【文献】
Rapid Commun. Mass Spectrom,2006年,20,pp.1469-1479
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に示される式Iおよび式IIの新規化合物は、強められた信号を有するグリカンおよびアミノ酸の迅速蛍光タグ付けに有用である。化合物は、グリカンを分析するために有用であり、それの少なくとも1つを含む試料中のタンパク質およびアミノ酸を分析するために使用することができる。分子を分析するために、分子は、本明細書に記載する化合物で素早く標識化され、液体クロマトグラフィー、質量分析および蛍光検出が行われる。
【0019】
本明細書では、「アルコキシ」という用語は、単独または組み合わせで、アルキルエーテル基を指し、ここで、用語アルキルは、以下に定義される。適切なアルキルエーテル基の例には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、iso−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、などが含まれる。
【0020】
本明細書では、「アルキル」という用語は、単独または組み合わせで、1から20個(20個を含む。)の炭素原子、好ましくは1から10個の炭素原子、より好ましくは1から6個の炭素原子を含む、直鎖または分岐鎖アルキル基を指す。アルキル基は、本明細書で定義されるように置換されていてもよい。アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチル、ノニルなどが含まれる。本明細書では、「アルキレン」という用語は、単独または組み合わせで、メチレン(−CH
2−)などの、2つ以上の位置で結合する直鎖または分岐鎖飽和炭化水素から誘導される飽和脂肪族基を指す。
【0021】
本明細書では、「アルキルアミノ」という用語は、単独または組み合わせで、アミノ基を介して親分子部分に結合するアルキル基を指す。適切なアルキルアミノ基は、例えば、N−メチルアミノ、N−エチルアミノ、Ν,Ν−ジメチルアミノ、N,N−エチルメチルアミノなどの、モノまたはジアルキル化、形成(forming)基であってよい。
【0022】
本明細書では、「アミノ」という用語は、単独または組み合わせで、−NRR’を指し、ここで、RおよびR’は、水素、アルキル、アシル、ヘテロアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキル(これらのいずれもそれら自体置換されていてもよい。)からなる群から独立に選択される。
【0023】
本明細書では、「アリール」という用語は、単独または組み合わせで、1環、2環または3環を含む炭素環式芳香族系を意味し、ここで、かかる環は、ペンダント式に一緒に結合していてもよく、縮合していてもよい。「アリール」という用語は、ベンジル、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、インダニル、インデニル、アヌレニル、アズレニル、テトラヒドロナフチル、およびビフェニルなどの芳香族基を含む。
【0024】
本明細書では、「ベンゾ」および「ベンズ」という用語は、単独または組み合わせで、ベンゼンから誘導される2価の基C
6H
4=を指す。例には、ベンゾチオフェンおよびベンズイミダゾールが含まれる。
【0025】
本明細書では、「カルバメート」という用語は、単独または組み合わせで、窒素または酸末端のどちらかから親分子部分に結合してもよく、本明細書で定義されるように置換していてもよい、カルバミン酸(−NHCOO−)のエステルを指す。
【0026】
本明細書では、「O−カルバミル」という用語は、単独または組み合わせで、本明細書で定義されるRおよびR’を有する、−OC(O)NRR’基を指す。
【0027】
本明細書では、「N−カルバミル」という用語は、単独または組み合わせで、本明細書で定義されるRおよびR’を有する、ROC(O)NR’−基を指す。
【0028】
本明細書では、「カルボニル」という用語は、単独の場合はホルミル[−C(O)H]を含み、組み合わせでは−C(O)−基である。
【0029】
本明細書では、「カルボキシ」という用語は、−C(O)OHまたはカルボン酸塩中にあるように、対応する「カルボキシレート」アニオンを指す。「O−カルボキシ」基は、RC(O)O−基を指し、ここで、Rは、本明細書で定義される。「C−カルボキシ」基は、−C(O)QR基を指し、ここで、Rは、本明細書で定義される。
【0030】
「シクロアルキル」という用語は、飽和炭素環式分子から水素を除去することにより得られ、3から14個の炭素原子を有する炭素環式置換基を指す。一実施形態では、シクロアルキル置換基は、3から10個の炭素原子を有する。シクロアルキルの例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが含まれる。
【0031】
本明細書では、「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、単独または組み合わせで、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
【0032】
本明細書では、「ハロアルコキシ」という用語は、単独または組み合わせで、酸素原子を介して親分子部分に結合するハロアルキル基を指す。
【0033】
本明細書では、「ハロアルキル」という用語は、単独または組み合わせで、上で定義される意味を有するアルキル基を指し、ここで、1つ以上の水素が、ハロゲンで置換される。特に、モノハロアルキル、ジハロアルキルおよびポリハロアルキル基が含まれる。モノハロアルキル基は、一例では、基内にヨウ素、臭素、塩素またはフッ素原子を有し得る。ジハロおよびポリハロアルキル基は、2つ以上の同じハロ原子または異なるハロ基の組み合わせを有し得る。ハロアルキル基の例には、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ジフルオロクロロメチル、ジクロロフルオロメチル、ジフルオロエチル、ジフルオロプロピル、ジクロロエチルおよびジクロロプロピルが含まれる。「ハロアルキレン」は、2つ以上の位置で結合するハロアルキル基を指す。例には、フルオロメチレン(−CFH−)、ジフルオロメチレン(−CF
2 −)、クロロメチレン(−CHCl−)などが含まれる。
【0034】
本明細書では、「ヘテロアルキル」という用語は、単独または組み合わせで、完全に飽和したまたは1から3の不飽和度を含み、規定した数の炭素原子ならびにO、NおよびSからなる群から選択される1から3個のヘテロ原子からなる、安定な直鎖もしくは分岐鎖または環式炭化水素基またはそれらの組み合わせを指し、ここで、窒素および硫黄原子は、場合により酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は、場合により四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、NおよびSは、ヘテロアルキル基内の任意の場所に位置することができる。最大で2個のヘテロ原子は、例えば、−CH
2−NH−OCH
3のように連続していてもよい。
【0035】
本明細書では、「ヘテロシクロアルキル」および交換可能な、「ヘテロ環」という用語は、単独または組み合わせで、少なくとも1つの、好ましくは1から4個の、より好ましくは1から2個のヘテロ原子を環員として含む、飽和、部分的に不飽和または完全に不飽和の単環式、2環式または3環式ヘテロ環基をそれぞれ指し、ここで、各前記ヘテロ原子は、窒素、酸素および硫黄からなる群から独立に選択されてもよく、ここで、好ましくは各環中に3から8環員、より好ましくは各環中に3から7環員、最も好ましくは各環中に5から6環員が存在する。「ヘテロシクロアルキル」および「ヘテロ環」は、スルホン、スルホキシド、第三級窒素環員のN−オキシドおよび炭素環式縮合およびベンゾ縮合環系を含むよう意図されている;さらに、どちらの用語もヘテロ環が、本明細書で定義されるようにアリール基またはさらなるヘテロ環基と縮合している系を含む。本発明のヘテロ環基は、アジリジニル、アゼチジニル、1,3−ベンゾジオキソリル、ジヒドロイソインドーリル、ジヒドロイソキノリニル、ジヒドロシンノリニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロ[1,3]オキサゾロ[4,5−b]ピリジニル、ベンゾチアゾリル、ジヒドロインドーリル、ジヒドロピリジニル、1,3−ジオキサニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、イソインドーリニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピロリジニル、テトラヒドロピリジニル、ピペリジニル、チオモルホリニル、などにより例示される。ヘテロ環基は、特に禁止されない限り、置換されていてもよい。
