(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193228
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】エピタキシャル半導体構造の成長基板からエピタキシャル膜又はエピタキシャル膜層をレーザ分離する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20170828BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20170828BHJP
B23K 26/57 20140101ALI20170828BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20170828BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L21/205
B23K26/57
B23K26/00 N
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-520160(P2014-520160)
(86)(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公表番号】特表2014-527709(P2014-527709A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】RU2012000588
(87)【国際公開番号】WO2013009222
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年7月9日
(31)【優先権主張番号】2011129184
(32)【優先日】2011年7月13日
(33)【優先権主張国】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】513192328
【氏名又は名称】ユーリー・ゲオルギヴィッチ・シュレター
(73)【特許権者】
【識別番号】513192339
【氏名又は名称】ユーリー・トーマソヴィッチ・レバネ
(73)【特許権者】
【識別番号】513192340
【氏名又は名称】アレクセイ・ウラディミロヴィッチ・ミロノフ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ユーリー・ゲオルギヴィッチ・シュレター
(72)【発明者】
【氏名】ユーリー・トーマソヴィッチ・レバネ
(72)【発明者】
【氏名】アレクセイ・ウラディミロヴィッチ・ミロノフ
【審査官】
右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−042950(JP,A)
【文献】
特表2008−501228(JP,A)
【文献】
特開2009−023900(JP,A)
【文献】
特開2003−163337(JP,A)
【文献】
特開昭59−061920(JP,A)
【文献】
特開2003−218052(JP,A)
【文献】
特表2006−528592(JP,A)
【文献】
特表2009−532313(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0278233(US,A1)
【文献】
国際公開第2005/031832(WO,A1)
【文献】
特開2007−070154(JP,A)
【文献】
特表2006−512270(JP,A)
【文献】
特開2001−019599(JP,A)
【文献】
特開2003−174153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
B23K 26/00
B23K 26/57
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシャル半導体構造の成長基板からエピタキシャル膜又はエピタキシャル膜層をレーザ分離する方法であって、
エピタキシャル膜又はエピタキシャル膜層を成長させる際に微小ドナー又はアクセプタ不純物でのエピタキシャル構造の一部領域の選択的ドーピングを用いて、結果として選択的にドープされた領域における微小不純物の濃度がドープされていない領域におけるバックグラウンド濃度を実質的に超えるようにするステップと、
集束レーザビームをエピタキシャル構造に向けて、レーザ放射の吸収が生じるエピタキシャル構造の選択的にドープされた領域にビーム焦点を位置付けるステップと、
エピタキシャル構造の選択的にドープされた領域をビーム焦点で走査するようにレーザビームを移動させて、選択的にドープされた領域を部分的に熱分解してその機械的強度を弱めるステップと、
レーザ走査後に、エピタキシャル構造を一時的な基板に貼り付けて、機械的又は熱機械的応力を印加することによって、成長基板から、又はエピタキシャル膜の一部を有する成長基板からエピタキシャル膜又はエピタキシャル膜層を分離するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
エピタキシャル膜又はエピタキシャル膜層をホモエピタキシ法によって成長させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
