(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オーミックメタルは、Ti、TiN、Ni、Al、Ta、TaN、WおよびWNの群から選択される1種の材料からなる単層構造、または、前記群から選択される複数種の各材料からなる層を積層した積層構造を有している、請求項7に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の模式的な平面図である。
半導体装置1は、平面視正方形状に形成されており、その表面側に層間絶縁膜2が形成されている。
層間絶縁膜2上には、ソース電極3、ゲートパッド4およびゲートフィンガー5が形成されている。
【0031】
ソース電極3は、その中央部分に第1側縁6から当該第1側縁6に対向する第2側縁7側へ平面視凹状に除去された領域(除去領域10)を有する平面視正方形状に形成されていて、各側縁が半導体装置1の側縁にそれぞれ平行となるように配置されている。
ゲートパッド4は、平面視正方形状に形成されていて、ソース電極3の凹状の除去領域10の開放部分付近に、ソース電極3に対して間隔を空けて非接触に設けられている。
【0032】
ゲートフィンガー5は、この実施形態ではゲートパッド4と一体的に3本形成されている。3本のゲートフィンガー5は、ソース電極3の除去領域10の開放側からその反対側へ向かって、除去領域10内、およびソース電極3の第1側縁6に直交する第3側縁8および第4側縁9の外側に1本ずつ、互いに平行に延びていて、ソース電極3に対して間隔を空けて非接触に設けられている。
【0033】
ゲートパッド4およびゲートフィンガー5は、同じ金属材料からなる。好ましくは、ゲートパッド4およびゲートフィンガー5は、ソース電極3と同じ金属材料、たとえば、Alを主成分として含む金属材料からなる。ソース電極3、ゲートパッド4およびゲートフィンガー5が同じ金属材料からなる場合、層間絶縁膜2の表面全域上にその金属材料からなる膜を形成し、この膜をパターニングすることにより、ソース電極3、ゲートパッド4およびゲートフィンガー5を形成することができる。
【0034】
ソース電極3の下方には、以下に説明する各部からなるVDMOSFET(Vertical Double diffused Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の単位セルCが、平面視でマトリクス状(格子状)に多数配列されて設けられている。
図2は、
図1の破線円IIで囲まれる部分の要部拡大図であって、4つの単位セルCが示されている。
図3Aは、
図2に示す半導体装置の切断線A−Aにおける模式的な断面図である。
図3Bは、
図2に示す半導体装置の切断線B−Bにおける模式的な断面図である。
図3Cは、
図2に示す半導体装置の切断線C−Cにおける模式的な断面図である。なお、各断面図では、図面の簡素化のために、導電材料からなる部分にのみハッチングを付している。
【0035】
半導体装置1は、SiC基板(図示せず)上に積層されたSiCエピタキシャル層12を備えている。SiCエピタキシャル層12は、N型不純物がドーピングされることにより、N型の導電型を示している。この実施形態では、SiCエピタキシャル層12の厚さは、約7μmであり、SiCエピタキシャル層12のN型不純物濃度は、1×10
16cm
−3である。
【0036】
SiCエピタキシャル層12の表層部には、複数のボディ領域13が形成されている。各ボディ領域13は、P型の導電型を示し、SiCエピタキシャル層12の表面24から深さ方向の途中部に至る領域に、他のボディ領域13に対してSiCエピタキシャル層12の厚さ方向と直交する方向に間隔を空けて形成されている。この実施形態では、ボディ領域13の深さは、5000Å〜6500Å(500nm〜650nm)である。そして、ボディ領域13は、P型不純物であるAlの1段イオン注入法により形成され、後述するゲート絶縁膜16の厚さ方向の中央を基準とする深さが1000Å(100nm)以下の部分のP型不純物濃度が1×10
18cm
−3以下である不純物濃度プロファイルを有している。
【0037】
各ボディ領域13の表層部には、ソース領域14がボディ領域13の周縁と間隔を空けて形成されている。ソース領域14は、SiCエピタキシャル層12よりもN型不純物が高濃度にドーピングされることにより、N
+型の導電型を示している。この実施形態では、ソース領域14の深さは、約2500Å(250nm)である。そして、ソース領域14は、N型不純物であるP(リン)の多段イオン注入法により形成され、その表面からの深さが100Å〜2500Å(10nm〜250nm)の部分におけるN型不純物濃度が1×10
20cm
−3〜5×10
20cm
−3であるボックス型の不純物濃度プロファイルを有している。
【0038】
各ソース領域14の内側には、ボディコンタクト領域15がソース領域14を深さ方向に貫通して形成されている。ボディコンタクト領域15は、ボディ領域13よりもP型不純物が高濃度にドーピングされることにより、P
+型の導電型を示している。ボディコンタクト領域15は、ボディ領域13よりもP型不純物が高濃度にドーピングされることにより、P
+型の導電型を示している。この実施形態では、ボディコンタクト領域15の深さは、約3500Å(350nm)である。そして、ボディコンタクト領域15は、P型不純物であるAlの多段イオン注入法により形成され、その表面からの深さが500Å〜1000Å(50nm〜100nm)の部分におけるP型不純物濃度が2×10
20cm
−3〜5×10
20cm
−3であり、表面からの深さが1000Å(100nm)以上の部分におけるP型不純物濃度が2×10
20cm
−3以下であるボックス型の不純物濃度プロファイルを有している。これにより、ボディコンタクト領域15における表面からの深さが500Å〜1000Åの部分には、AlがSiCに対する固溶限以上に含まれ、ボディコンタクト領域15における表面からの深さが1000Å以上の部分には、AlがSiCに対する固溶限未満で含まれている。
【0039】
SiCエピタキシャル層12上には、ゲート絶縁膜16が形成されている。ゲート絶縁膜16は、たとえば、SiO
2(酸化シリコン)からなる。ゲート絶縁膜16の厚さは、たとえば、約400Å(40nm)である。
ゲート絶縁膜16上には、ゲート電極17が形成されている。ゲート電極17は、たとえば、ドープトポリシリコン(N型不純物またはP型不純物がドーピングされたポリシリコン)からなる。ゲート電極17は、互いに隣り合うソース領域14の間に跨って設けられている。また、ゲート電極17は、層間絶縁膜2に形成された貫通孔(図示せず)を介して、ゲートフィンガー5と接続されている。
【0040】
ゲート電極17の下方において、SiCエピタキシャル層12には、複数のトレンチ18が形成されている。各トレンチ18は、互いに隣り合う単位セルCの2つのソース領域14をその側面25に露出させるように、ソース領域14の間に跨って形成されている。各トレンチ18は、SiCエピタキシャル層12をその表面24からソース領域14の最深部よりも浅い位置まで掘り下げることにより形成され、一定のピッチで並列に設けられている。
また、トレンチ18は、図2に示すように、一つのボディ領域13からその周囲の4つのボディ領域13へ向かって4方向に形成されている。そして、各トレンチ18には、ゲート絶縁膜16およびゲート電極17が入り込んでいる。これにより、各トレンチ18の内面は、ゲート絶縁膜16により被覆され、ゲート電極17は、SiCエピタキシャル層12の表面24に対向する表面対向部19と、各トレンチ18内に埋設された埋設部20とを一体的に有している。
また、表面対向部19は、図2および図3Aに示すように、互いに隣り合う2つのソース領域14を結ぶ線の延長線上において、SiCエピタキシャル層12の表面24に露出するソース領域14に対向している。
【0041】
また、SiCエピタキシャル層12上には、層間絶縁膜2が形成されている。層間絶縁膜2により、ゲート電極17が被覆されている。層間絶縁膜2は、たとえば、SiO
2からなる。
層間絶縁膜2には、各ボディコンタクト領域15と対向する位置に、コンタクトホール23が形成されている。各コンタクトホール23は、ゲート絶縁膜16を貫通し、各コンタクトホール23内には、ボディコンタクト領域15の全域およびソース領域14におけるボディコンタクト領域15の周囲の部分が臨んでいる。
【0042】
ソース領域14およびボディコンタクト領域15の表面におけるコンタクトホール23内に臨む部分上(コンタクトホール23の底面上)ならびに層間絶縁膜2の表面上には、下方からTi(チタン)層およびTiN(窒化チタン)層を積層した積層構造を有するオーミックメタル21が形成されている。
層間絶縁膜2上(オーミックメタル21上)には、ソース電極3が形成されている。ソース電極3は、層間絶縁膜2に選択的に形成されたコンタクトホール23に入り込み、オーミックメタル21を挟んで、ソース領域14およびボディコンタクト領域15に接続されている。ソース電極3は、たとえば、Alを主成分として含む金属からなる。
【0043】
