【文献】
LI JUN-WU ET AL.,Construction and expression ofbicistronic expression plasmid containing Hsp65 of Mycobacterium tuberculosis and hGM-CSF.,J. FOURTH MIL. MED. UNIV.,2007年,Vol.28 No.13,pages 1189-1192
【文献】
YOSHIDA, S. ET AL.,DNA vaccine using hemagglutinating virus of Japan-liposome encapsulating combination encoding mycobacterial heat shock protein 65 and interleukin-12 confers protection against Mycobacterium tuberculosis by T cell activation.,Vaccine,2006年,Vol.24 No.8,pages 1191-1204
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の発明を実施するための形態において、本明細書の一部を形成する添付の図面が参照される。図面において、類似の記号は、典型的には、文脈から別段の指示がない限り、類似の構成要素を特定する。発明を実施するための形態、図面、および特許請求の範囲において記載されている例示的な実施形態は、限定するためのものではない。本明細書において提示される対象の趣旨または範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用され得、また他の変化がなされ得る。
【0014】
核酸組成物
本開示は、抗原提示ポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチド、サイトカインをコードする第2のポリヌクレオチド、ならびに第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドの少なくとも1つに機能可能に連結している少なくとも1つのプロモーターを含有する組成物を有する組換え腫瘍ワクチンに関する。
【0015】
本明細書において用いられる用語「組換え」は、1つまたは複数の分子生物学的技術を用いて1つまたは複数の生体分子、例えばポリヌクレオチド分子またはポリペプチド分子を人工的に操作して、このような(1つまたは複数の)生体分子をその天然状態以外の何かにすることを言う。
【0016】
本明細書において用いられる用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、または混合リボ核酸−デオキシリボ核酸、例えばDNA−RNAハイブリッドを言う。ポリヌクレオチドまたは核酸は、一本鎖または二本鎖のDNAもしくはRNA、またはDNA−RNAハイブリッドであり得る。ポリヌクレオチドまたは核酸は、線状または環状であり得る。
【0017】
本明細書において用いられる用語「コードする」または「をコードする」は、mRNAに転写され得ることおよび/またはペプチドもしくはタンパク質に翻訳され得ることを言う。「コード配列」または「遺伝子」は、mRNA、ペプチド、またはタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を言う。これらの2つの用語は、本開示において区別せずに用いられる。
【0018】
本明細書において用いられる用語「mRNA」は、鋳型DNA配列に相補的であり、タンパク質合成のための鋳型として働き得るRNA分子を言う。
【0019】
本明細書において用いられる用語「抗原提示ポリペプチド」は、抗原に結合し得、抗原を抗原提示細胞に提示し得、かつ抗原提示細胞による抗原の認識を容易にし得るポリペプチドまたはタンパク質を言う。
【0020】
本明細書において用いられる用語「抗原提示細胞」は、主要組織適合複合体(MHC)をその表面上に有する抗原を提示して、提示された抗原をT細胞が認識できるようにし得る細胞を言う。提示された抗原は、T細胞などの免疫細胞によって認識され得、T細胞はその結果、抗原に対する免疫応答を生じさせる。ある実施形態において、抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、または上皮細胞である。例示的な実施形態において、抗原提示細胞は樹状細胞である。
【0021】
本明細書において用いられる用語「機能可能に連結している」は、コード配列の発現を可能にするように、コード配列が直接的にまたは間接的に1つまたは複数の調節配列に連結しているかまたはこれを伴っていることを言う。
【0022】
本明細書において用いられる用語「発現」は、mRNAへのコード配列の転写、および/またはペプチドもしくはタンパク質へのコード配列の翻訳を言う。
【0023】
本明細書において用いられる用語「転写」は、DNA配列がRNAポリメラーゼによって読み取られて、DNA配列に相補的なRNA鎖が生産される、RNA合成のプロセスを言う。
【0024】
本明細書において用いられる用語「翻訳」は、mRNA配列がリボソームによって読み取られて、mRNA配列に含有されるアミノ酸コドンに従ったアミノ酸鎖が生産される、ペプチド合成またはタンパク質合成のプロセスを言う。
【0025】
本明細書において用いられる用語「調節配列」は、コード配列の発現に必要なまたは有利な任意のヌクレオチド配列を言う。調節配列には、限定はしないが、1つまたは複数のプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化配列、および内部リボソーム侵入部位が含まれ得る。
【0026】
本明細書において用いられる用語「プロモーター」は、コード配列の転写を制御し得るポリヌクレオチド配列を言う。プロモーター配列は、RNAポリメラーゼの認識、結合、および転写開始に十分な特定の配列を含む。さらに、プロモーター配列は、このRNAポリメラーゼの認識、結合、および転写開始活性を調整する配列を含み得る。プロモーターは、それ自体と同一の核酸分子上に位置する遺伝子、またはそれ自体と異なる核酸分子上に位置する遺伝子の転写に影響し得る。プロモーター配列の機能は、調節の性質に応じて、構成的なものであり得るか、または刺激によって誘導されるものであり得る。「構成的」プロモーターは、宿主細胞における遺伝子発現を連続的に活性化させるように機能するプロモーターを言う。「誘導性」プロモーターは、特定の(1つまたは複数の)刺激の存在下で宿主細胞における遺伝子発現を活性化させるプロモーターを言う。
【0027】
本明細書において用いられる用語「エンハンサー」は、コード配列の転写および/または翻訳を増大させるヌクレオチド配列を言う。エンハンサーは、コード配列の5’末端または3’末端に機能可能に連結していてよい。真核細胞において機能的な任意のエンハンサーを、本開示において用いることができる。エンハンサーの具体例には、限定はしないが、シミアンウイルス40(SV40)初期遺伝子エンハンサー、ラウス肉腫ウイルスの長末端反復(LTR)に由来するエンハンサー、およびヒトサイトメガロウイルス(CMV)に由来するエンハンサーが含まれる。
【0028】
本明細書において用いられる用語「転写ターミネーター」は、真核細胞のRNAポリメラーゼによって認識されて転写を終結させるヌクレオチド配列を言う。ターミネーター配列は、コード配列の3’末端に機能可能に連結していてよい。ある実施形態において、ターミネーターは、RNA上のポリアデニル化部位が曝露され得るようにRNAを切断するためのシグナルを含み得る。真核細胞において機能的な任意のターミネーター配列を、本開示において用いることができる。ターミネーター配列の具体例には、限定はしないが、ウイルスに由来する終結配列、例えばSV40ターミネーター、および既知の遺伝子に由来する終結配列、例えばウシ成長ホルモンターミネーター配列が含まれる。
【0029】
本明細書において用いられる用語「ポリアデニル化配列」は、転写されると真核細胞によって、転写されたmRNAにポリアデノシン残基を付加するためのシグナルとして認識される、ヌクレオチド配列を言う。ポリアデニル化配列は、コード配列の3’末端に機能可能に連結していてよい。真核細胞において機能的な任意のポリアデニル化配列を、本開示において用いることができる。ポリアデニル化配列の具体例には、限定はしないが、AAUAAAおよびSV40ポリアデニル化シグナルが含まれる。
【0030】
本明細書において用いられる用語「内部リボソーム侵入部位」(IRES)は、mRNA配列の中央からの翻訳開始を可能にするヌクレオチド配列を言う。IRESは、1つのポリヌクレオチド分子上にある2つ以上のコード配列を分離して、2つ以上のコード産物の個別の翻訳を可能にするために用いることができる。IRESは、第1のコード配列の3’末端の後および第2のコード配列の5’末端の前の位置で、機能可能に連結され得る。真核細胞において機能的な任意のIRES配列を、本開示において用いることができる。IRESの具体例には、限定はしないが、ピコルナウイルスIRES、ペスチウイルスIRES、アフトウイルスIRES、A型肝炎IRES、およびC型肝炎IRESが含まれ得る。
【0031】
本開示は、抗原提示ポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドおよびサイトカインをコードする第2のポリヌクレオチドを含有する組成物を提供する。ある実施形態において、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは、異なる核酸分子上にある。ある実施形態において、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは、同一の核酸分子上にある。ある実施形態において、単一のプロモーターが、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドの発現を制御する。ある実施形態において、異なるプロモーターが、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドの発現を制御する。
【0032】
ある実施形態において、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは、第1および第2のポリヌクレオチドの発現を制御する1つのプロモーターに機能可能に連結しており、ここで、第1のポリヌクレオチドセグメントおよび第2のポリヌクレオチドセグメントは、IRES配列によって分離している。
【0033】
ある実施形態において、第1のポリヌクレオチドは、第1のポリヌクレオチドの発現を制御する第1のプロモーターに機能可能に連結しており、第2のポリヌクレオチドは、第2のポリヌクレオチドの発現を制御する第2のプロモーターに機能可能に連結している。第1のプロモーターおよび第2のプロモーターは、同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
ある実施形態において、本開示のプロモーターは、真核生物プロモーター、例えば、CMV由来のプロモーター(例えば、CMV前初期プロモーター(CMVプロモーター))、エプスタインバーウイルス(EBV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロモーター(例えば、HIVの長末端反復(LTR)プロモーター)、モロニーウイルスプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、SV40初期プロモーター、ヒト遺伝子由来のプロモーター、例えばヒトミオシンプロモーター、ヒトヘモグロビンプロモーター、ヒト筋肉クレアチンプロモーター、ヒトメタロチオネインベータアクチンプロモーター、ヒトユビキチンCプロモーター(UBC)、マウスホスホグリセリン酸キナーゼ1プロモーター(PGK)、ヒトチミジンキナーゼプロモーター(TK)、ヒト伸長因子1アルファプロモーター(EF1A)、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、E2F−1プロモーター(E2F1転写因子1のプロモーター)、アルファフェトプロテインのプロモーター、コレシストキニンのプロモーター、癌胎児性抗原のプロモーター、C−erbB2/neu癌遺伝子のプロモーター、シクロオキシゲナーゼのプロモーター、CXC−ケモカイン受容体4(CXCR4)のプロモーター、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)のプロモーター、ヘキソキナーゼII型のプロモーター、L−プラスチンのプロモーター、ムチン様糖タンパク質(MUC1)のプロモーター、前立腺特異的な抗原(PSA)のプロモーター、スルビビンのプロモーター、チロシナーゼ関連タンパク質(TRP1)のプロモーター、およびチロシナーゼのプロモーターである。
【0035】
