(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193338
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】引戸任意開扉位置停止装置
(51)【国際特許分類】
E05C 17/64 20060101AFI20170828BHJP
E05F 5/00 20170101ALI20170828BHJP
【FI】
E05C17/64
E05F5/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-238224(P2015-238224)
(22)【出願日】2015年12月7日
(62)【分割の表示】特願2012-171285(P2012-171285)の分割
【原出願日】2012年8月1日
(65)【公開番号】特開2016-75142(P2016-75142A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2015年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】風間 保夫
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−087638(JP,A)
【文献】
特開2007−327273(JP,A)
【文献】
特開2001−323711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 1/00−21/02
E05F 1/00−17/00
E05D 15/00−15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開扉方向に動かされることに伴い閉扉力がかけられるようにした引戸を任意開扉位置に停止するための引戸任意開扉位置停止装置において、該引戸を任意開扉位置に停止するために該引戸に該閉扉力に抗する制動力を加える閉扉制動装置(14)を備え、該閉扉制動装置が、
引戸(3)に取り付けられて該引戸(3)と共に開扉・閉扉方向(A、B)に変位される支持フレーム(20)と、
該支持フレーム(20)に支持され、該支持フレーム(20)に対して開扉・閉扉方向で相対的に変位可能とされた弾性ローラ(22−2)であって、戸枠(2)に固定され開扉・閉扉方向で延在するレール(4)上を転動しながら該支持フレーム(20)に対して開扉・閉扉方向で変位可能とされた弾性ローラ(22−2)を含む制動ローラ(22)と、
該支持フレーム(20)に取り付けられた制動部材(24)であって、該レール(4)との間に、該レール(4)上を回転しながら該支持フレーム(20)に対して相対的に開扉・閉扉方向で変位する制動ローラ(22)を通すローラ通路(26)を画定する制動面(24−1)を有し、該制動面(24−1)が該ローラ通路(26)の該レールとの間の間隔を狭くする狭窄部分(24−2)を有し、該制動面が該レール(4)から離れる方向に変位するのを阻止する開扉側位置(
図3、
図5)と、該開扉側位置よりも閉扉側に変位して該制動面(24−1)が該レール(4)から離れるのを許容する閉扉側位置(
図4)との間で変位可能とされた制動部材(24)と、
該支持フレーム(20)に取り付けられて該開扉側位置から該閉扉側位置に変位する該制動部材(24)に係合して該制動部材(24)を該開扉側位置に向けて付勢するバネ部材(29)と
を有し、
該制動ローラ(22)は、該引戸が閉扉位置(
図5)にあるときに該開扉側位置にある該制動部材(24)の該制動面(24−1)の該狭窄部分(24−2)よりも開扉側にあり、該引戸(3)が開扉位置(
図3)にあるときは該開扉側位置にある該制動部材(24)の該制動面(24−1)の該狭窄部分(24−2)よりも閉扉側にあり、引戸(3)が閉扉位置(
図5)から開扉位置(
図3)に変位するときには該引戸(3)とともに開扉方向に変位される該制動部材(24)の該制動面(24−1)が該制動ローラ(22)を該狭窄部分(24−2)よりも開扉側で該レールとの間に挟むように係合することにより該閉扉側位置に変位され且つ該レールから離れるように変位されて該狭窄部分(24−2)が該制動ローラ(22)の該弾性ローラ(22−2)を開扉方向に通過し、該引戸(3)が開扉位置(
図3)から閉扉位置(
