(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
<(a)成分>
(a)成分は、スルホベタイン構造を有するモノマー単位(a−1)を全モノマー単位中50モル%以上、95モル%以下、及び、前記モノマー単位(a−1)以外の炭素数1以上、18以下のアルキル基を有するモノマー単位(a−2)を全モノマー単位中5モル%以上、50モル%以下含有する高分子化合物である。(a)成分は、疎水性硬質表面に適用された後のすすぎ後においても疎水性硬質表面に吸着層を形成することで高い防汚性を付与すると推定される。
【0015】
スルホベタイン構造を有するモノマー単位(a−1)は、カチオン性基とスルホン酸アニオン基とを1つのモノマー単位中に含むものである。(a)成分を構成するモノマー単位(a−1)は、下記一般式(1)で表されるモノマーから得られるモノマー単位であることが、防汚性付与の観点から好ましい。
【0017】
〔式中、R
11は、炭素数1以上、5以下のアルキレン基であり、R
12、R
13、R
14は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1以上、3以下のアルキル基である。Xは、−COO−、−CONH−、及び−OCO−から選ばれる基である。R
15、R
16は、それぞれ独立して、炭素数1以上、3以下のアルキル基又は炭素数1以上、3以下のヒドロキシアルキル基であり、R
17は、炭素数1以上、10以下のアルキレン基又は炭素数1以上、10以下のヒドロキシアルキレン基である。〕
【0018】
一般式(1)において、R
11は、炭素数1以上、4以下のアルキレン基が好ましく、炭素数1以上、3以下のアルキレン基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキレン基が更に好ましく、炭素数2のアルキレン基がより更に好ましい。
【0019】
一般式(1)において、R
12は、(a)成分の製造のし易さの観点から水素原子又は炭素数1もしくは2のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0020】
一般式(1)において、R
13、R
14は、(a)成分の製造のし易さの観点から、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1もしくは2のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0021】
一般式(1)において、R
15、R
16は、防汚性付与の観点から、それぞれ独立して、炭素数1以上、3以下のアルキル基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がより好ましく、メチル基がより更に好ましい。
【0022】
一般式(1)において、R
17は、防汚性付与の観点から、炭素数1以上、5以下のアルキレン基又は炭素数1以上、5以下ヒドロキシアルキレン基が好ましく、炭素数2以上、4以下のアルキレン基又は炭素数2以上、4以下ヒドロキシアルキレン基がより好ましく、炭素数3のアルキレン基又は炭素数3のヒドロキシアルキレン基が更に好ましく、炭素数3のアルキレン基がより更に好ましい。
【0023】
一般式(1)において、Xは、防汚性付与の観点から−COO−、又は−OCO−が好ましく、−COO−がより好ましい。
【0024】
(a)成分を構成するモノマー単位(a−2)が有するアルキル基は、炭素数2以上のアルキル基が好ましく、炭素数3以上のアルキル基がより好ましく、そして、炭素数5以下のアルキル基が好ましく、炭素数4以下のアルキル基がより好ましく、炭素数4のアルキル基が更に好ましい。
【0025】
(a)成分を構成するモノマー単位(a−2)は、下記一般式(2)で表されるモノマーから得られるモノマー単位であることが、防汚性付与の観点から好ましい。
【0027】
〔式中、R
21は、水素原子、炭素数1以上、8以下のアルキル基、又は−(C
2H
4O)
n−Hである。nは1以上、30以下の数である。R
22、R
23、R
24は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1以上、3以下のアルキル基である。Yは、−COO−、−CONH−、−OCO−、又は二価の芳香族炭化水素基である。ただし、R
21が水素原子又は−(C
2H
4O)
n−Hである場合は、R
22、R
23、R
24の少なくとも1つは炭素数1以上、3以下のアルキル基である。〕
【0028】
一般式(2)において、R
21は、(a)成分の硬質表面への吸着性の観点から、炭素数2以上のアルキル基が好ましく、炭素数3以上のアルキル基がより好ましく、そして、炭素数5以下のアルキル基が好ましく、炭素数4以下のアルキル基がより好ましく、炭素数4のアルキル基が更に好ましい。
【0029】
一般式(2)において、R
22は、防汚性付与の観点から、水素原子又は炭素数1もしくは2のアルキル基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0030】
一般式(2)において、R
23、R
24は、防汚性付与の観点から、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1もしくは2のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0031】
一般式(2)において、Yは、防汚性付与の観点から−COO−、又は−OCO−が好ましく、−COO−がより好ましい。なお、Yの二価の芳香族炭化水素基は炭素数3以上、20以下のものが好ましい。具体的には、フェニレン基が挙げられる。
【0032】
(a)成分の構成モノマー単位中、各モノマー単位の存在比率は、
1H−NMR、
13C−NMRの測定により得られるピークから求めることができる。また、(a)成分を構成する単量体の仕込み割合、すなわちモル割合や質量割合から算出することも可能である。
1H−NMR、
13C−NMRの測定により得られるピークから求める方法を優先する。
【0033】
(a)成分は、分子中に、モノマー単位(a−1)を全モノマー単位中50モル%以上、95モル%以下含有する。疎水性硬質表面への防汚性付与の観点から、(a)成分は、モノマー単位(a−1)を、全モノマー単位中、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは85モル%以上含有し、そして、好ましくは94モル%以下、より好ましくは92モル%以下、更に好ましくは90モル%以下含有する。
【0034】
