(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体からなる、測定対象とする試料の、求めようとする電気特性を示す値が含まれるレンジを保持するレンジ記憶部と、テラヘルツ光の周波数毎に、前記半導体の前記電気特性を示す値と反射率の計算値との関係を示す情報を保持する計算値記憶部とを有する記憶部と、
前記電気特性を示す値が含まれるレンジにおける感度を考慮して、前記電気特性を示す値の測定に用いる測定周波数を選択する選択部と、
前記試料にテラヘルツ光を照射した際の反射率を測定する反射率測定部と、
前記計算値記憶部に保持された前記半導体の前記電気特性を示す値と反射率の計算値との関係を示す情報、および前記選択部により選択された前記測定周波数について前記反射率測定部が測定した反射率Rexpに基づいて前記試料の前記電気特性を示す値を算出する算出部とを備える半導体の電気特性の測定装置。
半導体からなる、測定対象とする試料の、求めようとする電気特性を示す値が含まれるレンジにおける感度を考慮して、測定に用いるテラヘルツ光の周波数を測定周波数として選択し、
前記試料に、選択された前記測定周波数のテラヘルツ光を照射した際の、反射率Rexpを測定し、
前記測定周波数における前記半導体の前記電気特性を示す値と反射率の計算値との関係を示す情報、および前記反射率Rexpに基づいて前記試料の前記電気特性を示す値を算出し、
前記電気特性を示す値はキャリア密度、移動度および電気抵抗率のいずれかを含む半導体の電気特性の測定方法。
半導体からなる、測定対象とする試料にテラヘルツ光を照射した際の反射率を測定する反射率測定部を備える半導体の電気特性の測定装置の、制御装置を実現するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに
前記試料の、求めようとする電気特性を示す値が含まれるレンジを保持するレンジ記憶手段と、テラヘルツ光の周波数毎に、前記半導体の前記電気特性を示す値と反射率の計算値との関係を示す情報を保持する計算値記憶手段とを有する記憶手段、
前記電気特性を示す値が含まれるレンジにおける感度を考慮して、前記電気特性を示す値の測定に用いる測定周波数を選択する選択手段、
前記計算値記憶手段に保持された前記半導体の前記電気特性を示す値と反射率の計算値との関係を示す情報、および前記選択手段により選択された前記測定周波数について前記反射率測定部が測定した反射率Rexpに基づいて前記試料の前記電気特性を示す値を算出する算出手段として機能させ、
前記電気特性を示す値はキャリア密度、移動度および電気抵抗率のいずれかを含むコンピュータプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
なお、以下に示す説明において、半導体の電気特性の測定装置10の各構成要素は、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。半導体の電気特性の測定装置10の各構成要素は、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされた本図の構成要素を実現するプログラム、そのプログラムを格納するハードディスクなどの記憶メディア、ネットワーク接続用インタフェースを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置には様々な変形例がある。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体の電気特性の測定装置10の構成例を示す図である。本実施形態によれば半導体の電気特性の測定装置10は、記憶部110、選択部120、反射率測定部140、および算出部150を備える。記憶部110は、レンジ記憶部112および計算値記憶部114を備える。レンジ記憶部112は、半導体からなる、測定対象とする試料20(
図3参照)の、求めようとする電気特性を示す値が含まれるレンジを保持する。計算値記憶部114は、テラヘルツ光の周波数毎に、半導体の電気特性を示す値と反射率の計算値との関係を示す情報を保持する。選択部120は、電気特性を示す値が含まれるレンジにおける感度を考慮して、電気特性を示す値の測定に用いる測定周波数を選択する。反射率測定部140は、試料20(
図3参照)にテラヘルツ光を照射した際の反射率を測定する。算出部150は、計算値記憶部114に保持された半導体の電気特性を示す値と反射率の計算値との関係を示す情報、および選択部120により選択された測定周波数について反射率測定部140が測定した反射率R
expに基づいて試料20(
図3参照)の電気特性を示す値を算出する。以下で詳細に説明する。
【0015】
電気特性を示す値としては、電気抵抗率を含むことができる。また、電気特性を示す値としては、移動度を含むことができる。また、電気特性を示す値としては、キャリア密度を含むことができる。半導体の電気特性の測定装置10は、キャリア密度、移動度、および電気抵抗率のうち、いずれか1つまたは2つを測定する装置とすることもできるし、全てを測定する装置とすることもできる。以下では、電気特性を示す値を電気特性値と呼ぶ。
【0016】
本実施形態に係る記憶部110は、レンジ感度記憶部116をさらに有する。レンジ感度記憶部116は、電気特性値のレンジ、周波数、および感度の関係を示す情報を保持する。選択部120はレンジ記憶部112から試料20の電気特性値が含まれるレンジを取得するとともに、レンジ感度記憶部116から、レンジ記憶部112から取得した電気特性値が含まれるレンジと対応するレンジにおける、周波数と感度との関係を示す情報を取得し、各周波数での感度を比較し、比較の結果に基づいて測定周波数を選択する。
【0017】
