特許第6193172号(P6193172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193172
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】棒鋼受け渡し装置
(51)【国際特許分類】
   B21B 43/00 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   B21B43/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-84672(P2014-84672)
(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-202519(P2015-202519A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 剛司
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−290135(JP,A)
【文献】 実開平02−133204(JP,U)
【文献】 実開昭49−034224(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 43/00
B21B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒鋼を冷却する冷却床と、
前記棒鋼を搬送するためのローラテーブル、および、前記ローラテーブルから前記冷却床に前記棒鋼を受け渡すためのリフタを備えるリフタ機構と、
前記棒鋼を落下させるためのトラフ、および、前記トラフから落下した前記棒鋼を前記冷却床に誘導するための棒鋼落下ガイドを備えるトラフ機構と、
前記リフタの上方に前記トラフ機構が配置された状態、および、少なくとも前記リフタの上方が開放された状態に、前記リフタ機構に対して前記トラフ機構を移動可能に構成されるシフト機構と、
を備える、棒鋼受け渡し装置。
【請求項2】
請求項1に記載の棒鋼受け渡し装置であって、
前記シフト機構は、前記リフタの上方および前記ローラテーブルの上方が開放された状態に、前記リフタ機構に対して前記トラフ機構を移動可能に構成される、
棒鋼受け渡し装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の棒鋼受け渡し装置であって、
前記シフト機構による前記トラフ機構の移動は、前記冷却床での前記棒鋼の搬送方向成分を含む直線移動である、
棒鋼受け渡し装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の棒鋼受け渡し装置であって、
前記シフト機構による前記トラフ機構の移動方向は、前記冷却床での前記棒鋼の搬送方向成分を含む水平方向のみであ
前記冷却床での前記棒鋼の搬送方向成分は、水平方向を含む、
棒鋼受け渡し装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の棒鋼受け渡し装置であって、
前記トラフ機構は、前記棒鋼の長手方向に延びるように構成され、
前記シフト機構は、複数のシフト装置を備え、
複数の前記シフト装置は、前記棒鋼の長手方向に並ぶように配置され、かつ、前記トラフ機構の複数の部位に取り付けられる、
棒鋼受け渡し装置。
【請求項6】
請求項5に記載の棒鋼受け渡し装置であって、
前記シフト機構は、複数の前記シフト装置を同期駆動させるシフト装置駆動部を備える、
棒鋼受け渡し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒鋼受け渡し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧延された棒鋼を冷却床に受け渡す、棒鋼受け渡し装置がある(例えば特許文献1、2など)。
【0003】
特許文献1には次の技術が記載されている(同文献の実用新案請求の範囲参照)。「圧延機で圧延された棒鋼を圧延機に後続する冷却床に搬入する棒鋼圧延用冷却床搬入設備において、冷却床前面に搬入テーブルと搬入トラフとを並列して設けるとともに、細物は搬入トラフで搬入し、太物は搬入テーブルで搬入できるよう切換え可能に構成した」。同文献には、この構成による作用が次のように記載されている(同文献の第5ページの[作用]参照)。「直送圧延を行っていて細物サイズを高速で圧延しなくてはならない時は、棒鋼は確実に搬送できる搬入トラフで冷却床に搬入し、低速で圧延してもよい太物サイズの棒鋼は、疵のつきにくい搬入テーブルで冷却床に搬入できる。したがって、直送圧延時に要求される細物サイズの高速圧延を維持しつつ、かつ疵の発生のない高級な太物サイズの棒鋼の圧延を行うことができる」。
【0004】
特許文献1の図1に記載の技術では、トラフ(13)およびトラフ(13)を駆動させる機器(以下「トラフ機構」)が、搬入テーブル(5)の上方に配置されている。また、同文献には記載されていないが、この種の棒鋼受け渡し装置では、搬入テーブル(5)から冷却床(15)に棒鋼を移動させるためのリフタが設けられる。このリフタの上方にもトラフ機構が配置される。なお、特許文献2にも、特許文献1に記載の技術と同様の技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−36304号公報
【特許文献2】特開平10−15610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、特許文献1、2に記載の技術(以下「従来技術」)では、リフタの上方がトラフ機構により塞がれる。そのため、リフタのメンテナンスが困難となるおそれがある。
【0007】
また、棒鋼受け渡し装置では、リフタの使用時に、搬入テーブル(搬送テーブル、ローラテーブル)での棒鋼の突っかけや挟み込みなどの搬送トラブルにより、搬入テーブル内で棒鋼が正常に搬送されない状況が生じることがある。従来技術では、このような状況が生じると、材料(搬送トラブルが生じた棒鋼)が、リフタの上方に配置されたトラフ機構を損傷させるおそれがある。また、従来技術では、リフタの上方がトラフ機構により塞がれるので、このような状況が生じたときに、材料(搬送トラブルが生じた棒鋼)を取り出すことが困難となるおそれがある。
