(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193129
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】自動車両用のマフラーインサートおよび該マフラーインサートを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
F01N 1/24 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
F01N1/24 F
F01N1/24 A
F01N1/24 Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-554894(P2013-554894)
(86)(22)【出願日】2012年2月23日
(65)【公表番号】特表2014-506657(P2014-506657A)
(43)【公表日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】EP2012053073
(87)【国際公開番号】WO2012113867
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2013年12月24日
【審判番号】不服2016-2144(P2016-2144/J1)
【審判請求日】2016年2月12日
(31)【優先権主張番号】102011012202.8
(32)【優先日】2011年2月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513211858
【氏名又は名称】ディービーダブリュ・ホールディング・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】DBW Holding GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】シュベルトフェガー、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】レジェント、カール−クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】バウアー、トマス
【合議体】
【審判長】
中村 達之
【審判官】
伊藤 元人
【審判官】
松下 聡
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/095373(WO,A1)
【文献】
特表2004−518063(JP,A)
【文献】
特開平3−227419(JP,A)
【文献】
米国特許第3445994(US,A)
【文献】
米国特許第3868812(US,A)
【文献】
米国特許第4010601(US,A)
【文献】
米国特許第4610131(US,A)
【文献】
特開2002−4833(JP,A)
【文献】
特開2002−4830(JP,A)
【文献】
特開平2−37105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を有する自動車両用の、特に、乗用車およびトラック用の、ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料からなるマフラーインサートであって、前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料は、該ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料を少なくとも1つの支持体の周りに巻きつけることによって得られる巻きつけられた成形材料の形態で存し、前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料は、連続材料、特に連続フィラメントであり、かつ、前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料は、テキスチャード加工されたガラス繊維および/またはテキスチャード加工された他の鉱物繊維を有してなるマフラーインサートにおいて、
前記巻きつけられた成形材料は、成形マットまたは成形体の形態で存在し、前記成形材料は、結合剤を含んでおらず、前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料は、そのコア糸、ベース糸、又はロービングの回りに第2の糸又はロービングが巻き付けられたガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料を含み、巻線ブランクの形態で得られた前記成形材料は、固化された成形材料を形成するために、更に、永続的に固化された状態で存在しており、前記固化は、空気交絡、スティチング、リンキング、ノッティング、ニードリング、フェルティング、又はクロシェット編みによってなされていることを特徴とする、マフラーインサート。