図5)に変位するときには該引戸(3)とともに開扉方向に変位される該制動部材(24)の該制動面(24−1)が該制動ローラ(22)を該狭窄部分(24−2)よりも閉扉側で該レールとの間に挟むように係合し、該制動ローラから該閉扉力より大きい制動力を受けるようになっている、引戸任意開扉位置停止装置。
【請求項2】
該制動面(24−1)が、該狭窄部分(24−2)から閉扉方向(B)側に延びるに従って該レール(4)との間の間隔を次第に大きくする閉扉側傾斜部分(24−4)及び該狭窄部分(24−2)から開扉方向(A)側に延びるに従って同間隔を次第に大きくする開扉側傾斜部分(24−3)を有する請求項1に記載の引戸任意開扉位置停止装置。
【請求項3】
該制動ローラの該弾性ローラは該開扉・閉扉方向に直交して水平に延びる回転シャフト(22−1)を備え、
該支持フレーム(20)は開扉・閉扉方向に直交する断面で見て逆U字状とされ、一対の対向する側壁(20−1)を有し、各側壁(20−1)は該回転シャフト(22−1)の端部を該開扉・閉扉方向で変位可能に受け入れる回転シャフト収納溝(20−2)を有するようにされている請求項1又は2に記載の引戸任意開扉位置停止装置。
【請求項4】
該制動部材(24)は、該支持フレーム(20)の対向する該側壁(20−1)の間に設けられ、一対の逆L字状の開口(24−5)が開扉・閉扉方向で間隔を開けて設けられており、各開口(24−5)は開扉・閉扉方向に延びて閉扉側部分(24−5B)と開扉側部分(24−5A)とを有し、該開扉側部分(24−5A)には下方に延びる延長部分(24−5C)が設けられ、
該支持フレーム(20)には該対向する側壁(20−1)間を水平に延び、それぞれ該逆L字状の開口(24−5)を貫通する一対のピン(30)が設けられており、
該ピンは、それぞれ、該制動部材(24)が該開扉側位置(
図3、
図5)にあるときに該開口(24−5)の閉扉側部分(24−5B)内にあり該開口の閉扉側端部(24−6)に隣接し、該閉扉側位置(
図4)にあるときは該開口の開扉側部分(24−5A)内にあり該開口の開扉側端部(24―7)に隣接するようにされている請求項
1乃至3のいずれか一項に記載の引戸任意開扉位置停止装置。
【請求項5】
該閉扉制動装置が、該制動部材の該狭窄部が該レールから離されて、開扉された該引戸が該閉扉力により閉扉方向に変位されるのを阻止できない作動不能位置に変位可能とされており、
当該引戸任意開扉位置停止装置が、更に、該閉扉制動装置に隣接して該引戸に取り付けられて、該閉扉制動装置を該作動不能位置に変位させて該閉扉制動装置の制動作用を解除する制動解除装置を備える請求項1乃至4のいずれか一項に記載の引戸任意開扉位置停止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸を任意の開扉位置に保持するための引戸任意開扉位置停止装置に
関する。
【背景技術】
【0002】
引戸を開扉したときに自動的に閉扉されるようにした引戸装置が知られている。また、そのような引戸装置において、引戸を任意の開扉位置に保持するようにするために閉扉方向に動こうとする引戸を制動して引戸を任意の開扉位置に保持する引戸任意開扉位置停止装置を備えた引戸装置も知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
これに対して、火災発生時において、上記引戸任意開扉位置停止装置の制動機能を解除して、引戸が自動的に閉扉されるようにした引戸装置も知られている(例えば特許文献3及び4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2741670号
【特許文献2】特開2010-248830号
【特許文献3】特許第2937828号
【特許文献4】特許第4800852号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に開示された引戸の引戸任意開扉位置停止装置は、自動的に閉じようとする引戸に対して一定の制動力をかけてこれを停止させるものであり、引戸に該制動力以上の閉扉力をかけることによりそれを閉じることができるようになっている。特許文献1に開示された引戸任意開扉位置停止装置は、引戸を開扉するときも閉扉するときも同じ制動力が引戸に加えられるようになっているため、開扉操作に大きな力が必要となるのに対して、特許文献2は開扉操作のときに必要とされる開扉力を小さくし、開扉された引戸が閉扉方向で動くときには大きな制動力がかかるようにする改良が行われている。
【0006】