【0008】
また、従来技術では、棒鋼落下ガイドを冷却床まで十分に近づけることができず、棒鋼が溝移りするおそれがある。この問題の詳細は次の通りである。トラフの使用時には、棒鋼落下ガイドが、トラフから落下した棒鋼を冷却床に誘導する(ガイドする)。一方、リフタの使用時には、棒鋼が、搬入テーブルからリフタを介して冷却床に移動する。このリフタの使用時に棒鋼が棒鋼落下ガイドに干渉しないように、棒鋼落下ガイドの下端の位置が制限される。さらに詳しくは、径が最大の棒鋼(最大製品サイズの棒鋼)をリフタで受け渡す際に、棒鋼が棒鋼落下ガイドに接触しないように、棒鋼落下ガイドの下端の位置が制限される。そのため、棒鋼落下ガイドの下端を冷却床に十分に近づけることができないおそれがある。そのため、トラフから落下する棒鋼が、冷却床の所定位置(受溝)に正確に落下できず、棒鋼が冷却床に当たって跳ね返るときに棒鋼の一部が受溝の隣の溝に移るなどの問題(溝移り)が生じるおそれがある。その結果、棒鋼が曲がるなど、棒鋼の品質が悪くなるおそれがある。
【0009】
そこで本発明は、リフタのメンテナンスを容易に行うことができ、ローラテーブル内で棒鋼が正常に搬送されない状況が発生した場合でも、トラフ機構の損傷を抑制できるとともに材料(搬送トラブルが生じた棒鋼)を容易に取り出すことができ、さらに、棒鋼落下ガイドの落下誘導性を向上させることにより棒鋼の溝移りを抑制できる、棒鋼受け渡し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の棒鋼受け渡し装置は、棒鋼を冷却する冷却床と、リフタ機構と、トラフ機構と、シフト機構と、を備える。前記リフタ機構は、前記棒鋼を受け取るためのローラテーブル、および、前記ローラテーブルから前記冷却床に前記棒鋼を受け渡すためのリフタを備える。前記トラフ機構は、前記棒鋼を落下させるためのトラフ、および、前記トラフから落下した前記棒鋼を前記冷却床に誘導するための棒鋼落下ガイドを備える。前記シフト機構は、前記リフタの上方に前記トラフ機構が配置された状態、および、少なくとも前記リフタの上方が開放された状態に、前記リフタ機構に対して前記トラフ機構を移動可能に構成される。
【発明の効果】
【0011】
上記構成により、リフタのメンテナンスを容易に行うことができ、ローラテーブル内で棒鋼が正常に搬送されない状況が発生した場合でも、トラフ機構の損傷を抑制できるとともに材料(搬送トラブルが生じた棒鋼)を容易に取り出すことができ、さらに、棒鋼落下ガイドの落下誘導性を向上させることにより棒鋼の溝移りを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】棒鋼受け渡し装置1を示す図である。
図2図1に示す棒鋼受け渡し装置1の一部拡大図である。
図3図1に示すトラフ機構40がトラフ退避状態のときの図1相当図である。
図4図1に示す棒鋼受け渡し装置1を冷却床搬送方向Yから見た図である。
図5図1に示す棒鋼受け渡し装置1を上から見た図である。
図6図1に示すクランプ機構70などを冷却床搬送方向Yから見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図6を参照して実施形態の棒鋼受け渡し装置1について説明する。
【0014】
棒鋼受け渡し装置1は、棒鋼圧延設備の一部である。図1に示す棒鋼受け渡し装置1は、棒鋼圧延装置(図示なし)により圧延された棒鋼Bを受け取り、受け取った棒鋼Bを冷却床20に渡す装置である。棒鋼受け渡し装置1は、受け取った棒鋼Bを冷却床20に取り込む、冷却床取り込み装置である。棒鋼Bは、圧延により作られる圧延材である。棒鋼Bは、円柱状であり、丸棒である。棒鋼Bには、細物と太物とがある。細物の棒鋼Bの直径は、例えば8〜19mmなどである。太物の棒鋼Bの直径は、例えば22〜51mmなどである。棒鋼Bの長手方向の長さは、約70〜90mなどである。棒鋼受け渡し装置1は、フレーム10と、冷却床20と、リフタ機構30と、トラフ機構40と、シフト機構60と、クランプ機構70と、を備える。
【0015】
フレーム10は、床や地面(図示なし)に対して固定される部分である。フレーム10には、トラフ機構支持フレーム11がある。トラフ機構支持フレーム11は、トラフ機構40を下から支持する部分である。トラフ機構支持フレーム11は、例えば梁や板を組み合わせた物などである。
【0016】
冷却床20は、棒鋼Bを搬送しながら、棒鋼Bを冷却する。図2に示すように、冷却床20は、受溝21と、搬送用溝23と、を備える。
【0017】
(方向の定義)ここで、棒鋼受け渡し装置1に関する方向を次のように定義する。棒鋼受け渡し装置1が受け取った棒鋼Bの長手方向を棒鋼長手方向Xとする。冷却床20による棒鋼Bの搬送方向を冷却床搬送方向Yとする。冷却床搬送方向Yは、棒鋼長手方向Xに直交し、かつ、水平方向である。冷却床搬送方向Yにおいて、冷却床20による棒鋼Bの搬送の上流側を冷却床上流側Y1とする。冷却床搬送方向Yにおいて、冷却床20による棒鋼Bの搬送の下流側を冷却床下流側Y2とする。また、上下方向を上下方向Zとし、上側を上側Z1、下側を下側Z2とする。
【0018】
受溝21は、リフタ機構30およびトラフ機構40から棒鋼Bを受け取るための溝である。
【0019】
搬送用溝23は、棒鋼Bを搬送するための溝である。搬送用溝23は、受溝21よりも冷却床下流側Y2に配置される。搬送用溝23は、冷却床搬送方向Yに並ぶ複数の溝により構成される。搬送用溝23は、固定溝23aと可動溝23bとを備える。固定溝23aは、受溝21に対して固定される。可動溝23bは、固定溝23aに対して回動(棒鋼長手方向Xから見て円運動など)する。
【0020】
リフタ機構30は、棒鋼圧延装置(図示なし)から受け取った棒鋼Bを冷却床20に渡す。リフタ機構30は、太物の棒鋼Bの受け渡しに用いられる。リフタ機構30は、冷却床20よりも冷却床上流側Y1に配置される。リフタ機構30は、冷却床20に隣接するように配置される。リフタ機構30は、ローラテーブル31と、ローラ上流側壁部33と、ローラテーブル駆動部35と、リフタ37と、を備える。