(a)成分は、分子中に、モノマー単位(a−2)を全モノマー単位中5モル%以上、50モル%以下含有する。疎水性硬質表面への(a)成分の吸着性の観点から、(a)成分は、モノマー単位(a−2)を、全モノマー単位中、好ましくは6モル%以上、より好ましくは8モル%以上、更に好ましくは10モル%以上含有し、そして、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下、より更に好ましくは15モル%以下含有する。
【0035】
(a)成分の全モノマー単位中、モノマー単位(a−1)及びモノマー単位(a−2)の合計は、防汚性付与の観点から60モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、80モル%以上が更に好ましく、90モル%以上がより更に好ましく、95モル%以上がより更に好ましく、97モル%以上がより更に好ましく、99モル%以上がより更に好ましい。また、100モル%以下であることが好ましく、100モル%であってもよい。
【0036】
(a)成分は、分子中に、モノマー単位(a−1)及びモノマー単位(a−2)とは異なる1種類以上のモノマー単位(a−3)を0質量%以上、45モル%以下含有することが出来る。防汚性付与の観点から、(a)成分が含有するモノマー単位(a−3)は、全モノマー単位中、30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下が更に好ましく、5モル%以下がより更に好ましく、3モル%以下がより更に好ましく、1モル%以下がより更に好ましい。モノマー単位(a−3)は、カチオン性基を有するモノマー又はアニオン性基を有するモノマーから得られるものが挙げられる。
【0037】
(a)成分におけるモノマー単位(a−1)とモノマー単位(a−2)のモル比は、防汚性付与と(a)成分の硬質表面への吸着性の観点から、(a−1)/(a−2)で、50/50以上が好ましく、60/40以上がより好ましく、70/30以上が更に好ましく、80/20以上がより更に好ましく、85/15以上がより更に好ましく、そして、95/5以下が好ましく、93/7以下がより好ましく、90/10以下が更に好ましい。
【0038】
(a)成分の重量平均分子量は1,000以上、5,000,000以下であることが好ましい。(a)成分の吸着残留性が高まることから、(a)成分の重量平均分子量は、2,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上が更に好ましく、更に10,000以上、更に50,000以上、更に100,000以上が好ましい。また、硬質表面の親水性を高められることから、3,000,000以下が好ましく、1,500,000以下がより好ましく、1,000,000以下が更に好ましく、500,000以下がより更に好ましく、更に400,000以下、更に300,000以下、更に200,000以下、更に150,000以下が好ましい。
【0039】
ここで、(a)成分の重量平均分子量は、ポリマーの種類に適合させた常法により測定することが出来、具体的には、下記の分子量測定方法で測定することが出来る。後述の実施例の高分子化合物も、この方法で重量平均分子量を測定した。
【0040】
<(a)成分の分子量測定方法>
SLS(静的光散乱法)による分子量測定を行う。重量平均分子量(Mw)は光散乱光度計(DLS−7000、大塚電子(株)製)を用いて、下記の条件で静的光散乱を測定し、Zimm−plotを作製することで算出する。また、分子量の算出に必要な屈折率増分は、示差屈折率計(DRM3000、大塚電子(株)製)を用いて測定する。
波長:632.8nm(ヘリウム−ネオンレーザー)
散乱角:30°から150°まで10°おきに測定する。
平均温度:25℃
溶媒:トリフルオロエタノール
【0041】
(a)成分は、ブロック型高分子化合物、ランダム型高分子化合物のいずれでもよいが、ブロック型高分子化合物であることが好ましい。すなわち、モノマー単位(a−1)、モノマー単位(a−2)などの構成モノマー単位がブロック型に結合した構造を有する高分子化合物が好ましい。
【0042】
ブロック型高分子化合物は、例えば、各ブロックを構成するモノマー単位がモノマー単位(a−1)とモノマー単位(a−2)である場合、モノマー単位(a−1)をXで表し、モノマー単位(a−2)をYで表すと、XとYとが、下記(1)〜(5)のように配列したものが挙げられる。下記(1)〜(2)において、p、p’、q、q’、rは、それぞれ、2以上の整数であり、「/」は(X)
pと(Y)
qの結合順序を問わないことを意味する記号である。
(1) −(X)
p−(Y)
q−
(2) −(Y)
q−(X)
p−
(3) −(X)
p−(Y)
q−(X)
p'−
(4) −(Y)
q−(X)
p−(Y)
q'−
(5) −[(X)
p−/−(Y)
q]
r−
【0043】
なお、(a)成分のブロック型高分子化合物がモノマー単位(a−3)を有する場合、モノマー単位(a−3)をZで表すと、Zは、例えば上記(1)〜(5)のいずれの位置に結合していてもよい。
(a)成分がブロック共重合体である場合、上記(1)〜(5)のいずれのタイプのブロック共重合体でもよい。
【0044】
<(b)成分>
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物は、液体組成物の液性を均一とし、長期保存後も液性を保持させる目的で、(b)成分として、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物から選ばれる無機塩を含有する。(b)成分としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びヨウ化カリウムからなる群から選択される1以上の化合物が好ましい。(b)成分は、アルカリ金属の塩化物がより好ましく、塩化ナトリウムが更に好ましい。
【0045】
本発明の(a)成分は、硬質表面に優れた防汚性を付与できるが、これを配合した液体組成物は、液性の安定性、特に低温での安定性に課題があることが判明した。本発明では、(b)成分の効果により、液性を維持することが可能となった。これは、(a)成分のスルホベタインポリマーの正負の電化の相互作用が、特定のイオンにより緩和されているためであると推定している。
【0046】
<(c)成分>
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物は、(c)成分として、界面活性剤を含有する。
本発明の防汚性発現には(a)成分の溶存状態が影響していると推定されるが、本発明において発現される高い防汚性能は、(a)成分、(b)成分に、(c)成分を併用することにより、より向上すると考えられる。また、(c)成分を用いることで、疎水性硬質表面の洗浄の際、高い洗浄効果を示すことができる。
