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特許6193231がんの治療および予防のための、P62に関する方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193231
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】がんの治療および予防のための、P62に関する方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/02 20060101AFI20170828BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20170828BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20170828BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20170828BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   A61K38/02ZNA
   A61K48/00
   A61P35/00
   A61K39/00 H
   A61K39/39
   A61K45/00
   A61K39/395 N
   A61K31/675
   A61K31/706
   A61K31/337
   A61K31/475
   A61K31/519
   A61K31/7068
   A61K31/407
   A61K31/40
   A61K35/76
   A61P37/04
【請求項の数】23
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-525126(P2014-525126)
(86)(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公表番号】特表2014-527053(P2014-527053A)
(43)【公表日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】US2012050024
(87)【国際公開番号】WO2013022991
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年8月8日
(31)【優先権主張番号】61/521,280
(32)【優先日】2011年8月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514032599
【氏名又は名称】チュアラボ オンコロジー,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】CURELAB ONCOLOGY, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(72)【発明者】
【氏名】シネイダー、アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ベナンゼイ、フランコ
(72)【発明者】
【氏名】シャーマン、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シフリン、ビクター
【審査官】 新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第1997/022255(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/083637(WO,A1)
【文献】 特表平11−506325(JP,A)
【文献】 特表2008−502588(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/011027(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/094490(WO,A1)
【文献】 Surgery Frontier,2006年,Vol.13, No.3,p.44-48
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 38/00−38/58
A61K 41/00−45/08
A61K 48/00
A61K 49/00
A61K 50/00−51/12
A61K 39/00−39/44
A61P 35/00
A61P 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんの1つ以上の症状の治療、緩和、改善、軽減、遅延発病、進行抑制、重症度低減および/または発生低減のためのワクチンを含む薬物を製造するための薬剤の使用であって、
前記薬物は、前記対象へ投与され、前記対象における免疫防御機構を刺激し、
前記薬剤は、
a.p62/SQSTM1ポリペプチド、または
b.p62/SQSTM1をコードする核酸、
を含む、使用。
【請求項2】
前記薬剤は、
a.1つ以上のドメイン欠失、
b.前記p62/SQSTM1をコードする核酸は、配列番号1と少なくとも95%同一である、または
c.前記p62/SQSTM1ポリペプチドは、配列番号2と少なくとも98%同一である、
を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記1つ以上のドメイン欠失が、PB1、ZZ、NLS2、TB、NLS1、NES、LIR、KIR、およびUBAからなる群から選択される1以上における欠損である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記p62/SQSTM1ポリペプチドまたはp62/SQSTM1をコードする核酸が、融合ポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードする核酸をそれぞれさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記p62/SQSTM1ポリペプチドが、翻訳後修飾されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記p62/SQSTM1ポリペプチドが、in vitroで翻訳後修飾されている、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記薬物が、非経口、経口、経鼻的、経直腸的、経皮的、膣内、またはエアロゾルを介した吸入からなる群から選択される経路のいずれかによって投与される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記薬物が、血管内、静脈内、動脈内、筋肉内、眼球内、皮内および皮下からなる群から選択される経路のいずれかによって投与される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記薬物が、臓器または腫瘍へ投与される、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記対象に、アジュバントを投与することをさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記アジュバントが、ゲル型、微生物、粒子性、油エマルジョン、サーファクタントベース、および合成アジュバントからなる群から選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
1つ以上の共刺激成分を投与することをさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記1つ以上の共刺激成分が、細胞表面タンパク質、サイトカイン、ケモカインおよびシグナル伝達分子からなる群から選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
抑制または負の調節免疫機構を遮断する1つ以上の分子を投与することをさらに含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
抑制または負の調節免疫機構を遮断する前記1つ以上の分子が、抗CTLA−4抗体、抗CD25抗体、抗CD4抗体、および融合タンパク質IL13Ra2−Fcからなる群から選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記対象に適用する1つ以上の抗がん治療の使用をさらに含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記1つ以上の抗がん治療が、化学療法分子の投与、放射線療法、および抗血管形成分子の投与からなる群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記化学療法分子が、シクロホスファミド、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、ナベルビン、カペシタビン、およびマイトマイシンCからなる群から選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記がんが、乳癌、肺癌、前立腺癌、胃癌、結腸直腸癌、皮膚癌、頭部および頚部の癌、気管支癌、膵臓癌、膀胱癌、脳癌、中枢神経系癌、末梢神経系癌、食道癌、口腔または咽頭の癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、卵巣癌、子宮癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、肉腫および血液組織の癌からなる群から選択される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記対象が、がんと診断された対象、過去に癌治療を受けていた対象、がんの家族歴がある対象、およびがんの素因を有する対象からなる群から選択される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
前記薬剤が、p62/SQSTM1をコードする核酸を含み、前記p62/SQSTM1をコードする核酸が、配列番号1と少なくとも95%同一であり、前記p62/SQSTM1をコードする核酸が、プラスミドまたはウイルスベクターに含まれる、請求項1〜20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
核酸ベースの免疫付与の効率を向上させるための戦略をさらに含む、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記戦略が、自己複製ウイルスレプリコン、コドン最適化、in vivoエレクトロポレーション、CpG刺激モチーフの採用、エンドサイトーシスまたはユビキチン処理経路の標的化のための配列、マレック病ウイルス1型VP22配列、プライムブーストレジメン、および粘膜送達ベクターの使用からなる群から選択される、請求項22に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連特許出願への相互参照]
本出願は、米国仮出願第61/521,280号(出願日:2011年8
月8日、タイトル:「P62 as an Anti−Cancer Agent」、ロシア特許出願第2012108927号(出願日:2012年3月11日)の恩恵を主張する。本明細書中、同文献全体をあらゆる目的のために参考のために援用する。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、がんの予防および治療の分野に関する。より詳細には、本発明は、p62組成物を用いて抗がん反応を活性化させることによるがんの予防および治療に関連する。
【背景技術】
【0003】
がんは、米国および欧州連合において第2位の一般的死因になっており(National Vital Statistics Reports,Vol.60,No.4,2012)、また、欧州連合における45〜64歳の男性および女性の一般的死因の1位となっている。2008年1月1日時点における米国における推定がん患者数は、浸潤性腫瘍の場合において男性が5,506,000人であり、女性が6,452,000人である。
【0004】