【請求項2】
前記成形材料は、前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料を少なくとも2つの支持体の周りに巻きつけることによって得られる形態で存在することを特徴とする、請求項1に記載のマフラーインサート。
【請求項3】
前記成形材料は、全然追加の固化特性を有しないことを特徴とする、請求項1又は2に記載のマフラーインサート。
【請求項4】
前記テキスチャード加工されたガラス繊維材料および/または他のテキスチャード加工された鉱物繊維材料のベース糸は、溶融糸を含んでもよいし、あるいは、前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料の少なくとも1つの繊維は、溶融糸であることを特徴とする、請求項1に記載のマフラーインサート。
【請求項5】
マフラーのための、特に、乗用車およびトラック用のマフラーのための、マフラーインサートを製造するための方法であって、該マフラーインサートは、ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料からなる、消音、吸音または遮断用の成形材料を含み、前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料は、連続ガラス繊維材料および/または他の連続鉱物繊維材料であり、前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料は、テキスチャード加工されたガラス繊維および/またはテキスチャード加工された鉱物繊維であり、前記方法は、以下の段階、すなわち、
巻線ブランクの形態をとる消音、吸音または遮断用の成形材料を製造するために、前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料を少なくとも1つの支持体の周りに巻きつけること、を有してなる方法において、
前記巻線ブランクは、成形マットまたは成形体の形態をとる永続的形状を有すること、および、前記マフラーインサートの製造の際に、結合剤を使用せず、前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料は、そのコア糸、ベース糸、又はロービングの回りに第2の糸又はロービングが巻き付けられたガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料を有し、更に、空気交絡、スティチング、リンキング、ノッティング、ニードリング、フェルティングまたはクロシェット編みによって、消音、吸音または遮断用の成形材料を製造するために、前記支持体上にある前記巻線ブランクを永続的に固化する段階を有することを特徴とする方法。
【請求項6】
前記連続ガラス繊維材料および/または他の連続鉱物繊維材料は、シングルストランドの連続フィラメントであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料を、少なくとも2つの支持体に巻きつけることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のマフラーインサート、または請求項5ないし7のいずれか1項に記載の方法により得られるマフラーインサートを有するマフラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の態様では、自動車両用の、特に、乗用車およびトラック用のマフラーインサートに関する。ガラス繊維材料製の成形材料の形態をとるこのマフラーインサートは、この場合、連続繊維材料を巻きつけた形態で存在する。使用したガラス繊維材料は、テキスチャード加工されたガラス繊維を有する。更なる態様では、本願は、かようなマフラーインサートを製造するための方法に向けられている。ガラス繊維材料を、テキスチャード加工されたガラス繊維である連続ガラス繊維として、成形材料を形成するために支持体の周りに巻きつけ、かつ、この成形材料を、マフラーインサートとして、必要な場合には複数の更なる加工段階後に使用する。
【背景技術】
【0002】
マフラーは、消音または吸音および遮断用の成形材料を有する。通常は、この目的のために、ガラス繊維材料を、繊維材料として使用する。その代わりに、他の鉱物繊維、例えば玄武岩繊維等は、消音用の材料として、自動車両用のマフラーに使用される。
【0003】
これらの繊維材料を入れ込む可能性は、ばら繊維を、組み合わされたマフラーの中間領域に注入することにある。このような方法は、例えば、特許文献1または特許文献2に記載されている。このような注入法の欠点は、繊維材料を、特に、注入が難しい領域に、例えば、角または他のアンダーカットに最適に分布させないこと、ならびに所定の非円筒形のマフラー輪郭部分のために、しかしまたいわゆるハーフシェルマフラーのために注入法を実際に実施することにある。