【0036】
「置換されていてもよい」という用語は、置換されていてもされていなくてもよいanteceding基を意味する。置換されている場合は、「置換されていてもよい」基の置換基は、単独または組み合わせで、以下の基または特に指定された基の組から独立に選択される1つ以上の置換基を限定なく含み得る。:低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルカノイル、低級ヘテロアルキル、低級ヘテロシクロアルキル、低級ハロアルキル、低級ハロアルケニル、低級ハロアルキニル、低級パーハロアルキル、低級パーハロアルコキシ、低級シクロアルキル、フェニル、アリール、アリールオキシ、低級アルコキシ、低級ハロアルコキシ、オキソ、低級アシルオキシ、カルボニル、カルボキシル、低級アルキルカルボニル、低級カルボキシエステル、低級カルボキシアミド、シアノ、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、アリールアミノ、アミド、ニトロ、チオール、低級アルキルチオ、アリールチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、アリールチオ、スルホネート、スルホン酸、トリ置換シリル、N
3、SH、SCH
3、C(O)CH
3、CO
2CH
3、CO
2H、ピリジニル、チオフェン、フラニル、低級カルバメートおよび低級尿素。2つの置換基は、一緒に結合して、0から3個のヘテロ原子からなる縮合5員、6員または7員炭素環式環またはヘテロ環式環を形成することができ、例えば、メチレンジオキシまたはエチレンジオキシを形成する。置換されていてもよい基は、非置換(例えば、−CH
2CH
3)、完全置換(例えば、−CF
2CF
3)、モノ置換(例えば、−CH
2CH
2F)または完全置換とモノ置換の間の任意のレベルで置換(例えば、−CH
2CF
3)でもよい。置換基が、置換との限定なしに列挙される場合、置換と非置換の両方の形態が含まれる。置換基が、「置換された」ものとして適格である場合、置換された形態が特に意図される。さらに、特定部分への任意選択の置換基の種々の組が、必要であると定義され得る。これらの場合、任意選択の置換は、しばしば直後の句「で置換されていてもよい」で定義される。
【0037】
用語Rまたは用語R’は、それ自体で現れ、数の指定がなく、別段の定義がない限り、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルからなる群から選択される部分を指し、それらのいずれも置換されていてもいい。かかるRおよびR’基は、本明細書で定義されるように、置換されていてもよいと理解されたい。R基が、数の指定を有していてもいなくても、R、R’およびR’’(n=(1、2、3、…n))を含めて、あらゆるR基、あらゆる置換基、ならびにあらゆる用語は、基からの選択に関して、互いに独立していると理解されたい。任意の変数、置換基または用語(例えば、アリール、ヘテロ環、R、など)が、式または一般構造に1を超える回数でてきたとしても、各回におけるその定義は、他のすべての回の定義から独立している。当業者は、ある基は、親分子に結合することができ、または、記載されるように元素鎖中のいずれかの末端からの位置を占有することができることをさらに認識する。したがって、例のみにより、−C(O)N(R)−などの不斉基は、炭素または窒素のどちらかで親部分と結合することができる。
【0038】
不斉中心は、本明細書に示される化合物中に存在する。これらの中心は、記号「R」または「S」により示され、キラル炭素原子付近の置換基の配置に依存する。本発明は、ジアステレオマー、エナンチオマーおよびエピマーの形態、ならびにd−異性体およびl−異性体およびそれらの混合物を含めて、すべての立体化学的異性体の形態を含むことを理解されたい。化合物の個々の立体異性体は、キラル中心を含む市販の出発材料から合成により調製することができ、またはエナンチオマー生成物の混合物を調製し、次いで分離し、例えば、ジアステレオマー混合物へ変換し、次いで、分離または再結晶、クロマトグラフ技法、キラルクロマトカラムでのエナンチオマーの直接分離または当技術分野で知られている他の任意の適切な方法により調製することができる。特定の立体化学の出発化合物は、市販品として入手できるか、当技術分野で知られる技法により作製し分解することができる。さらに、本発明の化合物は、幾何異性体として存在することができる。本発明は、すべてのシス、トランス、シン、アンチ、entgegen(E)およびzusammen(Z)異性体、ならびにそれらの適切な混合物を含む。さらに、化合物は、互変異性体として存在することができる;すべての互変異性体は、本発明により提供される。さらに、本発明の化合物は、水、エタノールなどの医薬として許容可能な溶媒と非溶媒和の形態でも溶媒和の形態でも存在することができる。一般に、溶媒和の形態は、本発明の目的では非溶媒和の形態と同等と考えられる。
【0039】
「結合」という用語は、結合により結びつく原子が、より大きなサブ構造の一部と考えられる場合に、2個の原子または2個の部分間の共有結合を指す。結合は、別段の指定がない限り、一重、二重または三重である。分子の図中の2個の原子間の破線は、さらなる結合が、その位置に存在してもよくまたはしなくてもよいことを示している。治療用タンパク質の開発および製造は、製薬業界の急速に成長する分野になりつつある。これらの高分子薬剤の有効性、安定性およびタンパク質分泌は、それらの翻訳後修飾(Post Translational Modifications)(「PTM」)に依存する。グリコシル化は、最も複雑で普及しているPTMであり、組換え抗体などの多くの治療用タンパク質の安全性および有効性に重要な役割を果たす。いくつかの研究で、セルライン選択により引き起こされるグリコシル化のばらつきと培地パラメーターの変化との間に相関関係が示された。Patrick Hosslerら、「Optimal and Consistent Protein Glycosylation in Mammalian Cell Culture」、19 GLYCOBIOLOGY、926頁(2009)。これらのばらつきは、mAb薬の生物学的活動にきわめて大きな効果をもたらし得、最終製品の薬効に変化を生じる。規制当局は、バッチ式組換え抗体薬の製造品質の監視を要求し、タンパク質グリコシル化のミクロ不均一性およびコンシステンシーの詳細な評価を指令している。
【0040】
強められた信号を有するグリカンおよびアミノ酸の迅速蛍光タグ付けで有用な式Iおよび式IIの他の新規な化合物は、以下に示される。
【0041】
【化5】
2,5−ジオキソピロリジン−1−イル(4−((2−(ジエチルアミノ)エチル)カルバモイル)フェニル)カルバメートおよび
【0043】
強められた信号を有するグリカンおよびアミノ酸の迅速蛍光タグ付けに有用である別のさらなる化合物は、すぐ下に示される。
【0045】
標識化を促進するのに適した時間と条件下で式IIIによる化合物とグリカンを反応させることにより試料中のグリカンを標識化することを含む、少なくとも1つのグリカンを含む試料中のグリカン、アミノ酸またはタンパク質を液体クロマトグラフィーおよび質量分析により分析するための方法も本明細書で提供され、;化合物で標識化したグリカンを含む試料を提供し、;標識化合物に液体クロマトグラフおよび質量分析を行い、ここで、式IIIの化合物は、