がんワクチンが研究されており、フェーズIII有効性試験の段階に来ているものもある(Rosenbergら、NatMed.,10:909(2004年)、Johnsonら、Expert Rev Anticancer Ther.、9:67(2009)3、4)。いくつかのがんワクチンは、固形腫瘍(メラノーマ、前立腺癌、肺癌、乳癌および結腸直腸癌)に用いられる。高転移能がある種類のがん(例えば、卵巣癌またはいくつかの種類の乳癌)に属する腫瘍を外科手術によって除去した患者、およびがんリスクが高いとされる既知の突然変異の保有者(例えば、乳癌および卵巣癌に関するBRCA1およびBRCA2遺伝子の突然変異、卵巣癌に関するRAD51遺伝子)の2つの高リスク集団が、特に予防的抗がんワクチンからの恩恵を得る。高リスクの女性コホートに対する選択的予防ワクチン接種は、公衆衛生における重要な課題である。
【0005】
p62は多機能タンパク質であり、ユビキチンに結合し、核因子カッパB(NF−kB)シグナル伝達経路の活性を調節する。このタンパク質は、TNF受容体関連因子6と共に足場/アダプタータンパク質として機能して、上流シグナルに応答してNF−kB活性を仲介する。この遺伝子については、同一のイソ型または異なるイソ型をコードする選択的にスプライスされた転写産物変異体が、特定されている。
【0006】
p62は62kDaタンパク質であり、チロシンキナーゼLckp56のsrcホモロジー2(SH2)ドメインにホスホチロシン独立様態で結合していることが特定されている。(Parketら、Proc Natl Acad Sci USA.、92:12338(1995))。p62の一次配列が公知であり、(Joungら、Proc Natl Acad Sci USA.、93:5991、(1996))、ユビキチンに結合することも示されている(Vadlamudiら、J.Biol.Chem、271:20235(1996))。ヒトp62のDNA配列であるヒトsequestosome1(SQSTM1)、転写産物変異体1、mRNAは、NCBI参照配列:NM_003900.4において入手することができる。ヒトp62のアミノ酸配列であるSequestosome1イソ型1[ヒト]は、NCBI参照配列:NP_003891.1において入手することができる。p62は、ユビキチンC末端加水分解酵素とも、26Sプロテアソーム複合体のS5aサブユニットともホモロジーを有さず、ユビキチンと非共有結合することが知られる唯一のタンパク質である。これらの結果は、p62が新規のクラスのユビキチン結合タンパク質に属していることを示唆する。
【0007】
p62は、脳および肝臓中のタンパク質凝集疾患中に見受けられる封入体の成分であり、p62は、細胞質内封入体中に隔離され、sequestosomeと呼ばれる。これらのp62含有タンパク質凝集は、オートファジーによって分解される。このp62の機能は、ハンチンチンに起因する細胞死に対して保護効果を持ち得ることが示唆されている(Bjorkoyら、J Cell Biol.、171:603(2005))。p62遺伝子の突然変異は、散発性および家族性のパジェット疾患に関連する(Jenny Chungら、Semin Arthritis Rheum.、41:619(2012))、代謝性骨疾患)。
【発明の概要】
【0008】
本明細書中に記載されるのは、(a)p62ポリペプチドまたは(b)p62をコードする核酸を有する薬剤を対象へ投与することにより、対象におけるがんの1つ以上の症状を治療、緩和、改善、軽減、発症遅延、進行抑制、重症度低減および/または発生率低減するための方法である。この薬剤は、(a)1つ以上のドメイン欠失、(b)配列番号1と少なくとも95%の同一性を有するp62をコードする核酸、または(c)配列番号2と少なくとも98%の同一性を有するp62ポリペプチドを含む。このドメイン欠失方法としては、以下のうち1つ以上とすることができる:PB1、ZZ、NLS2、TB、NLS1、NES、LIR、KIRおよびUBA。この方法は、融合ポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードする核酸をそれぞれ用い得る。この方法は、翻訳後修飾を受けたp62ポリペプチドを用い得る。
【0009】
この薬剤は、以下の経路のうちいずれかを介して投与することができる:非経口、経口、経鼻的、経直腸的、経皮的、膣内、またエアロゾルを介したは吸入。非経口経路は、以下のうちいずれかであり得る:血管内、静脈内、動脈内、筋肉内、眼球内、腹腔内、皮内および皮下。あるいは、臓器または腫瘍へ投与してもよい。本発明に係る方法は、以下のうちいずれかおよび全てをさらに含み得る:アジュバントの投与、共刺激成分の投与、抑制または負の調節免疫機構を遮断する1つ以上の分子の投与、または対象への1つ以上の抗癌治療の投与。
【0010】
この方法は、対象における任意のがん、例えば、乳癌、肺癌、前立腺癌、胃癌、結腸直腸癌、皮膚癌、頭部および頚部の癌、気管支癌、膵臓癌、膀胱癌、脳癌、中枢神経系癌、末梢神経系癌、食道癌、口腔または咽頭の癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、卵巣癌、子宮癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、肉腫および血液組織のがんの治療に用いることができる。対象としては、がんと診断された対象、過去にがん治療を受けていた対象、がんの家族歴がある対象、またはがんの素因を有する対象が挙げられる。
【0011】
この方法は、p62をコードする核酸である薬剤を含むことができ当該核酸は、プラスミドまたはウイルスベクターに含まれ得る。方法はまた、核酸ベースの免疫付与を向上させるための戦略を含み得る。
【0012】
また、本明細書における薬剤は、対象におけるがんの1つ以上の症状を治療、緩和、改善、軽減、発症遅延、進行抑制、重症度低減および/または発生率低減のための薬剤であり、p62ポリペプチドもしくはp62をコードする核酸、少なくとも1つ以上のドメイン欠失を有するもの、または、p62ポリペプチドの1つ以上のドメインまたはp62の1つ以上のドメインをコードする核酸によって構成される。1つ以上のドメインは、以下のうちのいずれかであり得る:PB1、ZZ、NLS2、TB、NLS1、NES、LIR、KIR、およびUBA。
【0013】
この薬剤は、融合ポリペプチドまたはコードする核酸をそれぞれ含み得る。p62ポリペプチドは、翻訳後修飾され得る。
【0014】
薬剤は、1つ以上のアジュバント、1つ以上の共刺激成分、または抑制または負の調節免疫機構、1つ以上の化学療法分子または抗血管形成分子を遮断する1つ以上の分子をさらに含み得る。
【0015】
薬剤は、さらにp62をコードする核酸とすることができ、さらにこの核酸を含むプラスミドまたはウイルスベクターとすることができる。
【0016】
また、本明細書における組成物は、対象への投与に適した薬剤を含む組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ヒトp62の野生型核酸配列(配列番号1)を示す。
【0018】
図2】前記核酸配列によってコードされるヒトp62の野生型アミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【0019】
図3】ヒトp62のドメイン構造を図示する。
【0020】
図4】p62もしくはHER2(陽性対照)のDNAワクチンまたはベクターのみ(陰性対照)を注射したマウスについてのマウス乳癌モデルの経時的腫瘍形成を示す。
【0021】
図5】p62免疫動物からの腫瘍のヘマトキシリン・エオシン(HE)染色の結果を示す。上パネルの矢印は、複数の壊死巣を指す。下パネルの矢印は、炎症細胞網を指す。
【0022】
図6】HER2免疫動物およびp62免疫動物からの腫瘍の免疫組織の化学的染色を示す。左パネルはHE染色を示し、中央パネルは抗CD3染色を示し、右パネルは抗CD11b染色を示す。
【0023】
図7】T5ラット乳癌モデルにおけるp62DNAワクチン投与の時系列を図示する。
【0024】
図8】T5移植可能な乳癌に罹患しているラットに、p62ワクチンを接種したラットおよび対照ラットにおける腫瘍容積の経時的変化を示す。
【0025】
図9】T5移植可能な乳癌に罹患しているラットに、p62ワクチンを接種したラットおよび対照ラットにおける腫瘍成長抑制の経時的変化を示す。
【0026】
図10】T5移植可能な乳癌に罹患しているラットに、p62ワクチンを接種したラットおよび対照ラットにおけるラット生存率の経時的変化を示す。
【0027】
図11】T5移植可能な乳癌に罹患しているラットに、p62ワクチンを接種したラットおよび対照ベクターワクチンを接種したラットから得た腫瘍切片を示す。
【0028】
図12】T5移植可能な乳癌に罹患しているラットに、p62ワクチンを接種したラットおよび対照ベクターワクチンを接種したラットからの腫瘍切片のヘマトキシリン・エオシン(HE)染色の結果を示す。
【0029】
図13】p62ワクチンを接種したマウスと、対照ベクターワクチンを接種したマウスとの間のルイス肺癌転移数の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書に記載されるのは、癌治療のためのp62組成物および方法である。理論に縛られることを望まず、本発明者らは、p62をコードする核酸を対象へ投与することにより、腫瘍性細胞を攻撃するホスト免疫防御機構をが刺激されることを発見した。その結果、p62ポリペプチド(単数または複数)をコードするDNAワクチンまたはp62ポリペプチドを対象に投与することにより、抗がん免疫反応を刺激することができる。
【0031】
本明細書中で用いられる「p62ポリペプチド」という用語は、p62/SQSTM1タンパク質全長のポリペプチドを意味する。この用語は、p62/SQSTM1タンパク質の全てのホモログ、アナログ、フラグメントまたは誘導体を含む。一実施形態において、単離p62ポリペプチドは、図2に示すアミノ酸配列を有する(配列番号2)。「p62をコードする核酸」とは、p62ポリペプチドをコードするDNAまたはRNAを意味する。
【0032】
いくつかの実施形態における対象はヒトである。また、他の実施形態における対象はヒト以外の哺乳類である(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、シカ、イヌ、ネコ、ネズミまたはマウス)。
【0033】
アミノ酸配列全長に加えて、本発明のポリペプチドは、p62ポリペプチドのフラグメントまたはトランケーション、アナログおよびホモログならびに本明細書中に記載のようなそのトランケーションを含む。前記フラグメントは、全長ポリペプチドの少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25または少なくとも30のアミノ酸残基のペプチドを含み得る。
【0034】
1つ以上のアミノ酸またはp62/SQSTM1タンパク質のアミノ酸配列から一部が欠損したものも含まれる。欠失したアミノ酸は、隣接していてもよく、隣接していなくてもよい。欠失突然変異を含むアナログの下限長さは、約10、約20、約50、または約100のアミノ酸である。
【0035】
いくつかの実施形態において、p62ポリペプチドは、1つ以上の欠失ドメインを有する。理論に縛られることを望まずに、本発明者らは、p62ポリペプチドの1つ以上のドメインを欠失させることにより、免疫反応を方向付けるためのよりコンパクトかつ操作可能なポリペプチドが得られることを見出した。例えば、p62ポリペプチドのドメインのうち1つ以上を撹乱または除去することにより、よりコンパクトな分子に免疫原性を保持させることができ(当該欠失または撹乱されたドメインが免疫原性に貢献しない場合は向上させることができる)、宿主の抗体に提供されるエピトープの重量当たりの数を多くすることができる。加えて、他の細胞プロセスまたは固有の細胞内タンパク質の分解に関係するドメインの除去または並び替えを行うことにより、その抗がん効果を向上させることができる。p62ポリペプチドは、以下の表1および図3に示すようなドメイン構造を有する。
【表1】
【0036】
いくつかの実施形態におけるp62ポリペプチドは、以下の表2に示すようにp62の核酸領域に対応するコドンに欠損が設けられている(インフレーム欠失)。
【表2】
【0037】
例えば、ヌクレオチド102から122において開始し、ヌクレオチド167〜183において終了する核酸配列の欠失は、いずれもZZ欠失とみなされる。従って、例えば、110〜175はZZ欠失である。インフレーム欠失の作成技術は、当業者にとって周知である。
【0038】
