回転軸が略平行で互いに噛み合いながら回転して圧縮作動室を形成する雄ロータ及び雌ロータと、前記圧縮作動室から吐出した冷媒が流入し、冷媒を冷媒ガスと油とに分離する油分離器と、を備え、
前記油分離器は、外筒と、前記外筒の内側に位置する内筒と、前記圧縮作動室から吐出した冷媒を、前記外筒の内壁面を周方向に向かって旋回するように流入させる導入流路と、を有し、
前記内筒の上端部が前記油分離器に保持されることにより、前記内筒の外壁が前記外筒の内壁から独立して保持され、
前記外筒はガイド部を備え、
前記ガイド部は、前記ガイド部内を旋回する冷媒の旋回半径が徐々に減少するように構成された側壁と、前記ガイド部内を旋回する冷媒が鉛直方向に広がることを抑制する上壁及び下壁と、を有し、
前記導入流路を介して前記ガイド部内に流入した冷媒は、前記ガイド部内で鉛直方向に広がることを抑制されつつ旋回し、その後、前記ガイド部内から吐出して前記外筒の内壁に沿って旋回下降することによりガス冷媒と油とに分離し、分離したガス冷媒が前記内筒の下端部から前記内筒の内部に流入して上昇し、分離した油が前記外筒の内壁面に沿って流下するスクリュー圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この従来技術では、油分離器入口通路が内筒外壁面と油分離器の内壁面の空間に挿入されているので、導入流路から油分離空間に流入したガスの流れと、内筒外壁面と油分離機の内壁面の油分離空間を旋回する流れ同士が衝突する。このような衝突により、流れの乱れが生じて油分離器の内壁面に付着した油が再飛散するとともに、衝突により流れが減速するため、油分離効率が低下し、油上り量(圧縮機外への油の流出量)が増大する。
【0007】
これに対して、流れ同士の衝突を回避するため油分離器入口通路の流路断面積を小さくすると、入口通路の圧力損失が大きくなり性能が低下する。一方、圧力損失を小さくするために流路断面積を大きくすると、流れ同士の衝突を回避するために油分離機の径を大きくしなければならず、油分離器を小型化することが困難であった。
【0008】
更に、内筒外壁面と油分離機の内壁面の油分離空間は、鉛直方向に長い流路断面を形成するので、導入流路から油分離空間に吐出したガスの流れが縦方向に広がる。このため、旋回流が旋回中に減速して油分離効率が低下するとともに鉛直方向に広がった旋回流が油溜りの油面に衝突するため、油面の片寄りや油の巻上げによる油上り量が増大する。また、油面の片寄りにより、正確な油面位置を把握することが困難であった。
【0009】
一方、広がった旋回流の油面への衝突を回避するためには、油分離器の高さを高くしなければならず、油分離器を小型化することが困難であった。
【0010】
本発明の目的は、小型化を達成しつつ油上り量を低減できるスクリュー圧縮機及びこれを備えたチラーユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題を解決するため、本発明のスクリュー圧縮機は、回転軸が略平行で互いに噛み合いながら回転して圧縮作動室を形成する雄ロータ及び雌ロータと、圧縮作動室から吐出した冷媒が流入し、冷媒を冷媒ガスと油とに分離する油分離器と、を備え、油分離器は、外筒と、外筒の内側に位置する内筒と、圧縮作動室から吐出した冷媒を、外筒の内壁面を周方向に向かって旋回するように流入させる導入流路と、を有し、内筒の上端部が油分離器に保持されることにより、内筒の外壁が外筒の内壁から独立して保持され、外筒はガイド部を備え、ガイド部は、ガイド部内を旋回する冷媒の旋回半径が徐々に減少するように構成された側壁と、ガイド部内を旋回する冷媒が鉛直方向に広がることを抑制する上壁及び下壁と、を有し、
導入流路を介してガイド部内に流入した冷媒は、ガイド部内で鉛直方向に広がることを抑制されつつ旋回し、その後、ガイド部内から吐出して外筒の内壁に沿って旋回下降することによりガス冷媒と油とに分離し、分離したガス冷媒が内筒の下端部から内筒の内部に流入して上昇し、分離した油が外筒の内壁面に沿って流下する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型化を達成しつつ油上り量を低減できるスクリュー圧縮機及びこれを備えたチラーユニットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施例のスクリュー圧縮機及びこれを用いたチラーユニットは、円筒縦型の油分離器および油分離器で分離した油を溜める油溜めを有するスクリュー圧縮機に関し、特に、空気調和機、チラーユニット、冷凍機などの冷凍サイクルを構成する装置に使用され、圧縮機の油上り量(圧縮機外への油の排出量)を低減するようにしたスクリュー圧縮機に関する。