【0004】
その代わりに、繊維材料は、マフラーの組み込み中に、組み入れられる。すなわち、繊維材料は、閉じる前に、マフラーハウジングに組み入れられる。この場合、挿入を、種々の方法によって行なうことができる。例えば、通常の方法は、組み立ての際にマフラーに挿入されるバッグ、すなわちプラスチックの袋に満たされているばら繊維材料の、特にガラス繊維材料の挿入である。通常では、ネットとしても実施されていることができるかようなプラスチック袋は、プラスチックまたはプラスチックマトリックスから形成されており、プラスチックは、比較的高い温度で溶ける。マフラーの初期動作およびマフラーの適切な加熱の際に、このプラスチックは溶解し、かつ、ばらガラス繊維材料を放出する。しかし、この方法の大きな欠点は、プラスチック材料の溶解または炭化によって、不快臭が発生し、かつ、環境が悪化されることである。袋に充填されたばらガラス繊維の使用の更なる欠点は、マフラーにおける複雑な構造に、繊維が十分に充填されないことである。更に、マフラー用材料がずれる。それ故に、ガラス繊維材料の音響特性しかしまた熱特性が悪化されている。更に、ばらガラス繊維材料が、時間とともに、吹き出されることがある。それ故に、音響的および熱的な劣化のほかに、環境の悪化が生じてしまう。
【0005】
代替の方法では、ガラス繊維材料製のマットを、インサートとしてマフラーに挿入する。続いてマフラーを閉じる。特許文献3に記載のように、これらのインサートは、溶融糸によって圧縮されていてもよい。ここでは、これらの溶融糸は、マフラーの最初の加熱の際に、インサートが十分に溶け、かつ、かくして、マフラーの自由空間に完全に広がることができるように、形成されている。
【0006】
特許文献4からは、内燃機関のマフラーに消音材料を充填するための方法が記載される。ここでは、材料は、ガラス繊維から成形されており、かつ、ガラス繊維からなる管状の本体を得るために、ガラス繊維糸を管またはロールワインダの周りに巻きつけた状態にある。ここでは、本体は、本体の寸法が、マフラーの充填されるべき空間に対応しているように、形成されている。管状の本体を、巻きつけた後に、管またはロールワインダから除去し、続いて、第2の段階で、更なる装置の中で圧縮する。それ故に、平坦な管状の本体が存する。この平坦化した本体を、次に、不可逆的に織り合わされまたは一体化されたガラス繊維および該ガラス繊維から形成されたリンキングされた物によって固化する。続いて、マフラーを閉じる。
【0007】
特許文献5には、結合剤および熱処理によって製造されるマフラーインサートが記載される。
【0008】
新たな成形材料、例えば、成形マットまたは成形体を乗用車およびトラック用のマフラーインサートとして用いる目的は、軽量構造体を搬送するために、使用された材料の量を減少させる必要性である。この軽量構造体は、燃料消費を減じることを可能にする。更に、マフラーインサートの材料内の密度が、可変に構成可能であり、かつ、マフラーインサート自体がマフラーに容易に挿入可能であるほうがよい。製造自体が生態学的に改善されていることが意図されている。特には、使用の際に、健康を害する物質の排出が全然ないか、あっても非常に少ないほうがよい。このような排出は、現在、ばらのガラス繊維材料が充填されている袋の使用の際に生じる。これらのマフラーインサートを製造するための方法は、容易に実施可能であるほうがよい。マフラーインサート自体が、作動中でも、改善された性質を示すことが意図される。これらには、改善された音響効果、軽量および体積の改善された充填が含まれる。更に、改善された吹き出し安全性(Ausblassicherheit)を有し、すなわち、作動中のガラス繊維の吹き出しを有せず、改善された形状安定性を有するマフラーインサートの必要が生じる。その目的は、音響特性および熱特性を維持するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE 10 2005 009 045
【特許文献2】EP 953 736
【特許文献3】WO 99/23367
【特許文献4】EP 1 861 592
【特許文献5】DE 202 18 618 U1
【発明の概要】
【0010】
従って、自動車両用の、前提部分に記載のマフラーインサートおよび該マフラーインサートを製造するための方法を提供するという課題が、本発明の基礎になっている。このマフラーインサートは、同時に改善された経済的および生態学的な観点での作動中の改善された特性を提供する。
【0011】
