(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記螺旋溝は、一端部が前記第1環状溝の第1部分と接続され、他端部が前記第2環状溝の第2部分と接続される第1螺旋溝と、一端部が前記第1部分とは異なる前記第1環状溝の第3部分と接続され、他端部が前記第2部分とは異なる前記第2環状溝の第4部分と接続される第2螺旋溝と、を含み、
前記第1螺旋溝と前記第2螺旋溝とは、平行である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の軸受装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軸受装置において、軸部材と軸受部材との間にグリースが供給される。供給されたグリースが軸部材と軸受装置との間に十分に行き渡らないと、軸受装置の性能が低下する可能性がある。粉砕装置の軸受装置に限らず、別の装置に用いられる軸部材を軸方向に移動可能又は軸周りに回転可能に支持する軸受装置においても、供給されたグリースが十分に行き渡らないと性能が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、グリースを十分に行き渡らせて性能の低下を抑制できる軸受装置及び粉砕装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る軸受装置は、内周面を有する筒状の軸受部材と、前記軸受部材の中心軸を囲むように前記内周面に形成された第1環状溝と、前記中心軸と平行な方向に関して前記第1環状溝から離れて前記内周面に形成された第2環状溝と、前記第1環状溝の内側に設けられ、グリースを供給する供給口と、一端部が前記第1環状溝と接続され、他端部が前記第2環状溝と接続され、前記第1環状溝と前記第2環状溝との間において前記中心軸の周囲の少なくとも一部を旋回するように前記内周面に形成された螺旋溝と、を備える。
【0008】
本発明によれば、第1環状溝に供給口が配置されているため、供給口から供給されたグリースの少なくとも一部は、第1環状溝を流動することができる。螺旋溝の一端部が第1環状溝と接続されているため、第1環状溝を流動するグリースの少なくとも一部は、螺旋溝に流入することができる。螺旋溝は、中心軸の周囲の少なくとも一部を旋回するように形成されているため、グリースは、軸受部材の内周面の周方向及び軸方向のそれぞれに行き渡ることができる。螺旋溝の他端部が第2環状溝と接続されるため、グリースの少なくとも一部は、第2環状溝を流動することができる。このように、本発明によれば、供給口から供給されたグリースは、内周面において広範囲に行き渡ることができる。したがって、軸受装置の性能の低下が抑制される。
【0009】
本発明に係る軸受装置において、前記内周面の内側に配置される軸部材を前記中心軸と平行な方向に移動可能又は前記中心軸周りに回転可能に支持し、前記供給口から供給された前記グリースにより、前記軸部材の外周面と前記内周面との間の内部空間の異物が排出されてもよい。
【0010】
従って、中心軸と平行な方向に関して第1環状溝から第2環状溝に向かって流動するグリースにより、内部空間の異物が円滑に排出される。
【0011】
本発明に係る軸受装置において、前記中心軸と平行な方向に関して前記第1環状溝の外側に配置され、前記内部空間の前記グリースの流出を抑制するグリースシール部材と、前記中心軸と平行な方向に関して前記グリースシール部材よりも外側に配置され、前記内部空間に対する異物の侵入を抑制する第1シール部材と、前記中心軸と平行な方向に関して前記第2環状溝の外側に配置され、前記内部空間に対する異物の侵入を抑制する第2シール部材と、を備えてもよい。
【0012】
従って、第1シール部材及び第2シール部材のそれぞれにより、外部空間の異物が内部空間に侵入することが抑制される。また、グリースシール部材により、供給口から供給されたグリースが、グリースシール部材の外側の空間に流出することが抑制される。
【0013】
