特許第6193409号(P6193409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193409
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】アプリケータ
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   A61M37/00 500
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-559947(P2015-559947)
(86)(22)【出願日】2015年1月27日
(86)【国際出願番号】JP2015052176
(87)【国際公開番号】WO2015115420
(87)【国際公開日】20150806
【審査請求日】2016年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-14021(P2014-14021)
(32)【優先日】2014年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144440
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 一之
(72)【発明者】
【氏名】不動寺 龍介
(72)【発明者】
【氏名】小倉 誠
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−511318(JP,A)
【文献】 特表2012−518171(JP,A)
【文献】 特表2004−501726(JP,A)
【文献】 特開2012−024240(JP,A)
【文献】 特開2013−215621(JP,A)
【文献】 特表2007−532245(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0085571(KR,A)
【文献】 特表2005−537057(JP,A)
【文献】 米国特許第5618295(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜したマイクロニードルを支持する支持面と、
前記マイクロニードルが皮膚に刺さる前後に亘って、前記支持面の周方向に沿ってかつ該マイクロニードルの先端の方向に前記支持面を回転させ、かつ移動範囲が制限された回転機構と
を備えるアプリケータ。
【請求項2】
前記支持面が、回転しながら前記皮膚に向かって下がる、
請求項1に記載のアプリケータ。
【請求項3】
前記支持面の外周を囲む外枠を更に備え、
前記回転機構が、前記外枠と前記支持面の外周部とをつなぐ複数の接続部であり、
各接続部が山折れ部および谷折れ部を有する、
請求項2に記載のアプリケータ。
【請求項4】
前記支持面の外周を囲む外枠を更に備え、
前記回転機構が、前記支持面の周縁部に設けられた複数の爪と、前記外枠の内側に形成された、斜めに延びる複数の溝とを備え、
前記複数の爪のそれぞれが、対応する前記溝に嵌まり、該溝に沿って移動可能である、
請求項2に記載のアプリケータ。
【請求項5】
前記支持面が、前記皮膚に向かって下がることなく回転する、
請求項1に記載のアプリケータ。
【請求項6】
前記回転機構が、前記支持面の上に設けられたつまみである、
請求項5に記載のアプリケータ。
【請求項7】
傾斜面を有する爪が前記支持面の上方に設けられ、
前記回転機構が、前記支持面と直交する方向に沿って前記爪を押すスイッチである、
請求項5に記載のアプリケータ。
【請求項8】
前記支持面の周縁部に、該支持面の中心に向かって窄むテーパ状の溝が形成され、
前記回転機構が、前記支持面の中心に向かって移動して前記溝の壁面を押すスイッチである、
請求項5に記載のアプリケータ。
【請求項9】
前記支持面の上方に突起が設けられ、
前記回転機構が、前記支持面の中心に向かって移動して前記突起を該支持面の周方向に向けて押すスイッチである、
請求項5に記載のアプリケータ。
【請求項10】
前記支持面が、前記皮膚に向かって下がった後に回転する、
請求項1に記載のアプリケータ。
【請求項11】
前記支持面の外周を囲む外枠を更に備え、
前記回転機構が、前記支持面の周縁部に設けられた複数の爪と、前記外枠の内側に形成された、略L字状の複数の溝とを備え、
前記複数の爪のそれぞれが、対応する前記溝に嵌まり、該溝に沿って移動可能である、
請求項10に記載のアプリケータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、活性成分の投与を補助するために用いるアプリケータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、皮膚を介して活性成分を投与するマイクロニードル、及びそのマイクロニードルを備える装置が知られている。例えば下記特許文献1には、薄いシートの表面に一連の突起を打ち抜くことによって生成された微小侵入体を備える装置が記載されている。下記特許文献2には、複数の微小突起を備えたシート部材を有する装置が記載されている。
【0003】
皮膚を伸ばした上でマイクロニードルをその皮膚に穿刺する技術も知られている。例えば下記特許文献3には、皮膚に位置決めした装置を下向きに押圧して、伸張装置が皮膚穿通部材の目標域の皮膚を伸張させることで、皮膚の均等な穿通が可能になる旨が記載されている。下記特許文献4には、二つの内部拡張部を離すようにこれらの拡張部を動かすことで、皮膚を伸ばした上で微小突起を皮膚に刺すことと、その後更にそれらの拡張部を動かすことでその微小突起が皮膚を切ることとが記載されている。下記特許文献5には、伸張可能な錐体を皮膚に向けて押すことで皮膚を伸ばした上で、その錐体内に配されているマイクロニードルを皮膚に穿刺する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−510982号公報
【特許文献2】特表2001−525231号公報
【特許文献3】特表2003−534881号公報
【特許文献4】米国特許第7087035号明細書
【特許文献5】米国特許第6743211号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
皮膚を変形させた上で穿刺を行う際にマイクロニードルに伝わる力が使用者の力加減に左右されてしまうと、穿刺の程度が使用者毎に変わってしまい、その結果、穿刺の再現性が低下してしまう可能性がある。そこで、誰が使用してもマイクロニードルの穿刺の程度を一定のレベルに保つこと、すなわち穿刺の再現性を高めることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るアプリケータは、傾斜したマイクロニードルを支持する支持面と、マイクロニードルが皮膚に刺さる前後に亘って該マイクロニードルの先端の方向に支持面を回転させ、かつ移動範囲が制限された回転機構とを備える。