【0047】
(c)成分としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。
【0048】
防汚性付与及び洗浄力向上の点から好ましいアニオン界面活性剤としては、下記(c1)成分及び(c2)成分から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤が挙げられる。
(c1)成分;炭素数8以上、18以下の鎖式炭化水素基と、カルボン酸基又はその塩を有するアニオン界面活性剤、
(c2)成分;炭素数7以上、18以下の鎖式炭化水素基と、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、及びそれらの塩から選択される1種以上を有するアニオン界面活性剤
【0049】
(c1)成分は、炭素数8以上、18以下の鎖式炭化水素基と、カルボン酸基又はその塩を有するアニオン界面活性剤である。洗浄力の観点から鎖式炭化水素基の炭素数は9以上が好ましく、10以上がより好ましく、そして、15以下が好ましく、13以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アルカノールアミン塩が好適である。(c1)成分は、炭素数8以上、18以下の鎖式炭化水素基を1個又は2個、更に1個有するものが好ましい。また、(c1)成分は、カルボン酸基又はその塩を1個又は2個、更に1個有するものが好ましい。更に、カルボン酸基の塩を有するものが好ましい。鎖式炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基が挙げられ、アルキル基が好ましい。
【0050】
好ましい(c1)成分は、炭素数8以上、18以下の鎖式炭化水素基を有する高級脂肪酸塩、アルキル基の炭素数が8以上、18以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキル基の炭素数が8以上、18以下であるポリオキシエチレンアミドアルキルエーテルカルボン酸塩である。より好ましい(c1)成分は、炭素数8以上、18以下の鎖式炭化水素基を有する高級脂肪酸塩、すなわち総炭素数9以上、19以下の高級脂肪酸塩であり、更に好ましくは総炭素数9以上、19以下の直鎖高級脂肪酸塩である。更に好ましい化合物としては、デカン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウムが挙げられる。
【0051】
(c2)成分は、炭素数7以上、18以下の鎖式炭化水素基と、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、及びそれらの塩から選択される1種以上を有するアニオン界面活性剤である。(c2)成分の鎖式炭化水素基の炭素数は7以上、18以下であり、洗浄力の観点から、8以上が好ましく、10以上がより好ましく、12以上が更に好ましく、そして、16以下が好ましく、15以下がより好ましく、14以下が更に好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アルカノールアミン塩が好適である。(c2)成分は、炭素数7以上、18以下の鎖式炭化水素基を1個又は2個、更に1個有するものが好ましい。また、(c2)成分は、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、及びそれらの塩から選択される基又は基の塩を1個又は2個、更に1個有するものが好ましい。より更に、スルホン酸基の塩、硫酸基の塩、及びリン酸基の塩から選択される基の塩を1個又は2個、更に1個有するものが好ましい。
【0052】
洗浄力向上の点で好ましい(c2)成分の例としては、鎖式炭化水素基の炭素数7以上、18以下のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニルベンゼンスルホン酸塩、炭素数7以上、18以下のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩、炭素数7以上、18以下のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩、炭素数7以上、18以下のα−オレフィンスルホン酸塩、炭素数7以上、18以下のα−スルホ脂肪酸の炭素数1又は2のアルキル基を有する低級アルキルエステル塩、炭素数7以上、18以下の一級アルカンスルホン酸塩、炭素数7以上、18以下の二級アルカンスルホン酸塩、炭素数7以上、18以下のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニルリン酸エステル塩等が挙げられる。中でも、炭素数7以上、18以下のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニルベンゼンスルホン酸塩、及びアルキル基の炭素数が7以上、18以下でありエチレンオキサイド平均付加モル数が1〜6であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩から選ばれるアニオン界面活性剤が好ましい。これらのアニオン界面活性剤の塩もまた、アルカリ金属塩、エタノールアミン塩、あるいはアンモニウム塩が好ましい。
【0053】
(c)成分として(c1)成分及び(c2)成分を併用すると、洗浄時に良好な泡立ちが得られ、一方、すすぎ性は良好となる。そのため、本発明では、(c)成分として、(c1)成分及び(c2)成分を含有することが好ましい。この場合、(c1)成分/(c2)成分の質量比は、0.05以上が好ましく、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、そして、1以下が好ましく、0.8以下が好ましく、0.7以下がより好ましい。
【0054】
洗浄力向上の点から好ましいノニオン界面活性剤としては、炭素数10以上、18以下のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル、炭素数10以上、18以下のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、炭素数10以上、18以下の脂肪酸基を有するポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、炭素数8以上、18以下のアルキル基を有するアルキルポリグリコシド、炭素数8以上、18以下の脂肪酸基を有するショ糖脂肪酸エステル、炭素数8以上、18以下のアルキル基を有するアルキルポリグリセリルエーテル等が挙げられる。中でも油性汚れに対する洗浄性の観点から、炭素数10以上、14以下のアルキル基を有しエチレンオキサイド平均付加モル数が5以上、20以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、また、使用時の泡立ちの観点から炭素数8以上、18以下のアルキル基を有し糖縮合度が1以上、3以下であるアルキルポリグリコシドが好ましい。