図2は、本実施形態に係る半導体の電気特性の測定装置10の動作フローを例示する図である。レンジ感度記憶部116には、電気特性値について、予め定められた複数のレンジと、周波数と、その各レンジおよび周波数における感度との関係を示す情報(たとえば式、テーブル)が保持されている。また、レンジ記憶部112には、測定対象とする試料20の、求めようとする電気特性値が含まれるレンジが予め保持されている。レンジ記憶部112が保持するレンジは、試料20について予め測定されたり見積もられたりした値に基づいて予め保持させることができる。また、計算値記憶部114には、テラヘルツ光の周波数毎に、半導体の電気特性値と反射率の計算値との関係を示す情報(たとえば式、テーブル)が予め保持されている。
【0018】
電気特性値としてのキャリア密度と、周波数と、反射率の計算値との関係は、特許文献1に記載の方法を用いて求めることができる。そして、周波数毎のキャリア密度と反射率の計算値との関係を示す情報を計算値記憶部114に保持させることができる。またさらに、キャリア密度のレンジと、周波数と、感度との関係を求め、その情報をレンジ感度記憶部116に保持させることができる。
【0019】
電気特性値としての移動度と、周波数と、反射率の計算値との関係は、特許文献2に記載の方法を用いて求めることができる。そして、周波数毎の移動度と反射率の計算値との関係を示す情報を計算値記憶部114に保持させることができる。またさらに、移動度のレンジと、周波数と、感度との関係を求め、その情報をレンジ感度記憶部116に保持させることができる。
【0020】
電気特性値としての電気抵抗率と、周波数と、反射率の計算値との関係は、特許文献2に記載の方法を用いて求めることができる。そして、周波数毎の電気抵抗率と反射率の計算値との関係を示す情報を計算値記憶部114に保持させることができる。またさらに、電気抵抗率のレンジと、周波数と、感度との関係を求め、その情報をレンジ感度記憶部116に保持させることができる。
【0021】
まず、選択部120は、予め定められたレンジのうち、試料20の電気特性値がどのレンジに含まれるのかを示す情報を、レンジ記憶部112から取得する。また、選択部120は、レンジ感度記憶部116から、試料20の電気特性値が含まれるレンジに対応するレンジにおける、周波数と感度との関係を示す情報を取得する。この周波数と感度との関係は、複数の周波数と、その各周波数における感度との関係を示している。そして、選択部120は、レンジ感度記憶部116から取得した情報において、周波数毎の感度を比較し、最も感度の良い周波数を測定に用いる測定周波数として選択する。(ステップS301)
【0022】
なお、感度の指標は、たとえば電気特性値の変化量に対する反射率の変化量の比率、つまり電気特性値に対する反射率の傾きの絶対値であったり、試料の同一位置で繰り返し測定を行う際の結果のばらつきの大きさ、つまり繰り返し測定の安定性であったりしてよい。繰り返し測定の安定性は、実測に基づいて予め求め、レンジ感度記憶部116に保持させても良い。ただし、感度の指標はこれらに限定されるものではない。
【0023】
本実施形態に係るレンジ感度記憶部116が保持する感度は、電気特性値の変化量に対する反射率の変化量の比率を含む。そして、選択部120は、試料20の電気特性値が含まれるレンジにおいて、その比率が大きい周波数を、測定周波数として選択する。ただし、このような例に限定されるものではない。
【0024】
選択部120で選択された測定周波数を示す情報は、反射率測定部140に入力され、反射率測定部140では測定周波数のテラヘルツ光を試料20に照射して反射率R
expが測定される。(ステップS302)反射率測定部140からは照射した測定周波数と、測定された反射率R
expの値を示す情報が算出部150へ入力される。算出部150は、予め計算値記憶部114に保持された電気特性値と反射率の計算値との関係を示す情報(たとえば式、テーブル)を計算値記憶部114から読み出し、測定周波数において、測定された反射率R
expの値に対応する電気特性値を、試料20の電気特性値として算出する(ステップS303)。なおこのとき、算出部150は、計算値記憶部114から、測定周波数についての、電気特性値と反射率の計算値との関係を示す情報を読み出す。
【0025】
次に、反射率測定部140の構成について詳細に説明する。
図3は、反射率測定部140の構成例を示す図である。反射率測定部140は、照射部142、検出部144、および反射率算出部146を備える。照射部142は、試料20にテラヘルツ光を照射する。検出部144は、試料20から反射されたテラヘルツ光の強度を検出する。反射率算出部146は、照射したテラヘルツ光の強度および反射されたテラヘルツ光の強度に基づいて試料20におけるテラヘルツ光の反射率を算出する。
【0026】
反射率測定部140は、試料保持部141と、ミラー148,149をさらに備える。
【0027】
試料20は試料保持部141に保持される。照射部142から出力されたテラヘルツ光はミラー148を介して試料20に照射される。そしてテラヘルツ光は試料20で反射されて、ミラー149を介して検出部144の受光面へ入射する。検出部144では、検出部144の受光面に入射したテラヘルツ光の強度を反射強度として検出し、その反射強度を示す情報を反射率算出部146へ入力する。反射率算出部146は、照射したテラヘルツ光の強度に対する反射強度の比を反射率として算出する。照射したテラヘルツ光の強度としては、たとえば、金ミラーを試料保持部141に保持させ、試料20に照射するのと同じテラヘルツ光を照射して測定した反射光の強度を用いることができる。なお、反射率測定部140の構造はこの例に限定されない。
【0028】