特には、本発明は、できる限り少ない材料費で所望の音響特性および遮断特性を供するマフラーインサートを提供することが意図される。同時に、低下した大気汚染および環境悪化が達成される。この場合、このマフラーインサートは、作動中にも大きな形状安定性を有する。成形材料中の繊維相互の相対的なずれおよびガラス繊維の吹き出しが減少されていることが意図される。その目的は、材料の熱特性および音響特性を維持するためである。
【0012】
本発明の課題は、本発明により、前提部分に記載のマフラーインサートによって解決される。このマフラーインサートは、ガラス繊維が連続ガラス繊維材料であり、このガラス繊維材料が、テキスチャード加工されたガラス繊維であることを特徴とする。
【0013】
第1の態様では、本発明は、内燃機関を有する自動車両のための、特に乗用車およびトラックのための、ガラス繊維材料および/または鉱物繊維材料からなるマフラーインサートに向けられている。このガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料は、ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料を少なくとも1つの支持体の周りに巻きつけることによって得られる、巻きつけられた成形材料の形態で存在している。本発明に係わるマフラーインサートは、ガラス繊維材料および/または鉱物繊維材料が連続材料であり、更に、ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料が、テキスチャード加工されたガラス繊維および/または他のテキスチャード加工された鉱物繊維であることを特徴とする。
【0014】
以下、「ガラス繊維材料」という用語は、他に記述がない限り、ガラス繊維製の材料のみならず、ガラス繊維および他の鉱物繊維、例えば、玄武岩繊維または玄武岩ウール製の材料を意味する。
【0015】
「テキスチャード加工された」という用語は、ここでは、ロービング、糸または撚り糸として、特にフィラメントとして存在しているガラス繊維および/または他の鉱物繊維が、知られた方法で開繊されることを意味する。テキスチャード加工されたガラス繊維は、従来の技術で知られている。
【0016】
テキスチャード加工された繊維は、繊維の開繊によって、体積の増加が達成されることを特徴とする。かくしてテキスチャード加工された繊維は、充填度の故に、改善された熱特性および音響特性を示す。
【0017】
通常は、テキスチャード加工された繊維を、空気吹き出し法(Luftblasverfahren)によって製造する。このことによって、ガラス繊維材料の、テキスチャード加工の異なったレベル従ってまた異なった密度を達成することができる。
【0018】
好ましい実施の形態では、ガラス繊維材料は、効果的にテキスチャード加工されたガラス繊維である。「効果的にテキスチャード加工された」という用語は、ここでは、コア糸またはベース糸またはロービングの周りに、第2の糸またはロービング(メイン糸)が巻きつけられることを意味する。巻きつけられた糸のみならず、ベース糸も、この場合、適切にテキスチャード加工されていることができ、すなわち、開繊された状態にある。ガラス繊維材料が、ねじれていない材料、例えば、ロービングおよび連続フィラメントであることは好ましい。ねじれたかまたは撚られた材料である糸および撚り糸を、テキスチャード加工された形態および特に効果的にテキスチャード加工された形態で使用することもできる。
【0019】
本発明によれば、ベース糸は、加熱の際に炭化または溶融する溶融糸または木綿糸であってもよいし、あるいは、これらを含んでもよい。「ガラス繊維」または「鉱物繊維」という用語は、このような実施の形態を同様に含む。
【0020】
本発明の更なる実施の形態では、成形材料は、ガラス繊維材料を少なくとも2つの支持体の周りに巻きつけることによって、得られる。この場合、少なくとも2つの支持体は、適切な成形材料を寸法の異なった巻線ブランクとして製造することができるように、これらの支持体が好ましくは移動可能であるように、形成されている。繊維材料を、この場合、少なくとも3つ以上の支持体の周りに巻きつけることができる。その目的は、成形材料を、本体、特に中空体の形態をとる成形材料を製造するためである。互いに離隔されているこれらの少なくとも3つの支持体は、得られた成形材料の異なった寸法を可能にするために、移動可能であることは好ましい。この場合、支持体は、棒または管として形成されていてもよい。その代わりに、支持体は、プレートまたは異なるサイズの支持体であってもよい。只1つの支持体を使用するときは、この支持体が、必要な場合中空である円筒体として形成されていることは好ましい。支持体は、不連続的な直径を有してもよい。更に、支持体は、成形材料に所定の形状を与えるためには、真っ直ぐな状態あるいは曲がった状態で存在していてもよい。その目的は、成形材料に所定の形状を付与するためである。かような棒のような支持体は、この場合、相応にかように曲げられており、支持体の直径は、不連続的に寸法取りされていてもよい。その目的は、巻線ブランクに、適切に望ましい構造および形状を付与するためである。