【0046】
【化8】
(式中、
x=0または1;
m=0−9;
n=0−9;
Arは、置換されていてもよいフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピリジル基、ピラジル基、キノリル基、アクリドリ(acridly)基およびクマアリール基から選択され、カルボニル基と組み合わせて蛍光部分を生じ、;
R
2は、N−スクシンイミジルカルバメート、イソシアネートおよびイソチオシアネートからなる群から選択される反応性基であり;
R
3およびR
4は、−H、アルキル、アルキルアミノ、アルキルスルホン酸およびアルキルホスホン酸、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルカノイル、低級ヘテロアルキル、低級ヘテロシクロアルキル、低級ハロアルキル、低級ハロアルケニル、低級ハロアルキニル、低級パーハロアルキル、低級パーハロアルコキシ、低級シクロアルキル、フェニル、アリール、アリールオキシ、低級アルコキシ、低級ハロアルコキシ、オキソ、低級アシルオキシ、カルボニル、カルボキシル、低級アルキルカルボニル、低級カルボキシエステル、低級カルボキシアミド、シアノ、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、アリールアミノ、アミド、ニトロ、チオール、低級アルキルチオ、アリールチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、アリールチオ、スルホネート、スルホン酸、トリ置換シリル、N
3、SH、SCH
3、C(O)CH
3、CO
2CH
3、CO
2H、ピリジニル、チオフェン、フラニル、低級カルバメート、および低級尿素からなる群から独立に選択され、ここで、2つの置換基は、一緒に結合して、0から3個のヘテロ原子からなる縮合5員、6員または7員炭素環式環またはヘテロ環式環を形成することができ、置換されていてもよい基は、非置換、完全置換、モノ置換または完全置換とモノ置換の間の任意のレベルで置換でもよく、R
3およびR
4は、単独または組み合わせで、MS活性であり得;
R
5は、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルカノイル、低級ヘテロアルキル、低級ヘテロシクロアルキル、低級ハロアルキル、低級ハロアルケニル、低級ハロアルキニル、低級パーハロアルキル、低級パーハロアルコキシ、低級シクロアルキル、フェニル、アリール、アリールオキシ、低級アルコキシ、低級ハロアルコキシ、オキソ、低級アシルオキシ、カルボニル、カルボキシル、低級アルキルカルボニル、低級カルボキシエステル、低級カルボキシアミド、シアノ、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、アリールアミノ、アミド、ニトロ、チオール、低級アルキルチオ、アリールチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、アリールチオ、スルホネート、スルホン酸、トリ置換シリル、N
3、SH、SCH
3、C(O)CH
3、CO
2CH
3、CO
2H、ピリジニル、チオフェン、フラニル、低級カルバメートおよび低級尿素であり、ここで、2つの置換基は、一緒に結合して、0から3個のヘテロ原子からなる縮合5員、6員または7員炭素環式環またはヘテロ環式環を形成することができ、ここで、置換されていてもよい基は、非置換、完全置換、モノ置換または完全置換とモノ置換の間の任意のレベルで置換でもよく、R
5は、MS活性であり得、ただし、R
5がMS活性である場合、R
3およびR
4はHであり;
R
6は、メチレン、置換窒素、酸素、カルボニル、アミド、エステル、硫黄、スルホキシドまたはスルホンから独立に選択され、MS活性であり得る)
である。
【0047】
N−結合性およびO−結合性グリカンは、組換えbio治療用タンパク質からの一般的なグリカンであり、N−グリカンが、より有名である。N−結合性グリカンは、Xxxが、プロリンを除く任意のアミノ酸であり得る、Asn−Xxx−(Ser,Thr)モチーフ中のN−アセチルグルコースアミン(「GlcNAc」)残渣を経由してアスパラギンに結合している。O−結合性グリカンは、セリンまたはトレオニンのどちらかに結合し、N−結合性グリカンは、糖タンパク質から化学的にまたは酵素的に除去することができる。N−結合性グリカンを分析する分析方法は、非常に複雑化してきた。CE−、HPAEC−PAD、HILIC−LC/FLR、RPLC/MS、MALDI−MSは、最も一般的な分析機器である。蛍光検出を伴う液体クロマトグラフィー(「LC」)分離は、通常、グリカンの還元末端に蛍光染料でタグ付けして、酵素的/化学的に放出されたグリカンのキャラクタリゼーションのために製薬業界で広く使用されている。Kalyan R. Anumula & Shirish T. Dhume、High Resolution and High Sensitivity Methods for Oligosaccharide Mapping and Characterization by Normal Phase High Performance Liquid Chromatography Following Derivatization with Highly Fluorescent Anthranilic Acid、8 GLYCOBIOLOGY 685 (1998); Karina Marinoら、A Systematic Approach to Protein Glycosylation Analysis: A Path Through the Maze、6 NATURE CHEMICAL BIOLOGY 713 (2010)。蛍光測定は、高感度で定量的であり、;低い検出限界は、低フェムトモルの範囲である。質量分析装置の最近の進歩に伴い、液体クロマトグラフィー、蛍光およびMSの組み合わせが、蛍光で標識化したN−結合性グリカンのルーチンキャラクタリゼーションのための分析機器プラットフォームとして人気が高まってきた。したがって、相対定量および分子量測定を、単一の分析で実施することができる。Shigeo Suzukiら、Comparison of the Sensitivities of Various Derivatives of Oligosaccharides in LC/MS with Fast Atom Bombardment and Electrospray Ionization Interfaces、 1006 ANAL CHEM 2073 (1996)。しかし、別の課題は、グリカンが、エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)により有効にイオン化しないことである。したがって、一般に、MS活性部分を用いるタグ付けが必要である。
【0048】
試料調製ステップは、N−結合性グリカンを放出し、次いで蛍光タグ付け反応をするために、タンパク質に酵素的消化が必要なので、長時間を要し得る。例えば、還元的アミノ化に付随する蛍光部分を用いる誘導体化は、最大4時間を要し得る。芳香族アミン、2−アミノベンズアミド(2AB)を用いる誘導体化は、最も確立した方法であり、この還元的アミノ化を必要とする。2AB tagは、非標識化グリカンに比べて、MS感度を改善し、蛍光的に活性である。
【0049】
新規な化学試薬を用いる蛍光タグ付けN−結合性グリカンのための迅速な方法が、本明細書で提供される。これらのタグは、被検体の質量分析応答を高めることを意図している。この同じ化学タグは、アミノ酸およびペプチド標識化のために使用することができる。反応機構は、3種の分子すべてに対し同一であってもよく、それによって、誘導体化は、アミン部分で起きる。アミノ酸分析、ペプチドマッピングおよびグリカンプロファイリングは、それぞれ、生物学的治療用タンパク質キャラクタリゼーション全体の重要な部分である。したがって、MS機器の検出を改善する迅速汎用蛍光誘導体化方法を有することは得策である。
【0050】