ある実施形態において、本開示のプロモーターは、腫瘍特異的なプロモーターであり得る。本明細書において用いられる用語「腫瘍特異的なプロモーター」は、腫瘍細胞において遺伝子発現を優先的にまたは排他的に活性化するように機能し、非腫瘍細胞または非癌細胞において活性を有さないかまたは活性が低減しているプロモーターを言う。腫瘍特異的なプロモーターの具体例には、限定はしないが、E2F−1プロモーター、アルファフェトプロテインのプロモーター、コレシストキニンのプロモーター、癌胎児性抗原のプロモーター、C−erbB2/neu癌遺伝子のプロモーター、シクロオキシゲナーゼのプロモーター、CXCR4のプロモーター、HE4のプロモーター、ヘキソキナーゼII型のプロモーター、L−プラスチンのプロモーター、MUC1のプロモーター、PSAのプロモーター、スルビビンのプロモーター、TRP1のプロモーター、およびチロシナーゼのプロモーターが含まれる。ある実施形態において、本開示のプロモーターはE2F−1である。ある実施形態において、E2F−1プロモーターは、配列番号29のヌクレオチド配列を有する。
【0036】
上記の第1のプロモーターおよび/または第2のプロモーターは、構成的プロモーターであり得る。ある実施形態において、構成的プロモーターは、基本的な細胞機能に必要であるハウスキーピング遺伝子のプロモーターであり得る。具体例には、限定はしないが、ベータアクチンプロモーター、UBCプロモーター、PGKプロモーター、TKプロモーター、およびEF1Aプロモーターが含まれる。ある実施形態において、構成的プロモーターはウイルスプロモーターであり得る。具体例には、限定はしないが、CMVプロモーター、SV40プロモーター、およびCaMV35Sプロモーターが含まれる。
【0037】
ある実施形態において、本開示の組換え核酸組成物は、CMVプロモーターなどの構成的プロモーターによって制御される、抗原提示ポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドと、E2F−1プロモーターなどの腫瘍特異的なプロモーターによって制御される、サイトカインをコードする第2のポリヌクレオチドとを含有する。
【0038】
ある実施形態において、抗原提示ポリペプチドは熱ショックタンパク質である。熱ショックタンパク質は、細胞が高温または他のストレスに曝露されるとその発現が増大するタンパク質ファミリーである。熱ショックタンパク質は、適切な立体構造を作るためのタンパク質のフォールディングにおいて重要な役割を果たすことが知られている。さらに、熱ショックタンパク質は、タンパク質断片を免疫系に提示することが明らかにされている。
【0039】
任意の熱ショックタンパク質を、本開示の抗原提示ポリペプチドとして用いることができる。熱ショックタンパク質の具体例には、限定はしないが、Hsp10、Hsp20、Hsp27、Hsp40、Hsp60、Hsp70、Hsp71、Hsp72、Hsp90、Hsp104、Hsp110、アルファ−B−クリスタリン、およびグルコース調節型のタンパク質が含まれる。
【0040】
ある実施形態において、抗原提示ポリペプチドはHsp70である。Hsp70タンパク質には、限定はしないが、Hsp70−1、Hsp70−2、Hsp70−4、Hsp70−5、Hsp70−6、Hsp70−7、Hsp70−8、Hsp70−9、Hsp70−12、およびHsp70−14が含まれる。ある実施形態において、抗原提示ポリペプチドはHsp70−1である。Hsp70−1タンパク質には、限定はしないが、Hsp70−1AおよびHsp70−1Bが含まれる。
【0041】
ある実施形態において、抗原提示ポリペプチドはHsp90である。Hsp90タンパク質には、限定はしないが、Hsp90−α
1、Hsp90−α
2、Hsp90−β、エンドプラスミン、およびTNF受容体関連タンパク質1が含まれる。
【0042】
ある実施形態において、抗原提示ポリペプチドはグルコース調節型タンパク質である。グルコース調節型タンパク質には、限定はしないが、グルコース調節型タンパク質75(Grp75、Hsp70−9としても知られている)、Grp78(Hsp70−5としても知られている)、Grp94(エンドプラスミンとしても知られている)、およびGrp170が含まれる。
【0043】
熱ショックタンパク質の具体例およびそれらのGenBank受託番号を表1に列挙する。
【0045】
ある実施形態において、本開示の抗原提示ポリペプチドは、抗原を抗原提示細胞に提示する機能を保持している、完全長熱ショックタンパク質の断片である。ある実施形態において、本開示の抗原提示ポリペプチドは、天然抗原提示ポリペプチドの機能的同等物である。機能的同等物は、天然抗原提示ポリペプチドに対して構造的に相同であり、抗原を抗原提示細胞に提示するように機能し得る。天然抗原提示ポリペプチドの機能的同等物は、天然抗原提示ポリペプチド配列に対する1つまたは複数の保存的なもしくは非保存的なアミノ酸の置換、付加、欠失、修飾、または他の変更を有し得る。
【0046】
ある実施形態において、本開示の抗原提示ポリペプチドは、1つまたは複数の熱ショックタンパク質とペプチド配列同一性を共有する。本明細書において用いられる用語「ペプチド配列同一性」は、候補配列と鋳型配列との間の同一アミノ酸残基を最大にするために配列をアラインし、必要であればギャップを導入した後に、かついかなる保存的な置換も配列同一性の一部として考慮せずに、鋳型配列におけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基を言う。
【0047】
2つのアミノ酸配列の同一性は、2つのアミノ酸配列をアラインすることによって決定することができる。BLAST、BLAST−2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公開されているコンピュータソフトウェアを、アラインメントにおいて用いることができる。当業者であれば、比較される配列の完全長にわたる最大アラインメントの達成に必要な任意のアルゴリズムを含めた、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0048】
ある実施形態において、抗原提示ポリペプチドは、Hsp10、Hsp20、Hsp27、Hsp40、Hsp60、Hsp70、Hsp71、Hsp72、Hsp90、Hsp104、Hsp110、アルファ−B−クリスタリン、およびグルコース調節型タンパク質の1つと、少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%のペプチド配列同一性を有する。
【0049】
ある実施形態において、抗原提示ポリペプチドは、Hsp70と、少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%のペプチド配列同一性を有する。
【0050】
ある実施形態において、抗原提示ポリペプチドは、1つまたは複数の熱ショックタンパク質に由来する1つまたは複数の機能的ドメインを含有する。本明細書において用いられる用語「機能的ドメイン」は、抗原を抗原提示細胞に提示する機能を有する、熱ショックタンパク質の一部を言い、この機能は、残りのタンパク質配列および構造と無関係である。ある実施形態において、抗原提示ポリペプチドは、Hsp10、Hsp27、Hsp40、Hsp60、Hsp70、Hsp71、Hsp72、Hsp90、Hsp104、アルファ−B−クリスタリン、およびグルコース調節型タンパク質からなる群から選択される1つまたは複数の熱ショックタンパク質に由来する1つまたは複数の機能的ドメインを含有する。
【0051】
ある実施形態において、核酸組成物は、1つまたは複数の熱ショックタンパク質をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含有する。ある実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、1つ、2つ、3つ、または4つの熱ショックタンパク質をコードし得る。ある実施形態において、本開示の組成物は、1つ、2つ、3つ、または4つのポリヌクレオチドを含有し、そのそれぞれは1つの熱ショックタンパク質をコードする。ある実施形態において、組成物は、2つ以上の熱ショックタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する。
【0052】
本明細書において用いられる用語「サイトカイン」は、細胞によって分泌され、かつ免疫細胞の機能の刺激、免疫細胞の成長の促進、または必要な局部への免疫細胞の方向付けなどの免疫調節効果を有する、タンパク質またはポリペプチドを言う。
【0053】
任意の適切なサイトカインを本開示に用いることができる。サイトカインの具体例には、限定はしないが、コロニー刺激因子、例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、幹細胞因子、およびエリスロポエチン;インターフェロン(IFN)、例えば、IFNα、IFNβ、IFNγ、およびIFNω;インターロイキン、例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、IL−26、IL−27、IL−28、IL−29、IL−30、IL−31、IL−32、IL−33、およびIL−35;腫瘍壊死因子(TNF)、例えばTNFαおよびTNFβ;ケモカイン、例えば、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCL10、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、XCL1、XCL2、およびCX3L1が含まれる。
【0054】
ある実施形態において、本開示のサイトカインは、抗原提示細胞の機能および/または蓄積を刺激し得る。ある実施形態において、サイトカインには、M−CSF、G−CSF、GM−CSF、幹細胞因子、およびエリスロポエチンが含まれる。ある実施形態において、本開示のサイトカインはGM−CSFである。GM−CSFの具体例およびそれらのGenBank受託番号を表2に列挙する。
【0056】
ある実施形態において、本開示のサイトカインは、サイトカインの免疫調節効果の機能を保持している、サイトカインの断片である。
【0057】
ある実施形態において、本開示のサイトカインは、1つまたは複数のサイトカインとペプチド配列同一性を共有する。ある実施形態において、第2のポリヌクレオチドによってコードされるサイトカインは、M−CSF、G−CSF、GM−CSF、幹細胞因子、およびエリスロポエチンの1つまたは複数と、少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%のペプチド配列同一性を有する。
【0058】
ある実施形態において、第2のポリヌクレオチドによってコードされるサイトカインは、GM−CSFと、少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%のペプチド配列同一性を有する。
【0059】
ある実施形態において、サイトカインは、1つまたは複数のサイトカインに由来する1つまたは複数の機能的ドメインを含有する。ある実施形態において、抗原提示ポリペプチドは、M−CSF、G−CSF、GM−CSF、幹細胞因子、およびエリスロポエチンからなる群から選択される1つまたは複数のサイトカインに由来する1つまたは複数の機能的ドメインを含有する。
【0060】
ある実施形態において、核酸組成物は、1つまたは複数のサイトカインをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含有する。ある実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、1つ、2つ、3つ、または4つのサイトカインをコードし得る。ある実施形態において、本開示の組成物は、1つ、2つ、3つ、または4つのポリヌクレオチドを含有し、そのそれぞれは1つのサイトカインをコードする。ある実施形態において、組成物は、2つ以上のサイトカインをコードするポリヌクレオチドを含有する。
【0061】
ある実施形態において、組成物は、細胞毒性遺伝子をコードする第3のポリヌクレオチドをさらに含有する。本明細書において用いられる用語「細胞毒性遺伝子」は、細胞死を含めた細胞傷害性を誘発または増強するように機能し得る遺伝子を言う。ある実施形態において、細胞毒性遺伝子は、マクロファージなどの他の細胞による溶解に対する細胞の感受性を向上させ得る。細胞毒性遺伝子の具体例には、限定はしないが、チミジンキナーゼ遺伝子およびシトシンデアミナーゼ遺伝子が含まれる。
【0062】
第3のポリヌクレオチドは、プロモーターに機能可能に連結していてよい。ある実施形態において、第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド、および第3のポリヌクレオチドの発現は、同一のプロモーターによって制御される。ある実施形態において、第1、第2、および第3のポリヌクレオチドの2つの発現は、同一のプロモーターによって制御される。ある実施形態において、1つまたは複数のIRES配列を用いて、同一のポリヌクレオチド分子上のコード配列を分離して、コード産物が個別に翻訳され、ポリヌクレオチド分子から個別に発現するようにすることができる。