本発明に係る軸受装置において、前記中心軸と平行な方向に関して前記第1シール部材よりも外側の第1外部空間は、前記中心軸と平行な方向に関して前記第2シール部材よりも外側の第2外部空間よりも異物が多い空間でもよい。
【0014】
従って、中心軸と平行な方向に関する軸部材の移動又は軸部材の回転により、第1外部空間の異物が内部空間に引き込まれても、中心軸と平行な方向に関して第1環状溝側(軸受部材の一端部側)から第2環状溝側(軸受部材の他端部側)に向かって流動するグリースにより、内部空間の異物が第2外部空間側に排出される。第2環状溝の外側にはグリースシール部材が配置されていないため、内部空間の異物は、グリースとともに第2外部空間に円滑に排出される。第1環状溝の外側にはグリースシール部材及び異物シール部材が配置されているため、内部空間のグリース及び異物が第1外部空間に排出されることが抑制される。
【0015】
本発明に係る軸受装置において、前記螺旋溝は、前記中心軸の周囲を少なくとも1周するように形成されてもよい。
【0016】
従って、螺旋溝に沿ってグリースが流動することにより、内周面において広範囲に行き渡ることができる。
【0017】
本発明に係る軸受装置において、前記供給口は、前記螺旋溝の前記一端部と接続される前記第1環状溝の接続部分に設けられてもよい。
【0018】
従って、供給口から供給されたグリースは、第1環状溝及び螺旋溝のそれぞれに円滑に供給される。
【0019】
本発明に係る軸受装置において、前記螺旋溝は、一端部が前記第1環状溝の第1部分と接続され、他端部が前記第2環状溝の第2部分と接続される第1螺旋溝と、一端部が前記第1部分とは異なる前記第1環状溝の第3部分と接続され、他端部が前記第2部分とは異なる前記第2環状溝の第4部分と接続される第2螺旋溝と、を含み、前記第1螺旋溝と前記第2螺旋溝とは、平行でもよい。
【0020】
従って、複数の螺旋溝により、供給口から供給されたグリースは、内周面において広範囲に行き渡ることができる。
【0021】
本発明に係る軸受装置において、前記供給口は、前記第1部分に設けられてもよい。
【0022】
従って、供給口から供給されたグリースは、第1環状溝及び第1螺旋溝のそれぞれに円滑に行き渡る。第1環状溝及び第1螺旋溝を流動するグリースの少なくとも一部は、第2螺旋溝に流入し、その第2螺旋溝を流動する。これにより、グリースは、内周面において広範囲に行き渡ることができる。
【0023】
本発明に係る軸受装置において、前記第1環状溝の幅は、前記螺旋溝の幅よりも大きくてもよい。
【0024】
従って、供給口から供給されたグリースは、第1環状溝を円滑に流動することができ、その第1環状溝に接続された螺旋溝に円滑に流入することができる。
【0025】
本発明に係る粉砕装置は、粉砕テーブルと、前記粉砕テーブルとの間で固体燃料を粉砕する粉砕ローラと、前記粉砕ローラを支持する軸部材と、前記軸部材を支持する上記の軸受装置と、を備える。
【0026】
本発明によれば、軸受装置の性能の低下が抑制されるため、粉砕装置の性能の低下も抑制される。
【0027】
本発明に係る粉砕装置は、粉砕テーブルと、前記粉砕テーブルとの間で固体燃料を粉砕する粉砕ローラと、前記粉砕ローラを支持する軸部材と、内周面を有する筒状の軸受部材を含み、前記内周面の内側で前記軸受部材の中心軸と平行な方向に前記軸部材を移動可能又は前記中心軸周りに回転可能に支持する軸受装置と、を備え、前記軸受装置は、前記中心軸と平行な方向に関して前記軸受部材の一端部に近い前記内周面の一部の領域に形成された第1環状溝と、前記中心軸と平行な方向に関して前記軸受部材の他端部に近い前記内周面の一部の領域に形成された第2環状溝と、前記第1環状溝の内側に設けられ、グリースを供給する供給口と、一端部が前記第1環状溝と接続され、他端部が前記第2環状溝と接続され、前記第1環状溝と前記第2環状溝との間において前記中心軸の周囲の少なくとも一部を旋回するように前記内周面に形成された螺旋溝と、を有し、前記軸受部材の一端部は、前記軸受部材の他端部よりも前記粉砕ローラの近くに配置され、前記供給口から供給された前記グリースにより、前記軸部材の外周面と前記内周面との間の内部空間の異物が前記軸受部材の他端部側から排出される。
