(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1炉蓋駆動部は、前記第1炉蓋が、前記開口部からその上方に離れた位置と、その位置から旋回して前記開口部の上方領域から離れた位置とに配置されるように、前記第1支持アームを旋回移動させるようにしたことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のハイブリット式金属溶解炉。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、坩堝の開口部に炉蓋を設けた場合の熱放出抑制機能は、坩堝内の被溶解金属を溶解させる場合だけでなく、被溶解金属が溶解して溶湯となった後に、その溶湯を坩堝内で保持する場合にも利用することができる。この場合、坩堝内の熱が放出されることを抑制することで、溶湯保持に必要な熱エネルギの消費量を減少させてその無駄を省くことができる。
【0007】
しかしながら、バーナー付きの炉蓋をこのように溶湯保持にも利用した場合、その溶湯保持状態においても、バーナーは坩堝内の熱にさらされることになる。勿論、被溶解金属の加熱にバーナーを用いる以上、バーナーは耐熱性を備えている。ところが、溶湯保持にもバーナー付きの炉蓋を使用するとなると、バーナーが長時間高熱にさらされて、バーナーの寿命が短くなってしまうという懸念があった。
【0008】
そこで、本発明は、炉蓋に設けられたバーナーが長時間高熱にさらされて寿命が短くなることを抑制しつつ、炉蓋を用いて溶湯を保持することもできるハイブリット方式金属溶解炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明では、上部に開口部が設けられ、内部に被溶解金属を収容する坩堝と、前記坩堝の前記開口部の上方を塞ぐ炉蓋と、前記坩堝内の被溶解金属に誘導電流を流して加熱する誘導加熱手段と、前記坩堝内に火炎を噴射するバーナーと、を備えたハイブリット式金属溶解炉において、前記炉蓋は、前記バーナーが設けられた第1炉蓋と、前記バーナーが設けられていない第2炉蓋とを有し、前記被溶解金属を溶解させる場合に、前記第1炉蓋が前記開口部を塞ぐ位置に配置される一方、前記被溶解金属が溶解してなる溶湯を前記坩堝内で保持する場合には、前記第1炉蓋を前記開口部から外した上で前記第2炉蓋が前記開口部を塞ぐ位置に配置されるように、前記第1炉蓋及び前記第2炉蓋をそれぞれ移動させる炉蓋移動手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、前記炉蓋移動手段は、前記第1炉蓋を支持する第1支持アームと、前記第1支持アームを上下に移動させて、前記第1炉蓋が前記開口部を塞ぐ位置と、前記開口部からその上方に離れた位置とに配置する第1炉蓋駆動部と、前記第1支持アームの下側に配置された第2支持アームと、前記第2支持アームを旋回動作させて、前記第2炉蓋が前記開口部を塞ぐ位置と、前記開口部から離れた位置とに配置する第2炉蓋駆動部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第2の発明において、前記第1支持アームに前記第1炉蓋を水平状態で吊下げ支持する吊下げ支持手段を有しており、前記吊下げ支持手段は、前記第1炉蓋を前記開口部に配置した場合に、前記開口部との当接部に追従して前記第1炉蓋を傾斜させる傾斜追従部を有していることを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第2の発明又は第3の発明において、前記坩堝の前記開口部に隣接した位置に、横断面円形状をなす軸部が立設され、前記第1支持アームは、前記軸部から側方に延びるように設けられており、前記第1炉蓋駆動部は、前記軸部をその軸線方向に移動させる軸移動手段と、前記軸部の回転を規制しつつ上下への移動を案内する移動案内手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第4の発明において、前記軸部が挿通される回転筒部を有し、前記第2支持アームは、前記回転筒部に当該回転筒部から側方に延びるように設けられ、前記第2炉蓋駆動部は、前記回転筒部を回転駆動させるようにしたことを特徴とする。
【0014】