選択的にドープされた領域が基板、又は基板の表面層であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
選択的にドープされた領域がエピタキシャル膜、又はエピタキシャル膜の下部層であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
エピタキシャル半導体構造の物質が、周期表の第4族の元素の半導体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
エピタキシャル半導体構造の物質が、周期表の第4族の元素の半導体化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
エピタキシャル半導体構造の物質が、周期表の第3族及び第5族の元素の半導体化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
エピタキシャル半導体構造の物質が、周期表の第2族及び第6族の元素の半導体化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
成長基板からホモエピタキシャル膜を分離するために、シリコン、ゲルマニウム、及びヒ化ガリウム半導体に対して6μm≦λ≦48μmの波長範囲内、窒化ガリウムに対して4μm≦λ≦32μmの波長範囲内、炭化シリコンに対して3μm≦λ≦24μmの波長範囲内、窒化アルミニウムに対して2.5μm≦λ≦20μmの波長範囲内、ダイヤモンドに対して2μm≦λ≦16μmの波長範囲内の波長を有するレーザを用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
レーザとして赤外線ガスパルスポンプCO2又はCOレーザを用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
エピタキシャル半導体構造の成長基板からエピタキシャル膜又はエピタキシャル膜層をレーザ分離する方法であって、
エピタキシャル膜又はエピタキシャル膜層を成長させる際に微小ドナー又はアクセプタ不純物でのエピタキシャル構造の一部領域の選択的ドーピングを用いて、結果としての選択的にドープされた領域における微小不純物の濃度がドープされていない領域のバックグラウンド濃度を実質的に超えるようにするステップと、
エピタキシャル構造を一時的な基板に貼り付けるステップと、
エピタキシャル構造に集束レーザビームを向けて、レーザ放射の吸収が生じるエピタキシャル構造の選択的にドープされた領域にビーム焦点を位置付けるステップと、
エピタキシャル構造の選択的にドープされた領域をビーム焦点で走査するようにレーザビームを移動させて、選択的にドープされた領域を部分的に熱分解してその機械的強度を弱めるステップと、
機械的又は熱機械的応力を印加することによって、成長基板から、又はエピタキシャル膜の一部を有する成長基板からエピタキシャル膜又はエピタキシャル膜層を分離するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
エピタキシャル膜又はエピタキシャル膜層をホモエピタキシ法によって成長させることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
選択的にドープされた領域が基板、又は基板の表面層であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
選択的にドープされた領域がエピタキシャル膜、又はエピタキシャル膜の下部層であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
エピタキシャル構造の物質が、周期表の第4族の元素の半導体であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
エピタキシャル構造の物質が、周期表の第4族の元素の半導体化合物であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
エピタキシャル構造の物質が、周期表の第3族及び第5族の元素の半導体化合物であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
エピタキシャル構造の物質が、周期表の第2族及び第6族の元素の半導体化合物であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項19】
成長基板からホモエピタキシャル膜を分離するために、シリコン、ゲルマニウム、及びヒ化ガリウム半導体に対して6μm≦λ≦48μmの波長範囲内、窒化ガリウムに対して4μm≦λ≦32μmの波長範囲内、炭化シリコンに対して3μm≦λ≦24μmの波長範囲内、窒化アルミニウムに対して2.5μm≦λ≦20μmの波長範囲内、ダイヤモンドに対して2μm≦λ≦16μmの波長範囲内の波長を有するレーザを用いることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項20】