いくつかの実施形態において、p62ポリペプチド(または核酸によってコードされたp62ポリペプチド)は、上記ドメインのうち1つ以上を有する。いくつかの実施形態において、p62ポリペプチド(または核酸によってコードされるp62ポリペプチド)は、上記ドメインのうち2つ以上を有し、さらなる実施形態においては、野生型p62ポリペプチドとはN末端〜C末端の配列順序が異なるポリペプチドを有する。
【0039】
本明細書中の「生物活性がある」または「免疫活性がある」という表現は、本発明に係るポリペプチドが、野生型ポリペプチドと類似の構造的機能(ただし同レベルである必要はない)、および/または類似の調節機能(ただし同レベルである必要はない)、および/または類似の生化学的機能(ただし同レベルである必要はない)、および/または免疫活性(ただし同レベルである必要はない)を有することを意味する
【0040】
本明細書中の「欠失」という用語は、アミノ酸配列の変化として定義され、1つ以上のアミノ酸残基が野生型タンパク質と比較して欠失している状態を指す。
【0041】
本明細書中の「挿入」または「付加」とは、野生型タンパク質と比較して1つ以上のアミノ酸残基が付加されることによる変化を意味する。
【0042】
本明細書中の「置換」とは、1つ以上のアミノ酸を野生型タンパク質とは異なるアミノ酸にそれぞれ置き換えることを意味する。いくつかの実施形態における置換突然変異は、C145RまたはQ418Rである。
【0043】
本明細書中の「変異体」とは、野生型タンパク質に対して、と1つ(またはそれ以上の)アミノ酸の置換、欠失または付加(またはこれらの任意の組み合わせ)を有するポリペプチドを意味する(例えば、対立遺伝子変異)、ただし、その結果得られるタンパク質が、本発明において用いられる野生型タンパク質と比較した場合に少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の免疫原性活性を保持する限りである。例えば、本発明に包含されるポリペプチドの変異体としては、SEQ.ID.NO.2に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する変異体が挙げられる。
【0044】
配列の同一性またはホモロジーは、当該分野において公知の標準的な技術を用いて決定することができる(例えば、Best Fit配列プログラム(Devereuxら、Nucl.Acid Res.12;387−395(1984)またはBLASTXプログラム(Altschulら、J Mol.Biol.215、403−410))。アライメントは、アライメントすべき配列中への隙間の導入を含み得る。加えて、本明細書中開示されるタンパク質よりも多数または少数のアミノ酸を含む配列の場合、同一性(%)は、全アミノ酸数に対する同一アミノ酸数に基づいて決定される。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドの変異体または誘導体は、アミノ酸配列の疎水性/親水性を維持する。保存的アミノ酸置換は、例えば1、2または3〜10、20または30のアミノ酸の置換であって、当該置換後の配列が、本発明に係る免疫原として機能する能力を保持する場合に行うことができる。アミノ酸置換は、例えば、血漿半減期の増加などの非自然的に発生するアナログを用いることもできる。保存的置換は、当該分野において公知である。
【0046】
本明細書中アミノ酸配列に関して用いられる「誘導体」という用語は、本発明に係るポリペプチドの化学修飾を意味する。
【0047】
このような修飾の非限定的な例としては、カルボキシル末端または残基含有カルボキシル側鎖の脂肪族エステルまたはアミド、ヒドロキシル基含有残基のO−アシル誘導体、およびアミノ末端アミノ酸またはアミノ基含有残基のN−アシル誘導体(例えば、リジンまたはアルギニン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
さらなる修飾を挙げると、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)と共役されたポリペプチドの生産や、本発明に係るポリペプチドの化学合成時にPEGを加えることがある。
【0049】
ポリペプチドまたはその一部の修飾は、特定キャリアへの化学結合や穏やかなホルマリン処理などの還元/アルキル化も含み得る。
【0050】
本明細書中の「修飾」という用語は、ポリペプチドへの翻訳後修飾の存在を意味する。「(修飾)」という表記は、当該ポリペプチドが任意選択的に修飾されていることを意味する、すなわち、当該ポリペプチドは、修飾または無修飾であり得る。
【0051】
「翻訳後修飾」および「修飾」という用語は、ポリペプチド鎖の一部を形成した後のアミノ酸に対する天然または非天然によるアミノ酸の修飾を意味する。この用語に含まれるものを、例示目的のために挙げると、in vivoでの翻訳と同時の修飾、in vivoでの翻訳後の修飾、およびin vitroでの翻訳語の修飾がある。
【0052】
本発明に係るポリペプチドの他の誘導体を挙げると、非天然アミノ酸残基、またはホスホチロシン、ホスホセリンまたはホスホスレオニン残基などのリン酸化アミノ酸残基をの取り入れたものが挙げられる。他の可能な修飾としては、スルホン化、ビオチン化、または他の成分、特に、リン酸基に類似する分子形状を有するもの、が挙げられる。
【0053】
誘導体には、グリコシル化されたポリペプチドも含まれる。これらは、多様な代替的真核生物ホスト発現システムにおける合成および処理時、またはさらなる処理ステップ時におけるグリコシル化パターンの修飾により、行うことができる。グリコシル化修飾物を生産する方法としては、前記の処理を通常実行する細胞から得られたグリコシル化酵素(例えば、哺乳類グリコシル化酵素)へp62ポリペプチドを曝露させることが含まれる。あるいは、脱グリコシル化酵素を用いて、真核生物発現システムでの生産時に付着した糖を除去することもできる。また、コード配列に対して、グリコシル化サイト(単数または複数)を付加、またはグリコシル化サイトを欠失または無能化させてもよい。さらに、グリコシル化が望ましくない場合、タンパク質を原核生物を宿主とする発現システムで生産してもよい。
【0054】
本発明のポリペプチドの変異体および/または誘導体は、化学合成によってまたは部位特異的変異誘発によって調製することができる(Gillmanら、Gene8:81(1979);Robertsら、Nature328:731(1987)またはInnis(Ed.)、1990、PCRProtocols:A Guide to Methods and Applications、Academic Press、New York、N.Y.)またはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR;Saikiら、Science239:487(1988))、例えば、本発明のp62ポリペプチドをコードする核酸の修飾のためにDaughertyらによって例示されたもの(Nucleic Acids Res.19:2471(1991))によって調整することができる。
【0055】
別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、そのN末端に異種シグナル配列を有することができる。異種シグナル配列を用いることにより、特定のホスト細胞(例えば、哺乳類ホスト細胞)において、融合タンパク質の発現および/または分泌を増加させることができる。シグナル配列は典型的には、核となる疎水性アミノ酸残基であって、分泌工程における1以上の切断段階を有する分泌工程により成熟タンパク質からは切断されるアミノ酸残基により特徴づけられる。このようなシグナルペプチドは、分泌経路を通過させるためにシグナル配列を成熟タンパク質から切断させるプロセシングサイトを有する。よって、本発明は、シグナル配列がタンパク分解性により切断されたポリペプチド(すなわち、切断生成物)だけでなく、シグナル配列を有する前記ポリペプチドに関する。
【0056】
本発明に係るポリペプチドは、安定性および/または反応性を向上させるために、自然変異により得られたアミノ酸配列における1つ以上の多様性を取り入れることができる。さらに、Dアミノ酸、非天然アミノ酸またはアミノ酸類似体を置換または付加することにより、本発明の範囲内の修飾p62ポリペプチドを調製することができる。
【0057】
本発明のポリペプチドは、上記をコードするヌクレオチド配列を適切な発現システムにおいて発現することにより、調製することができる。
【0058】
本発明に係るポリペプチドを調製する方法として、所望のアミノ酸配列の全体または一部を化学合成することによる調整が、追加的または代替的方法として挙げられる。例えば、ポリペプチドをペプチド固相合成法によって合成し、樹脂から切断し、調製用高性能液体クロマトグラフィーによって精製することができる(例えば、Creighton(1983)Proteins Structures And Molecular Principles, WH Freeman and Co, New York N.Y.)。この合成ポリペプチドの組成は、アミノ酸分析または配列(例えば、エドマン分解手順)によって確認することができる。さらに、p62ポリペプチドまたはその任意の一部のアミノ酸配列を直接合成時に変更したり、および/または、化学的方法により他のサブユニットまたはその任意の一部からの配列と組み合わせたりすることにより、変異体ポリペプチドを調製することもできる。
【0059】
本発明に係るポリペプチドの任意のホモログ、誘導体または変異体の免疫活性の測定方法は、当該分野において周知である。
【0060】
本明細書中の「融合タンパク質」という用語は、2つ以上の異なるタンパク質のアミノ酸配列を含むキメラタンパク質を意味する。典型的には、融合タンパク質は、当該分野において周知のin vitro組換え技術により得られる。
【0061】
さらなる実施形態において、本発明の融合タンパク質は、タンパク質精製の促進、組換えタンパク質の発現の増加、または組換えタンパク質の溶解性の増加を可能にするために、さらにポリペプチドドメインを追加することができる。このような精製/発現/溶解性を促進するドメインとしては、固定化金属上の精製を可能にするヒスチジン−トリプトファンモジュールなどの金属キレート化ペプチド(PorathJ(1992)Protein Expr Purif 3−.26328 1)、固定免疫グロブリン上での精製を可能にするタンパク質Aドメイン、およびFLAGS延長/親和性精製システムにおいて用いられるドメイン(Immunex Corp、Seattle、Wash.)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。精製ドメインとp62ポリペプチドとの間に、因子Xaまたはエンテロキナーゼの包含(In vitrogen、San Diego、Calif.)などの切断可能なリンカー配列を挿入することは、精製促進において有用である。
【0062】
さらなる融合発現ベクターとして、pGEXが(Pharmaci、a Piscataway、N.J.)、pMAL(New England Biolabs、Beverly、Mass.)およびpRITS(Pharmacia、Piscataway、N J )があり、これらは、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトースB結合タンパク質、またはタンパク質Aそれぞれを標的組換えタンパク質へと融合させる。EBV、BKV、および他のエピソーム発現ベクター(In vitrogen)も利用可能である。
【0063】
特定の実施形態において、p62ポリペプチドをコードする核酸分子が用いられる。核酸分子は、1つ以上のp62ポリペプチドもしくは、その一部(例えば、ドメインを任意の順序でコードするフラグメントまたは1つ以上のドメインが欠失または撹乱されたポリペプチド)、またはこれらの誘導体をコードするヌクレオチド配列を含み得る、またはそのようなヌクレオチド配列からなり、例えばATCCに寄託したもの挿入したDNAに含まれるものが挙げられる。「核酸配列」または「核酸分子」という用語は、DNAまたはRNA配列を意味する。この用語は、DNAおよびRNAの既知のベースアナログのうち任意のものから形成された分子を含む(例を非限定的に挙げると、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニル−シトシン、プソイドイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシ−メチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソ−ペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルプセウドウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2、2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノ−メチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルケウオシン、5’メトキシカルボニル−メチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プセウドウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、プセウドウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、および2、6−ジアミノプリンなどがある)。