一方、図示しないが、SiC基板の裏面(SiCエピタキシャル層12が形成されている側と反対側の面)には、ドレイン電極が形成されている。
ソース電極3が接地され、ドレイン電極に適当な正電圧が印加された状態で、ゲート電極17の電位(ゲート電圧)が制御されることにより、SiCエピタキシャル層12におけるゲート絶縁膜16との界面近傍にチャネルが形成されて、ソース電極3とドレイン電極との間に、電流がチャネルおよび互いに隣り合うボディ領域13の間を通って流れる。
【0044】
前述したように、SiCエピタキシャル層12には、複数のトレンチ18が互いに隣り合う2つのソース領域14の間に跨るように形成されている。トレンチ18の内面は、ゲート絶縁膜16により被覆されている。そして、ゲート電極17は、ゲート絶縁膜16を挟んでSiCエピタキシャル層12の表面24に対向する表面対向部19と、トレンチ18内に埋設される埋設部20とを有している。そのため、チャネルは、SiCエピタキシャル層12の表面24付近だけでなく、トレンチ18の側面25および底面26付近にも形成される。よって、プレーナゲート型VDMISFETを備える構成と比較して、チャネル幅を拡大することができる。その結果、微細化によるオン抵抗の低減の限界を超えて、オン抵抗をさらに低減することができる。
【0045】
さらに、SiCエピタキシャル層12の表面24に、SiC結晶の(0001)面または(000−1)面が現れる場合、トレンチ18の側面25の一部に、SiC結晶の(11−20)面が現れるので、その部分の近傍にチャネルが形成されることにより、高いチャネル移動度を発揮することができる。
また、N型ポリシリコンのシート抵抗が20Ω/□程度であるのに対し、P型ポリシリコンのシート抵抗は約70Ω/□〜100Ω/□であるので、ゲートパッド4からP型ポリシリコンからなるゲート電極17を引き回す構成を採用した場合、ゲート信号遅延によるMISFETのスイッチング遅延を生じるおそれがある。
【0046】
ゲートパッド4とゲート電極17とが金属材料からなるゲートフィンガー5を介して接続されることにより、ゲート信号遅延によるスイッチング遅延の問題を回避することができる。
また、ボディ領域13が、300keV以上の注入エネルギーおよび4×10
13cm
−2以上のドーズ量での1段イオン注入法により形成されている。これにより、ボディ領域13の表層部、具体的には、ボディ領域13におけるゲート絶縁膜16の厚さ方向の中央を基準とする深さ1000Å以下の部分のP型不純物濃度が1×10
18cm
−3以下となる。ボディ領域13の表層部のP型不純物濃度を1×10
18cm
−3以下の低濃度に制御することにより、ボディ領域13に形成されるチャネルにおける電子の移動度(チャネル移動度)を向上させることができ、VDMOSFETのオン抵抗を低減することができる。
【0047】
そして、半導体装置1では、ゲート電極17がP型ポリシリコンからなる。N型ポリシリコンの仕事関数は、約4.1eVである。これに対し、P型ポリシリコンの仕事関数は、約5.1eVである。そのため、ゲート電極17の材料にP型ポリシリコンを採用することにより、N型ポリシリコンを採用した構成と比較して、VDMOSFETの閾値電圧を約1V上げることができる。その結果、MISFETがオフの状態でソース電極3とドレイン電極との間を流れるドレインリーク電流を低減することができる。
【0048】
また、ゲート電極17の材料であるP型ポリシリコンは、Bが5×10
14cm
−2〜5×10
15cm
−2の範囲内のドーズ量でドーピングされたP型ポリシリコンからなる。ドーズ量を5×10
14cm
−2以上とすることにより、ゲート電極17のシート抵抗が大きくなりすぎるのを防止できる。また、ドーズ量を5×10
15cm
−2以下とすることにより、ゲート電極17中のBがゲート絶縁膜16中に拡散することを防止でき、その拡散に起因するゲート電極17とボディ領域13との間でのリークの発生を防止できる。
【0049】
また、ボディコンタクト領域15の表層部には、P型不純物であるAlがSiCに対する固溶限以上に含まれている。
ボディコンタクト領域15の表層部にP型不純物がSiCに対する固溶限以上となる濃度で含まれていることにより、オーミックメタル21の形成後に熱処理を行わなくても、N型のソース領域14はもちろん、P型のボディコンタクト領域15に対しても、低抵抗なオーミックコンタクトを得ることができる。
【0050】
この半導体装置1では、第1低抵抗なオーミックコンタクトを得るための熱処理が不要であるため、従来のSiC半導体装置よりも製造に要するコストおよび時間を低減することができる。
また、この実施形態では、ボディコンタクト領域15の表面からの深さが500Å〜1000Åの部分に、AlがSiCに対する固溶限以上に含まれ、ボディコンタクト領域15の表面からの深さが1000Å以上の部分には、AlがSiCに対する固溶限未満で含まれている。ボディコンタクト領域15の表面からの深さが1000Å以上の部分にAlが過剰に含まれていても、その過剰なAlがコンタクト抵抗の低減に寄与することはない。したがって、そのような深い部分にまでAlを高濃度にドーピングすることによる無駄が省かれ、SiCの製造に要するコストおよび時間のさらなる低減が図られている。
【0051】
また、ボディコンタクト領域15は、多段イオン注入法により形成される。多段イオン注入法であれば、ボディコンタクト領域15の表面からの深さが50nm〜100nmの部分に、P型不純物をSiCに対する固溶限以上に容易に注入することができる。
また、ソース領域14の表層部におけるN型不純物濃度が1×10
20cm
−3〜5×10
20cm
−3の範囲内に制御されているので、N型のソース領域14に対する低抵抗なオーミックコンタクトを確実に得ることができる。
【0053】
次に、
図5A、
図5Bおよび
図5Cに示すように、次に、1段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層12の表層部に、ボディ領域13を形成するためのP型不純物(たとえば、Al)が選択的に注入(インプラ)される。
次いで、
図6A、
図6Bおよび
図6Cに示すように、多段イオン注入法(たとえば、4段イオン注入法)により、ボディ領域13の表層部に、ボディコンタクト領域15を形成するためのP型不純物であるAlが選択的に注入される。
【0054】
次いで、
図7A、
図7Bおよび
図7Cに示すように、多段イオン注入法(たとえば、4段イオン注入法)により、ボディ領域13の表層部に、ソース領域14を形成するためのN型不純物であるPが選択的に注入される。
その後、高温(たとえば、1750℃)によるアニールが行われ、SiCエピタキシャル層12の表層部に、ボディ領域13、ソース領域14およびボディコンタクト領域15が形成される。
【0055】
その後、
図8A、
図8Bおよび
図8Cに示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、SiCエピタキシャル層12に、複数のトレンチ18が形成される。
次いで、
図9A、
図9Bおよび
図9Cに示すように、熱酸化法により、SiCエピタキシャル層12の表面に、ゲート絶縁膜16が形成される。
なお、P型不純物およびN型不純物の不純物を活性化させるための熱処理は、熱酸化処理(ゲート絶縁膜16の形成)の前であれば、P型不純物の注入後およびN型不純物の注入後の各タイミングで個別に行われてもよいし、P型不純物の注入およびN型不純物がボディ領域13に連続して注入された後、トレンチ18が形成される前に行われてもよい。
【0056】
その後、
図10A、
図10Bおよび
図10Cに示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法により、ゲート絶縁膜16上に、ドープトポリシリコン22がトレンチ18を埋め尽くすように堆積される。
そして、
図11A、
図11Bおよび
図11Cに示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、ドープトポリシリコン22の堆積層が選択的に除去され、ゲート絶縁膜16上に、ドープトポリシリコン22からなるゲート電極17が形成される。
【0057】
この後、
図12A、
図12Bおよび
図12Cに示すように、CVD法により、SiCエピタキシャル層12上に、層間絶縁膜2が形成される。
そして、
図13A、
図13Bおよび
図13Cに示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、層間絶縁膜2に、コンタクトホール23が形成される。
その後、スパッタ法により、ソース領域14およびボディコンタクト領域15の表面におけるコンタクトホール23内に臨む部分上(コンタクトホール23の底面上)ならびに層間絶縁膜2の表面上に、TiおよびTiNが順に蒸着されることにより、オーミックメタル21が形成される。
【0058】
TiおよびTiNの蒸着に引き続いて、スパッタ法により、オーミックメタル21上に、ソース電極3が形成される。また、SiC基板(図示せず)の裏面に、ドレイン電極が形成される。こうして、