特許文献3に開示された引戸任意開扉位置停止装置は、引戸(8:特許文献3における参照番号)に枢動可能取り付けられた弾性ストッパ片(72)が戸枠に水平に固定されたレール(11)に係合し、制動力を与えるものであり、制動力解除の際には弾性ストッパ片を支持する支持金具(71)を回動することにより、該弾性ストッパ片(72)をレール(11)から離すようにしたものであるが、特許文献1に開示された引戸任意開扉位置停止装置と同様に、通常の開扉及び閉扉においては、引戸に対して同じ制動力がかかるようになっている。また、平常時には支持金具(71)に係合して、該支持金具を引戸に対して静止位置に保持すると共に、火災時には支持金具との係合を解除して、該支持金具が上記のように回動するのを許容する退避手段(78)が設けられているが、この退避手段(78)は、支持金具と係合するストッパ(76)を先端に備えるプランジャ(77)と、該プランジャを火災発生時には引き込めてストッパを支持金具から外すソレノイド装置(ソレノイド75)からなるものであり、支持金具を回動しようとするバネ(74)の付勢力がプランジャ(77)に当該プランジャを横断する方向で掛かるために、プランジャを引き込めるための力はかなり大きいものが必要となり当該ソレノイド装置はかなり大きなものとしなければならない。
【0007】
特許文献4の引戸任意開扉位置停止装置は、戸枠に取り付けられる制動部材(保持部材37)を有し、該制動部材が引戸に水平方向で固定されるレール(保持レール20)と係合し、開扉時には開扉に対する実質的な抵抗力は加えず、閉扉時に所要の制動力を加えるようになっており、火災時には警報信号に応答して、該制動部材(37)にリンクしている回動アーム(36)を係止しているラッチ部材(レバー部材43)が外されて、制動部材(37)がバネ力により回動されてレール(20)に閉扉方向での力を加え、引戸が閉扉方向で動かされるようにしている。この引戸任意開扉位置停止装置は、火災時に引戸を閉扉させるための機構が上記のようなものであり、構造が複雑になる。
【0008】
本発明は、このような点に鑑み、開扉した引戸に対する制動力を解除し自動的な開扉を可能とする構造が簡単な引戸任意開扉位置停止装置を提供することを目的とする。また、そのような引戸任意開扉位置停止装置において、開扉するときは比較的小さな力で開扉することができ、閉扉時には確実に引戸を制動して開扉位置に保持することが新たな構造の制動装置を備えた引戸任意開扉位置停止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、
開扉方向に動かされることに伴い閉扉力がかけられるようにした引戸を任意開扉位置に停止するための引戸任意開扉位置停止装置(以下に述べる実施形態の説明では参照番号10で示す。以下、同様の参照番号を付す。)において、該引戸を任意開扉位置に停止するために該引戸に該閉扉力に抗する制動力を加える閉扉制動装置(14)を備え、該閉扉制動装置が、
引戸(3)に取り付けられて該引戸(3)と共に開扉・閉扉方向(A、B)に変位される支持フレーム(20)と、
該支持フレーム(20)に支持され、該支持フレーム(20)に対して開扉・閉扉方向で相対的に変位可能とされた弾性ローラ(22−2)であって、戸枠(2)に固定され開扉・閉扉方向で延在するレール(4)上を転動しながら該支持フレーム(20)に対して開扉・閉扉方向で変位可能とされた弾性ローラ(22−2)を含む制動ローラ(22)と、
該支持フレーム(20)に取り付けられた制動部材(24)であって、該レール(4)との間に、該レール(4)上を回転しながら該支持フレーム(20)に対して相対的に開扉・閉扉方向で変位する制動ローラ(22)を通すローラ通路(26)を画定する制動面(24−1)を有し、該制動面(24−1)が該ローラ通路(26)の該レールとの間の間隔を狭くする狭窄部分(24−2)を有し、該制動面が該レール(4)から離れる方向に変位するのを阻止する開扉側位置(図3、図5)と、該開扉側位置よりも閉扉側に変位して該制動面(24−1)が該レール(4)から離れるのを許容する閉扉側位置(図4)との間で変位可能とされた制動部材(24)と、
該支持フレーム(20)に取り付けられて該開扉側位置から該閉扉側位置に変位する該制動部材(24)に係合して該制動部材(24)を該開扉側位置に向けて付勢するバネ部材(29)と
を有し、
