(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193385
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】自動車用電動液体ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 13/06 20060101AFI20170828BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20170828BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20170828BHJP
H02K 1/28 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
F04D13/06 H
H02K7/14 B
H02K1/22 A
H02K1/28 Z
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-538515(P2015-538515)
(86)(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公表番号】特表2015-535321(P2015-535321A)
(43)【公表日】2015年12月10日
(86)【国際出願番号】EP2013073195
(87)【国際公開番号】WO2014072360
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2015年4月27日
(31)【優先権主張番号】12191652.2
(32)【優先日】2012年11月7日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515069336
【氏名又は名称】ピアーブルグ パンプ テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Pierburg Pump Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】マルヴァシ, アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェゲナー, ロビン
【審査官】
新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−512462(JP,A)
【文献】
特開2007−318987(JP,A)
【文献】
特開2004−156909(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第1414030(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/06
H02K 1/22
H02K 1/28
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプホイール(30)を直接的に駆動するECモータ(16)を備えた自動車用電動液体ポンプ(10)において、
前記モータ(16)に備えられたウエットのモータロータ(40)であって、円筒状のロータ本体部(42)を備えたモータロータ本体(41)を含み、前記ロータ本体部(42)が永久的に磁化され且つ前記モータロータ本体(41)と協働して深鍋形状のモータロータキャビティ(44)を囲繞する、モータロータ(40)と、
前記ポンプホイール(30)とは反対側の前記モータロータ本体(41)の長手方向端に前記モータロータ本体(41)とは別個に備えられ、前記モータロータキャビティ(44)を閉じるカバーディスク(56)と
を具備し、
前記カバーディスク(56)は前記モータロータ本体(40)の前記長手方向端に流体密にして固定された外周縁部を有する、自動車用電動液体ポンプ(10)。
【請求項2】
前記カバーディス(56)は、前記モータロータキャビティ(44)が密封して隔離される流体密の壁である、請求項1に記載の自動車用電動液体ポンプ(10)。
【請求項3】
前記モータロータキャビティ(44)は固形のキャビティ充填材(45)で満たされている、請求項1又は2に記載の自動車用電動液体ポンプ(10)。
【請求項4】
前記カバーディスク(56)には、吐出された液体で前記モータロータキャビティ(44)を満すための1つの開口が備えられている、請求項1に記載の自動車用電動液体ポンプ(10)。
【請求項5】
前記カバーディスク(56)はカバー本体(50)の一部であり、該カバー本体(50)は円筒状の支持スリーブ(54)を含み、該支持スリーブ(54)は静的な支持軸(22)によって回転可能に支持されている、請求項1〜4の何れかに記載の自動車用電動液体ポンプ(10)。
【請求項6】
前記カバー本体(50)はシート金属体からなる、請求項5に記載の自動車用電動液体ポンプ(10)。
【請求項7】
前記ポンプホイール(30,30’)は、前記モータロータ(40)及び前記カバー本体(50)に組み付けられる別部品である、請求項1〜6の何れかに記載の自動車用電動液体ポンプ(10)。
【請求項8】
前記ポンプホイール(30,30’)の材料は、前記モータロータ(40)及び前記カバー本体(50)の材料とは異なる、請求項1〜7の何れかに記載の自動車用電動液体ポンプ(10)。
【請求項9】
前記ポンプホイール(30,30’,30”)は、軸線方向の液体入口及び径方向の液体出口を備えたインペラである、請求項1〜8の何れかに記載の自動車用電動液体ポンプ(10)。
【請求項10】