【0007】
このような側面においては、支持面が回転することで、傾斜したマイクロニードルが皮膚を一定の範囲だけ変形させた上でその皮膚に刺さる。その支持面を回転させる回転機構は移動範囲が制限されるので、誰がアプリケータを操作しても支持面の回転の範囲を同じにすることができる。したがって、誰が使用してもマイクロニードルの穿刺の程度を一定のレベルに保つことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によれば、誰が使用してもマイクロニードルの穿刺の程度を一定のレベルに保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】各実施形態に係るアプリケータと共に用いるマイクロニードル・デバイスの斜視図である。
図2】第1実施形態に係るアプリケータの斜視図である。
図3】第1実施形態に係るアプリケータの平面図、側面図、および底面図である。
図4図2のIV−IV線断面図である。
図5図2に示すアプリケータの作動の様子を示す斜視図である。
図6】第2実施形態に係るアプリケータの斜視図である。
図7】第3実施形態に係るアプリケータの斜視図である。
図8】第4実施形態に係るアプリケータの斜視図である。
図9】第5実施形態に係るアプリケータの斜視図である。
図10】第6実施形態に係るアプリケータの斜視図である。
図11】第6実施形態の変形例に係るアプリケータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
アプリケータは、生体内に任意の活性成分(例えば薬剤)を投与するためのマイクロニードル・デバイスを皮膚に適用する際に用いる補助器具である。以下にアプリケータのいくつかの態様を示すが、下記の説明では、どのアプリケータも、図1に示すマイクロニードル・デバイス1と共に用いることを前提とする。
【0012】
マイクロニードル・デバイス1は、皮膚を穿刺することで活性成分を経皮投与するための器具である。このマイクロニードル・デバイス1は、シート20を打ち抜いて多数のマイクロニードル11を形作り、そのマイクロニードル11をシート面から斜め方向に立ち上げることで出来上がる。
【0013】
シート20の形状(すなわち、マイクロニードル・デバイス1の全体的な形状)は限定されず、円、楕円、矩形、五角形、六角形、星形、または他の任意の多角形でもよいし、これら以外の形状でもよい。図1に示すシート20は円形である。
【0014】
図1に示すように、すべてのマイクロニードル11はシート20の一方の面の側に立ち上げられ、本明細書ではその面を主面20aとして示す。各マイクロニードル11と主面20aとの成す角度(すなわち、傾斜角度)は、鋭角であれば何度でもよい。その角度を鋭角に設定することで、各マイクロニードル11は、主面20aに対して傾斜した状態になる。主面20aはマイクロニードル・デバイス1の使用時に皮膚と向かい合う面である。シート20の裏面(図示せず)は主面20aの裏側であって、マイクロニードル・デバイス1の使用時にアプリケータの一部が触れる面である。
【0015】
本明細書では、形成された複数のマイクロニードル11からなる集合をマイクロニードル・アレイ10として示す。マイクロニードル・アレイ10は、それぞれがシート20の径方向に沿って延びる複数の列12の集合であるともいえる。各列12は複数のマイクロニードル11から成る。当然ながら、マイクロニードル・アレイ10はマイクロニードル・デバイス1の一部である。
【0016】
シート20及びマイクロニードル11の材質は限定されない。例えば、ステンレス鋼、ポリエチレンテレフタラート(PET)、他の金属、他の樹脂、生分解性素材、セラミック、または生体吸収性素材のいずれかによりシート20及びマイクロニードル11を作製してもよい。あるいは、これらの材質を組み合わせてシート20およびマイクロニードル11を作製してもよい。
【0017】
マイクロニードル・アレイ10はエッチングにより形成することができる。シートが金属であれば、薬液でそのシートを打ち抜くことで多数のマイクロニードル11を形成し、そのマイクロニードルを斜め方向に起こすことでマイクロニードル・アレイ10を形成することができる。シートが非金属であれば、レーザーでそのシートを打ち抜くことで多数のマイクロニードル11を形成し、金属シートの場合と同様にそのマイクロニードル11を起こせばよい。これらのようにエッチングを用いる場合には、各マイクロニードル11の周囲に空隙が生ずる。もちろん、エッチング以外の任意の手法によりマイクロニードル・アレイ10を形成してもよい。
【0018】
シート20の寸法は限定されず、使用目的や使用部位などに応じて任意に設定してよい。例えば、シート20の径の下限は活性成分の投与量を考慮して定められ、径の上限は生体の大きさを考慮して定められる。例えば、径の下限は0.1cmでも1cmでもよく、径の上限は60cm、50cm、30cm、または20cmでもよい。本実施形態ではシート20を打ち抜くことでマイクロニードル11を形成するので、シート20の厚さはマイクロニードル11の穿刺性能を考慮して定められる。例えば、厚みの下限は5μmでも20μmでもよく、厚みの上限は1000μmでも300μmでもよい。
【0019】
マイクロニードル11に関するパラメータも限定されない。例えば、マイクロニードル11の高さの下限は10μmでも100μmでもよく、その高さの上限は10000μmでも1000μmでもよい。上記の通り、本実施形態ではマイクロニードル11の厚さはシート20の厚さに依存する。マイクロニードル11の密度の下限は0.05本/cmでも1本/cmでもよく、その密度の上限は10000本/cmでも5000本/cmでもよい。密度の下限は、1mgの活性成分を投与し得る針の本数及び面積から換算した値であり、密度の上限は、針の形状を考慮した上での限界値である。
【0020】
マイクロニードル・アレイ10の全体を見ると、すべてのマイクロニードル11が向く方向は、時計回り又は反時計回りの方向に統一される。図1の例では、マイクロニードル・デバイス1を主面20a側から見ると、各マイクロニードル11は反時計回りの方向を向いている。マイクロニードル・デバイス1を裏面側から見れば、各マイクロニードル11は全体として時計回りの方向を向くことになる。
【0021】
次に、そのマイクロニードル・デバイス1の使用を補助するためのアプリケータについていくつかの実施形態を示す。
【0022】
(第1実施形態)
図2〜5を参照して、第1実施形態に係るアプリケータ30について説明する。図2はアプリケータ30の斜視図である。図3はアプリケータ30の平面図、側面図、および底面図である。アプリケータ30の正面、背面、および両側面からの外観は同じである。したがって、図3に示す側面図は、正面図でもあり、背面図でもあり、右側面図でもあり、左側面図でもある。図4図2のIV−IV線断面図である。図5はアプリケータの作動の様子を示す斜視図である。なお、図2,5では、後述する接続部33の断面がわかるようにアプリケータ30を示している。