第6の発明では、第2の発明乃至第5の発明のうちいずれか1つの発明において、前記第1炉蓋駆動部は、前記第1炉蓋が、前記開口部からその上方に離れた位置と、その位置から旋回して前記開口部の上方領域から離れた位置とに配置されるように、前記第1支持アームを旋回移動させるようにしたことを特徴とする。
【0015】
第7の発明では、第2の発明乃至第6の発明のうちいずれか1つの発明において、前記坩堝の前記開口部の周囲に環状をなすように設けられ、その内周部分に吸入口を有する集塵ダクトを備え、前記第2支持アームは、その旋回動作によって前記第2炉蓋が前記集塵ダクトの内側空間を上方から覆う位置に配置される高さ位置に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、坩堝の被溶解金属を溶解させる場合は、バーナー付きの第1炉蓋によって開口部が塞がれるため、熱放出が抑制される一方、溶湯を保持する場合には、この第1炉蓋に代えて、バーナーが設けられていない第2炉蓋によって開口部が塞がれる。このため、第2炉蓋によって熱放出を抑制しながら溶湯を保持できるため、溶湯保持時に、坩堝内から発生する高熱にバーナーが長期間さらされ続けて、バーナーの寿命が短くなることも抑制できる。
【0017】
第2の発明によれば、第1支持アームを上に移動させて、坩堝の開口部から離れた位置に第1炉蓋が配置された状態で、第2支持アームを旋回させて、開口部を塞ぐ位置に第2炉蓋を配置すれば、溶湯保持時に開口部から熱が放出されることを抑制できる。この構成では、第2炉蓋を上下に移動させる必要がなく、旋回動作させるだけで足りるため、構成を簡素化できる。
【0018】
第3の発明によれば、第1炉蓋を吊下げ支持する吊下げ支持手段が傾斜追従部を有しているため、坩堝の開口部が傾斜していた場合でも、その傾斜に追従して傾斜させた状態の炉蓋によって坩堝の開口部は塞がれる。これにより、坩堝の開口部に傾きがあっても、その開口部と炉蓋との間に余分な隙間が生じて、そこから熱が放出されてしまうことを抑制できる。
【0019】
第4の発明によれば、軸部がその軸線方向、つまり上下方向に移動することにより、第1支持アームは上下に移動し、それに伴って第1炉蓋の配置が、坩堝の開口部を塞ぐ位置と開口部からその上方に離れた位置とに変更される。
【0020】
ここで、軸部は横断面が円形状に形成されているため、その上下への移動時に回動する可能性があり、この軸部の回動によって第1炉蓋が、坩堝の開口部の上方領域から外れてしまうおそれがある。この点、第4の発明では、移動案内手段により軸部の回転を規制しつつ上下への移動が案内されるため、軸部の回動を抑制し、第1炉蓋を開口部の上方領域に配置された状態を維持できる。これにより、軸部の上下への移動を繰り返したとしても、金属溶解時には、開口部を塞ぐ位置に第1炉蓋を確実に配置させることができる。
【0021】
第5の発明によれば、第1炉蓋を支持する第1支持アームが軸部に設けられ、第2炉蓋を支持する第2支持アームが前記軸部を挿通する回転筒部に設けられている。このため、一つの軸線上に軸部と回転筒部とが設けられることになり、それらが別々の中心軸線を有するように設けられた構成と比べ、構成を簡素化できる。
【0022】
第6の発明によれば、第2炉蓋によって坩堝の開口部を塞いで坩堝内の溶湯を保持する場合に、第1炉蓋駆動部により、第1炉蓋を旋回させて開口部の上方領域から離れた位置に配置することが可能となる。第1炉蓋がこの位置に配置されることにより、溶湯から放出される熱がバーナーに与える影響をより低減できる。
【0023】
第7の発明によれば、坩堝の開口部の周囲に、環状をなすように集塵ダクトが設けられている。このため、この集塵ダクトの内周部分に設けられた吸入口から、金属溶解時や溶湯保持時に坩堝内で発生するガス、粉塵等の浮遊物、金属蒸気(ヒューム)等(以下「ガス等」という。)を吸入して排出することができる。坩堝の開口部を覆う集塵フード方式の集塵装置の場合、第1炉蓋及び第2炉蓋という2つの炉蓋と、それら両炉蓋の配置を変更する炉蓋移動手段とを覆うような集塵フードが必要となり、大掛かりな集塵フードが必要となる。この点、坩堝の開口部の周囲に集塵ダクトが設けられる構成としたため、そのような大掛かりな集塵装置の設置が不要となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、誘導炉方式に加えてバーナーを設けたハイブリット式金属溶解炉に具体化したものである。