【0055】
除菌性能及び洗浄力向上の点から好ましいカチオン界面活性剤としては、アルキル基の炭素数が10以上、20以下であるアルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が6以上、14以下であるジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が6以上、18以下であるアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ベンゼトニウム塩等が挙げられる。
【0056】
泡コントロール及び洗浄力向上の点から好ましい両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキサイド、脂肪酸アミドプロピルアミンオキサイド、アルキル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、アルキル−N,N−ジメチルエタンスルホベタイン、脂肪酸アミドプロピル−N,N−ジメチル−2−ヒドロキシプロピルスルホベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等のベタイン等が挙げられる。
【0057】
中でも洗浄時の泡立ちや石鹸カス等のスカム汚れに対する洗浄性の観点から、アルキル基の炭素数が10〜16のアルキルジメチルアミンオキシド、炭素数12〜14の脂肪酸アミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタインが好ましい。
【0058】
(c)成分としては、防汚性付与の効果を妨げにくい点から、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を含有することが好ましい。アニオン界面活性剤を含有することが好ましい。また、(c)成分として、(c1)成分及び(c2)成分から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤を含有することが好ましく、(c1)成分及び(c2)成分の両方を含有することがより好ましい。
【0059】
<硬質表面用液体処理剤組成物の組成等>
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物における(a)成分の含有量は、0.01質量%以上、10質量%以下である。防汚性付与効果の観点で、(a)成分の含有量は組成物中0.01質量%以上であり、0.02質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましい。硬質表面の親水性が高められる観点で、10質量%以下であり、5質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
【0060】
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物における(b)成分の含有量は、液状組成物の液性を均一とし、長期保存後も液性を保持させる観点から、組成物中、1質量%以上であり、1.2質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましく、そして、5重量%以下であり、4質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2.5質量%以下が更に好ましい。
【0061】
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物において、(b)成分と(a)成分の質量比が、(b)/(a)で、液性の安定性の観点から、0.01以上、100以下であることが好ましい。液性の安定性の観点から、(b)/(a)の質量比は、0.05以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましく、そして、90以下が好ましく、80以下がより好ましく、50以下が更に好ましく、40以下がより更に好ましく、30以下がより更に好ましい。
【0062】
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物における(c)成分の含有量は、0.5質量%以上、30質量%以下である。(c)成分の含有量は、洗浄力向上の点から、組成物中、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、5質量%以上がより更に好ましく、7質量%以上がより更に好ましく、そして、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、15質量%以下がより更に好ましく、12質量%以下がより更に好ましく、10質量%以下がより更に好ましく、9質量%以下がより更に好ましい。なお、(c)成分のアニオン界面活性剤については、ナトリウム塩としての質量を組成物中の(c)成分の質量とする。
【0063】
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物では、防汚性付与と洗浄性の両立の観点から、(a)成分と(c)成分の質量比が、(c)/(a)で、5以上、500以下であることが好ましい。(c)/(a)の質量比は、7以上が好ましく、10以上がより好ましく、15以上が更に好ましく、30以上がより更に好ましく、50以上がより更に好ましく、そして、400以下が好ましく、300以下がより好ましく、200以下が更に好ましく、100以下がより更に好ましい。
【0064】
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物は、水を含有する。長期保存後に液の均一性を確保するために水の含有量は、組成物中、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上がより更に好ましい。そして、水の含有量は、組成物中、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
【0065】
本発明によれば、(a)成分の特定の高分子化合物を沈殿、分離させることなく、各温度で均一性を保持させることが可能となる。(b)成分の特定種の塩を特定量含有することにより、低温での経時の凝集が抑制されるためである。また、本発明の組成物は、極端な低温において凝集した場合でも、室温に戻せば均一性を回復するという特徴を有している。本発明の組成物は、各温度で均一な液性を保持しることが出来るため、日常生活の様々な環境下で保存した後でも、有効な防汚性能を付与することができる。