【0015】
具体的には、本実施例のスクリュー圧縮機は、回転軸が略平行で互いに噛み合いながら回転して圧縮作動室を形成する雄ロータ及び雌ロータと、圧縮作動室から吐出した冷媒が流入し、冷媒を冷媒ガスと油とに分離する油分離器と、を備え、油分離器は、外筒と、外筒の内側に位置する内筒と、圧縮作動室から吐出した冷媒を、外筒の内壁面を周方向に向かって旋回するように流入させる導入流路と、を有し、内筒の上端部が油分離器に保持されることにより、内筒の外壁が外筒の内壁から独立して保持され、外筒はガイド部を備え、ガイド部は、ガイド部内を旋回する冷媒の旋回半径が徐々に減少するように構成された側壁と、ガイド部内を旋回する冷媒が鉛直方向に広がることを抑制する上壁及び下壁と、を有し、
導入流路を介してガイド部内に流入した冷媒は、ガイド部内で鉛直方向に広がることを抑制されつつ旋回し、その後、ガイド部内から吐出して外筒の内壁に沿って旋回下降することによりガス冷媒と油とに分離し、分離したガス冷媒が内筒の下端部から内筒の内部に流入して上昇し、分離した油が外筒の内壁面に沿って流下するように構成する。
【0016】
本実施例のスクリュー圧縮機及びこれを用いたチラーユニットについて図面を用いて説明する。
図1は本発明の冷凍サイクル(チラーユニット)を示す系統図である。
図1において、冷凍サイクルは、圧縮機1、油分離器2、凝縮器3、膨張弁4、蒸発器5の順に冷媒配管で接続して構成され、循環サイクルを形成する。
【0017】
圧縮機内部の軸受やスクリューロータの潤滑のために供給する油は、冷凍サイクル内に大量に混入すると、蒸発器5や凝縮器3内部において油が熱抵抗として熱交換を阻害する。また、油の粘性により圧力損失も増加するため、冷凍サイクル全体の性能が低下する。さらに、圧縮機1から冷凍サイクル内に大量の油が流出すると圧縮機内部の油保有量が減少するため、圧縮機内部の軸受やスクリューロータの潤滑するための油量を確保することが困難となる。そこで、圧縮機1で圧縮された冷媒ガスから油のみを油分離器2で効率よく分離する必要がある。
【0018】
図2はスクリュー圧縮機の縦断面図である。
図2において、スクリュー圧縮機は、圧縮機本体1と、圧縮機本体1を駆動するモータ11、12と、モータ11、12を収納するモータケーシング6とを備える。モータケーシング6は、モータ11、12の反圧縮機本体側に吸込室(低圧室)29を形成し、吸込口9からストレーナ28を介して吸込室29内にガスが流入する。モータ11、12は、回転軸27に取り付けられた回転子11と、回転子11の外周側に配設された固定子12とで構成される。固定子11はモータケーシング6の内面に固定される。
【0019】
圧縮機本体1は、モータケーシング6に接続され、回転軸27が平行で互いに噛み合いながら回転する雄ロータ16及び雌ロータ(図示しない)を内蔵するメインケーシング7と、メインケーシング7の吐出側に接続された吐出ケーシング8とを備える。
【0020】
メインケーシング7には雄ロータ16及び雌ロータの歯部を収容する円筒状のボア17が形成され、ボア17のロータ軸方向吸入側が開口される。この開口を形成するメインケーシング7には吸入ポート15が形成され、圧縮直前の吸入ガスを雄ロータ16及び雌ロータの歯部に流す連通通路とする。更に、ボア17のロータ軸方向吐出側にも開口される。この開口を形成するメインケーシング7に径方向の吐出ポート20が形成されるとともに、吐出ケーシング8には軸方向の吐出ポート21が形成され、圧縮完了した冷媒ガスを吐出室22に流す連通通路とする。
【0021】
メインケーシング7のロータ軸方向吸込側(
図2の左側)はモータケーシング6と接続される。モータケーシング6内部の回転子11と固定子12との間の隙間等は、吸込室29と吸入ポート15とを連通させる吸込通路となる。
【0022】