測定対象としての半導体には、GaN、SiC、GaAs、GaAlN(窒化アルミニウムガリウム)、GaP、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、AlGaP、AlGaAs、AlGaSb、GaInN、GaInP、GaInAs、GaInSb、AlInN、AlInP、AlInAs、AlInSb、Si、Ge等が使用できる。半導体は、不純物がドープされていてもよい。ドープする不純物(添加物)は、p型、n型の種類によらず何でも良い。たとえば、n型(ドナー)として珪素、窒素またはリン等を用いることができる。p型として珪素、ホウ素等を用いることができる。
【0029】
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。
本実施形態では、求めようとする電気特性値が含まれるレンジに基づいて、感度を考慮してテラヘルツの周波数を選択し、測定を行う。このことによって、半導体中のキャリア密度、移動度、電気抵抗率といった電気特性値をテラヘルツ光を用いて高精度で測定できる。
【0030】
図4は、特許文献1に開示されたSiCの反射率とキャリア密度の関係を示す図である。本図から、たとえば0.5×10
17〜1.5×10
17cm
−3(cm
−3は、atoms/cm
3を意味する)のキャリア密度の帯域において、反射率の傾きが0.4%/10
17cm
−3であり、0.5×10
18〜1.5×10
18cm
−3のキャリア密度の帯域において、反射率の傾きが1.9%/10
18cm
−3であることが読み取れる。
【0031】
図5はSiCの反射率と移動度の関係を示す図である。特許文献2に開示された方法で、
図4のキャリア密度を移動度に変換して得た。
図5から、50〜350cm
2V
−1s
−1の移動度の帯域における反射率の傾きは0.05%/cm
2V
−1s
−1であることが読み取れる。
【0032】
図6はSiCの反射率と電気抵抗率の関係を示す図である。特許文献2に開示された方法で、
図4のキャリア密度を電気抵抗率に変換して得た。
図6から、0.014〜17Ωcmの電気抵抗率の帯域における反射率の傾きは0.91%/Ωcmであることが読み取れる。
【0033】
このように、特許文献1および2の方法では、キャリア密度、移動度、電気抵抗率に対する反射率の傾きの絶対値が小さく、感度が低いため、高精度な測定ができなかった。一方、本実施形態に係る半導体の電気特性の測定装置10では、感度を考慮して周波数を選択することで高精度な測定が可能である。
【0034】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る半導体の電気特性の測定装置10の構成例を示す図である。本実施形態に係る半導体の電気特性の測定装置10は、レンジ測定部160、指標提示部172、指標入力部174、指標指定部176、および精度制御部180を備える点と、反射率測定部140が反射率R
expを補正する点を除いて、第1の実施形態に係る半導体の電気特性の測定装置10と同じである。以下に詳細に説明する。
【0035】
本実施形態に係る半導体の電気特性の測定装置10は、試料20の電気特性値が含まれるレンジを測定するレンジ測定部160をさらに備える。レンジ記憶部112は、レンジ測定部160で測定された電気特性値が含まれるレンジを保持する。半導体の電気特性の測定装置10がレンジ測定部160を備えることによって、事前に試料20の電気特性値が含まれるレンジが分からなくても、レンジを求めて精度良く測定できる。
【0036】
また、本実施形態に係る半導体の電気特性の測定装置10は、指標提示部172、指標入力部174、および指標指定部176を備える。指標提示部172は、複数の感度の指標を提示する。指標入力部174は、複数の感度の指標のうち、測定周波数を選択する際に考慮する感度の指標の入力を受け付ける。指標指定部176は、選択部120に、測定周波数を選択する際に考慮する感度の指標を示す情報を入力する。また、レンジ感度記憶部116は、複数の感度の指標毎に電気特性値のレンジ、周波数、および感度の関係を示す情報を保持している。半導体の電気特性の測定装置10がこのような指標提示部172、指標入力部174、および指標指定部176を備えることにより、考慮したい感度の指標に応じて、適した測定を行うことができる。
【0037】
また、本実施形態に係る半導体の電気特性の測定装置10は、精度制御部180を備える。精度制御部180は、選択部120で選択された測定周波数において、試料20の同一点で電気特性値の繰り返し測定を行うよう反射率測定部140および算出部150を制御する。そして精度制御部180は、繰り返し測定の結果のばらつきの大きさを算出する。ばらつきの大きさが予め定めた基準値よりも大きい場合、精度制御部180は、電気特性値が含まれるレンジを再度測定するよう、レンジ測定部160を制御する。一方、ばらつきの大きさが予め定めた基準値よりも小さい場合、精度制御部180は、繰り返し測定の結果の平均値を、電気特性値の測定結果として出力する。半導体の電気特性の測定装置10がこのような精度制御部180を有することにより、より確実に高い精度での測定ができる。
【0038】
次に、本実施形態に係る半導体の電気特性の測定装置10の動作の流れを説明する。
図8は、本実施形態に係る半導体の電気特性の測定装置10の動作フローを例示する図である。
【0039】
まず、レンジ測定部160により、試料20の求めようとする電気特性値が大まかに見積もられ、予め定められた複数のレンジのうち、いずれのレンジに含まれるかが求められる(ステップS401)。求められたレンジを示す情報は、レンジ記憶部112に入力され、保持される。
【0040】
また、指標提示部172では、複数の感度の指標が選択肢として利用者に提示される。利用者は、測定において考慮したい感度の指標を、指標入力部174を通して指標指定部176に入力する(ステップS403)。指標指定部176は、入力された感度の指標を示す情報を、選択部120に入力する。なお、レンジ感度記憶部116は、指標提示部172で提示される複数の感度の指標毎に、電気特性値のレンジ、周波数、および感度の関係を示す情報を保持している。