前記ポンプホイール(30”)及び前記モータロータ(40)の前記モータロータ本体(41’)は一体部品として設けられている、請求項1〜6の何れか記載の自動車用電動液体ポンプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプホイールを直接的に駆動するECモータを備えた自動車用電動液体ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータを備えた自動車用液体ポンプは特に、液状のクーラント又は潤滑剤を送り込むために使用され、自動車を駆動する内燃機関のみならず、電動の機関とも組み合わせて使用される。如何なる軸シールをも回避し且つ流体密な構造を保証するため、キャンドモータの発想が使用される。キャンド電動モータにおいて、ドライのモータステータコイルは電子的に整流され(EC(electronically commutated))、そして、モータロータは永久に磁化され、送り出す液体内に配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
モータロータを磁化するための好適な強磁性材料は比較的高価である。モータロータは一般的に、モータステータコイルと径方向に近接した円筒状のロータ本体部を備え、該ロータ本体部は中空をなしてリング状のモータロータキャビティを囲繞し、該モータロータキャビティは送り込む液体で満たされている。
【0004】
本発明の目的は、効率が改善された液密の自動車用電動液体ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
該目的は、請求項1の特徴を備えた自動車用電動液体ポンプによって達成される。
【0006】
自動車用電動液体ポンプにはECモータが備えられ、該ECモータはポンプホイールを直接的に駆動する。液体ポンプは、例えば水を送り込むクーラントポンプ、又は、例えばオイルを送り込む潤滑剤ポンプ、又は、他のタイプのポンプである。電動モータはキャンドモータとして備えられ、送り出す液体内で回転するウエットのモータロータを含む。モータロータはモータロータ本体を含み、該モータロータ本体は円筒状のロータ本体部を備え、該ロータ本体部は永久的に磁化されている。円筒状のロータ本体部は中空であって、リング状のモータロータキャビティを囲繞し、該モータロータキャビティは回転又は非回転の軸線方向の軸を囲んでいる。モータロータは全体的に多かれ少なかれ深鍋形状をなし、モータロータの磁化にとっては、比較的高価な永久磁石材料が最少の量だけ必要とされる。好ましくは、モータロータは永久磁石材料からなる一体品である。
【0007】
ポンプホイールとは反対側の
モータロータの長手方向端には
前記モータロータ本体とは別個のカバーディスクが備えられている。ポンプホイールは、
モータロータの一方の長手方向端に備えられ、カバーディスクは
モータロータの他方の長手方向端に備えられている。カバーディスクはモータロータキャビティを閉じ、これにより、モータロータキャビティと
モータロータの外側との間で、関連する液体が流れる可能性は最早無い。この結果、モータロータを囲む流体のみがモータロータとの関連した摩擦を引き起こす。覆われ且つ閉じられたモータロータキャビティ内の媒体はモータロータ本体と同一の回転速度で回転する。この結果、モータロータ本体の内面、特に、円筒状のロータ本体部の内面では、関連する摩擦が最早、引き起こされない。摩擦損失が低減されるので、それ故、電動モータの効率が増加される。
【0008】
本発明の好適な実施形態によれば、カバーディスクは流体密であって、モータロータキャビティは周囲の液体から密封して隔離される。モータロータキャビティとモータロータを囲む液体との間での液体の交換又は流れは最早可能ではない。
【0009】
一般的に、モータロータキャビティは送り出す液体又は空気で満たすことができる。液状のクーラントを送り出す液体ポンプは−40℃と+120℃との間の温度に晒され、閉じたモータロータキャビティ内の空気圧は広い範囲で変化し得る。モータロータキャビティ内の液体は氷結し、それ故、モータロータ本体を破壊する。好ましくは、モータロータキャビティは固形のキャビティ充填材、例えば、好適なプラスチックの一体品で満たされる。固形のキャビティ充填材は、モータロータキャビティの容積の大部分を満たし、モータロータキャビティの全容積でなければ、モータロータキャビティの関連した機械的ストレスが回避される。モータロータキャビティをプラスチックからなる固形のキャビティ充填材で満たすことは、送り出す液体を充填するのに比べ、ポンプの総重量を減少させる。好ましくは、固形のキャビティ充填材は強磁性材料でもないし、磁性材料でもない。
【0010】
代替的には、カバーディスクには開口が備えられ、これにより、モータロータキャビティと外部との間での圧力の平衡が保証される。
【0011】
好適な実施形態によれば、カバーディスクはカバー本体の一部である。また、カバー本体は円筒状の支持スリーブを含み、該支持スリーブは静的なロータ軸によって回転可能に支持されている。円筒状の支持スリーブ及び静的なロータ軸は摩擦軸受を形成し、該摩擦軸受は送り出す液体で潤滑される。カバー本体は2つの別個の機能、即ち、軸受機能と閉鎖機能を兼備する。
【0012】
好ましくは、支持スリーブ及びカバーディスクを形成するカバー本体はシート金属からなる単一部品である。これは、効率的且つコスト的に有効な支持スリーブ及びカバーディスクの製造や取り付けを可能にし、比較的軽量な構造をもたらす。
【0013】
他の好適な実施形態によれば、ポンプホイールはモータロータ及びカバー本体と一緒に取り付けられる別個の部品である。好ましくは、ポンプホイールの材料はモータロータや、カバーディスク、即ち、カバー本体の材料とは異なる。この構成はポンプホイールに好適な材料、例えば好適なプラスチック材料の使用を可能にする。モータロータ、カバー本体及びポンプホイールのそれぞれが個々に選択され且つ好適な材料からなっているので、これら各部品の材料特性を機械的な品質、コスト及び重量に関して、最適化可能となる。
【0014】