【0023】
アプリケータ30はマイクロニードル・デバイス1を支持する支持板31と、その支持板31の外周を囲む外枠32と、その支持板31および外枠32をつなぐ複数の接続部33とを備える。アプリケータ30の全体的な形状、およびアプリケータ30の少なくとも一部の構成要素の形状は、マイクロニードル・デバイス1の形状に合わせて決めてもよい。例えば、アプリケータ30の全体的な形状は円、楕円、矩形、五角形、六角形、星形、または他の任意の多角形でもよいし、これら以外の形状でもよい。本実施形態では、アプリケータ30は全体として円形または円盤状を呈する。
【0024】
アプリケータ30の材質は限定されない。例えば、ABS樹脂やポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール(POM)などの合成又は天然の樹脂素材を用いてアプリケータ30を作製してもよい。あるいは、シリコン、二酸化ケイ素、セラミック、金属(ステンレス、チタン、ニッケル、モリブデン、クロム、コバルト等)を用いてアプリケータ30を作製してもよい。
【0025】
支持板31は、その裏面31aにマイクロニードル・デバイス1が位置する板材である。本実施形態では支持板31はマイクロニードル・デバイス1の形状に合わせて円形であるが、上述したように、支持板31の形状は限定されない。支持板31の裏面31aとは、アプリケータ30の使用時に、マイクロニードル・デバイス1の被適用者の皮膚と向かい合う面であり、図3における底面図において表されている面である。
【0026】
本実施形態では、支持板31の裏面31aの側をアプリケータ30の下側と定義し、その裏面31aとは反対側の面である支持板31の表面31bの側(図3の平面図を参照)をアプリケータ30の上側と定義する。
【0027】
外枠32は、支持板31の外周を囲む構成要素である。本実施形態では外枠32は支持板31の形状に合わせて輪形であるが、外枠32の形状はこれに限定されない。例えば、外枠32の形状は支持板31の輪郭に合わせて定められてもよい。あるいは、支持板31の輪郭とは無関係に定められてもよく、例えば、円形の支持板31に対して矩形の外枠32が採用されてもよい。
【0028】
接続部33は支持板31の外周部と外枠32の内周部とをつなぐ構成要素であり、回転機構としての役割を果たす。本明細書における「回転機構」とは、マイクロニードル11が皮膚に刺さる前後に亘って該マイクロニードル11の先端の方向に支持板31を回転させるための仕組みである。接続部33は支持板31の外周に沿って所定の間隔毎に設けられる。図2〜5の例ではアプリケータ30は5個の接続部33を備えるが、接続部33の個数はこれに限定されず、2以上の任意の数であってよい。
【0029】
個々の接続部33は、大よそ、支持板31の外周の接線方向に沿って延びるように設けられる。接続部33の一端は支持板31の外周部に接続し、接続部33の他端は外枠32の内周部に接続する。接続部33は山折れ部33aおよび谷折れ部33bを有する。支持板31が皮膚に接した後も接続部33を曲げることができるように、各接続部33における山折れ部33aと谷折れ部33bとの間の長さが設定される。外枠32に近い方の山折れ部33aは、接続部33の長手方向と略直交する方向(すなわち、接続部33の幅方向)に沿って接続部33の上面に切込みを入れることで形成される。一方、支持板31に近い方の谷折れ部33bは、接続部33の幅方向に沿って接続部33の下面に切込みを入れることで形成される。
【0030】
アプリケータ30の作動前においては、山折れ部33aおよび谷折れ部33bは折れておらず、したがって個々の接続部33は支持板31の面と並行するように延びる。アプリケータ30を作動させると、接続部33は図5に示す状態になる。すなわち、アプリケータ30の作動時には、山折れ部33aは折れ目が相対的にアプリケータ30の上側に向かうように折れ、谷折れ部33bは折れ目が相対的にアプリケータ30の下側に向かうように折れる。したがって、アプリケータ30の作動時にそのアプリケータ30を側方から見ると、山折れ部33aの部分においては接続部33があたかも山を形成するように折れ曲がり、谷折れ部33bの部分においては接続部33があたかも谷を形成するように折れ曲がったように見える。このように、作動前は直線状に延びていた接続部33は(図2参照)、作動後には段状を呈するように変形する(図5参照)。接続部33が段状を呈するとは、支持板31の外周に接続する接続部33の端部よりも、外枠32の内周部に接続する該接続部33の端部の方が高い位置または低い位置にある状態をいう。図5の例では、支持板31の外周に接続する端部よりも、外枠32の内周部に接続する端部の方が高い位置にある。
【0031】
次に、アプリケータ30およびマイクロニードル・デバイス1の使用方法を説明する。まず、ユーザはマイクロニードル・デバイス1の裏面を支持板31の裏面31aに貼る。この貼り付けのために、マイクロニードル・デバイス1の裏面および支持板31の裏面31aの少なくとも一方に粘着層が設けられてもよい。マイクロニードル・デバイス1が支持板31の裏面31aに貼られることで、傾斜したマイクロニードル11はその裏面31aにより支持される。したがって、その裏面31aはマイクロニードル11のための支持面として機能する。
【0032】
続いて、ユーザはアプリケータ30を活性成分の適用箇所に置く。なお、この際にアプリケータ30を適用箇所に固定するために、外枠32の下面に粘着層を設けてもよい。次に、ユーザは支持板31の表面31bを皮膚に向かって押す。すると、各接続部33の山折れ部33aおよび谷折れ部33bが折れ曲がり、支持板31(支持面)が時計回りおよび反時計回りのどちらか一方向に向かって回りながら皮膚に向かって下がる。マイクロニードル・デバイス1は支持板31に取り付けられているのでその操作によりマイクロニードル・デバイス1も回転しながら皮膚に向かって下がる。
【0033】
各接続部33における山折れ部33aと谷折れ部33bとの間の長さは、マイクロニードル11が皮膚に接触した後も支持板31が回転するように設定されている。このように設定された接続部33が図5に示すように段状に変形することで、支持板31に取り付けられているマイクロニードル・デバイス1も回転しながら皮膚に向かって下がり続ける。その結果、各マイクロニードル11は皮膚の表面に沿って回転移動しながら皮膚に刺さる。このとき、各マイクロニードル11は皮膚に当たってから皮膚に刺さるまでの間に皮膚を伸ばすかまたは縮める。したがって、各マイクロニードル11はそれ自体により皮膚を変形させながらその皮膚に刺さる。ユーザは穿刺後すぐにマイクロニードル・デバイス1を皮膚から抜くのではなく、その穿刺状態を維持したままマイクロニードル・デバイス1を手で、あるいはテープなどの補助具で所定時間押さえ続けてもよい。
