(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ガスセンサは、流体環境において、1つまたは複数のガスの分圧または濃度を感知できる。一部の種類のガスセンサは、特許文献1または特許文献2に記載されるものを含み得る。このようなセンサは、H
2またはO
2などの1つまたは複数の種類のガスを感知できてもよい。ガスセンサは、ガス圧を推定できる測定を提供するように設計することができる。このような測定は、ガスの濃度の変化に応答するガスセンサの抵抗および/または静電容量の変化に相当し得る。ガスセンサは、パラジウムニッケル合金またはパラジウム金属酸化物半導体など、パラジウムを含み得る。ガスセンサの抵抗および静電容量の変化のある仕組みが非特許文献1、および非特許文献2に説明されている。強調されるべきことは、本出願で開示された技法は、これらのガスセンサの構造または物理的機構にまったく限定されていないことである。
【0003】
PdNi格子を有するガスセンサなどの一部のガスセンサは、H
2の増加に関する濃度情報として、抵抗または静電容量の増加を含むことができる。例えば、抵抗は、PdNi格子における水素のレベルに比例して直線的に増加することができ、これは、ジーベルトの法則によって説明されるように、ガス状のH
2の圧力に関係している。この法則は、中圧において、固体の金属に溶解した水素の濃度が以下の関係によって近似されることを含んでいる。
【0004】
【数1】
【0005】
ここで、cは、圧力pにおいてガス状の水素と平衡している溶解した水素の濃度であり、sはジーベルトのパラメータである。
【0006】
所与の用途に対して、ガス感知システムは、例えば、H
2といった対象ガスの圧力を検出するように設計することができる。しかしながら、対象ガスの圧力に加えて、ガスセンサの測定に影響を与える可能性のある要素があり得る。例えば、ガスセンサの温度は、測定に影響を与える可能性がある。この問題に対処するために、ヒータが、ガスセンサを所望の温度範囲内に維持するために利用されてもよい。温度に加えて、ガスセンサに印加されるバイアス電圧、または、流体環境の全体の圧力など、他の要素がガスセンサの測定に影響を与える可能性がある。
【0007】
他の例として、O
2などの非対象ガスが、ガスセンサの測定に影響を与える可能性がある。非対象ガスの存在は、少なくとも2つの点において、対象ガスの測定に影響を与えるか、または、その測定と干渉する可能性がある。第1に、センサは対象ガスおよび非対象ガスの両方に反応するため、センサの読み取りが、大きくなり過ぎる、または、小さくなり過ぎる可能性がある。この点において、非対象ガスの影響は、対象ガスの読み取りに対する補正として考慮することができる。第2に、非対象ガスの存在は、センサが対象ガスを測定する方法を変えてしまう可能性がある。例えば、非対象ガスは、格子の表面内部または表面上の受容体部位を占有することができる。これは、利用可能な受容体部位を少なくさせてしまい、それによって、センサを対象ガスに対して感知させ難くしてしまう。他の例として、PdNiガスセンサでは、格子における酸素の存在が、センサの抵抗特性または静電容量特性に影響を与える可能性がある。したがって、酸素が浸透された格子は、格子が酸素で浸透されていない場合とは異なる方法で、水素の存在に反応する可能性がある。酸素が格子に浸透するとき、水素の吸着は、H
2O、OHなどの分子の形成をもたらすことになる。これらの分子は、それ自体によって、ガスセンサの抵抗特性または静電容量特性に影響を与えてしまう可能性がある。
【0008】
非対象ガスの影響を低減するために試みられたある解決策は、このような非対象ガスを濾過するために、ガスセンサに遮断する被覆を用いることであり得る。しかしながら、このようなフィルタは、ガスセンサの感度または応答時間を悪化させてしまう可能性がある。試みられた別の解決策は、複数のガスセンサを用いて非対象ガスを特異的に検出して、非対象ガスに関する濃度情報を決定および明確にすることであり得る。しかしながら、このような解決策は、コストが高い、および/または、さらなるシステムの複雑性をもたらす可能性がある。試みられたさらに別の解決策は、ガスを感知する適用性を、干渉するガスを含まないものに単に限定することである。
【0009】
ガスセンサの影響の別の例として、ガスセンサの特性は、時間と共に変化する傾向があり、これによって「ドリフト」を引き起こす。このような問題に対する一解決策は、ドリフトしているセンサを手作業で繰り返し再較正することである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