レーザとして赤外線ガスパルスポンプCO2又はCOレーザを用いることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一群の本発明は、固体物質のレーザ処理に係り、特に、レーザ放射で半導体表面層を分離する方法、具体的には、エピタキシャル半導体構造の成長基板からのエピタキシャル膜又はエピタキシャル膜層のレーザ分離に関する。
【背景技術】
【0002】
成長基板から半導体結晶のエピタキシャル層をレーザ分離して、非成長基板上に転写することは、レーザダイオード(特許文献1、特許文献2)及びフリップチップ技術によるレーザダイオード(特許文献3)において広く用いられている。
【0003】
透明な成長サファイア基板からの窒化ガリウム層のレーザ分離は、非特許文献1の研究において初めて提案された。この研究では、波長λ=355nmで
【数1】
を満たす紫外線エキシマレーザが用いられ、その量子エネルギーは、サファイア製の基板の禁制帯ギャップE
g1内にあるが、窒化ガリウムから成るエピタキシャル膜の禁制帯ギャップE
g2を超える。
【0004】
その後、成長基板の禁制帯ギャップの幅とエピタキシャル膜の禁制帯ギャップの幅との間の差に基づいたレーザ分離法が改善された。特に、分離されたエピタキシャル膜の品質を改善して、そのひび割れを抑制するために、成長基板の禁制帯ギャップの幅及びエピタキシャル膜の禁制帯ギャップの幅よりも小さな禁制帯ギャップの幅を有する追加犠牲層を使用することが、成長基板とエピタキシャル膜との間のヘテロエピタキシャル界面を走査することと共に提案された(特許文献4、特許文献3)。
【0005】
成長基板の禁制帯ギャップの幅とエピタキシャル膜の禁制帯ギャップの幅との間の差に基づいたレーザ分離法の概要が
図1に示されている。
【0006】
光の量子エネルギーよりも大きな禁制帯ギャップの幅を有するサファイアの基板101上に成長させたヘテロエピタキシャル半導体窒化ガリウム膜102に基板側から紫外線を照射すると、紫外線レーザ放射がサファイアを通り抜けて、窒化ガリウム‐サファイアのヘテロエピタキシャル界面105近傍において窒化ガリウムの薄層に吸収される。紫外線レーザ放射を照射されると、紫外線レーザ放射103とヘテロエピタキシャル界面105との交差によって画定される領域104内の窒化ガリウムが、分解温度T
0〜900℃を超える温度T
1に加熱されて、気体の窒素及び液体のガリウムに分解して、結果として、窒化ガリウムのエピタキシャル膜が基板から分離される。
【0007】
これまで提案された成長基板からのエピタキシャル膜のレーザ分離法は全て、エピタキシャル膜の禁制帯ギャップの幅E
g2と基板の禁制帯ギャップの幅E
g1との間の差に基づいている。これらの方法は、ヘテロエピタキシャル法、つまり、エピタキシャル膜の物質とは異なる物質製の成長基板上にエピタキシャル膜を成長させる技術を用いて得られるエピタキシャル膜を分離することに成功している。
【0008】
しかしながら、機械的応力を課すことなく高品質のエピタキシャル膜を得るために、エピタキシャル膜と同じ物質の基板上にエピタキシャル膜を成長させるホモエピタキシャル法を使用する必要があることも多い。この場合、成長基板及びエピタキシャル膜は同じ禁制帯ギャップの幅を有し、上述の従来のレーザ分離法を適用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7241667号明細書
【特許文献2】米国特許第7202141号明細書
【特許文献3】米国特許第6365429号明細書
【特許文献4】米国特許第6071795号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Kelly et al Physica Status Solidi(a) vol.159,pp.R3,R4,(1997)
【非特許文献2】A.M.Hofmeister, K.M.Pitman, A.F.Goncharov, and A.K.Speck The Astrophysical Journal,696:1502−1516,2009 May 10
【非特許文献3】Hara,H. and Y.Nishi,J.Phys.Soc.Jpn 21,6,1222,1966
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、本方法の応用分野の拡張であり、具体的には、エピタキシャル膜と同じ結晶物質製の基板からエピタキシャル膜を分離することを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するため、エピタキシャル半導体構造の成長基板からエピタキシャル膜又はエピタキシャル膜層をレーザ分離するための方法の二つのバリエーションが提案される。
【0013】
本発明の第一のバリエーションでは、エピタキシャル膜又はエピタキシャル膜層を成長させる際に、エピタキシャル構造の一部領域の微小ドナー又はアクセプタ不純物での選択的ドーピングを用いて、選択的にドープされた領域における微小不純物の結果としての濃度が、ドープされていない領域のバックグラウンド濃度を実質的に超えるようにする。そして、集束レーザビームを、基板及びエピタキシャル膜から成るエピタキシャル構造上に向けて、ビーム焦点を、レーザ放射の吸収が生じる結晶構造の選択的にドープされた領域に位置付ける。レーザビームを移動させて、エピタキシャル構造の選択的にドープされた領域をビーム焦点で走査して、選択的にドープされた領域を部分的に熱分解させて、その機械的強度を低下させる。レーザ走査後に、エピタキシャル構造を一時的な基板に貼り付けて、機械的又は熱機械的応力を印加することによって、エピタキシャル膜又はエピタキシャル膜層を、成長基板から、又はエピタキシャル膜の一部を有する成長基板から分離する。