【0063】
ある実施形態において、異なるプロモーターが、第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド、および第3のポリヌクレオチドの発現を制御する。ある実施形態において、第1のポリヌクレオチドは第1のプロモーターに機能可能に連結しており、第2のポリヌクレオチドは第2のプロモーターに機能可能に連結しており、第3のポリヌクレオチドは第3のプロモーターに機能可能に連結している。ある実施形態において、第1、第2、および/または第3のプロモーターは、真核生物プロモーターである。ある実施形態において、第1、第2、および/または第3のプロモーターは、構成的プロモーターである。ある実施形態において、第1、第2、および/または第3のプロモーターは、腫瘍特異的なプロモーターである。ある実施形態において、第1、第2、および第3のプロモーターの少なくとも1つは、腫瘍特異的なプロモーターである。ある実施形態において、第1、第2、および第3のプロモーターの少なくとも2つは、腫瘍特異的なプロモーターである。ある実施形態において、第1、第2、および第3のプロモーターの全ては、腫瘍特異的なプロモーターである。
【0064】
本開示の核酸配列は、公開されているか、または当業者が容易に入手することができる。本開示のポリヌクレオチドまたは核酸は、当技術分野における周知の組換え技術を通して作製することができる(例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory、N.Y.(1989)を参照されたい)。
【0065】
発現ベクター
上記のポリヌクレオチドは、1つまたは複数の発現ベクター内に挿入することができる。本開示は、抗原提示ポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドセグメント、サイトカインをコードする第2のポリヌクレオチドセグメント、および少なくとも1つのプロモーターを含有する発現ベクターであって、少なくとも1つのプロモーターが第1のポリヌクレオチドセグメントおよび第2のポリヌクレオチドセグメントの少なくとも1つに機能可能に連結している発現ベクターを提供する。
【0066】
本明細書において用いられる用語「発現ベクター」は、細胞を形質転換またはトランスフェクトし得、かつ細胞における遺伝子発現を可能にし得る、ポリヌクレオチド媒体を言う。本明細書において用いられる用語「セグメント」は、核酸配列の一部または断片を言う。
【0067】
本開示の発現ベクターは、ウイルスベクター、プラスミド、ファージ、またはコスミドであり得る。ある実施形態において、本開示の発現ベクターは、ウイルス、プラスミド、ファージ、もしくはコスミドに由来する1つまたは複数の遺伝子配列、またはその断片をさらに含み得る。
【0068】
ある実施形態において、本開示の発現ベクターはウイルスベクターである。ウイルスベクターは、ウイルスゲノムの全体または一部を含有し得る。ある実施形態において、ウイルスベクターは、2つ以上のウイルスのウイルスゲノムの全体または一部を含有する。
【0069】
ある実施形態において、ウイルスベクターは、アデノウイルスに由来する。アデノウイルスは、宿主ゲノム内に組み込まれ得ない二本鎖の線状DNAゲノムを有する。アデノウイルスベクターの具体例には、限定はしないが、第1世代アデノベクター(例えば、E1a遺伝子およびE1b遺伝子が欠失しているアデノベクター、ならびにE1遺伝子およびE3遺伝子が欠失しているアデノベクター)、第二世代アデノウイルスベクター(例えば、E1遺伝子およびE2遺伝子が欠失しているアデノベクター、E1遺伝子およびE4遺伝子が欠失しているアデノベクター)、および全てのウイルスコード配列が欠失しているガットレス(gutless)アデノウイルスベクター(ヘルパー依存性アデノウイルスベクターとも呼ばれる)が含まれる。
【0070】
ある実施形態において、ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)に由来する。アデノ随伴ウイルスは、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染し得、そのゲノムを宿主細胞のゲノムに組み込むことができる。アデノ随伴ウイルスベクターの具体例には、限定はしないが、AAV血清型1、AAV血清型2、AAV血清型3、AAV血清型4、AAV血清型5、AAV血清型6、AAV血清型7、AAV血清型8、AAV血清型9、AAV血清型10、AAV血清型11、およびAAV血清型12に由来するベクターが含まれる。
【0071】
ある実施形態において、ウイルスベクターはレトロウイルスに由来する。レトロウイルスは、RNAゲノムを有し、逆転写酵素を介して宿主細胞内で複製して、RNAゲノムからDNAを生産することができる。レトロウイルスベクターの具体例には、限定はしないが、鳥白血病ウイルス、マウス乳腺腫瘍ウイルス、マウス白血病ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ウォールアイ皮膚肉腫ウイルス、HIV−1(ヒト免疫不全ウイルス)、HIV−2、SIV(サル免疫不全ウイルス)、EIAV(ウマ感染性貧血ウイルス)、FIV(ネコ免疫不全ウイルス)、CAEV(ヤギ関節炎脳炎ウイルス)、VMV(ビスナ/マエディウイルス)、ヒトスプマウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス、およびサル泡沫状ウイルスに由来するベクターが含まれる。
【0072】
ある実施形態において、ウイルスベクターはレンチウイルスに由来する。レンチウイルスベクターの具体例には、限定はしないが、HIV−1、SIV、FIV、CAEV、VMV、およびEIAVに由来するベクターが含まれる。
【0073】
ある実施形態において、ウイルスベクターはアルファウイルスに由来する。アルファウイルスベクターの具体例には、限定はしないが、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、シンドビスウイルス、セムリキ森林熱ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、オニョンニョンウイルス、チクングニヤウイルス、マヤロウイルス、ロスリバーウイルス、およびバーマフォレストウイルスに由来するベクターが含まれる。
【0074】
ある実施形態において、ベクターはポックスウイルスに由来する。ポックスウイルスベクターの具体例には、限定はしないが、ワクシニアウイルス、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、鳥ポックスウイルス、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、天然痘、オルフウイルス、偽牛痘、ウシ血疹性口内炎ウイルス、タナ痘ウイルス、ヤバサル腫瘍ウイルス、および伝染性軟属腫ウイルスに由来するベクターが含まれる。
【0075】
ある実施形態において、ベクターはヘルペスウイルスに由来する。ヘルペスウイルスベクターの具体例には、限定はしないが、単純ヘルペスウイルス−1(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス−2、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタインバーウイルス(EBV)、リンホクリプトウイルス、CMV、ヘルペスリンパ向性ウイルス、ロゼオロウイルス、およびカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)に由来するベクターが含まれる。
【0076】
ある実施形態において、ベクターはポリオウイルスに由来する。ポリオウイルスベクターの具体例には、限定はしないが、ポリオウイルス血清型1(PV1)、PV2、およびPV3に由来するベクターが含まれる。
【0077】
ある実施形態において、発現ベクターはバキュロウイルスに由来する。バキュロウイルスベクターの具体例には、限定はしないが、autographa californicaのマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV)、orgyia pseudotsugataのマルチカプシド多角体病ウイルス(OpMNPV)、lymantria disparのマルチカプシド核多角体病ウイルス(LdMNPV)、bombyx moriの核多角体病ウイルス(BmNPV)、choristoneura fumiferanaの核多角体病ウイルス(CfMNPV)、cryptophlebia leucotretaの顆粒病ウイルス(ClGV)、heliothis zeaの核多角体病ウイルス(HzSNPV)、およびcydia pomonellaの顆粒病ウイルス(CpGV)に由来する発現ベクターが含まれる。
【0078】
ある実施形態において、発現ベクターはパピローマウイルスに由来する。パピローマウイルスベクターの具体例には、限定はしないが、ウシパピローマウイルス4型、ウシパピローマウイルス2型、ヒトパピローマウイルス11型、ヒトパピローマウイルス5b型、ヒトパピローマウイルス6b型、ウシパピローマウイルス1型、ワタオウサギパピローマウイルス(CRPV)、シカパピローマウイルス(DPV)、ヒトパピローマウイルス13型、およびヒトパピローマウイルス16型に由来するベクターが含まれる。
【0079】
ある実施形態において、発現ベクターはポリオーマウイルスに由来する。ポリオーマウイルスベクターの具体例には、限定はしないが、セキセイインコ雛病ウイルス(BFPyV)、シミアンウイルス40(SV40)、BKポリオーマウイルス(BKPyV)、ウシポリオーマウイルス(BPyV)、ハムスターポリオーマウイルス(HaPyV)、JCポリオーマウイルス(JCPyV)(JCV)、マウスポリオーマウイルス(MPyV)、およびBリンパ球向性ポリオーマウイルス(LPV)に基づくベクターが含まれる。
【0080】
ある実施形態において、発現ベクターはパルボウイルスに由来する。パルボウイルスベクターの具体例には、限定はしないが、イヌパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPV)、ハムスターパルボウイルスH1、ミンク腸炎ウイルス(MEV)、マウス微小ウイルス(MVM)、パルボウイルスLuIII、およびブタパルボウイルス(PPV)に由来する発現ベクターが含まれる。
【0081】
ある実施形態において、ウイルスベクターは麻疹ウイルスに由来する。ある実施形態において、ウイルスベクターは水胞性口内炎ウイルス(VSV)に由来する。ある実施形態において、ウイルスベクターは呼吸器および腸管オーファンウイルス(REOウイルス)に由来する。ある実施形態において、ウイルスベクターはニューカッスル病ウイルスに由来する。ある実施形態において、ウイルスベクターはセンダイウイルス(SeV)に由来する。
【0082】
ある実施形態において、ウイルスベクターは、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、HSV、VSV、麻疹ウイルス、REOウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびSeVからなる群から選択される1つまたは複数のウイルスに由来するベクターである。
【0083】
ある実施形態において、ウイルスベクターは細胞溶解し得る。細胞溶解性のウイルスベクターは、宿主細胞において複製し、宿主細胞の溶解によって細胞から放出されるウイルス粒子に集合することが可能である。細胞溶解性のウイルスベクターの具体例には、限定はしないが、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、HSV、VSV、麻疹ウイルス、REOウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびSeVに由来するベクターが含まれる。
【0084】
ある実施形態において、ウイルスベクターは、腫瘍細胞が感染した際のウイルス遺伝子の発現のための腫瘍特異的なプロモーターを含有する。
【0085】
ある実施形態において、発現ベクターはプラスミドである。プラスミドベクターの具体例には、限定はしないが、pBR322、pTZ19R、pUC18、pUC19、pUC57、pCMV−Script系、およびpcDNA3が含まれる。
【0086】
ある実施形態において、発現ベクターはファージベクターである。ファージの具体例には、限定はしないが、T4ファージ、ラムダファージ、T7ファージ、p1ファージ、pBlueScript IIファージミド、およびpBCファージミドが含まれる。
【0087】
ある実施形態において、発現ベクターはコスミドベクターである。コスミドベクターの具体例には、限定はしないが、SuperCos1ベクター、pJC81、およびpHS262が含まれる。
【0088】