【0028】
本発明によれば、第1環状溝に供給口が配置されているため、供給口から供給されたグリースの少なくとも一部は、第1環状溝を流動することができる。螺旋溝の一端部が第1環状溝と接続されているため、第1環状溝を流動するグリースの少なくとも一部は、螺旋溝に流入することができる。螺旋溝は、中心軸の周囲の少なくとも一部を旋回するように形成されているため、グリースは、内周面の周方向及び軸方向のそれぞれに行き渡ることができる。螺旋溝の他端部が第2環状溝と接続されるため、グリースの少なくとも一部は、第2環状溝を流動することができる。このように、本発明によれば、供給口から供給されたグリースは、内周面において広範囲に行き渡ることができる。また、軸受部材の一端部は、軸受部材の他端部よりも粉砕ローラの近くに配置されており、中心軸と平行な方向に関する軸部材の移動により、粉砕ローラの周囲の異物が軸受部材の他端部側から内部空間に引き込まれる可能性が高い。本発明によれば、グリースは、内部空間において中心軸と平行な方向に関して第1環状溝側(軸受部材の一端部側)から第2環状溝側(軸受部材の他端部側)に向かって流動するため、内部空間の異物はグリースとともに軸受部材の他端部側から円滑に排出される。したがって、粉砕装置の性能の低下が抑制される。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る軸受装置及び粉砕装置によれば、性能の低下が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0032】
図1は、本実施形態に係る粉砕装置1の一例を示す図である。粉砕装置1は、ローラミル装置とも呼ばれる。粉砕装置1は、石炭及びバイオマスのような固形燃料を粉砕して、燃焼に適した粉末燃料を生成する。バイオマスとは、再生可能な生物由来の有機性資源である。バイオマスは、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ、及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレット及びチップ)の少なくとも1つを含む。以下の説明では、固形燃料が石炭(原炭)であり、粉砕装置1が、石炭を粉砕して石炭の粉末燃料(微粉炭)を生成することとする。
【0033】
図1に示すように、粉砕装置1は、ハウジング2と、ハウジング2の内部に配置された粉砕テーブル3と、ハウジング2の内部に配置され、粉砕テーブル3との間で石炭を粉砕する粉砕ローラ4と、粉砕ローラ4を支持する軸部材5と、軸部材5を支持する軸受装置6と、ハウジング2の上部に配置された石炭供給管7と、ハウジング2の内部に配置された回転式分級機8とを備えている。
【0034】
石炭は、石炭供給装置から石炭供給管7を介して、ハウジング2の内部に供給される。粉砕テーブル3は、石炭供給管7の下方に配置される。石炭は、石炭供給管7を介して、粉砕テーブル3に供給される。
【0035】
粉砕テーブル3は、テーブルライナ3Aを有する。テーブルライナ3Aの上面は、外側に向かって上方に傾斜する。粉砕テーブル3は、駆動装置9の作動により、軸AXを中心に回転する。駆動装置9は、粉砕テーブル3に接続された支持部材9Aと、支持部材9Aに固定されたウォームホイール9Bと、ウォームホイール9Bに噛み合うウォームギア9Cを有するモータ9Dとを有する。粉砕テーブル3は、支持部材9Aを介して、ハウジング2に回転可能に支持される。モータ9Dの作動によりウォームギア9Cが回転すると、ウォームホイール9Bが回転する。ウォームホイール9Bが回転すると、支持部材9A及び粉砕テーブル3が軸AXを中心に回転する。
【0036】
粉砕ローラ4は、石炭供給管7から粉砕テーブル3に供給された石炭を、粉砕テーブル3と協働して粉砕する。粉砕ローラ4は、粉砕テーブル3と対向するように配置される。粉砕ローラ4は、複数(例えば3つ)配置される。
【0037】