【0064】
本発明の特定の実施形態では、ベクターを用いてポリペプチドをコードする核酸配列を細胞へ伝達する。ベクターは任意の分子であり、ホスト細胞への核酸配列の伝達に用いられる。特定の場合において、発現ベクターが用いられる。発現ベクターは核酸分子であり、ホスト細胞の導入および/または伝搬に適しており、伝達された核酸配列の発現および/または制御を行う核酸配列を有する。発現には、転写、翻訳およびスプライシング(イントロンが存在する場合)が含まれるが、これらに限定されるものではない。。典型的な発現ベクターは、ポリペプチドをコードする異種核酸配列へ動作可能に連結された1つ以上のフランキング配列を有する。フランキング配列は、例えば、相同(すなわち、ホスト細胞と同じ種および/または系統)、異種(すなわち、ホスト細胞の種または系統以外の種からのもの)、ハイブリッド(すなわち、1つよりも多くのソースからのフランキング配列の組み合わせ)、または合成とすることができる。
【0065】
フランキング配列は、コード配列の複製、転写および/または翻訳を発生させることができ、コード配列へ動作可能に連結されることが好ましい。本明細書中の「動作可能に連結される」という表現は、ポリヌクレオチド要素が機能的な関係を以て連結される様子を意味する。例えば、コード配列の発言に影響するプロモーターまたはエンハンサーは、コード配列へと動作可能に連結される。しかし、フランキング配列は、正常に機能している限り、必ずしもコード配列と隣接していなくてもよい。よって、例えば、プロモーター配列とコード配列との間に介在する未翻訳でありかつ転写された配列が存在することができ、プロモーター配列をコード配列へ動作可能に連結されたものとみなすことができる。同様に、エンハンサー配列をコード配列からの上流または下流に配置して、配列の転写に影響を与えることができる。
【0066】
特定の実施形態において、フランキング配列を転写調節領域とし、標的細胞における遺伝子発現を高レベルにすることが好ましい。転写調節領域は、例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、リプレッサー、またはこれらの組み合わせを含み得る。転写調節領域は、構成的、組織特異的、細胞型特異的(すなわち、別の種と比較して1種の組織または細胞において、より高レベルの転写を行うもの)または調節可能(すなわち、分子との相互作用に応答する)なものであってもよい。転写調節領域の起源は、任意の原核または真核生物生物、任意の脊椎動物または無脊椎動物生物、または任意の植物であり得る(ただし、フランキング配列が、細胞内の核酸の転写を発生させることにより当該細胞中において機能する場合)。多種多様な転写調節領域を、本発明の実施に用いることができる。
【0067】
適切な転写調節領域としては、例えば、CMVプロモーター(すなわち、CMV前初期プロモーター)、真核生物遺伝子(すなわち、エストロゲン誘導トリ卵白遺伝子、インターフェロン遺伝子、グルコ−コルチコイド誘導チロシンアミノトランスフェラーゼ遺伝子、およびチミジンキナーゼ遺伝子)由来のプロモーター、主要な初期および後期アデノウイルス遺伝子プロモーター、SV40初期プロモーター領域(Bernoist and Chambon、1981、Nature290:304−10)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)の3’長末端反復(LTR)に含まれるプロモーター(Yamamotoら、1980、Cell、22:787−97)、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV−TK)プロモーター(Wagnerら、1981、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:1444−45)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら、1982、Nature296:39−42)、原核生物の発現ベクター(例えば、ベータラクタマーゼプロモーター(VIIIa−Kamaroffら、1978、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、75:3727−31)、またはtacプロモーター(DeBoerら、1983、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、80:21−25)が挙げられる。組織および/または細胞型特異的転写制御領域としては、例えば、膵臓腺房細胞中において活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftら、1984、Cell38:639−46、Ornitzら、1986、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399−409(1986)、MacDonald、1987、Hepalology7:425−515)、膵臓ベータ細胞中において活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahan、1985、Nature315:115−22)、リンパ細胞中において活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら、1984、Cell、38:647−58;Adamesら、1985、Nature318:533−38;Alexanderら、1987、Mol.Cell.Biol.、7:1436−44)、精巣、乳、リンパおよびマスト細胞中のマウス乳癌ウイルス制御領域(Lederら、1986、Cell45:485−95)、肝臓中のアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertら、1987、GenesおよびDevel.1:268−76)、肝臓中のα−フェトタンパク質遺伝子制御領域(Krumlaufら、1985、Mol.Cell.Biol.、5:1639−48;Hammerら、1987、Science235:53−58)、肝臓中のα1−アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelseyら、1987、Genes and Devel.1:161−71)、ミエロイド細胞中のβグロビン遺伝子制御領域(Mogramら、1985、Nature315:338−40;Kolliasら、1986、Cell46:89−94)、脳中のオリゴデンドロサイト細胞中のミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら、1987、Cell48:703−12)、骨格筋中のミオシン軽鎖2遺伝子制御領域(Sani、1985、Nature 314:283−86)、視床下部中の性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonら、1986、Science 234:1372−78)、およびメラノーマ細胞中のチロシナーゼプロモーター(Hart、I.Semin Oncol 1996 February;23(1):154−8;Sidersら、Cancer Gene Ther1998Sep−Oct、5(5):281−91)などが挙げられる。例えば、特定の分子、または条件(例えば、光、熱、放射、テトラサイクリンまたはヒートショックタンパク質)の存在において活性化される誘導プロモーターも利用することができる(例えば、WO00/10612を参照)。他の適切なプロモーターが、当該分野において公知である。
【0068】
上述したように、エンハンサーは、適切なフランキング配列であってもよい。エンハンサーは、DNAのシス作用エレメントであり、通常は長さ約10〜300bpであり、プロモーターに作用し、転写を増加させる。エンハンサーは典型的には、配向独立型および位置独立型であり、5’および3’から制御するコード配列に対して作用するものが認められる。哺乳類遺伝子から利用することが可能ないくつかのエンハンサー配列(すなわち、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトタンパク質およびインスリン)が公知である。同様に、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが、真核生物プロモーター配列と共に有用に用いられる。エンハンサーは、核酸コード配列の5’側または3’側に挿入することができるが、典型的にはプロモーターのサイト5’側に配置される。他の適切なエンハンサーが当該分野において公知であり、本発明において適用することができる。
【0069】
特定の実施形態において、p62ポリペプチドまたはp62ポリペプチドをコードする核酸配列あるいはその誘導体を1つ以上の共刺激成分、例えば、細胞表面タンパク質、サイトカイン、ケモカインまたは本発明の組成中のシグナル伝達分子と組み合わせることが好ましい。共刺激成分は、例えばポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸として組成物中に含有するることができる。適切な共刺激分子としては、例えば、CD28ファミリーのメンバー(すなわち、CD28、ICOS;Hutloffら、Nature 1999、397:263−265;Peachら、JExpMed1994、180:2049−2058)に結合するポリペプチド、例えば、CD28結合ポリペプチドB7.1(CD80;Schwartz、1992;Chenら、1992;Ellisら、J.Immunol.、156(8):2700−9)およびB7.2(CD86;Ellisら、J.Immunol.、156(8):2700−9);インテグリンファミリー(すなわち、LFA−1(CD11a/CD18);Sedwickら、JImmunol1999、162:1367−1375;Wulfingら、Science1998、282:2266−2269;Lubetal.Immunol Today1995、16:479−483)のメンバーに結合するポリペプチド、例えば、ICAMファミリーのメンバー(すなわち、ICAM−1、−2または−3);CD2ファミリーメンバー(すなわち、CD2、信号伝達リンパ球活性分子(CDw150または「SLAM」;Aversaら、JImmunol1997、158:4036−4044))に結合するポリペプチド、例えば、CD58(LFA−3;CD2リガンド;Davisら、Immunol Today1996、17:177−187)またはSLAMリガンド(Sayosら、Nature1998、395:462−469);熱安定抗原(HSAまたはCD24;Zhouら、EurJImmunol1997、27:2524−2528)に結合するポリペプチド;TNF受容体(TNFR)ファミリーのメンバー(すなわち、4−1BB(CD137;Vinayら、Semin Immunol1998、10:481−489)、OX40(CD134;Weinbergら、Semin Immunol 1998、10:471−480;Higginsら、JImmunol1999、162:486−493)、およびCD27(Lensら、SeminImmunol1998、10:491−499))に結合するポリペプチド、例えば、4−1BBL(4−1BBリガンド;Vinayら、Semin Immunol 1998、10:481−48;DeBenedetteら、J Immunol1997、158:551−559)、TNFR関連因子−1(TRAF−1;4−1BBリガンド;Saoulliら、J Exp Med 1998、187:1849−1862、Archら、Mol Cell Biol1998、18:558−565)、TRAF−2(4−1BBおよびOX40リガンド;Saoulliら、J Exp Med 1998、187:1849−1862;Oshimaら、Int Immunol 1998、10:517−526、Kawamataら、J Biol Chem 1998、273:5808−5814)、TRAF−3(4−1BBおよびOX40リガンド;Archら、Mol Cell Biol1998、18:558−565;Jangら、Biochem Biophys ResCommun 1998、242:613−620;Kawamataら、J Biol Chem 1998、273:5808−5814)、OX40L(OX40リガンド;Gramagliaら、J Immunol 1998、161:6510−6517)、TRAF−5(OX40リガンド;Archら、Mol Cell Biol 1998、18:558−565;Kawamataら、J Biol Chem 1998、273:5808−5814)、およびCD70(CD27、リガンド;Coudercら、Cancer Gene Ther.、5(3):163−75)などが挙げられる。CD154(CD40ligおよび/または「CD40L」;Gurunathanら、J.Immunol。、1998、161:4563−4571;Sineら、Hum.Gene Ther.、2001、12:1091−1102)も適切である。