【0034】
各接続部33の移動範囲(山折れ部33aおよび谷折れ部33bが折れ曲がる角度)は制限されるので、支持板31の回転角度も制限される。その回転角度は、接続部33の材質を考慮したり、山折れ部33aおよび谷折れ部33bにおける切り込みを調整したりするなどして、任意の値に設定してよい。
【0035】
支持板31を皮膚に向かう方向に厚くするか、あるいは支持板31とマイクロニードル・デバイス1との間にスペーサを挿入することで、穿刺の深さを制御できる。支持板31もしくはスペーサを厚くすることで、支持板31が回転し始めた直後から直ぐにマイクロニードル11を皮膚に接触させてそのマイクロニードル11を深く穿刺することができる。
【0036】
なお、活性成分の準備方法は限定されない。例えば、活性成分はマイクロニードル11に予め塗布されていてもよい。あるいは、ユーザはまず皮膚に活性成分を塗布し、その後に上記の方法でアプリケータ30を用いてマイクロニードル・デバイス1を皮膚に適用してもよい。あるいは、ユーザはまず上記の方法でアプリケータ30を用いてマイクロニードル・デバイス1を皮膚に適用し、その後にその適用箇所に活性成分を塗布してもよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によれば、支持面(支持板31の裏面31a)が回転することで、傾斜したマイクロニードル11が皮膚を一定の範囲だけ変形させた上でその皮膚に刺さる。その支持面を回転させる接続部33は移動範囲が制限されるので、誰がアプリケータ30を操作しても支持面の回転の範囲を同じにすることができる。したがって、誰が使用してもマイクロニードル11の穿刺の程度を一定のレベルに保つことができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、マイクロニードル・デバイス1を固定する支持板31の上部に何も設けられないので、アプリケータ30の高さを抑えることができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、ユーザは支持板31を押すだけで、各マイクロニードル11を回しながら皮膚に刺すことができる。すなわち、アプリケータ30の使用方法は非常に簡単である。
【0040】
(第2実施形態)
図6を参照して、第2実施形態に係るアプリケータ30Aについて説明する。図6はアプリケータ30Aの斜視図である。なお、図6では、後述する接続部34の断面がわかるようにアプリケータ30Aを示している。
【0041】
アプリケータ30Aは第1実施形態におけるアプリケータ30の変形例であり、支持板31、外枠32、および接続部34を備える。すなわち、アプリケータ30Aとアプリケータ30との相違点は接続部の構造である。アプリケータ30の全体的な形状、支持板31の形状、および外枠32の形状が限定されない点は第1実施形態と同様である。以下では接続部34について詳しく説明し、第1実施形態と同じ支持板31および外枠32については説明を省略する。
【0042】
接続部34は支持板31の外周部と外枠32の内周部とをつなぐ構成要素であり、回転機構としての役割を果たす。接続部34は支持板31の外周に沿って所定の間隔毎に設けられる。図6の例ではアプリケータ30は6個の接続部34を備えるが、接続部34の個数はこれに限定されず、2以上の任意の数であってよい。
【0043】
個々の接続部34は、大よそ、支持板31の外周の接線方向に沿って延びるように設けられる。接続部34の一端は支持板31の外周部に接続し、接続部34の他端は外枠32の内周部に接続する。接続部34は山折れ部34aおよび谷折れ部34bを有する。支持板31が皮膚に接した後も接続部34を曲げることができるように、アプリケータ30Aの高さ方向における支持板31の位置が予め調整される。
【0044】
図6に示すように、アプリケータ30Aの作動前においては、山折れ部34aは折れ目が相対的にアプリケータ30の上側に向かうように折れ、谷折れ部34bは折れ目が相対的にアプリケータ30の下側に向かうように折れている。したがって、アプリケータ30Aの作動前にそのアプリケータ30Aを側方から見ると、山折れ部34aの部分においては接続部34があたかも山を形成するように折れ曲がり、谷折れ部34bの部分においては接続部34があたかも谷を形成するように折れ曲がったように見える。アプリケータ30Aを作動させると、山折れ部34aおよび谷折れ部34bでの屈曲角度が共に小さくなっていき、最終的には個々の接続部34が、支持板31の主面と略並行するように延びた状態になる。このように、作動前は段状を呈していた接続部34は、作動後には直線状に延びるように変形する。
【0045】
ユーザは第1実施形態におけるアプリケータ30の場合と同様にアプリケータ30Aを使うことでマイクロニードル11を皮膚に刺すことができる。本実施形態が第1実施形態と異なるのは、ユーザが支持板31の表面を皮膚に向かって押したときの接続部の変形の態様のみである。第1実施形態では、一直線状に延びていた接続部33が段状に変形することで、支持板31(支持面)が回転しながら皮膚に向かって下がり、各マイクロニードル11が皮膚の表面に沿って回転移動しながら皮膚に刺さる。これに対して本実施形態では、段状を呈していた接続部33が一直線状に延びるように変形することで、支持板31が回転しながら皮膚に向かって下がり、各マイクロニードル11が皮膚の表面に沿って回転移動しながら皮膚に刺さる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、支持面(支持板31の裏面31a)を回転させる接続部34は移動範囲が制限されるので、誰がアプリケータ30Aを操作しても支持面の回転の範囲を同じにすることができる。したがって、誰が使用してもマイクロニードル11の穿刺の程度を一定のレベルに保つことができる。また、マイクロニードル・デバイス1を固定する支持板31の上部に何も設けられないので、アプリケータ30の高さを抑えることができる。また、ユーザは支持板31を押すだけという簡単な操作で各マイクロニードル11を回すことができる。
【0047】
(第3実施形態)
図7を参照して、第3実施形態に係るアプリケータ40について説明する。図7はアプリケータ40の斜視図である。
【0048】
アプリケータ40はマイクロニードル・デバイス1を支持する支持板41と、支持板41に取り付けられた二つのつまみ42と、支持板41を収容する筐体43とを備える。アプリケータ40の全体的な形状、およびアプリケータ40の少なくとも一部の構成要素の形状は、マイクロニードル・デバイス1の形状に合わせて決めてもよい。例えば、アプリケータ40の全体的な形状は円、楕円、矩形、五角形、六角形、星形、または他の任意の多角形でもよいし、これら以外の形状でもよい。本実施形態では、アプリケータ40は全体として円盤状を呈する。