【0014】
本方法の第二のバリエーションは、第一の方法と同じ特徴を有するが、以下の点が異なる。即ち、レーザ走査の前にエピタキシャル構造が一時的な基板に貼り付けられて、その後、一時的な基板に貼り付けられたエピタキシャル構造のレーザ走査が行われて、レーザ走査後に、機械的又は熱機械的応力を印加することによって、エピタキシャル膜又はエピタキシャル膜層を、成長基板から、又はエピタキシャル膜の一部を有する成長基板から分離する。
【0015】
好ましくは、エピタキシャル膜又はエピタキシャル膜層をホモエピタキシ法によって成長させる。
【0016】
好ましくは、選択的にドープされた領域は、基板、又は基板の表面層である。
【0017】
好ましくは、選択的にドープされた領域は、エピタキシャル膜、又はエピタキシャル膜の下部層である。
【0018】
好ましくは、基板及びエピタキシャル膜から成る結晶構造の物質は、周期表の第4族の元素の半導体、第4族の元素の半導体化合物、第3族及び第5族の元素の半導体化合物、又は、第2族及び第6族の元素の半導体化合物である。
【0019】
好ましくは、成長基板からホモエピタキシャル膜を分離するためのレーザ波長は以下の波長範囲内にある: シリコン、ゲルマニウム、及びヒ化ガリウム半導体に対して6μm≦λ≦48μmの範囲内、窒化ガリウムに対して4μm≦λ≦32μmの範囲内、炭化シリコンに対して3μm≦λ≦24μm、窒化アルミニウムに対して2.5μm≦λ≦20μmの範囲内、ダイヤモンドに対して2μm≦λ≦16μm。
【0020】
好ましくは、レーザとして、赤外線ガスパルスポンプ二酸化シリコンCO
2又は酸化シリコンCOが用いられる。
【0021】
本レーザ分離法のバリエーションは、エピタキシャル膜と同じ結晶物質製の基板からホモエピタキシャル膜を分離することを可能にする。この新規レーザ分離法は、微小ドナー又はアクセプタ不純物での基板及びエピタキシャル膜の選択的ドーピングの使用に基づいている。選択的ドーピングでは、エピタキシャル膜及び基板における自由キャリアの濃度が顕著に異なり得て、これが、残留ビーム領域(この領域では、自由キャリア、そして自由キャリアと光学フォノンとのフォノン‐プラズモン相互作用が、光学フォノンの赤外線吸収に実質的に寄与する)付近における赤外線領域での光の吸収係数の大きな差をもたらし得る。
【0022】
ドーピングレベルと赤外線レーザ放射の周波数との適切な選択によって、レーザ放射を基板‐ホモエピタキシャル膜界面近傍における高濃度ドーピング領域においてほぼ吸収させることが可能になる。十分な強度の集束レーザビームで基板‐ホモエピタキシャル膜界面を走査すると、半導体結晶の熱分解が生じ、続いてホモエピタキシャル膜が分離される。
【0023】
本レーザ分離法を実現するため、好ましくは、波長λが、ドープされていない半導体に対して比較的透明な赤外線領域内にあるような、具体的には、波長λが、1フォノンプロセス又は2フォノンプロセスでの光の強力な吸収が不可能であるが、3フォノンプロセス以上での光の比較的弱い吸収が存在し得る残留ビーム領域のエッジ付近にあるようなレーザ放射を用いる。
【0024】
好ましくは、レーザビームの波長λは、c/4ν
0≦λ≦2c/ν
0の範囲内にあり、ここで、ν
0は、成長基板の半導体に対してのLO光学フォノンの周波数であり、cは光速である。
【0025】
上記不等式は、成長基板からホモエピタキシャル膜を分離するのに好適なレーザ波長が、以下の波長範囲内にあることに従う: シリコン、ゲルマニウム、及びヒ化ガリウムに対して6μm≦λ≦48μmの範囲内、窒化ガリウムに対して4μm≦λ≦32μmの範囲内、炭化シリコンに対して3μm≦λ≦24μm、窒化アルミニウムに対して2.5μm≦λ≦20μmの範囲内、ダイヤモンドに対して2μm≦λ≦16μm。
【発明の効果】
【0026】
本発明の技術的結果は、既知のものと比較して新たなエピタキシャル膜のレーザ分離法を提供するものであり、基板からホモエピタキシャル膜を分離することを可能にし、つまり、元々の半導体基板と同じ禁制帯ギャップの幅を有するホモエピタキシャル膜を分離することを可能にする。また、本方法は、エピタキシャル膜の分離のために、高効率で安価な赤外線ガス二酸化シリコンCO
2又は酸化シリコンCOレーザを使用することを可能にする。
【0027】
本発明を図面によって例示する。従来技術が
図1に示されて、本発明を実現するための概要が
図2〜
図5に示されて、微小ドナー不純物での多様なドーピングレベルにおける窒化ガリウムの光吸収係数のスペクトル依存性の計算結果が
図6に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】光量子エネルギーが基板の禁制帯ギャップE
g1内にあり且つエピタキシャル膜物質の禁制帯ギャップE
g2の幅を超えている波長λの集束レーザ照射を用いて異種成長基板から半導体結晶のヘテロエピタキシャル膜をレーザ分離する従来の方法の概要を示す。
【