【0070】
1つ以上のサイトカインもまた、本発明の組成物におけるポリペプチドまたは核酸によってコードされたものの適切な共刺激成分または「アジュバント」となり得る(Parmianiら、Immunol Lett 2000 Sep.15;74(1):41−4;Berzofskyら、Nature Immunol.1:209−219)。適切なサイトカインとしては、例えば、インターロイキン2(IL−2)(Rosenbergら、NatureMed.4:321−327(1998))、IL−4、IL−7、IL−12(Pardollによりレビュー、1992;Harriesら、J.Gene Med.2000 Jul−Aug;2(4):243−9;Raoら、J.Immunol.156:3357−3365(1996))、IL−15(Xinら、Vaccine、17:858−866、1999)、IL−16(Cruikshankら、J.LeukBiol.67(6):757−66、2000)、IL−18(J.Cancer Res.Clin.Oncol.2001.127(12):718−726)、GM−CSF(CSF(Disisら、Blood、88:202−210(1996))、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、またはIFN−αまたはINF−γなどのインターフェロンが挙げられる。他のサイトカインも、当該分野において公知であるように、本発明の実施に適している。
【0071】
ケモカインも利用することができる。例えば、腫瘍自己抗原へ融合したCXCL10(IP−10)およびCCL7(MCP−3)を含む融合タンパク質が抗腫瘍免疫を誘発することが示されている(Biragynら、Nature Biotech.1999、17:253−258)。ケモカインCCL3(MIP−1.アルファ.)およびCCL5(RANTES)(Boyerら、ワクチン、1999、17(Supp.2):S53−S64)もまた、本発明の実施に有用であり得る。他の適切なケモカインは、当該分野において公知である。
【0072】
「シグナル伝達分子」は、化学生物化合物であり、細胞間の情報伝達に用いられる。このような分子は、シグナルの送信元である細胞から放出され、細胞間の隙間を拡散によって通過し、別の細胞中の特異的な受容体と作用し、細胞中に変化を発生させる一連の酵素制御反応を活性化させることにより当該細胞中の反応のトリガーとなる。例えば、人体のいくつかの細胞によって少量だけ生成される硫化水素は複数の生物シグナル伝達機能を有する。ひとえに例示として、酸化窒素および一酸化炭素がある。
【0073】
抑制または負の免疫調節機構も遮断することができ、その結果、免疫反応が向上することが、当該分野において公知である。例えば、抗CTLA−4抗体(Shrikantら、Immunity、1996、14:145−155;Sutmullerら、J.Exp.Med.、2001、194:823−832)、抗CD25抗体(Sutmuller、上記)、抗CD4抗体(Matsuiら、J.Immunol.、1999、163:184−193)、融合タンパク質IL13Ra2−Fc(Terabeら、NatureImmunol.、2000、1:515−520)、およびこれらの組み合わせ(すなわち、抗CTLA−4および抗CD25抗体、Sutmuller、上記)を用いた治療により、抗腫瘍免疫反応を上方制御できることが分かっており、本発明の実行に適している。
【0074】
これらの成分は、任意のものを単独で用いることも、他の薬剤と組み合わせて用いることもできる。例えば、CD80、ICAM−1およびLFA−3の組み合わせ(「TRICOM」)は、抗がん免疫反応を促進することができる(Hodgeら、Cancer Res.59:5800−5807(1999)。他の有効な組み合わせとしては、例えば、IL−12+GM−CSF(Ahlersら、J.Immunol.、158:3947−3958(1997);Iwasakiら、J.Immunol.158:4591−4601(1997))、IL−12+GM−CSF+TNF−α(Ahlersら、Int.Immunol。13:897−908(2001))、CD80+IL−12(Fruendら、Int.J.Cancer、85:508−517(2000);Raoら、上記)およびCD86+GM−CSF+IL−12(Iwasaki、上記)が挙げられる。当業者であれば、本発明の実施において有用なさらなる組み合わせを認識することができる。加えて、当業者であれば、さらなる試薬または方法をこのような機構の調整に用いることが可能であることを認識することができる。これらの試薬および方法ならびに当業者に公知の他のものを、本発明の実施において用いることができる。
【0075】
核酸を用いた免疫付与効率を向上させるためには、例えば、自己複製ウイルスレプリコンの利用(Caleyら、1999.Vaccine、17:3124−2135;Dubenskyら、2000.Mol.Med.6:723−732;Leitnerら、2000.Cancer Res.60:51−55)、コドンの最適化(Liuら、2000.Mol.Ther.、1:497−500;Dubensky、上記;Huangら、2001.J.Virol.75:4947−4951)、in vivoでのエレクトロポレーション(Wideraら、2000.J.Immunol.164:4635−3640)、CpG刺激モチーフの採用(Gurunathanら、Ann.Rev.Immunol.、2000、18:927−974;Leitner、上記;Choら、J.Immunol.168(10):4907−13)、エンドサイトーシスまたはユビキチン処理経路の標的のための配列(Thomsonら、1998.J.Virol.72:2246−2252;Veldersら、2001.J.Immunol.166:5366−5373)、マレック病ウイルス型1VP22配列(J.Virol.76(6):2676−82、2002)、プライムブーストレジメン(Gurunathan、上記;Sullivanら、2000.Nature、408:605−609;Hankeら、1998.ワクチン、16:439−445;Amaraら、2001.Science、292:69−74)、および粘膜送達ベクター(例えば、サルモネラ菌)の使用(Darjiら、1997.Cell、91:765−775;Wooら、2001.Vaccine、19:2945−2954)などのさらなる戦略も利用可能である。他の方法も当該分野において公知であり、そのうちいくつかについて下記に説明する。
【0076】
化学療法薬剤、放射線療法、抗血管形成分子または他の薬剤も、p62ポリペプチドまたはp62をコードする核酸を用いたがんの治療および/または予防において用いることができる(Sebtiら、Oncogene2000Dec.27;19(56):6566−73)。例えば、転移性乳癌の治療において有用な化学療法薬剤としては、シクロホスファミド、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ナベルビン、カペシタビンおよびマイトマイシンCなどが挙げられる。例えば、シクロホスファミド+メトトレキサート+5−フルオロウラシル、シクロホスファミド+ドキソルビシン+5−フルオロウラシルまたはシクロホスファミド+ドキソルビシンなどを用いた組み合わせ化学療法レジメンの有効性が分かっている。例えば、プレドニゾン、タキサン、ナベルビン、マイトマイシンCまたはビンブラスチンなどの他の化合物が、多様な理由のために用いられている。大半の乳癌患者は、エストロゲン受容体が陽性(ER+)の腫瘍を有し、これらの患者には、内分泌治療(すなわち、タモキシフェン)が化学療法よりも好ましい。このような患者の場合、タモキシフェンまたは第2のライン治療としてプロゲスチン(メドロキシプロゲステロン酢酸エステルまたはメゲストロール酢酸エステル)が好適である。アロマターゼ阻害薬(すなわち、アミノグルテチミドおよびそのアナログ(例えば、レトロゾール))を用いた場合、腫瘍成長の維持に必要なエストロゲンの利用可能性が低減するため、アロマターゼ阻害薬を第2または第3のラインの内分泌治療として特定の患者において用いることができる。
【0077】
他のがんの場合、異なる化学療法レジメンが必要となり得る。例えば、転移性結腸直腸癌の治療は典型的には、Camptosar(イリノテカンまたはCPT−11)、5−フルオロウラシルまたはロイコボリンを単独でまたは組み合わせて行われることが多い。MMP阻害薬marimastate(British Biotech)、COL−3(Collagenex)、Neovastat(Aeterna)、AG3340(Agouron)、BMS−275291(Bristol Myers Squibb)、CGS27023A(Novartis)もしくはインテグリン阻害薬Vitaxin(Medimmuneなどのプロテイナーゼおよびインテグリン阻害薬、またはMED1522(MerckKgaA)も適切に使用することができる。そのため、結腸直腸癌に関連する免疫原性標的の免疫標的化は、これらの化学療法薬剤を用いた治療と組み合わせて行うことができる。同様に、他の種類のがんの治療に用いられる化学療法薬剤は当該分野において周知であるから、本明細書中に記載の免疫原性標的と組み合わせることができる。
【0078】