【0021】
ガラス繊維または他の鉱物繊維のテキスチャード加工の故に、特に、ガラス繊維の効果的なテキスチャード加工の故に、巻線ブランクを、ガラス繊維材料製の巻きつけられた成形材料として提供することが可能である。この成形材料は、隣り合う繊維とのフッキングまたはこれらの繊維との相互作用によって、巻線構造体の裂け、従ってまた作動中の熱特性および音響特性の劣化を阻止する。ガラス繊維のずれ(このことによって、成形材料において凝集または隙間の形成が生じることがあり、例えば、作動中の衝撃または振動によって引き起こされる)が、前記の阻止によって、減少され、かつ、マフラーインサートの所望の特性は、作動時間に亘って改善されている。
【0022】
他の好ましい実施の形態では、巻線ブランクの形態をとる成形材料は、更に永続的に固化される。その目的は、固化された成形材料を形成するためである。次に、巻線ブランクを支持体上で固化することは好ましい。固化によって、構造または形状は、適切に保たれている。何故ならば、巻線ブランクは、固化の間には、成形用の支持体上にまだ留まっているからである。従って、巻線ブランクに、成形マットまたは成形体の形態の、特に、中空体の形態の持続的な形状を与えることは、容易に可能である。この場合、固化を結合剤なしに実行することは好ましい。この結合剤は、追加の熱処理を必要とし、かつ、経済的および生態的な観点から好ましくない。
【0023】
本発明に係わるマフラーインサートによって、マフラーに形成されたダンパーチャンバの複雑な所望の形状に、成形材料を充填することができる。従って、マフラーインサート(半製品または構成要素)を製造することは可能である。かようなマフラーインサートでは、繊維材料の使用量が低下されており、かくして、軽量構造体が可能となる。この軽量構造体は、燃料消費の低下等のような生態学的な利点が得られるという結論を有する。更に、連続材料として使用されるテキスチャード加工された繊維の使用によって、優れた寸法安定性が得られる。
【0024】
巻線ブランクの形態で得られた今ある成形材料の、可能な更なる固化を、この場合、空気交絡、スティッチング、リンキング、ノッティング、ニードリング、フェルティング、またはクロシェット編みによって行なうことができる。この場合、巻線ブランクを直に支持体上で固化することは好ましい。しかしまた、成形材料が追加の固化特性(Verfestigung)を有さず、寸法安定性を維持することも好ましい。特に、マフラーインサートが結合剤を有しないことは好ましい。
【0025】
固化物、特に、連続固化物が、永続的に形成されていることは好ましい。「永続的な」という用語は、ここでは、マフラーインサートが設けられ、かつ、マフラーが閉じられるまで、少なくともそれまで、固化が継続することを意味する。必要な場合には、適切な材料、例えば溶融紡糸または木綿糸の使用の際には、組み込み後に、低い溶融温度または破壊温度で、固化の少なくとも部分的な解消を行なう。それ故に、マフラーインサートは、ハウジング内のダンパーチャンバを完全に満たすことができる。
【0026】
実施の形態では、しかし、固化は、寸法安定性および繊維相互の安定性を保証するために、作動中でも、少なくとも部分的に永続的であることは好ましい。本発明によれば、マフラーインサートを、更に、所望の形状にもたらすことができる。このように紐で縛ることを溶融糸または木綿糸で行なうことは好ましい。その目的は、マフラーインサートを、マフラーへの組み込みのために、好ましい形状にもたらすためである。この形状は、マフラーの作動中に再度元に戻される。従って、このように紐で縛ることは、マフラーインサートをダンパーチャンバに簡単に組み込みことを可能にする。紐で縛ることの解消の際に、このとき、ダンパーチャンバに、マフラーインサートを完全に充填することができる。適切な材料および方法は、当業者に知られている。
【0027】
本発明に係わるマフラーインサートは、好ましい実施の形態では、該マフラーインサートが結合剤を有しないことを特徴とする。このことによって、製造中の複数の工程段階を回避することができる。全く同様に、製造費、しかしまた作動中の環境悪化も減じることができる。巻きつけられた成形材料は、ガラス繊維材料を少なくとも1つの支持体の周りに巻きつけることによって得られる。繊維材料が、螺旋状に、特に>3%の勾配をもって巻きつけられていることは好ましい。トラベラーを巻き取り中に適切に導くことによって、適切な巻線ブランクを得ることができる。代替の実施の形態では、繊維は、実質的に平行に延びていてよい。繊維は、単層また好ましくは多層に巻きつけられていてもよい。当業者によく知られている巻線は、逆方向であってもよい。
【0028】