【0041】
そして選択部120は、予め定められたレンジのうち、試料20の電気特性値がどのレンジに含まれるのかを示す情報を、レンジ記憶部112から取得する。また、選択部120は、レンジ感度記憶部116から、試料20の電気特性値が含まれるレンジに対応するレンジにおける、指標指定部176から入力された感度の指標についての、周波数と感度との関係を示す情報を取得する。この周波数と感度との関係は、複数の周波数と、その各周波数における感度との関係を示している。そして、選択部120は、レンジ感度記憶部116から取得した情報において、周波数毎の感度を比較し、最も感度の良い周波数を測定に用いる測定周波数として選択する(ステップS405)。
【0042】
なお、感度の指標は、たとえば電気特性値の変化量に対する反射率の変化量の比率、つまり電気特性値に対する反射率の傾きの絶対値であったり、試料の同一位置で繰り返し測定を行う際の結果のばらつきの大きさ、つまり繰り返し測定の安定性であったりしてよい。繰り返し測定の安定性は、実測に基づいて予め求め、レンジ感度記憶部116に保持させても良い。ただし、感度の指標はこれらに限定されるものではない。
【0043】
選択された測定周波数を示す情報は、反射率測定部140に入力され、反射率測定部140では測定周波数のテラヘルツ光を試料20に照射して反射率R
expの測定が行われる。ここで、精度の確認のため、測定は同一周波数、同一位置で複数回行われる(ステップS407)。
【0044】
そして、精度制御部180は、同一の測定周波数で、試料20の同一の測定位置を予め定められた回数、繰り返し測定するよう反射率測定部140を制御する。なお、繰り返し測定の回数は、利用者により利用の際に入力される構成としても良い。このとき、反射率を複数回測定した後に、全ての反射率を算出部150に入力しても良いし、反射率を一回測定する度に、算出部150に入力しても良い。
【0045】
ここで、本実施形態では、反射率測定部140は、参照帯域に含まれる参照周波数のテラヘルツ光を試料20に照射した際の反射率R
refを用いて、測定周波数における反射率R
expを補正する。ここで参照帯域とは、反射率が半導体の電気特性値に依存して変化しない周波数帯域を示す。(ステップS409)
【0046】
図9は、参照帯域について説明するための図である。本図は計算から導いたGaN(窒化ガリウム)の周波数に対する反射率の関係を示している。グラフの横軸は照射するテラヘルツ光の周波数、縦軸は反射率を示し、キャリア密度が1.0×10
16cm
−3、1.0×10
18cm
−3、および5.0×10
18cm
−3の場合について示している。周波数が17THz以上20THz以下の帯域では、テラヘルツ光は、キャリア密度の変化によらず全反射する。
【0047】
このように反射率が半導体のキャリア密度に依存して変化しない周波数帯域を参照帯域と呼び、参照帯域に含まれる周波数を参照周波数と呼ぶ。試料20の電気特性値が含まれるレンジ内において、参照周波数のテラヘルツ光は、電気特性値の変化によらず全反射する。
【0048】
反射率測定部140は、測定周波数における反射率R
expを、参照周波数における反射率R
refを用いて補正する。具体的には、反射率測定部140は、参照周波数における反射率R
refに対する測定周波数における反射率R
expの比を、新たな補正された反射率R
expとして算出し、出力する。
【0049】
反射率R
refを用いて、測定周波数における反射率R
expを補正することにより、照射するテラヘルツ光の強度のゆらぎの影響を反射率R
expから除去できる。したがって、反射率R
expをより高い精度で測定でき、その結果、電気特性値をより高い精度で測定できる。
【0050】
なお、たとえば、特許文献1および2に記載がある二波長のテラヘルツ波を同時に試料20に照射して測定できる反射率測定装置の構成を用いることで、参照周波数と測定周波数の2つのテラヘルツ光を同時に試料20に照射し、それぞれの周波数に対する反射率を測定することができ、短時間で高精度な測定が可能である。
【0051】
そして
図8に戻り、反射率測定部140からは照射した測定周波数と、測定され、補正された反射率R
expの値を示す情報が算出部150へ入力される。算出部150は、予め計算値記憶部114に保持された電気特性値と反射率の計算値との関係を示す情報(たとえば式、テーブル)を計算値記憶部114から読み出し、測定周波数において反射率R
expの値に対応する電気特性値を算出する。(ステップS411)
【0052】
算出された電気特性値は精度制御部180に入力される。精度制御部180では繰り返し測定の結果に基づく複数の電気特性値の平均値およびばらつきの大きさを算出する。ばらつきの大きさとして、たとえば複数の電気特性値の標準偏差を用いることができる。もしくは、ばらつきの大きさは、複数の電気特性値のうち、最大値と最小値との差の0.5倍とすることができる。
【0053】
精度制御部180は、算出したばらつきの大きさが予め定めた基準値よりも大きい場合、測定精度が低かったと判定し、試料20の電気特性値が含まれるレンジを再度測定するようレンジ測定部160を制御する。そして、測定周波数の選択、測定などが再度行われる。算出したばらつきの大きさが予め定めた基準値よりも小さい場合、測定精度が高かったと判定し、得られた電気特性値の平均値を試料20の電気特性値として出力する。(ステップS413)なお、ばらつきの大きさの基準値は、利用者により利用の際に入力される構成としても良い。基準値はたとえば、複数の電気特性値の平均値の5%以下の値とすることができる。もしくは、基準値はたとえば、複数の電気特性値の最大値と最小値の平均値(以下、中心の値と呼ぶ)の5%以下の値とすることができる。