【0021】
ローラテーブル31は、棒鋼圧延装置(図示なし)から棒鋼Bを受け取る。ローラテーブル31の上面(上側Z1の面)には、棒鋼Bが乗せられる。ローラテーブル31は、棒鋼Bを棒鋼長手方向Xに搬送する。ローラテーブル31は、棒鋼長手方向Xに並ぶ複数のローラ31a(円柱状部材)(1つのみ図示)により構成される。ローラテーブル31は、ローラテーブル31上からリフタ37上に棒鋼Bが移動可能に(乗り移り可能に)構成される。具体的には、ローラテーブル31の上面は、冷却床上流側Y1から冷却床下流側Y2になるにしたがって下側Z2に下がるように傾斜する。
【0022】
ローラ上流側壁部33は、ローラテーブル31上の棒鋼Bが冷却床上流側Y1に移動するのを規制する。ローラ上流側壁部33は、ローラテーブル31の上面よりも上側Z1に突出する。ローラ上流側壁部33は、トラフ機構支持フレーム11よりも冷却床下流側Y2に配置される。ローラ上流側壁部33は、トラフ機構支持フレーム11と冷却床搬送方向Yに隣り合うように配置される。
【0023】
ローラテーブル駆動部35は、ローラ31aを駆動させる(回動させる)。ローラテーブル駆動部35は、ローラテーブル31よりも冷却床上流側Y1に配置される。ローラテーブル駆動部35は、トラフ機構支持フレーム11の下側Z2(真下)に配置される。ローラテーブル駆動部35は、例えば、ローラ31a駆動用のローラモータ35aと、ローラ31aに固定されるシャフト35bと、ローラモータ35aの駆動力をシャフト35bに伝える滑車35cと、を備える。
【0024】
リフタ37は、ローラテーブル31から冷却床20に棒鋼B(図3参照)を受け渡す。リフタ37は、ローラテーブル31と冷却床20との間(冷却床搬送方向Yにおける間)に配置される。リフタ37は、ローラテーブル31よりも冷却床下流側Y2に配置される。リフタ37は、冷却床20よりも冷却床上流側Y1に配置される。リフタ37は、上下方向Zに駆動される(上下方向Zに移動可能である)。リフタ37は、ローラテーブル31よりも下側Z2に配置された状態と、図3において二点鎖線で示すように受溝21よりも上側Z1に配置された状態と、の間で移動可能である。リフタ37が受溝21よりも上側Z1に配置された状態のときに、リフタ37から受溝21に棒鋼Bを移動させることができるように(渡せるように)、リフタ37が構成される。具体的には、リフタ37の上面(リフティングプレート)は、冷却床上流側Y1から冷却床下流側Y2になるにしたがって下側Z2に下がるように傾斜する。
【0025】
トラフ機構40は、図2に示すように、棒鋼圧延装置(図示なし)から受け取った棒鋼Bを冷却床20に渡す。トラフ機構40は、細物の棒鋼Bの受け渡しに用いられる。後述するように、トラフ機構40には、トラフ使用状態(図1参照)とトラフ退避状態(図3参照)とがある。以下では、特に断らない限り、トラフ機構40がトラフ使用状態である場合について説明する。トラフ機構40は、リフタ機構30よりも上側Z1に配置され、リフタ機構30の上方(真上)に配置される。トラフ機構40は、トラフ機構支持フレーム11上に搭載される。トラフ機構40は、棒鋼長手方向Xに延びるように構成される。図4に示すように、トラフ機構40は、棒鋼長手方向Xに並ぶ複数のユニット40uにより構成される。トラフ機構40全体が備えるユニット40uの数は、例えば約20である(図4では、3つのユニット40uのみを実線で図示した)。棒鋼長手方向Xにおける1つのユニット40uの長さは、例えば約5mなどである。棒鋼長手方向Xにおけるトラフ機構40(図2参照)の全長は、棒鋼Bの全長よりも長く、例えば約100mなどである。複数のユニット40uそれぞれは、同様(または、ほぼ同様)の構成を備える。以下では、複数のユニット40uのうち1つのユニット40uについて説明する。図1に示すように、トラフ機構40は、トラフ機構フレーム41と、トラフ装置50と、を備える。
【0026】
トラフ機構フレーム41は、トラフ装置50等が取り付けられる構造物である。トラフ機構フレーム41は、トラフ機構支持フレーム11上に搭載される。トラフ機構フレーム41は、トラフ機構支持フレーム11に対して移動可能である(詳細は後述)。トラフ機構フレーム41は、本体部41aと、前面部41bと、前面部支持部41cと、図4および図5に示す連結部41eと、クランプ取付部41fと、を備える。図1に示すように、本体部41aには、トラフ装置50が取り付けられる。前面部41bは、トラフ機構フレーム41の冷却床下流側Y2の端の面である。前面部41bは、例えば棒鋼落下ガイド59(後述)を構成する部材である。前面部支持部41cは、本体部41aに対して前面部41bを支持する。前面部支持部41cは、前面部41bの上端部(上側Z1端部)を支持する。前面部支持部41cには、前面部41bよりも冷却床下流側Y2に突出する突出部41dがある(突出部41dはなくてもよい)。図4および図5に示す連結部41eは、ユニット40uどうしを連結する。連結部41eは、棒鋼長手方向Xに隣接する2つのユニット40uの本体部41aどうしを、棒鋼長手方向Xに連結する。クランプ取付部41fは、棒鋼長手方向Xに隣接する2つのユニット40uの間、かつ、連結部41eで連結されない2つのユニット40uの間に、図5に示すクランプ機構70が配置される場合に設けられる。クランプ取付部41fは、本体部41aから棒鋼長手方向X外側に突出する。
【0027】
トラフ装置50は、図2に示すように、棒鋼圧延装置(図示なし)から受け取った棒鋼Bを冷却床20に渡す装置である。トラフ装置50の数は、例えば複数(複数段)であり、図2では2段であり、3段以上でもよく、また、1段でもよい。複数のトラフ装置50は、上下方向Zに並ぶ。以下では、複数段のトラフ装置50のうち1段のトラフ装置50について説明する。トラフ装置50は、上蓋51と、トラフ53と、トラフ駆動部55と、シュート57と、棒鋼落下ガイド59と、を備える。
【0028】
上蓋51は、トラフ53を閉じる蓋である。上蓋51は、トラフ機構フレーム41に対して固定される。
【0029】