図2に示す半導体装置1が得られる。
図14は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
図14において、
図3Aに示す各部に相当する部分には、それらの各部に付した参照符号と同一の参照符号を付している。そして、以下では、
図14に示す構造について、
図3Aに示す構造との相違点のみを説明し、同一の参照符号を付した各部の説明を省略する。
【0059】
図3Aに示す半導体装置1では、トレンチ18の深さがソース領域14の深さよりも小さいのに対し、
図14に示す半導体装置31では、トレンチ18の深さがソース領域14の深さよりも大きい。
半導体装置31においても、チャネルは、SiCエピタキシャル層12の表面24付近だけでなく、トレンチ18の側面25および底面26付近にも形成される。よって、微細化によるオン抵抗の低減の限界を超えて、オン抵抗をさらに低減することができる。
【0060】
なお、トレンチ18の深さがソース領域14の深さよりも小さい場合、つまり
図3Aに示す構造の場合には、チャネルがトレンチ18の底面26に沿って形成され、チャネルを移動する電子がトレンチ18の側面25および底面26のそれぞれに沿って直線的に移動する。よって、チャネル幅を大きくすることができ、オン抵抗のさらなる低減を図ることができる。
【0061】
図15は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図16は、
図15に示す半導体装置の切断線II−IIにおける模式的な断面図である。
図17は、
図15に示す半導体装置の切断線III−IIIにおける模式的な断面図である。
半導体装置41は、以下に説明する各部からなるVDMOSFET(Vertical Double diffused Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のセルCを複数備えている。
図15に示すように、複数のセルCは、平面視でマトリクス状に配置されている。
【0062】
図16,17に示すように、半導体装置41(SiC半導体装置)は、SiC基板(図示せず)上に積層されたSiCエピタキシャル層42を備えている。SiCエピタキシャル層42は、N型不純物がドーピングされることにより、N型の導電型を示している。この実施形態では、SiCエピタキシャル層42の厚さは、約7μmであり、SiCエピタキシャル層42のN型不純物濃度は、1×10
16cm
−3である。
【0063】
SiCエピタキシャル層42の表層部には、複数のボディ領域(ウェル領域)3が並列に形成されている。各ボディ領域43は、P型の導電型を示し、他のボディ領域43に対して適当な間隔を空けて平行に延びるように形成されている。この実施形態では、ボディ領域43の深さは、5000Å〜6500Å(500nm〜650nm)である。そして、ボディ領域43は、P型不純物であるAlの1段イオン注入法により形成され、後述するゲート絶縁膜46の厚さ方向の中央を基準とする深さが1000Å(100nm)以下の部分のP型不純物濃度が1×10
18cm
−3以下である不純物濃度プロファイルを有している。
【0064】
各ボディ領域43の表層部には、ソース領域44がボディ領域43の周縁と間隔を空けて形成されている。ソース領域44は、SiCエピタキシャル層42よりもN型不純物が高濃度にドーピングされることにより、N+型の導電型を示している。この実施形態では、ソース領域44の深さは、約2500Å(250nm)である。
各ソース領域44の内側には、複数のボディコンタクト領域45がボディ領域43が延びる方向に一定間隔を空けて形成されている。各ボディコンタクト領域45は、ソース領域44を深さ方向に貫通して形成されている。各ボディコンタクト領域45は、ボディ領域43よりもP型不純物が高濃度にドーピングされることにより、P+型の導電型を示している。この実施形態では、ボディコンタクト領域45の深さは、約3500Å(350nm)である。
【0065】
SiCエピタキシャル層42上には、ゲート絶縁膜46が形成されている。ゲート絶縁膜46は、たとえば、SiO
2(酸化シリコン)からなる。ゲート絶縁膜46の厚さは、たとえば、約400Å(40nm)である。
ゲート絶縁膜46上には、ゲート電極47が形成されている。ゲート電極47は、P型不純物であるBが5×10
14cm
−2〜5×10
15cm
−2の範囲内のドーズ量でドーピングされたP型ポリシリコンからなる。ゲート電極47は、互いに隣り合うソース領域44(ボディ領域43)の間に跨って設けられている。
【0066】
また、SiCエピタキシャル層42上には、層間絶縁膜48が形成されている。層間絶縁膜48により、SiCエピタキシャル層42の表面がゲート電極47とともに被覆されている。層間絶縁膜48は、たとえば、SiO
2からなる。
層間絶縁膜48には、各ボディコンタクト領域45と対向する位置に、コンタクトホール49が形成されている。各コンタクトホール49は、ゲート絶縁膜46を貫通し、各コンタクトホール49内には、ボディコンタクト領域45の全域およびソース領域44におけるボディコンタクト領域45の周囲の部分が臨んでいる。
【0067】
ソース領域44およびボディコンタクト領域45の表面におけるコンタクトホール49内に臨む部分上(コンタクトホール49の底面上)ならびに層間絶縁膜48の表面上には、下方からTi(チタン)層およびTiN(窒化チタン)層を積層した積層構造を有するオーミックメタル50が形成されている。
層間絶縁膜48(オーミックメタル50)上には、ソース電極51が形成されている。ソース電極51は、層間絶縁膜48に形成された各コンタクトホール49に入り込み、オーミックメタル50を挟んで、ソース領域44およびボディコンタクト領域45に接続されている。ソース電極51は、たとえば、Alを主成分として含む金属材料からなる。
【0068】
図16に示すように、ソース電極51上には、ポリイミド層52が積層されている。
また、図示しないが、SiC基板の裏面(SiCエピタキシャル層42が形成されている側と反対側の面)には、ドレイン電極が形成されている。
ソース電極51が接地され、ドレイン電極に適当な正電圧が印加された状態で、ゲート電極47の電位(ゲート電圧)が制御されることにより、ボディ領域43におけるゲート絶縁膜46との界面近傍にチャネルが形成されて、ソース電極51とドレイン電極との間に電流が流れる。
【0069】
また、
図15に示すように、層間絶縁膜48上には、外部との電気的接続に寄与するゲートパッド53と、ゲートパッド53から延びるゲートフィンガー54とが形成されている。
ゲートパッド53は、半導体装置41の一側縁に沿った部分の中央に配置されている。
ゲートフィンガー54は、たとえば、3本設けられ、ゲートパッド53が配置されている一方側とその反対の他方側との間で互いに平行に延びている。各ゲートフィンガー54の一方側の端部は、ゲートパッド53に接続されている。ゲートフィンガー54は、層間絶縁膜48に形成された貫通孔55(
図17参照)を介して、ゲート電極47と接続されている。
【0070】
ゲートパッド53およびゲートフィンガー54は、ソース電極51に対して間隔を空けて非接触に設けられている。言い換えれば、層間絶縁膜48上において、ソース電極51は、ゲートパッド53およびゲートフィンガー54が形成されていない部分に、ゲートパッド53およびゲートフィンガー54に対して間隔を空けて形成されている。
ゲートパッド53およびゲートフィンガー54は、同じ金属材料からなる。好ましくは、ゲートパッド53およびゲートフィンガー54は、ソース電極51と同じ金属材料、たとえば、Alを主成分として含む金属材料からなる。ソース電極51、ゲートパッド53およびゲートフィンガー54が同じ金属材料からなる場合、層間絶縁膜48の表面全域上にその金属材料からなる膜を形成し、この膜をパターニングすることにより、ソース電極51、ゲートパッド53およびゲートフィンガー54を形成することができる。
【0071】
N型ポリシリコンのシート抵抗が20Ω/□程度であるのに対し、P型ポリシリコンのシート抵抗は約70Ω/□〜100Ω/□であるので、ゲートパッド53からP型ポリシリコンからなるゲート電極47を引き回す構成を採用した場合、ゲート信号遅延によるMISFETのスイッチング遅延を生じるおそれがある。
ゲートパッド53とゲート電極47とが金属材料からなるゲートフィンガー54を介して接続されることにより、ゲート信号遅延によるスイッチング遅延の問題を回避することができる。
【0072】
図18A〜
図18Gは、
図16に示す半導体装置の製造工程を順に示す模式的な断面図である。
半導体装置41の製造工程では、
図18Aに示すように、まず、エピタキシャル成長法により、SiC基板(図示せず)上に、SiCエピタキシャル層42が形成される。次に、300keV以上の注入エネルギーおよび4×10
13cm
