特許第6193208号(P6193208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6193208-溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193208
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/16 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   C23C2/16
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-254503(P2014-254503)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2015-134961(P2015-134961A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年8月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-260697(P2013-260697)
(32)【優先日】2013年12月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】714003416
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】三尾野 忠昭
(72)【発明者】
【氏名】鴨志田 真一
(72)【発明者】
【氏名】服部 保徳
(72)【発明者】
【氏名】清水 剛
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−185355(JP,A)
【文献】 実開昭51−093815(JP,U)
【文献】 特公昭36−011211(JP,B1)
【文献】 特開平06−235086(JP,A)
【文献】 特公昭50−029427(JP,B1)
【文献】 特開平04−308071(JP,A)
【文献】 特公昭45−037842(JP,B1)
【文献】 国際公開第2013/080910(WO,A1)
【文献】 米国特許第02914423(US,A)
【文献】 特公昭39−009455(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00−2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融アルミニウムめっき浴に鋼線を浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から鋼線を連続して引き上げることによって溶融アルミニウムめっき鋼線を製造する方法であって、前記鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から引き上げる際に、鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部で浴面および鋼線に安定化部材を接触させ、当該鋼線から1〜50mmの距離で離れた箇所にノズルの先端が位置するように先端の内径が1〜15mmのノズルを配設し、当該ノズルの先端から200〜800℃の温度を有する不活性ガスを2〜200L/minの体積流量で鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部に向けて吹き付けることを特徴とする溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、自動車のワイヤーハーネスなどに好適に使用することができる溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法に関する。
【0002】
なお、本明細書において、溶融アルミニウムめっき鋼線は、溶融アルミニウムめっき浴に鋼線を浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から鋼線を連続して引き上げることによってアルミニウムめっきが施された鋼線を意味する。
【背景技術】
【0003】
自動車のワイヤーハーネスなどに用いられる電線には、従来、銅線が用いられている。しかし、近年、軽量化が要求されていることから、銅線よりも軽量である金属線が用いられた電線の開発が望まれている。銅線よりも軽量化が図られた金属線として、鋼芯線に溶融アルミニウムめっきが施された溶融Alめっき鋼線が提案されている(例えば、特許文献1の請求項1参照)。
【0004】
前記溶融Alめっき鋼線は、鋼芯線からなる素材鋼線または当該鋼芯線の表面に亜鉛めっき層またはニッケルめっき層を有するめっき鋼線からなる素材鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させた後、気相空間に連続して引き上げる方法により、製造されている(例えば、特許文献1の段落[0024]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−185355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記方法では、素材鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させた後、気相空間に連続して引き上げる際の速度が高いとき(例えば、素材鋼線の引き上げ速度が200m/min以上であるとき)、めっき浴の浴面が小さく振動する現象(脈動現象)が起こり、メニスカスの大きさが変動することから、めっき浴から引き上げられた素材鋼線に付着している凝固前のめっき浴の垂れ落ち具合が変動し、得られる溶融Alめっき鋼線の線径が不均一になることがある。
【0007】
また、前記方法では、素材鋼線に溶融アルミニウムめっきを施す際に、鋼線の表面にアルミニウム塊が付着することがある。当該アルミニウム塊が付着しためっき鋼線に次工程のダイスを用いた伸線加工を施した場合には、初段のダイスにめっき鋼線を通したときに当該めっき鋼線が破断するおそれがある。