本開示の発現ベクターは、宿主細胞のゲノム内に組み込まれない一過性発現ベクター、または宿主細胞内への導入の後に宿主細胞のゲノム内にその遺伝子を組み込み得る安定な発現ベクターであり得る。
【0089】
ある実施形態において、発現ベクターは一過性発現ベクターである。宿主細胞が分裂するにつれ、一過性発現ベクターは宿主細胞において希薄となり、したがって、外因性遺伝子を限られた時間のみ発現させる。一過性発現ベクターの具体例には、限定はしないが、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、非組み込みプラスミド、またはファージが含まれる。
【0090】
ある実施形態において、発現ベクターは安定な発現ベクターである。安定な発現ベクターは、任意のランダムな部位または特定の指定された部位で宿主ゲノム内に組み込まれ得る。組み込まれた遺伝子は、宿主ゲノムに沿って複製し得、したがって、宿主細胞における遺伝子の安定な発現を可能にする。安定な発現ベクターの具体例には、限定はしないが、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、および組み込みプラスミドに由来するベクターが含まれる。
【0091】
本開示の発現ベクターは、複製可能ベクターまたは複製欠損ベクターであり得る。ある実施形態において、発現ベクターは複製可能ベクターである。本明細書において用いられる用語「複製可能ベクター」は、自己複製に必要な(1つまたは複数の)配列を含有し、宿主細胞において自ら(宿主ゲノム内に組み込まれることなく)複製し得るベクターを言う。ある実施形態において、複製可能ベクターは、腫瘍細胞などの特定の特異的宿主細胞において選択的にまたは条件付きで複製し得る。
【0092】
ある実施形態において、複製可能ベクターはウイルスベクターであり得る。複製可能ウイルスベクターの具体例には、限定はしないが、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、HSV、VSV、麻疹ウイルス、REOウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびSeVに由来するベクターが含まれる。ある実施形態において、複製可能ウイルスベクターは、ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子を含有する。例えば、複製可能アデノウイルスベクターは、アデノウイルスのE1a遺伝子を含有する。ある実施形態において、E1a遺伝子は、腫瘍特異的なプロモーターに機能可能に連結している。ある実施形態において、アデノウイルスのE1a遺伝子は、配列番号30のヌクレオチド配列を有する。
【0093】
ある実施形態において、発現ベクターは複製欠損ベクターであり得る。本明細書において用いられる用語「複製欠損ベクター」は、宿主細胞において自ら複製し得ないベクターを言う。ある実施形態において、複製欠損ベクターはウイルスベクターであり得る。複製欠損ウイルスベクターの具体例には、限定はしないが、E1a遺伝子機能を欠いているかまたはそれが欠損しているアデノウイルスベクターが含まれる。
【0094】
ある実施形態において、本開示の発現ベクターは、抗原提示ペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドセグメントを含有し、抗原提示ペプチドは熱ショックタンパク質である。ある実施形態において、発現ベクターは、サイトカインをコードする第2のポリヌクレオチドセグメントをさらに含有し、サイトカインはGM−CSFである。ある実施形態において、発現ベクターは、第1および/または第2のポリヌクレオチドセグメントに機能可能に連結している1つまたは複数のプロモーターを含有する。
【0095】
ある実施形態において、発現ベクターの第1および/または第2のポリヌクレオチドセグメントに機能可能に連結しているプロモーターは、真核生物プロモーターである。ある実施形態において、プロモーターは、構成的プロモーター、例えば、ベータアクチンプロモーター、UBCプロモーター、PGKプロモーター、TKプロモーター、EF1Aプロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、およびCaMV35Sプロモーターである。ある実施形態において、プロモーターは、腫瘍特異的なプロモーター、例えば、E2F−1プロモーター、アルファフェトプロテインのプロモーター、コレシストキニンのプロモーター、癌胎児性抗原のプロモーター、C−erbB2/neu癌遺伝子のプロモーター、シクロオキシゲナーゼのプロモーター、CXCR4のプロモーター、HE4のプロモーター、ヘキソキナーゼII型のプロモーター、L−プラスチンのプロモーター、MUC1のプロモーター、PSAのプロモーター、スルビビンのプロモーター、TRP1のプロモーター、およびチロシナーゼのプロモーターである。
【0096】
ある実施形態において、第1のポリヌクレオチドセグメントおよび第2のポリヌクレオチドセグメントの発現は、同一のプロモーターによって制御される。ある実施形態において、第1のポリヌクレオチドセグメントおよび第2のポリヌクレオチドセグメントは、1つのプロモーターに機能可能に連結しており、ここで、第1のポリヌクレオチドセグメントおよび第2のポリヌクレオチドセグメントは、IRES配列によって分離している。
【0097】
ある実施形態において、第1のポリヌクレオチドセグメントおよび第2のポリヌクレオチドセグメントの発現は、異なるプロモーターによって制御される。ある実施形態において、第1のポリヌクレオチドセグメントは第1のプロモーターに機能可能に連結しており、第2のポリヌクレオチドセグメントは第2のプロモーターに機能可能に連結している。ある実施形態において、第1のプロモーターは構成的プロモーターであり、第2のプロモーターは腫瘍特異的なプロモーターである。ある実施形態において、第1のプロモーターは腫瘍特異的なプロモーターであり、第2のプロモーターは構成的プロモーターである。ある実施形態において、第1および第2のプロモーターは、両方とも腫瘍特異的なプロモーターである。
【0098】
ある実施形態において、発現ベクターは、細胞毒性遺伝子をコードする第3のポリヌクレオチドセグメントをさらに含有する。第3のポリヌクレオチドセグメントは、プロモーターに機能可能に連結していてよい。ある実施形態において、第1のポリヌクレオチドセグメント、第2のポリヌクレオチドセグメント、および第3のポリヌクレオチドセグメントの発現は、同一のプロモーターによって制御される。ある実施形態において、第1、第2、および第3のポリヌクレオチドセグメントの少なくとも2つの発現は、同一のプロモーターによって制御される。ある実施形態において、第1のポリヌクレオチドセグメントおよび第3のポリヌクレオチドセグメントの発現は、同一のプロモーターによって制御される。ある実施形態において、第2のポリヌクレオチドセグメントおよび第3のポリヌクレオチドセグメントの発現は、同一のプロモーターによって制御される。ある実施形態において、1つまたは複数のIRES配列を用いて、同一のポリヌクレオチド分子上のコード配列を分離して、コード産物が個別に翻訳され、ポリヌクレオチド分子から個別に発現するようにすることができる。
【0099】
ある実施形態において、第1のポリヌクレオチドセグメント、第2のポリヌクレオチドセグメント、および第3のポリヌクレオチドセグメントの発現は、異なるプロモーターによって制御される。ある実施形態において、第1のポリヌクレオチドセグメントは第1のプロモーターに機能可能に連結しており、第2のポリヌクレオチドセグメントは第2のプロモーターに機能可能に連結しており、第3のポリヌクレオチドセグメントは第3のプロモーターに機能可能に連結している。ある実施形態において、第1、第2、および/または第3のプロモーターは、真核生物プロモーターである。ある実施形態において、第1、第2、および/または第3のプロモーターは、構成的プロモーターである。ある実施形態において、第1、第2、および/または第3のプロモーターは、腫瘍特異的なプロモーターである。
【0100】
発現ベクターは、任意の適切な組換え技術、例えば、限定はしないが、制限酵素および核酸ライゲーションの使用を伴う分子クローニング技術、ならびに2つの類似した核酸鎖の間でのヌクレオチド配列の交換を伴う相同組換え技術を用いて生産することができる(概説は、Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001;C.K.Raymondら、Biotechniques、26(1):134〜141(1999)を参照されたい)。例えば、市販されているベクターを、制限酵素を用いて線状化し、次に標的配列(例えば、第1のポリヌクレオチドおよび/または第2のポリヌクレオチドおよび/または腫瘍特異的なプロモーター)とライゲーションすることができる。標的配列は、標的配列に相補的なプライマーと、このような標的配列を含有する細胞から単離および精製された標的配列を含有する鋳型とを用いる、PCR反応を介して得ることができる。標的配列はまた、対応する制限部位を生じさせる制限酵素を用いる、容易に入手可能なベクターからの消化によって得ることができる。ライゲーションの後、得られたベクターを適切な宿主細胞内に形質転換することができ、ライゲーションされたベクターを含有する宿主細胞が、選択マーカー(例えば抗生物質)を含有する選択培地において選択される。選択された宿主細胞を増殖させ、ベクターを、エタノール沈殿またはゲル抽出などの周知の方法を用いて宿主細胞から単離および精製することができる。得られたベクターは、その後、類似の方法を用いて別の目的の配列と共に挿入することができるか、または将来的に用いるための別の標的配列を生じさせるために制限酵素で消化することができるか、または類似の配列を有する別のベクターとの相同組換えにおいて用いることができる。
【0101】
本発明の発現ベクターは、コードされた配列を発現させるための宿主細胞のトランスフェクションに用いることができる。別の態様において、本開示は、本明細書において提供される発現ベクターを含有する宿主細胞を提供する。発現ベクターがそれにトランスフェクトされ得、その中で複製し得る、任意の適切な細胞を、宿主細胞として用いることができる。宿主細胞の具体例には、限定はしないが、酵母細胞および哺乳動物細胞が含まれる。宿主細胞はまた、以下に記載されるような本開示の治療方法を用いる治療が必要な対象から採取された細胞であり得る。発現ベクターは、当技術分野において知られている任意の適切な方法を用いて宿主細胞内に導入することができ、この方法には、限定はしないが、エレクトロポレーション、塩化カルシウム介在性の、塩化リチウム介在性の、酢酸リチウム/ポリエチレングリコール介在性の、リン酸カルシウム介在性の、DEAE−デキストラン介在性の、リポソーム介在性のポリヌクレオチド取り込み、スフェロプラスト化、注射、マイクロインジェクション、微粒子銃、ファージ感染、ウイルス感染、または他の確立された方法が含まれる。あるいは、目的の遺伝子配列を含有する発現ベクターは、インビトロで転写され得、得られたmRNAは、周知の方法によって、例えば注射(Kuboら、FEBS Letts.241:119、(1988)を参照されたい)によって、一過性発現のために宿主細胞内に導入することができる。例えば、発現ベクターは、塩化カルシウム溶液と混合し、その後、HEPES緩衝生理食塩水と組み合わせることができ、細胞培養物に導入すると発現ベクターに結合するリン酸カルシウムの細かい沈殿物が形成され、発現ベクターは、沈殿物と共に細胞によって取り込まれる。別の実施例では、発現ベクターをリポソーム体にカプセル化し、細胞に導入することができ、リポソームが細胞膜と融合すると、それらはカプセル化された発現ベクターを細胞内に放出する。さらに別の実施例では、発現ベクターは、細胞膜に微小な穴を生じさせる放電下で細胞内に送達され得る。さらに別の実施例では、発現ベクターは、不活性固体のナノ粒子(例えば金粒子)に結合し得、次に、遺伝子銃などの特殊な装置を用いて、標的細胞の核内に直接発射される。さらに別の実施例では、発現ベクター自体が、細胞に感染しポリヌクレオチド材料を細胞内に放出し得るウイルスであり得る。
【0102】
本明細書において提供される発現ベクターを含有する宿主細胞は、任意の適切な形態で提供され得る。例示的な実施形態において、宿主細胞は細胞培養物から単離され、この細胞培養物は、培養培地、細胞残屑、および/または他の望ましくない物質を除去するために、濾過または遠心分離またはそれ以外の処理をされ得る。宿主細胞は、その中の発現ベクターの濃度を増大させるために、当業者によって適切であるとみなされるさらなる精製プロセスを受け得る。組成物は、液体形態または乾燥固体形態で調製することができる。
【0103】
医薬組成物
