(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお実施の形態を説明するための全図において同一部には原則として同一符号を付しその繰り返しの説明は省略する。
【0014】
[概要等]
図1〜
図7を用いて、本発明の一実施の形態の入退管理システムについて説明する。本実施の形態の入退管理システムは、ICカードを利用した入退管理システムであり、入退管理システムの設置時や運用稼動時の保守点検のための機能を搭載する。本実施の形態の入退管理システム及び保守点検の方式では、多大な工数の課題の解決のため、保守点検の作業をたとえ作業者一人であっても少ない手間で容易に実施することができるように、以下のような特有の保守点検の機能及び手段を搭載した。
【0015】
本実施の形態の入退管理システムは、セキュリティ管理サーバ、制御装置、複数のリーダ、電気錠、ドア部、及びそれらを接続する配線や通信網と、一般利用者の入退用のICカード、及び保守点検時の診断用のICカードを有する。制御装置は、配線で複数のリーダを接続する。保守点検時、作業者は、診断用のカードと、借り受けた一般の入退用のカードとを用いて、保守点検の作業を実施する。
【0016】
診断用のカードは、一般の入退用のカードとは別のカードであって、リーダ及びセキュリティ管理サーバ等に対して、特有の保守点検用のモード(「診断モード」と称する)を設定するために使用される。診断用のカードは、部外者等によるカードの不正利用の防止のため、一般の入退用のカードとしての機能を持たせず、上記モードの切り替えの機能を持たせる。
【0017】
本実施の形態の入退管理システムでは、セキュリティ管理サーバとドア部との間における配線の正常性の確認、及びドア部付近の電気錠及びリーダ等の設置機器の動作の正常性の確認を含む、保守点検の作業を対象とする。本実施の形態は、少なくとも、制御装置と複数のリーダとの間の配線の疎通及び接続の正常性の確認を可能とする。
【0018】
保守点検時、作業者により診断用のカードがドア部のリーダにかざされると、制御装置を介して、セキュリティ管理サーバに対し、システムの制御状態を特有のモードである診断モードへ遷移させる。制御装置は、保守点検に係わる特有の情報として、リーダ及び配線経路の状態に係わるロケーション情報を生成してセキュリティ管理サーバへ送信する機能を備える。
【0019】
セキュリティ管理サーバは、上記診断用のカード及びリーダからの情報、及び制御装置からのロケーション情報を受信すると、モードを通常モードから診断モードへ切り替える。診断モード中、作業者は、一般の入退用のカードを用いて、リーダでの認証やドア開閉等の保守点検用の動作を行う。当該動作による診断用の情報がセキュリティ管理サーバへ送信される。セキュリティ管理サーバは、診断用の情報を用いて、診断処理等を行い、診断結果を含む情報を要求元のリーダ側へ返信する。
【0020】
リーダは、保守点検のモードや診断結果等を表示する表示部を備える。リーダは、セキュリティ管理サーバからの情報を表示部に表示する。作業者は、リーダの表示情報を見て配線の正常性等を確認する。当該ドア部付近の保守点検の終了後、作業者により再び診断用のカードがドア部のリーダにかざされると、制御装置を介して、セキュリティ管理サーバへ情報が送信され、診断モードが解除される。
【0021】
[システム構成(1)]
図1は、本実施の形態の入退管理システムを含む全体の構成を示す。本実施の形態の入退管理システムは、セキュリティ管理サーバ1、セキュリティ管理端末2、ネットワーク20、配線21,22、1つ以上の制御装置3、複数のリーダ4、複数のドア5、カード6,7等を有する。例えば複数(m個)の制御装置3、複数(n個)のリーダ4、及び複数(n個)のドア5を有する。
【0022】
ネットワーク20及び配線21,22は、入退管理システムを構成する専用の通信網や配線である。セキュリティ管理サーバ1及びセキュリティ管理端末2と、制御装置3との間は専用のLAN等のネットワーク20で接続される。制御装置3と複数のリーダ4との間は配線21で接続される。リーダ4とドア5の電気錠との間は配線22で接続される。なおドア5に電気錠が備え付けられるが、リーダ4に電気錠が備え付けられてもよい。
【0023】
人物としては、保守点検作業を行う作業者、入退管理システムの管理者、一般利用者、等がいる。なお管理者と作業者とが同じ人であってもよい。作業者は、保守点検作業の際、一時的に借り受けるICカードとして、診断用のカード6と、一般利用者の入退用のカード7とを所持する。
【0024】