トラフ53は、棒鋼圧延装置(図示なし)から棒鋼Bを受け取り、受け取った棒鋼Bを落下させる。トラフ53は、リフタ37よりも上側Z1に配置され、リフタ37の上方(真上)に配置される。トラフ53は、棒鋼Bを下から受けるための凹部(窪み、溝)を備える。凹部は、棒鋼長手方向Xから見てU字状やC字状などである。1本のトラフ駆動アーム55e(後述)あたりのトラフ53の数は、例えば複数であり、図2では2であり、3以上でもよく、また、1でもよい。トラフ53は、アーム支持軸55f(後述)を中心に回動することにより、トラフ閉状態と、トラフ開状態と、に変わる。トラフ開状態は、トラフ53から上蓋51が離れた状態であり、トラフ53から棒鋼Bが落下可能な状態である。トラフ閉状態は、上蓋51によりトラフ53が閉じられた状態である。トラフ閉状態の場合、空間53sが形成される。空間53sは、上蓋51とトラフ53とで囲まれた(閉塞された、閉じられた)部分である。空間53s内には、棒鋼圧延装置(図示なし)から棒鋼Bが誘導される(通される)。
【0030】
トラフ駆動部55は、トラフ53を駆動させる(開閉させる)。トラフ駆動部55は、トラフ53をアーム支持軸55f(後述)まわりに回動させる。トラフ駆動部55は、トラフ53よりも冷却床上流側Y1に配置される。トラフ駆動部55は、トラフ駆動装置55aと、トラフ駆動レバー55bと、ラインシャフト55cと、連結桿55dと、トラフ駆動アーム55eと、アーム支持軸55fと、を備える。
【0031】
トラフ駆動装置55aは、トラフ53を開閉するためのアクチュエータである。トラフ駆動装置55aは、例えば伸縮式アクチュエータであり(回転式でもよい)、例えば流体圧シリンダであり、例えば空気圧シリンダである。トラフ駆動レバー55bは、トラフ駆動装置55aに連結される。図4に示すように、トラフ駆動装置55aは、複数のユニット40uあたり1つ設けられる。なお、図1および図3ではトラフ駆動装置55aを省略した。
【0032】
ラインシャフト55cは、図2に示すように、トラフ機構フレーム41に対してトラフ駆動レバー55bを回動可能に支持する。ラインシャフト55cとトラフ駆動レバー55bとは、一体的に回転する。ラインシャフト55cの軸方向は、棒鋼長手方向Xである。図4に示すように、ラインシャフト55cは、複数のユニット40uそれぞれのトラフ装置50(図2参照)どうし(トラフ駆動レバー55bどうし)をつなぐ。ラインシャフト55cにより、複数のユニット40uでのトラフ53(図2参照)の動作が同期する。ラインシャフト55cは、フレキシブルジョイント55cjを備える。
【0033】
フレキシブルジョイント55cjは、棒鋼長手方向Xに隣接するユニット40uそれぞれのラインシャフト55cどうしをつなぐ。フレキシブルジョイント55cjは、連結部41eでつながれていないユニット40uそれぞれのラインシャフト55cどうしをつなぐ。フレキシブルジョイント55cjは、連結部41eでつながれているユニット40uそれぞれのラインシャフト55cどうしをつないでもよい(図示なし)。フレキシブルジョイント55cjは、複数のユニット40u間のわずかな移動のずれによって生じるラインシャフト55cの屈曲を吸収する(後述)。フレキシブルジョイント55cjは、例えばギアカップリングなどにより構成される。
【0034】
連結桿55dは、図2に示すように、トラフ駆動レバー55bとトラフ駆動アーム55eとを連結する。トラフ駆動アーム55eは、連結桿55dを介してトラフ駆動レバー55bに連結される。トラフ駆動アーム55eには、トラフ53が固定される。アーム支持軸55fは、トラフ機構フレーム41に対してトラフ駆動アーム55eを回動自在に支持する。アーム支持軸55fの軸方向は、棒鋼長手方向Xである。
【0035】
シュート57は、トラフ53から棒鋼Bを落下させる。シュート57は、トラフ機構フレーム41に対して固定される。シュート57は、トラフ53が下側Z2に回動するとき(トラフ53がトラフ閉状態からトラフ開状態に変わるとき)、トラフ53内の棒鋼Bをトラフ53外に出せるように構成される。シュート57は、シュート57上を棒鋼Bが移動できるように(滑ることができるように)構成される。具体的には、シュート57は、冷却床上流側Y1から冷却床下流側Y2になるにしたがって下側Z2に下がるように傾斜する。
【0036】
棒鋼落下ガイド59は、トラフ53から落下した棒鋼Bを冷却床20に誘導する、棒鋼Bの通路(隙間)である。棒鋼落下ガイド59は、上下方向Zに延びる。棒鋼落下ガイド59は、上下方向Zに対して傾いた部分を備えてもよい。棒鋼落下ガイド59は、シュート57とつながるように(シュート57上から棒鋼落下ガイド59に棒鋼Bが移動可能に)構成される。棒鋼落下ガイド59は、受溝21の上方(真上)に配置される。棒鋼落下ガイド59の下端部(下側Z2端部)は、受溝21の近傍に配置される。例えば、棒鋼落下ガイド59と冷却床20との間を、太物の棒鋼Bが通過できない程度(但し細物の棒鋼Bが通過できる程度)まで、棒鋼落下ガイド59の下端部を受溝21の近傍に配置できる(配置しなくてもよい)。
【0037】
シフト機構60は、図1および図3に示すように、リフタ機構30に対してトラフ機構40を移動させる。シフト機構60は、トラフ使用状態(図1参照)およびトラフ退避状態(図3参照)にトラフ機構40を移動可能に構成される。シフト機構60は、トラフ機構支持フレーム11に対してトラフ機構フレーム41を移動させる。シフト機構60は、トラフ機構支持フレーム11およびトラフ機構フレーム41に取り付けられる。シフト機構60による、リフタ機構30に対するトラフ機構40の移動(移動αとする)の詳細は次の通りである。
【0038】
[移動αの方向]移動αの方向には、冷却床搬送方向Y成分が含まれる。移動αの方向は、例えば水平方向のみであり、また例えば水平方向および上下方向Zでもよい(移動αの方向には上下方向Z成分が含まれてもよい)。トラフ機構40を上側Z1に持ち上げる力が不要であるという観点から、移動αは水平方向のみであることが好ましい。
【0039】
[移動αの種類]移動αは、例えば直線移動であり、また例えば曲線移動や回転移動でもよい。シフト機構60の構成を簡易にするという観点から、移動αは直線移動であることが好ましい。
【0040】