【0054】
次に、レンジ測定部160の構成について詳細に説明する。
図10は、本実施形態に係るレンジ測定部160、反射率測定部140および記憶部110の構成例を示す図である。ただし、記憶部110に含まれるいくつかの記憶部は省略している。本実施形態に係る記憶部110は、第1レンジ測定記憶部118および第2レンジ測定記憶部119をさらに備える。第1レンジ測定記憶部118は、半導体の、互いに異なるレンジに属する複数の電気特性値毎に、照射するテラヘルツ光の周波数と反射率の計算値との関係を示す情報を保持する。第2レンジ測定記憶部119は、反射率測定部140で測定され、周波数に対応づけられた複数の反射率R
preを保持する。また、レンジ測定部160は、制御部162およびレンジ算出部168を備える。制御部162は、複数の周波数のテラヘルツ光を試料20に照射し、反射率R
preを測定するよう反射率測定部140を制御する。レンジ算出部168は、周波数に対応づけられた複数の反射率R
preと、第1レンジ測定記憶部118に保持された、照射するテラヘルツ光の周波数と反射率の計算値との関係を示す情報とに基づいて、試料20の電気特性値が含まれるレンジを算出する。
【0055】
ただし、レンジ測定部160は、本実施形態で説明した構造に限定されるものではなく、求めようとする電気特性値が含まれるレンジを測定する別の装置等でも良い。
【0056】
まず、制御部162は複数のレンジに亘る複数の周波数のテラヘルツ光を試料20に照射して、各周波数における反射率R
preを測定するよう反射率測定部140を制御する。測定された複数の反射率R
preは、それぞれ測定に用いた周波数と関連づけられて第2レンジ測定記憶部119に保持される。周波数に関連づけられた複数の反射率R
preの情報は、たとえば、周波数に対する反射率のスペクトルを構成する。第1レンジ測定記憶部118には予め、半導体の互いに異なるレンジに属する複数の電気特性値毎に、照射するテラヘルツ光の周波数と反射率の計算値との関係(たとえば式、テーブル)を示す情報が保持されている。レンジ算出部168は、第2レンジ測定記憶部119から、周波数に関連づけられた複数の反射率R
preを読み出し、第1レンジ測定記憶部118から、複数の電気特性値毎の周波数と反射率の計算値との関係を示す情報を読み出し、周波数と反射率R
preとの関係が周波数と反射率の計算値との関係に最もよく適合する電気特性値を選ぶ。そして、その電気特性値の属するレンジを、試料20の電気特性値の属するレンジとして算出する。算出されたレンジを示す情報はレンジ記憶部112に入力され、測定周波数の選択に利用される。
【0057】
なお、キャリア密度毎の、周波数と反射率の計算値との関係は特許文献1に記載の方法を用いて求めることができる。移動度毎の、周波数と反射率の計算値との関係は特許文献2に記載の方法を用いて求めることができる。電気抵抗値毎の、周波数と反射率の計算値との関係は特許文献2に記載の方法を用いて求めることができる。そして、第1レンジ測定記憶部118に情報を保持させることができる。
【0058】
周波数と反射率の関係が適合するかどうかの判定方法としては、たとえば、最も反射率の傾きの絶対値が大きい周波数が互いに近いほど、より適合すると判定することができる。もしくは、各周波数における反射率の計算値と反射率R
preとの差の平均値が小さいほど、適合すると判定できる。ただし、これらの判定方法に限定されるものではない。
【0059】
測定対象としての半導体には、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、半導体の電気特性の測定装置10が指標提示部172、指標入力部174、および指標指定部176を備える例について説明したが、この例に限定されるものではない。第1の実施形態と同様に、予め定められた感度の指標を用いても良い。
【0061】
なお、本実施形態においては半導体の電気特性の測定装置10がレンジ測定部160を備える例について説明したが、この例に限定されるものではない。第1の実施形態と同様に、予め試料20の電気特性値が含まれるレンジをレンジ記憶部112に保持させても良い。
【0062】
なお、本実施形態においては半導体の電気特性の測定装置10が精度制御部180を備える例について説明したが、この例に限定されるものではない。第1の実施形態と同様に、一度の測定で求めた電気特性値を試料20の電気特性値として出力しても良い。
【0063】
なお、本実施形態においては反射率測定部140が反射率R
refを用いて反射率R
expを補正する例について説明したが、この例に限定されるものではない。第1の実施形態と同様に、測定した反射率R
expをそのまま用いても良い。
【0064】
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態においては第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【0065】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0066】
次に、本発明の実施例について説明する。
(第1の実施例)
第1の実施形態と同様の方法で、n型SiC(炭化シリコン)のキャリア密度の測定を行った。ただし、第2の実施形態のように、事前に反射率のスペクトルを測定することで、試料のキャリア密度のレンジを求めた。また、参照周波数による反射率R
refで測定周波数によるR
expを補正した。測定周波数を選択する際の感度の指標は、キャリア密度の変化量に対する反射率の変化量の比率(反射率の傾きの絶対値)とした。
【0067】
キャリア密度、移動度、電気抵抗率が不明な、n型SiC試料を準備した。試料は直径76mm、厚さ0.4mmの円板形状で、未研磨であった。