軸部材5は、粉砕ローラ4と接続される。軸部材5の先端部に粉砕ローラ4が配置される。軸受装置6は、軸部材5を回転可能に支持する。本実施形態において、軸受装置6は、軸部材10Aの中心軸周りに軸部材5を回転可能に支持する。
【0038】
軸受装置6は、支持装置10を介して、ハウジング2に支持される。支持装置10は、ハウジング2に設けられ、粉砕ローラ4を揺動(傾斜)可能に支持する軸部材10Aと、軸受装置6と接続され、軸受装置6よりも上方に配置された第1アーム部10Bと、第1アーム部10Bを移動可能な油圧シリンダ及び中間ピストン10Pを含む駆動装置10Cと、軸受装置6と接続され、軸受装置6よりも下方に配置された第2アーム部10Dと、第2アーム部10Dと接触可能な位置に配置されたストッパ部材10Eとを有する。駆動装置10Cの油圧シリンダが中間ピストン10Pを押すと、その中間ピストン10Pが第1アーム部10Bを押す。駆動装置10Cにより第1アーム部10Bが押されると、粉砕ローラ4が粉砕テーブル3に近付くように、軸受装置6が軸部材10Aを中心に回転(傾斜)する。第2アーム部10Dがハウジング2に固定されたストッパ部材10Eと接触することにより、粉砕ローラ4の可動範囲が規制される。支持装置10は、駆動装置10Cにより軸受装置6を動かして、粉砕テーブル3と粉砕ローラ4との相対位置(間隙の寸法)を調整することができる。
【0039】
粉砕テーブル3に石炭が供給され、粉砕テーブル3が回転すると、粉砕テーブル3に供給された石炭は、粉砕テーブル3の回転による遠心力により粉砕テーブル3上を移動する。その石炭は、粉砕ローラ4と粉砕テーブル3との間隙に入り込む。粉砕ローラ4が石炭を押し付けた状態で、粉砕テーブル3が回転することにより、石炭が粉砕され、微粉炭が生成される。本実施形態において、粉砕テーブル3側に押し付けられている粉砕ローラ4は、粉砕テーブル3と連動して回転する。
【0040】
また、粉砕装置1は、ハウジング2に設けられ、ハウジング2の内部に一次空気を供給する入口ポート11と、ハウジング2に設けられ、生成された微粉炭を排出する出口ポート12と、異物排出ポート13とを有する。
【0041】
回転式分級機8は、出口ポート12の下方に配置される。生成された微粉炭は、回転式分級機8により分級され、燃料に適した粒径の微粉炭が出口ポート12からハウジング2の外部に排出される。
【0042】
図2は、本実施形態に係る軸部材10A及び軸受装置6の一例を示す断面図である。軸受装置6は、内周面21を有する円筒状の軸受部材20と、軸受部材20の内周面21に配置されたグリースの供給口22とを備えている。本実施形態において、軸受装置6は、すべり軸受を含み、軸受部材20の内周面(すべり面)21で軸部材10Aを受ける。軸受部材20は、軸部材10Aの周囲に配置される。内周面21は、軸受部材20の中心軸Jの周囲に配置される。軸部材10Aは、内周面21の内側に配置される。
【0043】
軸受装置6は、内周面21の内側に配置された軸部材10Aを、中心軸J周りに回転可能に支持する。本実施形態において、軸部材10Aは、中心軸Jを中心に回転する。軸部材5は、軸受装置6に支持された状態で、中心軸J周りに回転する。なお、軸部材10Aは、中心軸Jと平行な方向に移動可能でもよい。
【0044】
軸受装置6に、グリースを供給する供給装置40が接続される。供給装置40は、供給口22と接続される供給管41と、供給管41を介して供給口22にグリースを供給する供給部42とを有する。供給部42は、所謂グリースガンを含み、グリースが軸受部材20と軸部材10Aとの間に注入されるようにグリースの圧力を高めることができる。本実施形態において、供給管41に、供給管41を流動するグリースの圧力を検出する検出装置43が設けられる。
【0045】
軸受装置6は、中心軸Jと平行な方向に関して軸受部材20の一端部に配置された第1シール装置23と、軸受部材20の他端部に配置された第2シール装置24とを備えている。第1シール装置23は、円筒状の支持部材25と、異物の流通を抑制するための異物シール部材26と、グリースの流通を抑制するためのグリースシール部材27とを有する。異物シール部材26及びグリースシール部材27は、支持部材25に支持される。第2シール装置24は、円筒状の支持部材28と、異物の流通を抑制するための異物シール部材29とを有する。異物シール部材29は、支持部材28に支持される。