[移動αの種類および方向]移動αは、例えば、冷却床搬送方向Y成分を含み、かつ、直線移動であり、かつ、水平方向のみである(冷却床搬送方向Y成分を含み、かつ、直線移動であり、かつ、水平方向のみの移動αを、移動βとする)。移動βは、例えば冷却床搬送方向Yのみの移動(冷却床搬送方向Yと平行)であり、また例えば冷却床搬送方向Yおよび棒鋼長手方向Xでもよい(移動βには、棒鋼長手方向X方向成分が含まれてもよい)。シフト機構60を簡易な構成にする(具体的には後述するシフトガイド63を短くするなど)という観点から、移動βは冷却床搬送方向Yのみであることが好ましい。以下では、移動αが冷却床搬送方向Yのみである場合について説明する。シフト機構60は、図6に示すシフト支持部61と、シフトガイド63と、図1に示すストッパ64と、シフト装置65と、図5に示すシフト装置駆動部67と、を備える。
【0041】
シフト支持部61は、図6に示すように、フレーム10に対してトラフ機構40を移動可能に支持する。シフト支持部61は、トラフ機構支持フレーム11に対してトラフ機構フレーム41(本体部41a)を移動可能に支持する。シフト支持部61は、例えば、フレーム側シフト支持部61aと、トラフ機構側シフト支持部61bと、を備える。フレーム側シフト支持部61aは、トラフ機構支持フレーム11の上面に固定される。フレーム側シフト支持部61aは、冷却床搬送方向Yに延びる(図1参照)。トラフ機構側シフト支持部61bは、フレーム側シフト支持部61aの上方(真上)に配置される。トラフ機構側シフト支持部61bは、フレーム側シフト支持部61aと上下方向Zに対向するように配置される。フレーム側シフト支持部61aとトラフ機構側シフト支持部61bとの間には、例えばローラ(図示なし)やスライドパッド(図示なし)などが配置されてもよい。なお、フレーム側シフト支持部61aおよびトラフ機構側シフト支持部61bのうち一方はなくてもよい。
【0042】
シフトガイド63は、リフタ機構30に対するトラフ機構40の移動をガイドする。シフトガイド63は、リフタ機構30に対するトラフ装置50の棒鋼長手方向Xへの移動を規制する。シフトガイド63は、フレーム側シフトガイド63aと、トラフ機構側シフトガイド63bと、を備える。フレーム側シフトガイド63aは、トラフ機構支持フレーム11の上面に固定される。フレーム側シフトガイド63aは、例えばフレーム側シフト支持部61aの側面(棒鋼長手方向X内側の面)である。フレーム側シフトガイド63aとフレーム側シフト支持部61aとは別個の部材でもよい(図示なし)。トラフ機構側シフトガイド63bは、トラフ機構フレーム41に対して固定される。トラフ機構側シフトガイド63bは、トラフ機構フレーム41の底面(下側Z2の面)から下側Z2に突出する。トラフ機構側シフトガイド63bは、トラフ機構側シフト支持部61bと一体的に形成される。トラフ機構側シフトガイド63bとトラフ機構側シフト支持部61bとは別個の部材でもよい(図示なし)。フレーム側シフトガイド63aおよびトラフ機構側シフトガイド63bは、それぞれ、冷却床搬送方向Yに延びる(図1参照)。フレーム側シフトガイド63aとトラフ機構側シフトガイド63bとは、棒鋼長手方向Xに対向するように配置される。
【0043】
ストッパ64は、図1に示すように、リフタ機構30に対するトラフ機構40の冷却床下流側Y2への移動を規制する。ストッパ64は、トラフ機構支持フレーム11に固定される。ストッパ64は、トラフ機構支持フレーム11の上面から上側Z1に突出する。ストッパ64は、トラフ機構40がトラフ使用状態の場合(図1に示す状態の場合)に、トラフ機構フレーム41に接触する。ストッパ64は、トラフ機構フレーム41に固定された部材(トラフ機構側シフト支持部61bなど)に接触してもよい。
【0044】
シフト装置65は、リフタ機構30に対してトラフ機構40を移動させる装置である。シフト装置65は、トラフ機構40の冷却床上流側Y1に配置される。シフト装置65は、棒鋼長手方向Xに延びるトラフ機構40を、冷却床搬送方向Yに平行移動させる。図5に示すように、シフト装置65は、複数設けられる。複数のシフト装置65は、棒鋼長手方向Xに並ぶように配置される。複数のシフト装置65は、トラフ機構40の複数の部位に取り付けられる。例えば、1つのユニット40uに対して、1つのシフト装置65が取り付けられる(1つのユニット40uに複数のシフト装置65が取り付けられてもよい)。シフト装置65は、例えばジャッキであり、例えばスクリュージャッキである。シフト装置65は、シフト装置連結シャフト67a(後述)の軸周りの回動を、冷却床搬送方向Yの直線移動に変換する。なお、シフト装置65は、シリンダなどのアクチュエータでもよい。シフト装置65は、固定部65aと、出力部65bと、を備える。固定部65aは、トラフ機構支持フレーム11に固定される。出力部65bは、固定部65aに対して冷却床搬送方向Yに移動する(駆動される)。出力部65bは、トラフ機構フレーム41(本体部41a)に取り付けられる。
【0045】
シフト装置駆動部67は、複数(例えば3つ)のシフト装置65を同期駆動させる。シフト装置駆動部67は、シフト装置連結シャフト67aと、シフトモータ67bと、を備える。シフト装置連結シャフト67aは、複数のシフト装置65どうし(固定部65aどうし)を連結する。
【0046】
シフトモータ67bは、シフト装置65を駆動する装置(シフト装置駆動装置)である。シフトモータ67bは、例えば電動モータである。1つのシフトモータ67bは、シフト装置連結シャフト67aを介して、複数(例えば3つ)のシフト装置65に駆動力を伝える。シフトモータ67bは、トラフ機構40全体に対し、複数(例えば6)設けられる。例えば、3つのユニット40u(冷却床搬送方向Yの長さ約15m)あたり、1つのシフトモータ67bが設けられるとする。また、トラフ機構40全体(冷却床搬送方向Yの全長約100m)に、ユニット40u(冷却床搬送方向Yの長さ約5m)が約20設けられるとする。この場合、トラフ機構40全体あたり、約6つのシフトモータ67bが設けられる(上記の個数や寸法は適宜変更してもよい)。これらの複数の(例えば6つの)シフトモータ67bは、同期駆動される(同時に動作する)(後述)。
【0047】