【0026】
はじめに、本実施形態の金属溶解炉についてその構成を説明する。
図1は、本実施形態の金属溶解炉を示す平面図である。
図1のうち、(a)は坩堝の上方が炉蓋によって塞がれた状態を示し、(b)は坩堝の上方が開放された状態を示している。
図2は、金属溶解炉の側面図であり、その一部の構成を断面図として示したものである。
【0027】
図1及び
図2に示すように、ハイブリット方式を採用する本実施形態の金属溶解炉10は、坩堝11と、集塵装置12と、2つの炉蓋13,14とを備えている。
【0028】
坩堝11は、底のある円筒形状を有する容器である。
図1(b)及び
図2に示すように、坩堝11の上部には開口部21が設けられている。この開口部21から鋳鉄等を含む被溶解金属が投入され、それにより、被溶解金属が坩堝11内に収容される。坩堝11の上端部には、注ぎ口22が設けられている。
図1に示すように、注ぎ口22は、開口部21から側方に向けて突出するように設けられている。坩堝11内で被溶解金属が溶解してなる溶湯は、この注ぎ口22を介して坩堝11から注湯容器(図示略)へ移し替えられたり、鋳型へ流し込まれたりする。
【0029】
図2に示すように、坩堝11は誘導コイル24を備えている。誘導コイル24は、坩堝11の円筒状部分の周囲を囲うように設けられている。この誘導コイル24に交流電流を流すことにより、坩堝11内に磁場が発生し、坩堝11に収容されている被溶解金属に電磁誘導によって誘導電流が流れる。この時、被溶解金属それ自体の電気抵抗によって当該被溶解金属が発熱することを利用し、この熱によって被溶解金属は溶解する。したがって、この誘導コイル24は、坩堝11内の被溶解金属に誘導電流を流して加熱する誘導加熱手段に相当する。
【0030】
集塵装置12は、坩堝11内の被溶解金属を溶解させる場合に、坩堝11内で発生したガス、粉塵等の浮遊物、金属蒸気(ヒューム)等(以下「ガス等」という。)を集めて外部に排出するための装置である。集塵装置12には、坩堝11を上からフードで覆うなど、様々な構成を有するものが提案されているが、本実施形態の集塵装置12は、坩堝11の開口部21の周囲に設けられるリングフードとなっている。
【0031】
図1に示すように、集塵装置12は、集塵ダクト31を有している。集塵ダクト31は環状をなして周方向の一部が開放されたC字形状をなし、その横断面は四角形状をなしている(
図2参照)。集塵ダクト31は、坩堝11の開口部21の周囲を囲い、その開放部32が注ぎ口22の上方に配置されるようにして坩堝11の周囲の平面部23に設けられている。
図2に示すように、集塵ダクト31の内部は、通気通路33となっている。通気通路33は吸引排出装置(図示略)に接続され、この吸引排出装置(図示略)により、通気通路33内には排気方向への気流が形成される。
【0032】
集塵ダクト31の内周面には、周方向に沿って複数の吸入口34が形成されている。吸入口34は、相対向して開放部32を形成する各端面35にも形成されている。この吸入口34により、集塵ダクト31の内側空間36や開放部32と通気通路33との間が通気可能となっている。通気通路33内には排気方向への気流が形成されているため、集塵ダクト31の内側空間36や開放部32から吸入口34を介して通気通路33に流入する気流が形成される。このため、坩堝11内の被溶解金属を溶解させた場合に発生して開口部21付近に至ったガス等は、吸入口34から通気通路33内に流入し、通気通路33を流通した後に外部に排出される。
【0033】
次に、炉蓋13,14について説明する。
図1及び
図2に示すように、炉蓋13,14はそれぞれ円板形状を有する蓋体である。炉蓋13,14は、第1炉蓋13と第2炉蓋14とよりなり、
図2に示すように、上下に異なる高さ位置に配置されている。各炉蓋13,14は、第1炉蓋駆動部50及び第2炉蓋駆動部70により、それぞれ配置位置を変更することが可能となるように設けられている。これら第1炉蓋駆動部50及び第2炉蓋駆動部70は、炉蓋移動手段に相当する。
【0034】
なお、
図1のうち(b)は、各炉蓋13,14がいずれも坩堝11の開口部21の上方領域から離れた位置に配置された状態を示している。また、
図2は、第1炉蓋13及び第2炉蓋14が、いずれも坩堝11の開口部21の上方領域に配置された状態での側面を示している。