セキュリティエリア8は、セキュリティ管理サーバ1で設定される管理エリアであり、当該エリア内に設置される制御装置3及びリーダ4等と関係付けて管理される。例えばA1で示すセキュリティエリア8内に、Q1で示す制御装置3、d1,d2等で示す複数のドア5、R1,R2等で示す複数のリーダ4が設置されている。
【0025】
セキュリティ管理サーバ1は、言い換えると、入退管理システムの制御部、ないし入退管理装置であり、データベース(DB)に管理情報50を保有する。セキュリティ管理サーバ1は、管理者の操作に基づくセキュリティ管理端末2からのネットワーク20を介したアクセス等に従って、入退管理システムの設定及び管理のための管理情報50が設定される。セキュリティ管理端末2のグラフィカルユーザインタフェースの画面では、各種の管理情報50の設定や内容確認が可能となっている。
【0026】
セキュリティ管理サーバ1は、ネットワーク20を介して各制御装置3を介して各リーダ4との間で通信し、それらの認証等を制御する。セキュリティ管理サーバ1からは、ネットワーク20を介して、各リーダ4に対し、ICカードの認証に関する設定情報の登録等が可能となっている。また逆に各リーダ4から制御装置3を介してセキュリティ管理サーバ1へ各種の情報の通知等が可能となっている。通知される各種の情報は、例えば認証結果情報、電気錠の解錠や施錠の信号、ドア開閉の信号、等がある。
【0027】
作業者は、保守点検時、C1で示す診断用のカード6、及びC2で示す入退用のカード7を所持する。診断用のカード6、入退用のカード7は、非接触型のICカード媒体等であり、例えば内蔵メモリに固有のID等の情報が記憶されている。当該IDは、リーダ4での認証の際のID照合処理で参照される。
【0028】
制御装置3は、ポート30を備え、ポート30における複数の各々のポートには、リーダ4との接続のための配線21が接続される。なおポートの識別番号ないしIDを“01”等で示す。
【0029】
リーダ4は、表示部41及び検知部42等を備える。表示部41は、例えば液晶パネルであり、保守点検時及び通常時に、各種の情報を文字や画像で表示する。例えば認証の際、作業者に対して、モードの状態や保守点検関連の状態を報せるための情報を表示する。検知部42は、カードのかざし部であり、認証の際に作業者によりかざされた各カード6,7の情報が検知及び読み取りされる。
【0030】
診断用のカード6は、セキュリティの観点から不正利用を防止するために、セキュリティ管理サーバ1及び制御装置3等を保守点検用の特有の診断モードに設定したり当該設定を解除したりする機能のみを持たせ、一般の入退用の権限を付与しない。
【0031】
[システム構成(2)]
図2は、
図1の入退管理システムの機能ブロックの構成を示す。セキュリティ管理サーバ1は、制御部11、保守点検部12、及び通信部13を備える。DBの管理情報50は、入退管理テーブル51、チェックシート情報52、及びロケーション情報53を含む。セキュリティ管理サーバ1、制御装置3、及びリーダ4等の内部は、公知技術による回路部や制御プログラム等を備える。これにより本実施の形態の特有の機能が実現される。
【0032】
制御部11は、入退管理テーブル51の情報を用いながら、入退管理の制御処理を行う。入退管理テーブル51は、セキュリティエリア8、入退経路、各カードの登録ID、等の入退管理用の公知の情報が管理者により設定される。通信部13は、ネットワーク20を介して制御装置3と通信する。
【0033】
保守点検部12は、モード管理部121、診断部122、及びチェックシート管理部123を含む。モード管理部121は、通常モードと診断モードとを切り替える管理を行う。診断部122は、リーダ4及び制御装置3から収集される診断用情報を用いて診断処理を行う。診断部122は診断結果情報をDBに保存してもよい。保守点検部12または通信部13は、制御装置3から受信するロケーション情報53をDBに管理する。
【0034】
チェックシート管理部123は、入退管理テーブル51等の情報に基づいて、保守点検時に作業者が用いるためのチェックシートの情報を作成し、DBに管理し、必要に応じて出力する。
【0035】
制御装置3は、制御部31、診断対応部32、及びポート30を含む。制御部31は、セキュリティ管理サーバ1及びリーダ4と連携しながら、入退管理の制御処理を行う。診断対応部32は、保守点検及び診断の機能に対応する処理部であり、ロケーションIDを含むロケーション情報を発行する処理等を行う。ポート30は複数のポートを含み、配線21を通じてリーダ4との通信処理を行う。
【0036】