クランプ機構70(トラフ固定機構)は、図6に示すように、フレーム10に対してトラフ機構40を固定する。クランプ機構70は、トラフ機構支持フレーム11に対してトラフ機構フレーム41(本体部41a)を固定する。クランプ機構70は、フレーム10に対するトラフ機構40の振動を防ぐ。クランプ機構70は、トラフ機構40をトラフ使用状態(図1参照)およびトラフ退避状態(図3参照)に維持する。クランプ機構70は、例えば、クランプレバー70cを用いて固定対象物(トラフ機構40、被クランプ部70a)を固定する、レバー式である。クランプ機構70は、例えば、バネ70dを用いて固定対象物を固定する、バネクランプである。クランプ機構70は、被クランプ部70aと、レバー支持部70bと、クランプレバー70cと、バネ70dと、油圧シリンダ70eと、を備える。
【0048】
被クランプ部70aは、トラフ機構支持フレーム11に固定される。被クランプ部70aは、クランプレバー70cが接触可能に構成される。被クランプ部70aは、トラフ機構支持フレーム11の棒鋼長手方向X端部よりも、棒鋼長手方向X外側に突出する。被クランプ部70aは、例えば板状である。被クランプ部70aは、フレーム側シフト支持部61aと一体的に構成される。被クランプ部70aは、トラフ機構側シフトガイド63bと一体的に構成される。被クランプ部70aは、フレーム側シフト支持部61aやトラフ機構側シフトガイド63bとは別個の部材でもよい。レバー支持部70bは、トラフ機構フレーム41に固定される。レバー支持部70bは、連結部41eまたはクランプ取付部41f(図5参照)に固定される。クランプレバー70cは、レバー支持部70bに対して移動(例えば回動)可能である。クランプレバー70cは、被クランプ部70aに接触可能である。バネ70dは、クランプレバー70cが被クランプ部70aを押し付ける向きに、クランプレバー70cを付勢する。バネ70dは、例えば複数のサラバネを重ね合わせたものなどである(図示しないコイルバネなどでもよい)。油圧シリンダ70eは、レバー支持部70bに対してクランプレバー70cを移動させるアクチュエータである(クランプレバー駆動アクチュエータである)。
【0049】
(動作)
図1に示す棒鋼受け渡し装置1の動作を説明する。以下、リフタ機構30の動作と、トラフ機構40の動作と、シフト機構60の動作と、クランプ機構70の動作と、について説明する。
【0050】
(リフタ機構30の動作)
図3に示すリフタ機構30の動作は次の[動作A1]〜[動作A6]の通りである。[動作A1]太物の棒鋼Bが、棒鋼圧延装置(図示なし)からローラテーブル31上に渡される。[動作A2]ローラ31aを回転駆動させることにより、棒鋼Bは、ローラテーブル31上を棒鋼長手方向Xに移動する。[動作A3]ローラ31aの駆動を止めることで、棒鋼Bは、ローラテーブル31上を自然滑走する。その結果、棒鋼長手方向Xへの棒鋼Bの移動が停止する。[動作A4]棒鋼Bは、ローラテーブル31の上面から、下側Z2に下げられた状態のリフタ37(図3において実線で示すリフタ37参照)の上面に移動する。[動作A5]リフタ37が上側Z1に上げられる(図3において二点鎖線で示すリフタ37参照)。[動作A6]棒鋼Bは、リフタ37の上面から受溝21に移動する。上記[動作A1]〜[動作A6]のように、リフタ機構30を用いて棒鋼Bの受け渡しを行う場合、トラフ機構40を用いる場合に比べ、棒鋼B(製品)にキズが付き難く、品質面で有利である。
【0051】
(トラフ機構40の動作)
図2に示すトラフ機構40の動作は次の[動作B1]〜[動作B7]の通りである。[動作B1]細物の棒鋼Bが、棒鋼圧延装置(図示なし)からトラフ閉状態のトラフ53(空間53s)に渡される(誘導される)。[動作B2]上記[動作B1]のとき、例えば複数本の棒鋼Bそれぞれが別個のトラフ53に渡される。このとき、例えば棒鋼Bの径の太さに応じて、渡されるトラフ53が選択される。なお、上記[動作B1]のとき、1本のみの棒鋼Bが1つのみのトラフ53に渡されてもよい。[動作B3]棒鋼Bは、空間53s内を棒鋼長手方向Xに移動する。ここで、細物の棒鋼Bの圧延速度は、太物の棒鋼Bの圧延速度よりも高速である。そのため、細物の棒鋼Bをローラテーブル31上で移動させた場合、棒鋼Bがローラテーブル31に対して飛び跳ねたり飛び出たりするおそれがある。そこで、細物の棒鋼Bを空間53s内で移動させる。これにより、太物の棒鋼Bに比べて高速の圧延速度に対応できる(トラフ53が棒鋼Bを適切に受け取ることができる)。[動作B4]図示しないピンチローラおよびブレーキにより、棒鋼Bの棒鋼長手方向Xの移動を減速および停止させる。[動作B5]トラフ駆動部55が駆動することにより、トラフ53がトラフ開状態となる。[動作B6]棒鋼Bは、トラフ53からシュート57上に乗り移る。[動作B7]棒鋼Bは、シュート57上を移動し、棒鋼落下ガイド59を通り、受溝21に落下する。上記[動作B5]〜[動作B7]は、トラフ53から棒鋼Bが1本ずつ落下するように行われる。例えば、トラフ装置50が複数設けられる場合、トラフ装置50を1つずつ駆動させる。また例えば、1本のトラフ駆動アーム55eに複数(例えば2つ)のトラフ53が取り付けられる場合、トラフ駆動アーム55eを複数段階(例えば2段階)に回動させる(ダブルアクションを行う)ことで、棒鋼Bを1本ずつ落下させる。
【0052】
(シフト機構60の動作)
図1および図3に示すシフト機構60の動作は次の通りである。上記のように、シフト機構60は、トラフ使用状態(図1参照)およびトラフ退避状態(図3参照)にトラフ機構40を移動可能に構成される。
【0053】
図1に示すトラフ使用状態は、トラフ機構40が使用可能な状態(トラフ機構40で棒鋼Bの受け渡しができる状態)である。トラフ使用状態のとき、リフタ37の上方(真上)にトラフ機構40が配置される。トラフ使用状態のとき、リフタ37の上方(または略上方)にトラフ53が配置される。トラフ使用状態のとき、受溝21の上方に棒鋼落下ガイド59が配置される。
【0054】
図3に示すトラフ退避状態は、リフタ機構30に対してトラフ機構40を退避させた状態である。トラフ退避状態は、リフタ機構30の使用時や、リフタ機構30のメンテナンス時などに採られる状態である。トラフ退避状態は、少なくとも「状態C1」(後述)であり、好ましくは「状態C2」(後述)であり、「状態C3」(後述)でもよい。