テキスチャード加工されたガラス繊維またはテキスチャード加工された他の鉱物繊維、特に、効果的にテキスチャード加工されたガラス繊維からなる、本発明に係わるマフラーインサートは、減量、より良い体積充填、より良い熱効果および音響効果を特徴とする。マフラーインサートへの組み込みの際のマフラーインサートの処理は、寸法安定性の故に改善されている。製品は、設置の際に、快適な感触を有する。特に、連続繊維材料の使用によって、小さなガラス繊維片による労働者への負荷が低減される。連続材料の使用によって、更に、マフラーインサートの寸法安定性が改善されている。マフラーの中で繊維材料のずれが生じない。それ故に、消音材料の音響特性および熱特性が、作動中でも保たれる。最後に、連続材料の使用によって、およびテキスチャード加工された繊維同士のリンキングまたはフッキングの故に、このマフラーインサートは、ガラス繊維の吹き出しに対する改善された安全性を有する。このことは、特に、ニードリングのような更なる作業段階なしにも、達成される。
【0029】
これに対応して、本発明に係わるマフラーインサートは、知られたマフラーインサートに比較して、生態的および経済的利点を有する。
【0030】
更なる態様において、本願は、マフラーのための、特に、燃料で駆動される乗用車およびトラック用のマフラーのためのマフラーインサートを製造するための方法に関する。このマフラーインサートは、ガラス繊維材料からなる、消音、吸音または遮断用の成形材料を有する。本発明に係わる方法は、以下の段階、すなわち、
巻線ブランクの形態をとる消音、吸音または遮断用の成形材料を製造するために、ガラス繊維材料を少なくとも1つの支持体の周りに巻きつけること、を有し、該ガラス繊維材料は、連続ガラス繊維材料であり、かつ、ガラス繊維は、テキスチャード加工されたガラス繊維、特に、効果的にテキスチャード加工されたガラス繊維である。この方法で、シングルストランドの効果的にテキスチャード加工された連続フィラメントを使用することは、特に好ましい。
【0031】
本発明に係わる方法を、ガラス繊維材料を少なくとも2つの支持体の周りに巻きつけるように、実施することは好ましい。更なる実施の形態では、少なくとも3つ以上の支持体を使用してもよい。支持体は、この場合、上記のような支持体であってもよい。
【0032】
この場合、繊維材料を、螺旋状に、特に3%の勾配をもって巻きつけることができる。その代わりに、実質的に平行に延びている巻線があってもよい。この場合、方法は、巻きつけられた成形材料を連続成形材料として製造するために、構成されていてもよい。その代わりに、本発明に係わる方法は、寸法の異なる成形材料の形成を可能にする。特には、正確な成形材料、例えば成形マットまたは成形体を提供することが可能である。この場合、かくして製造された本体は、回転対称的なまたは非回転対称的な部品であってもよい。
【0033】
連続成形材料を製造する際に、製品を、ロール製品として巻き取り、あるいは、適切なユニットによって、所望の最終的な輪郭に切断することができる。この場合、切断を、所定の角度でまたは他の輪郭をつけて、行なうことができる。巻線の種類、巻線の密度等および必要な場合には続いての固化は、製造されたマフラーインサートの体積に影響を与えることができる。メイン糸がねじれなしにベース糸の周りにテキスチャード加工されていてなるいわゆる効果的にテキスチャード加工され材料が、繊維材料として使用されるとき、特にそのとき、このことにより、体積増加が、プラスの影響を達成することができる。
【0034】
本発明の実施の形態では、方法は、更に、消音または吸音および遮断用の成形材料を形成するために、支持体上に存する巻線を永続的に固化することの更なる段階を有することができる。上記のように、かくして得られた成形材料を、更なる段階で、紐で縛ることによって、所望の形状にもたらすことができる。特には、永続的な固化は、結合剤なしに実行される一種の固化である。
【0035】
最後に、本発明によれば、本発明に係わるマフラーインサートを有するマフラーを提供する。該マフラーインサートを、本発明に係わる方法によって得ることができる。
【0036】
この場合、マフラーインサートの製造を、ガラス繊維糸、特にロービングまたはモノフィラメントを同時にテキスチャード加工しつつ巻きつけを可能にする装置によって、行なうことができる。このことによって、段階d)の方法で、テキスチャード加工された、特に、効果的にテキスチャード加工されたガラス繊維からなるマフラーインサートを製造することが可能である。
ここで、出願当初の特許請求の範囲の記載事項を付記する。
[条項1] 内燃機関を有する自動車両用の、特に、乗用車およびトラック用の、ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料からなるマフラーインサートであって、前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料は、該ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料を少なくとも1つの支持体の周りに巻きつけることによって得られる巻きつけられた成形材料の形態で存してなるマフラーインサートにおいて、