該制動ローラ(22)は、該引戸が閉扉位置(図5)にあるときに該開扉側位置にある該制動部材(24)の該制動面(24−1)の該狭窄部分(24−2)よりも開扉側にあり、該引戸(3)が開扉位置(図3)にあるときは該開扉側位置にある該制動部材(24)の該制動面(24−1)の該狭窄部分(24−2)よりも閉扉側にあり、引戸(3)が閉扉位置(図5)から開扉位置(図3)に変位するときには該引戸(3)とともに開扉方向に変位される該制動部材(24)の該制動面(24−1)が該制動ローラ(22)を該狭窄部分(24−2)よりも開扉側で該レールとの間に挟むように係合することにより該閉扉側位置に変位され且つ該レールから離れるように変位されて該狭窄部分(24−2)が該制動ローラ(22)の該弾性ローラ(22−2)を開扉方向に通過し、該引戸(3)が開扉位置(図3)から閉扉位置(図5)に変位するときには該引戸(3)とともに開扉方向に変位される該制動部材(24)の該制動面(24−1)が該制動ローラ(22)を該狭窄部分(24−2)よりも閉扉側で該レールとの間に挟むように係合し、該制動ローラから該閉扉力より大きい制動力を受けるようになっている、引戸任意開扉位置停止装置を提供する。
【0010】
この引戸任意開扉位置停止装置では、制動部材が引戸と共に開扉及び閉扉方向に動かされて制動ローラに係合し、引戸が開扉されるときには該制動ローラとの係合によってレールから離れるように変位され、引戸が閉扉されるときにはそのような変位は生じないようにすることにより、該制動部材(従って引戸)に係る制動力が引戸を閉扉方向に動かすときよりも開扉方向に動かすときの方が小さくなるようにし、開扉をしやすくするとともに閉扉のときに生じる制動力が、開扉した引戸にかかる閉扉力よりも大きくなるようにすることにより任意開扉位置で当該引戸を停止できるようにしている。
【0011】
制動面(24−1)は、具体的には、狭窄部分(24−2)から閉扉方向(B)側に延びるに従ってレール(4)との間の間隔を次第に大きくする閉扉側傾斜部分(24−4)及び狭窄部分(24−2)から開扉方向(A)側に延びるに従って同間隔を次第に大きくする開扉側傾斜部分(24−3)を有するようにすることができる。
【0012】
制動ローラの弾性ローラは開扉・閉扉方向に直交して水平に延びる回転シャフト(22−1)を備え、支持フレーム(20)は開扉・閉扉方向に直交する断面で見て逆U字状とされ、一対の対向する側壁(20−1)を有し、各側壁(20−1)は回転シャフト(22−1)の端部を開扉・閉扉方向で変位可能に受け入れる回転シャフト収納溝(20−2)を有するようにすることができる。
【0013】
この場合、制動部材(24)は、支持フレーム(20)の対向する側壁(20−1)の間に設けられ、一対の逆L字状の開口(24−5)が開扉・閉扉方向で間隔を開けて設けられており、各開口(24−5)は開扉・閉扉方向に延びて閉扉側部分(24−5B)と開扉側部分(24−5A)とを有し、該開扉側部分(24−5A)には下方に延びる延長部分(24−5C)が設けられ、
支持フレーム(20)には対向する側壁(20−1)間を水平に延び、それぞれ逆L字状の開口(24−5)を貫通する一対のピン(30)が設けられており、
該ピンは、それぞれ、制動部材(24)が上記開扉側位置(図3、図5)にあるときに開口(24−5)の閉扉側部分(24−5B)内にあり開口の閉扉側端部(24−6)に隣接し、上記閉扉側位置(図4)にあるときは開口の開扉側部分(24−5A)内にあり開口の開扉側端部(24―7)に隣接するようにすることができる。
【0014】
以上の引戸任意開扉位置停止装置において、該閉扉制動装置(14)が、制動部材(24)の狭窄部分(24−2)がレール(4)から離されて、開扉された引戸(3)が、該引戸にかかる閉扉力により閉扉方向に変位されるのを阻止できない作動不能位置に変位可能とされており、
当該引戸任意開扉位置停止装置が、更に、閉扉制動装置(14)に隣接して引戸(3)に取り付けられて、閉扉制動装置(14)を上記作動不能位置に変位させて当該閉扉制動装置(14)の制動作用を解除する制動解除装置(16)を備えるようにすることができる。
【0015】
以下、本発明にかかる引戸任意位置停止装置を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】引戸の上縁にある戸車取付部材に固定された本発明に係る引戸任意位置停止装置の正面図である。
【
図2】
図1の引戸任意位置停止装置を開扉方向側から見た側面図である。
【
図3】