【0035】
まず、第1炉蓋13について説明する。第1炉蓋13は、坩堝11に供給された被溶解金属を加熱して溶解させる場合に、開口部21を塞ぐ蓋体として用いられる。なお、
図3は、この第1炉蓋13が坩堝11の開口部21を塞ぐ位置に配置された状態を一部破断して示す側面図である。この
図3では、第2炉蓋14等については省略されている。
【0036】
図1(b)に示すように、第1炉蓋13の径L1は、坩堝11の開口部21の径L2よりも大きく形成されている。そのため、
図1(a)及び
図3に示すように、第1炉蓋13が坩堝11の開口部21を塞ぐ位置に配置された場合には、その開口部21の全域が塞がれるようになっている。もっとも、第1炉蓋13の径L1は、注ぎ口22を塞ぐほどの長さを有していない。そのため、
図1(a)及び
図3に示すように、開口部21が第1炉蓋13によって塞がれた場合でも、注ぎ口22は開放された状態にあり、注ぎ口22を介して坩堝11内と外部との連通が維持されている。
【0037】
このため、坩堝11の開口部21が第1炉蓋13で塞がれた場合でも、注ぎ口22を介して坩堝11内と外部との連通が維持されている。また、第1炉蓋13によって開口部21が密閉されるわけでもない。そうすると、坩堝11内の被溶解金属を溶解させる場合に坩堝11内で発生したガス等は、注ぎ口22から流出したり、第1炉蓋13から漏れたりする。そのガス等は、前述した集塵装置12によって集気され、外部に排出される。
【0038】
第1炉蓋13には、複数基(
図1に示すように、本実施形態では3基)のバーナー41が設けられている。これらバーナー41は、円板形状をなす第1炉蓋13の中心軸線を囲むように配置されている。
図2に示すように、各バーナー41にはガス供給管42が接続されており、これらガス供給管42を通じて各バーナー41に燃料ガスが供給される。
【0039】
第1炉蓋13において、バーナー41が設けられた位置に噴射用孔43が形成され、バーナー41は、第1炉蓋13が坩堝11の開口部21を塞ぐ位置に配置された場合に、その火炎噴射口から噴射用孔43を介して、坩堝11内に火炎を噴射する。このため、坩堝11内に収容された被溶解金属は、その上方からの火炎により加熱される。この加熱と、前述した被溶解金属の誘導加熱とが相まって、当該被溶解金属が加熱される。
【0040】
次いで、この第1炉蓋13の配置を変更する第1炉蓋駆動部50について説明する。第1炉蓋駆動部50は、第1炉蓋13を駆動してその配置位置を変更するための装置である。
図1、
図2及び
図3に示すように、この第1炉蓋駆動部50は、坩堝11の周囲に設けられた平面部23において、その坩堝11に隣接して設けられている。
【0041】
第1炉蓋駆動部50は、軸部としての駆動軸部51を有している。駆動軸部51は、平面部23に直交する方向に延び、横断面円形状をなしている。駆動軸部51の上端部には、その側方に延びる第1支持アーム52が設けられている。第1支持アーム52には、第1炉蓋13が支持されている。この第1支持アーム52も炉蓋移動手段を構成する。
【0042】
第1炉蓋13の中心部(重心部分)には、上方へ延びる連結部材53が設けられており、その連結部材53が第1支持アーム52の先端部に連結されている。この第1支持アーム52と連結部材53との連結部分において、連結部材53には、上下方向に沿った長穴54が形成されている。一方、第1支持アーム52には、この長穴54に挿通される取付軸部55が設けられている。このように第1支持アーム52の取付軸部55が連結部材53の長穴54に設けられることにより、第1支持アーム52の先端部には、第1炉蓋13が水平状態をなして吊下げ支持されている。
【0043】
そして、第1支持アーム52の取付軸部55は、長穴54に沿って移動可能であるため、この連結部分に遊びが設けられた状態で、第1支持アーム52と連結部材53とが連結されている。また、横断面円形状をなす取付軸部55により、連結部材53や第1炉蓋13は傾斜することも可能となる。そのため、坩堝11の開口部21やその周縁部が水平状態ではなく、若干の傾きが生じていたとしても、第1炉蓋13が周縁部に当接すると、その当接部が有する傾きに追従して第1炉蓋13も傾く。
【0044】
なお、連結部材53、長穴54及び取付軸部55によって吊下げ支持手段が構成され、そのうち長穴54及び取付軸部55によって傾斜追従部が構成されている。