リーダ4は、制御部40、前述の表示部41及び検知部42を含む。制御部40は、制御装置3及びセキュリティ管理サーバ1の処理と連携しながら、認証処理を含む入退管理の処理を行う。リーダ4は、ユーザインタフェースとして、表示部41に限らず、LEDランプ、音声出力部、及び操作ボタン等を備えてもよい。リーダ4は、LEDランプの点灯状態に応じて所定の状態を報せてもよい。リーダ4は、音声出力部から状態や情報を音声で出力してもよい。リーダ4は、操作ボタンにより指示を入力可能としてもよい。
【0037】
保守点検時、リーダ4と制御装置3との間では、配線21を通じて、保守点検用情報901,904がやり取りされる。保守点検時、制御装置3とセキュリティ管理サーバ1との間では、ネットワーク20を通じて、保守点検用情報902,903がやり取りされる。また保守点検時、リーダ4とドア5との間では、配線22を通じて、保守点検用情報905,906がやり取りされる。保守点検用情報901,902は、モード設定要求、モード解除要求、ロケーション情報、診断用情報等である。保守点検用情報903,904は、モード開始指示、モード終了指示、ロケーション情報、診断結果情報、等である。保守点検用情報905,906は、電気錠の解錠や施錠の信号、ドア5の開閉信号、等を含む、診断用情報等である。
【0038】
[処理シーケンス(1)]
図3は、本実施の形態の入退管理システムの処理シーケンスの第1の部分を示す。作業者による、診断用のカード6と入退用のカード7とを用いた、ドア5付近のリーダ4及び電気錠等の設置機器及び配線21,22に関する診断を含む保守点検の作業時の処理を示す。なお
図3,
図4では、保守点検作業の全体のうち、対象の1つのドア5付近の個別の点検作業の部分を示す。
【0039】
(S100a) 予め、セキュリティ管理サーバ1は、チェックシート管理部123を用いて、管理者により作業者に対して、保守点検用のチェックシートの情報を発行する。作業者は、発行されたチェックシートの用紙を受け取るか、または自分用の端末にチェックシートの情報を受信及び保持する。
【0040】
(S100b) 最初、リーダ4は、通常モードの表示の状態である。作業者は、個別の保守点検の対象のドア5(例えば
図1のd1)付近のリーダ4(例えばR1)の所に行く。
【0041】
(S101) 作業者は、対象のドア5付近のリーダ4に、診断用のカード6をかざす。当該動作は個別の点検開始をシステムへ伝える動作に相当する。
【0042】
(S102) リーダ4は、診断用のカード6の認証を行う。即ち当該カードのIDを登録IDと照合して認証し、認証結果情報を制御装置3及びセキュリティ管理サーバ1へ通知する。認証が成功の場合は診断を含む作業が許可され、失敗の場合は許可されない。
【0043】
(S103) リーダ4は、S102の認証結果が成功である場合、診断モード設定要求を制御装置3へ送信し、制御装置3は当該要求をセキュリティ管理サーバ1へ送信する。
【0044】
(S104) 制御装置3は、S103の診断モード設定要求を受けると、後述のロケーションIDを生成及び発行し、S103の要求と共に、セキュリティ管理サーバ1へ送信する。ロケーションIDは、要求元のリーダ4及び当該リーダ4との配線経路の状態を示す情報である。ロケーションIDは、制御装置3の識別の装置IDと、ポート30のうちの要求元のリーダ4から信号を受信したポートの識別番号等を用いて生成される。
【0045】
(S105) セキュリティ管理サーバ1のモード管理部121は、制御装置3を介したリーダ4からの診断モード設定要求を受けると、通常モードから診断モードへと切り替えるように設定し、診断モードの開始指示を、制御装置3を介して要求元のリーダ4へ通知する。またこの際、セキュリティ管理サーバ1は、S104の制御装置3からのロケーションIDを用いて、制御装置3へ開始指示と共に送信する。当該ロケーションIDは、要求元のリーダ4等を示す情報であるため、セキュリティ管理サーバ1は、制御装置3からのロケーションIDへ向けて情報を返信するようにすれば、要求元へ情報が届くことになる。制御装置3は、セキュリティ管理サーバ1からの開始指示及びロケーションIDを受けて、当該ロケーションIDで示されるポートに対応した要求元のリーダ4へ、開始指示を送信する。
【0046】
(S106) 要求元のリーダ4は、セキュリティ管理サーバ1からのS105の診断モード開始指示を、制御装置3を介して受け取ると、表示部41に、診断モードの開始、及び現在診断モードの状態であることを伝える情報を表示する。作業者は、当該表示部41の表示情報を見ることで、診断モードの開始等を認識及び確認する。