図2に示すように、雄ロータ16の吸込側軸部はメインケーシング7に配設された転がり軸受13、14で支持され、雄ロータ16の吐出側軸部は吐出ケーシング8に配設された転がり軸受18及び玉軸受19で支持される。また、雌ロータの吸込側軸部はメインケーシング8に配設された転がり軸受(図示せず)で支持され、雌ロータの吐出側軸部は吐出ケーシング8に配設されたころ軸受及び玉軸受(図示せず)で支持される。なお、26はころ軸受18及び玉軸受19を収容する軸受室の外方側端部を覆うエンドカバーである。
【0023】
雄ロータ16の吸込側軸部はモータ11、12の回転軸27と直結され、モータ11、12の駆動によって雄ロータ16が回転し、これに伴い雌ロータも雄ロータ16と噛み合いながら回転する。雄ロータ16及び雌ロータで圧縮されたガスは、吐出ポート20、21から、吐出ケーシング8に形成された吐出室22に流出し、吐出室22からメインケーシング7に設けた吐出通路23に流れ、吐出通路23に連通した導入流路24を介して油分離器2に送られる。
【0024】
図3は
図2のA−A線矢視断面図、
図4は
図3のB−B線矢視断面図であり、それぞれ本実施例における油分離器の内部構成を説明する断面図である。メインケーシング7に形成された油分離器2は、冷媒ガスを油分離器内に導入する導入流路24、絞り30、ガイド34、38、48、油分離器内壁面36、傾斜面
(傾斜部)47、上蓋44、内筒35、油溜室40、吐出口10を有する。円筒形状で構成された内筒35は、油分離器(外筒)内壁面36と内筒35外壁面との間に流路37が構成され、更に、油分離器(外筒)の一部である
ガイド34の内壁面と内筒35外壁面との間にも冷媒が旋回する旋回流路
(ガイド部)31が構成される。ガイド34は、外周全周に及ばないが、少なくとも導入流路出口部の絞り30を起点として、反時計回りに内筒35の4分の1以上の範囲に設ける。尚、ガスの導入流路24は時計周りでもよい。
【0025】
ここで、油分離器の外筒の内壁は、冷媒が旋回する
ガイド34、38の下方において径を小さくした後、下方に向かう
傾斜面(傾斜部)47において徐々に径を増大させて、末広がりの形状に構成される。内筒35の下端は、傾斜面47の開始位置から終了位置の間に挿入される。上蓋44は、内筒35が固定され、油分離器上部に締結し一体化する。油分離器2の内筒35の上部の上蓋44には冷媒ガスの吐出口10を形成する。
【0026】
油分離器2の傾斜面47に沿って旋回しながら徐々に降下した冷媒ガスは、ガイド48と内壁面36の内筒35側の角部に設けられた曲面45に沿って旋回しながら径方向に流れの向きを変え、その後さらに、内筒35の下端とガイド部48間の反転室42で折り返し旋回しながら上昇方向に流れの向きを変えて内筒35内部に流入する。内筒35に流入した冷媒ガスは、ガス出口流路43を上昇し、吐出口10から配管(冷媒配管)25を介して外部(例えば冷凍サイクルを構成する凝縮器3)に供給される。
【0027】
油分離器2で分離される油は、冷媒ガスとの密度差から生じる遠心力の大きさの相違で次第に壁面に近づき、油分離器2の壁面(外筒の内壁面)47、36と、ガイド34の内壁面に付着する。付着した油は、油分離器内の壁面に沿って流下し、ガイド48の中心部に設けられた円形の排油穴46から排出され、油分離器下方に形成された油溜室40に蓄えられる。油溜室40に貯められた油は、圧縮機本体1の吐出圧力(高圧)が作用しており、一方、軸受13、14、18、19はほぼ吸入圧力下(低圧)にある。従って、油は、油溜室40に挿入されたストレーナ51を介して、軸受13、14、18、19と油溜室40とを繋ぐ油配管50を通り、差圧により、軸受13、14、18、19、雄・雌スクリューロータの噛合い部に供給されて、これらの潤滑や圧縮室相互間のシール、圧縮熱に対する冷却材として作用する。この後、油は、再び冷媒ガスと共に吐出されて油分離器2に流入し、圧縮機内部で循環する。
【0028】
以上の構成によるスクリュー圧縮機は、以下のように作用する。圧縮完了後に冷媒ガスと冷媒ガスに混入した油は、圧縮室の開口部である吐出ポート20、21から出て、吐出室22を経由して導入流路24を流れて油分離器2に流入する。導入流路24はガイド34に対して接線方向に接続するので、油分離器2に流入した流れは、油分離器壁面の一部であるガイド34に沿って反時計回りに旋回しつつ、流路37に流入する。流路37は反転室42に接続されるので、流れ33は油分離器内壁面36に沿って旋回しながら徐々に降下する。