図2】ホモエピタキシャル膜と同じ半導体から成る半導体基板からのホモエピタキシャル膜の本レーザ分離法を例示する概要を示す。この概要は、ホモエピタキシャル膜のドーピングレベルが半導体基板のドーピングレベルを超えている際における、微小ドナー又はアクセプタ不純物での基板及びホモエピタキシャル膜の選択的ドーピングの場合のレーザ分離を例示する。
【
図3】ホモエピタキシャル膜と同じ半導体から成る半導体基板からのホモエピタキシャル膜の本レーザ分離法を例示する概要を示す。この概要は、半導体基板のドーピングレベルがホモエピタキシャル膜のドーピングレベルを超えている際における、微小ドナー又はアクセプタ不純物での基板及びホモエピタキシャル膜の選択的ドーピングの場合のレーザ分離を例示する。
【
図4】基板を通り抜けて微小ドナー又はアクセプタ不純物でドープされたホモエピタキシャル膜の下部で吸収されるレーザビームを用いた、ドープされていない半導体基板からのホモエピタキシャル膜のドープされた上部層の本レーザ分離法を例示する概要を示す。
【
図5】ドープされていない上部層を通り抜けて微小ドナー又はアクセプタ不純物でドープされたホモエピタキシャル膜の下部に吸収されるレーザビームを用いた、ドープされていない半導体基板からのホモエピタキシャル膜のドープされていない上部層の本レーザ分離法を例示する概要を示す。
【
図6】微小ドナー不純部での多様なドーピングレベルにおける窒化ガリウムの半導体結晶に対する、残留ビーム領域付近における光吸収係数のスペクトル依存性の計算結果を示す。スペクトル依存性601、602、603はそれぞれ、10
17cm
−3、10
18cm
−3、5×10
19cm
−3のドーピングレベルに対応する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、以下の例示的な実施形態の詳細な説明から容易に明らかとなるものである。これらの実施形態の説明は例示的なものであり限定的なものではないことに留意されたい。
【0030】
実施例1 基板を通り抜けるレーザビームを用いたドープされていない半導体窒化ガリウム基板からの微小ドナー不純物でドープされたホモエピタキシャル窒化ガリウム膜の分離
【0031】
図2は、幅200μmの半導体窒化ガリウム基板101からの幅50μmのホモエピタキシャル窒化ガリウム膜202のレーザ分離の概要を示す。ホモエピタキシャル膜202中の微小シリコンドナー不純物のドーピングレベルは5×10
19/cm
−3であり、10
17/cm
−3に等しい半導体基板101中の微小酸素及びシリコンドナーのバックグラウンド濃度を超えている。
【0032】
ホモエピタキシャル窒化ガリウム膜を分離するため、波長λ=10.6μmで動作して、0.1Jのエネルギー、50nsの持続期間、100Hzの繰り返し率のパルスを発生させるCO
2パルスポンプレーザを用いる。
【0033】
5×10
19cm
−3の濃度の微小シリコンドナー不純物でドープされたホモエピタキシャル窒化ガリウム膜202における波長λ=10μmのレーザ放射の吸収係数は、4×10
4cm
−1であり、一方で、10
17cm
−3に等しい微小酸素及びシリコンドナーのバックグラウンド濃度のドープされていない半導体窒化ガリウム基板101におけるこの放射の吸収係数は、5×10
1cm
−1である。
【0034】
残留ビーム領域付近における光吸収係数のスペクトル依存性を、微小ドナー不純物の多様なドーピングレベルでの半導体窒化ガリウム結晶について計算して、
図6に示す。曲線601、602、603はそれぞれ、10
17cm
−3、10
18cm
−3、5×10
19cm
−3のドープレベルに対応する。
【0035】
図2の概要は、赤外線レーザビーム203が基板101を通り抜けて、10J/cm
2のエネルギー密度を与える直径1mmのスポットに集束する様子を示す。直径1mmのスポットに集束した波長λ=10μmのパルスCO
2レーザの赤外線レーザビーム203は、ドープされていない半導体窒化ガリウム基板101に弱く吸収され、微小ドナー不純物でドープされたホモエピタキシャル窒化ガリウム膜202に強く吸収されて、その作用で、ホモエピタキシャル膜202の局所的加熱が、ドープされていない半導体基板101とドープされたホモエピタキシャル膜202との間のホモエピタキシャル界面205に赤外線レーザビーム203が交差して画定される領域204において生じる。900℃の温度を超える局所的加熱は、領域204において、窒化ガリウム結晶を気体の窒素及び液体のガリウムに化学的に分解する。ホモエピタキシャル界面205に平行な水平面内における速度10cm/sのレーザビーム203の焦点(集束点)の移動は、一組の領域204における窒化ガリウムの分解をもたらして、ドープされていない半導体基板101とドープされたホモエピタキシャル膜202との間のホモエピタキシャル界面205を弱める。そして、ホモエピタキシャル膜202を一時的な金属、セラミック又はプラスチック基板上に貼り付けて、小さな機械的又は熱機械的応力を印加すると、基板101からホモエピタキシャル膜202を分離することができる。
【0036】
実施例2 ホモエピタキシャル膜を通り抜けるレーザビームを用いた、微小ドナー不純物でドープされた半導体窒化ガリウム基板からのドープされていないホモエピタキシャル窒化ガリウム膜の分離
【0037】