【0055】
状態C1(トラフ退避状態)は、リフタ37の上方(真上)が開放された状態である。さらに詳しくは、状態C1は、リフタ37の上面の上方の領域D1が開放された状態である。なお、図3では、各領域(領域D1、後述する領域D2、および後述する領域D3)の境界どうしを区別しやすくするために、各境界を模式的に示した(各境界を表す破線を、各境界の実際の位置に対してわずかにずらした)。状態C1のとき、領域D1よりも冷却床上流側Y1に、前面部41bの冷却床下流側Y2の面が配置される。領域D1には上端部(上側Z1端部)がある。領域D1の上端部よりも上側Z1には、物(例えば前面部支持部41c、特に突出部41d)が配置されてもよい。領域D1の上端部は、リフタ37から十分離れた位置(後述する「(効果1)」を奏する程度に十分離れた位置)に設定される。具体的には例えば、領域D1の上端部の高さ位置(上下方向Zにおける位置)は、上蓋51の上端部の高さ位置と同じである。さらに詳しくは、領域D1の上端部の高さ位置は、トラフ使用状態(図1参照)のときのリフタ37の上方(真上)における、トラフ装置50の上端部(上蓋51の上端部)の高さ位置である。なお、領域D1の上端部の高さ位置は、図2に示すアーム支持軸55fの上端部の高さ位置と同じでもよく、トラフ駆動アーム55eの上端部の高さ位置と同じでもよい。また、領域D1の上端部の高さ位置は、ラインシャフト55cの上端部の高さ位置と同じでもよく、トラフ駆動レバー55bの上端部の高さ位置と同じでもよい(後述する領域D2および領域D3の場合も同様)。
【0056】
状態C2(トラフ退避状態)は、図3に示すように、リフタ37の上方およびローラテーブル31の上方(真上)が開放された状態である。さらに詳しくは、状態C2は、リフタ37の上面と、ローラテーブル31の上面と、の上方の領域D2が開放された状態である。状態C2のとき、領域D2よりも冷却床上流側Y1に、前面部41bの冷却床下流側Y2の面が配置される。領域D2には上端部(上側Z1端部)がある。領域D2の上端部よりも上側Z1には、物(例えば前面部支持部41c、特に突出部41d)が配置されてもよい。領域D2の上端部は、リフタ37およびローラテーブル31から十分離れた位置(後述する「(効果2)」を奏する程度に十分離れた位置)に設定される。具体的には例えば、領域D2の上端部の高さ位置は、トラフ駆動アーム55eの上端部の高さ位置と同じである。さらに詳しくは、領域D2の上端部の高さ位置は、トラフ使用状態(図1参照)のときのリフタ37およびローラテーブル31の上方(真上)における、トラフ装置50の上端部(トラフ駆動アーム55eの上端部)の高さ位置である。
【0057】
状態C3(トラフ退避状態)は、リフタ37の上方、ローラテーブル31の上方、および、ローラ上流側壁部33の上方(真上)、が開放された状態である。さらに詳しくは、状態C3は、リフタ37の上面と、ローラテーブル31の上面と、ローラ上流側壁部33の上面と、の上方の領域D3が開放された状態である。状態C3のとき、領域D3よりも冷却床上流側Y1に、前面部41bの冷却床下流側Y2の面が配置される。領域D3には上端部(上側Z1端部)がある。領域D3の上端部よりも上側Z1には、物(例えば前面部支持部41c、特に突出部41d)が配置されてもよい。領域D3の上端部は、リフタ37、ローラテーブル31、およびローラ上流側壁部33から十分離れた位置に設定される。具体的には例えば、領域D3の上端部の高さ位置は、トラフ駆動アーム55eの上端部の高さ位置と同じである。さらに詳しくは、領域D3の上端部の高さ位置は、トラフ使用状態(図1参照)のときのリフタ37、ローラテーブル31、およびローラ上流側壁部33の上方(真上)における、トラフ装置50の上端部(トラフ駆動アーム55eの上端部)の高さ位置である。
【0058】
シフト機構60等は、次の[動作E1]〜[動作E4]のように動作(駆動)する。[動作E1]上記のように、複数(例えば6つ)のシフトモータ67b(図5参照)を同期駆動させる。[動作E2]図5に示すシフトモータ67bの駆動力は、シフト装置連結シャフト67aにより複数のシフト装置65に同時に伝わる。その結果、複数のシフト装置65が同期駆動する。[動作E3]その結果、各ユニット40uが同時に冷却床搬送方向Yに移動する。その結果、トラフ機構40全体が冷却床搬送方向Yに平行移動する。[動作E4]上記[動作E3]の際、理想的には、複数のユニット40uは、棒鋼長手方向Xに直線状に並んで冷却床搬送方向Yに移動する。しかし、実際には、複数のユニット40uどうしが冷却床搬送方向Yにわずかにずれる場合がある。その結果、図4に示す複数のユニット40uにわたって設けられたラインシャフト55cが曲がる。しかし、ラインシャフト55cにはフレキシブルジョイント55cjが設けられている。よって、複数のユニット40uどうしが冷却床搬送方向Yにずれても、ラインシャフト55cを適切に軸周りに回転させることができる。
【0059】
(クランプ機構の動作)
図6に示すクランプ機構70の動作には、トラフ機構固定時の動作と、トラフ機構シフト時の動作と、がある。トラフ機構固定時とは、トラフ機構40がフレーム10に対して固定される時である。トラフ機構シフト時とは、トラフ機構40がフレーム10に対して(リフタ機構30に対して)移動する時である。
【0060】
トラフ機構固定時のクランプ機構70の動作は次の通りである。油圧シリンダ70eの油圧を所定値未満とする(例えば油圧をかけない)。その結果、バネ70dの付勢力により、クランプレバー70cが被クランプ部70aに押し付けられる。その結果、トラフ機構支持フレーム11に対して、トラフ機構フレーム41が固定される。この固定により、フレーム10に対するトラフ機構40の振動を防ぐことができる。
【0061】