本開示において記載されている核酸組成物、発現ベクター、および宿主細胞は、腫瘍および/または癌を予防および/または治療するための腫瘍ワクチンとして用いることができる。別の態様において、本開示は、薬学的に許容可能な担体と、本明細書において提供される核酸組成物、発現ベクター、および/または宿主細胞とを含む医薬組成物を提供する。核酸、発現ベクター、および宿主細胞は、当技術分野において周知の方法を用いて、構築、単離、および精製することができる。本明細書において用いられる用語「薬学的に許容可能な担体」は、本開示の核酸、発現ベクター、および/または宿主細胞の保管および対象への投与を容易にし得る、任意のおよび全ての溶媒、分散媒質、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを言う。薬学的に許容可能な担体には、任意の適切な構成要素、例えば、限定はしないが、生理食塩水、リポソーム、ポリマー性賦形剤、コロイド、または担体粒子が含まれ得る。
【0104】
ある実施形態において、薬学的に許容可能な担体は、本開示の核酸、発現ベクター、および/または宿主細胞を溶解または分散させ得る生理食塩水である。生理食塩水の具体例には、限定はしないが、緩衝生理食塩水、正常生理食塩水、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、重炭酸塩緩衝液、ショ糖溶液、塩溶液、およびポリソルベート溶液が含まれる。
【0105】
ある実施形態において、薬学的に許容可能な担体はリポソームである。リポソームは、脂溶性材料および内側の水性部分から形成される膜を有する、単一ラメラ小胞または複数ラメラ小胞である。本開示の核酸、発現ベクター、および/または宿主細胞は、リポソームの水性部分内でカプセル化され得る。リポソームの具体例には、限定はしないが、3[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chlo)に基づくリポソーム、N−(2,3−ジオレオイロキシ)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)に基づくリポソーム、および1,2−ジオレオイロキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)に基づくリポソームが含まれる。リポソームの調製方法およびリポソーム内への発現ベクターのカプセル化の方法は、当技術分野において周知である(例えば、D.D.Lasicら、Liposomes in gene delivery、CRC Press発行、1997を参照されたい)。
【0106】
ある実施形態において、薬学的に許容可能な担体は、ポリマー性の賦形剤、例えば、限定はしないが、ミクロスフェア、マイクロカプセル、ポリマー性ミセル、およびデンドリマーである。本開示の核酸、発現ベクター、および/または宿主細胞は、当技術分野において知られている方法によって、ポリマーベースの構成要素上にカプセル化、接着、または被覆させることができる(例えば、W.Heiser、Nonviral gene transfer techniques、Humana Press発行、2004;米国特許第6025337号;Advanced Drug Delivery Reviews、57(15):2177〜2202(2005)を参照されたい)。
【0107】
ある実施形態において、薬学的に許容可能な担体は、コロイド粒子または担体粒子、例えば、金コロイド、金ナノ粒子、シリカナノ粒子、およびマルチセグメントナノロッドである。核酸、発現ベクター、または細胞は、当技術分野において知られている任意の適切な様式で、担体上に被覆することができるか、担体に接着させることができるか、または担体を伴わせることができる(例えば、M.Sullivanら、Gene Therapy、10:1882〜1890(2003)、C.Mclntoshら、J.Am.Chem.Soc.、123(31):7626〜7629(2001)、D.Luoら、Nature Biotechnology、18:893〜895(2000)、およびA.Salemら、Nature Materials、2:668〜671(2003)を参照されたい)。
【0108】
ある実施形態において、医薬組成物は、添加剤、例えば、限定はしないが、安定剤、防腐剤、および細胞による薬剤の取り込みを助けるトランスフェクション促進剤をさらに含み得る。適切な安定剤には、限定はしないが、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、EDTA、およびアルブミンが含まれ得る。適切な防腐剤には、限定はしないが、2−フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、ヒドロキシ安息香酸メチル、フェノール、チメロサール、および抗生物質が含まれ得る。適切なトランスフェクション促進剤には、限定はしないが、カルシウムイオンが含まれ得る。
【0109】
ある実施形態において、医薬組成物は、1つまたは複数の抗腫瘍剤をさらに含む。腫瘍または癌に対して活性であることが知られている任意の作用物質を、組成物において用いることができる。ある実施形態において、抗腫瘍剤は、化学的作用物質、ポリヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0110】
ある実施形態において、抗腫瘍剤は化学的作用物質である。抗腫瘍化学的作用物質の具体例には、限定はしないが、マイトマイシンC、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エトポシド、タモキシフェン、パクリタキセル、ビンクリスチン、およびラパマイシンが含まれる。
【0111】
ある実施形態において、抗腫瘍剤はポリヌクレオチドである。抗腫瘍ポリヌクレオチドの具体例には、限定はしないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、例えばbcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチド、クラステリンアンチセンスオリゴヌクレオチド、およびc−mycアンチセンスオリゴヌクレオチド;ならびにRNA干渉し得るRNA(低分子干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、およびマイクロ干渉RNA(miRNA)を含める)、例えば、抗VEGFのsiRNA、shRNA、またはmiRNA、抗bcl−2のsiRNA、shRNA、またはmiRNA、および抗クローディン−3のsiRNA、shRNA、またはmiRNAが含まれる。
【0112】
ある実施形態において、抗腫瘍剤はペプチドまたはタンパク質である。抗腫瘍ペプチドまたはタンパク質の具体例には、限定はしないが、抗体、例えば、トラスツズマブ、リツキシマブ、エドレコロマブ、アレムツズマブ、ダクリズマブ、ニモツズマブ、ゲムツズマブ、イブリツモマブ、およびエドレコロマブ、タンパク質治療薬、例えば、エンドスタチン、アンジオスタチンK1−3、ロイプロリド、性ホルモン結合グロブリン、およびビクニンが含まれる。
【0113】
別の態様において、本開示は、抗原提示ポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチド、サイトカインをコードする第2のポリヌクレオチド、および少なくとも1つのプロモーターを含有する腫瘍ワクチンであって、少なくとも1つのプロモーターが第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドの少なくとも1つに機能可能に連結している腫瘍ワクチンを提供する。
【0114】
別の態様において、本開示は、抗原提示ポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチド、サイトカインをコードする第2のポリヌクレオチドを含有する腫瘍ワクチンであって、第1のポリヌクレオチドがCMVプロモーターなどの構成的プロモーターに機能可能に連結しており、第2のポリヌクレオチドがアデノウイルスのE2F−1プロモーターなどの腫瘍特異的なプロモーターに機能可能に連結している腫瘍ワクチンを提供する。
【0115】
別の態様において、本開示は、抗原提示ポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドセグメント、サイトカインをコードする第2のポリヌクレオチドセグメント、ならびに第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドの少なくとも1つに機能可能に連結している少なくとも1つのプロモーターを含有する発現ベクターを含有する腫瘍ワクチンを提供する。
【0116】
別の態様において、本開示は、抗原提示ポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドセグメント、サイトカインをコードする第2のポリヌクレオチドセグメントを含有し、第1のポリヌクレオチドセグメントがCMVプロモーターなどの構成的プロモーターに機能可能に連結しており、第2のポリヌクレオチドセグメントがアデノウイルスのE2F−1プロモーターなどの腫瘍特異的なプロモーターに機能可能に連結している発現ベクターを含有する、腫瘍ワクチンを提供する。
【0117】
別の態様において、本開示は、抗原提示ポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドセグメント、サイトカインをコードする第2のポリヌクレオチドセグメント、ならびに第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドの少なくとも1つに機能可能に連結している少なくとも1つのプロモーターを含有する発現ベクターを含有する宿主細胞を有する腫瘍ワクチンを提供する。
【0118】
別の態様において、本開示は、抗原提示ポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドセグメント、サイトカインをコードする第2のポリヌクレオチドセグメントを含有し、第1のポリヌクレオチドセグメントがCMVプロモーターなどの構成的プロモーターに機能可能に連結しており、第2のポリヌクレオチドセグメントがアデノウイルスのE2F−1プロモーターなどの腫瘍特異的なプロモーターに機能可能に連結している発現ベクターを含有する宿主細胞を有する腫瘍ワクチンを提供する。
【0119】
別の態様において、本開示は、ウイルス粒子を有する腫瘍ワクチンであって、前記ウイルス粒子中のウイルスゲノムが、抗原提示ポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドセグメント、サイトカインをコードする第2のポリヌクレオチドセグメントを含有する腫瘍ワクチンを提供する。ある実施形態において、ウイルスゲノムの第1のポリヌクレオチドセグメントは、CMVプロモーターなどの構成的プロモーターに機能可能に連結しており、ウイルスゲノムの第2のポリヌクレオチドセグメントは、アデノウイルスのE2F−1プロモーターなどの腫瘍特異的なプロモーターに機能可能に連結している。ある実施形態において、ウイルス粒子は組換えアデノウイルスである。
【0120】
ある実施形態において、腫瘍ワクチンはアジュバントをさらに含む。本明細書において用いられる用語「アジュバント」は、本明細書において提供されるワクチン組成物と共に投与されるとワクチンに対する免疫応答を非特異的に増強し得る作用物質を言う。
【0121】
治療方法
別の態様において、本開示は、薬学的に許容可能な担体と本開示の腫瘍ワクチンとを含有する医薬組成物を対象に投与することを含む、腫瘍を治療する方法を提供する。
【0122】
本明細書において用いられる用語「対象」には、動物およびヒトが含まれる。
【0123】
医薬組成物は、当技術分野において知られている任意の適切な経路を介して投与することができ、この経路には、限定はしないが、非経口、経口、腸内、口腔内、経鼻、局所的、直腸、膣、経粘膜、表皮、経皮、真皮、眼、肺、および皮下の投与経路が含まれる。
【0124】
医薬組成物は、各投与経路に適した製剤または調製物の形態で対象に投与することができる。医薬組成物の投与に適した製剤には、限定はしないが、溶液、分散液、エマルジョン、粉末、懸濁液、エアロゾル、スプレー、点鼻薬、リポソームベースの製剤、パッチ、インプラント、および坐剤が含まれ得る。
【0125】
製剤は、都合良く単位投与形態とすることができ、調剤学の分野において周知の任意の方法によって調製することができる。これらの製剤または組成物の調製方法は、本開示の腫瘍ワクチンを、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体と、場合によっては1つまたは複数のアジュバントとに提供するステップを含む。このような製剤を作製するための方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第19版、A.R.Gennaro(編)、Mack Publishing Co.、N.J.、1995;R.Striblingら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:11277〜11281(1992);T.W.Kimら、The Journal of Gene Medicine、7(6):749〜758(2005);S.F.Jiaら、Clinical Cancer Research、9:3462(2003);A.Shahiwalaら、Recent patents on drug delivery and formulation、1:1〜9(2007);A.Barnesら、Current Opinion in Molecular Therapeutics 2000 2:87〜93(2000))において見ることができる。
