(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193148
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】ピンテンター装置
(51)【国際特許分類】
D06C 3/02 20060101AFI20170828BHJP
D06C 3/10 20060101ALI20170828BHJP
D06C 3/06 20060101ALI20170828BHJP
B65H 23/025 20060101ALI20170828BHJP
B65H 20/20 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
D06C3/02 Z
D06C3/10
D06C3/06 C
B65H23/025
B65H20/20 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-30439(P2014-30439)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2015-155580(P2015-155580A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2016年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002015
【氏名又は名称】ヒラノ技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】松本 定
【審査官】
加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−079133(JP,A)
【文献】
特開昭59−116463(JP,A)
【文献】
実開昭52−000589(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06C 3/02
B65H 20/20
B65H 23/025
D06C 3/06
D06C 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムであるウエブを前後方向に走行させるために、前記ウエブの搬送路の左右両側にそれぞれ配された左右一対の無端状のテンターチェーンと、
前記テンターチェーンに所定間隔毎に取り付けられたピン支持板と、
前記ピン支持板が立設された複数のピンと、
前記ピンを前記ウエブの両耳部の上方から、ブラシ毛が植毛されたブラシロールによって押圧してピンニングを行う左右一対のピンニング装置と、
左右一対の前記ピンニング装置より搬入口側で、かつ、前記ウエブの上方であって、前記ブラシロールと水平な位置に配され、前記ウエブの拡布を行うシリコンゴムよりなる左右一対の第1拡布ロールと、
前記第1拡布ロールより搬入口側に配され、前記ウエブの下方に配されたシリコンゴムよりなる第2拡布ロールと、
を有し、
前記ウエブは前記第2拡布ロールの上方、前記第1拡布ロールの下方、前記ブラシロールの下方の順番に通過し、前記第1拡布ロールの下方から前記ブラシロールの下方に至るときに、前記第1拡布ロールで前記ウエブが水平になって前記ブラシロールの下方に進入する、
ピンテンター装置。
【請求項2】
フィルムであるウエブを前後方向に走行させるために、前記ウエブの搬送路の左右両側にそれぞれ配された左右一対の無端状のテンターチェーンと、
前記テンターチェーンに所定間隔毎に取り付けられたピン支持板と、
前記ピン支持板が立設された複数のピンと、
前記ピンを前記ウエブの両耳部の上方から、ブラシ毛が植毛されたブラシベルトによって押圧してピンニングを行う左右一対のピンニング装置と、
左右一対の前記ピンニング装置より搬入口側で、かつ、前記ウエブの上方であって、前記ブラシベルトと水平な位置に配され、前記ウエブの拡布を行うシリコンゴムよりなる左右一対の第1拡布ロールと、
前記第1拡布ロールより搬入口側に配され、前記ウエブの下方に配されたシリコンゴムよりなる第2拡布ロールと、
を有し、
前記ウエブは前記第2拡布ロールの上方、前記第1拡布ロールの下方、前記ブラシベルトの下方の順番に通過し、前記第1拡布ロールの下方から前記ブラシベルトの下方に至るときに、前記第1拡布ロールで前記ウエブが水平になって前記ブラシベルトの下方に進入する、
ピンテンター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンテンター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、長尺状のウエブを拡布状態で搬送するピンテンター装置においては、テンター装置の搬入口側にピンニング装置が設けられている。このピンニング装置は、例えばブラシロールやブラシベルトで、ウエブの両耳部を上から押圧し、ウエブにピンを刺して固定するものである(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−294567号公報