【0066】
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、水以外に下記の成分を含有することができる。
【0067】
<(d)成分>
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物は、(d)成分として、有機溶剤を含有することが好ましい。
【0068】
(d)成分は、有機概念図における無機性/有機性の比率が、0.6以上、2.2以下である有機溶剤が好ましい。
【0069】
有機溶剤は、通常、液状組成物の液性を均一とし、長期保存後も液性を保持させる目的及び洗浄性を向上させる目的で配合されることが多い成分であるが、本発明では、特定の有機溶剤である(d)成分を選定し、(a)成分と共に特定量含有させることで疎水性硬質表面により高い防汚性を付与する組成物を得ることが出来る。
【0070】
本発明において有機溶剤を特定するために用いた「有機概念図」とは、有機化合物の性状の概要を把握するための方法であり、主として炭素数に基づく有機性(共有結合性)と、置換基の性質、傾向に基づく無機性(イオン結合性)に分け、有機化合物を有機軸と無機軸と名づけた直交座標上の1点ずつに位置させて、その性質の概要を理解させるものである。有機概念図における有機溶剤の無機性/有機性の値は、「新版 有機概念図 基礎と応用」(甲田善生・佐藤四郎・本間善夫、三共出版、2008年、15頁、表1.1)に記載されたものから算出することが出来る。
【0071】
防汚性付与の観点から、(d)成分の有機概念図における無機性/有機性の比率は、0.7以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.2以上が更に好ましく、1.4以上がより更に好ましく、1.5以上がより更に好ましく、そして、2.0以下が好ましく、1.9以下がより好ましく、1.8以下が更に好ましく、1.7以下がより更に好ましい。
【0072】
(d)成分として用いられる有機溶剤は、種々のモノ−、ジ−又はトリ−アルキレングリコールモノエーテル、及びモノ−、ジ−又はトリ−アルキレングリコールジエーテルが挙げられる。具体的には、モノ−、ジ−又はトリ−エチレングリコールモノエーテル、及びモノ−、ジ−又はトリ−エチレングリコールジエーテル、並びにモノ−、ジ−又はトリ−プロピレングリコールモノエーテル、及びモノ−、ジ−又はトリ−プロピレングリコールジエーテルが適している。このようなグリコールモノエーテル及びグリコールジエーテルはアルキル基を有するものが好ましく、アルキル基は、種々の炭素数のアルキル基から選択できる。例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどである。これらグリコールエーテル及びグリコールジエーテルは、化合物全体の炭素数が4以上、更に6以上、より更に8以上、そして、14以下、更に12以下、より更に10以下であることが好ましい。
【0073】
(d)成分としては、防汚性付与の観点から、エチレングリコールモノ−ブチルエーテル(1.5)、ジエチレングリコールモノ−ブチルエーテル(1.6)、エチレングリコールモノ−イソブチルエーテル(1.6)、ジエチレングリコールモノ−イソブチルエーテル(1.7)、エチレングリコールモノ−ヘキシルエーテル(1.1)、ジエチレングリコールモノ−ヘキシルエーテル(1.2)、プロピレングリコールモノ−ブチルエーテル(0.9)、ジプロピレングリコールモノ−ブチルエーテル(0.7)、ジプロピレングリコールモノ−メチルエーテル(1.0)、トリプロピレングリコールモノ−メチルエーテル(0.8)、エチレングリコールモノ−イソプロピルエーテル(2.0)、2−プロパノール(2.0)、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(0.8)、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル(1.0)及びジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル(0.8)から選ばれる1種以上の有機溶剤が挙げられる。なかでも、防汚性付与の観点から、エチレングリコールモノ−ブチルエーテル(1.5)、ジエチレングリコールモノ−ブチルエーテル(1.6)から選ばれる1種以上の有機溶剤が好ましく、ジエチレングリコールモノ−ブチルエーテル(1.6)がより好ましい。ここで、( )内の数字は、無機性/有機性の値である。
【0074】
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物における(d)成分の含有量は、1質量%以上が好ましい。防汚性付与の観点から、(d)成分の含有量は組成物中1質量%以上であり、1.5質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、4質量%以上が更に好ましく、5質量%以上がより更に好ましく、6質量%以上がより更に好ましく、7質量%以上がより更に好ましく、7.5質量%以上がより更に好ましい。また、(d)成分の含有量は、組成物中、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましく、9質量%以下がより更に好ましい。
【0075】
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分と、(d)成分とを、好ましくは所定条件で組み合わせて用いることで、(a)成分が疎水性硬質表面に吸着するため、より高い防汚性を付与するものと推定される。
【0076】
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物が(d)成分を含有する場合、防汚性付与の観点から、(c)成分と(d)成分の質量比が、(c)/(d)で、0.1以上、10以下であることが好ましい。防汚性付与の観点から、(c)/(d)の質量比は、0.2以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上が更に好ましく、そして、8以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下が更に好ましく、2以下がより更に好ましく、1.5以下がより更に好ましい。
【0077】
<(e)成分>