【0008】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、線径が均一であり、表面にアルミニウム塊が付着し難い溶融アルミニウムめっき鋼線を効率よく製造することができる溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、溶融アルミニウムめっき浴に鋼線を浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から鋼線を連続して引き上げることによって溶融アルミニウムめっき鋼線を製造する方法であって、前記鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から引き上げる際に、鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部で浴面および鋼線に安定化部材を接触させ、当該鋼線から1〜50mmの距離で離れた箇所にノズルの先端が位置するように先端の内径が1〜15mmのノズルを配設し、当該ノズルの先端から200〜800℃の温度を有する不活性ガスを2〜200L/minの体積流量で鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部に向けて吹き付けることを特徴とする溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法によれば、線径が均一であり、表面にアルミニウム塊が付着し難い溶融アルミニウムめっき鋼線を効率よく製造することができるという優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法の一実施態様を示す概略断面図である。
図2】本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法において、鋼線を溶融アルミニウムめっき浴から引き上げる際の鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法は、前記したように、溶融アルミニウムめっき浴に鋼線を浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から鋼線を連続して引き上げることによって溶融アルミニウムめっき鋼線を製造する方法であり、前記鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴から引き上げる際に、鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部で浴面および鋼線に安定化部材を接触させ、当該鋼線から1〜50mmの距離で離れた箇所にノズルの先端が位置するように先端の内径が1〜15mmのノズルを配設し、当該ノズルの先端から200〜800℃の温度を有する不活性ガスを2〜200L/minの体積流量で鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部に向けて吹き付けることを特徴とする。
【0013】
本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法によれば、前記操作が採られているので、線径が均一であり、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線を効率よく製造することができる。
【0014】
以下に、本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法を図面に基づいて説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施態様のみに限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法の一実施態様を示す概略断面図である。また、図2は、本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法において、鋼線を溶融アルミニウムめっき浴から引き上げる際の鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部の概略断面図である。
【0016】
本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法では、溶融アルミニウムめっき浴1に鋼線2を浸漬させた後、当該溶融アルミニウムめっき浴1から鋼線2を連続して引き上げることにより、溶融アルミニウムめっき鋼線3が製造される。
【0017】
鋼線2を構成する鋼材としては、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0018】
ステンレス鋼は、クロム(Cr)を10質量%以上含有する合金鋼である。ステンレス鋼としては、例えば、JIS G4309に規定されているオーステナイト系の鋼材、フェライト系の鋼材、マルテンサイト系の鋼材などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ステンレス鋼の具体例としては、SUS301、SUS304などの一般にオーステナイト相が準安定であるとされるステンレス鋼;SUS305、SUS310、SUS316などの安定オーステナイト系ステンレス鋼;SUS405、SUS410、SUS429、SUS430、SUS434、SUS436、SUS444、SUS447などのフェライト系ステンレス鋼;SUS403、SUS410、SUS416、SUS420、SUS431、SUS440などのマルテンサイト系ステンレス鋼などをはじめ、SUS200番台に分類されるクロム−ニッケル−マンガン系のステンレス鋼などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0019】