【0126】
ある実施形態において、本開示の核酸、発現ベクター、および/または宿主細胞を含有する医薬組成物は、腫瘍部位での標的組織または標的器官内への局所的送達を介する治療が必要な対象に投与される。ある実施形態において、医薬組成物は、シリンジを用いて、皮膚を介して触診可能な腫瘍部位に直接注射される。ある実施形態において、医薬組成物は、カテーテルラインまたは他の医療アクセス装置に接続され、かつ腫瘍部位に導く画像システムと組み合わせて用いることができる、移植可能な投与装置を用いて注射される。ある実施形態において、効果的用量が、曝露された手術野において視認可能な腫瘍部位に直接注射される。ある実施形態において、医薬組成物(例えば、ベクターで被覆された金粒子)が、粒子を腫瘍内に直接発射する遺伝子銃を用いて、腫瘍部位に撃ち込まれる(例えば、R.Muangmoonchaiら、Molecular Biology、20(2):145〜151(2002)を参照されたい)。ある実施形態において、医薬組成物は、静脈内注射を介して対象に投与される。ある実施形態において、医薬組成物は、経口的にまたは経粘膜的に対象に投与される。治療的核酸を細胞または動物内に導入する方法の参照については、例えば、Yang、N−S.、Crit.Rev.Biotechnol.12:335〜356(1992);Anderson、W.F.、Science 256:808〜813(1992);Miller、A.S.、Nature 357:455〜460(1992);Crystal、R.G.、Amer.J.Med.92(suppl 6A):44S〜52S(1992);Zwiebel、J.A.ら、Ann.N.Y.Acad.Sci.618:394〜404(1991);McLachlin、J.R.ら、Prog.Nucl.Acid Res.Molec.Biol.38:91〜135(1990);Kohn、D.B.ら、Cancer Invest.7:179〜192(1989)を参照されたい。これらの参考文献は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0127】
ある実施形態において、医薬組成物は、治療上効果的な投与量で投与される。本明細書において用いられる用語「治療上効果的な投与量」は、投与後に、所望の治療的結果を達成するために効果的である、腫瘍ワクチンの量を言う。腫瘍ワクチンの治療上効果的な量は、個体の病状、年齢、性別、および体重などの因子、ならびに腫瘍ワクチンが個体において所望の応答を引き起こす能力に従って、患者ごとに変化し得る。治療上効果的な投与量は、任意の有害な副作用の存在と共に治療効果(例えば、癌細胞の成長の低減)をモニタリングしながら、少ないが安全な用量で開始し、より高い容量に増やしていくことによって決定することができる。
【実施例】
【0128】
以下の実施例は、本開示の理解を助けるために記載されており、その後の特許請求の範囲において規定される本発明の範囲を多少なりとも限定すると解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0129】
アデノウイルスベクターAd−HSP−hGM−CSFベクターの構築
アデノウイルスベクターAd−HSP−hGM−CSFを、以下に記載されるように構築する。
【0130】
まず、プラスミドpIRES−E1a−bluntを、プラスミドpEGFP内のEGFP断片をIRES断片およびE1a断片で置き換えることによって構築する。IRES断片は、プライマー対:CGGGATCCGCCCCTCTCCCTCCCCCCCCCCTAACGTTAC(フォワードプライマー)およびGTGGCCATATTATCATCGTGTTTTTCAAAG(リバースプライマー)を用いて、pIRESプラスミド(Clontech、Mountain view、CA、カタログ番号:631605)からPCRによって得る。PCR産物を、BamHIを用いて消化する。E1a断片は、プライマー対:CCGACCGGTGACTGAAAATGAGACATATTATC(フォワードプライマー)およびCGCTGTACAACCACACACGCAATCACAGG(リバースプライマー)を用いて、pXC1プラスミド(Microbix Biosystems Inc.、Ontario、Canada、製品番号:PD−01−03;McKinnon(1982)Gene 19:33〜42もまた参照されたい)からPCRによって得る。PCR産物を、AgeIおよびBsrGIを用いて消化する。プラスミドpEGFP(Clontech、Mountain view、CA、カタログ番号:6077−1)を、BamHIおよびBsrGIで消化し、得られた2.7kbの断片を精製し、得られたIRES断片およびE1a断片とライゲーションする。E1a配列は、ベクター内のSV40配列の上流に位置する。得られたライゲーション産物を制限消化によって確認し、プラスミドpIRES−E1a−bluntと名付ける。
【0131】
次に、プラスミドpE2F−hGM−CSF−IRES−E1aを、E2FプロモーターおよびヒトGM−CSF(hGM−CSF)遺伝子の両方を含有する断片をプラスミドpIRES−E1a−bluntに挿入することによって構築する。pIRES−E1a−bluntを、制限酵素Xho IおよびEcoRIで線状化する。5.6kbの線状化産物(以下、断片Aと呼ぶ)を、0.5%アガロースゲル電気泳動を用いて分析し、ゲル抽出によって精製する。プラスミドpORF9−hGM−CSF(Invivogen、San Diego、CA、カタログ番号:porf−hgmcsf)を、Xho IおよびEcoRIで消化し、この消化によって、1.3kbの断片および2.4kbの断片が生じる。E2FプロモーターおよびhGM−CSF遺伝子を含有する1.3kbの断片(以下、断片Bと呼ぶ)を精製し、次に、断片Aとライゲーションする。ライゲーション産物を制限消化によって確認し、プラスミドpE2F−hGM−CSF−IRES−E1aと名付ける。pE2F−hGM−CSF−IRES−E1a内のhGM−CSFは、配列番号28のヌクレオチド配列を有する。プラスミドpORF9−hGM−CSFに由来するもう一方の2.4kbの消化断片(以下、断片Cと呼ぶ)もまた、その後の使用のためにゲル抽出によって精製する。
【0132】
プラスミドpY1−HSP−ampを、CMVプロモーターおよびヒト熱ショックタンパク質70(hHSP70)遺伝子をプラスミドpSL1190(Pharmacia、カタログ番号27−4386;Brosius J、DNA、8(10):759〜77(1989)もまた参照されたい)内に挿入することによって構築する。hHSP70遺伝子は、プライマー対:CCCAAGCTTATGGCCAAAGCCGCGGC(フォワードプライマー)およびCGGGATCCACTAGTCTAATCTACCTC(リバースプライマー)を用いて、ヒトHSP70 cDNAクローン(Origene、カタログ番号SC116766)からPCRによって得る。hHSP70遺伝子は、配列番号27のヌクレオチド配列を有する。PCR産物を、HindIIIおよびBamHIで消化する。CMVプロモーターは、プライマー対:GGAATTCCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTG(フォワードプライマー)およびCCCAAGCTTGTGAGTCGTATTAATTTC(リバースプライマー)を用いて、pcDNA3.1(Invitrogen、Calsbad、CA、カタログ番号:V860−20)からPCRによって得る。PCR産物を、NdeIおよびHindIIIを用いて消化する。プラスミドpSL1190をNde IおよびBamHIで線状化し、3.2kbの線状化産物をゲル抽出によって精製し、次に、hHSP70断片およびCMVプロモーター断片とライゲーションする。最終ライゲーション産物を制限消化によって確認し、プラスミドpY1−HSP−ampと名付ける。
【0133】
次に、プラスミドpORF9−hHSP70を、断片CとCMVプロモーターおよびhHSP70遺伝子を含有するpY1−HSP−ampに由来する断片とをライゲーションすることによって構築する。プラスミドY1−HSP−ampを、Xho IおよびEcoR Iで消化する。CMVプロモーターおよびhHSP70遺伝子を含有する、得られた2.5kbの断片を、ゲル抽出によって精製し、次に、断片Cとライゲーションする。得られたライゲーション産物を制限消化によって確認し、pORF9−hHSPと名付ける。
【0134】
次に、プラスミドp−CMV−hHSP70−E2F−hGM−CSF−IRES−E1aを、CMVプロモーター、hHSP70遺伝子、およびSV40pAを含有する断片をプラスミドp−E2F−hGM−CSF−IRES−E1a内に挿入することによって構築する。プラスミドp−E2F−hGM−CSF−IRES−E1aを、Xho IおよびPvu Iで線状化し、線状化された6.7kbの産物(以下、断片Dと呼ぶ)を、ゲル抽出によって精製する。プラスミドpORF9−hHSPを、Xho IおよびPac Iを用いて消化し、CMVプロモーター、hHSP70、およびSV40pAを含有する、得られた3.0kbの断片(以下、断片Eと呼ぶ)を、ゲル抽出によって精製する。断片Dおよび断片Eを、DNAリガーゼによってライゲーションする。ライゲーション産物を制限消化によって確認し、pCMV−hHSP70−E2F−hGM−CSF−IRES−E1aと名付ける。
【0135】
次に、pShuttle−CMV−hHSP70−E2F−hGM−CSF−IRES−E1aを、pCMV−hHSP70−E2F−hGM−CSF−IRES−E1aに由来するCMV−hHSP70−E2F−hGM−CSF−IRES−E1aの断片をpShuttleベクター内に挿入することによって構築する。p−CMV−hHSP70−E2F−hGM−CSF−IRES−E1aを、Xho IおよびSsp Iで消化し、CMVプロモーター、hHSP70、SV40pA、E2Fプロモーター、hGM−CSF、IRESおよびE1a、ならびにSV40pAを含有する、得られた6.0kbの断片(断片Fと呼ぶ)を、ゲル抽出によって精製する。ShuttleプラスミドpShuttle(Clontech、Mountain View、CA、カタログ番号:K1650−1)を、EcoR VおよびSal Iを用いて線状化し、得られた6.5kbの線状化産物(以下、断片Gと呼ぶ)を、ゲル抽出によって精製する。断片Fおよび断片Gを、DNAリガーゼによってライゲーションする。ライゲーション産物を制限消化によって確認し、pShuttle−CMV−hHSP70−E2F−hGM−CSF−IRES−E1aと名付ける。
【0136】
最後に、アデノウイルスベクターAd−HSP−hGM−CSFを、プラスミドpShuttle−CMV−hHSP70−E2F−hGM−CSF−IRES−E1a(pShuttle−HSP−hGM−CSFと呼ぶ)およびpAdEasy−1ウイルスDNAプラスミド(Stratagene、La Jolla、CA、カタログ番号240009)の相同組換えによって作製する。左アームの相同配列および右アームの相同配列を含有するpShuttle−HSP−hGM−CSFを、Pme Iで線状化して、2つのそれぞれの末端に分離して位置する2つの相同配列を有する線状化産物を得る。線状化産物を、pAdEasy−1ウイルスDNAプラスミドと共に大腸菌(E.coli)株BJ5183内に共形質転換し、pShuttle−HSP−hGM−CSFとpAdEASYとの間の相同組換えが、左の相同配列と右の相同配列との間で生じる。形質転換体をカナマイシン耐性について選択し、pAd−HSP−hGM−CSFと呼ばれる、得られた組換えベクターを、その後、単離し、制限消化によって同定する。同定されたpAd−HSP−hGM−CSFベクターを配列決定して、挿入された標的遺伝子において突然変異が生じていないことを確認する。pAd−HSP−hGM−CSFの概略的な構造を
図1に示す。pAd−HSP−hGM−CSFベクターをPac Iで消化して、アデノウイルスDNAおよび挿入された遺伝子を含有し、両端で逆方向末端反復(ITR)が曝露されている消化産物を得る。消化産物をHEK293細胞内にトランスフェクトして、アデノウイルス生産293細胞を作製し、これからアデノウイルスAd−HSP−hGM−CSFを回収する。アデノウイルスAd−HSP−hGM−CSFのゲノムの概略的な構造を
図2に示す。
【実施例2】
【0137】
アデノウイルスベクターAd−HSP−mGM−CSFの構築
アデノウイルスベクターAd−HSP−mGM−CSFを、以下に記載されるように構築する。
【0138】