図3は、厚さ1mmの半導体窒化ガリウム基板からの厚さ100μmのドープされていないホモエピタキシャル窒化ガリウム膜のレーザ分離の概要を示す。ホモエピタキシャル膜202における微小酸素及びシリコンドナーのバックグラウンド濃度は10
17cm
−3であり、5×10
19cm
−3に等しいドープされた半導体基板101の微小シリコンドナー不純物の濃度よりも実質的に小さい。
【0038】
ホモエピタキシャル窒化ガリウム膜を分離するため、波長λ=10.6μmで動作して、0.1Jのエネルギー、50nsの持続期間、100Hzの繰り返し率のパルスを発生させるCO
2パルスポンプレーザを用いる。10
17cm
−3に等しい微小酸素及びシリコンドナーのバックグラウンド濃度を有するドープされていないホモエピタキシャル窒化ガリウム膜202における波長λ=10μmのレーザ放射の吸収係数は、5×10
1cm
−1であり、一方で、5×10
19cm
−3の濃度の微小シリコンドナー不純物でドープされた半導体窒化ガリウム基板101におけるこの放射の吸収係数は、4×10
4cm
−1である。残留ビーム領域付近における光吸収係数のスペクトル依存性を、微小ドナー不純物の多様なドーピングレベルでの半導体窒化ガリウム結晶について計算して、
図6に示す。曲線601、602、603はそれぞれ、10
17cm
−3、10
18cm
−3、5×10
19cm
−3のドーピングレベルに対応する。
【0039】
図3の概要は、赤外線レーザビーム203がホモエピタキシャル膜202を通り抜けて、10J/cm
2のエネルギー密度を与える直径1mmのスポットに集束される様子を示す。
【0040】
直径1mmのスポットに集束された波長λ=10.6μmのパルスCO
2レーザの赤外線レーザビーム203は、ドープされていないホモエピタキシャル窒化ガリウム膜202に弱く吸収され、微小ドナー不純物でドープされた半導体窒化ガリウム基板101に強く吸収されて、その作用で、基板101の局所的加熱が、ドープされた半導体基板101とドープされていないホモエピタキシャル膜202との間のホモエピタキシャル界面205に赤外線レーザビーム203が交差して画定される領域204において生じる。900℃の温度を超える局所的加熱は、領域204において、窒化ガリウム結晶を、気体の窒素及び液体のガリウムに化学的に分離する。ホモエピタキシャル界面205に平行な水平面内における速度10cm/sのレーザビーム203の焦点の移動は、一組の領域204における窒化ガリウムの分解をもたらして、ドープされた半導体基板101とドープされていないホモエピタキシャル膜202との間のホモエピタキシャル界面205を弱める。ホモエピタキシャル膜202を一時的な金属、セラミック又はプラスチック基板に貼り付けて、小さな機械的又は熱機械的応力を印加すると、基板101からホモエピタキシャル膜202を分離することができる。
【0041】
実施例3 基板を通り抜けて微小ドナー不純物でドープされたホモエピタキシャル膜の下部層に吸収されるレーザビームを用いた、ドープされていない半導体窒化ガリウム基板からのホモエピタキシャル窒化ガリウム膜のドープされていない上部層の分離
【0042】
図4は、厚さ1μmのホモエピタキシャル膜のドープされた下部層406を用いて、厚さ200μmのドープされていない半導体窒化ガリウム基板101からの厚さ50μmのドープされていないホモエピタキシャル窒化ガリウム膜202のレーザ分離の概要を示す。ホモエピタキシャル窒化ガリウム膜の下部層406における微小シリコンドナー不純物のドーピングレベルは5×10
19cm
−3であり、10
17cm
−3に等しい半導体基板101及びホモエピタキシャル膜202の上部層における微小シリコン及び酸素ドナー不純物のバックグラウンド濃度を超えている。
【0043】
ホモエピタキシャル窒化ガリウム膜を分離するため、波長λ=10.6μmで動作して、0.1Jのエネルギー、50nsの持続期間、100Hzの繰り返し率のパルスを発生させるCO
2パルスポンプレーザを用いる。
【0044】
5×10
19cm
−3の濃度の微小シリコンドナー不純物でドープされたホモエピタキシャル窒化ガリウム膜の下部層406における波長λ=10.6μmのレーザ放射の吸収係数は4×10
4cm
−1であり、一方で、10
17cm
−3の微小酸素及びシリコンドナーのバックグラウンド濃度を有するホモエピタキシャル窒化ガリウム膜のドープされていない上部層402及びドープされていない半導体窒化ガリウム基板101におけるこのレーザの吸収係数は、5×10
1cm
−1である。
【0045】
残留ビーム領域付近における光吸収係数のスペクトル依存性を、微小ドナー不純物の多様なドーピングレベルでの半導体窒化ガリウム結晶について計算し、
図6に示す。曲線601、602、603はそれぞれ、10
17cm
−3、10
18cm
−3、5×10
19cm
−3のドーピングレベルに対応する。
【0046】
図4の概要は、レーザビーム203が基板101を通り抜けて、10J/cm
2のエネルギー密度を与える直径1mmのスポットに集束される様子を示す。直径1mmのスポットに集束された波長λ=10.6μmのパルスCO