前述の概要、および、本出願のある実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、よりよく理解されることになる。例示の目的のため、ある実施形態は図面で示されている。しかしながら、理解してもらわなければならないことは、特許請求の範囲は、添付の図面に示された構成および手段に限定されないことである。さらに、図面に示された外観は、説明したシステムの機能を実現するために採用することができる多くの装飾的な外観のうちの1つである。
【0025】
図1は、本出願の実施形態によるガス感知システム100を示している。システム100は、感知ユニット110と、プロセッサ120と、電流供給部130と、バイアス回路140とを備えることができる。感知ユニット110は、ヒータ112と、温度センサ114と、ガスセンサ116とを備えることができる。
【0026】
プロセッサ120は、信号153を電流供給部130へと送信できる。信号153に応答して、電流供給部130は、適切な電流をヒータ112へと導体154を通じて送ることができる。また、プロセッサ120は、信号151をバイアス回路へと送信することもできる。信号151に応答して、バイアス回路は、適切なバイアス電圧をガスセンサ116に印加できる。
【0027】
プロセッサ120は、デジタル信号プロセッサなどのサブ処理部を備えることができる。プロセッサ120は、
図5および
図6に示す、ならびに後に記載されるような、ガス測定方法を実現できるコンピュータ読取可能媒体からの一式の命令を実行可能であり得る。プロセッサ120は、ユーザーインターフェース(図示せず)から入力データを受信でき、表示可能なデータを表示装置(図示せず)に提供できる。
【0028】
ヒータ112は、ガスセンサ116を含む感知環境の温度を制御可能であり得る。ヒータ112は抵抗加熱器であってもよい。ヒータ112は、ヒータを通じて流れる電流を、温度センサ114を備えた閉ループにおいて制御することによってガスセンサ116の基板の温度を制御するために、プロセッサ120によって用いられてもよい。
【0029】
ガスセンサ116は、流体環境における1つまたは複数のガスの存在を感知することができ、その1つまたは複数のガスの濃度に対応する濃度情報をプロセッサ120へと送信できる。理解してもらわなければならないことは、用語「濃度情報」とは、目標環境における1つまたは複数のガスの濃度を推測または推定するために用いることができる任意の情報のことと言えることである。例えば、「濃度情報」は、分圧情報、または、光学特性情報の変化を含む可能性がある。
【0030】
流体環境は、1つまたは複数のガスを異なる濃度で有する混合された大気を含む可能性がある。これらのガスは、例えば、H
2およびO
2を含む可能性がある。また、混合された大気は、H
2O、CO、H
2S、Cl
2、およびN
2などの他の構成ガスを含む可能性もある。また、流体環境は、これらの列記したガスなど、溶解したガスを含む液体を含む可能性もある。
【0031】
図2および
図3は、混合されたガス状の大気におけるH
2に関する濃度情報を検出する技法を説明するための例である。これらの例は、単に説明のためのものであり、対象ガスは、O
2などの他の分子/原子である可能性もある。これらの技法は、1つまたは複数のガスセンサにおいて変化する抵抗を測定するが、ガスセンサの静電容量などの他の特性が測定されてもよい。これらの技法は、システム100などのガス感知システムと共に実施されてもよい。
【0032】
図2は、本出願の実施形態による、流体環境におけるH
2濃度情報とガスセンサの抵抗との間の関係を示すグラフ200を示す。ガス感知システムは、
図1に示されるものと同様のものであってもよい。
【0033】
第1の関係210と第2の関係220とは、ガスセンサをH
2の様々な濃度に曝すこと、および、その結果として生じるガスセンサの抵抗を測定することによって、決定される。第1の関係210は、ガスセンサがT1の温度である間に決定されてもよい。第2の関係220は、ガスセンサがT2の温度である間に決定されてもよい。グラフ200に示された関係210および220は、流体環境におけるH