【特許文献2】特開平3−294568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、上記のようなピンテンター装置は、光学フィルムなどの薄いウエブを搬送するのに用いられている。
【0005】
しかし、このような薄いウエブの両耳部は内側にまるくなる状態になりやすいため、ウエブの両耳部をピンで固定する前に拡布しておく必要がある。
【0006】
そこで本発明は、拡布とピンニングを確実に行うことができるピンテンター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
フィルムであるウエブを前後方向に走行させるために、前記ウエブの搬送路の左右両側にそれぞれ配された左右一対の無端状のテンターチェーンと、前記テンターチェーンに所定間隔毎に取り付けられたピン支持板と、前記ピン支持板が立設された複数のピンと、前記ピンを前記ウエブの両耳部の上方から
、ブラシ毛が植毛されたブラシロールによって押圧してピンニングを行う左右一対のピンニング装置と、左右一対の前記ピンニング装置より搬入口側で
、かつ、前記ウエブの上方であって、前記ブラシロールと水平な位置に配され、前記ウエブの拡布を行う
シリコンゴムよりなる左右一対の第1拡布ロールと、
前記第1拡布ロールより搬入口側に配され、前記ウエブの下方に配されたシリコンゴムよりなる第2拡布ロールと、を有し、前記ウエブは前記第2拡布ロールの上方、前記第1拡布ロールの下方、前記ブラシロールの下方の順番に通過し、前記第1拡布ロールの下方から前記ブラシロールの下方に至るときに、前記第1拡布ロールで前記ウエブが水平になって前記ブラシロールの下方に進入する、ピンテンター装置である。
また、本発明は、
フィルムであるウエブを前後方向に走行させるために、前記ウエブの搬送路の左右両側にそれぞれ配された左右一対の無端状のテンターチェーンと、前記テンターチェーンに所定間隔毎に取り付けられたピン支持板と、前記ピン支持板が立設された複数のピンと、前記ピンを前記ウエブの両耳部の上方から
、ブラシ毛が植毛されたブラシベルトによって押圧してピンニングを行う左右一対のピンニング装置と、左右一対の前記ピンニング装置より搬入口側で
、かつ、前記ウエブの上方であって、前記ブラシベルトと水平な位置に配され、前記ウエブの拡布を行う
シリコンゴムよりなる左右一対の第1拡布ロールと、
前記第1拡布ロールより搬入口側に配され、前記ウエブの下方に配されたシリコンゴムよりなる第2拡布ロールと、を有し、前記ウエブは前記第2拡布ロールの上方、前記第1拡布ロールの下方、前記ブラシベルトの下方の順番に通過し、前記第1拡布ロールの下方から前記ブラシベルトの下方に至るときに、前記第1拡布ロールで前記ウエブが水平になって前記ブラシベルトの下方に進入する、ピンテンター装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、拡布とピンニングをウエブに対し確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のピンテンター装置の平面図である。
【
図2】搬入口部分におけるピンテンター装置の拡大平面図である。
【
図3】搬入口部分の拡布ロールとピンニング装置の側面図である。
【
図4】変更例の拡布ロールとピンニング装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を示すピンテンター装置10について
図1〜
図3に基づいて説明する。
【0011】
(1)ピンテンター装置10の構成
まず、ウエブW(例えば、フィルム、布帛、紙などである)を搬送するピンテンター装置10の構成について
図1に基づいて説明する。
【0012】
ピンテンター装置10は、左右一対の無端状のテンターチェーン16が、それぞれ搬入口側の他動ホイール12、搬出口側の駆動ホイール14に掛け渡されている。各テンターチェーン16には、複数のピン26が植設されたピン支持板28が所定間隔毎に取り付けられている。ピン支持板部28が取り付けられた左右一対のテンターチェーン16は、左右一対のテンターレール18の上を走行し、左右一対の他動ホイール12,12は搬入口側にあるテンター台22に設けられ、左右一対の駆動ホイール14,14は搬出口側にあるテンター台24に設けられている。なお、テンターレール18は、ウエブWを熱処理するための熱処理室20内部を通過する。
【0013】
ピンテンター装置10は、左右一対のテンターチェーン16に取り付けられた複数のピン26によってウエブWを幅方向に対し一定の張力で把持し、熱処理室20内部を一定の搬送速度で通過させて、ウエブWを熱処理する。
【0014】
ピンテンター装置10の搬入口側には、左右一対のピンニング装置30,30が設けられ、ウエブWの両耳部にピン26を刺して固定する。このピンニング装置30の手前には、左右一対の第1拡布ロール32,32が設けられ、この第1拡布ロール32の手前に左右一対の第2拡布ロール34,34が設けられている。
【0015】
(2)ピンニング装置30
次に、ピンニング装置30について
図2と
図3に基づいて説明する。
【0016】