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物は、(e)成分としてキレート剤を含有することが出来る。好ましいキレート剤としては、(e1)トリポリリン酸、ピロリン酸、オルソリン酸、ヘキサメタリン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、(e2)エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシイミノ二酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、及びこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、(e3)アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、及びこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、(e4)アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるモノマーの単一重合体又は共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリα−ヒドロキシアクリル酸、並びにこれらのアルカリ金属塩、(e5)クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸から選ばれる多価カルボン酸及びこれらのアルカリ金属塩から選ばれる1種以上、(e6)アルキルグリシン−N,N−二酢酸、アスパラギン酸−N,N−二酢酸、セリン−N,N−二酢酸、グルタミン酸二酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、及びこれらの塩等が挙げられる。これらの中でも、(e2)、(e3)、及び(e5)から選ばれる1種以上のキレート剤が好ましく、更に、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、クエン酸、コハク酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上のキレート剤が好ましい。より更に、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上のキレート剤が好ましい。
【0078】
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物における(e)成分の含有量は、洗浄力がより向上する観点で、組成物中、0.01質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、そして、低温での貯蔵安定性に優れる観点で、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。なお、(e)成分のキレート剤については、ナトリウム塩としての質量を組成物中の(e)成分の質量とする。
【0079】
更に、本発明の硬質表面用液体処理剤組成物には、防汚性付与効果及び洗浄性能を阻害しない範囲において、防腐剤、ハイドロトロープ剤、染料、粘度調整剤、酸化防止剤、香料などを配合することが出来る。
【0080】
また、本発明の硬質表面用液体処理剤組成物は、洗浄力が高まる観点で、20℃におけるpHが3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、6以上であることが更に好ましく、7以上であることがより更に好ましい。そして、保存安定性に優れる観点で、20℃におけるpHが11以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、9以下であることが更に好ましく、8以下であることがより更に好ましい。pH調整剤としては、酸剤として、塩酸や硫酸などの無機酸や、(c)成分及び(e)成分以外の有機酸を用いることが出来る。また、アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムを用いることが出来る。
【0081】
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物は、硬質表面、好ましくは疎水性硬質表面を対象とするものであり、疎水性表面を親水性表面に改質することで防汚性付与効果が発現していると推定している。
【0082】
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物の対象となる疎水性硬質表面は、イオン交換水に対する25℃における静止接触角が50°以上であるものが好ましく、60°以上であるものがより好ましく、70°以上であるものが更に好ましく、80°以上であるものがより更に好ましい。本発明では、この接触角を満たす硬質表面を疎水性硬質表面とすることができる。
【0083】
疎水性硬質表面を与える材質としては、ステンレス鋼等の疎水性金属、ポリ塩化ビニル(PVC)、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、6−ナイロン等の疎水性プラスチックが挙げられ、繊維強化プラスチック(FRP)のような複合素材であってもよい。
【0084】
台所、浴室及びトイレには、前記した疎水性硬質表面を与える材質が多用されており、且つ食品や人体由来の疎水性汚れが付着しやすい環境にあることから、疎水性汚れに対する防汚性付与の意義が大きい。本発明の硬質表面用液体処理剤組成物は、台所、浴室及びトイレの疎水性硬質表面に対して優れた防汚性を付与できる。よって、本発明の硬質表面用液体処理剤組成物は、台所用、浴室用、又はトイレ用として用いられることが好ましい。具体的には、本発明の組成物は、台所まわりの疎水性硬質表面(壁、床、シンクなど)や台所で用いられる製品(コンロ、電子レンジ、オーブン、冷蔵庫など)の疎水性硬質表面に対して適用できる。また、本発明の組成物は、浴室まわりの疎水性硬質表面(壁、床、浴槽など)や浴室で用いられる製品(浴室用イス、洗面器など)の疎水性硬質表面に対して適用できる。また、本発明の組成物は、トイレの疎水性硬質表面(壁、床、便器など)やトイレで用いられる製品(収納棚、ごみ箱など)の疎水性硬質表面に対して適用できる。中でも浴室用の硬質表面用洗浄剤組成物としてより好ましく用いられる。
【0085】