【0045】
また、
図2に示すように、第1炉蓋駆動部50は、軸移動手段としてのシリンダ61と、外筒部62とを有している。平面部23の下方には軸収容筒部63が設けられ、その下端にシリンダ61のロッド側端面61aが取り付けられている。そして、シリンダ61は、ロッド64の出没方向が駆動軸部51の軸線方向と同一となり、かつ当該軸線方向とロッド64の軸線方向とが一致するように設けられている。ロッド64の先端は、駆動軸部51の下端面に取り付けられ、同一軸線となる駆動軸部51及びロッド64は、軸収容筒部63内を上下に移動することが可能となっている。
【0046】
外筒部62は、軸収容筒部63の上部から上に延びるようにして、前記平面部23に立設されている。外筒部62の中心軸線は、駆動軸部51及びロッド64の中心軸線と同一となっており、この外筒部62の内側中空部分に駆動軸部51が挿通されている。外筒部62の内面には、上下の端部に軸受部65が設けられ、軸受部65により駆動軸部51が上下方向に移動可能に支持されている。
【0047】
また、外筒部62の内面には、内側に突出するカムフォロア66が設けられている。
図4は、このカムフォロア66の設置状態を示す一部断面図である。
図4に示すように、カムフォロア66は一対設けられており、それぞれが駆動軸部51を間に介した状態で、真向いに設けられている。
【0048】
一方、駆動軸部51の外周面には一対のガイド溝67が形成され、各ガイド溝67にカムフォロア66がそれぞれ係合した状態となっている。それぞれのガイド溝67は、第1ガイド溝67aと第2ガイド溝67bとにより構成されている。第1ガイド溝67aは、駆動軸部51の軸線方向に沿って直線状をなすように形成されている。第2ガイド溝67bは、第1ガイド溝67aの下端から周方向に沿うとともに、斜め下方向に向かって形成されている。そのため、駆動軸部51の移動は、カムフォロア66と第1ガイド溝67a及び第2ガイド溝67bとのカム作用により、それらガイド溝67a,67bに案内される。
【0049】
図3に示すように、第1炉蓋13が坩堝11の開口部21を塞ぐ位置に配置された状態では、カムフォロア66は第1ガイド溝67aの上端部に配置されている。この状態では、シリンダ61のロッド64は没入し、駆動軸部51がその上下移動範囲の下端位置に配置されている。この状態からシリンダ61を駆動してロッド64を伸長させると、駆動軸部51は上に移動する。その駆動軸部51の移動に伴って、第1支持アーム52及び第1炉蓋13も開口部21の上方へ向かって移動する。この場合、直線状をなす第1ガイド溝67aとカムフォロア66とのカム作用により、駆動軸部51の上への移動がガイドされる。これにより、駆動軸部51が上に移動する場合に、駆動軸部51の回動が抑制される。この場合、カムフォロア66及び第1ガイド溝67aが移動案内手段に相当する。
【0050】
図3に二点鎖線で示すように、駆動軸部51、第1支持アーム52及び第1炉蓋13は、カムフォロア66が第1ガイド溝67aの下端に位置するまで、上に移動する。その後、さらにシリンダ61のロッド64を伸長させると、カムフォロア66は、第2ガイド溝67bに入る。これにより、周方向に沿って傾斜するように延びる第2ガイド溝67bとカムフォロア66とのカム作用により、駆動軸部51は回動しつつ上に移動する。これにより、第1支持アーム52及び第1炉蓋13は旋回しつつ上に移動し、
図1(b)に示すように、坩堝11の開口部21の上方領域から離れた位置に配置される。
【0051】
なお、第2ガイド溝67bは、駆動軸部51の回動角、つまり第1支持アーム52及び第1炉蓋13の旋回角は80°となるように設定されている。
【0052】
その後、再度、第1炉蓋13を、
図3に示すように、開口部21を塞ぐ位置に配置する場合は、以上とは逆の動作が行われる。すなわち、伸長した状態にあるシリンダ61のロッド64を没入させると、まず、第2ガイド溝67bとカムフォロア66とのカム作用により、駆動軸部51は逆方向へ回動しつつ下へ移動する。それに伴って第1支持アーム52及び第1炉蓋13は逆方向へ旋回し、第1炉蓋13が開口部21の上方領域に配置される。その後、さらにシリンダ61のロッド64を没入させると、第1ガイド溝67aとカムフォロア66とのカム作用により、駆動軸部51は下へ移動し、それに伴って第1支持アーム52及び第1炉蓋13も下へ移動する。そして、カムフォロア66が第1ガイド溝67aの上端に配置された状態となると、第1炉蓋13が開口部21を塞ぐ位置に配置される。