2レーザの赤外線レーザビーム203は、ドープされていない半導体窒化ガリウム基板101に弱く吸収され、微小ドナー不純物でドープされたホモエピタキシャル窒化ガリウム膜202の下部層406に強く吸収されて、その作用で、ホモエピタキシャル膜の下部層406の局所的加熱が、ドープされていない半導体基板101とホモエピタキシャル膜202のドープされた下部層406との間のホモエピタキシャル界面405に赤外線レーザビーム203が交差して画定される領域404において生じる。900℃の温度を超える局所的加熱は、領域404において窒化ガリウム結晶を気体の窒素及び液体のガリウムに化学的に分解する。ホモエピタキシャル界面405に平行な水平面内における速度10cm/sでのレーザビーム203の焦点の移動は、一組の領域404における窒化ガリウムの分解をもたらし、ドープされていない半導体基板101とホモエピタキシャル膜のドープされた下部層406との間のホモエピタキシャル界面405を弱める。ホモエピタキシャル膜のドープされていない上部層402を一時的な金属、セラミック又はプラスチック基板に貼り付けて、小さな機械的又は熱機械的応力を印加すると、基板101から、ドープされた下部層406の蒸発していない部分と共にホモエピタキシャル膜のドープされていない上部層402を分離することができる。
【0047】
実施例4 ホモエピタキシャル膜の上部層を通り抜けて微小ドナー不純物でドープされたホモエピタキシャル膜の下部層に吸収されるレーザビームを用いた、ドープされていない半導体窒化ガリウム基板からのホモエピタキシャル窒化ガリウム膜のドープされていない上部層の分離
【0048】
図5は、厚さ1μmのホモエピタキシャル窒化ガリウム膜のドープされた下部層406を用いた、厚さ2μmのドープされていない半導体窒化ガリウム基板101からの厚さ100μmのホモエピタキシャル窒化ガリウム膜202のドープされていない層のレーザ分離の概要を示す。ホモエピタキシャル窒化ガリウム膜の下部層406における微小シリコンドナー不純物のドーピングレベルは5×10
19cm
−3であり、10
17cm
−3に等しいホモエピタキシャル膜の上部層402及び半導体基板101における微小酸素及びシリコンドナーのバックグラウンド濃度を超えている。
【0049】
ホモエピタキシャル窒化ガリウム膜を分離するため、波長λ=10.6μmで動作して、0.1Jのエネルギー、50nsの持続期間、100Hzの繰り返し率のパルスを発生させるCO
2パルスポンプレーザを用いる。
【0050】
5×10
19cm
−3の濃度の微小シリコンドナー不純物でドープされたホモエピタキシャル窒化ガリウム膜の下部層406における波長λ=10.6μmのレーザ放射の吸収係数は、4×10
4cm
−1であり、一方で、10
17cm
−3の微小酸素及びシリコンドナーのバックグラウンド濃度を有するホモエピタキシャル窒化ガリウム膜のドープされていない上部層402及びドープされていない半導体窒化ガリウム基板101におけるこのレーザ放射の吸収係数は、5×10
1cm
−1である。
【0051】
残留ビーム領域付近における光吸収係数のスペクトル依存性を、微小ドナー不純物の多様なドーピングレベルでの半導体窒化ガリウム結晶について計算し、
図6に示す。曲線601、602、603はそれぞれ、10
17cm
−3、10
18cm
−3、5×10
19cm
−3のドーピングレベルに対応する。
【0052】
図5の概要は、レーザビーム203がホモエピタキシャル膜の上部層402を通り抜けて、10J/cm
2のエネルギー密度を与える直径1mmのスポットに集束される様子を示す。直径1mmのスポットの集束された波長λ=10.6μmのパルスCO
2レーザの赤外線レーザビーム203は、ホモエピタキシャル窒化ガリウム膜のドープされていない上部層402に弱く吸収され、微小ドナー不純物でドープされたホモエピタキシャル窒化ガリウム膜の下部層406に強く吸収されて、その作用で、ホモエピタキシャル窒化ガリウム膜の下部層406の局所的加熱が、ホモエピタキシャル窒化ガリウム膜のドープされていない上部層402とドープされた下部層406との間の界面505に赤外線レーザビーム203が交差して画定される領域404において生じる。900℃の温度を超える局所的加熱は、領域404において、窒化ガリウム結晶を気体の窒素及び液体のガリウムに化学的に分解する。界面405に平行な水平面内における速度10cm/sでのレーザビーム203の焦点の移動は、一組の領域404における窒化ガリウムの分解をもたらし、ホモエピタキシャル膜のドープされていない上部層402とドープされた下部層406との間の界面405を弱める。そして、ホモエピタキシャル膜のドープされていない上部層402を一時的な金属、セラミック又はプラスチック基板に貼り付けて、小さな機械的又は熱機械的応力を印加すると、ドープされた下部層406の蒸発していない部分及び基板101からホモエピタキシャル膜のドープされていない上部層402を分離することができる。
【0053】
実施例5 ホモエピタキシャル膜を通り抜けるレーザビームを用いた、微小ドナー不純物でドープされた半導体炭化シリコン4H‐SiC基板からのドープされていないホモエピタキシャル炭化シリコン4H‐SiC膜の分離
【0054】
図3は、厚さ400μmの半導体炭化シリコン4H‐SiC基板101からの厚さ100μmのドープされていないホモエピタキシャル炭化シリコン4H‐SiC膜202のレーザ分離の概要を示す。エピタキシャル膜202中の微小ドナーのバックグラウンド濃度は、10