2濃度情報の平方根に対するガスセンサの対応する正規化された抵抗に従って図示されている。T1は、例えば、おおよそ50℃であり得る。T2は、例えば、おおよそ90℃であり得る。T1およびT2は、当然ながら、40℃/80℃、40℃/90℃、50℃/80℃などといった、他の温度であってもよい。したがって、50℃/90℃の例は、数多くの例のうちの1つでしかない。関係210および220は、(グラフ200に示すように)直線的であってもよいし、様々な次数の多項式であってもよいし、または、何らかの他の関係を有してもよい。また、留意してもらいたいことは、ある実施形態は複数のセンサを用いる可能性があることである。このような場合、関係(符号210および符号220のものと同様)は、複数のセンサに対して決定されてもよい。
【0034】
較正関係が一度決定されると、H
2に関する濃度情報が以下のように取得され得る。ガスセンサ抵抗が測定および正規化され得る。ガスセンサがT1の温度である場合、関係210が用いられ得る。関係210の形は、H
2濃度情報の対応する平方根を決定することができる。この値は二乗され、その結果であるH
2濃度情報を決定することができる。同様の処理が、ガスセンサの温度がT2であるとき、関係220に対して用いられ得る。留意してもらいたいことは、関係210および220は、非対象ガス(例えばO
2)の存在やセンサドリフトの長期の影響といった、実質的な干渉がまったくない場合、事実上、理想の状況において決定することができることである。較正されたガスセンサが「実際の世界」の状況で用いられるとき、その結果行われるH
2の計算は、これらの干渉および/または他の干渉のため、不正確である可能性がある。
【0035】
図3Aは、先行技術による、時間と共にガスセンサからの情報によって計算される、H
2に関する濃度情報のグラフ300である。6つの区分の期間を通して、ガスセンサは、50℃などの一定の温度に維持されてもよい。H
2濃度情報は、百万分の一(「ppm」)で示されている。留意してもらいたいことは、H
2濃度情報は、干渉に関する補償がまったくなしで示されていることである。時間は、6つの区分301〜306に区分けされて示されている。区分は、任意の長さおよび数のものであってもよく、説明の目的だけのために描写および記載されている。ガスセンサは、Table 1(表1)に示すように、6つの時間区分を通じて、異なる混合された大気に曝されている。
【0037】
図3AをTable 1(表1)と比較して、様々な観察を行うことができる。例えば、ガスセンサが、
図3Aにおいて、膨らまされたH
2の濃度情報の読取を示していることを見て取ることができる。区分301および306の間の、H
2濃度情報が0ppmであるときでさえ、ガスセンサは、約5,000ppmもの高さのH
2濃度情報を示している。さらに、区分301および306の間、見かけのH
2濃度が上昇する。これらの特異性は、ガスセンサに酸素が存在する結果である可能性がある。第1に、酸素の存在は、ガスセンサの応答を引き起こす可能性がある。第2に、ガスセンサは、所与のO
2濃度に曝されたときに安定するのに、比較的長い時間を必要とする可能性があるため、抵抗が比較的ゆっくりと増加して応答する可能性があり、それによって特異な上昇を引き起こす。
【0038】
別の観察として、
図3Aにおける見かけのH
2濃度は、実際のH
2濃度より高い。これは、例えば、オフセットを引き起こす、または、ガスセンサのH
2濃度に対する応答の特性を変えてしまう、酸素からの干渉の結果である可能性がある。
【0039】
別の観察として、区分302、303、304、および305の各々では、H
2の見かけの濃度が徐々に小さくなっている。これは、ガスセンサからの酸素の散逸の結果である可能性がある。大気にO
2が存在しない場合、ガスセンサ格子中の酸素は、ゆっくりと除かれ得る。これは、ガスセンサの比較的長い安定した期間のため、前述のように、酸素に対してゆっくりと発生する可能性がある。酸素が散逸するにつれて、酸素のガスセンサに対する影響は低減され得る。例えば、H
2濃度が区分302中および305中の両方で300ppmである間、測定されたH
2は、区分302の間よりも区分305の間により少なめに膨らまされている。これは、ガスセンサの酸素がより少ない結果である可能性がある。留意してもらいたいことは、酸素の散逸の速さは、水素の量の増加に応答して増加する可能性がある。これは、H
2の濃度がより高い区分(例えば、区分303および304)の間、増加した減衰によって観察されてもよい。
【0040】
前述の観察に加えて、ガスセンサのドリフトおよび他の非対象ガスの存在などの他の要素が、見かけのH