【0053】
次に、第2炉蓋14について、
図5もさらに参照しつつ説明する。
図5は、金属溶解炉10を示す平面図であり、第2炉蓋14の配置が変更される様子を示している。
【0054】
第2炉蓋14は、被溶解金属が溶解してなる溶湯を保持する場合に、開口部21を塞ぐ蓋体として用いられる。
図1(b)に示すように、第2炉蓋14の径L3は、集塵ダクト31の内径L4よりも大きく形成されている。このため、
図2及び
図5に示すように、この第2炉蓋14が坩堝11の開口部21の上方に配置されると、その平面視において、開口部21が塞がれた状態となる。
【0055】
第2炉蓋14は、その第2炉蓋14を駆動して、当該第2炉蓋14の配置位置を変更するための第2炉蓋駆動部70を有している。
図1及び
図2に示すように、この第2炉蓋駆動部70は、坩堝11の周囲に設けられた平面部23において、その坩堝11に隣接して設けられている。
【0056】
第2炉蓋駆動部70は、円筒状をなす回転筒部71を有している。回転筒部71は、平面部23に設けられた支持用筒部72の上に設置されている。回転筒部71と支持用筒部72は、その中空部の中心軸線が同一となるように設けられ、両者の間に介在する回転部材73により、回転筒部71がその中心軸線を中心として回動可能となっている。支持用筒部72は、第1炉蓋駆動部50を構成する外筒部62の外周側に設けられ、外筒部62が挿通されている。このため、回転筒部71及び支持用筒部72には、外筒部62及びその外筒部62に挿通された駆動軸部51が挿通されている。この場合、回転筒部71及び支持用筒部72の中心軸線と、外筒部62及び駆動軸部51の中心軸線とは同一となっている。
【0057】
平面部23には、支持用筒部72に隣接して、回転駆動部74が設けられている。回転駆動部74の上部には回転ギア75が上下方向を回転中心として設けられ、回転筒部71の外周部に設けられたギア部76とかみ合わされている。このため、回転ギア75が回転すると、回転筒部71が回転する。
【0058】
回転筒部71には、その側方に延びる第2支持アーム77が第1支持アーム52の下側に設けられている。第2支持アーム77には、第2炉蓋14が水平状態をなすように支持されている。第2支持アーム77は、その先端部が第2炉蓋14の中心部に至るまで延び、下端部に第2炉蓋14が取り付けられている。第2支持アーム77に支持された状態の第2炉蓋14は、集塵ダクト31の上面よりも若干高い位置に配置されている。なお、この第2支持アーム77も炉蓋移動手段を構成する。
【0059】
第2炉蓋駆動部70がこのような構成を有するため、回転駆動部74を駆動して回転ギア75を回転させることにより、第2炉蓋14は回動(旋回)する。この旋回により、第2炉蓋14は、
図5に示すように、坩堝11の開口部21の上方に配置された位置と、
図1(b)に示すように、開口部21の上方領域から離れた位置との間で配置が変更される。この場合の第2支持アーム77及び第2炉蓋14の旋回角は、第1支持アーム52及び第1炉蓋13と同様、80°となるように設定されている。
【0060】
図2及び
図5に示すように、第2炉蓋14が開口部21の上方に配置された状態では、第2炉蓋14は、集塵ダクト31の内側空間36の上方に配置されている。ここで、前述したように、第2炉蓋14は集塵ダクト31の上面よりも若干高い位置に配置されている。また、第2炉蓋14の径L3は、集塵ダクト31の内径L4よりも大きく形成されている。このため、集塵ダクト31の内側空間36の上方に第2炉蓋14が配置されることで、その内側空間36が塞がれ、それによって坩堝11の開口部21の上方が塞がれることになる。これにより、坩堝11内で熱が保持されて外部への熱放出が抑制されるため、坩堝11内の溶湯を保持することが可能となる。
【0061】
以上の構成を有する金属溶解炉10を用いて被溶解金属を溶解する溶解作業や溶湯の保持は、次のようにして行われる。
【0062】
まず、第1炉蓋駆動部50及び第2炉蓋駆動部70を駆動して、
図1(b)に示すように、第1炉蓋13及び第2炉蓋14を、坩堝11の開口部21の上方から離れた位置(待機位置)に配置する。この状態で、開放された坩堝11の開口部21から被溶解金属を投入する。