【0046】
図3は、本実施形態に係る軸受部材20の一例を示す断面図である。
図4は、本実施形態に係る軸受部材20の一例を示す展開図である。以下の説明においては、中心軸Jと平行な方向を適宜、軸方向、と称し、中心軸Jの周方向を適宜、周方向、と称する。
【0047】
図3及び
図4に示すように、軸受部材20は、中心軸Jを囲むように内周面21に形成された第1環状溝31と、中心軸Jを囲むように内周面21に形成された第2環状溝32と、第1環状溝31と第2環状溝32との間の内周面21に形成された螺旋溝30(30A、30B、30C)とを備えている。
【0048】
軸方向に関して、第1環状溝31と第2環状溝32とは離れている。第1環状溝31は、軸方向に関して軸受部材20の一端部に近い内周面21の一部の領域に形成される。第2環状溝32は、軸方向に関して軸受部材20の他端部に近い内周面21の一部の領域に形成される。
【0049】
本実施形態において、軸受部材20の一端部(第1環状溝31)は、軸受部材20の他端部(第2環状溝32)よりも粉砕ローラ4の近くに配置される。本実施形態において、軸受部材20の一端部及び第1シール装置23は、粉砕ローラ4を含む外部空間SAに配置される。軸受部材20の他端部及び第2シール装置24は、粉砕ローラ4から離れた外部空間SBに配置される。
【0050】
第1環状溝31は、途切れることなく、周方向に連続するように形成される。第2環状溝32は、途切れることなく、周方向に連続するように形成される。第1環状溝31は、中心軸Jと直交するように形成される。すなわち、軸方向に関して、第1環状溝31の位置は、第1環状溝31の全ての領域において変化しない。同様に、第2環状溝32は、中心軸Jと直交するように形成される。
【0051】
螺旋溝30は、第1環状溝31と第2環状溝32との間において中心軸Jの周囲の少なくとも一部を旋回するように内周面21に形成される。螺旋溝30の一端部は、第1環状溝31と接続される。螺旋溝30の他端部は、第2環状溝32と接続される。第1環状溝31と第2環状溝32との間において、螺旋溝30は途切れることなく連続するように形成される。
【0052】
第1環状溝31の幅W1は、螺旋溝30の幅Wrよりも大きい。第2環状溝32の幅W2は、螺旋溝30の幅Wrよりも大きい。第1環状溝31の幅W1の寸法と第2環状溝32の幅W2の寸法とは等しい。
【0053】
供給口22は、第1環状溝31の内側に設けられる。本実施形態において、供給口22は、螺旋溝30の一端部と接続される第1環状溝31の接続部分に設けられる。供給口22は、軸部材10Aの外周面15と内周面21との間の内部空間SPにグリースを供給する。
【0054】
螺旋溝30は、中心軸Jの周囲を少なくとも1周するように形成される。本実施形態においては、螺旋溝30は、中心軸Jの周囲を1周半するように形成される。
【0055】
本実施形態において、螺旋溝30は、第1螺旋溝30Aと、第2螺旋溝30Bと、第3螺旋溝30Cとを含む。
図4に示すように、第1螺旋溝30Aと第2螺旋溝30Bとは平行である。第2螺旋溝30Bと第3螺旋溝30Cとは平行である。
【0056】
第1螺旋溝30Aの一端部は、第1環状溝31の部分P1と接続される。第1螺旋溝30Aの他端部は、第2環状溝32の部分P2と接続される。第2螺旋溝30Bの一端部は、第1環状溝31の部分P3と接続される。第2螺旋溝30Bの他端部は、第2環状溝32の部分P4と接続される。第3螺旋溝30Cの一端部は、第1環状溝31の部分P5と接続される。第3螺旋溝30Cの他端部は、第2環状溝32の部分P6と接続される。部分P1と部分P3と部分P5とは、それぞれ異なる第1環状溝31の部分である。部分P2と部分P4と部分P6とは、それぞれ異なる第2環状溝32の部分である。本実施形態において、供給口22は、部分P1に設けられる。