2の読み取りに影響を与えている可能性もある。
【0041】
図3Bは、本出願の実施形態による、ある期間を通じたガスセンサの測定に対応するグラフを示す。
図3Aと同様に、ガスセンサは、Table 1(表1)に示す様々な混合された大気に曝されてもよい。しかしながら、ガスセンサを一定の温度で作動させる代わりに、センサは、2つの異なる温度(例えば、
図3Bのデータを作り出すときに用いられたような50℃および90℃)で作動させられる。ガスセンサは、第1の期間にわたって第1の温度で、および、第2の期間にわたって第2の温度で、作動されてもよい。
【0042】
ガスセンサ温度が循環すると、ガスセンサの正規化された抵抗もまた循環することができる。例えば、ガスセンサは、より高い温度において、より低い温度においてよりも大きな正規化された抵抗を有することができる。第1の期間の最後と第2の期間の最後とに、ガスセンサの抵抗を測定することは、有用であり得る。例えば、ガスセンサの温度が安定するのにある程度の時間を必要とする可能性があるか、または、他の平衡が実現されるのにある程度の時間を必要とする可能性がある。このような期間の最後において測定することによって、より正確な信号値がガスセンサから得られる可能性がある。ある場合には、センサ信号の変化を時間と共に測定すること、および、この変化の速さを信号として用いることは、有用であり得る。
【0043】
以下の仮定および式によれば、
図3Bからのデータは、対象ガスに関する濃度情報を測定するときに望ましくない影響または特異性を減らすために、用いられてもよい。
図3Bに見て取ることができるように、ガスセンサは、温度の変化に対して比較的応答する可能性がある。例えば、
図3Bに示すように、ガスセンサの正規化された抵抗は、同じガス濃度に対して、50℃(T1)においてよりも90℃(T2)において約25倍より大きい可能性がある。
【0044】
図3Bにおいて明らかであるかもしれない、または、明らかでないかもしれないように、干渉ガスの存在またはドリフトなど、悪影響を与えるガスセンサの応答時間または応答速度は、対象ガスに対する応答時間よりも遅くまたは早くなり得る。これらの違いは、対象ガスに関する濃度情報を干渉する情報から抽出するために、サイクル時間およびサイクル温度の長さを選択するのに利用することができる。例えば、(a)対象ガスがセンサと平衡になることができるだけの長さがあるサイクル時間と、(b)干渉する影響がセンサに重大な影響を与えるには短すぎるサイクル時間とを選択することは、有用であり得るし、干渉する要素(干渉ガスの存在を含む)を効果的に除去できる。
【0045】
これらの仮定および技法を考慮して、式1〜式4を導き出すことができる。第1に、温度T1およびT2におけるガスセンサの抵抗は、干渉ガスと、例えば酸素および水素といった所望のガスとの両方に関する濃度のためであることが、仮定され得る。
式1 R(T1)=R
O2(T1)+R
H2(T1)
式2 R(T2)=R
O2(T2)+R
H2(T2)
酸素が短い時間間隔でセンサに散逸するために必要とされる比較的長い期間のため、次のことが仮定され得る。
【0047】
式1〜式3を解くことによって、以下の式が導き出され得る。
式4 R(T2)-R(T1)=R
H2(T2)-R
H2(T1)
【0048】
図2を見ると、以下の較正式が導き出され得る。
式5 R
H2(T1)=g(T1)*√H
2+RO
H2(T1)
式6 R
H2(T2)=g(T2)*√H
2+RO
H2(T2)
式5および式6を解くことによって、以下が導き出され得る。
【0050】
最後に、式4および式7を解くことによって、以下を得ることができる。
【0052】
したがって、H
2に関する濃度情報は、T1およびT2において測定されたガスセンサの抵抗に従って、計算することができる。さらなる情報は、較正関係210および220によって提供されてもよい。
図3Bおよび式8からのデータを用いることで、
図3Cのグラフ320を描画できる。2つの温度の技法を用いることで、実質的に正確なH
2濃度情報測定を得ることができる。
【0053】
1つだけの温度の手法と2つの温度の手法との間の差異が、
図3Dに示されており、この図は、
図3Aおよび
図3Cからのデータを一緒に示している。
図3Cからのデータは太線で示されており、
図3Aからのデータは細線で示されている。前述の特異性の多くは、2つの温度の手法を用いることで、実質的に低減されている。例えば、区分301および306の間、H