【0047】
なおロケーション情報の処理に関して、
図3では上記S103〜S106の順で処理しているが、これに限らず可能である。他の処理の形態として、例えばS103,S105,S104の順で処理してもよい。即ち、制御装置3は、リーダ4からS103の要求を受けると、そのままセキュリティ管理サーバ1へ送信してまずモードを診断モードへ切り替えさせる。そして、制御装置3は、セキュリティ管理サーバ1からS105の診断モードの開始指示を受けてから、S104のロケーションIDを発行し、セキュリティ管理サーバ1へ送信する。
【0048】
(S111) 作業者は、診断モードに入ったことを確認後、一般の入退用のカード7を用いて、個別の点検における診断用の動作を行う。作業者はまず対象のリーダ4に入退用のカード7をかざす。当該動作は、一般利用者による入退時の認証が正常に機能するかどうかを確認するための診断用動作に相当する。
【0049】
(S112) リーダ4は、S111の入退用のカード7についてID照合により認証し、認証結果情報を、制御装置3を介してセキュリティ管理サーバ1へ通知する。
【0050】
(S113) リーダ4は、S112の認証の結果が成功の場合、ドア5の解錠信号をドア5の電気錠へ送信すると共に、制御装置3を介してセキュリティ管理サーバ1へ通知する。
【0051】
(S114) 作業者は、対象のドア5を開閉する動作を行う。当該動作は、ドア5の開閉動作に応じて正常に機能するかどうかを確認するための診断用動作に相当する。なお点検用の動作なので作業者は実際にドア5を通過しなくてもよい。
【0052】
(S115) リーダ4は、S114のドア5の開閉動作に応じた、ドア5の開信号、及び閉信号を、制御装置3を介してセキュリティ管理サーバ1へ送信する。
【0053】
(S116) リーダ4は、S114のドア5の閉動作に応じた、ドア5の電気錠の施錠信号をドア5の電気錠へ送信すると共に、制御装置3を介してセキュリティ管理サーバ1へ通知する。
【0054】
(S117) 一方、セキュリティ管理サーバ1は、S105の診断モードの開始により、S104のロケーションIDを保持しつつ、制御装置3を介してリーダ4側から送信されてくる診断用情報を収集及び保持する。診断用情報は、S112,S113,S115,S116等による情報である。またセキュリティ管理サーバ1は、診断モードの開始、診断用情報の受信、あるいは診断用情報の途絶、等の所定の時点から、タイマのカウントを開始する。
【0055】
(S121) 作業者は、個別のドア5付近の点検におけるS111,S114等の診断用動作を終えると、診断用のカード6を再び対象のリーダ4にかざす。当該動作は、個別の点検の診断用動作の終了をシステムへ伝える動作に相当し、言い換えると当該診断用動作について診断して欲しいという要求に相当する。
【0056】
[処理シーケンス(2)]
図4は、
図3の続きである処理シーケンスの第2の部分を示す。
【0057】
(S122) S121の動作を受け、リーダ4は、診断用のカード6についての認証をS102と同様に行い、認証結果情報を、制御装置3を介してセキュリティ管理サーバ1へ通知する。
【0058】
(S123) リーダ4は、S122の認証が成功の場合、診断モードの解除要求を制御装置3へ送信する。
【0059】
(S124) 制御装置3は、S123の診断モードの解除要求と共に、S104と同様にロケーションIDを、セキュリティ管理サーバ1へ送信する。
【0060】
(S125) セキュリティ管理サーバ1は、S123の解除要求及びS124のロケーションIDを受けると、S117で収集した診断用情報を用いて、診断部122により診断処理を行う。なおセキュリティ管理サーバ1は、ロケーションIDから、点検対象のリーダ4及びドア5等を把握することができる。
【0061】
(S126) セキュリティ管理サーバ1のモード管理部121は、S123の解除要求に対応して、診断モードを解除し、即ち、診断モードから通常モードへ切り替える。そしてセキュリティ管理サーバ1は、制御装置3を介して要求元のリーダ4へ、診断モードの終了指示をロケーションIDと共に送信する。またセキュリティ管理サーバ1は、診断モードの終了指示と共に、S125の診断結果情報を送信する。診断結果情報は、同じロケーションIDと後述の構築情報とを含む。診断結果情報は、作業者の診断用動作に対応した正常(OK)及び異常(NG)等の診断結果を含む。構築情報は、チェックシート情報52に基づいて生成される情報である。
【0062】