代替的には、ポンプホイール及びモータロータのモータロータ本体は単一の一体部品として提供され、好ましくは、プラスチックからなる。この場合、ポンプホイールは、開放インペラとして構成されているのが好ましく、この開放インペラでは、軸線方向の液体入口の開口を形成し且つ該開口を囲むカバーディスクを備えていない。
【0015】
好ましくは、ポンプホイールは、一般的に自動車のクーラントポンプとして使用されるように、軸線方向の液体入口及び径方向の液体出口を備えたインペラである。
【0016】
本発明に係る自動車用電動液体ポンプの実施形態は添付の図面を参照して説明され、ここで図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ウエットのモータロータを備えた自動車用電動液体ポンプの縦断面図である。
【
図2】ポンプホイール及びモータロータを含むロータ全体の拡大縦断面図である。
【
図3】ポンプホイール、モータロータ及びカバー本体を含むロータの分解縦断面図である。
【
図4】モータロータの第2実施形態を示す図であり、ここでのモータロータはその両方の長手方向端にて支持スリーブにより直接に支持されたモータロータ本体を備えている。
【
図5】モータロータの第3実施形態を示す図であり、ここでのモータロータはモータロータ本体及びポンプホイールを備え、これらモータロータ本体及びポンプホイールは単一の一体部品として提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、自動車用電動液体ポンプ10の縦断面を示し、該液体ポンプ10は本実施形態の場合、クーラントポンプとして備えられ、陸上車両の内燃機関に液状のクーラントを送り込む。また、液体ポンプ10は潤滑剤ポンプ、特にオイルポンプとしても備えられ、比較的低圧で且つ比較的大量のオイルを送り込む。例えば、この場合、液体ポンプは、オイルパンから高い位置の潤滑剤リザーバに潤滑剤を送り込むポンプとして備えられる。電動液体ポンプ10は電子整流型(EC)モータ16を備え、該モータ16は組立ロータ20を直接的に駆動する。組立ロータ20はモータロータ40及びポンプホイール30を備え、該ポンプホイール30は、軸線方向の液体入口及び径方向の液体出口を有したインペラである。
図1〜
図4に示された第1及び第2実施形態のポンプホイール30,30'にはカバー34が備えられ、該カバー34は液体入口の開口35を形成する。
【0019】
ECモータ16はキャンドモータであって、円筒状の分離缶12を備え、該分離缶12は径方向内側の濡状態のモータロータ40から径方向外側のドライのモータステータコイル18を分離する。ポンプハウジング11は、軸線方向の静的な支持軸22を保持且つ支持し、該支持軸22は回転する組立ロータ20を支持する。
【0020】
図2及び
図3から明らかなように、組立ロータ20は3つの分割部品、即ち、プラスチック製のポンプホイール30、モータロータ40及びカバー本体50からなり、該カバー本体50は単一のシート金属体から製作されている。モータロータ40は深鍋形状のモータロータ本体41を備え、該モータロータ本体41は円筒状のロータ本体部42を含み、該ロータ本体部42はモータロータ40の電磁要素である。モータロータ本体41の全体は強磁性材料からなり、該強磁性材料は永久的に磁化される。円筒状のロータ本体部42はリング状のモータロータキャビティ44を囲繞し、該モータロータキャビティ44はカバー本体50によって閉じられ且つ覆われている。
【0021】
カバー本体50はリング状のカバーディスク56を備え、該カバーディスク56は組立ロータ20や円筒状の支持スリーブ54の長手方向の回転軸線14に対し、その横断面内に位置付けられている。支持スリーブ54の内面58及び支持軸22の外面23は一緒に、軸線方向に比較的長い範囲に亘ってウエットの摩擦軸受を形成する。
【0022】
代替的に、カバー本体50及び/又はモータロータ本体41の両者はプラスチックからなることができ、この場合、モータロータ本体41は埋設された永久磁石の粒子を備え、これら本体50,41は射出成形によって製作可能である。
【0023】
モータロータ本体41及びカバー本体50は一緒にリング状のモータロータキャビティ44を閉じ、このモータロータキャビティ44は好適なプラスチック材料の固形キャビティ充填材45で満たされている。代替的には、空気又は送り出す液体でモータロータキャビティ44を満たすことも可能である。
【0024】
組立ロータ20の組立について、
図3を参照して説明する。
【0025】
第1に、ポンプホイール30の組付け円筒部31をモータロータ40の円筒状の支持部43に軸線方向に突き刺して一緒にすることで、インペラポンプホイール30がモータロータ40に機械的に固定される。代替的又は付加的に、インペラポンプホイール30は、接着剤、熱成形、熱型成形、超音波又は振動溶接、レーザ溶接、熱かしめ又は熱圧着によってモータロータ40に固定可能である。モータロータ40にポンプホイール30を固定した後、リングとして形成された固形のキャビティ充填材45がキャビティ44内に挿入される。この後、カバー本体50の円筒状の支持スリーブ54がポンプホイール30の組付け円筒部31内に挿入され、カバーディスク56が円筒状のロータ本体部42に当接される。最後に、モータロータ本体41及びカバー本体50はまた、上述の方法の1つにより互いに液密に固定される。
【0026】
図4は第2実施形態のロータ20'を示す。
図1〜
図3の第1実施形態のロータ20と対比して、
図4の組立ロータ20'はロータ本体41'を備え、該ロータ本体41'は支持部分60を含み、該支持部分60は支持スリーブ54に直接的に支持されている。それ故、インペラポンプホイール30'は組付け円筒部を備えていない。
【0027】
第3実施形態のロータ20"はポンプホイール30"及びモータロータ本体41"を備え、これらは一体の単一部品であり、好ましくはプラスチックからなっている。ポンプホイール30"はカバーリングを備えていないので、射出成形による一体部品としての成形が可能となる。