−2以上のドーズ量での1段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層42の表層部に、ボディ領域43を形成するためのP型不純物であるAlが選択的に注入(インプラ)される。次いで、多段イオン注入法(たとえば、4段イオン注入法)により、ボディ領域43の表層部に、ソース領域44を形成するためのN型不純物であるPが選択的に注入される。さらに、多段イオン注入法(たとえば、4段イオン注入法)により、ボディ領域43の表層部に、ボディコンタクト領域45を形成するためのP型不純物であるAlが選択的に注入される。その後、高温(たとえば、1750℃)によるアニールが行われ、SiCエピタキシャル層42の表層部に、ボディ領域43、ソース領域44およびボディコンタクト領域45が形成される。
【0073】
次に、
図18Bに示すように、熱酸化法により、SiCエピタキシャル層42の表面に、ゲート絶縁膜46が形成される。
その後、
図18Cに示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法により、ゲート絶縁膜46上に、ポリシリコンが堆積される。次いで、ポリシリコンの堆積層をP型ポリシリコンの堆積層に変化させるため、ポリシリコンの堆積層に、B(ボロン)がドーピングされる。このBのドーピングは、たとえば、注入エネルギーが30keVであり、ドーズ量が2×10
15m
−2であるイオン注入法により達成される。そして、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、P型ポリシリコンの堆積層が選択的に除去され、ゲート絶縁膜46上に、P型ポリシリコンからなるゲート電極47が形成される。ゲート電極47がパターニングされるまでの過程において、ゲート電極47の表面には、SiO
2からなる自然酸化膜56が生じる。
【0074】
次いで、
図18Dに示すように、CVD法により、SiCエピタキシャル層42上に、層間絶縁膜48が形成される。ゲート電極47の表面上の自然酸化膜56は、層間絶縁膜48と一体化する。その後、フォトリソグラフィにより、層間絶縁膜48上に、レジストパターン57が形成される。レジストパターン57は、層間絶縁膜48におけるコンタクトホール49を形成すべき部分と対向する開口を有している。
【0075】
その後、
図18Eに示すように、レジストパターン57をマスクに用いたエッチングにより、層間絶縁膜48に、コンタクトホール49が形成される。
そして、
図18Fに示すように、スパッタ法により、ソース領域44およびボディコンタクト領域45の表面におけるコンタクトホール49内に臨む部分上(コンタクトホール49の底面上)ならびに層間絶縁膜48の表面上に、TiおよびTiNが順に成膜されることにより、オーミックメタル50が形成されている。
【0076】
TiおよびTiNの成膜(スパッタ)に引き続いて、
図18Gに示すように、スパッタ法により、オーミックメタル50上に、ソース電極51が形成される。その後、ソース電極51上に、感光性ポリイミドが塗布される。そして、ソース電極51の一部をパッドとして露出させるために、その感光性ポリイミドが選択的に除去された後、感光性ポリイミドのキュアが行われる。これにより、感光性ポリイミドがポリイミド層52となり、
図16に示す半導体装置41が得られる。
【0077】
以上のように、半導体装置41は、SiCエピタキシャル層42と、SiCエピタキシャル層42の表層部に選択的に形成されたボディ領域43と、ボディ領域43の表層部に、ボディ領域43の周縁と間隔を空けて形成されたソース領域44と、SiCエピタキシャル層42上に形成されたゲート絶縁膜46と、ゲート絶縁膜46上に形成され、ボディ領域43の周縁とソース領域44との間の部分に対向するゲート電極47とを備えている。
【0078】
そして、ボディ領域43は、300keV以上の注入エネルギーおよび4×10
13cm
−2以上のドーズ量での1段イオン注入法により形成されている。これにより、ボディ領域43の表層部、具体的には、ボディ領域43におけるゲート絶縁膜46の厚さ方向の中央を基準とする深さ1000Å以下の部分のP型不純物濃度が1×10
18cm
−3以下となる。ボディ領域43の表層部のP型不純物濃度を1×10
18cm
−3以下の低濃度に制御することにより、ボディ領域43に形成されるチャネルにおける電子の移動度(チャネル移動度)を向上させることができ、VDMOSFETのオン抵抗を低減することができる。
【0079】
そして、これらの半導体装置41では、ゲート電極47がP型ポリシリコンからなる。N型ポリシリコンの仕事関数は、約4.1eVである。これに対し、P型ポリシリコンの仕事関数は、約5.1eVである。そのため、ゲート電極47の材料にP型ポリシリコンを採用することにより、N型ポリシリコンを採用した構成と比較して、VDMOSFETの閾値電圧を約1V上げることができる。その結果、MISFETがオフの状態でソース電極51とドレイン電極との間を流れるドレインリーク電流を低減することができる。
【0080】
また、ゲート電極47の材料であるP型ポリシリコンは、Bが5×10
14cm
−2〜5×10
15cm
−2の範囲内のドーズ量でドーピングされたP型ポリシリコンからなる。ドーズ量を5×10
14cm
−2以上とすることにより、ゲート電極47のシート抵抗が大きくなりすぎるのを防止できる。また、ドーズ量を5×10
15cm
−2以下とすることにより、ゲート電極47中のBがゲート絶縁膜46中に拡散することを防止でき、その拡散に起因するゲート電極47とボディ領域43との間でのリークの発生を防止できる。
【0081】
図19は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置の模式的な平面図である。
図20は、
図19に示す切断線II−IIにおける半導体装置の模式的な断面図である。
半導体装置61は、
図19に示すように、以下に説明する各部からなるVDMOSFET(Vertical Double diffused Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のセルCを複数備えている。複数のセルCは、平面視でマトリクス状に配置されている。
【0082】
半導体装置61(SiC半導体装置)は、
図20に示すように、SiC基板(図示せず)上に積層されたSiCエピタキシャル層62を備えている。SiCエピタキシャル層62は、N型不純物がドーピングされることにより、N型の導電型を示している。この実施形態では、SiCエピタキシャル層62の厚さは、約7μmであり、SiCエピタキシャル層62のN型不純物濃度は、1×10
16cm
−3である。
【0083】
SiCエピタキシャル層62の表層部には、複数のボディ領域63が並列に形成されている。各ボディ領域63は、P型の導電型を示し、他のボディ領域63に対して適当な間隔を空けて平行に延びるように形成されている。この実施形態では、ボディ領域63の深さは、約6500Å(650nm)である。
各ボディ領域63の表層部には、ソース領域64がボディ領域63の周縁と間隔を空けて形成されている。ソース領域64は、SiCエピタキシャル層62よりもN型不純物が高濃度にドーピングされることにより、N
+型の導電型を示している。この実施形態では、ソース領域64の深さは、約2500Å(250nm)である。そして、ソース領域64は、N型不純物であるP(リン)の多段イオン注入法により形成され、その表面からの深さが100Å〜2500Å(10nm〜250nm)の部分におけるN型不純物濃度が1×10
20cm
−3〜5×10
20cm
−3であるボックス型の不純物濃度プロファイルを有している。
【0084】
各ソース領域64の内側には、複数のボディコンタクト領域65が、ボディ領域63が延びる方向に一定間隔を空けて形成されている。各ボディコンタクト領域65は、平面視において、ソース領域64に取り囲まれている。各ボディコンタクト領域65は、ソース領域64を深さ方向に貫通して形成されている。各ボディコンタクト領域65は、ボディ領域63よりもP型不純物が高濃度にドーピングされることにより、P
+型の導電型を示している。この実施形態では、ボディコンタクト領域65の深さは、約3500Å(350nm)である。そして、ボディコンタクト領域65は、P型不純物であるAlの多段イオン注入法により形成され、その表面からの深さが500Å〜1000Å(50nm〜100nm)の部分におけるP型不純物濃度が2×10
20cm
−3〜5×10
20cm
−3であり、表面からの深さが1000Å(100nm)以上の部分におけるP型不純物濃度が2×10
20cm
−3以下であるボックス型の不純物濃度プロファイルを有している。これにより、ボディコンタクト領域65における表面からの深さが500Å〜1000Åの部分には、AlがSiCに対する固溶限以上に含まれ、ボディコンタクト領域65における表面からの深さが1000Å以上の部分には、AlがSiCに対する固溶限未満で含まれている。
【0085】
SiCエピタキシャル層62上には、ゲート絶縁膜66が形成されている。ゲート絶縁膜66は、たとえば、SiO
2(酸化シリコン)からなる。
ゲート絶縁膜66上には、ゲート電極67が形成されている。ゲート電極67は、たとえば、ドープトポリシリコン(N型不純物またはP型不純物がドーピングされたポリシリコン)からなる。ゲート電極67は、互いに隣り合うソース領域64(ボディ領域63)の間に跨って設けられている。