なお他の処理の形態として、S125とS126の処理の順序を逆にしてもよい。
【0063】
(S131) セキュリティ管理サーバ1は、S117のタイマカウントによる所定の時間(例えば3分)の経過後でもS123の解除要求が無い場合、自動的及び強制的に、診断モードを解除する。これによりS126以降と同様の処理が行われる。これにより作業者が2回目の診断用のカード6のかざしによる診断モードの解除を忘れた場合も、当該機能により対応でき、通常モードへ戻すことができる。
【0064】
(S127) リーダ4は、制御装置3を介して診断モードの解除指示、ロケーションID及び診断結果情報を受信する。リーダ4は、表示部41に、まず、診断モードの状態において診断結果情報及びロケーションIDを表示する。
【0065】
(S128) 作業者は、リーダ4の表示部41の表示情報の内容を目視確認する。表示情報は、ロケーションIDを含むので、作業者は、当該ロケーションIDと、自分のチェックシートに記載の対応するロケーションIDとを比較し、配線21に関する正常性を判定し、その結果をチェックシートに記入する。配線21が正常の場合は当該ロケーションIDが一致し、接続ミス等の異常の場合は当該ロケーションIDが不一致になるので、作業者は容易に判定できる。
【0066】
また表示情報のうちの診断結果情報は、カード7の認証の状態やドア5や電気錠等の機能の正常性に関する診断結果であるOKやNGの情報を含む。作業者は、当該診断結果情報を見て、特に判定を要さずに、そのままチェックシートに診断結果として記入できる。
【0067】
(S129) リーダ4は、S126の診断モード解除指示を受けて情報を表示してから、一定時間、例えば30秒、待機する。これは、作業者による表示情報の確認の時間の確保のためである。
【0068】
(S130) リーダ4は、上記一定時間の経過後、表示部41において、診断結果情報等を消去し、診断モードの終了、通常モードの開始、及び現在通常モードの状態であることを示す情報を表示する。これにより個別の点検の作業が終わる。他の複数の対象の点検の作業も当該個別の作業と同様の繰り返しである。
【0069】
[点検作業(1)]
図5は、本実施の形態の入退管理システムにおける第1の事例として、接続が正常の配線21の場合における、点検作業時の診断処理等の事例を示す。S201等は、動作や処理や信号の流れ等を示す。事例として、対象の建物への入退管理システムの新規導入及び設置時、あるいは通常運用中の保守時に、一人の作業者により、対象の建物の各セキュリティエリア8における設置機器及び配線経路の正常性の判定及び確認作業を含む点検作業を行う例である。
【0070】
図5は、複数の制御装置3と複数のリーダ4との間の配線21のすべてが正常な接続の場合である。
図5の例では特に、Q1で示す第1の制御装置3の第1のポート“01”とR1で示す第1のリーダ4との間の配線21aと、Q1の第2のポート“02”とR2で示す第2のリーダ4との間の配線21bとを示す。
【0071】
作業者は、セキュリティ管理サーバ1から発行されたチェックシートの構築情報等に従い、建物の1階のセキュリティエリアA1の部屋Aのドアd1から点検を開始し、次にドアd2を点検し、といったように順に点検を行う。
【0072】
(S201) 作業者は、前述のように、C1で示す診断用のカード6をドアd1のR1のリーダ4にかざすことで点検作業及び診断モードの開始を要求し、その後、入退用のカード7を用いて診断用動作を行う。
【0073】
(S202) R1のリーダ4は、カード6のID照合による認証が成功した場合、Q1の制御装置3へ、診断モード設定要求の信号を送信する。Q1の制御装置3のポート“01”とR1のリーダ4との間の配線21aにおいて、S202の信号が送信される。
【0074】
(S203) Q1の制御装置3は、自分の装置IDである“0001”と、R1のリーダ4からのS202の情報を受信したポートのポートIDである“01”とを用いて、ロケーションIDを生成する。本例では、生成の仕方として、装置ID(“0001”)とポートID(“01”)とを1つにつなげることで、ロケーションID=“000101”とする。
【0075】
(S204) Q1の制御装置3は、S203のロケーションID(“000101”)を、セキュリティ管理サーバ1へ送信する。
【0076】
