)のものと同様の特長を有する樹脂3により接着している。これにより、感知センサー200において、カメラモジュール100と同様の効果を得ることができる。
【0067】
感知センサー200の動作について簡単に説明する。
【0068】
発光素子121から出射された光は、発光側レンズ部111を通じて感知センサー200の外部に出射される。
【0069】
感知センサー200の外部に出射された光は、物体にて反射され、この反射された光が受光側レンズ部112を通じて受光素子122に入射される。
【0070】
受光素子122は、入射された光を受光し、受光した光を電気信号に変換して、この電気信号を後続の回路に送る。該後続の回路にて各種信号処理が行われることで、物体の有無、または感知センサー200から物体までの距離を検知することができる。
【0071】
すなわち、感知センサー200は、物体の有無を検知する近接センサー、または感知センサー200から物体までの距離を検知する距離測定センサーとして利用することができる。
【0072】
図6は、感知センサー200の実装工程を示す斜視図であり、光学部101と受光部102とを樹脂3により接着した後を示している。
【0073】
感知センサー200の実装工程は、上記項目〔カメラモジュールの実装工程〕と同様であるため、詳細な説明については省略する。
【0074】
〔付記事項〕
光学部1と受光部2とを樹脂3により接着したカメラモジュール100、光学部101と受光部102とを樹脂3により接着した感知センサー200の他、樹脂3自体についても本発明の範疇に含まれる。
【0075】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る受光デバイス(カメラモジュール100および感知センサー200)は、レンズ部を収納する筐体と、上記レンズ部を通過した光を受光する回路素子(撮像素子21および受光素子122)を搭載する基板と、上記筐体と上記基板とを接着する樹脂とを備えている受光デバイスであって、上記樹脂は、光散乱物質を含有した、透光性を有する紫外線硬化性樹脂である。
【0076】
上記の構成によれば、樹脂が光を散乱させる特性を有しているので、樹脂に照射された紫外線が散乱される。このとき、樹脂に紫外線を吸収する塗料を含める必要がないので、樹脂内部での紫外線の吸収を抑制することができ、これにより、樹脂をより効率よく硬化させることができる。
【0077】
また、上記の構成によれば、樹脂が光を散乱させる特性を有しているので、樹脂に入射した外光が散乱される。これにより、樹脂に入射した外光が樹脂を通過することを抑制し、外光の漏れを防止することができる。
【0078】
こうして、樹脂の硬化効率の向上と外光の漏れの防止とを両立した受光デバイスを実現することが可能となる。
【0079】
本発明の態様2に係る受光デバイスは、上記態様1において、上記樹脂はさらに、熱による硬化機能を有している。
【0080】
紫外線により樹脂を硬化させる場合、樹脂の中心付近を十分に硬化させることが難しい。樹脂が熱による硬化機能を有していれば、紫外線による樹脂の硬化に加え、熱により樹脂を硬化させることができるため、樹脂を十分に硬化させることが可能となる。具体的には、紫外線により樹脂を硬化させることにより、光学部と受光部とを仮固定し、その後、熱により樹脂を硬化させることにより、光学部と受光部とを完全に固定することができる。該仮固定により、光学部と受光部との相対的な位置関係が変動してしまうことを避けることができるため、アクティブ・アラインメントを好適に実施することができる。
【0081】
本発明の態様3に係る受光デバイスは、上記態様1または2において、上記光散乱物質は、無機系顔料を含んでいる。
【0082】
本発明の態様4に係る受光デバイスは、上記態様3において、上記無機系顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムの内の少なくとも1つを含んでいる。
【0083】
無機系顔料を混合することにより、熱および圧力に起因する変形に対する耐性が高い樹脂を実現することができる。この結果、光学部と受光部との接着後において、ストレス履歴に強い受光デバイスを実現することができる。
【0084】
本発明の態様5に係る受光デバイスは、上記態様1から4のいずれかにおいて、上記回路素子を囲むように、上記樹脂による接着が行われる。
【0085】
本発明の態様6に係る樹脂は、レンズ部を収納する筐体と、上記レンズ部を通過した光を受光する回路素子を搭載する基板とを接着する樹脂であって、光散乱物質を含有した、透光性を有する紫外線硬化性樹脂である。
【0086】
上記の構成によれば、光学部と受光部との接着に用いることによって、本発明の各態様に係る受光デバイスと同様の効果を奏する樹脂を実現することができる。
【0087】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。