17cm
−3未満であり、5×10
19cm
−3に等しいドープされた半導体基板101中の微小窒素ドナー不純物の濃度よりも実質的に小さい。
【0055】
ホモエピタキシャル炭化シリコン4H‐SiC膜を分離するため、波長λ=5.2μmで動作して、0.4Jのエネルギー、50nsの持続時間、10Hzの繰り返し率のパルスを発生させるCOパルスポンプレーザを用いる。10
17cm
−3未満の微小ドナーのバックグラウンド濃度を有するドープされていないホモエピタキシャル炭化シリコン4H‐SiC膜202における波長λ=5.2μmのレーザ放射の吸収係数は、10cm
−1であり(非特許文献2)、一方で、5×10
19cm
−3の濃度の微小窒素ドナー不純物でドープされた半導体炭化シリコン4H‐SiC基板101におけるこの放射の吸収係数は10
4cm
−1を超える。
【0056】
図3の概要は、赤外線レーザビーム203がホモエピタキシャル膜202を通り抜けて、50J/cm
2のエネルギー密度を与える直径1mmのスポットの集束される様子を示す。
【0057】
直径1mmのスポットに集束された波長λ=5.2μmのパルスCOレーザの赤外線レーザビーム203は、ドープされていないホモエピタキシャル炭化シリコン4H‐SiC膜202に弱く吸収され、微小ドナー不純物でドープされた半導体炭化シリコン4H‐SiC基板101に強く吸収されて、その作用で、基板101の局所的加熱が、ドープされた半導体基板101とドープされていないホモエピタキシャル膜202との間の界面205に赤外線レーザビーム203が交差して画定される領域204において生じる。2800℃を超える温度への加熱は、領域204において、炭化シリコン4H‐SiCをシリコン及び炭素に化学的に分解する。界面205に平行な水平面内における速度2cm/sでのレーザビーム203の焦点の移動は、一組の領域204内の炭化シリコン4H‐SiCの分解をもたらし、ドープされた半導体基板101とドープされていないホモエピタキシャル膜202との間の界面205を弱める。その後、エピタキシャル膜202を一時的な金属、セラミック又はプラスチック基板に貼り付けて、小さな機械的又は熱機械的応力を印加すると、基板101からエピタキシャル膜202を分離することができる。
【0058】
実施例6 ホモエピタキシャル膜を通り抜けるレーザビームを用いた、微小ホウ素アクセプタ不純物で高濃度ドープされた半導体シリコン基板からの低濃度ドープされたホモエピタキシャルシリコン膜の分離
【0059】
図3は、厚さ700μmの半導体シリコン基板101からの厚さ50μmの低濃度ドープされたホモエピタキシャルシリコン膜202のレーザ分離の概要を示す。微小ホウ素アクセプタ不純物の濃度は10
17cm
−3であり、10
19cm
−3に等しいドープされた半導体基板101中の微小ホウ素アクセプタ不純物の濃度よりも実質的に小さい。
【0060】
ホモエピタキシャルシリコン膜を分離するため、波長λ=10.6μmで動作して、0.1Jのエネルギー、50nsの持続期間、100Hzの繰り返し率のパルスを発生させるCO
2パルスポンプレーザを用いる。
【0061】
10
17cm
−3の微小アクセプタ濃度で低濃度ドープされたホモエピタキシャルシリコン膜202における波長λ=10.6μmのレーザ放射の吸収係数は、12cm
−1であり(非特許文献3)、一方で、10
19cm
−3の濃度の微小ホウ素アクセプタ不純物でドープされた半導体シリコン基板101におけるこの放射の吸収係数は、3000cm
−1である。
【0062】
図3の概要は、赤外線レーザビーム203がホモエピタキシャル膜202を通り抜けて、40J/cm
2のエネルギー密度を与える直径0.5mmのスポットに集束される様子を示す。
【0063】
直径0.5mmのスポットに集束した波長λ=10.6μmのパルスCO
2レーザの赤外線レーザビーム203は、ドープされていないホモエピタキシャルシリコン膜202に弱く吸収され、微小ホウ素アクセプタ不純物でドープされた半導体シリコン基板101に強く吸収されて、その作用で、基板101の局所的加熱が、高濃度ドープされた半導体基板101と低濃度ドープされたホモエピタキシャル膜202との間の界面205に赤外線レーザビーム203が交差して画定される領域204において生じる。1400℃を超える温度への局所的加熱は、領域204におけるシリコン結晶の部分的な溶融及びアモルファス化をもたらす。界面205に平行な水平面内における20cm/sの速度でのレーザビーム203の焦点の移動は、一組の領域204におけるシリコン結晶の溶融及びアモルファス化をもたらし、高濃度ドープされた半導体基板101と低濃度ドープされたホモエピタキシャル膜202との間の界面205を弱める。そして、エピタキシャル膜202を一時的な金属、セラミック又はプラスチック基板に貼り付けて、小さな機械的又は熱機械的応力を印加すると、基板101からエピタキシャル膜202を分離することができる。
【0064】
本発明を、本発明の実施形態の例によって説明して例示したが、本発明はこれらの例によって限定されるものではないことに留意されたい。
【符号の説明】
【0065】
101 成長基板
202 ホモエピタキシャル膜
203 レーザビーム
205、405、505 ホモエピタキシャル界面
402 上部層
406 下部層