また、本発明の硬質表面用液体処理剤組成物は、スプレー式容器に充填してなるスプレー式硬質表面用処理剤物品として使用することが好ましい。かかる物品は、スプレー式硬質表面用洗浄剤物品やスプレー式硬質表面用改質剤物品として用いることもできる。スプレー式容器としては、トリガー式スプレーヤーが装着されたスプレー容器(トリガー式スプレー容器という)が挙げられる。トリガー式スプレー容器としては、液体処理剤組成物を収容する容器本体と、容器本体の口部に装着されたトリガー式液体噴出器とを具備するものが挙げられ、更には、容器本体の口部に液体処理剤組成物を噴出するトリガー式スプレーヤーが装着され、該トリガー式スプレーヤーの内部に垂直管路及び水平管路が形成され、該垂直管路内に該垂直管路と上記水平管路との連通を遮断するバルブが配設されたスプレー容器(スプレー容器(I)という)が挙げられる。スプレー容器(I)は、水平管路の下方位置にシリンダーを備え、また、水平管路の先端部にスピンエレメントが装着され、更に、このスピンエレメントの先端部にノズル孔を有するノズル部が嵌着固定されている。スプレー容器(I)は、トリガーを引いて、シリンダー内の空気を外に排出し、トリガーを戻した際に容器本体の液体処理剤組成物に浸した垂直管路を通じて液体処理剤組成物を吸い上げ、上記シリンダー内に液体を満たし、再びトリガーを引くことにより、該シリンダー内の液体を押し出して垂直管路に導き、更に水平管路、スピンエレメントを通じて液体の流れにスピンを与え、最後にノズルから噴出するタイプのものである。疎水性硬質表面への本発明の処理剤組成物の適用方法は、疎水性硬質表面の広さ(面積)等に応じて選択できる。例えば本発明の組成物の原液をそのまま0.05〜5mL程度スプレーして行うことができる。
【0086】
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物は、疎水性の硬質表面に対して良好な親水性を付与することが出来、しかもその持続効果に優れる。更に、疎水性硬質表面に付着した油汚れ、タンパク質汚れ、皮脂汚れ等に対する洗浄効果を有する。硬質表面の親水性は、該表面上での水の接触角を測定することにより評価できるが、本発明の硬質表面用液体処理剤組成物で硬質表面を処理することにより、接触角が著しく低減することを確認出来ており、この親水化により高い防汚性付与効果を発現していることが示唆される。
【0087】
また、本発明の硬質表面用液体処理剤組成物は、実施例記載の方法で測定される処理後のPVC板(株式会社エンジニアリングテストサービス製)のイオン交換水に対する静止接触角が70°以下となることが、防汚性付与の観点から好ましく、60°以下となることがより好ましく、40°以下となることが更に好ましく、30°以下となることがより更に好ましい。更に、処理前のPVC板のイオン交換水に対する静止接触角と処理後のPVC板のイオン交換水に対する静止接触角との差が、10°以上であることが防汚性付与の点から好ましく、30°以上がより好ましく、40°以上であることが更に好ましく、50°以上であることがより更に好ましい。
【0088】
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物では、疎水性硬質表面に適用後、(a)成分を含有する被覆膜が形成されて該硬質表面を被覆することにより、PVC板のイオン交換水に対する静止接触角を60°以下とすることができると推定している。
【0089】
本発明は、本発明の硬質表面用液体処理剤組成物からなる硬質表面用液体洗浄剤組成物を包含する。すなわち、本発明は、(a)成分を0.01質量%以上、10質量%以下、(b)成分を0.1質量%以上、5質量%以下、(c)成分を0.5質量%以上、30質量%以下、及び水を含有する硬質表面用液体洗浄剤組成物に関する。本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物の好ましい態様は、本発明の硬質表面用液体処理剤組成物で述べたものから選定できる。硬質表面用液体洗浄剤組成物として用いる場合は、(d)成分、及び(e)成分から選ばれる成分を含有することが好ましい。また、硬質表面用液体洗浄剤組成物として用いる場合は、(c)成分を5質量%以上含有することが好ましい。
【0090】
また、本発明は、本発明の硬質表面用液体処理剤組成物からなる硬質表面用液体改質剤組成物を包含する。すなわち、本発明は、(a)成分を0.01質量%以上、10質量%以下、(b)成分を0.1質量%以上、5質量%以下、(c)成分を0.5質量%以上、30質量%以下、及び水含有する硬質表面用液体改質剤組成物に関する。本発明の硬質表面用液体改質剤組成物の好ましい態様は、本発明の硬質表面用液体処理剤組成物で述べたものから選定できる。
【0091】
<使用方法>
本発明の硬質表面用液体処理剤組成物は、当該組成物を疎水性硬質表面に塗布する工程と、該疎水性硬質表面の組成物が塗布された面を水、好ましくは、塗布質量の5倍以上の質量の水によりすすぐ工程とを有する硬質表面の処理方法に使用することが好ましい。また、本発明の硬質表面用液体処理剤組成物を疎水性硬質表面に塗布する工程の後に、スポンジ等を用いて薄く塗りのばす工程を行い、その後、水によりすすぐ工程を有する硬質表面の処理方法として使用することが更に好ましい。この方法を汚れが付着した疎水性表面に対して行うことで、汚れの除去と防汚性付与の両方を達成することができる。
【0092】
これらの工程は公知の方法に準じて行うことができるが、疎水性硬質表面への塗布には、前述のような、本発明の硬質表面用液体処理剤組成物をスプレー式容器に充填してなるスプレー式硬質表面用処理剤物品を用いることが好ましい。また、洗浄後にすすぐ際に使用する水の温度は、(a)成分からなる親水化改質成分を疎水性硬質表面に残留させるために、5℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましく、そして、50℃以下が好ましく、35℃以下がより好ましい。
【実施例】
【0093】
<実施例及び比較例>
表1〜3に記載の硬質表面用液体処理剤組成物を調製した。各組成物のpH(20℃)は水酸化ナトリウム及び塩酸により表中の値に調整した。これら組成物について、下記項目について評価した。詳細を以下に示す。
【0094】
<接触角>
PVC板(株式会社エンジニアリングテストサービス製、形状は25mm×75mm×1mm)に、硬質表面用液体処理剤組成物を1mL塗布して5分間静置した後、25℃の水道水(流速50mL/秒)で20秒間すすいだ。25℃40%RHに調温調湿された測定室にて、上記処理を行ったPVC板のイオン交換水に対する静止接触角を測定した。測定には協和界面科学株式会社製の全自動接触角計DM−500を使用し、20μlのイオン交換水の水滴を処理表面に着滴させ、着滴3秒後から1秒間隔で10回接触角を測定し、その平均値をデータとして記載した。なお、処理前のPVC板の静止接触角は、85°であった。
【0095】
<防汚性>
40℃の湯10Lに12gのモデル皮脂溶液(モデル皮脂/クロロホルム=1、質量比)を添加し分散させ、各組成物で処理したPVC板