【0029】
ここで、本実施例においては、油分離器2の壁面(外筒の内壁)の径は、導入流路を介して流入した冷媒が旋回する旋回流路に沿って徐々に減少するように構成され、外筒の内壁である旋回流路に沿って旋回下降することにより冷媒がガス冷媒と油とに分離し、その後、分離したガス冷媒が内筒の下端部から内筒の内部に流入して上昇し、分離した油が外筒の内壁面に沿って流下する。特に、油分離器2の壁面(外筒の内壁)の径を冷媒が旋回する旋回流路に沿って徐々に減少するように構成するので旋回する冷媒の流速の低下を抑制できるので、高い油分離効率を維持することができる。
【0030】
ここで、内筒の外壁が外筒(油分離器2)の内壁と直接接続される場合、その接続部により冷媒の旋回が阻害され、旋回する冷媒の流速が低下する。本実施例においては、内筒の上端部が油分離器に保持されることにより、内筒の外壁が外筒の内壁から独立して、内筒が油分離器に保持される。従って、冷媒が旋回する旋回流路に、内筒の外壁と外筒(油分離器2)の内壁とを接続する接続部が位置しないので、旋回する冷媒の流速の低下を抑制でき、高い油分離効率を維持することができる。
【0031】
また、導入流路24から油分離器に流入する際に、導入流路24から噴出したガスの流れ32と旋回するガスの流れ33が衝突しないように構成しないと、ガスの流れ32、33同士が衝突して減速し、流れが乱れる可能性がある。この場合、遠心分離の効果は弱くなり、壁面に付着した油が再び再飛散してしまい高い油分離効率を期待できない。ここで本実施例においては、導入流路24から油分離器2に流入する際に、導入流路24から噴出したガスの流れ32と旋回するガスの流れ33が衝突しないように、油分離器2の内壁面36に対して、その円周方向となる外側に導入流路24を設けて、導入流路24が油分離器2の接線方向に接続する。このような構成にすることにより、導入流路24から流入した旋回流と旋回するガスの流れ33が衝突し難くなり、ガス32、33の流速を維持することができる。従って、遠心分離の効果が低下することを防ぐことができ、高い油分離効率を維持できる。
【0032】
また、導入流路24から油分離器に流入した際に、油分離器2内壁面にガイド34がないと、導入流路24から噴出したガスの流れ32は流入直後に鉛直方向に拡がり、内筒35周りを流れる旋回流が減速する可能性がある。この場合、遠心分離の効果は弱くなり高い油分離効率を期待できない。ここで本実施例においては、油分離器2内壁面にガイド34を設け、円筒状に形成された内筒の下端をガイドより下方まで挿入するようにし、ガイドと内筒との間に流路を形成するようにすれば、ガイド34に流入したガスの流れ32は、ガイド34に遮られ鉛直方向に広がることができなくなるのでガイド34内を旋回するガスの流速の低下を抑制することができる。また、広がったガスの流れが油面41に到達し、油面41を乱すことが無くなるから、油分離器の高さを低くできる。従って、遠心分離の効果が低下することを防ぐことができ、小型で、且つ、高い油分離効率を維持できる。ガイド34は、導入流路24の高さとガイド34の高さを同一とし、流路断面がコの字型で形成するとより効果的である。
【0033】
また、ガイド部旋回流路31に流入する際に、絞り30がないと、導入流路24から噴出した流れ32は、流入直後に水平方向に拡がり、ガイド内に噴出した流れが減速する可能性がある。この場合、遠心分離の効果は弱くなり高い油分離効率を期待できない。ここで本実施例においては、油分離器2に噴出したガスの流れ32は、絞り部で一時的に増速され、水平方向に拡がり難くなるので、油分離器2噴出後の流れの減少を抑えることができ、高い油分離効率を維持できる。従って、遠心分離の効果が低下することを防ぐことができ、高い油分離効率を維持できる。絞り30は、導入流路24出口部のガイド34の反鉛直面側に絞り30を形成し、ガイド34の鉛直面に沿って流れるように絞り30を配置することで、流れが鉛直面から剥離することが無くなり、鉛直面と流れ32の間に発生する渦を抑えることができるので、高い油分離効率を維持できる。
【0034】