図1の引戸任意開扉位置停止装置の主要要素である閉扉制動装置と制動解除装置との、引戸が開扉位置にあるときの状態を、それらの縦断側面図として示した図であり、閉扉制動装置及び制動解除装置を戸車取付部材に取り付けるための固定フレームを想像線で示してある。
【
図4】引戸が閉扉位置から開扉方向に向けて動かされはじめたときの閉扉制動装置と制動解除装置とを示しており、閉扉制動装置の制動部材が制動ローラによって上方に持ち上げられている状態を示している。
【
図5】引戸が閉扉位置にあるときの閉扉制動装置と制動解除装置を示しており、閉扉制動装置の制動部材が
図3と同じ位置にあることを示している。
【
図6】制動解除装置が作動しはじめた状態を示す
図3に類似した図である。
【
図7】制動解除装置により閉扉制動装置が作動不能位置とされた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び
図2において2は戸枠、3は引戸、4は戸枠に固定されたレール、5はレール上を転動する戸車、6は戸車を引戸3の上縁に取り付けるための戸車取付部材を示す。
【0018】
本発明に係る引戸任意開扉位置停止装置10は、戸車取付部材6にビス7によって固定される横断面が逆U字状とされた固定フレーム12と、該固定フレーム12の両側壁12−1間に設定される閉扉制動装置14及び制動解除装置16とを有する。固定フレーム12は、概念的には戸車取付部材6と一体で引戸の一部をなし、戸車5、閉扉制動装置14及び制動解除装置16を引戸3に取り付けるものであり、
図3以降の図面では、戸車取付部材6及び固定フレーム12を一体的なものとして想像線で示し、引戸任意開扉位置停止装置10の主要要素である戸車取付部材6及び固定フレーム12の関係を明瞭になるようにしている。
【0019】
閉扉制動装置14は、固定フレーム12の両側壁12−1にそれぞれ取り付けられて当該固定フレーム12に対して(従って引戸3に対して)静止位置で水平に延びる第1枢軸線18(
図3)を画定するビス18−1に枢動可能に取り付けられた逆U字状の支持フレーム20と、支持フレーム20によって支持されレール4上に載置される制動ローラ22と、レール4から上方に間隔をあけて支持フレーム20によって支持された制動部材24とを有する。
【0020】
制動ローラ22は、
図2に示すように、第1枢軸線に平行な(特許請求の範囲の記載における第4枢軸線に相当する)枢軸線22−4の周りで回動可能とされた回転シャフト22−1と、該回転シャフト22−1の周りに取り付けられてレール4上に載置される変形可能な弾性ローラ22−2と、該弾性ローラ22−2を回転シャフト22−1に固定的に取り付ける取付ローラ22−3とを有する。回転シャフト22−1の両端は、支持フレーム20の一対の側壁20−1に設けられた回転シャフト収納溝20−2(
図3)内に通されている。回転シャフト収納溝20−2は、レール4と平行に延びるように設けられており、制動ローラ22が支持フレーム20に対して引戸の開扉・閉扉方向で相対的に変位可能とされている。弾性ローラ22−2は、柔軟性を有するゴム材や合成樹脂で作られることが好ましい。
【0021】
制動部材24は、レール4との間に、レール4上を回転しながら支持フレーム20に対して相対的に開扉・閉扉方向で変位する制動ローラ22を通すローラ通路26を画定する制動面24−1を有する。制動面24−1は、制動ローラ22に係合するようにされており、ローラ通路26のレール4との間の間隔を狭くする狭窄部分24−2と、該狭窄部分24−2から
開扉方向側Aに延びるに従ってレール4との間の間隔を次第に大きくする
開扉側傾斜部分24−3及び狭窄部分24−2から
閉扉方向側Bに延びるに従って同間隔を次第に大きくする
閉扉側傾斜部分24−4を有する。制動部材24は、
図3に示すように、開扉・閉扉方向で間隔を開けて設けられた一対の逆L字状の開口24−5を有しており、各開口24−5には、後述するように、支持フレーム20の側壁20−1間で上下方向での位置が調節可能なピン30が通されている。各開口24−5は
閉扉側部分24−5Bと開扉側部分24−5Aとを有し、開扉側部分24−5Aにはレール4に向けて延びる延長部分24−5Cが設けられ、制動部材24は、開口24−5の
閉扉側端部24−6がピン30に略当接する
開扉側位置(
図3)と、開口24−5の
開扉側端部24−7がピン30に略当接する
閉扉側位置(
図4)との間で支持フレーム20に対して相対的に変位可能であり、