多数の抗血管形成薬剤が当該分野において公知であり、p62核酸またはポリペプチドワクチンとの同時投与に適している(例えば、Timarら、2001.Pathology Oncol.Res.、7(2):85−94を参照)。このような薬剤としては、例えば、生理的薬剤(例えば、成長因子(すなわち、ANG−2、NK1、2、4(HGF)、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF−β))、サイトカイン(すなわち、インターフェロン(例えば、IFN−α、−β、−γ、血小板因子4(PF−4)、PR−39)、プロテアーゼ(すなわち、切断AT−III、コラーゲンXVIIIフラグメント(エンドスタチン))、HmwKallikrein−d5プラスミンフラグメント(アンジオスタチン)、プロトロンビン−F1−2、TSP−1)、プロテアーゼ阻害薬(すなわち、メタロプロテアーゼの組織阻害薬(例えば、TIMP−1、−2、または−3;マスピン;プラスミノーゲン活性化剤阻害薬(例えば、PAI−1);色素上皮由来因子(PEDF))、タムスタチン(ILEX、Inc.から入手可能)、抗体生成物(すなわち、コラーゲン結合抗体HUIV26、HUI77、XL313;抗VEGF;抗インテグリン(すなわち、Vitaxin、(Lxsys)))、およびグリコシダーゼ(すなわち、ヘパリナーゼ−I、−III)が挙げられる。血管新生関連抗原に対するアンタゴニストである分子(タンパク質およびポリペプチドなど)も適しており、例えば、VEGF、VEGF受容体、EGFR、bFGF、PDGF−B、PD−ECGF、TGF−αを含むTGF、エンドグリン、Idタンパク質、多様なプロテアーゼ、酸化窒素シンターゼ、アミノペプチダーゼ、トロンボスポンジン、k−ras、Wnt、サイクリン依存型キナーゼ、微小管、ヒートショックタンパク質、ヘパリン結合因子、シンターゼ、コラーゲン受容体、インテグリン、および表面プロテオグリカンNG2に対する分子が挙げられるが、これらに限定されない。抗血管形成の可能性を持つと考えられる「化学的」または修飾生理的薬剤としては、例えば、ビンブラスチン、タキソール、ケトコナゾール、サリドマイド、ドラスタチン、コンブレタスタチンA、ラパマイシン(Gubaら、2002、NatureMed.、8:128−135)、CEP−7055(Cephalon、Inc.から入手可能)、フラボン酢酸、Bay 12−9566(BayerCorp.)、AG3340(Agouron、Inc.)、CGS.27023A(Novartis)、テトラサイクリン誘導体(すなわち、COL−3(Collagenix、Inc。))、Neovastat(Aeterna)、BMS−275291(Bristol−MyersSquibb)、低用量5−FU、低用量メトトレキサート(MTX)、イルソグラジン、ラディシコール、シクロスポリン、カプトプリル、セレコキシブ、D45152−硫酸ポリサッカライド、カチオン性タンパク質(Protamine)、カチオン性ペプチド−VEGF、Suramin(polysulphonated napthylurea)、VEGFの機能または生成と干渉する化合物(すなわち、SU5416またはSU6668(Sugen)、PTK787/ZK22584(Novartis))、DistamycinA、Angiozyme(リボザイム)、isoflavinoid、スタウロスポリン誘導体、ゲニステイン、EMD121974(Merck KcgaA)、チロホスチン、isoquinolone、レチノイン酸、カルボキシアミノトリアゾール、TNP−470、オクトレオチド、2−メトキシエストラジオール、アミノステロール(すなわち、スクアラミン)、グルタチオンアナログ(すなわち、N−acteyl−L−システイン)、コンブレタスタチンA−4(Oxigene)、Eph受容体遮断薬(Nature、414:933−938、2001)、Rh−アンジオスタチン、Rh−エンドスタチン(WO01/93897)、サイクリック−RGDペプチド、accutin−ディスインテグリン、ベンゾジゼピン、ヒト化抗avb3Ab、Rh−PAI−2、アミロライド、p−アミノベンザミジン、抗uPAab、抗uPARAb、L−フェニルアラニン−N−メチルアミド(すなわち、Batimistat、Marimastat)、AG3340およびミノサイクリンが挙げられる。他にも多数の適切な薬剤が当該分野において公知であり、本発明の実施において十分である。
【0079】
本発明は、従来と異なるがん治療方法とも組み合わせて用いることが可能である。例えば、特定の嫌気性菌を投与すると、腫瘍成長の遅延を支援できることが知られている。1つの研究において、ファージエピソーム上において実行される毒素遺伝子を除去したClostridium novyiを、結腸直腸腫瘍のあるマウスへと投与する(Dangら、P.N.A.S.USA、98(26):15155−15160、2001)。化学療法と組み合わせると、この治療は、動物中の腫瘍の壊死を発生させることが分かっている。本出願中に記載される試薬および方法は、このような治療方法と組み合わせることができる。
【0080】
いくつかの利用可能な技術のうちの任意のものを用いて、p62ポリペプチドをコードする核酸を患者へ投与することができる。核酸をホストへ導入するために成功裏に用いられている多様なウイルスベクターを挙げると、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、およびポックスウイルスなどがある。当該分野において、多数のこのようなウイルスベクターが利用可能であることが理解されている。本発明に係るベクターは、当業者が広く利用可能な標準的組換え技術を用いて構築することができる。このような技術は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrook、ら、1989、Cold Spring Harbor Laboratory Press)、Gene Expression Technology(Methods in Enzymology、Vol.185、edited by D.Goeddel、1991.Academic Press、San Diego、Calif.)およびPCRProtocols:A Guide to Methods and Applications(Innisら、1990.Academic Press、San Diego、Calif.などの一般的な分子生物学の参照文献に記載されている。
【0081】
適切なレトロウイルスベクターとしては、レンチウイルスの誘導体ならびにマウスまたはトリレトロウイルスの誘導体が挙げられる。適切なレトロウイルスベクターとしては、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、SIV、BIV、HIVおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)が挙げられる。多くのレトロウイルスベクターにおいて、複数の外来性核酸配列を挿入することができる。組換えレトロウイルスは欠陥があるため、感染性ベクター粒子を生成するための助けが必要である。この助けは、例えば、レトロウイルス構造遺伝子をコードするヘルパー細胞株によって得ることができる。適切なヘルパー細胞株としては、例えば、PSI.2、PA317およびPA12などが挙げられる。このような株化細胞を用いて生成されるベクタービリオンを用いて、NIH3T3細胞などの組織細胞株を感染させ、大量のキメラレトロウイルスビリオンを生成することができる。レトロウイルスベクターの投与は、従来の方法(すなわち、注射)によって行ってもよいし、あるいは、「産生細胞株」を標的細胞集団の近隣に移植することによって行ってもよい(Culver、K.、ら、1994、Hum.Gene Ther.、5(3):343−79;Culver、K.、ら、Cold Spring Harb.Symp;Quant.Biol.、59:685−90);Oldfield、E.、1993、Hum.Gene Ther.、4(1):39−69)。産生細胞株は、ウイルスベクターを生成し、標的細胞の近隣にウイルス粒子を放出するように調節されている。放出されたウイルス粒子のうち一部は標的細胞と接触し、これらの細胞を感染させ、その結果、本発明の核酸を標的細胞へと送達させる。標的細胞を感染させた後、ベクター発現が発生する。
【0082】
アデノウイルスベクターは、真核生物細胞中への遺伝子導入に特に有用であることが実証されている(Rosenfeld、M.ら、1991、Science、252(5004):431−4;Crystal、R.ら、1994、Nat.Genet.、8(1):42−51)、真核生物遺伝子発現の研究(Levrero、M.、ら、1991、Gene、101(2):195−202)、ワクチン開発(Graham、F.and Prevec、L.、1992、Biotechnology、20:363−90)、および動物モデル(Stratford−Perricaudet、L.、ら、1992、Bone Marrow Transplant.、9(Suppl.1):151−2;Rich、D.、ら、1993、Hum.Gene Ther.、4(4):461−76)。in vivoで組換えアデノウイルスを異なる組織へ投与するための実験経路としては、気管内投与(Rosenfeld、M.、ら、1992、Cell、68(1):143−55)筋肉注射(Quantin、B.、ら、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、89(7):2581−4)、末梢静脈内注射(Herz、J.、およびGerard、R.、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、90(7):2812−6)および脳への定位的接種(LeGalLaSalle、G.ら、1993、Science、259(5097):988−90)などが挙げられる。
【0083】
アデノ関連ウイルス(AAV)は、ホスト細胞ゲノムへの統合において、高レベルの感染力、広範な宿主範囲および特異性を示す(Hermonat、P.ら、1984、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、81(20):6466−70)。単純ヘルペスウイルス型1(HSV−1)も、別の魅力的なベクターシステムであり、向神経性があるため、特に神経系用途に適している(Geller、A.ら、1991、Trends Neurosci.、14(10):428−32;Gloriosoら、1995、Mol.Biotechnol.、4(1):87−99;Gloriosoら、1995、Annu.Rev.Microbiol.、49:675−710)。
【0084】
ポックスウイルスは、別の有用な発現ベクターである(Smithら、1983、Gene、25(1):21−8;Mossら、1992、Biotechnology、20:345−62;Mossら、1992、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、158:25−38;Mossら、1991.Science、252:1662−1667)。ポックスウイルスは、牛痘、NYVAC、アビポックス、鶏痘、カナリア痘、ALVAC、およびALVAC(2)などを含むことが分かっている。
【0085】
NYVAC(vP866)は、コペンハーゲンワクチン系統の牛痘ウイルスから、既知または可能性のある病原性因子をコードするゲノムの6個の非必須領域を除去することにより、調製された(例えば、米国特許第5,364,773号および第5,494,807号を参照)。欠失座位も、外来遺伝子の挿入のためのレシピエント座位として操作した。欠失領域を以下に示す:チミジンキナーゼ遺伝子(TK;J2R);出血性領域(u;B13R+B14R);A型封入体領域(ATI;A26L);ヘマグルチニン遺伝子(HA;A56R);ホスト範囲遺伝子領域(C7L−K1L);および、大型サブユニット、リボヌクレオチドリダクターゼ(I4L)。NYVACは、遺伝子操作された牛痘ウイルス系統であり、病原性およびホスト範囲に関連する遺伝子生成物をコードする18個のオープンリーディングフレームを特異的に欠失させることにより調製された。NYVACは、TA発現に有用であることがわかっている(例えば、米国特許第6,265,189号を参照)。NYVAC(vP866)、vP994、vCP205、vCP1433、placZH6H4Lリバース、pMPC6H6K3E3およびpC3H6FHVBは、ブタペスト条約に基づくATCCに、それぞれ、受入番号VR−2559、VR−2558、VR−2557、VR−2556、ATCC−97913、ATCC−97912およびATCC−97914として寄託されている。
【0086】
ALVAC組換えウイルス(すなわち、ALVAC−1およびALVAC−2)も、本発明の実行において適している(例えば、米国特許第5,756,103を参照し)。ALVAC(2)は、ゲノムが牛痘プロモーターの制御下において牛痘E3LおよびK3L遺伝子を含む点を除いて、ALVAC(1)と同一である(米国特許第6,130,066号;Beattieら、1995a、1995b、1991;Changら、1992;Daviesら、1993)。ALVAC(1)およびALVAC(2)はどちらとも、TAsなどの外来DNA配列の発現に有用であることが分かっている(Tartagliaら、1993a、b;米国特許第5,833,975号)。ALVACは、ブタペスト条約に基づくAmerican Type Culture Collection(ATCC)(10801UniversityBoulevard、Manassas、Va.20110−2209、USA)にATCC受入番号VR−2547として寄託されている。
【0087】
別の有用なポックスウイルスベクターとして、TROVACがある。TROVACは弱毒鶏痘であって、初生びなのワクチン接種のためにライセンスされた鶏痘ウイルスのFP−1ワクチン系統からプラーククローンによる単一株である。TROVACも、ブタペスト条約に基づくATCCに、受入番号2553として寄託されている。
【0088】