(S205) セキュリティ管理サーバ1は、Q1の制御装置3からのロケーションID(“000101”)を受信及び保持する。セキュリティ管理サーバ1は、診断モード開始要求を受けた場合は診断モードへ切り替えて診断モード開始指示を返信する。またセキュリティ管理サーバ1は、同じ要求元であるR1のリーダ4からの診断用情報を受信した場合は診断処理を行う。セキュリティ管理サーバ1は、要求元のR1のリーダ4、即ちロケーションID(“000101”)を送信してきた同じQ1の制御装置3へ向けて、上記のような情報を返信する。
【0077】
(S206) セキュリティ管理サーバ1からQ1の制御装置3を介してR1のリーダ4へ、上記診断モード開始指示や診断結果情報やロケーションID(“000101”)等の信号が送信される。診断結果情報は、要求元のR1のリーダ4及びd1のドア5等に対応付けられた構築情報を含む。
【0078】
(S207) Q1の制御装置3は、セキュリティ管理サーバ1からのS206の信号を受信し、S202の要求元のR1のリーダ4からの信号を受信した同じポート“01”から送信する。Q1の制御装置3のポート“01”とR1のリーダ4との間の配線21aにおいて当該信号が送信される。
【0079】
(S208) S207の信号を受信したR1のリーダ4は、表示部41に、診断モード開始メッセージや、診断結果情報や、ロケーションID(“000101”)や、構築情報等を表示する。表示されるロケーションIDは、配線経路情報を表している。診断結果情報は、診断用動作に応じたカード認証、電気錠の施解錠、及びドア開閉等における正常(OK)や異常(NG)等の情報が含まれている。
【0080】
(S209) 作業者は、S208の表示情報を目視確認し、チェックシートに記載の正しいロケーションID(“000101”)や構築情報等と見比べることにより、機器や配線の正常性の判定及び確認等を行う。本例の場合、Q1の制御装置3とR1のリーダ4との間の配線21aが正常の接続の状態なので、表示情報のロケーションID(“000101”)と、チェックシートに記載のロケーションID(“000101”)とが一致する。よって、作業者は、配線21aが正常であることが確認できる。作業者は、チェックシートに、配線21の正常性の状態の判定結果であるOK(ロケーションIDの一致を示す)や、認証や施解錠等の診断結果情報であるOK、等の情報を記入する。
【0081】
チェックシートの構築情報は、点検の対象の建物の階数、エリア名、部屋名等の情報が人にとってわかりやすい文字や画像の情報で記載されているので、作業者は構築情報を見ることで、点検の対象を間違えにくい。
【0082】
[点検作業(2)]
図6は、本実施の形態の入退管理システムにおける第2の事例として、接続が異常の配線21の場合における、点検作業時の診断処理等の事例を示す。複数の制御装置3と複数のリーダ4との間の配線21において一部が異常な接続の場合である。
図6の例では特に、Q1の制御装置3の第2のポート“02”とR1のリーダ4との間の誤った配線21cと、Q1の第1のポート“01”とR2のリーダ4との間の誤った配線21dとを示す。
【0083】
(S301) 作業者は、点検作業を実施する際、診断用のカード6を、ドアd1のR1のリーダ4にかざす。
【0084】
(S302) R1のリーダ4から、誤った配線21cにおいて、S301による診断モード設定要求の信号がQ1の制御装置3へ送信される。
【0085】
(S303) Q1の制御装置3は、R1のリーダ4からのS301の信号をポート“02”で受信する。Q1の制御装置3は、装置ID“0001”及びポートID“02”を用いて、ロケーションID=“000102”を生成する。
【0086】
(S304) Q1の制御装置3は、S303のロケーションIDを含む信号をセキュリティ管理サーバ1へ通知する。
【0087】
(S305) セキュリティ管理サーバ1は、Q1の制御装置3からのロケーションID(“000102”)を受信及び保持する。セキュリティ管理サーバ1は、診断モード開始要求を受けた場合は診断モードへ切り替えて診断モード開始指示を返信する。またセキュリティ管理サーバ1は、同じ要求元であるR1のリーダ4からの診断用情報を受信した場合は診断処理を行う。セキュリティ管理サーバ1は、要求元のR1のリーダ4、即ちロケーションID(“000102”)を送信してきた同じQ1の制御装置3へ向けて、上記のような情報を返信する。
【0088】
(S306) セキュリティ管理サーバ1からQ1の制御装置3を介してR1のリーダ4へ、上記診断モード開始指示や診断結果情報やロケーションID(“000102”)等の信号が送信される。
【0089】
(S307) Q1の制御装置3は、セキュリティ管理サーバ1からのS306の信号を受信し、S302の要求元のR1のリーダ4からの信号を受信した同じポート“02”から送信する。Q1の制御装置3のポート“02”とR1のリーダ4との間の配線21cにおいて当該信号が送信される。