まず、プラスミドpIRES−E1a−bluntを、プラスミドpEGFP内のEGFP断片をIRES断片およびE1a断片で置き換えることによって構築する。IRES断片は、プライマー対:CGGGATCCGCCCCTCTCCCTCCCCCCCCCCTAACGTTAC(フォワードプライマー)およびGTGGCCATATTATCATCGTGTTTTTCAAAG(リバースプライマー)を用いて、pIRESプラスミド(Clontech、Mountain view、CA、カタログ番号:631605)からPCRによって得る。PCR産物を、BamHIを用いて消化する。E1a断片は、プライマー対:CCGACCGGTGACTGAAAATGAGACATATTATC(フォワードプライマー)およびCGCTGTACAACCACACACGCAATCACAGG(リバースプライマー)を用いて、pXC1プラスミド(Microbix Biosystems Inc.、Ontario、Canada、製品番号:PD−01−03;McKinnon(1982)Gene 19:33〜42もまた参照されたい)からPCRによって得る。PCR産物を、AgeIおよびBsrGIを用いて消化する。プラスミドpEGFP(Clontech、Mountain view、CA、カタログ番号:6077−1)を、BamHIおよびBsrGIで消化し、得られた2.7kbの断片を精製し、先に得られたIRES断片およびE1a断片とライゲーションする。E1a配列は、ベクターのSV40配列の上流に位置する。得られたライゲーション産物を制限消化によって確認し、プラスミドpIRES−E1a−bluntと名付ける。
【0139】
次に、プラスミドpORF9−mGM−CSF−comを、プラスミドpORF9−hGM−CSF内のhGM−CSF遺伝子をプラスミドpORF9−mGM−CSFに由来するマウスGM−CSF遺伝子(mGM−CSF)で置き換えることによって構築する。プラスミドpORF−hGM−CSF(Invivogen、San Diego、CA、カタログ番号:porf−hgmcsfから入手可能である)を、SgrA IおよびNhe Iで消化し、得られた3.2kbの断片(断片Hと呼ぶ)を、ゲル抽出によって精製する。プラスミドpORF−mGM−CSF(Invivogen、San Diego、CA、カタログ番号:porf−mgmcsfから入手可能である)を、Age IおよびNhe Iで消化し、mGM−CSF遺伝子を含有する、得られた452bpの断片(断片Iと呼ぶ)をゲル抽出によって精製する。断片Hおよび断片IをDNAリガーゼによってライゲーションする。ライゲーション産物を制限消化によって確認し、プラスミドpORF−mGM−CSF−comと名付ける。
【0140】
次に、プラスミドpE2F−mGM−CSF−IRES−E1aを、E2FプロモーターおよびmGM−CSF遺伝子の両方を含有する断片をプラスミドpIRES−E1a−bluntに挿入することによって構築する。pIRES−E1a−bluntを、制限酵素Xho IおよびEcoRIで線状化する。5.6kbの線状化産物(以下、断片A’と呼ぶ)を、0.5%アガロースゲル電気泳動を用いて分析し、ゲル抽出によって精製する。プラスミドpORF9−mGM−CSF−comを、Xho IおよびEcoRIで消化し、この消化によって、1.3kbの断片および2.4kbの断片が生じる。E2FプロモーターおよびmGM−CSF遺伝子を含有する1.3kbの断片(以下、断片B’と呼ぶ)を精製し、次に、断片A’とライゲーションする。ライゲーション産物を制限消化によって確認し、プラスミドpE2F−mGM−CSF−IRES−E1aと名付ける。pE2F−mGM−CSF−IRES−E1a内のmGM−CSFは、配列番号31のヌクレオチド配列を有する。プラスミドpORF9−hGM−CSFに由来するもう一方の2.4kbの消化断片(以下、断片C’と呼ぶ)もまた、その後の使用のためにゲル抽出によって精製する。
【0141】
プラスミドpY1−HSP−ampを、CMVプロモーターおよびヒト熱ショックタンパク質70(hHSP70)遺伝子をプラスミドpSL1190(Pharmacia、カタログ番号27−4386;Brosius J、DNA、8(10):759〜77(1989)もまた参照されたい)内に挿入することによって構築する。hHSP70遺伝子は、プライマー対:CCCAAGCTTATGGCCAAAGCCGCGGC(フォワードプライマー)およびCGGGATCCACTAGTCTAATCTACCTC(リバースプライマー)を用いて、ヒトHSP70 cDNAクローン(Origene、カタログ番号SC116766)からPCRによって得る。hHSP70遺伝子は、配列番号27のヌクレオチド配列を有する。PCR産物をHindIIIおよびBamHIで消化する。CMVプロモーターは、プライマー対:GGAATTCCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTG(フォワードプライマー)およびCCCAAGCTTGTGAGTCGTATTAATTTC(リバースプライマー)を用いて、pcDNA3.1(Invitrogen、Calsbad、CA、カタログ番号:V860−20)からPCRによって得る。PCR産物を、NdeIおよびHindIIIを用いて消化する。プラスミドpSL1190をNde IおよびBamHIで線状化し、3.2kbの線状化産物をゲル抽出によって精製し、次に、hHSP70断片およびCMVプロモーター断片とライゲーションする。最終ライゲーション産物を制限消化によって確認し、プラスミドpY1−HSP−ampと名付ける。
【0142】
次に、プラスミドpORF9−hHSP70を、断片C’と、CMVプロモーターおよびhHSP70遺伝子を含有するpY1−HSP−ampに由来する断片とをライゲーションすることによって構築する。プラスミドY1−HSP−ampを、Xho IおよびEcoR Iで消化する。CMVプロモーターおよびhHSP70遺伝子を含有する、得られた2.5kbの断片を、ゲル抽出によって精製し、次に、断片C’とライゲーションする。得られたライゲーション産物を制限消化によって確認し、pORF9−hHSPと名付ける。
【0143】
次に、プラスミドp−CMV−hHSP70−E2F−mGM−CSF−IRES−E1aを、CMVプロモーター、hHSP70遺伝子、およびSV40pAを含有する断片をプラスミドp−E2F−mGM−CSF−IRES−E1a内に挿入することによって構築する。プラスミドpE2F−mGM−CSF−IRES−E1aを、Xho IおよびPvu Iで線状化し、線状化された6.7kbの産物(以下、断片D’と呼ぶ)を、ゲル抽出によって精製する。プラスミドpORF9−HSPを、Xho IおよびPac Iを用いて消化し、CMVプロモーター、hHSP70、およびSV40pAを含有する、得られた3.0kbの断片(以下、断片E’と呼ぶ)を、ゲル抽出によって精製する。断片D’および断片E’を、DNAリガーゼによってライゲーションする。ライゲーション産物を制限消化によって確認し、p−CMV−hHSP70−E2F−mGM−CSF−IRES−E1aと名付ける。
【0144】
次に、pShuttle−CMV−hHSP70−E2F−mGM−CSF−IRES−E1aを、pCMV−hHSP70−E2F−hGM−CSF−IRES−E1aに由来するCMV−hHSP70−E2F−mGM−CSF−IRES−E1aの断片をpShuttleベクター内に挿入することによって構築する。p−CMV−hHSP70−E2F−mGM−CSF−IRES−E1aを、Xho IおよびSsp Iで消化し、CMVプロモーター、hHSP70、SV40pA、E2Fプロモーター、mGM−CSF、IRESおよびE1a、ならびにSV40pAを含有する、得られた6.0kbの断片(断片F’と呼ぶ)を、ゲル抽出によって精製する。ShuttleプラスミドpShuttle(Clontech、Mountain View、CA、カタログ番号:K1650−1)を、EcoR VおよびSal Iを用いて線状化し、得られた6.5kbの線状化産物(以下、断片G’と呼ぶ)を、ゲル抽出によって精製する。断片F’および断片G’をDNAリガーゼによってライゲーションする。ライゲーション産物を制限消化によって確認し、pShuttle−CMV−hHSP70−E2F−mGM−CSF−IRES−E1aと名付ける。
【0145】
最後に、アデノウイルスベクターAd−HSP−mGM−CSFを、プラスミドpShuttle−CMV−hHSP70−E2F−mGM−CSF−IRES−E1a(pShuttle−HSP−mGM−CSFと呼ぶ)およびpAdEasy−1ウイルスDNAプラスミド(Stratagene、La Jolla、CA、カタログ番号240009)の相同組換えによって作製する。左アームの相同配列および右アームの相同配列を含有するpShuttle−HSP−mGM−CSFを、Pme Iで線状化して、2つのそれぞれの末端で分離している2つの相同配列を有する線状化産物を得る。線状化産物を、pAdEasy−1ウイルスDNAプラスミドと共に大腸菌株BJ5183内に共形質転換し、pShuttle−HSP−mGM−CSFとpAdEASYとの間の相同組換えが、左の相同配列と右の相同配列との間で生じる。形質転換体をカナマイシン耐性について選択し、pAd−HSP−mGM−CSFと呼ばれる、得られた組換えベクターを、その後、単離し、制限消化によって同定する。同定されたpAd−HSP−mGM−CSFベクターを配列決定して、挿入された標的遺伝子において突然変異が生じていないことを確認する。pAd−HSP−mGM−CSFベクターをPac Iで消化して、アデノウイルスDNAおよび挿入された遺伝子を含有し、両端で逆方向末端反復(ITR)が曝露されている消化産物を得る。消化産物をHEK293細胞内にトランスフェクトして、アデノウイルス生産293細胞を作製し、これからアデノウイルスAd−HSP−mGM−CSFを回収する。アデノウイルスAd−HSP−mGM−CSFのゲノムの概略的な構造を
図3に示す。
【実施例3】
【0146】
アデノウイルス感染細胞におけるGM−CSFタンパク質およびHSP70タンパク質の発現
アデノウイルスベクターAd−HSP−mGM−CSFを用いて、Hela細胞およびHepB細胞をそれぞれ含めたヒト細胞系、ならびにマウスB16細胞を感染させる。
【0147】
アデノウイルスベクターAd−HSP−mGM−CSFを、10(ウイルス力価10
7)、100(ウイルス力価10
8)、または1000(ウイルス力価10
9)のMOIで、各タイプの細胞について試験する。各MOIで、細胞を、アデノウイルスベクターと共にそれぞれ12時間、24時間、36時間、および48時間にわたりインキュベートする。各時点で、3つのウェルの細胞を各タイプの細胞について収集する。したがって、各タイプの細胞について36のウェルの試験試料がある。各タイプの細胞で、3つのさらなるウェルの細胞を未感染対照として含め、未感染対照は、インキュベーションの12時間後に収集する。MOIは、ウェル内に入れられたウイルスのpfuをウェル内の細胞数で割った比率である。細胞数は、血球計測定法を用いて計算または測定する。ウイルス複製を、ウイルス滴定アッセイによって確認する。
【0148】
実験を、以下に記載するように行う。細胞を培養プレート内で培養する。細胞が90%のコンフルエンスに達すると、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、次に、3mlの消化溶液で2〜3分間にわたりトリプシン処理する。接着細胞が分離すると、10mlのダルベッコ変法イーグル完全培地(DMEM)の培養培地をプレートに添加して、細胞を懸濁させる。細胞懸濁液内の細胞数を計数し、細胞懸濁液を完全DMEMによって希釈して、10
6個細胞/mlの最終濃度とする。各タイプの細胞の細胞懸濁液を、次に、1ml/ウェルの量で12ウェルプレートに添加する。
【0149】
細胞を、それらが十分なコンフルエンスに達するまで培養する。培養培地を廃棄し、完全DMEMで希釈したウイルス溶液を、1ml/ウェルで、10、100、または1000のMOIで細胞プレートに添加する。12時間目、24時間目、36時間目、および48時間目に、各MOIおよび各細胞タイプについて3つのウェルの細胞を収集する。上清におけるタンパク質の発現を後に決定するために、細胞培養物を1.5mlの遠心分離管内に収集する。次に、ウェル内に残っている細胞をPBSで3回、穏やかに洗浄し、次に、トリプシン処理し、個別の遠心分離管に収集する。収集された細胞を2500rpmで5分にわたり遠心分離し、次に、上清を廃棄した後、−80℃の冷蔵庫内で保管する。
【0150】
48時間の実験期間の後、全ての試料を収集および調製したら、その後、タンパク質抽出を行う。5倍抽出試薬を、冷たい(4℃)脱イオン水を用いて1倍に希釈し、Protease Inhibitor Cocktail Tabletsを添加する(10mlの抽出溶液当たり1個のタブレット)。抽出溶液を、10
6〜10
7個細胞:1mlタンパク質抽出溶液の比率で、収集された細胞に添加し、細胞を、細胞ペレットをほとんど有さない均質な溶液に再懸濁する。再懸濁された細胞を、断続的に振とうしながら、または短超音波処理を行いながら、氷上に30分置く。細胞を、次に21000gで、4℃で10分間にわたり遠心分離し、上清を新たな遠心分離管に移し、この遠心分離管は、全タンパク質を含有する。