【0057】
周方向に関する部分P1と部分P3との間隔と、部分P3と部分P5との間隔と、部分P5と部分P1との間隔とは等しい。周方向に関する部分P2と部分P4との間隔と、部分P4と部分P6との間隔と、部分P6と部分P2との間隔とは等しい。すなわち、部分P1と部分P3と部分P5とは、周方向に関して120度ごとに配置される。部分P2と部分P4と部分P6とは、周方向に関して120度ごとに配置される。
【0058】
第1環状溝31と第2環状溝32との間において、第1螺旋溝30Aと第2螺旋溝30Bとの間隔と、第2螺旋溝30Bと第3螺旋溝30Cとの間隔と、第3螺旋溝30Cと第1螺旋溝30Aとの間隔とは等しい。
【0059】
図2に示すように、グリースシール部材27は、軸方向に関して、内部空間SPの中心に対して第1環状溝31(軸受部材20の一端部)の外側に配置される。グリースシール部材27は、軸部材5を囲む環状の部材である。グリースシール部材27は、支持部材23と軸部材10Aとの間において、軸部材10Aの外周面15に接触するように配置される。グリースシール部材27は、内部空間SPのグリースが外部空間SAに流出することを抑制する。
【0060】
異物シール部材26は、軸方向に関して、内部空間SPの中心に対して、グリースシール部材27よりも外側に配置される。異物シール部材26は、軸部材10Aを囲む環状の部材である。異物シール部材26は、支持部材23と軸部材10Aとの間において、軸部材10Aの外周面15に接触するように配置される。異物シール部材26は、外部空間SAの異物(塵埃)が軸受部材20の一端部を介して内部空間SPに侵入することを抑制する。異物シール部材26は、Vパッキンでもよい。
【0061】
異物シール部材29は、軸方向に関して、内部空間SPの中心に対して第2環状溝32(軸受部材20の他端部)の外側に配置される。異物シール部材29は、軸部材10Aを囲む環状の部材である。異物シール部材29は、支持部材28と軸部材10Aとの間において、軸部材10Aの外周面15に接触するように配置される。異物シール部材29は、外部空間SBの異物(塵埃)が軸受部材20の他端部を介して内部空間SPに侵入することを抑制する。本実施形態において、異物シール部材29は、軸方向に関して2つ設けられる。異物シール部材29は、Vパッキンでもよい。
【0062】
外部空間SAは、軸方向に関して、内部空間SPの中心に対して異物シール部材26よりも外側の空間である。外部空間SBは、軸方向に関して、内部空間SPの中心に対して異物シール部材29よりも外側の空間である。外部空間SAは、粉砕ローラ4が配置される空間(ハウジング2の内部空間)である。すなわち、外部空間SAは、石炭の粉砕処理が行われる空間(粉砕処理空間)を含み、異物(塵埃)を多く含む。異物は、例えば微粉炭を含む。外部空間SBは、粉砕ローラ4(粉砕処理空間SA)から離れた空間である。外部空間SBは、外部空間SAよりも異物(微粉炭など)が少ない空間である。第1環状溝31は、第2環状溝32よりも粉砕ローラ4(粉砕処理空間SA)に近い。
【0063】
次に、本実施形態に係る軸受装置6の動作の一例について説明する。軸受装置6は、軸部材10Aを軸方向に移動可能又は周方向に回転可能に支持する。内部空間SPにはグリースが供給されており、軸部材10Aは、内周面21の内側において円滑に移動可能又は回転可能である。
【0064】
軸部材10Aの少なくとも一部は、軸受部材20の一端部から突出し、外部空間SAに配置される。外部空間SAは、粉砕ローラ4が配置されている空間を含み、外部空間SBよりも異物の量が多い(汚染度が高い)。外部空間SAに軸部材10Aの少なくとも一部が配置されることにより、その軸部材10Aの外周面15に異物が付着する可能性がある。軸受部材20の他端部から突出した軸部材10Aの外周面15に異物が付着した状態で、軸部材10Aが移動又は回転すると、その異物が内部空間SPに引き込まれる可能性がある。本実施形態においては、異物シール部材26が配置されているものの、軸部材10Aの移動又は回転により、内部空間SPに異物が侵入してしまう可能性がある。