特にN−結合性グリカンアミノ酸およびペプチドのための新しい分子(本明細書では「試薬」とも呼ばれる。)が、強められたMS信号を有するグリカンおよび他の生体分子の強められたMSの検出および迅速蛍光タグ付けのために提供される。これらの試薬の使用を通して、タグ付けプロセス(または別に本明細書では「標識化」としばしば呼ばれる。)を実施するのに必要な反応時間は、分間または時間ではなく、秒間で測定される。記載の分子は、製品、プロセスまたはタンパク質の重要な情報をグリカンおよびアミノ酸/ペプチド分析に頼る多種多様のプロセスで有用である。したがって、本明細書に記載される分子は、タンパク質キャラクタリゼーション、細胞培養モニタリング、合成ペプチドの製造、食品分析などのプロセスで使用することができる。
【0051】
本明細書で提供される試薬は、3つの官能性成分 a)第三級アミノ基または他のMS活性原子、b)高蛍光部分およびc)アミンと素早く反応する官能基(イソシアネートまたはスクシンイミジルカルバメートなど)から構成することができる。他の試薬は、2つの官能性成分a)第三級アミノ基または他のMS活性原子およびb)アミンと素早く反応する官能基(イソシアネートまたはスクシンイミジルカルバメートなど)から構成することができる。成分は、以下の目的を満たす:(1)アミノ基またはMS活性基は、良好なMS信号を生じる: (2)蛍光部分は、良好な蛍光信号を生じる;および(3)反応性の官能基は、所望の生体分子の迅速タグ付けを生じる。
【0052】
2ABタグ付け試薬(遅い反応時間)の利用時に観察される強められたMS信号は、例えば、タグ付け後の系内に存在するアミノまたはアミン基の関数である。現在入手可能な迅速タグ付け剤は、所望の生体分子のタグ付け後にアミノ官能性を含まない。むしろ、これらの化合物は、質量分析用途のための同じ電子密度を与えない官能性を有し(例えば、尿素またはカルバメート)、低いMS信号をもたらす電子密度を固定する。
【0053】
生体分子は、生物の維持および代謝プロセスに関わる有機化合物である。多くの病気の条件は、正常に機能しないアミノ酸代謝(例えば、フェニルケトン尿症)に起因する。上記のように、生体分子は、病気を治療するために使われてきたペプチド系薬剤などの治療剤とすることもできる。グリカン、アミノ酸、ペプチドおよびタンパク質は、タンパク質薬剤の開発および製造時に注意深く監視される。多くの生体分子は、それらを蛍光標識を使用してタグ付けすることにより検出可能である。得られる共役または錯体は、蛍光性を示し、それによって、それらの検出を容易にする。最近、生体分子の検出および定量にMSを使用する動きが業界にある。蛍光検出は、その感度および定量分析のため、今なお広く使用されている。したがって、液体クロマトグラフィー、質量分析および蛍光検出の組み合わせは、総合的タンパク質分析のために使用することができる分析プラットフォームである。それにもかかわらず、N結合性グリカンの完全な構造分析を実施できる単一の技法はない。
【0054】
哺乳動物および植物の糖タンパク質は、3種の構成成分、グリカン、オリゴ糖および多糖類の内、任意の1種以上を一般に含む生体分子である。グリカンは、タンパク質折りたたみ(folding)にとって重要であり、そのどんな変性も活性を除去または変化させ得る。しばしば免疫応答は、未認識グリカンにより引き起こされる。3種類のグリカンの内、N−結合性グリカンを分析する分析法が、非常に複雑になった。
【0055】
構造的に、N−結合性グリカンは、Xxxが、プロリンを除く任意のアミノ酸であり得る、Asn−Xxx−(Ser,Thr)モチーフ中のN−アセチルグルコースアミン(GlcNAc)残渣を経由してアスパラギンに結合している。手動でまたは自動化ヒドラジン分解装置の助けを借りて、ヒドラジンを有する糖タンパク質からN−グリカンを除去することができる。試薬は、N−結合性グリカンとアスパラギンとの間のペプチド結合を切断して、グリカン生体分子を生成する。いくつかの酵素は、N−グリカンを放出するのに利用できる。N−グリコシダーゼF(PNGase−F)、一般に使用される酵素、は、タンパク質のN−結合性部位にあるアスパラギンの代わりにアスパラギン酸を残して、完全なグリカンをグリコシルアミンとして切断する。Harvey,D.J.、Identification of Protein−Bound Carbohydrates by Mass Spectrometry、1 PROTEOMICS 311 at 311−312, 317 (2001)、を参照により本明細書に組み込む。
【0056】
MSおよび蛍光による分子検出
大部分のアミノ酸および/またはグリカンは、強い発色団もしくは発蛍光団またはMS活性部分がないため、容易に検出することができない。吸光度および蛍光の応答は非常に弱い。アッセイの感度を最大にする一般に使用される作戦は、目的の化合物を、利用する特定の検出方法のためにより良い応答を示す誘導体に変換することである。誘導体化剤の選択は、分析手順の開発において重要な選択である。誘導体化剤は、誘導体化分子の感度、収率および安定性を最大化することにより、分析の最大感度および正確さに影響を及ぼす。
【0057】
基本的に、以下の決定が、別々に実施されなければならない。:(1)グリコシル化部位;(2)グリコシル化部位占有;(3)各部位にある各グリカンの構造および量:および(4)糖型の数。Id. at 312、を参照により本明細書に組み込む。ほとんどの場合、MSは、これらのステップの各々に答えを提供することができる。それで、強められたMS信号の必要性。しかし、グリカンの枝分かれの性質のため、グリカンの構造決定は複雑である。この場合、単糖類単位、各単糖類のアノマー性(anomericity)および環サイズ、単糖類配列および環コンホメーションを他の基の同定と共に決定しなければならない。環コンホメーションを除いて、MSは、好ましいMS技法としてMALDIおよび/またはESIを使用して、これらを決定するために直接的にまたは間接的に使用することができる。Id.at 313−316、 参照により本明細書に組み込む。
【0058】
現在、N−グリカンにとって、誘導体は、最も普通には、芳香族アミンを用いる還元的アミノ化反応により、グリカンの還元末端に付加される。Id.at 318−319。 Reducing−Terminal Derivatization、を参照により本明細書に組み込む。還元的アミノ化は、MS活性化合物を生産する一方で、非常に遅いプロセスであり、化合物に試薬をタグ付けするのに4(4)時間を要し得る。還元末端誘導体は、還元的アミノ化以外の反応により調製することもできる。Id.at 319、を参照により本明細書に組み込む。
【0059】
ほとんどのグリカンは、強い発色団または発蛍光団がないため、容易に検出することはできない。糖タンパク質から酵素的にまたは化学的に放出される遊離グリカンは、任意の化学的タグ付けなしに直接MALDI MSまたはESI/MS/MSにより直接分析することができる。Ying Qing Yuら、A Rapid Sample Preparation Method for Mass Spectrometric Characterization of N−linked Glycans、19 RAPID COMM. MASS SPECROMETRY 2331(2005)。 この標識化なしのアプローチは、グリカンの定性分析に適している。しかし、このアプローチは、イオン化効率はグリカンの間で同じではないので、単一のタンパク質試料からのグリカンは非常に不均一である可能性があるという事実から、相対定量にとって十分に適してはいない。したがって、定量分析および定性分析の両方を実施することができる単一の分析プラットフォームが望まれる。蛍光検出器は、染料自体のみを検出するので、種々のグリカンからの蛍光応答は、相対定量のために使用することができる。誘導体化剤の選択は、分析手順の開発において重要な選択である。N−グリカンにとって、誘導体は、芳香族アミンとの還元的アミノ化反応によりグリカンの還元末端にしばしば付加される。還元的アミノ化は、MS活性化合物を製造するが、非常に遅いプロセスであり、完成するのに最大4時間を要し得る。グリカンの還元的アミノ化のために使用される芳香族アミン化合物が多く存在し、それらのほとんどは低度から中度のMS応答を示す。プロカインアミドは、グリカンMS応答を高めるために使用することができることが最近報告された。Song Kiapoetkeら、The Evaluation of a Novel Approach for the Profiting and Identification of N−linked Glycans With a Procainamide Tag by HPLC With Fluorescent and Mass Spectrometric Detection、53 J. PHARMACEUTICAL AND BIOMEDICAL ANAL. 315(2010)。2AB−標識化グリカンと比較して、グリカンイオン化の大きな増加が観察された。Id。しかし、プロカインアミド標識法手順は、他の一般に使用される還元的アミノ化試薬と類似しており、したがって、標識法ステップにまだ半日かかる。