また、旋回流路31に流入した際に、ガイド34の鉛直面と内筒35外面との間に形成される旋回流路31の幅を徐々に狭めないと、旋回流路31内を流れる冷媒ガスは、壁面との摩擦や旋回流路31が導入流路24の流路断面積に対して広いため、導入流路24内の流速が維持できず急速に減速する可能性がある。この場合、遠心分離の効果は弱くなり高い油分離効率を期待できない。ここで、本実施例においては、旋回流路31の幅をガスの流れ32方向に徐々に狭めると、旋回流路31の断面積が徐々に縮小するので、ガスの流れ32の流速が維持できる。更に、ガイド内を流れるガスの流れ32が徐々に旋回しながら流路37に排出されるので、流路37を旋回し流れるガスの鉛直成分の流速が一定となるため、流速の偏りが防止できるため、油面41の偏りや油の再飛散を防ぐことができる。従って、油分離器2の高さを低くすることが出来、更に、遠心分離の効果が低下することを防ぐことが出来るため、小型で、且つ、高い油分離効率を維持できる。ガイド34は、壁面を円弧で構成するとより効果的である。
【0035】
また、内筒35周りを流れるガスの流れ33に対して、ガイド38がないと、旋回するガスの流れ33が再びガイド内に侵入し旋回流路31を流れるガスの流れ32と衝突し、ガスの流れ32、33はそれぞれ減速し乱れが生じる。また、旋回流路31内に侵入したガスの流れは、ガイドの壁面に沿って流れる油を再飛散させる。従って、遠心分離の効果は弱くなり、壁面に付着した油が再び再飛散することになり、油分離効率が低下する可能性がある。ここで本実施例においては、旋回するガスの流れ33がガイド34内に再び進入しないようにガイド38を設ける。これにより、旋回流33が内筒外壁面に沿って流れるようになるので、ガスの流れ(32、33)の衝突を回避でき、流速を維持できる。従って遠心分離の効果が低下することを防ぐことがで、高い油分離効率を維持することができる。ガイド38は、油分離器の内壁面36に沿って円弧を形成するとより効果的である。
【0036】
また、流路37から反転室42に流入する際に、旋回しながら降下する流れの流速が減少するようにしないと、冷媒ガスの流れが油面41に到達し油面41を乱す可能性がある。この場合、油面41の油の再飛散や、油面41の偏りが生じ、高い油分離効率を期待できない。更に、油面41の偏りにより、油溜室40内部に設けたストレーナ51が油面から露出した場合、ストレーナ51を介して冷媒ガスが軸受に流れるから、軸受の潤滑不足により信頼性が低下する。ここで、本実施例においては、油分離器の外筒の内壁は、冷媒が旋回する旋回流路から下方に向かう傾斜部において徐々にその径を増大させて末広がりの形状に構成される。流路37と反転室42との間に、油面41方向に末広がりとなる円錐面(傾斜部)47を設けることで、冷媒ガスの流路となる空間が徐々に広がるため、流速を減少させることができる。更に、円錐面47を設けることで油分離器の高さを延長することなく旋回する冷媒ガス中に含まれる油が付着可能な表面積を拡大することができる。従って、冷媒ガスの流れが油面41に到達することを防ぐことができ、高い油分離効率を維持でき、且つ、油分離器の高さを低くすることができる。また、円錐面(傾斜部)47を設けず流速を落とすために急激に空間を広げると、壁面に添って流下する油が反転室42中に流下することになる。これにより、反転室42中を旋回して流れる冷媒ガス中に油が再飛散することになり、また、空間の急拡大に伴い圧力損失も増加するから、圧縮機効率が低下する。本実施例においては、冷媒が旋回する旋回流路から下方に向かう傾斜部において徐々に外筒の内壁の径を増大させるので、壁面に添って流下する油をスムーズに曲面47に添って流下させることができ、更に、圧力損失の増加を抑えることができるから、高い油分離効率を維持でき、且つ、圧縮機効率の低下を防ぐことができる。
【0037】
また、反転室42(内筒の下端部)と油面41との間に、油分離機内壁面36の円周面上に沿ってガイド48(外筒の内壁全周から内部に向かい、中心部が排油穴46として開口する環状の凸部材)を設けると、旋回しながら降下する冷媒ガスの流れがガイド48に添って流れるので、旋回しながら流下する冷媒ガスの流れを維持しつつ油分離機2の中心に向かう径方向の流れに変えることができる。従って、排油穴46に冷媒ガスが流入し難くなるため、油溜り室40の油面の油の再飛散や偏りが抑制される。更に、油面41の偏りにより、油溜室40下部に設けたストレーナ51が、油面41から露出することが抑制される。また、冷媒ガスが油溜室40に侵入し油面41を乱した場合でも、ガイド48は仕切として作用するから、再飛散した油が反転室42に再び流入することを妨げる。従って、冷媒ガスの流れが油面41に到達することを防ぎ、油面41が安定するため、高い油分離効率を維持でき、軸受の信頼性が向上し、且つ、油分離器の高さを低くすることができる。