【0049】
アプリケータ40の材質は限定されない。例えば、ABS樹脂やポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール(POM)などの合成又は天然の樹脂素材を用いてアプリケータ40を作製してもよい。あるいは、シリコン、二酸化ケイ素、セラミック、金属(ステンレス、チタン、ニッケル、モリブデン、クロム、コバルト等)を用いてアプリケータ40を作製してもよい。
【0050】
支持板41は、その裏面にマイクロニードル・デバイス1が位置する板材である。本実施形態では支持板41はマイクロニードル・デバイス1の形状に合わせて円形であるが、上述したように、支持板41の形状は限定されない。支持板41の裏面とは、アプリケータ40の使用時に、マイクロニードル・デバイス1の被適用者の皮膚と向かい合う面である。支持板41の裏面は筐体43で覆われずに露出する。なお、図7では、支持板41についてはその外縁のみを簡略化して示している。
【0051】
本実施形態では、支持板41の裏面の側をアプリケータ40の下側と定義し、その裏面とは反対側の面である支持板41の面の側をアプリケータ40の上側と定義する。
【0052】
支持板41の上面(裏面と反対側の面)には二つのつまみ42が設けられる。二つのつまみ42は支持板41の外周に沿って180度の間隔をおいて支持板41に設けられる。本実施形態ではこのつまみ42が回転機構としての役割を果たす。つまみ42の数は限定されず、ユーザが手で簡単に回せることができるのであれば、任意の数のつまみ42を設けてもよい。本実施形態では、支持板41に平行なつまみ42の断面形状は、支持板41の回転方向を示すために矢印のような形状であるが、その断面形状は限定されるものではない。
【0053】
筐体43の上面には、二つのつまみ42に対応する2箇所の孔43aが形成される。それぞれのつまみ42は対応する孔43aから上方に突き出る。それぞれの孔43aは、マイクロニードル11を皮膚に刺すために必要な支持板41の回転角度を考慮して形成される。
【0054】
次に、アプリケータ40およびマイクロニードル・デバイス1の使用方法を説明する。まず、ユーザはマイクロニードル・デバイス1の裏面を支持板41の裏面に貼る。この貼り付けのために、マイクロニードル・デバイス1の裏面および支持板41の裏面の少なくとも一方に粘着層が設けられてもよい。マイクロニードル・デバイス1が支持板41の裏面に貼られることで、傾斜したマイクロニードル11はその裏面により支持される。したがって、支持板41の裏面はマイクロニードル11のための支持面として機能する。
【0055】
続いて、ユーザはアプリケータ40を活性成分の適用箇所に置く。なお、この際にアプリケータ40を適用箇所に固定するために、筐体43の下面に粘着層を設けてもよい。次に、ユーザは筐体43を押さえながら二つのつまみ42を筐体43の周方向(図7の例では、アプリケータ40の上方から見て反時計回りの方向)に沿って回す。なお、ユーザは、手ではなく、ばねやモータなどの動力を用いてつまみ42を回してもよい。つまみ42が回ると、支持板41に取り付けられているマイクロニードル・デバイス1も回転し、各マイクロニードル11が皮膚の表面に沿って回転移動しながら皮膚に刺さる。本実施形態では、支持板41はアプリケータ40の上下方向(すなわち鉛直方向)に沿っては動かないので、支持板41(支持面)は皮膚に向かって下がることなく回転する。このとき、各マイクロニードル11は皮膚に当たってから皮膚に刺さるまでの間に皮膚を伸ばすかまたは縮める。したがって、各マイクロニードル11はそれ自体により皮膚を変形させながらその皮膚に刺さる。二つのつまみ42の移動範囲は孔43aにより制限されるので(言い換えると、移動するつまみ42は孔43aの縁で止まるので)、支持板41の回転角度も制限される。
【0056】
ユーザは穿刺後すぐにマイクロニードル・デバイス1を皮膚から抜くのではなく、その穿刺状態を維持したままマイクロニードル・デバイス1を手で、あるいはテープなどの補助具で所定時間押さえ続けてもよい。なお、第1及び第2実施形態と同様に、活性成分の準備方法は限定されない。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、支持面(支持板41の裏面)が回転することで、傾斜したマイクロニードル11が皮膚を一定の範囲だけ変形させた上でその皮膚に刺さる。その支持面を回転させるつまみ42は移動範囲が制限されるので、誰がアプリケータ40を操作しても支持面の回転の範囲を同じにすることができる。したがって、誰が使用してもマイクロニードル11の穿刺の程度を一定のレベルに保つことができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、支持板41に取り付けられたつまみ42を回すという簡単な仕組みでマイクロニードル11を皮膚に刺すことができる。
【0059】
本実施形態ではつまみ42が支持板41の上面に設けられるが、支持板を回転させることができるのであれば、つまみの位置は限定されない。例えば、つまみは支持板の側面に設けられてもよい。この変形例では、つまみに対応する孔は筐体の側面に形成される。
【0060】
(第4実施形態)
図8を参照して、第4実施形態に係るアプリケータ50について説明する。図8はアプリケータ50の斜視図である。
【0061】
アプリケータ50はマイクロニードル・デバイス1を支持する支持板51と、その支持板51上に設けられた複数の小さな爪52および二つの突出部53と、支持板51および爪52を収容する筐体54と、支持板51の中央部分を覆うスイッチ55とを備える。アプリケータ50の全体的な形状、およびアプリケータ50の少なくとも一部の構成要素の形状は、マイクロニードル・デバイス1の形状に合わせて決めてもよい。例えば、アプリケータ50の全体的な形状は円、楕円、矩形、五角形、六角形、星形、または他の任意の多角形でもよいし、これら以外の形状でもよい。本実施形態では、アプリケータ50は全体として円盤状を呈する。
【0062】
アプリケータ50の材質は限定されない。例えば、ABS樹脂やポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール(POM)などの合成又は天然の樹脂素材を用いてアプリケータ50を作製してもよい。あるいは、シリコン、二酸化ケイ素、セラミック、金属(ステンレス、チタン、ニッケル、モリブデン、クロム、コバルト等)を用いてアプリケータ50を作製してもよい。
【0063】