2が混合された大気にないとき、計算されたH
2濃度情報はゼロである。他の例として、区分302、303、304、および305で、H
2濃度情報は、それぞれがおおよそ300ppm、1,000ppm、10,000ppm、および300ppmであるように正確に計算されている。他の例として、徐々に小さくなる問題が、実質的に低減または排除されている。
【0054】
図1〜
図3に示すと共に先に記載した原理および技法は、さらに発展されてもよい。例えば、追加の温度でのサイクルなど、追加のサイクルを加えることは、有用であり得る。他の例として、1つまたは複数の追加の感知ユニットが、ガス感知システムの一部として実施されてもよい。このような追加の感知ユニットは、
図5および
図6と併せて記載された技法に従って用いられてもよい。他の例として、追加の処理技法が、H
2濃度情報の計算の精度を改善するために用いられてもよい。例えば、悪影響を与えるある要素が、ある温度において、他の温度と比較して、より顕著である可能性がある。このような違いの本質が、感知動作に先立って予測できる場合、プロセッサは、このような違いを考慮して、濃度情報測定の精度をさらに改善することが可能であり得る。
【0055】
温度サイクルに加えて、差別化技法が、温度以外の他の状態を変化させることで実施されてもよい。例えば、ガスセンサに関するバイアス電圧が、2つ以上の値に調整されてもよい。他の例として、目標環境の圧力が、2つ以上の異なる圧力に調整されてもよい。さらに別の例として、複数のシステム態様(例えば、ガスセンサ温度、ガスセンサバイアス電圧、および/または目標環境圧力)が、ある状態から次の状態へと調整されてもよい。
【0056】
ここで
図5を見ると、本出願の実施形態による、ガスの濃度情報を検出する方法の流れ
図500が示されている。流れ
図500のステップは、例えば、システム100などのシステムによって、実施可能であり得る。さらに、流れ
図500のステップは、同時に、並行して、または、一部のステップが設計および/もしくは選択に従って省略され得るといった、異なる順番で実施可能であり得る。例えば、ステップ514および/または504は、ステップ502の前に実施されてもよい。
【0057】
ステップ502では、ガスセンサ(例えばガスセンサ116)の温度が、第1の温度値に第1の期間にわたって調整される。第1の温度値はおおよそ50℃であり得る。このステップおよび後のステップに適用可能であるように、ガスセンサの温度は、プロセッサ(例えばプロセッサ120)によって、ヒータ(例えばヒータ112)の閉ループ制御において、温度センサ(例えば符号114)を通じて調整されてもよい。
【0058】
ステップ504では、システムはガスセンサを1つ有しているか、それとも2つ有しているかが、判定される。ガスセンサが1つだけある場合、流れ図はステップ506へと進む。留意してもらいたいことは、ステップ504は、2つのガスセンサを用いることを含む技法があることを説明するためだけに示されていることである。2つのガスセンサが存在する場合には、特定のステップが、以下に記載するように、追加または調整されてもよい。そのため、ステップ504は、ステップ502の前に実施されてもよい。
【0059】
ステップ506では、第1の信号値が、ガスセンサからのガスセンサ信号を第1の期間中測定することによって、決定される。例えば、第1の信号値は、第1の期間のおおよそ最後に測定されてもよい。このような技法は、第1の期間が、ガスセンサが温度の変化に応答して安定するのにどれくらいの時間を必要とするかに従って選択される場合に、有用であり得る。この方法では、第1の信号値は、ガスセンサが実質的に安定された後に、測定され得る。
【0060】
ステップ508では、ガスセンサの温度が、第2の温度値に第2の期間にわたって調整される。第2の温度値はおおよそ90℃であり得る。ステップ510では、第2の信号値が、ガスセンサからのガスセンサ信号を第2の期間中測定することによって、決定される。例えば、第2の信号値は、第2の期間のおおよそ最後に測定されてもよい。前述のように、このような技術は、ガスセンサが安定された後に測定を行うために利用されてもよい。
【0061】
ステップ512では、少なくとも1つのガスに関する濃度情報が、第1の信号値および第2の信号値に従って計算される。この計算は、第1の較正関係(例えば関係210)および第2の較正関係(例えば関係220)に従って行われてもよい。
【0062】