【0063】
次いで、第1炉蓋駆動部50を駆動して、
図1(a)及び
図3に示すように、第1炉蓋13を、前述した待機位置から開口部21の上方領域へ旋回させるとともに、そこから下へ移動させて開口部21を塞ぐ位置に配置する。この状態で、誘導コイル24に交流電流を流して被溶解金属を誘導加熱するとともに、バーナー41に燃料ガスを供給し、坩堝11内にバーナー41から火炎を噴射して被溶解金属を加熱する。
【0064】
同時に、集塵装置12の吸引排出装置(図示略)を駆動して、集塵ダクト31の内側空間36から通気通路33に流れる気流を発生させる。これにより、金属溶解時に発生して、注ぎ口22から導出されたり、第1炉蓋13から漏れ出したりしたガス等は、吸入口34を介して通気通路33に流入し、その後排出される。
【0065】
被溶解金属の溶解作業が終了すると、第1炉蓋駆動部50を駆動して、第1炉蓋13を、開口部21を塞ぐ位置から待機位置に復帰させ、溶湯を注湯容器(図示略)へ移し替えるなど、次の作業が行われる。
【0066】
また、坩堝11内に溶湯をそのまま保持する場合には、第2炉蓋駆動部70を駆動して、
図5に示すように、第2炉蓋14を水平に旋回させて、待機位置から集塵ダクト31の内側空間36を上方から覆う位置に配置する。これにより、坩堝11の開口部21はその上方が塞がれるため、坩堝11内からの熱放出が抑制され、溶湯を好適に保持できる。被溶解金属を坩堝11に供給する場合には、第2炉蓋駆動部70を駆動して、第2炉蓋14をもとの待機位置に復帰させる。
【0067】
以上説明した本実施形態の金属溶解炉10によれば、以下に示す効果が得られる。
【0068】
金属溶解炉10を用いて、坩堝11の被溶解金属を溶解させる場合、バーナー41が設けられた第1炉蓋13によって開口部21が塞がれるため、溶解時の熱放出が抑制される。また、坩堝11内の溶湯を保持する場合には、この第1炉蓋13に代えて、バーナー41が設けられていない第2炉蓋14によって開口部21が塞がれる。このため、第2炉蓋14によって熱放出を抑制しながら溶湯を保持できるため、溶湯保持時に、坩堝11内から発生する高熱にバーナー41がさらされ続けて、バーナー41の寿命が短くなることも抑制できる。
【0069】
第1炉蓋13が坩堝11の開口部21から離れた位置に配置された状態で、第2支持アーム77を旋回させて、開口部21を塞ぐ位置に第2炉蓋14を配置すれば、溶湯保持時に開口部21から熱が放出されることを抑制できる。この構成では、第2炉蓋14を上下に移動させる必要がなく、旋回動作させるだけで足りるため、構成を簡素化できる。
【0070】
第1支持アーム52と第1炉蓋13に設けられた連結部材53との連結部分には、遊びが設けられている。そのため、坩堝11が水平状態ではなく、若干の傾きが生じていたとしても、その傾きに合わせて第1炉蓋13が傾斜するため、開口部21と第1炉蓋13との間に隙間が形成されて、そこから熱が放出されてしまうことを抑制できる。
【0071】
第1炉蓋13の配置を移動させる第1炉蓋駆動部50は、駆動軸部51を有している。この駆動軸部51がその軸線方向、つまり上下方向に移動することにより、第1支持アーム52は上下に移動し、それに伴って第1炉蓋13の配置が、坩堝11の開口部21を塞ぐ位置と開口部21からその上方に離れた位置とに変更される。
【0072】
ここで、駆動軸部51は横断面が円形状に形成されているため、その上下への移動時に回動する可能性があり、この駆動軸部51の回動によって第1炉蓋13が、坩堝11の開口部21の上方領域から外れてしまうおそれがある。この点、第1ガイド溝67aとカムフォロア66とのカム作用により、駆動軸部51は回動を規制されながら上下への移動が案内される。そのため、駆動軸部51の回動が抑制され、第1炉蓋13を開口部21の上方領域に配置された状態を維持できる。これにより、第1炉蓋13の配置を変更させるため、駆動軸部51の上下への移動を繰り返したとしても、開口部21を塞ぐ位置に第1炉蓋13を確実に配置させることができる。
【0073】
第1炉蓋駆動部50により、第1炉蓋13は旋回移動して、坩堝11の開口部21からその上方に離れた位置と、その位置から旋回して開口部21の上方領域から離れた位置とに配置される。このため、第2炉蓋14によって開口部21を塞いで坩堝11内の溶湯を保持する場合に、第1炉蓋13を旋回させて、開口部21の上方領域から離れた位置に第1炉蓋13が配置される。第1炉蓋13がこの位置に配置されることにより、坩堝11内の溶湯から放出される熱がバーナー41に与える影響をより低減できる。