支持板51は、その裏面にマイクロニードル・デバイス1が位置する板材である。本実施形態では支持板51はマイクロニードル・デバイス1の形状に合わせて円形であるが、上述したように、支持板51の形状は限定されない。支持板51の裏面とは、アプリケータ50の使用時に、マイクロニードル・デバイス1の被適用者の皮膚と向かい合う面である。支持板51の裏面は筐体54で覆われずに露出する。なお、図8では、支持板51についてはその外縁のみを簡略化して示している。
【0064】
本実施形態では、支持板51の裏面の側をアプリケータ50の下側と定義し、その裏面とは反対側の面である支持板51の面の側をアプリケータ50の上側と定義する。
【0065】
支持板51の上面(裏面と反対側の面)の中心付近には複数の爪52が設けられる。なお、爪52の個数は限定されない。それぞれの爪52は略三角形である。アプリケータ50を上方から見た場合に時計回りまたは反時計回りの方向を向く爪52の面52aは、支持板51の上面に対して傾斜している。すなわち、各爪52は傾斜面52aを有する。図8の例では、傾斜面52aは、アプリケータ50を上方から見た場合に時計回りの方向を向いている。爪の形状は三角形に限定されず、上記の傾斜面が形成されるのであれば任意の形の爪を採用してよい。
【0066】
二つの突出部53は支持板51の外周に沿って180度の間隔をおいて支持板51に設けられる。
【0067】
筐体54の上面の中央部には、後述するスイッチ55を設けるための中央孔と、二つの突出部53に対応する2箇所の孔54aとが形成される。それぞれの突出部53は対応する孔54aから上方に突き出る。
【0068】
スイッチ55は略円筒状を呈する。スイッチ55の外壁には複数の外側リブ(outer rib)55aが形成され、スイッチ55の内壁には複数の爪52に対応する複数の内側リブ(inner rib)55bが形成される。外側リブ55aおよび内側リブ55bの個数は限定されないが、内側リブ55bの個数は爪52の個数と同じである。外側リブ55aはスイッチ55の高さ方向に沿って延びるレール状の突起である。外側リブ55aが筐体54の中央孔に形成された溝に嵌まることで、スイッチ55はアプリケータ50の周方向に沿って回転せず、アプリケータ50の高さ方向に沿ってのみ移動する。内側リブ55bも、スイッチ55の高さ方向に沿って延びるレール状の突起である。スイッチ55はこの内側リブ55bを備えることで回転機構として機能する。スイッチ55の移動は、爪52の高さ方向に沿った範囲に制限される。
【0069】
次に、アプリケータ50およびマイクロニードル・デバイス1の使用方法を説明する。まず、ユーザはマイクロニードル・デバイス1の裏面を支持板51の裏面に貼る。この貼り付けのために、マイクロニードル・デバイス1の裏面および支持板51の裏面の少なくとも一方に粘着層が設けられてもよい。マイクロニードル・デバイス1が支持板51の裏面に貼られることで、傾斜したマイクロニードル11はその裏面により支持される。したがって、支持板51の裏面はマイクロニードル11のための支持面として機能する。
【0070】
続いて、ユーザは突出部53を周方向に動かすことでスイッチ55を引き上げ、図8に示すように爪52の上に内側リブ55bを位置させる。続いて、ユーザはアプリケータ50を活性成分の適用箇所に置く。なお、この際にアプリケータ50を適用箇所に固定するために、筐体54の下面に粘着層を設けてもよい。次に、ユーザはスイッチ55を皮膚に向かって押す。すると、そのスイッチ55(より具体的には、各内側リブ55b)がアプリケータ50の高さ方向に沿って各爪52の傾斜面52aを上から押すので、支持板51が周方向(図8の例では、アプリケータ50の上方から見て反時計回りの方向)に回転する。この結果、支持板51に取り付けられているマイクロニードル・デバイス1が回転し、各マイクロニードル11が皮膚の表面に沿って回転移動しながら皮膚に刺さる。本実施形態では、支持板51はアプリケータ50の上下方向(すなわち鉛直方向)に沿っては動かないので、支持板51(支持面)は皮膚に向かって下がることなく回転する。このとき、各マイクロニードル11は皮膚に当たってから皮膚に刺さるまでの間に皮膚を伸ばすかまたは縮める。したがって、各マイクロニードル11はそれ自体により皮膚を変形させながらその皮膚に刺さる。スイッチ55の移動範囲は爪52の高さに制限されるので、支持板51の回転角度も制限される。
【0071】
ユーザは穿刺後すぐにマイクロニードル・デバイス1を皮膚から抜くのではなく、その穿刺状態を維持したままマイクロニードル・デバイス1を手で、あるいはテープなどの補助具で所定時間押さえ続けてもよい。なお、第1〜第3実施形態と同様に、活性成分の準備方法は限定されない。
【0072】
以上説明したように、本実施形態によれば、支持面(支持板51の裏面)が回転することで、傾斜したマイクロニードル11が皮膚を一定の範囲だけ変形させた上でその皮膚に刺さる。その支持面を回転させるスイッチ55は移動範囲が制限されるので、誰がアプリケータ50を操作しても支持面の回転の範囲を同じにすることができる。したがって、誰が使用してもマイクロニードル11の穿刺の程度を一定のレベルに保つことができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、ユーザはスイッチ55を押すだけで、各マイクロニードル11を回しながら皮膚に刺すことができる。すなわち、アプリケータ50の使用方法は非常に簡単である。
【0074】
(第5実施形態)
図9を参照して、第5実施形態に係るアプリケータ60について説明する。図9はアプリケータ60の斜視図である。
【0075】
アプリケータ60はマイクロニードル・デバイス1を支持する支持板61と、その支持板61の外周を囲む外枠62とを備える。支持板61の側面には複数の爪63が設けられる。一方、外枠62の内側には、複数の爪63に対応する複数の溝62aが形成される。図9は、爪63および溝62aを三つずつ備えるアプリケータ60を示すが、爪および溝の個数は2以上であれば何個でもよく、例えばその数は2、4、または6でもよい。上記の実施形態と同様に、アプリケータ60の全体的な形状、およびアプリケータ60の少なくとも一部の構成要素の形状は限定されない。また、アプリケータ60の材質が限定されない点も上記の実施形態と同様である。
【0076】
支持板61は、その裏面にマイクロニードル・デバイス1が位置する板材である。支持板61の裏面とは、アプリケータ60の使用時に、マイクロニードル・デバイス1の被適用者の皮膚と向かい合う面である。
【0077】
本実施形態では、支持板61の裏面の側をアプリケータ60の下側と定義し、その裏面とは反対側の面である支持板61の面の側をアプリケータ60の上側と定義する。
【0078】
それぞれの爪63を、対応する溝62aに嵌めることで、支持板61が外枠62に取り付けられる。それぞれの爪63は溝62aに沿って移動可能である。それぞれの溝62aは、外枠62の鉛直方向に沿って延びるのではなく、外枠62の上から下にかけて斜めに延びる。溝62aは直線状に延びてもよいし、外枠62の下方(皮膚に向かう方向)に向かって凸である弧状を呈してもよい。したがって、支持板61は下がりながら(または上がりながら)所定の角度の範囲でのみ回転する。すなわち、爪63および溝62aは回転機構としての役割を果たす。