【0086】
また、SiCエピタキシャル層62上には、層間絶縁膜68が形成されている。層間絶縁膜68により、SiCエピタキシャル層62の表面がゲート電極67とともに被覆されている。層間絶縁膜68は、たとえば、SiO
2からなる。
層間絶縁膜68には、各ボディコンタクト領域65と対向する位置に、コンタクトホール69が形成されている。各コンタクトホール69は、ゲート絶縁膜66を貫通し、各コンタクトホール69内には、ボディコンタクト領域65の全域およびソース領域64におけるボディコンタクト領域65の周囲の部分が臨んでいる。
【0087】
ソース領域64およびボディコンタクト領域65の表面におけるコンタクトホール69内に臨む部分上(コンタクトホール69の底面上)ならびに層間絶縁膜68の表面上には、下方からTi(チタン)層およびTiN(窒化チタン)層を積層した積層構造を有するオーミックメタル70が形成されている。
層間絶縁膜68(オーミックメタル70)上には、ソース電極71が形成されている。ソース電極71は、層間絶縁膜68に形成された各コンタクトホール69に入り込み、オーミックメタル70を挟んで、ソース領域64およびボディコンタクト領域65に接続されている。ソース電極71は、たとえば、Alを主成分として含む金属からなる。
【0088】
ソース電極71上には、ポリイミド層72が積層されている。
また、図示しないが、SiC基板の裏面(SiCエピタキシャル層62が形成されている側と反対側の面)には、ドレイン電極が形成されている。
ソース電極71が接地され、ドレイン電極に適当な正電圧が印加された状態で、ゲート電極67の電位(ゲート電圧)が制御されることにより、ボディ領域63におけるゲート絶縁膜66との界面近傍にチャネルが形成されて、ソース電極71とドレイン電極との間に電流が流れる。
【0089】
また、
図19に示すように、層間絶縁膜68上には、外部との電気的接続に寄与するゲートパッド73と、ゲートパッド73から延びるゲートフィンガー74とが形成されている。
ゲートパッド73は、半導体装置61の一側縁に沿った部分の中央に配置されている。
ゲートフィンガー74は、たとえば、3本設けられ、ゲートパッド73が配置されている一方側とその反対の他方側との間で互いに平行に延びている。各ゲートフィンガー74の一方側の端部は、ゲートパッド73に接続されている。ゲートフィンガー74は、層間絶縁膜68に形成された貫通孔(図示せず)を介して、ゲート電極67と接続されている。
【0090】
ゲートパッド73およびゲートフィンガー74は、ソース電極71に対して間隔を空けて非接触に設けられている。言い換えれば、層間絶縁膜68上において、ソース電極71は、ゲートパッド73およびゲートフィンガー74が形成されていない部分に、ゲートパッド73およびゲートフィンガー74に対して間隔を空けて形成されている。
ゲートパッド73およびゲートフィンガー74は、同じ金属材料からなる。好ましくは、ゲートパッド73およびゲートフィンガー74は、ソース電極71と同じ金属材料、たとえば、Alを主成分として含む金属材料からなる。ソース電極71、ゲートパッド73およびゲートフィンガー74が同じ金属材料からなる場合、層間絶縁膜68の表面全域上にその金属材料からなる膜を形成し、この膜をパターニングすることにより、ソース電極71、ゲートパッド73およびゲートフィンガー74を形成することができる。
【0091】
図21A〜
図21Gは、
図20に示す半導体装置の製造工程を順に示す模式的な断面図である。
半導体装置61の製造工程では、
図21Aに示すように、まず、エピタキシャル成長法により、SiC基板(図示せず)上に、SiCエピタキシャル層62が形成される。次に、1段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層62の表層部に、ボディ領域63を形成するためのP型不純物(たとえば、Al)が選択的に注入(インプラ)される。次いで、多段イオン注入法(たとえば、4段イオン注入法)により、ボディ領域63の表層部に、ソース領域64を形成するためのN型不純物であるPが選択的に注入される。さらに、多段イオン注入法(たとえば、4段イオン注入法)により、ボディ領域63の表層部に、ボディコンタクト領域65を形成するためのP型不純物であるAlが選択的に注入される。その後、高温(たとえば、1750℃)によるアニールが行われ、SiCエピタキシャル層62の表層部に、ボディ領域63、ソース領域64およびボディコンタクト領域65が形成される。
【0092】
次に、
図21Bに示すように、熱酸化法により、SiCエピタキシャル層62の表面に、ゲート絶縁膜66が形成される。
その後、
図21Cに示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法により、ゲート絶縁膜66上に、ポリシリコンが堆積される。次いで、ポリシリコンの堆積層をドープトポリシリコンの堆積層に変化させるため、イオン注入法により、ポリシリコンの堆積層に、B(ボロン)がドーピングされる。そして、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、ドープトポリシリコンの堆積層が選択的に除去され、ゲート絶縁膜66上に、ドープトポリシリコンからなるゲート電極67が形成される。ゲート電極67がパターニングされるまでの過程において、ゲート電極67の表面には、SiO
2からなる自然酸化膜75が生じる。
【0093】
次いで、
図21Dに示すように、CVD法により、SiCエピタキシャル層62上に、層間絶縁膜68が形成される。ゲート電極67の表面上の自然酸化膜75は、層間絶縁膜68と一体化する。その後、フォトリソグラフィにより、層間絶縁膜68上に、レジストパターン76が形成される。レジストパターン76は、層間絶縁膜68におけるコンタクトホール69を形成すべき部分と対向する開口を有している。
【0094】
その後、
図21Eに示すように、レジストパターン76をマスクに用いたエッチングにより、層間絶縁膜68に、コンタクトホール69が形成される。
そして、
図21Fに示すように、スパッタ法により、ソース領域64およびボディコンタクト領域65の表面におけるコンタクトホール69内に臨む部分上(コンタクトホール69の底面上)ならびに層間絶縁膜68の表面上に、TiおよびTiNが順に蒸着されることにより、オーミックメタル70が形成されている。
【0095】
TiおよびTiNの蒸着に引き続いて、
図21Gに示すように、スパッタ法により、オーミックメタル70上に、ソース電極71が形成される。その後、ソース電極71上に、感光性ポリイミドが塗布される。そして、ソース電極71の一部をパッドとして露出させるために、その感光性ポリイミドが選択的に除去された後、感光性ポリイミドのキュアが行われる。これにより、感光性ポリイミドがポリイミド層72となり、
図20に示す半導体装置61が得られる。
【0096】
以上のように、半導体装置61は、SiCエピタキシャル層62と、SiCエピタキシャル層62の表層部に選択的に形成されたソース領域64と、SiCエピタキシャル層62の表層部にソース領域64と隣接して選択的に形成されたボディコンタクト領域65と、ソース領域64およびボディコンタクト領域65上に跨って形成されたオーミックメタル70とを備えている。そして、ボディコンタクト領域65の表層部には、P型不純物であるAlがSiCに対する固溶限以上に含まれている。
【0097】
ボディコンタクト領域65の表層部にP型不純物がSiCに対する固溶限以上となる濃度で含まれていることにより、オーミックメタル70の形成後に熱処理を行わなくても、N型のソース領域64はもちろん、P型のボディコンタクト領域65に対しても、低抵抗なオーミックコンタクトを得ることができる。
この半導体装置61では、第1低抵抗なオーミックコンタクトを得るための熱処理が不要であるため、従来のSiC半導体装置よりも製造に要するコストおよび時間を低減することができる。
【0098】
また、この実施形態では、ボディコンタクト領域65の表面からの深さが500Å〜1000Åの部分に、AlがSiCに対する固溶限以上に含まれ、ボディコンタクト領域65の表面からの深さが1000Å以上の部分には、AlがSiCに対する固溶限未満で含まれている。ボディコンタクト領域65の表面からの深さが1000Å以上の部分にAlが過剰に含まれていても、その過剰なAlがコンタクト抵抗の低減に寄与することはない。したがって、そのような深い部分にまでAlを高濃度にドーピングすることによる無駄が省かれ、SiCの製造に要するコストおよび時間のさらなる低減が図られている。
【0099】
また、ボディコンタクト領域65は、多段イオン注入法により形成される。多段イオン注入法であれば、ボディコンタクト領域65の表面からの深さが50nm〜100nmの部分に、P型不純物をSiCに対する固溶限以上に容易に注入することができる。
また、ソース領域64の表層部におけるN型不純物濃度が1×10
20cm
−3〜5×10
20cm