【0060】
したがって、アミノ酸のHPLC分析の前に蛍光誘導体化すると、これらの系を分析する上で効果的な手段として現在のところ働く。例えば、ファンキノン(phanquinones)およびベンゾオキサジアゾールは、プレカラム誘導体化剤として使用することができる窒素含有発蛍光団である。これらの化合物は、本質的に蛍光性がない。しかし、それらは、アミノ酸と共役すると、対応する蛍光共役を形成する。
【0061】
提示される試薬の使用法
本分子は、分子と素早く反応し、安定、高蛍光MS誘導体を形成するので、グリカン、また、アミノ酸およびタンパク質を誘導体化するのに特に有用であり得る。対象特許の化合物を使用するグリカンまたはアミノ酸の分析のための一般方法は、3つの密接に関係するプロセスからなる:(1)試料中の誘導体の形成;(2)誘導体の分離;および(3)分離した誘導体の検出。第一のステップは、一般に、混合物を本試薬の1つと反応させて、異なる化合物を生成することにより実施される。これらの誘導体は、分析の検出段階で検出することができる蛍光信号を出す。
【0062】
分離ステップは、誘導体の化学構造の相違に基づいている。誘導体化アミノ酸は、前駆体のアミノ酸の化学構造が異なるのと同様に、互いに異なる。誘導体は、検出器信号が各誘導体の濃度に正確に関連することができるように分離されなければならない。誘導体化アミノ酸は、クロマトグラフィー、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)またはキャピラリーゾーン電気泳動分析(CZE)により、分離および検出することができる。HPLCは、この目的のために特に有用である。これらの技術は、選択的であり、ごく少量の試料で使用することができるので、この目的に良く適合している。アミノ酸をその誘導体化の前に分離することにより分離ステップを実施することも可能である。
【0063】
検出ステップは、一般に、吸光度または蛍光検出器を使用して行われる。各誘導体は、分離後、クロマトカラムから溶出するので、その存在および量は、質量分析計および/または吸光度または発光により検出される。アッセイの感度は、生じる信号の強度に依存する。
【0064】
ペプチド分析の場合、逆相HPLCも、ペプチド消化物を分析するために使用することができる。所与のペプチド消化物では、20から150種の異なるペプチドが存在し得、各ペプチドを分解および定量しなければならない。多くの場合、入手可能な試料は、ごく少量である。例えば、分析者は、生物から単離するタンパク質または組換えDNA技術により合成されたものの構造を決定している可能性がある。通常、ナノモル量のタンパク質消化物が研究される。多くのタンパク質の希少性およびコストのため、できるだけ少量の試料を使用することが非常に望ましい。
【0065】
以下の実施例Iでは、我々は、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル(4−((2−(ジエチルアミノ)エチル)カルバモイル)フェニル)カルバメートを用いるN−結合性グリカンの標識化を試験した。この場合、N−結合性グリカンは、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル(4−((2−(ジエチルアミノ)エチル)カルバモイル)フェニル)カルバメートを使用して標識化する前に、PNGase Fを使用して糖タンパク質(Herceptin)から放出された。2,5−ジオキソピロリジン−1−イル(4−((2−(ジエチルアミノ)エチル)カルバモイル)フェニル)カルバメートを、水を含まないアセトニトリルに可溶化して最終濃度45μg/μlとした。100μlの2,5−ジオキソピロリジン−1−イル(4−((2−(ジエチルアミノ)エチル)カルバモイル)フェニル)カルバメート溶液を、放出されたグリカン試料に添加し、5分間室温で放置し、その間に標識法反応は終了した。標識化試料を急速な減圧を使用して凍結乾燥した。HILIC LC法を使用するクロマトグラフ分離の前に、凍結乾燥試料を60%アセトニトリル/水溶液で再構成した。
図1および
図2に示すように、試料は、蛍光およびMS検出を使用して分析した。
【0066】
本明細書で示される分子の追加的使用法
吸光度検出は、一般にタンパク質マッピングワーク(mapping work)で使用される。本目的のためにしばしば使用される2つの異なる検出プロセスは、: a)単一波長検出器を使用する210−215nmでの検出;およびb)フォトダイオードアレイ(PDA)検出器を使用するブロードバンドスペクトル検出である。第一の方法では、すべてのペプチドは、その波長で吸収し、したがって、ユーザーは、カラムから溶出されるすべてのペプチドが検出されることを保証できる。この技法に伴う1つの難点は、多種多様な化合物が、スペクトルのこの領域で吸収することおよび、観察される信号がペプチドからのみ生じていることを保証するため、すべての試薬、溶離液、ガラス器具などが十分にきれいであることを確実にするよう細心の注意を払わなければならないことである。第二の方法では、PDA検出器は、特定の時間間隔で溶離液のスペクトルを収集する(例えば、200nmと350nm間のスペクトルは、1秒ごとに収集される)。このことにより、単一波長より多くの情報が得られ、したがって、類似の保持時間で溶出し得るペプチドを区別する手助けとなり得る。
【0067】
ペプチドマッピングは、消化タンパク質中の微量濃度のペプチドの定性および定量分析をしばしば必要とする。本方法で、複雑な混合物中のペプチドの同定および定量は、3つの段階プロセス:a)元の化合物より強い吸光度または蛍光信号を示すヘテロ環芳香族カルバメートまたは他の反応基を用い、対象のペプチドをタグ付けすること;b)誘導体化試料を分離すること;およびc)吸光度または蛍光技法により誘導体化ペプチドを検出することにより達成される。誘導体のための分離条件は、出発化合物の分離とはしばしば大きく異なる。同様に、分離の効率は、検出プロセスに重大な影響を及ぼす。本ヘテロ環芳香族カルバメートおよび/または類似の反応基の使用は、ナノグラム量のタンパク質を用いる使用法に適応できるマッピング法を提供する。さらに、本明細書に記載される方法は、組織、尿、血液および唾液などの生物学的試料中のペプチドを検出するための既知の方法の感度を高めるための手段を提供する。
【0068】
誘導体化剤の選択
誘導体化方法を利用する上で重要な基準がいくつかある。分析手順は、複雑な混合物中に存在する各成分を正確に定量しなければならない。このことを実施するために、目的の成分を、他の成分からだけでなく、誘導体化手順により生じた成分からも分離することが必要である。第二級アミノ酸を含めたすべての非誘導体化グリカンおよびアミノ酸の単一製品への定量的変換が、特に望まれ、良好な定量を容易にする。
【0069】
検出選択性は、アミノ酸誘導体の別の有利な特徴である。非誘導体化アミノ酸は、すべて、低いUV(200−220nm)範囲で弱く吸収するが、そのような波長での検出は、試料混合物またはクロマトグラフ移動相中に存在する多くの化合物による干渉を受ける。約254nmで吸収する試薬を用いる誘導体化で、選択性の測定を行えるが、生物学的試料中にしばしば存在する任意の芳香族有機化合物は、この波長で干渉する可能性がある。蛍光、電気化学的応答または可視範囲の吸光度による検出を可能にする試薬は、優れた検出選択性にとって望ましいと思われる。
【0070】