炭素鋼は、炭素(C)を0.02質量%以上含有する鋼材である。炭素鋼としては、例えば、例えば、JIS G3560の硬鋼線材、JIS G3505の軟鋼線材の規格に規定される鋼材などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素鋼の具体例としては、硬鋼、軟鋼などが挙げられるが、本発明は、かかる例示にのみ限定されるものではない。
【0020】
前記鋼材のなかでは、溶融アルミニウムめっき鋼線3の引張強度を高める観点から、ステンレス鋼および炭素鋼が好ましい。
【0021】
鋼線2の直径は、特に限定されず、溶融アルミニウムめっき鋼線3の用途に応じて適宜調整することが好ましい。例えば、溶融アルミニウムめっき鋼線3を自動車のワイヤーハーネスなどの用途に用いる場合には、鋼線2の直径は、通常、0.05〜0.5mm程度であることが好ましい。
【0022】
溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面には、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる被膜(図示せず)が形成されている。本発明においては、このように溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面上にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる被膜が形成されているので、溶融アルミニウムめっき鋼線3は、アルミニウム素線との密着性に優れ、引張強度および電気抵抗の経時的安定性にも優れている。
【0023】
図1において、鋼線2は、当該鋼線2の送出装置4から送り出され、矢印A方向に連続的に搬送され、めっき浴槽5内の溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬される。溶融アルミニウムめっき浴1に浸漬された鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1の浴面6から鉛直上方に引き上げることにより、鋼線2の表面に溶融アルミニウムめっき浴1が付着した溶融アルミニウムめっき鋼線3が得られる。
【0024】
溶融アルミニウムめっき浴1には、アルミニウムのみが用いられていてもよく、必要により、本発明の目的を阻害しない範囲内で他の元素が含有されていてもよい。
【0025】
前記他の元素としては、例えば、ニッケル、クロム、亜鉛、ケイ素、銅、鉄などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの他の元素をアルミニウムに含有させた場合には、被膜の機械的強度を高めることができ、ひいては溶融アルミニウムめっき鋼線3の引張強度を高めることができる。前記他の元素のなかでは、鋼線の種類にもよるが、鋼線に含まれている鉄と被膜に含まれているアルミニウムとの間で脆性を有する鉄−アルミニウム合金層の生成を抑制し、めっき被膜の機械的強度を高めるとともに、溶融アルミニウムめっき浴1の融点を低下させることにより、鋼線2を効率よくめっきさせる観点から、ケイ素が好ましい。
【0026】
被膜における前記他の元素の含有率の下限値は、0質量%であるが、当該他の元素が有する性質を十分に発現させる観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、アルミニウム素線との接触による電位差腐食を抑制する観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0027】
なお、溶融アルミニウムめっき浴1には、Fe、Cr、Ni、Zn、Cuなどの元素が不可避的に混入することがある。
【0028】
鋼線2を溶融アルミニウムめっき浴1から引き上げる際には、図2に示されるように、当該鋼線2と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面6との境界部で鋼線2に安定化部材7を接触させる。
【0029】
安定化部材7としては、例えば、表面に耐熱クロス材が巻かれたステンレス鋼製の角棒などが挙げられる。安定化部材7に巻かれている耐熱クロスは、溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面にアルミニウム塊が付着することを抑制する観点から、当該安定化部材7の新しい面(新生面)を鋼線2と接触させることが好ましい。安定化部材7の新しい面(新生面)は、例えば、耐熱クロスがあらかじめ巻回されている安定化部材7を用い、安定化部材7を鋼線2と接触させながら、鋼線2を引き上げているときに、当該耐熱クロスを順次巻き取ることによって形成させることができる。
【0030】
安定化部材7は、溶融アルミニウムめっき浴1の浴面6と鋼線2との双方に同時に接触させることが好ましい。このように安定化部材7を溶融アルミニウムめっき浴1の浴面6と鋼線2との双方に同時に接触させた場合には、溶融アルミニウムめっき浴1の浴面6の脈動が抑制され、鋼線2を安定化部材7と接触させた状態で引き上げた際に鋼線2が微小振動することが抑制され、ひいては鋼線2の表面に溶融アルミニウムめっき浴1の被膜を均一に形成させることができる。なお、安定化部材7を鋼線2に接触させる際には、鋼線2が微小振動することを抑制する観点から、必要により、鋼線2に張力が加わるようにするために安定化部材7を鋼線2に軽く押し付けてもよい。
【0031】
図1に示される実施態様では、鋼線2と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面6との境界部に向けて不活性ガスを吹き付けるためのノズル8が設けられている。不活性ガスは、例えば、不活性ガス供給装置9から配管10を介してノズル8に供給することができる。なお、不活性ガス供給装置9内または配管10に不活性ガスの流量を調整するために、例えば、バルブなどの流量制御装置(図示せず)が設けられていてもよい。
【0032】