−3の範囲内に制御されているので、N型のソース領域64に対する低抵抗なオーミックコンタクトを確実に得ることができる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はさらに他の実施形態で実施することもできる。
たとえば、第1および第2実施形態では、トレンチ18が複数形成されている構成を取り上げたが、トレンチ18は、互いに隣り合うソース領域14間に1つ形成されていてもよい。ただし、トレンチ18が複数形成されることにより、チャネル幅をさらに拡大することができる。
【0101】
また、ボディ領域(13,43,63)およびボディコンタクト領域(15,45,65)の形成のためのP型不純物は、Alに限らず、他のIII族原子(Bなど)であってもよい。
また、ソース領域(14,44,64)の形成のためのN型不純物は、Pに限らず、他のV族原子(As(ヒ素)など)であってもよい。
【0102】
さらにまた、オーミックメタル(21,50,70)は、Ti/TiNの積層構造を有しているものに限定されない。たとえば、Ti、TiN、Ni、Al、Ta(タンタル)、TaN(窒化タンタル)、W(タングステン)およびWN(窒化タングステン)の群から選択される1種の材料からなる単層構造を有していてもよいし、その群から選択される複数種の各材料からなる層を積層した積層構造を有していてもよい。
【0103】
また、半導体装置(1,31,41,61)において、各半導体部分の導電型(P型、N型)を反転した構造が採用されてもよい。
また、半導体装置(1,31,41,61)の基体は、SiC基板に限らず、Si(シリコン)基板であってもよい。この場合、Si基板上には、半導体層としてのSiエピタキシャル層が積層される。
【0104】
また、ゲート絶縁膜(16,46,66)は、SiO
2以外の絶縁材料で形成されてもよい。すなわち、本発明は、VDMOSFETに限らず、ゲート絶縁膜の材料としてSiO
2以外の絶縁材料を採用したVDMISFETを備える半導体装置に適用することができる。
さらに、本発明は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)またはSJMOSFET(Super Junction Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を備える半導体装置に適用することもできる。
【実施例】
【0105】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
<実施例1〜12および比較例1>
オン抵抗およびドレインリーク電流の低減効果を証明するために、実施例1〜12および比較例1を以下の通り実施した。
[実施例1]
エピタキシャル成長法により、SiC基板上に、N型不純物濃度が7×10
15cm
−3であるSiCエピタキシャル層を形成した。そして、300keVの注入エネルギーおよび7×10
13cm
−2のドーズ量での1段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層の表層部に、Alをドーピングし、P型領域(ボディ領域)を形成した。
【0106】
これにより、
図22に示す不純物濃度プロファイルを有するP型領域が得られた。すなわち、このP型領域は、SiCエピタキシャル層42の表面から800Å(80nm)以下の部分におけるP型不純物濃度が1×10
18cm
−3以下である不純物濃度プロファイルを有している。
[実施例2]
エピタキシャル成長法により、SiC基板上に、N型不純物濃度が7×10
15cm
−3であるSiCエピタキシャル層を形成した。そして、300keVの注入エネルギーおよび6×10
13cm
−2のドーズ量での1段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層の表層部に、Alをドーピングし、P型領域(ボディ領域)を形成した。
【0107】
これにより、
図23に示す不純物濃度プロファイルを有するP型領域が得られた。すなわち、このP型領域は、SiCエピタキシャル層42の表面から800Å以下の部分におけるP型不純物濃度が1×10
18cm
−3以下である不純物濃度プロファイルを有している。
[実施例3]
エピタキシャル成長法により、SiC基板上に、N型不純物濃度が7×10
15cm
−3であるSiCエピタキシャル層を形成した。そして、300keVの注入エネルギーおよび5×10
13cm
−2のドーズ量での1段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層の表層部に、Alをドーピングし、P型領域(ボディ領域)を形成した。
【0108】
これにより、
図24に示す不純物濃度プロファイルを有するP型領域が得られた。すなわち、このP型領域は、SiCエピタキシャル層42の表面から800Å以下の部分におけるP型不純物濃度が1×10
18cm
−3以下である不純物濃度プロファイルを有している。
[実施例4]
エピタキシャル成長法により、SiC基板上に、N型不純物濃度が7×10
15cm
−3であるSiCエピタキシャル層を形成した。そして、300keVの注入エネルギーおよび4×10
13cm
−2のドーズ量での1段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層の表層部に、Alをドーピングし、P型領域(ボディ領域)を形成した。
【0109】
これにより、
図25に示す不純物濃度プロファイルを有するP型領域が得られた。すなわち、このP型領域は、SiCエピタキシャル層42の表面から800Å以下の部分におけるP型不純物濃度が1×10
18cm
−3以下である不純物濃度プロファイルを有している。
[実施例5]
エピタキシャル成長法により、SiC基板上に、N型不純物濃度が7×10
15cm
−3であるSiCエピタキシャル層を形成した。そして、340keVの注入エネルギーおよび7×10
13cm
−2のドーズ量での1段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層の表層部に、Alをドーピングし、P型領域(ボディ領域)を形成した。
【0110】
これにより、
図26に示す不純物濃度プロファイルを有するP型領域が得られた。すなわち、このP型領域は、SiCエピタキシャル層42の表面から800Å以下の部分におけるP型不純物濃度が1×10
18cm
−3以下である不純物濃度プロファイルを有している。
[実施例6]
エピタキシャル成長法により、SiC基板上に、N型不純物濃度が7×10
15cm
−3であるSiCエピタキシャル層を形成した。そして、340keVの注入エネルギーおよび6×10
13cm
−2のドーズ量での1段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層の表層部に、Alをドーピングし、P型領域(ボディ領域)を形成した。
【0111】
これにより、
図27に示す不純物濃度プロファイルを有するP型領域が得られた。すなわち、このP型領域は、SiCエピタキシャル層42の表面から800Å以下の部分におけるP型不純物濃度が1×10
18cm
−3以下である不純物濃度プロファイルを有している。
[実施例7]
エピタキシャル成長法により、SiC基板上に、N型不純物濃度が7×10
15cm
−3であるSiCエピタキシャル層を形成した。そして、340keVの注入エネルギーおよび5×10
13cm
−2のドーズ量での1段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層の表層部に、Alをドーピングし、P型領域(ボディ領域)を形成した。
【0112】
これにより、
図28に示す不純物濃度プロファイルを有するP型領域が得られた。すなわち、このP型領域は、SiCエピタキシャル層42の表面から800Å以下の部分におけるP型不純物濃度が1×10
18cm
−3以下である不純物濃度プロファイルを有している。
[実施例8]
エピタキシャル成長法により、SiC基板上に、N型不純物濃度が7×10
15cm
−3であるSiCエピタキシャル層を形成した。そして、340keVの注入エネルギーおよび4×10
13cm
−2のドーズ量での1段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層の表層部に、Alをドーピングし、P型領域(ボディ領域)を形成した。
【0113】
これにより、
図29に示す不純物濃度プロファイルを有するP型領域が得られた。すなわち、このP型領域は、SiCエピタキシャル層42の表面から800Å以下の部分におけるP型不純物濃度が1×10
18cm
−3以下である不純物濃度プロファイルを有している。
[実施例9]
エピタキシャル成長法により、SiC基板上に、N型不純物濃度が7×10
15cm
−3であるSiCエピタキシャル層を形成した。そして、380keVの注入エネルギーおよび7×10
13cm
−2のドーズ量での1段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層の表層部に、Alをドーピングし、P型領域(ボディ領域)を形成した。
【0114】