【0068】
図11は、n型SiCの、周波数と反射率の計算値との関係および、周波数と測定された反射率R
preとの関係を示す図である。反射率の計算値についてはキャリア密度が1×10
17cm
−3、1×10
18cm
−3、1×10
19cm
−3、および1×10
20cm
−3の場合について示している。表1は、本図から読み取れる、各キャリア密度について反射率の計算値の傾きの絶対値が大きい周波数と、その傾きの値を示している。本図に示した測定された反射率R
preによるスペクトルでは、周波数が29.4THz付近で反射率R
preの傾きの絶対値が大きいため、表1より、この試料のキャリア密度は1×10
18cm
−3付近であることが予想された。よって、1×10
18cm
−3を含むレンジで感度の良い周波数を測定周波数として選択することとした。
【0069】
【表1】
【0070】
図12は、n型SiCのキャリア密度と反射率の計算値の関係を示す図である。周波数が29.1THz、29.4THz、33THz、および50THzの場合について示している。表2はキャリア密度のいくつかのレンジにおいて感度の高い周波数と、その周波数での反射率の傾きを
図12から求めて示したものである。1×10
18cm
−3を含む0.5×10
18〜1.5×10
18cm
−3のレンジでは、29.4THzで感度が良いため、29.4THzを測定周波数として選択した。
【0071】
【表2】
【0072】
次に、29.4THzの周波数で試料の反射率R
expを測定した。加えて、n型SiCについて高い反射率を有する参照帯域である24〜28THzから1つの周波数を選んで反射率R
refを測定した。そして、反射率R
refに対する反射率R
expの比を求め、補正した反射率R
expとした。このようにして求めた反射率R
expと、
図12とに基づいて、キャリア密度を求めた。
【0073】
試料中の一点を繰り返し測定した結果、キャリア密度の平均値は1.048×10
18cm
−3、標準偏差は0.032×10
18cm
−3と求められた。測定値の標準偏差(ばらつきの大きさ)は平均値に対して3.0%の大きさであった。平均値に対するばらつきの大きさを、以下、ばらつきの比率と呼ぶ。このように、キャリア密度に対する反射率の傾きの絶対値が大きい周波数を選択することで、n型SiC試料のキャリア密度を高い精度で測定できることが確かめられた。
【0074】
(第2の実施例)
第1の実施例と同様の方法で、第1の実施例と同一の試料について移動度の測定を行った。
【0075】
図13は、n型SiCの、周波数と反射率の計算値との関係および、周波数と測定された反射率R
preとの関係を示す図である。反射率の計算値については移動度が340cm
2V
−1s
−1、210cm
2V
−1s
−1、40cm
2V
−1s
−1、および5cm
2V
−1s
−1の場合について示している。表3は、本図から読み取れる、各移動度について反射率の計算値の傾きの絶対値が大きい周波数と、その傾きの値を示している。本図に示した測定された反射率R
preによるスペクトルでは、周波数が29.4THz付近で反射率R
preの傾きの絶対値が大きいため、表3よりこの試料の移動度は210cm
2V
−1s
−1付近であることが予想された。よって、210cm
2V
−1s
−1を含むレンジで感度の良い周波数を測定周波数として選択することとした。
【0076】
【表3】
【0077】
図14は、n型SiCの移動度と反射率の計算値の関係を示す図である。周波数が29.1THz、29.4THz、33THz、および50THzの場合について示している。表4は移動度のいくつかのレンジにおいて感度の高い周波数と、その周波数での反射率の傾きを
図14から求めて示したものである。210cm
2V
−1s
−1を含む150〜250cm
2V
−1s
−1のレンジでは、29.4THzで感度が良いため、29.4THzを測定周波数として選択した。
【0078】
【表4】
【0079】
次に、29.4THzの周波数で試料の反射率R
expを測定した。加えて、n型SiCについて高い反射率を有する参照帯域である24〜28THzから1つの周波数を選んで反射率R
refを測定した。そして、反射率R
refに対する反射率R
expの比を求め、補正した反射率R
expとした。このようにして求めた反射率R
expと、
図14とに基づいて、移動度を求めた。
【0080】
試料中の一点を繰り返し測定した結果、移動度の平均値は206cm
2V
−1s
−1、標準偏差は2cm
2V
−1s
−1と求められ、、測定値のばらつきの比率は0.9%であった。このように、移動度に対する反射率の傾きの絶対値が大きい周波数を選択することで、n型SiC試料の移動度を高い精度で測定できることが確かめられた。
【0081】
(第3の実施例)
第1の実施例と同様の方法で、第1の実施例と同一の試料について電気抵抗率の測定を行った。
【0082】
図15は、n型SiCの、周波数と反射率の計算値との関係および、周波数と測定された反射率R
preとの関係を示す図である。反射率の計算値については電気抵抗率が0.18Ωcm、0.03Ωcm、0.014Ωcm、および0.013Ωcmの場合について示している。表5は、本図から読み取れる、各電気抵抗率について反射率の計算値の傾きの絶対値が大きい周波数と、その傾きの値を示している。本図に示した測定された反射率R
preによるスペクトルでは、周波数が29.4THz付近で反射率R
preの傾きの絶対値が大きいため、表5より、この試料の電気抵抗率は0.03Ωcm付近であることが予想された。よって、0.03Ωcmを含むレンジで感度の良い周波数を測定周波数として選択することとした。
【0083】
【表5】
【0084】