本発明においては、鋼線2からノズル8の先端8aまでの距離(最短距離)およびノズル8の先端8aから吐出される不活性ガスの温度が適切に制御されているとともに、ノズル8の先端の内径と当該ノズル8から吐出される不活性ガスの体積流量が適切に制御されていることから、線径が均一であり、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造することができる。
【0033】
ノズル8の先端の内径は、当該ノズル8の先端8aから吐出された不活性ガスを的確に鋼線2と溶融アルミニウムめっき浴1の浴面6との境界部に吹き付けることにより、溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、1mm以上、好ましくは2mm以上であり、線径が均一であり、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、15mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。
【0034】
鋼線2からノズル8の先端8aまでの距離(最短距離)は、鋼線2との接触を回避し、溶融アルミニウムめっき鋼線3を効率よく製造する観点から、1mm以上であり、線径が均一であり、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、50mm以下、好ましくは40mm以下、より好ましくは30mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
【0035】
不活性ガスは、溶融しているアルミニウムに対して不活性であるガスを意味する。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。不活性ガスのなかでは、窒素ガスが好ましい。なお、不活性ガスには、本発明の目的を阻害しない範囲内で、例えば、酸素ガス、炭酸ガスなどが含まれていてもよい。
【0036】
ノズル8の先端8aから吐出される不活性ガスの体積流量は、線径が均一であり、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、2L(リットル)/min以上、好ましくは5L/min以上、より好ましくは10L/min以上であり、溶融アルミニウムめっき浴1の飛散によって溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面にアルミニウム塊が付着することを抑制する観点から、200L/min以下、好ましくは150L/min以下、より好ましくは100L/min以下である。
【0037】
ノズル8の先端8aから吐出される不活性ガスの温度は、線径が均一であり、表面にアルミニウム塊がほとんど付着しない溶融アルミニウムめっき鋼線3を得る観点から、200℃以上、好ましくは300℃以上、より好ましくは400℃以上であり、あまりにも高い場合には熱効率が低下することから、800℃以下、好ましくは780℃以下、より好ましくは750℃以下である。なお、ノズル8の先端8aから吐出される不活性ガスの温度は、ノズル8の先端8aから吐出されるノズル8の先端8a部における不活性ガスのなかに測温用熱電対を差し込むことによって測定したときの値である。
【0038】
溶融アルミニウムめっき浴1の浴面6から溶融アルミニウムめっき鋼線3を引き上げる際の引き上げ速度は、特に限定されず、当該引き上げ速度を適宜調整することにより、溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面に存在している溶融アルミニウムめっき被膜の平均厚さを調整することができることから、当該溶融アルミニウムめっき被膜の平均厚さに応じて適宜調整することが好ましい。
【0039】
なお、本発明によれば、前記引き上げ速度を200m/min以上という高速にした場合であっても、線径が均一である溶融アルミニウムめっき鋼線3を得ることができる。したがって、本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法は、引き上げ速度を高くすることによって効率よく溶融アルミニウムめっき鋼線3を製造することができることから、溶融アルミニウムめっき鋼線3の工業的生産性に優れている。
【0040】
なお、溶融アルミニウムめっき鋼線3が引き上げられる過程で冷却し、表面に形成されているアルミニウムめっき被膜を効率よく凝固させるために、図1に示されるように、必要により、冷却装置11が配設されていてもよい。冷却装置11では、溶融アルミニウムめっき鋼線3に、例えば、ガス、液体のミストなどを吹き付けることにより、当該溶融アルミニウムめっき鋼線3を冷却することができる。
【0041】
以上のようにして製造された溶融アルミニウムめっき鋼線3は、例えば、巻取装置12などで回収することができる。
【0042】
溶融アルミニウムめっき鋼線3の表面に存在している溶融アルミニウムめっき被膜の平均厚さは、撚り線加工、かしめ加工などの際に素地の鋼線2が露出することを抑制するとともに、単位線径あたりの機械的強度を高める観点から、5〜10μm程度であることが好ましい。
【0043】
なお、溶融アルミニウムめっき鋼線3の鋼線2と溶融アルミニウムめっき被膜との間に中間層としてめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属としては、例えば、亜鉛、ニッケル、クロム、これらの合金などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、溶融アルミニウムめっき被膜は、1層のみで形成されていてもよく、同一または異なる金属からなる複数のめっき皮膜が形成されていてもよい。
【0044】
前記で得られた溶融アルミニウムめっき鋼線3には、必要により、所望の線径を有するようにするために、ダイスなどを用いて伸線加工を施してもよい。
【0045】
本発明の溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法によって得られた溶融アルミニウムめっき鋼線は、例えば、自動車のワイヤーハーネスなどに好適に使用することができる。
【実施例】