最後に、大きく劣化せずに分離および検出ができるように、誘導体は十分安定であることが必要である。また、非常に安定な誘導体は、要望がある場合、別の試料をアッセイすることなく試料を再分析できるので、好ましい。
【0071】
過去には、いくつかの誘導体化手順が、開発されて、高速液体クロマトグラフ分離および電気泳動分離によるアミノ酸のアッセイが可能になった。この目的のために広く利用される5つのかかる手順は以下の通りである:
(1)o−フタルアルデヒド(OPA)/メルカプタン方法。OPA手順は、通常の検出可能濃度が約100フェムトモル(fmol)程度のアミノ酸を検出できる。誘導体の形成は迅速である。この方法の大きな難点は、付加物が非常に不安定であり、検出ステップの直前に調製しなければならないことである。さらなる問題は、この試薬が、第二級アミノ酸を有する誘導体を形成しないようになることである。
(2)9−フルオレニルメチルクロロギ酸(FMOC方法)。FMOC手順は、最小検出可能濃度が200から300fmol程度の安定な誘導体を提供する。FMOC手順にはいくつかのデメリットがある。遊離トリプトファンおよびシスチンは、容易に定量することができない。誘導体化試薬は、それ自体が蛍光であるので、抽出ステップにより反応混合物から除去されなければならない。試薬は、ヒスチジンを有する多様な誘導体を形成することが報告された。試薬は、腐食性で催涙剤であるので、取り扱いが危険でもある。
(3)フェニルイソチオシアネート方法(PITC)。PITC手順では、素早く形成される安定な誘導体が生じる。それは、第一級アミノ酸と第二級アミノ酸の両方、ならびにシスチンのために使用することができる。方法は、検出手順として吸光度を使用し、1pmolの最小検出限界が可能である。しかし、誘導体は蛍光ではなく、良好な検出選択性を考慮しない254nmで検出を実施しなければならない。
(4)ダンシルクロリド法。ダンシルクロリド法は、約1.5pmol程度の最小検出感度を有する安定な誘導体を提供する。それは二級アミンおよびシステインを検出することができるが、多数の誘導体をもたらす。
(5)蛍光スクシンイミドカルバメートは、アミン、アミノ酸、ペプチド、フォスフェートおよび他のクラスの化合物のための誘導体化剤として使用されてきた。スクシンイミドカルバメート試薬が、蛍光基を有する化合物をタグ付けするのに使用される場合は、約1pmolの検出限界を達成することができる。これらの試薬は、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーまたはキャピラリー電気泳動分析などの当今の分離技法に関連して使用される。Nimuraら、58 ANAL. CHEM. 2372 (1986)。スクシンイミジル活性化カルバメートは、炭素環式芳香族アミンをジ−(N−スクシンイミジル)カルボネートと反応させることにより調製した。Takedaら、24 TETRAHEDRON LETT.、4569(1983)。
【0072】
広範囲の試料のHPLC分析のための最近の誘導体化化学は、Waters’ AccQTagアミノ酸分析システムを含む。Waters AccQTag法は、ペプチドおよびタンパク質加水分解生成物アミノ酸のためのプレカラム誘導体化技法である。AccQTag法は、アミノ酸分析のために特に開発された誘導体化試薬に基づく。Waters AccQFluor試薬(6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートまたはACQ)は、N−ヒドロキシスクシンイミド活性化ヘテロ環カルバメート、周知のクラスのアミン誘導体化化合物である。EP0533200 Blを参照されたい。
【0073】
この試薬は、一級および二級アミノ酸の両方を安定な、蛍光誘導体に変換し、加水分解して、6−アミノキノリン、非干渉副生物を生じる。AccQFluor試薬は、一級および二級アミノ酸と迅速に反応して、395nmで強い蛍光を発する非常に安定な尿素を生じる。得られる誘導体は、室温で最大一(1)週間安定である。
【0074】
迅速で簡易なWaters AccQTagアミノ酸分析方法の秘訣は、誘導体化試薬および簡易なプレカラム誘導体化プロトコールである。Waters AccQFluor試薬は、高反応化合物、6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(AQC)であり、それは、一級および二級アミノ酸を用いて、数秒の内に安定な誘導体を形成する。誘導体は、Waters AccQTag アミノ酸分析システムを使用する逆相HPLCにより35分間未満で容易に分離される。
【0075】
過剰の試薬は、反応中に消費されて、アミノキノリン(AMQ)を形成する。AMQは、いずれの誘導体化アミノ酸と非常に異なるスペクトル特性を有する。これにより、AMQの応答を最小にしながら、誘導体のスペクトル発光応答を最大にする検出器波長のプログラム化が可能になる。誘導体化プロトコール−試薬を添加し、緩衝試料を適切に加熱すること−は、簡単で、わかりやすい。アミノ酸誘導体は、さらなる試料調製をせずに直接注入することができる。一般的な緩衝塩および洗剤は、反応収率および結果の再現性に対し、ほとんど効果を有しない。
【0076】
広範囲の試料をHPLC分析するための誘導体化化学の別の例は、N−結合性グリカン、例えば、Glyko(登録商標)InstantAB(商標)キット(Prozyme,Inc.,Hayward,Californiaから入手可能)をタグ付けするために使用されるProzyme製のInstantAB(商標)キットである。InstantAB(商標)は、迅速タグ付けで強い蛍光を出すが、弱いMS信号を生じる。実際、この分子のMS信号は、標準2−AB試薬と比較すると非常に弱い。
【0077】
第三級アミン、蛍光部分および反応性の官能基を含有する分子が、本明細書で提供される。他の特定の分子は、第三級アミンおよび反応性の官能基を単に含有し得る。しかし、すべての分子は、迅速な官能基化を受ける。第三級アミンの使用を通して、分子のすべてはMS活性(質量分析で活性)であり、他のものは蛍光でもあり得る。
【0078】
以下は、質量分析用途に有用な新しい分子および試薬であり、蛍光性である:
【0079】
【化9】
2,5−ジオキソピロリジン−1−イル(4−((2−(ジエチルアミノ)エチル)カルバモイル)フェニル)カルバメート
【0080】
上記のように、現状の技術では、1)非常にゆっくり反応し、良好なMS/蛍光信号を生じるまたは、2)素早く反応し、良好な蛍光信号を有するが、MS信号は不十分である、タグ付け分子を利用する。現在、迅速に反応する分子におけるMS信号の不足は、電子豊富なアミンの不足から生じると考えられる−存在する任意の窒素は、尿素またはカルバメート官能性の部分として電子密度を失う。本明細書で、我々は、素早く反応する系の蛍光部分にアミノ基または他のMS活性原子を添加し、あるいは、反応時間を短縮するために(数時間から数秒に)、ゆっくり反応する(高蛍光およびMS信号)系に反応性の官能基を添加する。
【0081】
他の蛍光部分は、本明細書で記載される分子と共に有用であり得、アミノ酸を標識化するために一般に使用される酸素含有発蛍光団の重要なクラスであるクマリンを含む。クマリンは、以下の基礎分子構造を有する多様な置換クマリンである:
【0082】
【化10】
特定の例は、クマリン7(3−(2’−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン)であり、ここで、red R基(親クマリン上のH)は、イソシアネート、O−スクシンイミジルカルバメートまたは他のアミン反応基とすることができる。
【0083】
別の例は、反応部分を結合するための官能性ハンドルとしてカルボニル基を利用する官能性クマリン334(2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−9−アセチルキノリジノ−[9,9a,1−gh]−クマリン)である。
【0084】
【化11】
また、以下のNile Red誘導体は、アミン反応基を生じるフェノール基を通して官能基化される。
【0087】
蛍光部分として有用なクマリンの他の例には、