ピンニング装置30は、ブラシロール36を有し、このブラシロール36は、ウエブWの両耳部の上方に配置され、ブラシ毛38が植毛されている。また、ブラシロール36は、ウエブWの走行速度に合わせて、かつ、走行方向に沿って回転する。
【0017】
ピンニング装置30でピンニングする場合には、ピン支持板28の上方に配されたウエブWの両耳部がこのブラシロール36のブラシ毛38によって下方に押圧されピン26がウエブWに突き刺さり、ピン支持板28に固定される。
【0018】
(3)第1拡布ロール32と第2拡布ロール34
次に、第1拡布ロール32と第2拡布ロール34について説明する。
【0019】
第1拡布ロール32は、シリコンゴムより形成され、ピンニング装置30のブラシロール36の手前に回動自在に配されている。この第1拡布ロール32は他動であって、
図2に示すように、ウエブWの走行方向に対しθ°傾いて配され、右側の第1拡布ロール32はウエブWを右側に、左側の第1拡布ロール32はウエブWを左側に拡布するように回転する。また、第1拡布ロール32は、ウエブWの上方に配されている。但し、θ°は、0°<θ°<90°である。
【0020】
第2拡布ロール34は、第1拡布ロール32の手前に配され、シリコンゴムより形成されている。第2拡布ロール34も他動であって、ウエブWの走行方向に対しθ°傾斜して配されている。これにより、左右一対の第2拡布ロール34,34はウエブWを拡布状態にする。第2拡布ロール34は、ウエブWの下方に配されている。
【0021】
(4)ピンテンター装置10の動作状態
ピンテンター装置10の搬入口側における動作状態について
図1〜
図3に基づいて説明する。
【0022】
ウエブWは、搬入口側において左右一対の第2拡布ロール34,34の上方を走行し、次に左右一対の第1拡布ロール32,32の下方を走行し、ピンニング装置30のブラシロール36の下方を走行する。このとき第1拡布ロール32と第2拡布ロール34によってウエブWが拡布状態となり、拡布状態のままブラシロール36の下方を通過して、ブラシ毛38によってピン26がウエブWの両耳部に固定される。その後に、拡布状態のままウエブWが熱処理装置20に搬入される。
【0023】
このとき
図3に示すように、ウエブWは第2拡布ロール34の上方、第1拡布ロール32の下方、ブラシロール36の下方を順番に通過するため、ウエブWは搬送方向にも引っ張られた状態でブラシロール36に至るため、ウエブWにピン26を確実にピンニングできる。特に、第2拡布ロール34の上方から第1拡布ロール32の下方にウエブWが至るときに、第1拡布ロール32によってウエブWが走行方向に引っ張られて拡布されやすくなり、次に、第1拡布ロール32の下方からブラシロール36の下方に至るときに、第1拡布ロール32でウエブWがほぼ水平になってブラシロール36の下方に進入するために、ウエブWが拡布状態を維持しつつブラシロール36で確実にピンニングできる。
【0024】
(5)効果
本実施形態のピンテンター装置10によれば、ピンニング装置30によってウエブWにピンニングを行う前に、第1拡布ロール32と第2拡布ロール34によって拡布を行うことができ、拡布状態でウエブWにピンニングを行うことができる。
【0025】
また、第2拡布ロール34の上方から第1拡布ロール32の下方にウエブWが至るときに、第1拡布ロール32によってウエブWが走行方向に引っ張られて拡布されやすくなり、次に、第1拡布ロール32の下方からブラシロール36の下方に至るときに、第1拡布ロール32でウエブWがほぼ水平になってブラシロール36の下方に進入するために、ウエブWが拡布状態を維持しつつブラシロール36で確実にピンニングできる。
【0026】
(6)変更例
上記実施形態では、拡布ロールは2本であったが、これに代えて3本以上の拡布ロールを設けてもよい。但し、この場合であってもブラシロール36に最も近い拡布ロールは、その拡布ロールの上にウエブWが走行するようにする必要がある。
【0027】
また、上記実施形態ではピンニング装置30として、ブラシロール36から構成されていたが、これに代えて、
図4に示すように、前後一対の駆動ロール40と他動ロール42との間でベルト44を掛け渡し、このベルト44の下面にブラシ毛38を植毛したピンニング装置30を用いてもよい。このピンニング装置30であっても、ピンニング装置30の駆動ロール40の手前に第1拡布ロール32を設けることにより、拡布とピンニングを確実に行うことができる。
【0028】
上記実施形態では、第1拡布ロール32と第2拡布ロール34の材質は、シリコンゴムであったが、これ以外の弾力性のある材料で形成してもよい。
【0029】
上記実施形態では、第1拡布ロール32と第2拡布ロール34の傾斜角は、同じθ°であったが、第1拡布ロール32の傾斜角をθ°、第2拡布ロール34の傾斜角をθ°より小さく、又は、大きくしてもよい。
【0030】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
10・・・ピンテンター装置、26・・・ピン、28・・・ピン支持板、30・・・ピンニング装置、32・・・第1拡布ロール、34・・・第2拡布ロール、36・・・ブラシロール、38・・・ブラシ毛、