【0046】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
実施例1〜50および比較例1〜8
溶融アルミニウムめっき鋼線の製造は、図1に示された実施態様に基づいて行なった。
【0048】
鋼線として、表1〜3に示す線径を有し、炭素を0.37質量%含有する硬鋼からなる鋼線を用い、当該鋼線の表面にめっき処理を施していないもの(表1〜3の「プレめっき」の欄に「なし」と表記)、平均厚さが5μm以下の亜鉛めっき被膜を有するもの(表1〜3の「プレめっき」の欄に「Zn」と表記)または平均厚さが5μm以下のニッケルめっき被膜を有するもの(表1〜3の「プレめっき」の欄に「Ni」と表記)を用いた。また、表1〜3において、鋼線の表面に還元処理を施したものには「あり」を、鋼線の表面に還元処理を施していないものには「なし」を表記した。
【0049】
溶融アルミニウムめっき浴として、溶融アルミニウムめっき浴(アルミニウムの純度:99.7%以上、表1〜3の「種類」の欄に「Al」と表記)、4質量%のケイ素を含有する溶融アルミニウムめっき浴:表1〜3の「種類」の欄に「Al−1」と表記)または11質量%のケイ素を含有する溶融アルミニウムめっき浴:表1〜3の「種類」の欄に「Al−2」と表記)を用い、表1〜3に示す浴温で表1〜3に示すライン速度(鋼線の引き上げ速度)にて鋼線を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬した後、当該めっき浴から引き上げた。その際、鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部で浴面および鋼線に安定化部材(表面に耐熱クロス材が巻かれたステンレス鋼製の角棒)を接触させたときには表1〜3の「安定化材の有無」の欄に「あり」を表記し、当該安定化部材を接触させなかったときには表1〜3の「安定化材の有無」の欄に「なし」を表記した。
【0050】
また、前記鋼線から表1〜3に示す距離(最短距離)で離れた箇所にノズルの先端が位置するように、表1〜3に示す先端の内径を有するノズルを配設し、当該ノズルの先端から表1〜3に示す温度を有する不活性ガス(窒素ガス)を表1〜3に示す体積流量で鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部に向けて吹き付けた。
【0051】
以上の操作を行なうことにより、表1〜3に示す平均厚さのめっき被膜を有する溶融アルミニウムめっき鋼線を得た。なお、めっき被膜の厚さは、長さが100mmの溶融アルミニウムめっき鋼線の任意の5カ所を光学式外径測定器〔(株)キーエンス製、品番:LS−7000〕を用いて0.1mm間隔で測定し、測定されたアルミニウム被覆素線の線径の平均値からアルミニウム被膜を形成する前の線径を減算することによって求めた。
【0052】
次に、前記溶融アルミニウムめっき鋼線3000mを連続して製造した後、前記溶融アルミニウムめっき鋼線を製造する際の操作性、および当該溶融アルミニウムめっき鋼線の性能としてめっき被膜の均一性およびアルミニウム塊の有無を以下の方法に基づいて調べることにより、溶融アルミニウムめっき鋼線の製造方法を評価した。その結果を表1〜3に併記する。
【0053】
(1)操作性
ノズルの先端から不活性ガスを鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部に向けて吹き付ける際の操作性を以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
○:不活性ガスを鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部に向けて吹き付ける際に、不活性ガスをノズルの先端から的確に吹き付けることが容易である。
×:不活性ガスを鋼線と溶融アルミニウムめっき浴の浴面との境界部に向けて吹き付ける際に、不活性ガスをノズルの先端から的確に吹き付けることが容易ではない。
【0054】
(2)めっき被膜の均一性
長さが500mmの溶融アルミニウムめっき鋼線の任意の5カ所を光学式外径測定器〔(株)キーエンス製、品番:LS−7000〕を用いて0.1mm間隔でめっき被膜の厚さを測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
○:(平均径−最小径)/平均径の値が0.10以下である。
×:(平均径−最小径)/平均径の値が0.10を超える。
【0055】
(3)アルミニウム塊の有無
溶融アルミめっき鋼線を線速100m/minにて3000m走行させ、当該溶融アルミめっき鋼線の全長にわたって溶融アルミめっき鋼線の外径を測定し、局部的に外径が大きくなっている部分の有無を調べた。局部的に外径が大きい部分にアルミニウムの塊が付着しているかどうかを目視で観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。なお、溶融アルミめっき鋼線の外径は、光学式外径測定器〔(株)キーエンス製、品番:LS−7000〕を用いて測定した。
〔評価基準〕
○:アルミニウム塊が認められない。
×:アルミニウム塊が認められる。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
表1〜3に示された結果から、各実施例によれば、線径が均一であり、表面にアルミニウム塊が付着し難い溶融アルミニウムめっき鋼線を効率よく製造することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の製造方法によって得られた溶融アルミニウムめっき鋼線は、例えば、自動車のワイヤーハーネスなどに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 溶融アルミニウムめっき浴
2 鋼線
3 溶融アルミニウムめっき鋼線
4 送出装置
5 めっき浴槽
6 溶融アルミニウムめっき浴の浴面
7 安定化部材
8 ノズル
8a ノズルの先端
9 不活性ガス供給装置
10 配管
11 冷却装置
12 巻取装置
図1
図2