※を12時間浸漬させた。浸漬後のPVC板を、25℃の水道水(50mL/秒)で、表裏各10秒間すすぎ、乾燥後に質量を測定して残留皮脂量(x)を測定した。各組成物の組成において(a)成分を配合していない組成物〔(a)成分の分をイオン交換水に置き換える〕で処理したPVC板表面に残留した皮脂量(y)を同様に測定した。残留皮脂量xとyとから、次式により防汚性を算出した。
防汚性(%)=〔1−(x/y)〕×100
※各組成物で処理したPVC板
PVC板(株式会社エンジニアリングテストサービス製、形状は80mm×250mm×1mm)の両面に、硬質表面用液体処理剤組成物をそれぞれ1mL塗布してスポンジで塗りのばして5分間静置した後、25℃の水道水(50mL/秒)で20秒間すすいだもの。
【0096】
<配合安定性>
硬質表面用液体処理剤組成物の調製直後の外観を、液温20℃で、目視にて観察し、以下の基準で評価した。
*配合安定性の評価基準
○;均一に溶解する
△;濁る
×;不溶成分が沈殿する
【0097】
<保存安定性>
硬質表面用液体処理剤組成物を、スクリュー管(株式会社マルエム スクリュー管(No.4))に10ml入れ、5℃、−5℃、−7.5℃で、それぞれ、20日間保存した。保存後の組成物の外観を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
*保存安定性の評価基準
○;均一透明である
△;濁る
×;不溶成分が沈殿する
【0098】
表1〜表3中の成分は以下のものである。
・高分子化合物1:下記合成例1で得られた、モノマー単位(a−1)/モノマー単位(a−2)=90/10(モル比)、重量平均分子量130,000のブロック型高分子化合物
・高分子化合物2:下記合成例2に準じた方法で得られた、モノマー単位(a−1)/モノマー単位(a−2)=60/40(モル比)、重量平均分子量130,000の高分子化合物
【0099】
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム:アルキル基の炭素数12〜16、エチレンオキサイド平均付加モル数4.0
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル:アルキル基の炭素数12〜16、エチレンオキサイド平均付加モル数10
・アルキルポリグリコシド:アルキル(炭素数12〜16)ポリグルコース(平均糖縮合度1〜2)
・アルキルアミドプロピルベタイン:脂肪酸(炭素数12)アミドプロピル−N,N−ジメチル−酢酸ベタイン
・アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド:アルキル基の炭素数12〜16
【0100】
<合成例1>
ナスフラスコにメタクリル酸n-ブチル30g、2‐ブロモイソ酪酸エチル0.823g、4,4‐ジノニル‐2,2‐ジピリジル2.58g、アニソール45gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.209g、塩化銅(II)0.141gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。6時間後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、水200mL、メタノール600mLの混合液を撹拌しながら重合溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。次にナスフラスコにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル30g、上記で得られたポリマー固体2.83g、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.146g、アニソール30gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.0629gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。7.5時間後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、活性アルミナカラム処理により銅錯体を除去後、ヘキサン 1Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。ナスフラスコに得られたポリマー3g、2,2,2-トリフルオロエタノール 12gを入れポリマーを溶解させた。三方コックで栓をして50℃に加熱しながら1,3-プロパンスルトン2.08gを滴下した。5時間後冷却し、メタノール500mLを撹拌しながらポリマー溶液を滴下してポリマーを析出させ、ろ過、乾燥により高分子化合物1の固体を得た。
高分子化合物1は、モノマー単位が、N,N-ジメチル-N-(3-スルホナトプロピル)-2-(メタクリロイルオキシ)エタン-1-アミニウムから得られるモノマー単位(a−1)〔メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルと1,3-プロパンスルトンとの反応により形成されるモノマー単位〕とメタクリル酸n-ブチルから得られるモノマー単位(a−2)であり、そのモル比がモノマー単位(a−1)/モノマー単位(a−2)=90/10であった。また、高分子化合物1は、モノマー単位の配列はブロックであった。また、高分子化合物1は、重量平均分子量が130,000であった。
【0101】
<合成例2>
撹拌機(テフロン(登録商標)製60mm三日月翼使用)、窒素導入管、温度計を備えた300mL4つ口セパラブルフラスコに、N,N-ジメチル-N-(3-スルホナトプロピル)-2-(メタクリロイルオキシ)エタン-1-アミニウム(シグマアルドリッチ製)22.4g、メタクリル酸n−ブチル(和光純薬工業(株)製)7.60g、エタノール48g、イオン交換水67gを入れ、200rpmで撹拌しながら、窒素ガスを100mL/分で30分間吹き込み、窒素置換を行った。次に、80℃まで昇温し、イオン交換水5.0g、過硫酸アンモニウム(APS,シグマアルドリッチ製)0.610gを加え、重合を開始した。4時間後冷却し、80℃で17時間減圧乾燥することで高分子化合物2の白色固体を得た。
高分子化合物2は、モノマー単位が、N,N-ジメチル-N-(3-スルホナトプロピル)-2-(メタクリロイルオキシ)エタン-1-アミニウムから得られるモノマー単位(a−1)とメタクリル酸n−ブチルから得られるモノマー単位(a−2)であり、そのモル比がモノマー単位(a−1)/モノマー単位(a−2)=60/40であった。また、高分子化合物2は、重量平均分子量が130,000であった。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】