図16は、n型SiCの電気抵抗率と反射率の計算値の関係を示す図である。周波数が29.1THz、29.4THz、33THz、および50THzの場合について示している。表6は電気抵抗率のいくつかのレンジにおいて感度の高い周波数と、その周波数での反射率の傾きを
図16から求めて示したものである。0.03Ωcmを含む0.02〜0.04Ωcmのレンジでは、29.4THzで感度が良いため、29.4THzを測定周波数として選択した。
【0085】
【表6】
【0086】
次に、29.4THzの周波数で試料の反射率R
expを測定した。加えて、n型SiCについて高い反射率を有する参照帯域である24〜28THzから1つの周波数を選んで反射率R
refを測定した。そして、反射率R
refに対する反射率R
expの比を求め、補正した反射率R
expとした。このようにして求めた反射率R
expと、
図16とに基づいて、電気抵抗率を求めた。
【0087】
試料中の一点を繰り返し測定した結果、電気抵抗率の平均値は2.89×10
−2Ωcm、標準偏差は0.05×10
−2Ωcmと求められ、測定値のばらつきの比率は1.7%であった。このように、電気抵抗率に対する反射率の傾きの絶対値が大きい周波数を選択することで、n型SiC試料の電気抵抗率を高い精度で測定できることが確かめられた。
【0088】
(第4の実施例)
第1の実施例と同様の方法で、p型Si(シリコン)のキャリア密度の測定を行った。ただし、参照周波数における反射率R
refを用いた反射率R
expの補正は行わなかった。キャリア密度、移動度、電気抵抗率が不明な、p型Si試料を準備した。試料は直径100mm、厚さ0.5mmの円板形状で、表面は研磨済みであった。
【0089】
図17は、p型Si(シリコン)の、周波数と反射率の計算値との関係および、周波数と測定された反射率R
preとの関係を示す図である。反射率の計算値についてはキャリア密度が1×10
17cm
−3、1×10
18cm
−3、1×10
19cm
−3、および1×10
20cm
−3の場合について示している。表7は、本図から読み取れる、各キャリア密度について反射率の計算値の傾きの絶対値が大きい周波数と、その傾きの値を示している。本図に示した測定された反射率R
preによるスペクトルでは、周波数が19THz付近で反射率R
preの傾きの絶対値が大きいため、表7より、この試料のキャリア密度は1×10
20cm
−3付近であることが予想された。よって、1×10
20cm
−3を含むレンジで感度の良い周波数を測定周波数として選択することとした。
【0090】
【表7】
【0091】
図18は、p型Siのキャリア密度と反射率の計算値の関係を示す図である。周波数が0.1THz、1THz、5THz、および19THzの場合について示している。表8はキャリア密度のいくつかのレンジにおいて感度の高い周波数と、その周波数での反射率の傾きを
図18から求めて示したものである。1×10
20cm
−3を含む0.5×10
20〜1.5×10
20cm
−3のレンジでは、19THzで感度が良いため、19THzを測定周波数として選択した。
【0092】
【表8】
【0093】
次に、19THzの周波数で試料の反射率R
expを測定した。測定した反射率R
expと、
図18とに基づいて、キャリア密度を求めた。
【0094】
試料中の一点を繰り返し測定した結果、キャリア密度の平均値は0.839×10
20cm
−3、標準偏差は0.017×10
20cm
−3と求められ、測定値のばらつきの比率は2.0%であった。このように、キャリア密度に対する反射率の傾きの絶対値が大きい周波数を選択することで、p型Si試料のキャリア密度を高い精度で測定できることが確かめられた。
【0095】
(第5の実施例)
第4の実施例と同様の方法で、第4の実施例と同一の試料について移動度の測定を行った。
【0096】
図19は、p型Siの、周波数と反射率の計算値との関係および、周波数と測定された反射率R
preとの関係を示す図である。反射率の計算値については移動度が52.9cm
2V
−1s
−1、52.6cm
2V
−1s
−1、49.6cm
2V
−1s
−1、および31.5cm
2V
−1s
−1の場合について示している。表9は、本図から読み取れる、各移動度について反射率の計算値の傾きの絶対値が大きい周波数と、その傾きの値を示している。本図に示した測定された反射率R
preによるスペクトルでは、周波数が19THz付近で反射率R
preの傾きの絶対値が大きいため、表9より、この試料の移動度は31.5cm
2V
−1s
−1付近であることが予想された。よって、31.5cm
2V
−1s
−1を含むレンジで感度の良い周波数を測定周波数として選択することとした。
【0097】
【表9】
【0098】
図20は、p型Siの移動度と反射率の計算値の関係を示す図である。周波数が0.1THz、0.5THz、5THz、および19THzの場合について示している。表10は移動度のいくつかのレンジにおいて感度の高い周波数と、その周波数での反射率の傾きを
図20から求めて示したものである。31.5cm
2V
−1s
−1を含む35〜45cm
2V
−1s
−1のレンジでは、19THzで感度が良いため、19THzを測定周波数として選択した。
【0099】
【表10】
【0100】
次に、19THzの周波数で試料の反射率R
expを測定した。測定した反射率R
expと、
図20とに基づいて、移動度を求めた。
【0101】
試料中の一点を繰り返し測定した結果、移動度の平均値は33.8cm
2V
−1s
−1、標準偏差は0.2cm
2V
−1s
−1と求められ、測定値のばらつきの比率は0.5%であった。このように、移動度に対する反射率の傾きの絶対値が大きい周波数を選択することで、p型Si試料の移動度を高い精度で測定できることが確かめられた。
【0102】
(第6の実施例)