トラフ機構シフト時のクランプ機構70の動作は、次の通りである。油圧シリンダ70eに所定値以上の油圧がかけられる。その結果、油圧シリンダ70eは、クランプレバー70cが被クランプ部70aから離れる向きに、クランプレバー70cを移動させる。このとき油圧シリンダ70eは、バネ70dの付勢力と反対向きに(例えばバネ70dを圧縮させる向きに)、クランプレバー70cを移動させる。その結果、クランプレバー70cが被クランプ部70aから離れる。その結果、フレーム10に対して(リフタ機構30(図1参照)に対して)、トラフ機構40が移動可能となる。
【0062】
(効果1)
図1に示す棒鋼受け渡し装置1による効果を説明する。棒鋼受け渡し装置1は、棒鋼Bを冷却する冷却床20と、リフタ機構30と、トラフ機構40と、シフト機構60と、を備える。リフタ機構30は、棒鋼Bを搬送するためのローラテーブル31、および、ローラテーブル31から冷却床20に棒鋼Bを受け渡すためのリフタ37を備える。トラフ機構40は、棒鋼Bを落下させるためのトラフ53、および、トラフ53から落下した棒鋼Bを冷却床20に誘導するための棒鋼落下ガイド59を備える。
[構成1−1]図1および図3に示すように、シフト機構60は、リフタ機構30に対してトラフ機構40を移動可能に構成される。
[構成1−2]図1に示すように、シフト機構60は、リフタ37の上方にトラフ機構40が配置された状態(図1参照)に、トラフ機構40を移動可能に構成される。
[構成1−3]図3に示すように、シフト機構60は、少なくともリフタ37の上方(領域D1)が開放された状態に、トラフ機構40を移動可能に構成される。
【0063】
上記[構成1−1]および[構成1−3]により、図3に示すリフタ37の上方を開放させることができる。よって、リフタ37のメンテナンスを容易に行える。また、上記[構成1−1]および[構成1−3]により、リフタ機構30使用時(リフタ機構30を用いて棒鋼Bの受け渡しをする時)にリフタ37の上方を開放させることができる。よって、棒鋼受け渡し装置1は、次の[効果1−1]〜[効果1−3]を奏する。[効果1−1]リフタ機構30使用時にローラテーブル31内で棒鋼Bが正常に搬送されない状況が発生した場合でも、トラフ機構40の損傷を抑制できる。[効果1−2]リフタ機構30使用時にローラテーブル31内で棒鋼Bが正常に搬送されない状況が発生した場合でも、材料(搬送トラブルが生じた棒鋼B)を容易に取り出せる。[効果1−3]リフタ機構30から冷却床20に受け渡される棒鋼Bが、棒鋼落下ガイド59(図1参照)に干渉することがない。この干渉が生じないので、リフタ37から冷却床20に受け渡される棒鋼Bの径(最大製品サイズ)によって、棒鋼落下ガイド59(図1参照)の下端部の位置が制限されることがない。よって、図1に示すようにリフタ37の上方にトラフ機構40が配置された状態のとき([構成1−2]参照、トラフ使用状態のとき)、棒鋼落下ガイド59を、冷却床20のより近くに配置できる(従来よりも棒鋼落下ガイド59を下側Z2に延ばせる)。よって、棒鋼落下ガイド59の落下誘導性を向上させることができる。具体的には、トラフ機構40使用時(トラフ機構40を用いて棒鋼Bの受け渡しをする時)に、棒鋼Bを冷却床20に適切に誘導できる。その結果、冷却床20での棒鋼Bの溝移りを抑制できる。その結果、棒鋼Bが溝移りすることによって生じる棒鋼Bの品質の悪化(棒鋼Bが曲がるなど)を抑制できる。
【0064】
(効果2)
[構成2]図3に示すように、シフト機構60は、リフタ37の上方(領域D1)およびローラテーブル31の上方(領域D2)が開放された状態に、リフタ機構30に対してトラフ機構40を移動可能に構成される。
【0065】
上記[構成1−1]および[構成2]により、ローラテーブル31の上方を開放させることができる。よって、ローラテーブル31のメンテナンスを容易に行える。また、リフタ機構30使用時にローラテーブル31の上方を開放させた場合、ローラテーブル31上の棒鋼Bから、トラフ機構40に輻射熱が伝わりにくい。よって、この輻射熱によって生じるトラフ機構40の損傷を抑制できる。その結果、トラフ機構40の寿命を延ばすことができる。また、この損傷により必要となるトラフ機構40の保守作業を減らす(保守性を向上させる)ことができる。
【0066】
(効果3)
[構成3]シフト機構60によるトラフ機構40の移動は、冷却床搬送方向Y成分(冷却床20での棒鋼Bの搬送方向成分)を含む直線移動である。
【0067】
上記[構成3]により、シフト機構60がトラフ機構40を曲線移動させる場合や回転移動させる場合に比べ、簡易なシフト機構60の構成でトラフ機構40を移動させることができる。
【0068】
(効果4)
[構成4]シフト機構60によるトラフ機構40の移動は、冷却床搬送方向Y成分(冷却床20での棒鋼Bの搬送方向成分)を含む水平方向のみである。
【0069】
上記[構成4]では、シフト機構60がトラフ機構40を上側Z1に持ち上げる力が不要なので、シフト機構60を動作させるのに必要なエネルギー量を抑制できる。
【0070】
(効果5)
図5に示すように、トラフ機構40は、棒鋼長手方向X(棒鋼Bの長手方向)に延びるように構成される。シフト機構60は、複数のシフト装置65を備える。
[構成5]複数のシフト装置65は、棒鋼長手方向Xに並ぶように配置され、かつ、トラフ機構40の複数の部位に取り付けられる。
【0071】
上記[構成5]により、棒鋼長手方向Xに延びるトラフ機構40を平行移動させやすい(1つのシフト装置65のみでトラフ機構40を移動させる場合や、複数のシフト装置65が棒鋼長手方向Xに並んでいない場合と比べたとき)。
【0072】
(効果6)
[構成6]シフト機構60は、複数のシフト装置65を同期駆動させるシフト装置駆動部67を備える。
【0073】
上記[構成6]により、棒鋼長手方向Xに延びるトラフ機構40をより確実に平行移動させることができる。その結果、トラフ機構40が備えるラインシャフト55cも、平行移動させることができる。よって、シフト機構60によりトラフ機構40を移動させるとき(移動の前や後)に、ラインシャフト55cどうしの結合(棒鋼長手方向Xの結合)を脱着する作業を行う必要がない。
【符号の説明】
【0074】
1 棒鋼受け渡し装置
20 冷却床
30 リフタ機構
31 ローラテーブル
37 リフタ
40 トラフ機構
53 トラフ
59 棒鋼落下ガイド
60 シフト機構
63 シフト装置
65 シフト装置駆動部
B 棒鋼
図1
図2
図3
図4
図5
図6