【0079】
次に、アプリケータ60およびマイクロニードル・デバイス1の使用方法を説明する。まず、ユーザはマイクロニードル・デバイス1の裏面を支持板61の裏面に貼る。この貼り付けのために、マイクロニードル・デバイス1の裏面および支持板61の裏面の少なくとも一方に粘着層が設けられてもよい。マイクロニードル・デバイス1が支持板61の裏面に貼られることで、傾斜したマイクロニードル11はその裏面により支持される。したがって、支持板61の裏面はマイクロニードル11のための支持面として機能する。
【0080】
続いて、ユーザは、支持板61が上がった状態(図9に示す状態)のアプリケータ60を活性成分の適用箇所に置く。なお、この際にアプリケータ60を適用箇所に固定するために、外枠62の下面に粘着層を設けてもよい。また、支持板61が上がった状態をより確実に維持するための仕組みを爪63または溝62aに設けてもよい。次に、ユーザは外枠62を押さえながら支持板61の上面を皮膚に向かって押す。すると、それぞれの爪63が溝62aに沿って下がり、支持板61(支持面)が周方向(図9の例では、アプリケータ60の上方から見て反時計回りの方向)に回転しながら皮膚に向かって下がる。この結果、支持板61に取り付けられているマイクロニードル・デバイス1も回転し、各マイクロニードル11が皮膚の表面に沿って回転移動しながら皮膚に刺さる。このとき、各マイクロニードル11は皮膚に当たってから皮膚に刺さるまでの間に皮膚を伸ばすかまたは縮める。したがって、各マイクロニードル11はそれ自体により皮膚を変形させながらその皮膚に刺さる。爪63の移動範囲は溝62aの長さに制限されるので、支持板61の回転角度も制限される。
【0081】
上記の実施形態と同様に、ユーザはマイクロニードル・デバイス1を所定時間押さえ続けてもよい。また、活性成分の準備方法が限定されない点も上記の実施形態と同様である。
【0082】
以上説明したように、本実施形態によれば、支持面(支持板61の裏面)が回転することで、傾斜したマイクロニードル11が皮膚を一定の範囲だけ変形させた上でその皮膚に刺さる。その支持面を回転させるための爪63の移動範囲が制限されるので、誰がアプリケータ60を操作しても支持面の回転の範囲を同じにすることができる。したがって、誰が使用してもマイクロニードル11の穿刺の程度を一定のレベルに保つことができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、支持板61を押すだけで、各マイクロニードル11を回しながら皮膚に刺すことができる。すなわち、アプリケータ60の使用方法は非常に簡単である。
【0084】
本実施形態では、溝62aは斜めに延びるが、外枠の内側に形成される溝の形状は、これに限定されない。例えば、溝は略L字状を呈してもよい。より具体的には、この変形例に係る溝は、鉛直方向に延びる垂直部分と、該垂直部分の下端(皮膚に近い方の一端)から水平方向に延びる水平部分と含む。この変形例においてアプリケータを作動させる場合には、ユーザは予め支持板の爪を垂直部分の上端(皮膚から離れた方の一端)に位置させた上で、まずは支持板を皮膚に向かって押すことでマイクロニードルを皮膚に当て、その後その支持板を回転させることでマイクロニードルを皮膚に刺す。したがって、支持板(支持面)は皮膚に向かって下がった後に初めて回転する。なお、この変形例でも、支持板が上がった状態をより確実に維持するための仕組みを爪または溝に設けてもよい。
【0085】
(第6実施形態)
図10を参照して、第6実施形態に係るアプリケータ70について説明する。図10はアプリケータ70の斜視図である。
【0086】
アプリケータ70はマイクロニードル・デバイス1を支持する支持板71と、その支持板71を収容する筐体72と、回転機構であるスイッチ73とを備える。上記の実施形態と同様に、アプリケータ70の全体的な形状、およびアプリケータ70の少なくとも一部の構成要素の形状は限定されない。また、アプリケータ70の材質が限定されない点も上記の実施形態と同様である。
【0087】
支持板71は、その裏面にマイクロニードル・デバイス1が位置する板材である。支持板71の裏面とは、アプリケータ70の使用時に、マイクロニードル・デバイス1の被適用者の皮膚と向かい合う面である。支持板71の裏面は筐体72で覆われずに露出する。
【0088】
本実施形態では、支持板71の裏面の側をアプリケータ70の下側と定義し、その裏面とは反対側の面である支持板71の面の側をアプリケータ70の上側と定義する。
【0089】
支持板71の周縁部の上側には、約180°の間隔をおいて二つの溝74が形成される。溝74は、支持板71の外縁から中心の方向に向かって窄むテーパ状を呈する。一例として、本実施形態では溝74は略三角形を呈する。スイッチ73の形状は溝74に対応し、したがって、支持板71の中心に向かって窄むテーパ状である。一例として、本実施形態ではスイッチ73は薄い三角柱である。スイッチ73の先端部は、筐体72の側面に形成された孔72aに差し込まれて溝74の中に位置する。スイッチ73はアプリケータ70の略径方向に沿って所定の距離の範囲内で移動可能であり、したがって、スイッチ73の移動は制限される。
【0090】
次に、アプリケータ70およびマイクロニードル・デバイス1の使用方法を説明する。まず、ユーザはマイクロニードル・デバイス1の裏面を支持板71の裏面に貼る。この貼り付けのために、マイクロニードル・デバイス1の裏面および支持板71の裏面の少なくとも一方に粘着層が設けられてもよい。マイクロニードル・デバイス1が支持板71の裏面に貼られることで、傾斜したマイクロニードル11はその裏面により支持される。したがって、支持板71の裏面はマイクロニードル11のための支持面として機能する。
【0091】
続いて、ユーザはスイッチ73をアプリケータ70の外側に向けて動かし、溝74の二つの壁面のうち支持板71の回転方向の側の壁面をそのスイッチ73に接触させる。図10はこの操作を行った直後の状態を示す。続いて、ユーザはアプリケータ70を活性成分の適用箇所に置く。なお、この際にアプリケータ70を適用箇所に固定するために、筐体72の下面に粘着層を設けてもよい。続いて、ユーザはスイッチ73をアプリケータ70の中心に向かって押す。すると、スイッチ73が溝74の壁面を支持板71の周方向に向けて押すので、支持板71がその方向(図10の例では、アプリケータ70の上方から見て時計回りの方向)に回転する。この結果、支持板71に取り付けられているマイクロニードル・デバイス1が回転し、各マイクロニードル11が皮膚の表面に沿って回転移動しながら皮膚に刺さる。本実施形態では、支持板71はアプリケータ70の上下方向(すなわち鉛直方向)に沿っては動かないので、支持板71(支持面)は皮膚に向かって下がることなく回転する。このとき、各マイクロニードル11は皮膚に当たってから皮膚に刺さるまでの間に皮膚を伸ばすかまたは縮める。したがって、各マイクロニードル11はそれ自体により皮膚を変形させながらその皮膚に刺さる。スイッチ73の移動範囲は制限されるので、支持板71の回転角度も制限される。