第4の実施例と同様の方法で、第4の実施例と同一の試料について電気抵抗率の測定を行った。
【0103】
図21は、p型Siの、周波数と反射率の計算値との関係および、周波数と測定された反射率R
preとの関係を示す図である。反射率の計算値については電気抵抗率が1.17Ωcm、0.11Ωcm、0.012Ωcm、および0.002Ωcmの場合について示している。表11は、本図から読み取れる、各電気抵抗率について反射率の計算値の傾きの絶対値が大きい周波数と、その傾きの値を示している。本図に示した測定された反射率R
preによるスペクトルでは、周波数が19THz付近で反射率R
preの傾きの絶対値が大きいため、表11より、この試料の電気抵抗率は0.002Ωcm付近であることが予想された。よって、0.002Ωcmを含むレンジで感度の良い周波数を測定周波数として選択することとした。
【0104】
【表11】
【0105】
図22は、p型Siの電気抵抗率と反射率の計算値の関係を示す図である。周波数が0.1THz、0.5THz、5THz、および19THzの場合について示している。表12は電気抵抗率のいくつかのレンジにおいて感度の高い周波数と、その周波数での反射率の傾きを
図22から求めて示したものである。0.002Ωcmを含む0.001〜0.005Ωcmのレンジでは、19THzで感度が良いため、19THzを測定周波数として選択した。
【0106】
【表12】
【0107】
次に、19THzの周波数で試料の反射率R
expを測定した。測定した反射率R
expと、
図22とに基づいて、電気抵抗率を求めた。
【0108】
試料中の一点を繰り返し測定した結果、電気抵抗率の平均値は2.21×10
−3Ωcm、標準偏差は0.02×10
−3Ωcmと求められ、測定値のばらつきの比率は0.9%であった。このように、電気抵抗率に対する反射率の傾きの絶対値が大きい周波数を選択することで、p型Si試料の電気抵抗率を高い精度で測定できることが確かめられた。
【0109】
(第1の比較例)
第1の比較例では、第1の実施例と同一の試料について、異なる周波数を測定周波数として用いてキャリア密度の測定を行った。本比較例に係るキャリア密度の測定方法は、測定周波数を33THzとした点以外は、第1の実施例と同じ測定方法である。
【0110】
試料中の一点を繰り返し測定した結果、キャリア密度の平均値は1.71×10
18cm
−3、標準偏差は1.51×10
18cm
−3と求められ、測定値のばらつきの比率は88%であった。このように、キャリア密度に対する反射率の傾きの絶対値が小さい周波数では、n型SiC試料のキャリア密度を高い精度で測定できない。
【0111】
(第2の比較例)
第2の比較例では、第2の実施例と同一の試料について、異なる周波数を測定周波数として用いて移動度の測定を行った。本比較例に係る移動度の測定方法は、測定周波数を33THzとした点以外は、第2の実施例と同じ測定方法である。
【0112】
試料中の一点を繰り返し測定した結果、移動度の平均値は207cm
2V
−1s
−1、標準偏差は104cm
2V
−1s
−1と求められ、測定値のばらつきの比率は50%であった。このように、移動度に対する反射率の傾きの絶対値が小さい周波数では、n型SiC試料の移動度を高い精度で測定できない。
【0113】
(第3の比較例)
第3の比較例では、第3の実施例と同一の試料について、異なる周波数を測定周波数として用いて電気抵抗率の測定を行った。本比較例に係る電気抵抗率の測定方法は、測定周波数を33THzとした点以外は、第3の実施例と同じ測定方法である。
【0114】
試料中の一点を繰り返し測定した結果、電気抵抗率の平均値は3.48×10
−2Ωcm、標準偏差は6.87×10
−2Ωcmと求められ、測定値のばらつきの比率は197%であった。このように、電気抵抗率に対する反射率の傾きの絶対値が小さい周波数では、n型SiC試料の電気抵抗率を高い精度で測定できない。
【0115】
(第4の比較例)
第4の比較例では、第4の実施例と同一の試料について、異なる周波数を測定周波数として用いてキャリア密度の測定を行った。本比較例に係るキャリア密度の測定方法は、測定周波数を5THzとした点以外は、第4の実施例と同じ測定方法である。
【0116】
試料中の一点を繰り返し測定した結果、キャリア密度の平均値は0.446×10
20cm
−3、標準偏差は0.672×10
20cm
−3と求められ、測定値のばらつきの比率は150%であった。このように、キャリア密度に対する反射率の傾きの絶対値が小さい周波数では、p型Si試料のキャリア密度を高い精度で測定できない。
【0117】
(第5の比較例)
第5の比較例では、第5の実施例と同一の試料について、異なる周波数を測定周波数として用いて移動度の測定を行った。本比較例に係る移動度の測定方法は、測定周波数を5THzとした点以外は、第5の実施例と同じ測定方法である。
【0118】
試料中の一点を繰り返し測定した結果、移動度の平均値は42.4cm
2V
−1s
−1、標準偏差は5.9cm
2V
−1s
−1と求められ、測定値のばらつきの比率は13%であった。このように、移動度に対する反射率の傾きの絶対値が小さい周波数では、p型Si試料の移動度を高い精度で測定できない。
【0119】
(第6の比較例)
第6の比較例では、第6の実施例と同一の試料について、異なる周波数を測定周波数として用いて電気抵抗率の測定を行った。本比較例に係る電気抵抗率の測定方法は、測定周波数を5THzとした点以外は、第6の実施例と同じ測定方法である。
【0120】
試料中の一点を繰り返し測定した結果、電気抵抗率の平均値は4.97×10
−3Ωcm、標準偏差は2.01×10
−3Ωcmと求められ、測定値のばらつきの比率は40%であった。このように、電気抵抗率に対する反射率の傾きの絶対値が小さい周波数では、p型Si試料の電気抵抗率を高い精度で測定できない。