前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料は、連続材料、特に連続フィラメントであり、かつ、前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料は、テキスチャード加工されたガラス繊維および/またはテキスチャード加工された他の鉱物繊維を有することを特徴とするマフラーインサート。
[条項2] 前記成形材料は結合剤を含まないことを特徴とする条項1に記載のマフラーインサート。
[条項3] 前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料は、効果的にテキスチャード加工されたガラス繊維および/または他の効果的にテキスチャード加工された鉱物繊維を含むことを特徴とする条項1または2に記載のマフラーインサート。
[条項4] 前記成形材料は、前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料を少なくとも2つの支持体の周りに巻きつけることによって得られる形態で存在することを特徴とする条項1ないし3のいずれか1項に記載のマフラーインサート。
[条項5] 巻線ブランクの形態で得られた前記成形材料は、固化された成形材料を形成するために、更に、永続的に固化された状態で存在することを、さらに特徴とする条項1ないし4のいずれか1項に記載のマフラーインサート。
[条項6] 前記固化は、空気交絡、スティチング、リンキング、ノッティング、ニードリング、フェルティングまたはクロシェット編みによってなされることを特徴とする条項5に記載のマフラーインサート。
[条項7] 前記成形材料は、全然追加の固化特性を有しないことを特徴とする条項1ないし5のいずれか1項に記載のマフラーインサート。
[条項8] 前記効果的にテキスチャード加工されたガラス繊維材料および/または他の効果的にテキスチャード加工された鉱物繊維材料のベース糸は、溶融糸を含んでもよいし、あるいは、前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料の少なくとも1つの繊維は、溶融糸であることを特徴とする条項2に記載のマフラーインサート。
[条項9] マフラーのための、特に、乗用車およびトラック用のマフラーのための、マフラーインサートを製造するための方法であって、該マフラーインサートは、ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料からなる、消音、吸音または遮断用の成形材料を含み、前記方法は、以下の段階、すなわち、
巻線ブランクの形態をとる消音、吸音または遮断用の成形材料を製造するために、前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料を少なくとも1つの支持体の周りに巻きつけること、を有してなる方法において、
前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料は、連続ガラス繊維材料および/または他の連続鉱物繊維材料であり、前記ガラス繊維および/または鉱物繊維は、テキスチャード加工されたガラス繊維および/またはテキスチャード加工された鉱物繊維であることを特徴とする方法。
[条項10] 前記マフラーインサートの製造の際に、結合剤を使用しないことを特徴とする 条項9に記載の方法。
[条項11]前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料は、効果的にテキスチャード加工されたガラス繊維および/または他の効果的にテキスチャード加工された鉱物繊維を有することを特徴とする条項9または10に記載の方法。
[条項12] 前記連続材料は、シングルストランドの連続フィラメントであることを特徴とする条項9ないし11のいずれか1項に記載の方法。
[条項13] 前記ガラス繊維材料および/または他の鉱物繊維材料を、少なくとも2つの支持体に巻きつけることを特徴とする条項9ないし12のいずれか1項に記載の方法。
[条項14] この方法は、更に、特に、空気交絡、スティチング、リンキング、ノッティング、ニードリング、フェルティングまたはクロシェット編みによって、消音、吸音または遮断用の成形材料を製造するために、前記支持体上にある前記巻線ブランクを永続的に固化する段階を有することを特徴とする条項9ないし13のいずれか1項に記載の方法。
[条項15] 条項1ないし8のいずれか1項に記載のマフラーインサート、または条項9ないし14のいずれか1項に記載の方法により得られるマフラーインサートを有するマフラー。