【0065】
本実施形態においては、内部空間SPの異物を排出するために、例えば軸受装置6のメンテナンスにおいて、供給装置40から内部空間SPにグリースが供給される。グリースは、第1環状溝31に配置されている供給口22から内部空間SPに供給される。供給口22から供給されたグリースの少なくとも一部は、第1環状溝31を流動する。
【0066】
螺旋溝30の一端部が第1環状溝31と接続されている。そのため、第1環状溝31を流動するグリースの少なくとも一部は、螺旋溝30に流入し、その螺旋溝30を流動する。螺旋溝30は、中心軸Jの周囲の少なくとも一部を旋回するように形成されている。螺旋溝30にガイドされて内部空間SPを流動するグリースは、螺旋溝30が形成されていない内周面21の非形成領域と外周面15との間の空間にも行き渡る。このように、グリースは、内周面21(内部空間SP)の周方向及び軸方向のそれぞれに行き渡ることができる。
【0067】
螺旋溝30の他端部が第2環状溝32と接続されている。そのため、第1螺旋溝31と第2螺旋溝32との間の内部空間SPを流動するグリースの少なくとも一部は、第2環状溝32に流入する。内部空間SPのグリースは、第2環状溝32及び軸受部材20の他端部を介して、外部空間SB側に排出される。これにより、内部空間SPに存在していた異物を含んでいる可能性が高いグリースが、供給口22から供給されたクリーンなグリースにより内部空間SPから排出され、内部空間SPはクリーンなグリースに置換される。
【0068】
以上説明したように、本実施形態によれば、供給口22から供給されたクリーンなグリースを、内部空間SPに十分に行き渡らせることができる。そのため、内部空間SPは、異物を含んでいる可能性が高いグリースから、供給口22から供給されたクリーンなグリースに置換される。したがって、軸受装置6の性能の低下が抑制され、軸部材10Aは、内周面21の内側で円滑に移動することができる。
【0069】
本実施形態において、外部空間SAは外部空間SBよりも異物が多い空間であり、外部空間SAから内部空間SPに異物が侵入する可能性が高い。本実施形態においては、第1環状溝31の内側に供給口22が配置され、第1環状溝31から第2環状溝32に向かってグリースが流動するように螺旋溝30が設けられている。すなわち、本実施形態において、グリースは、内部空間SPにおいて軸受部材20の一端部側から他端部側に向かって流動する。そのため、内部空間SPの異物が、軸受部材20の一端部側から外部空間SB側に円滑に排出される。本実施形態において、軸受部材20の他端部側にはグリースシール部材が配置されていないため、内部空間SPの異物は、グリースとともに外部空間SBに円滑に排出される。
【0070】
本実施形態においては、異物シール部材26により外部空間SAの異物が内部空間SPに侵入することが抑制され、異物シール部材29により外部空間SBの異物が内部空間SPに侵入することが抑制されている。これにより、軸受装置6の性能の低下が抑制される。
【0071】
また、本実施形態においては、グリースシール部材27により、内部空間SPのグリースが外部空間SAに流出することが抑制される。したがって、グリースによる外部空間SAの汚染が抑制される。また、本実施形態においては、軸受部材20の一端部の近傍に設けられた供給口22から高圧のグリースが供給されても、そのグリースは、螺旋溝30によって、軸受部材20の一端部側から他端部側に向かって円滑に流動する。そのため、高圧のグリースが供給されても、グリースシール部材27に高い圧力が作用することが抑制される。本実施形態においては、高圧のグリースが供給されても、螺旋溝30により、グリースシール部材27の許容圧力(例えば2MPa)がグリースシール部材27に作用することが抑制される。
【0072】
また、本実施形態において、螺旋溝30は、中心軸Jの周囲を少なくとも1周するように形成されている。そのため、その螺旋溝30に沿ってグリースが流動することにより、内部空間SPにおいて広範囲に行き渡ることができる。