閉扉側位置にあるときには、延長部分24−5Cがピン30を収納して当該制動部材24がレール4から離れる方向に変位可能とされている。支持フレーム20は板バネ29を備えており、該板バネ29は制動部材24を
図3に示す
開扉側位置に向けて付勢するようになっている。
【0022】
制動ローラ22は、引戸3が閉扉位置にあるときには、
図5に示すように、
開扉側位置にある制動部材24の
開扉側傾斜面24−3に係合する位置にある。この状態で、引戸3が開扉方向Aに動かされると、
開扉側傾斜面24−3に係合している制動ローラ22はレール4上を転動しながら狭窄部分24−2に向かい、板バネ29の付勢力に抗して制動部材24を
閉扉方向に変位させて
図4に示す開扉側位置とし、当該制動ローラ22が更にレール4上を転動して開扉方向
Aに動かされて狭窄部24‐2に向かうことにより、制動部材24をレール4から離れる方向で変位させ(すなわち
閉扉側位置にある制動部材24の開口24−5の
開扉側部分24−5Aの延長部分24−5Cがピン30と係合するようになし)、それにより拡大された狭窄部分24−2とレール4との間のローラ通路26を通り、制動部材24の
閉扉側傾斜面24−4に係合する位置となり、それにより制動部材24が板バネ29により前記
開扉側位置(
図3)に変位されるようにする。
【0023】
このようにして開扉された引戸3が閉扉方向
Bに動かされるときはレール4上を転動しながら狭窄部分24−2に向かうようになされるが、この場合、ピン30は開口24−5の
閉扉側部分24−5Bと係合しているために、制動部材24がレール4から離れる方向で変位するのは制限され、制動部材24の狭窄部分24−2とレール4との間のローラ通路26の間隔は大きくならず、制動ローラ22は制動部材24とレール4との間に大きな摩擦力を受け回転が停止され、それにより引戸の閉扉方向での動きが停止され、引戸は実質的に開扉された位置に保持される。このようにして停止された引戸に手で閉扉方向への力を加えると、制動ローラ22は大きく変形しながら制動部材24の狭窄部分24−2とレール4との間を通り、
開扉側傾斜面24−3に係合するようになり、制動部材24は
図5に示される位置となる。
【0024】
ピン30を上下方向で位置調節するには次のような調節部材34である。すなわち、この調節部材34は、
図2に示すように、一対の側壁34−1と両側壁を連結する頂壁34−2とを有する全体として逆U字状にされており、
図3に示すように、頂壁34−2には支持フレーム20の頂壁20−3に上下方向で延びる軸線の周りで回転可能とされた調節シャフト36のネジ部36−1が貫通して螺合されており、調節シャフト36の上端に取り付けられたノブ36−2を回転することにより、ネジ部36−1に沿って上下動するようになっている。ピン30の両端は支持フレーム20の両側壁20−1に設けた上下方向に延びるスロット20−4内に摺動可能に収納されており、該スロット20−4によって上下方向でガイドされるようになっている。
【0025】
上述のように、本発明に係る引戸任意開扉位置停止装置10は、上述のような、閉扉しようとする引戸に対して制動を行う閉扉制動装置14の制動作用を解除するための制動解除装置16を備えている。この制動解除装置16は、閉扉制動装置14の支持フレーム20の第1枢軸線18に対して平行にされ引戸3に対して静止位置とされた第2枢軸線40の周りで枢動可能とされた制動解除部材42を有する。制動解除部材42は、第2枢軸線40から放射線方向に延びる係止突起44と保持突起46とを有し、係止突起44は、第1枢軸線18と第2枢軸線40との間で閉扉制動装置14の支持フレーム20に形成された係止凹部20−5と係合して閉扉制動装置14を上述した閉扉制動作用を行う作動位置に保持すると共に、
図6及び
図7に示すように、当該制動解除部材42が第2枢軸線40の周りで時計方向に枢動することにより閉扉制動装置14を、第1枢軸線18の周りで反時計方向に枢動して上述の制動作用が出来なくなる作動不能位置に向けて枢動させる。すなわち、閉扉制動装置14の支持フレーム20が反時計方向で回動されると、制動部材24が該支持フレーム20と共に第1枢軸線18の周りで枢動されてレール4から離れる方向で変位され、これにより、制動部材24の制動面24‐1とレール4との間のローラ通過路26の幅が拡張され、上述した制動面24‐1とレール4とによる制動ローラ22への制動作用は低減若しくは無くなるようにされて、引戸3はそれに加わる閉扉方向
Bでの力により自動的に閉扉するようになる。保持突起46は、閉扉制動装置14が係止突起44により枢動されたときに閉扉制動装置14に係合して上述したような作動不能位置(