これにより、
図30に示す不純物濃度プロファイルを有するP型領域が得られた。すなわち、このP型領域は、SiCエピタキシャル層42の表面から800Å以下の部分におけるP型不純物濃度が1×10
18cm
−3以下である不純物濃度プロファイルを有している。
[実施例10]
エピタキシャル成長法により、SiC基板上に、N型不純物濃度が7×10
15cm
−3であるSiCエピタキシャル層を形成した。そして、380keVの注入エネルギーおよび6×10
13cm
−2のドーズ量での1段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層の表層部に、Alをドーピングし、P型領域(ボディ領域)を形成した。
【0115】
これにより、
図31に示す不純物濃度プロファイルを有するP型領域が得られた。すなわち、このP型領域は、SiCエピタキシャル層42の表面から800Å以下の部分におけるP型不純物濃度が1×10
18cm
−3以下である不純物濃度プロファイルを有している。
[実施例11]
エピタキシャル成長法により、SiC基板上に、N型不純物濃度が7×10
15cm
−3であるSiCエピタキシャル層を形成した。そして、380keVの注入エネルギーおよび5×10
13cm
−2のドーズ量での1段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層の表層部に、Alをドーピングし、P型領域(ボディ領域)を形成した。
【0116】
これにより、
図32に示す不純物濃度プロファイルを有するP型領域が得られた。すなわち、このP型領域は、SiCエピタキシャル層42の表面から800Å以下の部分におけるP型不純物濃度が1×10
18cm
−3以下である不純物濃度プロファイルを有している。
[実施例12]
エピタキシャル成長法により、SiC基板上に、N型不純物濃度が7×10
15cm
−3であるSiCエピタキシャル層を形成した。そして、380keVの注入エネルギーおよび4×10
13cm
−2のドーズ量での1段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層の表層部に、Alをドーピングし、P型領域(ボディ領域)を形成した。
【0117】
これにより、
図33に示す不純物濃度プロファイルを有するP型領域が得られた。すなわち、このP型領域は、SiCエピタキシャル層42の表面から800Å以下の部分におけるP型不純物濃度が1×10
18cm
−3以下である不純物濃度プロファイルを有している。
[オン抵抗]
実施例1〜12の各構造物を使用して、本発明の実施形態に係る構造(
図15に示す構造)のSiC半導体装置を作成し、各SiC半導体装置におけるMOSFETのオン抵抗を調べた。その結果を、
図34に表形式で示すとともに、
図35にグラフで示す。
【0118】
この結果から、各MOSFETのオン抵抗が0.5Ωよりも低いことが理解される。
[閾値電圧]
実施例1〜12の各構造物を使用して、本発明の実施形態に係る構造(
図16に示す構造)のSiC半導体装置を作成した。そして、各SiC半導体装置において、ソース電極を接地し、ドレイン電極に10Vのドレイン電圧Vdを印加して、1mAのドレイン電流Idが流れるときのMOSFETのゲート電圧(閾値電圧)を調べた。その結果を、
図34に表形式で示すとともに、
図36にグラフで示す。
【0119】
この結果から、各MOSFETの閾値電圧が2.5Vよりも高いことが理解される。
[ドレインリーク電流]
実施例10の構造物を使用して、本発明の実施形態に係る構造(
図16に示す構造)のSiC半導体装置を作成した。そして、SiC半導体装置の温度が25℃および200℃の状態で、ゲート電圧(ゲート−ソース間電圧)Vgsを零に固定したまま、ドレイン電圧(ドレイン−ソース間電圧)Vdsを変化させて、ドレインリーク電流Idを測定した。その結果を、
図37にグラフで示す。
【0120】
この結果から、SiC半導体装置の温度が25℃および200℃のどちらの場合でも、ドレイン電圧Vdsが1000V以下の範囲で、ドレインリーク電流Idが微小であることが理解される。
[比較例1]
実施例10の構造物を使用して、本発明の実施形態に係る構造(
図16に示す構造)と同様の構造であって、N型ポリシリコン(N型不純物としてのP(リン)が1×10
20cm
-3以上の濃度で含まれたN型ポリシリコン)からなるゲート電極を有するSiC半導体装置を作成した。そして、SiC半導体装置の温度が25℃、125℃、150℃、175℃および200℃の各状態で、ゲート電圧(ゲート−ソース間電圧)Vgsを零に固定したまま、ドレイン電圧(ドレイン−ソース間電圧)Vdsを変化させて、ドレインリーク電流Idを測定した。その結果を、
図38にグラフで示す。
【0121】
この結果から、SiC半導体装置の温度が125℃〜200℃の場合には、ドレイン電圧Vdsが微小であっても、比較的大きなドレインリーク電流Idが流れることが理解される。また、SiC半導体装置の温度が25℃の場合であっても、ドレイン電圧Vdsが400Vを超えると、比較的大きなドレインリーク電流Idが流れることが理解される。
そして、
図37に示す結果と
図38に示す結果とを比較することにより、実施例10の構造物を使用したSiC半導体装置では、比較例1のSiC半導体装置と比較して、ドレインリーク電流Idが大幅に低減されていることが理解される。
<実施例13および比較例2〜3>
ボディコンタクト領域に対するオーミックメタルのコンタクト抵抗の低抵抗化を証明するために、実施例1〜12および比較例1を以下の通り実施した。
[実施例13]
エピタキシャル成長法により、SiC基板上に、不純物を含まないSiCエピタキシャル層を形成した。そして、4段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層の表層部に、Alをドーピングし、P
+領域(ボディコンタクト領域)を形成した。各段における注入エネルギー、ドーズ量、Al濃度の極大値(ピーク濃度)は、次のとおりである。
【0122】
1段目
注入エネルギー:180keV
ドーズ量:3×10
14cm
−2
ピーク濃度:2.26×10
19cm
−3
2段目
注入エネルギー:120keV
ドーズ量:4×10
14cm
−2
ピーク濃度:3.15×10
19cm
−3
3段目
注入エネルギー:60keV
ドーズ量:2×10
15cm
−2
ピーク濃度:3.08×10
20cm
−3
4段目
注入エネルギー:30keV
ドーズ量:1×10
15cm
−2
ピーク濃度:2.69×10
20cm
−3
これにより、
図39に示す不純物濃度プロファイルを有するP
+領域が得られた。すなわち、実施例13に係るP
+領域は、その表面からの深さが500Å〜1000Åの部分におけるP型不純物濃度が2×10
20cm
−3〜5×10
20cm
−3であり、表面からの深さが1000Å以上の部分におけるAl濃度が2×10
20cm
−3以下であるボックス型の不純物濃度プロファイルを有している。
【0123】
そして、スパッタ法により、P
+領域の表面に、Ti/TiNの積層構造を有するオーミックメタルを形成した。Ti層の厚さは、250Åであり、TiN層の厚さは、1300Åである。
[比較例2]
実施例13の場合と同様に、エピタキシャル成長法により、SiC基板上に、不純物を含まないSiCエピタキシャル層を形成した。そして、4段イオン注入法により、SiCエピタキシャル層の表層部に、Alをドーピングし、P
+領域(ボディコンタクト領域)を形成した。各段における注入エネルギー、ドーズ量、Al濃度の極大値(ピーク濃度)は、次のとおりである。
【0124】
1段目
注入エネルギー:180keV
ドーズ量:1×10
15cm
−2
ピーク濃度:7.54×10
19cm
−3
2段目
注入エネルギー:120keV ドーズ量:1.3×10
15cm
−2
ピーク濃度:1.02×10
20cm
−3
3段目
注入エネルギー:60keV
ドーズ量:9×10
14cm
−2
ピーク濃度:1.39×10
20cm
−3
4段目
注入エネルギー:30keV
ドーズ量:4×10
14cm
−2
ピーク濃度:1.07×10
20cm
−3
これにより、
図40に示す不純物濃度プロファイルを有するP
+領域が得られた。すなわち、比較例2に係るP
+領域は、その深さ方向の全域において、Al濃度が2×10
20cm
−3以下であるボックス型の不純物濃度プロファイルを有している。
【0125】
そして、スパッタ法により、P
+領域の表面に、Ti/TiNの積層構造を有するオーミックメタルを形成した。Ti層の厚さは、250Åであり、TiN層の厚さは、1300Åである。
[比較例3]
比較例2の場合と同様な条件で、SiCエピタキシャル層の表層部にP
+領域を形成した。そして、スパッタ法により、P
+領域の表面に、Ti/TiNの積層構造を有するオーミックメタルを形成した。Ti層の厚さは、250Åであり、TiN層の厚さは、1300Åである。その後、約1000℃の高温で熱処理(PDA)を行った。
[コンタクト特性]
実施例13および比較例3の構造物において、TLM法により、P