「非ウイルス」であるプラスミドベクターも、本発明の実施に適している。適切なプラスミドベクターは、バクテリア、昆虫および/または哺乳類ホスト細胞と適合することができる。このようなベクターとしては、例えば、PCR−II、pCR3、およびpcDNA3.1(In vitrogen、SanDiego、Calif.)、pBSII(Stratagene、LaJolla、Calif.)、pET15(Novagen、Madison、Wis.)、pGEX(Pharmacia Biotech、Piscataway、N.J.)、pEGFP−N2(Clontech、PaloAlto、Calif.)、pETL(BlueBacII、In vitrogen)、pDSR−アルファ(PCTpub.No.WO90/14363)およびpFastBacDual(Gibco−BRL、Grand Island、N.Y.)およびBluescript.RTM.プラスミド誘導体(多コピーCOLE1に基づくファージミド、Stratagene Cloning Systems、LaJolla、Calif.)、Taq増幅PCR生成物のクローニングのために設計されたPCRクローニングプラスミド(例えば、TOPO.TM.TACloning.RTM.kit、PCR2.1.RTM..RTM.プラスミド誘導体、In vitrogen、Carlsbad、Calif.)などが挙げられる。バクテリアベクターも、本発明において用いることができる。これらのベクターとしては、例えば、シゲラ、サルモネラ菌、コレラ菌、乳酸菌、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、およびレンサ球菌がある(例えば、WO88/6626;WO90/0594;WO91/13157;WO92/1796;およびWO92/21376を参照)。多数の他の非ウイルスプラスミド発現ベクターおよびシステムが当該分野において公知であり、本発明において用いることが可能である。
【0089】
適切な核酸送達技術を挙げると、DNAリガンド複合体、アデノウイルスリガンドDNA複合体、DNAの直接射、CaPO.sub.4沈殿、遺伝子銃技術、エレクトロポレーション、およびコロイド分散系などが挙げられる。コロイド分散系としては、マクロ分子複合体、ナノカプセル、微小球、ビード、ならびに水中油型乳剤、ミセル、混合ミセルおよびリポソームなどの脂質ベースのシステムが挙げられる。本発明に好適なコロイド系はリポソームである。リポソームは、人工膜ベジクルであり、in vitroおよびin vivoでの送達溶媒として有用である。RNA、DNAおよび無傷なビリオンを水性内部へ封入し、生物活性を有する様態で細胞へと送ることができる(Fraley、R.、ら、1981、TrendsBiochem.Sci.、6:77)。リポソームの組成は、リン脂質(特に、相転移温度が高いリン脂質)、ステロイド(特に、コレステロール)と組み合わされることが多い。他のリン脂質または他の脂質も利用可能である。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度および二価カチオンの存在に依存する。リポソーム生産に有用な脂質としては、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシドおよびガングリオシドなどのホスファチジル化合物が挙げられる。特に有用なものとして、脂質部分に14〜18の炭素原子、好ましくは16〜18の炭素原子を含み、飽和したジアシルホスファチジルグリセロールが挙げられる。例示的なリン脂質を挙げると、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンがある。
【0090】
免疫原性標的が1つ以上のアジュバントと組み合わせて投与することにより、免疫反応を向上させることも可能である。例示的アジュバントを以下の表3中に示す。
【表3】
【0091】
いくつかの実施形態において、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62をコードする核酸は、疾患、障害および/または状態の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、遅延発病(予防)、進行抑制、重症度低減および/または発生低減のために用いることができる。いくつかの実施形態において、p62ポリペプチドまたはp62をコードする核酸は、癌および/または癌細胞などの固形腫瘍の治療に用いることができる。「癌」という用語は、前悪性がんおよび悪性がんを含む。がんの例を非限定的に挙げると、前立腺癌、胃癌、結腸直腸癌、メラノーマまたは基底細胞カルチノーマなどの皮膚癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、頭部および頚部、気管支癌、膵臓癌、膀胱癌、脳または中枢神経系癌、末梢神経系癌、食道癌、口腔または咽頭の癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、肉腫、血液組織の癌などがある。「がん細胞」は、腫瘍の形態をとり得、対象(例えば、白血病細胞または腹水)内に存在し得るか、またはがんから得られた株化細胞であり得る。
【0092】
がんは、多様な身体的症状と関連付けられる。がんの症状は一般的には、がんの種類および位置によって異なる。例えば、肺癌の場合、咳、息切れおよび胸痛が発生し得、結腸癌の場合、下痢、便秘および血便が発生することが多い。しかし、多数のがんにおいて以下の症状が発症することが多い熱、悪寒、寝汗、咳、呼吸困難、体重減少、食欲減退、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、貧血、黄疸、肝腫、喀血、疲労、倦怠感、認知障害、鬱、ホルモン障害、好中球減少症、痛み、非治癒性の痛み、リンパ節膨張、末梢神経障害、および性機能障害。
【0093】
本発明の一面として、がん(例えば、前立腺癌や乳癌)の治療方法が提供される。いくつかの実施形態において、がんの治療は、治療的に有効な量のp62ポリペプチドまたはp62をコードする核酸を必要としている対象へ相当量だけ、かつ所望の結果を達成するために必要なタイミングで投与することを含む。本発明の特定の実施形態において、本発明の標的粒子の「治療に有効な量」とは、がんの1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、遅延発病、進行抑制、重症度低減および/または発生低減のために有効な量である。
【0094】
本発明の一面として、p62ポリペプチドまたp62をコードする核酸p62を、がん(例えば、乳癌)に罹患しているまたは再発している対象に投与する方法が提供される。いくつかの実施形態において、p62ポリペプチドまたはp62をコードする核酸は、所望の結果(すなわち、がんの治療)を達成するために、必要な量および必要な時間、対象へ投与される。本発明の特定の実施形態において、p62ポリペプチドおよびp62をコードする核酸の「治療に有効な量」とは、がんの1つ以上の症状または特徴発生の治療、緩和、改善、軽減、遅延発病、進行抑制、重症度低減および/または発生低減のために有効な量である。いくつかの実施形態において、本発明のp62ポリペプチドまたはp62をコードする核酸は、過去にがん治療を受けていた対象へ投与される。いくつかの実施形態において、本発明のp62ポリペプチドまたはp62をコードする核酸は、がんの家族歴がある対象へ投与される。いくつかの実施形態において、本発明のp62ポリペプチドまたはp62をコードする核酸は、がんの素因を有する対象へ投与される。例えば、BRCA陽性の対象は一般的には、特定の形態の乳癌素因を有する。
【0095】
本発明の治療プロトコルは、治療に有効な量のp62ポリペプチドまたはp62をコードする核酸を健康な個人(すなわち、がんの任意の症状を示していない対象および/またはがんと診断されていない個人)へ投与することを含む。例えば、健康な個人に対し、がん進行および/またはがん症状が発症する前に、p62ポリペプチドまたはp62をコードする核酸によって「免疫化」したり、リスクのある個人(例えば、がんの家族歴を持つ患者、がん進行に関連する1つ以上の遺伝子変異を有する患者、がん進行に関連する遺伝的多型を有する患者、がん進行に関連するウイルスに感染している患者、がん進行に関連する習慣および/またはライフスタイルを有する患者など)に対し、がんの症状の発病と実質的に同時に(例えば、48時間以内、24時間以内または12時間以内)に治療したりすることができる。もちろん、がんであることが分かっている個人に対しては、本発明による治療を任意のタイミングで行ってもよい。
【0096】
他の実施形態において、本発明のp62ポリペプチドまたはp62をコードする核酸は、がん細胞(例えば、乳癌細胞)の成長抑制に用いることができる。本明細書中の「がん細胞の成長抑制」または「がん細胞の成長を抑制する」という表現は、
癌細胞増殖および/または遊走の速度を遅らせること、
癌細胞増殖および/または遊走の抑止すること、
癌細胞を死滅させることのうちのいずれかであって、処理していない対照癌細胞において予測される成長速度と比較して、がん細胞成長速度がおそくなることを意味する。「成長抑制」という表現も、癌細胞または腫瘍のサイズ低減または消滅ならびにその転移能の低減を指す。好適には、このような細胞レベルにおける抑制により、サイズ低減、成長阻止、攻撃性低減、または患者中の癌転移の回避または抑制が可能となる。当業者であれば、多様な適切な兆候のうち任意のものを用いて、がん細胞の成長を抑制すべきかを容易に決定することができる。
【0097】
がん細胞の成長抑制は、例えば、細胞サイクルの特定フェーズにおける癌細胞の抑止(例えば、細胞サイクルのG2/Mフェーズにおける抑止)によって証明することができる。がん細胞の成長抑制は、癌細胞または腫瘍のサイズを直接測定または間接測定することによって証明することっもできる。ヒト癌患者においては、このような測定は一般的には、磁気共鳴画像、コンピュータ断層撮影およびX線などの周知の画像化方法を用いて行われる。癌細胞成長はまた、間接的に決定することもできる(例えば、がん胎児性抗原、前立腺特異的抗原またはがん細胞成長に関連する他のがん特異的抗原の循環レベルを決定すること)。がん成長の抑制は一般的には、対象の生存期間の延長および/または健康増進とも関連する。
【0098】
本明細書中に記載される化合物および組成物は、薬学的に許容できるキャリアとともに、医薬品または薬物として処方されたものとして投与することができる。そのため、これらの化合物および組成物は、薬物または医薬品組成物の製造において用いることができる。本発明の医薬品組成物は、溶液として処方してもよいし、あるいは非経口投与のために凍結乾燥粉末として処方してもよい。粉末は、適切な希釈剤または他の薬学的に許容可能なキャリアを加えて再構成した後、使用することができる。液体処方は、緩衝溶液、等張溶液、水溶液であり得る。粉末を乾燥形態で噴霧してもよい。適切な希釈剤の例として、通常の等張食塩水溶液、標準的な5%デキストロース水溶液、またはナトリウムまたは酢酸アンモニウム緩衝液がある。このような処方は、非経口投与に特に適しているが、経口投与、あるいは、定量吸入器または噴霧器に入れて吸入することも可能である。ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アカシア、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどの賦形剤を付加することが望ましい場合がある。
【0099】
あるいは、化合物および組成物を経口投与のためにカプセル化、錠剤化エマルジョンまたはシロップとすることも可能である。医薬的に受容可能な固体または液体のキャリアを、組成物の向上または安定のため、あるいは組成物調製の容易化のために付加することができる。固体キャリアとしては、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム二水和物、白土、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸、タルク、ペクチン、アカシア、寒天またはゼラチンが挙げられる。液体キャリアとしては、シロップ、ピーナツオイル、オリーブオイル、生理食塩水および水が挙げられる。キャリアは、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリルなどの徐放性材料も単独でまたはワックスと共に含み得る。固体キャリアの好適な含有量は、投与単位あたり約20mg〜約1gである。医薬品の調製は、錠剤形態または硬質のゼラチンカプセル形態のための製粉、混合および充填のために、従来の医薬技術に従って必要に応じて行われる(例えば、製粉、混合、顆粒化および圧縮)。液体キャリアが用いられる場合、調製は、シロップ、エリキシル剤、エマルジョンまたは水溶性懸濁液または非水溶性懸濁液の形態をとり得る。直腸投与の場合、本発明の化合物を、ココアバター、グリセリン、ゼラチンまたはポリエチレングリコールなどの賦形剤と組み合わせ、坐薬に成型することができる。