図7)に保持する。好ましくは、閉扉制動装置14の支持フレーム20の係止凹部20−5は、第1枢軸線18を中心とする第1の仮想歯車の1つの歯溝の形状を有し、制動解除部材42の係止突起44は、第1の仮想歯車に噛合する、第2の枢軸線40を中心とする第2の仮想歯車の1つの歯の形状を有するようにされる。
【0026】
制動解除装置16は、制動解除部材42に係合し係止突起44が閉扉制動装置14の支持フレーム20に係合して閉扉制動装置14を作動位置に維持するとともに、制動解除部材42との係合を解除して、閉扉制動装置14が作動不能位置に動かされるようにする制動解除起動装置50を更に有する。図示の実施形態では、制動解除起動装置50は、制動解除部材42に係合して、係止突起44が閉扉制動装置14の支持フレーム20に係合して閉扉制動装置14を作動位置に維持する係止部材52と、火災警報信号などの外部からの信号を受けて係止部材52を変位して制動解除部材42との係合を解除し、制動解除部材42が第2枢軸線40の周りで巻かれたバネ54により第2枢軸線40の周りを時計方向に回動されるようにするソレノイド装置56とを有する。
【0027】
係止部材52は、図示の実施形態では、第1枢軸線18に平行で引戸3に対して静止位置とされた第3枢軸線58の周りで回動可能とされたレバーとされ、該レバーの一端には第3枢軸線58と平行なピン60が設けられ、該ピン60の周りで回転可能とされた中空パイプ62が制動解除部材42の係止凹部64に係止され、他端がソレノイド装置56に接続され、ソレノイド装置56が外部からの信号を受けた場合に該ソレノイド装置56によって第3枢軸線58の周りで駆動され、レバーの上記一端に設けられた中空パイプ62が制動解除部材42の係止凹部64から外されるようにされている。この回転可能な中空パイプ62を設けたのは、係止凹部64との摩擦を少なくして該係止凹部64から外し易くし、ソレノイド装置56が小さな力で係止部材(レバー)52を動かすことができるようにするためである。
【0028】
第2枢軸線40の周りには制動解除部材42と一緒に枢動するスイッチ作動突起68が設けられており、ソレノイド装置が作動して制動解除部材42の係止突起44が閉扉制動装置の支持フレーム20から外れ、支持フレーム20が反時計方向に回動され、保持突起46が該保持フレーム20に係合したしたときに、該スイッチ作動突起68が固定フレーム12に固定されたリミットスイッチ70に係合して、ソレノイド装置56の作動を停止する。ソレノイド装置56の作動停止により、係止部材52は、軸線58の周りに巻かれた捻りバネ72によって反時計方向に戻されるが、制動解除部材42はバネ54により回動した位置に保持される。
【0029】
以上、本発明に係る引戸任意開扉位置停止装置の実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、図示の制動ローラ22はレール4と係合するものとして示されたが、前述の特許文献2に開示されたように戸車と係合するようにすることも可能である。また、制動解除部材42は手動で回動することができるようにすることも出来る。その他種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
戸枠2;引戸3;レール4、戸車5:戸車取付部材6;ビス7;引戸任意開扉位置停止装置10;固定フレーム12;側壁12−1;閉扉制動装置14;制動解除装置16;第1枢軸線18;支持フレーム20;側壁20−1;回転シャフト収納溝20−2;頂壁20−3;スロット20−4;係止凹部20−5;制動ローラ22;回転シャフト22−1;弾性ローラ22−2;取付ローラ22−3;(第4)枢軸線22−4;制動部材24;制動面24−1;狭窄部分24−2;閉扉側傾斜部分24−3;開扉側傾斜部分24−4;開口24−5;
開扉側部分24−5A;
閉扉側部分24−5B;延長部分24−5C;開扉側端部24−6;閉扉側端部24−7;ローラ通路26;ピン30;板バネ29;調節部材34;側壁34−1;頂壁34−2;調節シャフト36;ネジ部36−1;ノブ36−2;第2枢軸線40;制動解除部材42;係止突起44;保持突起46;制動解除起動装置50;係止部材52;バネ54;ソレノイド装置56;第3枢軸線58;ピン60;中空パイプ62;係止凹部64;スイッチ作動突起68;リミットスイッチ70;閉扉方向側A;開扉方向B