【0090】
(S308) S307の信号を受信したR1のリーダ4は、表示部41に、診断モードや診断結果情報やロケーションID(“000102”)や構築情報等を表示する。
【0091】
(S309) 作業者は、S308の表示情報を目視確認し、チェックシートの情報と見比べることにより、機器及び配線の正常性の判定及び確認等を行う。本例の場合、配線21c,21dを含む配線21が接続の異常の状態なので、表示情報のロケーションID(“000102”)と、チェックシートに記載のロケーションID(“000101”)とが不一致になる。よって、作業者は、配線21が異常であると判定できる。特に、作業者は、表示情報及びチェックシート情報から、配線の異常の内容についても推測できる。作業者は、ロケーションIDの値“000102”及び“000101”から、配線21aと配線21bとを取り違えた接続ミスの可能性を推測できる。
【0092】
作業者は、チェックシートに、配線21の正常性の状態の判定結果であるNG(ロケーションIDの不一致を示す)や、認証や施解錠等の診断結果情報であるOK、等の情報を記入する。なお作業者は、チェックシートに、表示情報のロケーションIDの値(“000102”)を記入しておいてもよい。
【0093】
なおリーダ4とドア5との間の配線22に問題がある場合、診断結果情報でドア開閉信号等の診断結果が異常になる。これにより作業者は配線22の異常を知ることができる。
【0094】
[ロケーション情報及びチェックシート情報]
前述のロケーション情報やチェックシート情報について補足する。ロケーション情報は、本実施の形態の保守点検の機能に対応させて新たに設けた情報である。ロケーションIDは、制御装置3から見た接続経路を示す情報であり、特に制御装置3と複数のリーダ4との間の配線21の接続の状態を反映した情報である。ロケーションIDは、前述の制御装置3の装置ID、及びポート30のポートIDを含む情報であり、ポートIDは、配線21の状態を示している。なお制御装置3の装置IDは、ネットワーク20のIPアドレス等の情報を用いてもよい。
【0095】
チェックシート情報及び構築情報は、セキュリティ管理サーバ1の出荷時や設置時に、予め設定または生成される。顧客都合に応じてエリアや経路の構成、機器設置場所や配線等の変更がある場合、当該情報の設定が更新される。
【0096】
チェックシート情報における構築情報は、セキュリティエリア8のIDやドア5のID等の抽象的な識別番号等の情報の他に、建物名、階数、エリア名、部屋名、等の人が判断及び認識しやすい情報を含む。これにより保守点検作業の際、作業者は、自分がどの建物のエリアや部屋やドア5にいるか、保守点検の対象のリーダ4やドア5がどれか、等がわかりやすく、対象の取り違え等のミスを削減できる。
【0097】
図7は、チェックシート情報52に含まれる構築情報54の管理に関する構成例を示す。
図7の構築情報54は、項目として、制御装置3の装置ID、リーダID、ドアID、建物階数、セキュリティエリア8のエリアID、エリア名、部屋名、等を有する。このように、構築情報54は、制御装置3、リーダ4、及びドア5の対応関係を含む情報を、人がわかりやすい文字等の形式で示す情報を含む。
【0098】
なお構築情報54の使用は必須ではなく、他の実施の形態の入退管理システムでは、構築情報54を用いない形態としてもよい。本実施の形態のようにロケーションIDに加えて構築情報54を併用する形態により、作業者が保守点検の際によりわかりやすく判断ができる。
【0099】
[効果等]
以上説明したように、本実施の形態の入退管理システムによれば、入退管理システムの保守点検に関して、設置機器及び配線経路の正常性の確認を含む保守点検の作業を効率良く実施できるようにする機能を提供するので、保守点検の作業の工数及び手間を削減できる。本実施の形態によれば、セキュリティ管理サーバ1とドア5付近の設置機器との間の接続の状態、特に少なくともリーダ4と制御装置3との間の配線21の部分の正常性の確認について、少ない工数及び作業者で実現できるようになり、作業の効率が大幅に改善できる。
【0100】
本実施の形態によれば、特に、作業者一人であっても、ドア5付近の設置機器や配線の疎通確認を含む保守点検の作業を少ない手間で容易に効率良く行うことができる。作業者は、各ドア5付近のリーダ4の所で診断モードにして点検を実施し、リーダ4の表示部41の情報と、チェックシートの情報とを比較することで、容易に正常性を確認できる。従来はセキュリティ管理サーバ1側に別の作業者を確保する必要があるが、本実施の形態ではその必要も無い。