ステップ504に戻って、追加のガスセンサがある場合、流れ図はステップ514へと進む。再度言うと、ステップ504は、2つのセンサを用いることを含む技法があることを説明するためだけに示されていることである。2つのガスセンサを用いることの利点の1つは、
図4に示されているような単一のセンサシステムにおいて起こり得る問題から生じ得る。
【0063】
図4は、ある期間を通じたガスセンサの測定を描写するグラフ400を示す。グラフ400が示すように、H
2の濃度情報測定には2つのスパイクがある。これらのスパイクは、H
2に関する濃度情報が第1の期間中および/または第2の期間中、比較的素早く変化する状況から生じ得る。具体的には、H
2に関する濃度が、第1の信号値および第2の信号値の両方が決定されるときに、比較的安定していない場合、スパイクまたはアーチファクトは式8に従って発生され得る。
【0064】
このようなアーチファクトの影響を低減するために、様々な解決策があり得る。一解決策は、結果的に得られた濃度情報を、例えば、ローパスフィルタでフィルタ処理することであり得る。スパイクが高い周波数を有する(持続時間が短い)場合、スパイクはフィルタ処理され得る。別の解決策は、閾を超えた場合に、スパイクを取り除くことであり得る。別の解決策は、スパイクのデータを以前に取得されたデータと比較すること、および、スパイクのデータを特異性または不可能性/非現実性について比較することであり得る。
【0065】
別の解決策は1つまたは複数の追加のガス感知ユニットを使用することであり得る。このような解決策では、追加のガスセンサからのデータは、元々のガスセンサからのデータと組み合わされてもよい。例えば、追加のガスセンサは、実質的に一定の温度で、感知動作を通して、作動してもよい。このような技法は、より頻繁で定期的な測定を、感知動作を通して、追加のガスセンサから得ることになる。これは、元々のガスセンサからのデータと組み合わせることができる追加の様々な信号値を提供できる。様々なアルゴリズム上または数学上の手法が、元々のガスセンサと追加のガスセンサとからのデータを組み合わせるために用いることができる。あるこのような手法では、追加のガスセンサを定期的に、2つの温度のガス感知の技法に従う比較的正確な測定を用いることで、効果的に再較正することが可能であり得る。別の手法では、任意追加のセンサを、元々のセンサから位相をずらして動作させることが可能であり得る。
【0066】
別の手法では、異なる材料または組成物の追加のセンサが使用されてもよい。このようなセンサは、対象ガスまたは干渉に対して異なる応答特性を有することができる。これらのセンサを2つ以上の条件(例えば、プロセッサによって制御され得る異なる温度)で動作させることで、追加の信号を得ることができる。例えば、あるこのようなセンサは85%のPdおよび15%のNiの合金を含むことができ、第2のこのようなセンサは100%のPdを含むことができる。
【0067】
複数のセンサが用いられるとき、1つまたは複数の追加のセンサを、
図2と併せて詳述した技法と同様の技法を用いて、較正することが可能であり得る。したがって、1つまたは複数の追加のセンサは、2つ以上の温度で較正されてもよい。
【0068】
このような複数のセンサの解決策を実施するために、
図5の流れ図はステップ514へと進むことができる。このステップでは、追加のガスセンサの温度が、第3の温度値に第1の期間中と第2の期間中との両方で調整される。続いて、ステップ516では、一連の様々な信号値が、追加のガスセンサからの信号を第1の期間および第2の期間を通して定期的に測定することによって、決定され得る。ステップ518、520、および522が実施されてもよく、それらはそれぞれステップ506、508、および510と同様である。ステップ516は、ステップ502、518、520、または522などの他のステップと同時に、または、並行して実施されてもよい。
【0069】
ステップ524では、少なくとも1つのガスに関する濃度情報が、第1の信号値、第2の信号値、および、追加のガスセンサからの様々な信号値に従って、計算される。
【0070】
ここで
図6を見ると、本出願の実施形態による、ガスに関する濃度情報を検出する方法の流れ
図600が示されている。流れ
図600のステップは、例えば、システム100などのシステムによって、実施可能であり得る。さらに、流れ
図600のステップは、同時に、並行して、または、一部のステップが設計および/もしくは選択に従って省略され得るといった、異なる順番で実施可能であり得る。
【0071】