クマリン4(7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン);
クマリン120(7−アミノ−4−メチルクマリン);
クマリン2(7−アミノ−4−メチルクマリン);
クマリン466(7−ジエチルアミノクマリン);
クマリン47(7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン);
クマリン102(2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−メチルキノリジノ−[9,9a,1−gh]−クマリン);
クマリン152A(7−ジエチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン);
クマリン152(7−ジメチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン);
クマリン151(7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン);
クマリン6H(2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロキノリジノ−[9,9a,1−gh]クマリン);
クマリン307(7−エチルアミノ−6−メチル−4−トリフルオロメチルクマリン);
クマリン500(7−エチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン);
クマリン314(2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−9−carboエトキ シキノリジノ−[9,9a,1−gh]クマリン);
クマリン510(2,3,5,6−1J−4H−テトラヒドロ−9−(3−ピリジル)−キノリジノ−[9,9a,1−gh]クマリン);
クマリン30(3−2’−N−メチルベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン);
クマリン552(N−メチル4−トリフルオロメチルピペリジノ−[3,2−g]−クマリン);
クマリン6(3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン);および
クマリン153(2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジノ−9,9a,1−gh]クマリン)
が含まれる。
【0088】
ローダミンも、蛍光部分として有用であり得る。ローダミンは、次式のベース分子構造を有するフルオロン(fluorone)分子に基づき染まり、:
【0089】
【化13】
以下の例を含む:
ローダミン110(o−(6−アミノ−3−イミノ−3H−キサンテン−9−イル)−安息香酸);
ローダミン19(安息香酸、2−[6−(エチルアミノ)−3−(エチルイミノ)−2,7−ジメチル3H−キサンテン−9−イル]パークロレート);
ローダミン6G(安息香酸、2−[6−(エチルアミノ)−3−(エチルイミノ)−2,7−ジメチル3H−キサンテン−9−イル]−エチルエステル、一塩酸塩);
ローダミンB(2−[6−(ジエチルアミノ)−3−(ジエチルイミノ)−3H−キサンテン−9−イル]安息香酸);
ローダミン101(8−(2−カルボキシフェニル)−2,3,5,6,11,12,14,15−オクタヒドロ−1Η,4Η,10H,13H−ジキノリジノ[9,9a,1−bc:9’,9a’,1−hi]キサンチリウムパークロレート)。
【0090】
フルオレセインも、以下に示すように蛍光部分として有用であり得る。
【0091】
【化14】
フルオレセインの例には、:
ウラニン(フルオレセイン二ナトリウム);および
フルオレセイン27(2,7−ジクロロフルオレセイン)
が含まれる。
【0092】
手短に言えば、本明細書に記載されるMS活性な、蛍光迅速タグ付けグリカン分子は、式Iおよび式IIのベンズアミド構造の代わりに、異なる別の蛍光部分を利用することができる。
【0093】
例えば、MS活性な、迅速タグ付け分子を生成するために、官能基およびMS活性原子と一緒に使用することができる他の蛍光部分には、すぐ下に示すようなビフェニル−フェニル、ナフチル置換オキサジアゾール部分が含まれる。
【0094】
【化15】
例には、:
ブチルPBD(2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール);
PBD(2−(4−ビフェニルイル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール);および
BBD(2,5−ビス−(4−ビフェニルイル−1,3,4−オキサジアゾール)
が含まれる。
【0095】
同様に、フェニル置換オキサゾール(すぐ下に示す)およびフラン(示さず)は、蛍光部分として有用であり得る。
【0096】
【化16】
そのような部分の例には、
PPO(2,5−ジフェニルオキサゾール);
α−NPO(2−(1−ナフチル)−5−フェニルオキサゾール);
BBO(2,5−ビス−(4−ビフェニルイル)−オキサゾール);および
POPOP(1,4−ジ[2−(5−フェニルオキサゾールイル)]ベンゼン)
が含まれる。
【0097】
さらに、場合によってはあり得る他の蛍光部分が以下に示される。
【0098】
【化17】
ターフェニルおよびクォーターフェニル(上に示す)、ここで、例には、:
TMQ(3,3’,2’’,3’’’−テトラメチル−p−クォーターフェニル);
BMQ(2,2’’’−ジメチル−p−クォーターフェニル);
DMQ(2−メチル−5−t−ブチル−p−クォーターフェニル);
PQP(p−クォーターフェニル);
ポリフェニル1(p−クォーターフェニル−4−4’’’−ジスルホン酸二ナトリウム塩);
ポリフェニル2(p−クォーターフェニル−4−4’’’−ジスルホン酸二カリウム塩;
BiBuQ(4,4’’’−ビス−(2−ブチルオクチルオキシ)−p−クォーターフェニル);
BM−ターフェニル(2,2’’−ジメチル−p−ターフェニル);および
PTP(p−ターフェニル)
が含まれる。
【0099】
【化18】
アザキノロンおよびカルボスチリル(上に示す)、ここで、例には、:
カルボスチリル7(7−アミノ−4−メチルカルボスチリル);
カルボスチリル3(7−ジメチルアミノ−4−メチルキノロン−2);および
キノロン390(7−ジメチルアミノ−1−メチル−4−メトキシ−8−アザキノロン−2)
が含まれる。
【0100】
【化19】
ベンズオキサゾールおよびベノフラン(benofuran)およびベンゾチアゾール(上に示す)、ここで、例には、:
DASBTI(2−(p−ジメチルアミノスチリル)−ベンゾチアゾールイルエチルヨウ化物);
クマリン6(3−(2’−ベンゾチアゾールイル)−7−ジメチルアミノクマリン);
スチリル9M(2−(6−(4−ジメチルアミノフェニル)−2,4−ネオペンチレン−1,3,5−ヘキサトリエニル)−3−メチル−ベンゾチアゾリウムパークロレート);
スチリル15(2−(6−(9−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ(i,j)−チノリジニウム))−2,4−ネオペンチレン−1,3,5−ヘキサトリエニル)−3−メチルベンゾチアゾリウムパークロレート);
スチリル14(2−(8−(4−p−ジメチルアミノフェニル)−2,4−ネオペンチレン−1,3,5,7−オクタテトラエニル)−3−メチルベンゾチアゾリウムパークロレート);
スチリル20(2−(8−(9−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ(i,j)−チノリジニウム))−2,4−ネオペンチレン−1,3,5,7−オクタトラエニル(traenyl))−3−メチルベンゾチアゾリウムパークロレート);
フラン1(ベンゾフラン,2,2’−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイル−ビス−テトラスルホン酸(四ナトリウム塩));および
PBBO(2−(4−ビフェニルイル)−6−フェニルベンゾオキサゾール−1,3)
が含まれる。
【0101】