【0073】
また、本実施形態において、供給口22は、第1螺旋溝30Aの一端部と接続される第1環状溝31の部分P1に設けられている。そのため、供給口22から供給されたグリースは、第1環状溝31に円滑に供給されるとともに、螺旋溝30にも円滑に供給される。したがって、グリースは、第1環状溝31及び螺旋溝30のそれぞれにガイドされて、内部空間SPにおいて広範囲に行き渡ることができる。
【0074】
また、本実施形態において、螺旋溝30は、複数設けられる。それら複数の螺旋溝30(第1螺旋溝30A、第2螺旋溝30B、第3螺旋溝30C)により、供給口22から供給されたグリースは、内部空間SPにおいて広範囲に行き渡ることができる。
【0075】
また、本実施形態において、第1環状溝31の幅W1は、螺旋溝30の幅Wrよりも大きい。そのため、供給口22から供給されたグリースは、第1環状溝31を円滑に流動することができ、その第1環状溝31に接続された螺旋溝30に円滑に流入することができる。
【0076】
図5は、本実施形態に係る軸受部材20Bの一例を示す図である。
図5に示すように、螺旋溝30(第1螺旋溝30A、第2螺旋溝30B、第3螺旋溝30C)は、中心軸Jを1周するように形成されてもよい。
【0077】
図6は、本実施形態に係る軸受部材20Cの一例を示す図である。
図6に示すように、螺旋溝30(第1螺旋溝30A、第2螺旋溝30B、第3螺旋溝30C)は、中心軸Jを2周するように形成されてもよい。
【0078】
3つの螺旋溝30(第1螺旋溝30A、第2螺旋溝30B、第3螺旋溝30C)は、中心軸Jを1周以上2周以下で旋回するように設けられることが好ましい。例えば、3つの螺旋溝30が中心軸Jを2周半以上旋回するように設けられると、隣接する螺旋溝30の距離が短くなり、グリースが軸方向に流動し難くなり、その結果、内部空間SP全体に行き渡らなくなる可能性が高くなる。
【0079】
なお、軸受部材20の内径(軸部材10Aの外径)に基づいて、螺旋溝30の数及び中心軸Jを中心とした旋回回数が定められてもよい。螺旋溝30は、1つの螺旋溝だけでもよいし、2つの螺旋溝でもよいし、4つ以上の任意の複数の螺旋溝を含んでもよい。
【0080】
なお、上述の実施形態において、中間ピストン10Pが軸受装置6(軸受部材20)に支持されてもよい。中間ピストン10Pは、軸部材であり、軸受部材20に支持された状態で、その中間ピストン10Pの中心軸と平行な方向に移動可能である。
【0081】
なお、上述の実施形態において、グリースの供給は、軸受装置6(粉砕装置1)のメンテナンスにおいて行われることとした。グリースの供給は、軸受装置6(粉砕装置1)の稼動において行われてもよい。例えば、粉砕装置1の稼動においてもグリースの供給を実行可能な自動供給装置を設け、その自動供給装置を使ってグリースが供給されてもよい。軸部材が中心軸と平行な方向に移動(往復移動)する場合、メンテナンス時(稼動停止時)及び稼働時のそれぞれにおいてグリースを供給することにより、軸受装置の性能の低下を抑制できる。軸部材が中心軸周りに回転する場合においても、グリースの供給は、メンテナンス時に行われてもよいし、稼動時に行われてもよい。
【0082】
なお、上述の実施形態においては、軸受装置6が粉砕装置1に適用される例について説明した。もちろん、軸受装置6は、粉砕装置1とは別の装置に適用されてもよい。軸方向に関して、軸受部材20の一端部が外部空間SAのような第1空間に配置され、軸受部材20の他端部が第1空間よりも汚染度が低い外部空間SBのような第2空間に配置される場合、第1環状溝31に配置された供給口22からグリースが供給されることにより、第1空間から軸受部材20の一端部を介して内部空間SPに侵入した異物は、供給口22から供給されたクリーンなグリースで第2空間側に排出される。また、軸受部材20の一端部の近傍に供給されたグリースは、螺旋溝30によって軸受部材20の他端部に向かって円滑に流動するため、グリースが軸受部材20の一端部を介して第1空間に流出することが抑制される。