ステップ610では、第1の期間を通じて、感知ユニットまたは目標環境のうちの少なくとも1つに関する第1の状態が生成される。第1の状態は、例えば、ガスセンサの温度、ガスセンサのバイアス電圧、および/または、目標環境の圧力を調整することによって、生成され得る。
【0072】
ステップ620では、感知ユニットの信号は、第1の期間中測定されて、信号の第1の値を決定する。例えば、第1の信号値は、第1の期間のおおよそ最後に測定されてもよい。このような技法は、第1の期間が、ガスセンサまたは目標環境が第1の状態に対する変化に応答して安定するのにどれくらいの時間を必要とするかに従って選択される場合に、有用であり得る。この方法では、第1の信号値は、ガスセンサまたは目標環境が実質的に安定された後に、測定され得る。
【0073】
ステップ630では、第2の期間を通じて、感知ユニットまたは目標環境のうちの少なくとも1つに関する、第1の状態と異なる第2の状態が生成される。ステップ610と同様に、第2の状態は、例えば、ガスセンサの温度、ガスセンサのバイアス電圧、および/または、目標環境の圧力を調整することによって、生成され得る。
【0074】
ステップ640では、感知ユニットの信号は、第2の期間中測定されて、信号の第2の値を決定する。ステップ620と同様に、第2の信号値は、第2の期間のおおよそ最後に測定されてもよい。このような技法は、第2の期間が、ガスセンサまたは目標環境が第2の状態に対する変化に応答して安定するのにどれくらいの時間を必要とするかに従って選択される場合に、有用であり得る。この方法では、第2の信号値は、ガスセンサまたは目標環境が実質的に安定された後に、測定され得る。
【0075】
ステップ650では、較正関係が、感知ユニットを第1の状態および第2の状態において較正することによって形成される。
図2および
図5と併せて先に詳述した方法と同様の方法で、感知ユニットは、対応する較正関係を形成するために、第1の状態および第2の状態で較正することができる。
【0076】
ステップ660では、少なくとも1つのガスに関する濃度情報が、信号の第1の値と、信号の第2の値と、較正関係とに従って計算される。上記と同様に、計算された濃度情報は、複数のガス(例えばH
2およびO
2)を含む目標環境におけるガス(例えばH
2)のうちの1つだけに実質的に対応し得る。
【0077】
前述の方法または流れ図のステップのうちの1つまたは複数は、1つまたは複数のコンピュータ読取可能媒体で実施することができ、任意の利用可能媒体であり得るそのコンピュータ読取可能媒体は、プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサなど)、または、汎用もしくは専用コンピュータによってアクセスできる。限定的ではない例として、そのようなコンピュータ読取可能媒体には、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROM、もしくは他の光学ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置もしくは他の磁気記憶装置、または、所望のプログラムコード情報をコンピュータ実行可能な命令もしくはデータ構造の形態で保持または保管するために使用できると共に汎用もしくは専用コンピュータによってアクセスできる何らかの他の媒体が、含まれ得る。コンピュータ実行可能な命令は、例えば、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または、専用の処理装置に、本明細書で説明した方法または方法の一部など、特定の機能または一組の機能を実施させる命令およびデータを含んでいる。
【0078】
本出願は、特定の実施形態を参照しつつ説明されてきたが、当業者によって、様々な変更品が作られ得ること、および、同等品が本出願の範囲から逸脱することなく代用され得ることは、理解されるだろう。例えば、開示された技法は、O
2またはCOなどの対象ガスの検出に適用可能であり得るし、もしくは、ナノセンサなどの他の種類のガスセンサを備えて適用可能であり得る。また、多くの変形品が、特定の状況または材料を、本出願の範囲から逸脱することなく本出願の教示に適用するために、行われてもよい。そのため、本出願は、開示された具体的な実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲内にあるすべての実施形態を含むことになることが、意図されている。