【0038】
本実施例においては、ガイド48の油分離器内壁面36との接続部を曲面45で構成することにより、旋回し流下する流れは曲面45に沿ってスムーズに流れるようになるから渦が生じ難くなる。従って、壁面に添って流下する油をスムーズに排油穴46に排出できるから、高い油分離効率を維持できる。
【0039】
図8はガイド先端形状を示す図である。
図8に示すように、曲面45が接続されるガイドの内筒側の面を油面方向に勾配を形成した円錐面としても良い。曲面に沿って流れる油は円錐面に沿って流下するから、スムーズに排油穴46に油を導くことができる。
【0040】
ここで、排油穴46を設けたガイド48の先端部にR部となる曲面を設けずエッジ形状とすると、ガイド48表面に沿って流れる油がエッジ部で油を保持可能な表面張力が十分に作用しなくなるから、ガイド48表面近傍を流れる冷媒ガスにより油が再飛散して、油分離効率が低下する可能性がある。
図6はガイド先端形状を示す図である。
図6に示すように、ガイド48の先端部にR部となる曲面を設けるとガイド48表面に添って流れる油が先端部の曲面で表面張力により張り付くから、ガイド48近傍を流れるガスに油が持ち去られること無く、重力により油を流下させることができる。
図7はガイド先端形状を示す図である。ガイド48の先端部は
図6に示す曲面でなくともよく、例えば、
図7に示すような円錐面でもよい。
【0041】
上述のように、ガイド48を設けた油分離器2の内壁面36の中心に円形の排油穴46を設けると、旋回し流れる冷媒ガスが排油穴46を通して油溜室40に進入し難くなる。従って、冷媒ガスの流れによって油面41が乱れることが無くなるから、高い油分離効率を維持できる。また、このように構成することで、油溜り室40に冷媒ガスは侵入し難くなる。
【0042】
尚、油溜り室40の形状は円筒でなくても良い。
図5は油溜室を示す図である。例えば、
図5のように、油溜室40の形状を直方体で構成しても良い。このように構成することで、高い油分離効率を維持しつつ、油分離器の高さを低くすることができる。
【0043】
尚、排油穴の形状を円形とし、油分離器2を鋳物で構成した場合、鋳造等による製作が容易になる。
【0044】
また、圧縮機1に一体化された油分離器2の吐出口10は、
図1より、配管25で凝縮器3、膨張弁4、蒸発器5を経て圧縮機1の吸入口9に接続されているから、油分離器2内を旋回する冷媒ガスの流れは、排油穴46上部の反転室42で旋回しつつ上昇するため、反転室42で油分離器2の中心に向かう流れが上昇する際に冷媒ガスに含まれる油に重力が作用し、密度の大きい油は下方(油面41方向)に分離される。従って、排油穴46をガイド48の中心に設けると油を油溜室40に排出することができる。
【0045】
図9は
図3の別の実施例を示す図である。
図9に示すように、内筒35とガイド48間の空間(内筒の下端部と排油穴との間)に円形の仕切り板61を設けてもよい。油の流れとガスの流れとの間に仕切り板を設けることで、ガスと油の流れを仕切ることができる。従って、ガイド48と仕切り板61の空間は、油の流れで満たされるため、旋回するガスの流れが排油穴46に流入し難くなるため、油面41が安定し、油分離器2に設けたサイトグラスや油面計などで正確な油面位置を把握することができる。
【0046】
図10は
図9のC−C線矢視断面図であり、油分離器の内部構成を説明する断面図である。
図10に示すように仕切り板61は、内筒35に接続された丸棒62によって固定支持されており、仕切り板61の中心が油分離器2の中心となるように設けるとよい。仕切り板の外径は、排油穴46の穴径よりも大きくするとより効果的である。
【0047】
以上述べたように、本実施例によれば、小型化を達成しつつ油上り量を低減できるスクリュー圧縮機及びこれを用いたチラーユニットを得ることができる。