同様に、すぐ下に示す置換スチルベン(フェニル、ジフェニル、ナフチル、など)は、MS、迅速タグ付け蛍光分子中の蛍光部分として使用することができる。置換スチルベンは、以下のベース構造を有する:
【0102】
【化20】
置換スチルベン(上に示す)の例には、:
DPS(4,4’−ジフェニルスチルベン);
スチルベン1([1,1’−ビフェニル]−4−スルホン酸,4’,4’’−1,2−エテン−ジイルビス−,二カリウム塩);および
スチルベン3(2,2’−([1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイルジ−2,1−エテンジイル)−ビス−ベンゼンスルホン酸二ナトリウム塩)
が含まれる。
【0103】
同様に、上に示すように、フルオロ/ローダミン部分(下に示す)は、蛍光部分:
【0104】
【化21】
として使用することができる。一例は、フルオロル7GA(2−ブチル−6−(ブチルアミノ)−1H−ベンズ[de]イソキノリン−1,3(2H)−ジオン)である。
【0105】
スルホローダミン染料も、本明細書に示される分子と共に有用である。スルホローダミン染料は、以下のベース分子構造:
【0106】
【化22】
を有する。
この場合、例には、:
スルホローダミンB(エタンアミニウム,N−[(6−ジエチルアミノ)−9−(2,4−ジスルホフェニル)−3H−キサンテン−3−イルイデン]−N−エチルヒドロオキシド,不活性塩,ナトリウム塩);および
スルホローダミン101(8−(2,4−ジスルホフェニル)−2,3,5,6,11,12,14,15−オクタヒドロ−1Η,4Η,10H,13H−ジキノリジノ[9,9a,1−bc:9’,9a’,1−hi]キサンテン)
が含まれる。
【0108】
【化23】
を有するMS活性迅速タグ付け分子中の蛍光部分として作用し得る。ピロメテンの例には、:
ピロメテン546(1,3,5,7,8−ペンタメチルピロメテンジフルオロボレート錯体);
ピロメテン556(ジソジウム−1,3,5,7,8−ペンタメチルピロメテン−2,6−ジスルホネート−ジフルオロボレート錯体);
ピロメテン567(2,6−ジエチル−1,3,5,7,8−ペンタメチルピロメテンジフルオロボレート錯体);
ピロメテン580(2,6−ジ−n−ブチル−1,3,5,7,8−ペンタメチルピロメテンジフルオロボレート錯体);
ピロメテン597(2,6−ジ−t−ブチル−1,3,5,7,8−ペンタメチルピロメテンジフルオロボレート錯体);および
ピロメテン650(8−シアノ−1,2,3,5,6,7−ヘキサメチルピロメテンジフルオロボレート錯体)
が含まれる。
【0109】
さらに、フェノキサアゾニウム(すぐ下に示す)およびフェノキサジンも、蛍光部分として有用であり得る。
【0110】
【化24】
これらの蛍光部分の例には、
Cresyl Violet(5,9−ジアミノベンゾ[a]フェノキサアゾニウムパークロレート);
Nile Blue (5−アミノ−9−ジエチルイミノベンゾ[a]フェノキサアゾニウムパークロレート);
Oxazine170(9−エチルアミン−5−エチルイミノ−10−メチル−5H−ベンゾ(a)フェノキサアゾニウムパークロレート);および
Oxazine1(3−ジエチルアミノ−7−ジエチルイミノフェノキサアゾニウムパークロレート)
が含まれる。
【0111】
ピレン誘導体は、本明細書に示される分子と共に、有用であり得る別のクラスの蛍光部分を構成する。ピレン染料は、以下の基本構造に基づく。
【0112】
【化25】
ピレン−誘導体の例には、:
N−(1−ピレン)マレイミド;および
Pyranine(トリソジウム8−ヒドロキシピレン−1,3,6−トリスルホネート)
が含まれる。
【0113】
蛍光分子および他の発蛍光団を使用することができる。
【0114】
理想的には、蛍光分子は、約300から700ナノメートルの範囲に蛍光信号を生じるそれらの分子である。例には、ローダミンおよびクマリンが含まれる。
【0115】
反応性の官能基は、スクシンイミジルカルバメートおよびイソシアネートを含むことができる。
【0116】
本分子は、タグとして使用される炭素環式芳香族のものより高い蛍光量子収量を示すヘテロ環芳香族基を有することができる。Nimuraら、Anal.Chem. 58、2372 (1986)。タグの蛍光量子収量のこの増加は、タグ付けアミンの感度の増加をもたらす。ヘテロ環分子の一部にとって、反応基を用いて誘導化されたアミン化合物の発光極大は、遊離ヘテロ環アミン発光極大と大きく異なる波長である。波長シフトは、タグ付けアミンの蛍光検出にとって、非常に重要な意味を持つ。さらに、観察される蛍光は、圧倒的に誘導体からなので、バックグラウンドノイズは、除去または低減され、より高感度のアッセイが得られる。
【0117】
プロカインアミド誘導体への可能な合成経路
【0119】
試料調製
本明細書で提供される分子は、適切な試料調製の問題の克服を提供するわけではない。高品質マススペクトルを得るために、試料の条件は非常に重要である。被検体以外の化合物は、一般にイオン収率に悪影響を及ぼすことになり、除去されなければならない。実際は、少量のナトリウムは、MALDIによるイオン化に不可欠であるが、炭水化物は、塩の影響を特に受けやすい。さらに、多くの炭水化物は、混合物として存在する。したがって、分離および精製の技法が、定量的情報の損失と共に試料の分別を引き起こさないことを確実にすることは重要である。pHが低すぎるまたは試料温度が高すぎる場合に糖タンパク質からしばしば失われるシアル酸は、例示的なものである。
【実施例】
【0120】
[実施例I]
2,5−ジオキソピロリジン−1−イル(4−((2−(ジエチルアミノ)エチル)カルバモイル)フェニル)カルバメートの調製
撹拌子を装備した乾燥した100mLErlenmeyerフラスコ中の乾燥アセトニトリル47gにプロカインアミド2.6gを添加し、溶解させた。滴下ロートおよび撹拌子を装備した1Lセパラブルフラスコ中で、N,N−ジスクシンイミジルカルボネート(DSC)3.2gを乾燥アセトニトリル417gに溶解し、系をN
2でパージした。次いで、プロカインアミドの溶液を滴下ロートに移し、1時間かけてDSC溶液に1滴ずつ添加した。次いで、溶液を4時間撹拌した。この時点で、溶媒を除去し、生成物を室温、高真空下で乾燥した。
【0121】
[実施例II]
2,5−ジオキソピロリジン−1−イル(4−((2−(ジエチルアミノ)エチル)カルバモイル)フェニル)カルバメートの調製
撹拌子を装備した乾燥した100mL Erlenmeyerフラスコ中の乾燥ジクロロメタン50mLにプロカインアミド8.2gを添加し、溶解させた。滴下ロートおよび撹拌子を装備した1Lセパラブルフラスコ中で、N,N−ジスクシンイミジルカルボネート(DSC)10.1gを乾燥ジクロロメタン400mLと混合し、系をN
2でパージした。次いで、プロカインアミドの溶液を滴下ロートに移し、1時間かけてDSC溶液に1滴ずつ添加した。次いで、溶液を4時間撹拌した。この時点で、ろ過により所望の生成物を母液から除去し、次いで、室温、高真空下で乾燥した。
【0122】
[実施例III]
Herceptinから放出されるN−結合性グリカンのタグ付け
N−結合性グリカンを、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル(4−((2−(ジエチルアミノ)エチル)カルバモイル)フェニル)カルバメートで標識化する前に、標準PNGase Fプロトコールを使用してHerceptin0.8μgから放出した。2,5−ジオキソピロリジン−1−イル(4−((2−(ジエチルアミノ)エチル)カルバモイル)フェニル)カルバメートを、最終濃度45μg/μlになるまで乾燥(水を含まない。)アセトニトリルに溶解した。次いで、この溶液10μlを、放出されたグリカン試料に添加した。この混合物を室温で5分間放置した。次いで、標識化試料を、急速な真空を使用して凍結乾燥し、HILIC LC法を使用するクロマトグラフ分離ならびに
図1、
図2に示す蛍光およびMS検出による分析の前に、60%アセトニトリル/水溶液中で再構成した。
【0123】
[予想例IV]
合成I
【0124】
【化27】
【0125】
[予想例V]
合成II
【0126】
【化28】