【0074】
第1炉蓋駆動部50において、第1炉蓋13を支持する第1支持アーム52が駆動軸部51に設けられ、第2炉蓋14を支持する第2支持アーム77が駆動軸部51を挿通する回転筒部71に設けられている。このため、一つの中心軸線上に駆動軸部51と回転筒部71とが設けられることになり、それらが別々の中心軸線を有するように設けられた構成と比べ、構成を簡素化できる。
【0075】
集塵装置12として、坩堝11の開口部21の周囲に、周方向の一部が開放されたC字状をなす集塵ダクト31が設けられている。この集塵ダクト31の内周部分に設けられた吸入口34から、金属溶解時や溶湯保持時に坩堝内で発生するガス等を吸入して排出することができる。坩堝11の開口部21を覆う集塵フード方式の集塵装置を仮に設置するとすれば、第1炉蓋13及び第2炉蓋14と、第1炉蓋駆動部50及び第2炉蓋駆動部70とを覆うような、大掛かりな集塵フードが必要となる。この点、坩堝11の開口部21の周囲に集塵ダクト31が設けられるリングフードを採用したため、そのような大掛かりな集塵装置の設置が不要となる。
【0076】
なお、上記した実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0077】
(1)上記実施の形態では、第2支持アーム77を旋回させる回転筒部71に、駆動軸部51及び外筒部62を挿通し、これらの中心軸線が同一となる構成が採用されている。この構成に代えて、回転筒部71を回動軸部として駆動軸部51とは別の位置に設置して、第1支持アーム52と第2支持アーム77とをそれぞれ支持する2つの支持部材を設けてもよい。
【0078】
(2)上記実施の形態では、集塵装置12が設けられているが、この集塵装置12は省略してもよい。この場合、第2炉蓋14は、坩堝11の開口部21に配置されるように、その高さ位置が設定される。ただ、金属溶解時や溶湯保持時に発生するガス等を排出すべく、集塵装置12を設けた構成を採用することが好ましい。
【0079】
また、集塵装置12を設置する場合でも、上記実施の形態のようなリングフードではなく、坩堝11の開口部21、2つの炉蓋13,14、第1炉蓋駆動部50及び第2炉蓋駆動部70の構成を含め、これら全体を上方から覆う集塵フードを備えた集塵装置を採用してもよい。
【0080】
(3)上記実施の形態では、第1炉蓋駆動部50は、第1支持アーム52及び第1炉蓋13を上下に移動させるだけでなく、旋回移動もするように構成されているが、旋回移動を省略した構成を採用してもよい。この構成でも、第1炉蓋13を上に移動させて、開口部21からその上方に離れた位置に配置されることで、溶湯からの熱がバーナー41に与える影響を抑制することができる。
【0081】
(4)上記実施の形態では、第2炉蓋駆動部70は、第2支持アーム77及び第2炉蓋14を旋回動作させるだけの構成とされているが、第2支持アーム77及び第2炉蓋14が旋回だけでなく上下に移動する構成を採用してもよい。この構成によれば、坩堝11の開口部21の上方に第2炉蓋14が配置された状態から、その第2炉蓋14を開口部21側に移動させることにより、第2炉蓋14の周縁部に隙間が形成されて、そこから熱が放出されることを抑制できる。
【0082】
(5)上記実施の形態では、第1炉蓋13が第1支持アーム52の先端部に吊下げ支持された構成を採用したが、第2炉蓋14が第2支持アーム77に取り付けられているように、第1炉蓋13を第1支持アーム52に取り付けた構成を採用してもよい。
【0083】
(6)上記実施の形態では、第1支持アーム52と第1炉蓋13に設けられた連結部材53との連結部分には、長穴54と取付軸部55とにより遊びが設けられている。この遊びを設ける構成は省略してもよい。もっとも、坩堝11が有する傾斜に第1炉蓋13を追従させて隙間が形成されることを抑制する意味では、遊びが設けられた構成を採用することが好ましい。
【0084】
(7)上記実施の形態では、軸移動手段としてシリンダ61を採用したが、例えば、ラック及びピニオンなどの機械的要素を用いて駆動軸部51を上下に移動させるように構成してもよい。