【0151】
mGM−CSFおよびhHSP70の発現レベルを、ELISAキットを用いて決定する。mGM−CSFの発現は、R&D Systemsから購入したQuantikine(登録商標)Mouse GM−CSF Immunoassay(カタログ番号:MGM00)を用いて決定する。hHSP70の発現は、Assay Designsから購入したStressXpress(登録商標)Hsp70 ELISA Kit(カタログ番号:EKS−700B)を用いて決定する。mGM−CSFおよびhHSP70の濃度を、ELISA Kitの指示に従って測定する。結果を
図4(a)、4(b)、および4(c)、ならびに
図5(a)、5(b)、および5(c)に示す。
【0152】
mGM−CSFの発現レベルを
図4に示す。mGM−CSFは、3つの細胞タイプの全てにおいて発現し、このうち、Hep3B細胞が最大量のmGM−CSFを発現し、B16細胞が最低量を発現する。3つの細胞タイプの全てにおいて、発現レベルは、インキュベーション時間に応じて増大し、そのうち、Hep3B細胞の発現レベルは、約48時間で最大量に達する。同時点では、mGM−CSFの発現量は、全体として、MOIが10から1000に増大するにつれ高まる。各時点で、上清におけるタンパク質発現レベルは、細胞ペレットにおける発現レベルよりも高く、このことは、タンパク質が分泌されていることを示唆する。
【0153】
hHSP70の発現レベルを
図5に示す。hHSP70は、3つの細胞タイプの全てにおいて発現し、このうち、Hep3B細胞が最大量のhHSP70を発現し、B16細胞が最低量を発現する。B16細胞においては、MOI100で36時間目に収集された試料を除いて、発現は検出されない。これは、マウス細胞に対するヒトアデノウイルスの感染性が低いことに起因する可能性がある。3つの細胞タイプの全てにおいて、発現レベルは、インキュベーション時間に応じて増大し、そのうち、Hep3B細胞の発現レベルは、約24時間で最大量に達する。同時点では、hHSP70の発現量は、全体として、MOIが10から1000に増大するにつれ高まる。Hep3B細胞において、細胞ペレットにおける発現レベルは、上清における発現レベルよりも高い。Hela細胞において、上清における発現レベルは、細胞ペレットにおける発現レベルよりも高い。
【実施例4】
【0154】
細胞におけるアデノウイルスベクターの増幅
ウイルスベクターを、T型フラスコ内のHEK293細胞において増幅し、CsCl勾配遠心分離によって精製する。ウイルス収量を、ウイルス滴定アッセイおよび分光光度計法によって決定する。ウイルスを、その後の使用のために−70℃で保管する。
【実施例5】
【0155】
Ad−HSP−hGM−CSFと他のウイルスベクターとの細胞傷害性の比較
アデノウイルスベクターAd−HSP−hGM−CSFの細胞傷害性を、A549(Fudan University、Shanghai、Chinaから購入した、腺癌ヒト歯槽基底上皮細胞)、Hepal−6(China Centre for Type Culture Collection(CCTCC)、Wuhan、Chinaから購入した、マウス肝臓癌細胞)、MCF−7(Fudan University、Shanghai、Chinaから購入した、ヒト乳癌細胞)、TCa8113(Chinese Academy of Science、Shanghaiから購入した、ヒト舌癌細胞)、ACC−M(CCTCC、Wuhan、Chinaから購入した、肺に高度に転移性である腺様嚢胞癌細胞クローン)、HeLa(Fudan University、Shanghai、Chinaから購入した、ヒト子宮頸癌細胞)、Hep3B(Fudan University、Shanghai、Chinaから購入した、ヒト肝臓癌細胞)、およびLncap(Chinese Academy of Science、Shanghaiから購入した、アンドロゲン感受性のヒト前立腺腺癌細胞)を含めた異なる腫瘍細胞系において、他のウイルスベクターと比較する。Ad−GM−CSF(プラスミドpORF9−hGM−CSFとpAdEasy−1ウイルスDNAプラスミドとの間の相同組換えによって構築された)、ONYX015(p53欠損癌細胞において選択的に複製するE1B−55k欠失アデノウイルス)(千葉大学から譲り受けた)、およびAd−CMV−HSP(Shanghai Sunway Biotechから譲り受けた)を、細胞傷害効果の比較のために並行して試験する。
【0156】
細胞を、90%のコンフルエンスになるまで、75cm
2の細胞培養ボトル内で成長させる。培養培地を廃棄し、2mlのトリプシン溶液を添加して、細胞をトリプシン処理する。細胞が分離したら、2%ウシ胎児血清を含有する培養培地10mlを添加して、細胞を懸濁させる。細胞懸濁液における細胞数を計数し、細胞懸濁液を、2%ウシ胎児血清を含有する培養培地によって、2×10
5個細胞/mlの最終濃度まで希釈する。細胞の量を、血球計測定法を用いて計算または測定する。細胞懸濁液を、次に、50μl/ウェルで96ウェルプレートに添加する。96ウェルプレートを、CO
2インキュベーター内で1日間インキュベートする。
【0157】
ウイルス溶液を、2%ウシ胎児血清を含有する培養培地で希釈し、50μl/ウェルで、300、100、および30のMOIで、細胞プレートに添加する。各MOIで、感染は3組行う。ブランク対照は、ウェル当たり100μlの培養培地を含有する。96ウェルプレートを、CO
2インキュベーター内で6日間インキュベートする。
【0158】
各細胞タイプにおける各ベクターの細胞傷害性を、Promegaから購入したMTS検出キット:CellTiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay(MTS)(カタログ番号G3580)を用いて決定する。簡潔に述べると、各タイプの細胞を96ウェルプレートに接種し、37℃で95%のコンフルエンスになるまで培養する。ウイルスを、対応するMOIで細胞に添加し、培養物を37℃で成長させ続ける。CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Reagentを、1:5のv/v比率で各培養物に添加する。37℃で1〜4時間のさらなるインキュベーションの後、プレートを、分光光度計を用いて490nmで吸光度について測定する。各細胞タイプの細胞の生存能力を、ウイルス感染後に細胞で測定された光学密度をウイルス感染していない対照細胞で測定された光学密度で割ることによって計算する。
【0159】
結果を
図6〜8に示す。Ad−HSP−hGM−CSFは、試験した細胞タイプの全ておよび試験したMOIの全てで、腫瘍細胞の成長の阻害において有意な活性を示す。TCa8113細胞、ACC−M細胞、HeLa細胞、Hep3B細胞、およびLncap細胞は、Ad−HSP−hGM−CSFでの処理の後に50%超が死滅し、一方、他の細胞は、処理の後に50%未満が死滅する。Ad−HSP−hGM−CSFの抗腫瘍活性は、ベクターAd−GM−CSF、ONYX015、およびAd−CMV−HSPで見られる抗腫瘍活性に匹敵し、また多くのケースにおいて、これよりも良好である。
【実施例6】
【0160】
異なる腫瘍細胞に対するAd−HSP−mGM−CSFの細胞毒性の比較
組換え腫瘍溶解性アデノウイルスAd−HSP−mGM−CSFの細胞傷害性を、HEK293、Hep3B、A549、7402(Fudan University、Shanghai、Chinaの肝癌研究所から購入した、肝細胞癌細胞系)、7721(liver cancer institute、Fudan University、Shanghai、Chinaから購入した、肝細胞癌細胞系)、およびHelaを含めた異なるヒト腫瘍細胞系において試験し、これらの細胞系の全てを、RPMI1640完全培地において維持する。正常細胞系(2BS)を対照として用いる。HEK293細胞系は、アデノウイルスのE1遺伝子で形質転換されており、したがって任意のタイプのアデノウイルスの成長を支え得るため、この細胞系を陽性対照として用いる。特異的殺腫瘍効果を比較する。
【0161】
各細胞系を、それぞれ0.1、1、10、100、および1000MOIのAd−HSP−mGM−CSFで感染させた、5つのグループに分ける。
【0162】
実験は、実施例5に記載されているものと同様に行う。細胞傷害性を、実施例5に記載されているMTS検出キットを用いて決定する。細胞の生存能力を、ウイルス感染で処理した細胞で測定された光学密度をウイルス感染していない対照細胞で測定された光学密度で割ることによって計算する。
図9において示されるように、アデノウイルスベクターの細胞傷害性は、正常細胞と腫瘍細胞との間で異なる。2BS細胞では、細胞の生存能力は、1000のMOIのウイルスに感染した場合、80%を超える。しかし、腫瘍細胞系の生存能力は、ウイルス感染のMOIが増大するにつれ、減少する。A549細胞および7402細胞では、ウイルスは100のMOIで有意な細胞傷害性を示し始め、細胞の生存能力は、MOIがさらに増大すると急激に低下する。Hep3B細胞、7721細胞、およびHela細胞、ならびに陽性対照のHEK293細胞では、ウイルスは、10のMOIで有意な細胞傷害性を示し始め、細胞の生存能力は、MOIがさらに増大すると急激に低下する。
【実施例7】
【0163】
マウスにおける腫瘍の低減
Ad−HSP−mGM−CSFの治療効果を、C57マウスB16腫瘍モデルにおいて研究する。高用量群、中用量群、および低用量群を含めた3つの実験群を設定する。ブランク対照群(10%グリセリンPBS)および陽性対照群(2mg/kgのシスプラチン)もまた含める。投与群を表3に示す。
【0164】
【表3】
【0165】
B16細胞を、C57マウスの腹部下に、各マウス当たり7×10
5個細胞の接種投与量で皮下接種する(総数で、3.85×10
7個のB16細胞)。接種後8日目に、腫瘍容積は閾値サイズ(50〜70mm
3)に達し、動物はすぐに研究で用いることができる状態である。
【0166】
適切な腫瘍のサイズおよび形状を有し、同時発生している腫瘍を有さず、かつ行動の良い、B16腫瘍を有するC57マウスを選択する。マウスを、その腫瘍サイズに従って等級分けし、次に、ランダムにグループに分ける。薬剤投与を開始する前の日に、各マウスの腫瘍サイズを、皮下腫瘍の長さおよび幅を外部からキャリパー測定することによって、インビボで決定する。1日目の薬剤投与の容積を腫瘍サイズの25%と計算し、この容積は、以降の日も同一に維持する。シスプラチンを0.01ml/gの容積で投与し、濃度は0.2mg/mlである。
【0167】
マウスに、Ad−HSP−mGM−CSFウイルスを、連続する5日間にわたり毎日1回腫瘍内注射することによって、それぞれ所定の投与量の薬剤を投与する。陽性対照には、連続する5日間にわたり毎日1回、腹腔内経路を介して投与する。10%グリセリンPBSを、連続する5日間にわたり毎日1回、ブランク対照群の動物に、腫瘍内注射を介して投与する。3日ごとに、各マウスの腫瘍サイズを、皮下腫瘍の長さおよび幅を外部からキャリパー測定することによって、インビボで決定し、体重も同様に同一の間隔で決定する。マウスは、その腫瘍サイズが2000mm
3を超えたら屠殺する。
【0168】
腫瘍サイズを、以下の計算方程式を用いて、異なる時点で各実験群について計算する。
【数1】
【0169】
研究の結果を
図10に示す。低用量群における平均腫瘍サイズは、ブランク対照とほとんど同一であり、このことは、低用量が腫瘍阻害効果をほとんど有さないことを示す。中用量群における平均腫瘍サイズは、ブランク対照よりも低いが陽性対照よりも高く、このことは、中用量が中程度の腫瘍阻害効果を有することを示す。高用量群における平均腫瘍サイズは、陽性群よりも良好であり、このことは、高用量が腫瘍の成長に対して有意な阻害を有することを示す。マウスの生存期間もまた記録し、高用量群は研究の最後で最も高い生存率を有し、低用量群は最も低い生存率を有する。結果は、ウイルスの腫瘍阻害効果が用量依存性であることを示す。結果はまた、生存曲線が全体的に腫瘍サイズ曲線と一致することを示す。
【0170】
本明細書における実質的にいずれの複数形および/または単数形の用語の使用に関しても、当業者であれば、文脈および/または適用に適切となるように、複数形から単数形に、および/または単数形から複数形に変換し得る。
【0171】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュグループの観点で記載されている場合、当業者であれば、その開示が、それによって、マーカッシュグループのいずれの個別のメンバーまたはメンバーのサブグループに関しても記載されていることが認識されよう。
【0172】
様々な態様および実施形態が本明細書において開示されてきたが、他の態様および実施形態は当業者に明らかとなろう。本明細書において開示されている様々な態様および実施形態は、説明を目的としたものであり、限定することを意図したものではなく、正確な範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示されている。