【0100】
化合物および組成物は、他の医学的に有用な薬剤または生物薬剤を含むように処方することができる。化合物および組成物はまた、本発明の化合物および組成物が適用される疾患または状態のために有用な他の薬剤または生物薬剤の投与と共に投与することもできる。
【0101】
本明細書中の「有効な量」とは、レシピエントに対して有用な効果を付与できるだけの十分な濃度が得られる投与量を指す。特定の対象に対する特異的な治療的に有効な投与量は、治療対象障害、障害の重症度、特異的化合物または組成の活性、投与経路、化合物または組成のクリアランス率、治療期間、化合物または組成と共に用いられる薬剤、年齢、体重、性別、ダイエット、対象の一般的健康などの医学分野および科学分野において公知の因子に応じて異なる。「治療的に有効な量」を決定する際に考慮される多様な一般的考慮事項は当業者にとって公知であり、例えば、Gilmanら、eds.、Goodman And Gilman’s:The Pharmacological Bases of Therapeutics、8th ed.、Pergamon Press、1990;およびRemington’s Pharmacautical Sciences、17th ed.、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1990中に記載がある。典型的な投与量レベルは、約0.001〜100mg/kg/1日であり、約0.05〜10mg/kg/1日の範囲であれば一般的に許容可能である。化合物または組成物は、血管内、静脈内、動脈内、筋肉内、眼球内、皮内および皮下などに非経口で投与することができる。また、経口、経鼻、経直腸、経皮的、膣内またはエアロゾル吸入によって投与することもできる。化合物または組成ぶつは、腫瘍を有する(または腫瘍の標的となる可能性のある)臓器あるいは腫瘍そのものへと投与され得る。化合物または組成物は、急速静注として投与してもよいし、またはゆっくり注入してもよいし、あるいは皮内、皮下、筋肉内または腹腔内注射によって投与してもよい。
【0102】
治療に有効な投与量を推定するには、まずp62ポリペプチドをコードする核酸の導入によるp62の発現レベルを細胞培養アッセイにより決定する。その後、動物モデルにおける適切な免疫反応および/または腫瘍成長の抑制が得られる服用量が決定される。このような情報を用いて、ヒトへの有用な初期用量をより高精度に決定することができる。正確な処方、投与経路および投与量は、個々の医師が患者の状態を鑑みて決定することができる。
【実施例】
【0103】
実施例1.株化細胞sおよびベクター構成
ラットHER/2neuがん遺伝子が過剰発現しているA233−VSGA1乳癌株化細胞を、FVB/neuNTトランスジェニックマウスに発生したマウス乳癌から得た。この株化細胞を上記したように維持した(NanniP、PupaSM、NicolettiGら、Int J Cancer 2000;87:186)。HeLa細胞(ATCC#CCL−2.2(登録商標))を、ATCC完全成長媒体(ATCCMD−6108)中で培養した。
【0104】
ラットHER2/neuの細胞外ドメインをPCRによって増幅させ、前記のようにpcDNA3.1ベクター(Invitrogen)中にクローン化した(FM Venanzi、A Barucca、K Havas、M Capitani、M Provinciali S Scotti、A Concetti.Vaccine 2010(22);3841−7)。
【0105】
p62をコードするcDNAのソースとして、全RNAをHeLa細胞から調製した。全長cDNAは、p62のより長いイソ型(Transcript Variant 1、GenBank RefereceNo.NP_003891)をコードする以下のプライマーを用いてPCRによって増幅させた(HotStar HiFidelity Polymerase Kit Qiagen):FW:5−CCCGCTAGCATGGCGTCGCTCACCGTG−3、およびREV:5’−CCCAAGCTTTCACAACGGCGGGGGATGCTTTG−3’。PCR生成物を精製し、NheI−HindIII消化フラグメントをpcDNA3.1にクローン化した。
【0106】
挿入されたp62DNAの配列を、シークエンシング(MGWBiotech/M−medical、Martinsried、ドイツ)によって確認した。コードされたポリペプチドは、野生型アミノ酸配列と2つの置換変異(すなわち、C145RおよびQ418R)において異なることが分かった。
実施例2.マウス乳癌モデルにおけるp62免疫付与の予防的抗腫瘍効果
【0107】
FVB/Nマウスを3つのグループに分けて(1グループあたり15匹のマウス)、下記のうちいずれかによって免疫化した。
1.pcDNA.3.1(空プラスミドベクター、陰性対照);
2.pHER2(陽性対照)のpcDNA.3.1、
3.p62のpcDNA.3.1(実験)。
【0108】
FVB/N雌を麻酔し、大腿四頭筋を露出させた後、生理食塩水中の100μgDNA(1mg/mL)をインスリン注射器によって注射した。マウスを2回免疫化した(腫瘍細胞接種の4週間前および2週間前)。マウス脇腹の皮内に、233−VSGA1腫瘍細胞3×10個/100μlのPBS緩衝液を接種させた。全ての場合において、2つの垂直方向直径をノギスによって1週間に3回決定することにより、腫瘍の測定を行った。腫瘍の潰瘍形成時点または直径が1cmに到達したとき、マウスを屠殺した。
【0109】
空プラスミドベクター(陰性対照)をワクチン接種したマウスのうち100%が、腫瘍細胞接種後13日目に腫瘍を形成していた。HER2をコードするプラスミドによってワクチン接種したマウスのうち40%が保護を示した(図4)。同時に、p62をコードするプラスミドの場合、13日目に100%保護を示し、その後徐々に70%まで低下した。その結果、移植可能な乳癌マウスモデルにおける、p62をコードするプラスミドによる保護効果が示された。よって、p62ワクチンの予防的効果が、マウスモデル中の乳癌において証明された。本発明者らによれば、ワクチン接種を継続すれば、100%の保護を維持することが可能であると仮定する。
【0110】
HER2またはp62をコードするプラスミドベクターによって免疫化され、初回の癌細胞接種後に癌が進行しなかった動物に対し、同量の癌細胞を50日目に接種した。HER2をコードするプラスミドによってワクチン接種された全ての動物では腫瘍進行がみられ、p62ワクチン接種した動物の場合、腫瘍発現は無かった。その結果、p62による免疫付与では、免疫記憶が維持されたが一方、HER2では免疫記憶は維持されなかった。
実施例3:p62ワクチンによる自然免疫刺激
【0111】
p62ワクチンを付与したマウス中の腫瘍においては、大きな壊死領域が含まれていた(図5)。この壊死領域内には、炎症関連の免疫細胞が豊富に存在する。
【0112】
HER2ワクチンは、抗原特異的適合免疫反応と、リンパ球の大規模遊走(CD3+細胞、腫瘍浸潤リンパ球)とを腫瘍細胞内で発生させる(図6)。同時に、p62プラスミドによるワクチン接種の場合、腫瘍浸潤リンパ球のレベルは有意に増加しなかった。逆に、HER2ワクチンではなくp62プラスミドを注射した場合、腫瘍中におけるCD11B+細胞のレベルがが増加した(図6)。その結果、HER2ワクチンと異なり、p62ワクチンは自然免疫刺激を通じて機能する。
実施例4:T5ラット乳癌モデル中のp62DNAワクチンの抗腫瘍活性の証明
【0113】
T5移植可能なラット乳癌を、Wistarラット(R.E.Kavetsky Institute of Experimental Pathology、Oncology and Radiobiology of National Academy of Sciences of Ukraine)の自発乳腺がんから得た。2月齢の雌のWistarラット(体重130〜150gm、1グループあたり10匹)に対し、腫瘍細胞2.5х10個/ラットとなるようように0.4mLのPBSを皮下注射することで癌誘発を行った。癌移植の翌日から、ラットに対して週1回のワクチン接種を3回行った(図7)。各注射は、78μgのpcDNA.3.1(空プラスミドベクター、陰性対照)またはp62を有するpcDNA.3.1(実験)を含む。
【0114】
p62ワクチン接種したラットにおいては、ベクター注射した対照ラット(p<0.004)(図9)と比較して、腫瘍成長がp62免疫付与(図8)によって70%腫瘍成長が抑制されていた。
【0115】
腫瘍移植されたラット(ベクター免疫8匹およびp62免疫8匹)の生存率を75日間観察した。対照グループの動物のうち50%が死亡したのに対し、p62ワクチン接種したグループにおいては、死亡は1匹もみられなかった(図10)。
【0116】
腫瘍の組織学的分析を行ったところ、壊死ゾーンが明らかとなった(図11)。p62DNAワクチンを受けたラット中の腫瘍内壊死は、p62DNAワクチンを受けたマウスの腫瘍中にみられるものと類似していた(図12)。
【0117】
その結果、p62DNAワクチンの抗腫瘍効果が第2の動物(ラット)モデルにおいて証明され、これにより、乳癌治療にp62DNAワクチンを用いることが可能であることが分かった。実施例5.p62DNAワクチンの抗転移性効力
【0118】
ルイス肺癌は、「ロシア版FDA」であるロシア連邦薬理学委員会によって公認されているモデルであり、抗転移性効果について薬剤を試験するために用いられる。腫瘍移植による腫瘍誘発の4週間前および2週間前と、腫瘍誘発の1日後、8日後および15日後とに、100μgのプラスミドを各マウスに筋肉内注射した。1グループあたり15匹の動物を用いた。図13は、p62ワクチン接種により、肺における転移が対照と比較して50%低減していることを示す。
【0119】
他に明記無き限り、本明細書中の全ての技術用語および科学用語は、本発明が関連する分野の当業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。
【0120】
本明細書中に例示的に記載された本発明は、任意の要素または要素、制限(単数または複数)が本明細書中に具体的に開示されていなくとも、適切に実行することができる。よって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などの用語は拡張的かつ非限定的に理解されるべきである。さらに、本明細書中において用いられる用語および表現は、詳細を示すために用いたものであり、制限的なものではない。また、このような用語および表現の使用において、図示および記載された特徴またはその一部の任意の均等物を排除することは意図されておらず、特許請求の範囲内において多様な変更が可能であることが認識される。
【0121】
よって、本発明について好適な実施形態および選択的特徴を具体的に開示してきたが、当業者であれば、本明細書中において具現化および開示された発明において変更、向上および改変が可能であり、このような変更、向上および改変は、本発明の範囲内にあることが理解される。本明細書中に記載される材料、方法および例は、好適な実施形態を示すものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0122】
本発明について、本明細書中において広範かつ一般的に記載してきた。一般的開示内より狭い種および下位グループ分けは、いずれも本発明の一部を形成する。これは、用いられる材料が本明細書中に具体的に記載されているか否かに関わらず、任意の対象を属から除去する条件または負の制限と共に、本発明の一般的な詳細を含む。
【0123】
加えて、本発明の特徴または局面をマーカッシュグループに基づいて記述する場合、当業者であれば、本発明が任意の個々の部材またはマーカッシュグループの部材の下位概念に基づいて記載されることを理解する。
【0124】
本明細書中の全ての公開文献、特許出願および他の参照文献全体を、あたかも個々の文献を援用しているかのように、明示的に援用する。矛盾が発生した場合、本明細書(定義を含む)が優先される。
【0125】
上記の開示は、本発明を当業者に理解してもらうことのみを意図したものであり、限定的なものではない。特許請求の範囲から逸脱することなく、開示の実施形態において多様な変更が可能であることが理解される。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]