【0092】
上記の実施形態と同様に、ユーザはマイクロニードル・デバイス1を所定時間押さえ続けてもよい。また、活性成分の準備方法が限定されない点も上記の実施形態と同様である。
【0093】
以上説明したように、本実施形態によれば、支持面(支持板71の裏面)が回転することで、傾斜したマイクロニードル11が皮膚を一定の範囲だけ変形させた上でその皮膚に刺さる。その支持面を回転させるスイッチ73は移動範囲が制限されるので、誰がアプリケータ70を操作しても支持面の回転の範囲を同じにすることができる。したがって、誰が使用してもマイクロニードル11の穿刺の程度を一定のレベルに保つことができる。
【0094】
また、本実施形態によれば、ユーザはスイッチ73を押すだけで、各マイクロニードル11を回しながら皮膚に刺すことができる。すなわち、アプリケータ70の使用方法は非常に簡単である。
【0095】
アプリケータの中心に向かって移動するスイッチにより支持板を回転させるための構造は限定されない。例えば、図11に示すアプリケータ70Aでもアプリケータ70と同様の原理で支持板71Aが回転する。アプリケータ70Aがアプリケータ70と異なるのは、溝74に代えて棒状の小さな突起75を備える点である。2本の突起75は、支持板71Aの上面に、約180°の間隔をおいて設けられる。スイッチ73の先端部は支持板71Aの上に載る。
【0096】
アプリケータ70Aを用いる場合には、ユーザはスイッチ73をアプリケータ70Aの外側に向けて動かし、回転方向の側のスイッチ73の側面に突起75を接触させる。図11はこの操作を行った直後の状態を示す。その後、ユーザがスイッチ73をアプリケータ70Aの中心に向かって押すと、スイッチ73が突起75を支持板71Aの周方向に向けて押すので、支持板71Aがその方向(図11の例では、アプリケータ70Aの上方から見て時計回りの方向)に回転する。この結果、支持板71Aに取り付けられているマイクロニードル・デバイス1が回転し、各マイクロニードル11が皮膚の表面に沿って回転移動しながら皮膚に刺さる。
【0097】
本実施形態ではスイッチ73を二つ設けたが、アプリケータ70,70Aはスイッチ73を一つのみ備えてもよい。これに応じて、溝74および突起75の個数は1でもよい。
【0098】
以上説明したように、本発明の一側面に係るアプリケータは、傾斜したマイクロニードルを支持する支持面と、マイクロニードルが皮膚に刺さる前後に亘って該マイクロニードルの先端の方向に支持面を回転させ、かつ移動範囲が制限された回転機構とを備える。
【0099】
このような側面においては、支持面が回転することで、傾斜したマイクロニードルが皮膚を一定の範囲だけ変形させた上でその皮膚に刺さる。その支持面を回転させる回転機構は移動範囲が制限されるので、誰がアプリケータを操作しても支持面の回転の範囲を同じにすることができる。したがって、誰が使用してもマイクロニードルの穿刺の程度を一定のレベルに保つことができる。
【0100】
他の側面に係るアプリケータでは、支持面が、回転しながら皮膚に向かって下がってもよい。このように支持面を動かすことで、傾斜したマイクロニードルをより確実に皮膚に刺すことができる。
【0101】
他の側面に係るアプリケータでは、支持面の外周を囲む外枠を更に備え、回転機構が、外枠と支持面の外周部とをつなぐ複数の接続部であり、各接続部が山折れ部および谷折れ部を有してもよい。
【0102】
他の側面に係るアプリケータでは、支持面の外周を囲む外枠を更に備え、回転機構が、支持面の周縁部に設けられた複数の爪と、外枠の内側に形成された、斜めに延びる複数の溝とを備え、複数の爪のそれぞれが、対応する溝に嵌まり、該溝に沿って移動可能であってもよい。
【0103】
他の側面に係るアプリケータでは、支持面が、皮膚に向かって下がることなく回転してもよい。この場合には、支持面をアプリケータの鉛直方向(皮膚と略直交する方向)に動かす必要がないので、アプリケータの高さを抑えることができ、これは、アプリケータの更なる小型化に資する。
【0104】
他の側面に係るアプリケータでは、回転機構が、支持面の上に設けられたつまみであってもよい。
【0105】
他の側面に係るアプリケータでは、傾斜面を有する爪が支持面の上方に設けられ、回転機構が、支持面と直交する方向に沿って爪を押すスイッチであってもよい。
【0106】
他の側面に係るアプリケータでは、支持面の周縁部に、該支持面の中心に向かって窄むテーパ状の溝が形成され、回転機構が、支持面の中心に向かって移動して溝の壁面を押すスイッチであってもよい。
【0107】
他の側面に係るアプリケータでは、支持面の上方に突起が設けられ、回転機構が、支持面の中心に向かって移動して突起を該支持面の周方向に向けて押すスイッチであってもよい。
【0108】
他の側面に係るアプリケータでは、支持面が、皮膚に向かって下がった後に回転してもよい。この場合には、マイクロニードルを皮膚に当てる工程も回転機構を用いて行われるので、ユーザが自らマイクロニードルを皮膚に直接当てる場合と比較して、皮膚へのマイクロニードルの接触についての個人差を小さくすることができる。したがって、誰が使用してもマイクロニードルの穿刺の程度を一定のレベルに保つことができる。
【0109】
他の側面に係るアプリケータでは、支持面の外周を囲む外枠を更に備え、回転機構が、支持面の周縁部に設けられた複数の爪と、外枠の内側に形成された、略L字状の複数の溝とを備え、複数の爪のそれぞれが、対応する溝に嵌まり、該溝に沿って移動可能であってもよい。
【0110】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0111】
1…マイクロニードル・デバイス、10…マイクロニードル・アレイ、11…マイクロニードル、20…シート、30…アプリケータ、30A…アプリケータ、31…支持板、32…外枠、33…接続部(回転機構)、33a…山折れ部、33b…谷折れ部、34…接続部、34a…山折れ部、34b…谷折れ部、40…アプリケータ、41…支持板、42…つまみ(回転機構)、50…アプリケータ、51…支持板、52…爪、52a…傾斜面、55…スイッチ(回転機構)、55b…内側リブ、60…アプリケータ、61…支持板、62…外枠、62a…溝(回転機構)、63…爪(回転機構)、70,70A…アプリケータ、71,71A…支持板、72…筐体、73…スイッチ(回転機構)、74…溝、75…突起。
図1
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