+領域とオーミックメタルとのコンタクト特性を調べた。
【0126】
具体的には、各構造物において、P
+領域上に、4つの第1〜第4のオーミックメタルを、第1のオーミックメタルと第2のオーミックメタルとの間の間隔が10μmであり、第2のオーミックメタルと第3のオーミックメタルとの間の間隔が20μmであり、第3のオーミックメタルと第4のオーミックメタルとの間の間隔が30μmであるように形成した。そして、第1のオーミックメタルと第2のオーミックメタルとの間の電気抵抗、第2のオーミックメタルと第3のオーミックメタルとの間の電気抵抗および第3のオーミックメタルと第4のオーミックメタルとの間の電気抵抗を測定し、それらの電気抵抗の測定結果から、コンタクト抵抗を算出した。
【0127】
実施例13の構造物におけるコンタクト抵抗は、1×10
−4Ω・cm
2〜2×10
−4Ω・cm
2であった。これに対し、比較例3の構造物におけるコンタクト抵抗は、5×10
−3Ω・cm
2であった。この結果、実施例13の構造物では、比較例3の構造物と比較して、コンタクト抵抗の1桁以上の低抵抗化が実現されることが確認された。
[I−V特性]
実施例13および比較例2〜3の構造物において、P
+領域上に、4つの第1〜第4のオーミックメタルを、第1のオーミックメタルと第2のオーミックメタルとの間の間隔が10μmであり、第2のオーミックメタルと第3のオーミックメタルとの間の間隔が20μmであり、第3のオーミックメタルと第4のオーミックメタルとの間の間隔が30μmであるように形成した。そして、第1のオーミックメタルと第2のオーミックメタルとからなる電極対のI−V特性を調べた。その結果を
図41に示す。この結果から、実施例13の構造物では、比較例2〜3の構造物よりも、I−V特性が線形性を示し、オーミック特性が優れていることが確認された。
【0128】
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の精神および範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
また、本発明の各実施形態において表した構成要素は、本発明の範囲で組み合わせることができる。
【0129】
また、この明細書および図面の記載から、抽出される特徴を以下に示す。
(項1)
SiCからなるN型半導体層と、
前記N型半導体層の表層部に選択的に形成されたP型領域と、
前記P型領域の表層部に、P型領域の周縁と間隔を空けて形成されたN型領域と、
前記N型半導体層上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成され、前記P型領域の周縁と前記N型領域との間の部分に対向するゲート電極とを含み、
前記P型領域における前記ゲート絶縁膜の厚さ方向の中央を基準とする深さが100nm以下の部分のP型不純物濃度が、1×10
18cm
−3以下であり、
前記ゲート電極が、P型不純物がドーピングされたポリシリコンからなる、半導体装置。
(項2)
SiCからなるN型半導体層と、
前記N型半導体層の表層部に選択的に形成されたP型領域と、
前記P型領域の表層部に、P型領域の周縁と間隔を空けて形成されたN型領域と、
前記N型半導体層上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成され、前記P型領域の周縁と前記N型領域との間の部分に対向するゲート電極とを含み、
前記P型領域が、300keV以上の注入エネルギーおよび4×10
13cm
−2以上のドーズ量での1段イオン注入法により形成され、
前記ゲート電極が、P型不純物がドーピングされたポリシリコンからなる、半導体装置。
(項3)
前記ゲート電極は、B(ボロン)が5×10
14cm
−2以上、5×10
15cm
−2以下のドーズ量でドーピングされたポリシリコンからなる、項1または2に記載の半導体装置。
(項4)
前記N型半導体層上に形成され、外部との電気的接続に寄与するゲートパッドと、
前記N型半導体層上に形成され、金属材料からなり、前記ゲートパッドおよび前記ゲート電極と電気的に接続されたゲートフィンガーとをさらに含む、項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置。
(項5)
前記ゲートパッドが、前記ゲートフィンガーと同じ材料からなる、項4に記載の半導体装置。
(項6)
SiCからなる半導体層と、
前記半導体層の表層部に選択的に形成されたN型の第1不純物領域と、
前記半導体層の表層部に前記第1不純物領域と隣接し、前記第1不純物領域に囲まれるように選択的に形成されたP型の第2不純物領域と、
前記第1不純物領域および前記第2不純物領域上に跨って形成されたオーミックメタルとを備え、
前記第2不純物領域の表層部には、P型不純物がSiCに対する固溶限以上に含まれている、半導体装置。
(項7)
前記第2不純物領域の表面からの深さが50nm〜100nmの部分に、前記P型不純物がSiCに対する固溶限以上に含まれている、項6に記載の半導体装置。
(項8)
前記第2不純物領域の表面からの深さが100nm以上の部分には、前記P型不純物がSiCに対する固溶限未満で含まれている、項6または7に記載の半導体装置。
(項9)
前記第2不純物領域の表層部には、P型不純物が2×10
20cm
−3より多く含まれている、項6〜8のいずれか一項に記載の半導体装置。
(項10)
前記第2不純物領域が、多段イオン注入法により形成される不純物濃度プロファイルを有している、項6〜9のいずれか一項に記載の半導体装置。
(項11)
前記P型不純物が、Alである、項6〜10のいずれか一項に記載の半導体装置。
(項12)
前記第1不純物領域の表層部におけるN型不純物の濃度が、1×10
20cm
−3〜5×10
20cm
−3の範囲内である、項6〜11のいずれか一項に記載の半導体装置。
(項13)
前記第1不純物領域の表層部におけるN型不純物の濃度が、ボックス型の不純物濃度プロファイルを有している、項12に記載の半導体装置。
(項14)
前記オーミックメタルは、Ti、TiN、Ni、Al、Ta、TaN、WおよびWNの群から選択される1種の材料からなる単層構造、または、前記群から選択される複数種の各材料からなる層を積層した積層構造を有している、項6〜13のいずれか一項に記載の半導体装置。
(項15)
SiCからなる第1導電型の半導体層と、
前記半導体層の表層部に、前記半導体層の厚さ方向と直交する方向に間隔を空けて形成された第2導電型領域と、
各前記第2導電型領域の表層部に、前記第2導電型領域の周縁と間隔を空けて形成された第1導電型の第1不純物領域と、
各前記第2導電型領域の表層部に、前記第1不純物領域に囲まれるように形成された第2導電型の第2不純物領域と、
前記半導体層上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成され、前記第2導電型領域におけるその周縁と前記第1不純物領域との間の部分に対向し、かつ互いに隣り合う2つの前記第1不純物領域の間に跨るゲート電極と、
前記第1不純物領域および前記第2不純物領域上に跨って形成されたオーミックメタルとを含み、
前記第2導電型領域における前記ゲート絶縁膜の厚さ方向の中央を基準とする深さが100nm以下の部分の不純物濃度が、1×10
18cm
−3以下であり、
前記第2不純物領域の表層部には、第2導電型不純物がSiCに対する固溶限以上に含まれており、
前記半導体層には、その表面から掘り下げることにより、互いに隣り合う2つの前記第1不純物領域の間に跨るトレンチが形成され、
前記ゲート絶縁膜により、前記トレンチの内面が被覆され、
前記ゲート電極は、前記半導体層の表面に対向する表面対向部および前記トレンチに埋設された埋設部を有している、半導体装置。
(項16)
SiCからなる第1導電型の半導体層と、
前記半導体層の表層部に選択的に形成された第2導電型領域と、
前記第2導電型領域の表層部に、前記第2導電型領域の周縁と間隔を空けて形成された第1導電型の第1不純物領域と、
前記第2導電型領域の表層部に、前記第1不純物領域に囲まれるように形成された第2導電型の第2不純物領域と、
前記半導体層上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成され、前記第2導電型領域におけるその周縁と前記第1不純物領域との間の部分に対向するゲート電極と、
前記第1不純物領域および前記第2不純物領域上に跨って形成されたオーミックメタルとを含み、
前記第2導電型領域における前記ゲート絶縁膜の厚さ方向の中央を基準とする深さが100nm以下の部分の不純物濃度が、1×10
18cm
−3以下であり、
前記第2不純物領域の表層部には、第2導電型不純物がSiCに対する固溶限以上に含まれている、半導体装置。
【0130】
本出願は、2009年3月25日に日本国特許庁に提出された特願2009−074558号、2009年4月17日に日本国特許庁に提出された特願2009−101321号および2009年6月4日に日本国特許庁に提出された特願2009−134822号に対応しており、これらの出願の全開示はここに引用により組み込まれるものとする。