【0101】
また本実施の形態によれば、作業者の情報の読み取りや判断等における負担やミスが少なくなるように、特有の仕組みで支援することができる。従来例の入退管理システムは、セキュリティ管理サーバに蓄積された詳細な履歴情報の内容を見て正常性を判断する等の手間が必要であり、情報の解釈や判断のミス等も起こり得る。一方本実施の形態では、作業者は、従来例のようにセキュリティ管理サーバの履歴情報を見て正常性を判断する等の手間が不要であり、情報の解釈や判断のミス等も削減できる。
【0102】
また従来の保守点検時、セキュリティ確保のために、作業者と共に顧客に同行してもらう場合もあった。従来は作業者による保守点検時に一般利用者の入退用のカードを借り受けて保守点検を行っていた。一方、本実施の形態では、ID登録されている診断用のカード6を用いて診断モードに切り替えて、入退用のカード7で診断用動作を行う仕組みであり、2枚の使い分けにより、セキュリティが確保される。顧客から借り受けた入退用のカードのみや、専用の1枚の万能のカードだけで保守点検ができる仕組みとする場合、作業者による不正利用の可能性がある。診断用のカード6を落としたり盗まれたりした場合も、診断用のカード6では通常の入退はできないので、セキュリティが確保される。
【0103】
本実施の形態は、リーダ4からセキュリティ管理サーバ1へ所定の情報を送り、セキュリティ管理サーバ1からリーダ4へ所定の情報を返す仕組みである。従来例の入退管理システムは、保守点検時に、セキュリティ管理サーバから制御装置側へ診断結果やロケーションID等の情報を返すような処理は行っていない。本実施の形態では、セキュリティ管理サーバ1から返される情報をリーダ4に表示し、作業者は、リーダ4の表示情報とチェックシートの情報との比較だけで、容易に正常性の判定ができる。
【0104】
本実施の形態は、2種のカードの使い分け等でセキュリティを確保しつつ、保守点検作業が従来よりも簡単な手順で済むようにシステム化した。本実施の形態は、通常運用時の入退に係わる基本的なシステム構成を変えずに、保守点検用の機能を工夫した。
【0105】
複数(m個)の制御装置3と、複数(n個)のリーダ4との間の配線21は、配線21をつなぐ制御装置3及びポート30やリーダ4を間違える等、接続のミスが起こりやすい。本実施の形態の保守点検の機能により、配線21について正常性を容易に確認できる。
【0106】
診断モードを設けて診断用情報を送受信する形態としたので、通常運用時の情報と分離されるので、通信負荷やセキュリティ管理サーバ1の処理負荷が少なくなる効果も見込める。
【0107】
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0108】
他の実施の形態の入退管理システムは、リーダ4で、表示部41の文字等の表示ではなく、音や光で状態を作業者に報せてもよい。リーダ4は例えば音声でロケーションIDを読み上げてもよい。
【0109】
他の実施の形態の入退管理システムとして、制御装置3とセキュリティ管理サーバ1とを統合した形態としてもよい。この統合された入退管理装置は、複数のポートを持ち、複数のリーダ4と配線で接続される。そして、複数の各リーダ4と入退管理装置との間で、前述の実施の形態と同様に、ロケーションID等を用いて、保守点検時の診断を含む処理が行われる。これにより、複数の各リーダ4と入退管理装置との間の配線を含む正常性を容易に確認できる。
【0110】
他の実施の形態の入退管理システムとして、ロケーションIDを用いた配線21の正常性の判定を行わない形態としてもよい。即ちリーダ4とドア5との間の配線22、ドア5の開閉や電気錠の施解錠を対象とした診断結果情報のみをリーダ4の表示部41に表示する形態としてもよい。
【0111】
他の実施の形態として、リーダ4からセキュリティ管理サーバ1へモードの設定や解除の要求を送信しない形態としてもよい。この場合、
図3のシーケンス中、S102のように診断用のカード6の認証結果情報のみをセキュリティ管理サーバ1へ送信する。すると、セキュリティ管理サーバ1は、当該認証結果情報のIDから、DBの登録IDを参照することで、診断用のカード6であることを確認できるので、診断モードへの切り替えを許可する。解除の時も同様である。
【0112】
前述の実施の形態では、ロケーション情報の生成の際に複数のリーダ4の識別情報を用いていないが、他の実施の形態として、リーダ4のIDを用いてロケーション情報を生成する形態としてもよい。