(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6193445
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】合成樹脂製可とう電線管用パテ脱落防止具
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
H02G3/04 068
H02G3/04 081
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-101051(P2016-101051)
(22)【出願日】2016年5月20日
【審査請求日】2016年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000136686
【氏名又は名称】株式会社ブレスト工業研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(72)【発明者】
【氏名】門脇 潤
(72)【発明者】
【氏名】池田 孝
【審査官】
石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−044517(JP,U)
【文献】
実開昭62−145426(JP,U)
【文献】
実開昭58−15418(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 15/04
H02G 1/14
B60R 16/02
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製可とう管からなる電線管のケーブル取出し口に詰められたパテの脱落を防止するパテ脱落防止具であって、電線管の外側面に形成された波状凸部に係止する固定部と、該固定部から連続してケーブル取出し口に詰められたパテをケーブルごと囲み込む包持体と、該包持体の先端に開口されケーブル取出し口から引き出されたケーブルを通す挿通口とを弾性材にて形成すると共に、固定部から包持体先端の挿通口に至る側面に切欠開口部を形成し、該切欠開口部を強制的に開いてケーブル側面から包持体の内部にパテを収納すると、包持体の弾性回復力にてパテが包持体の内部に包み込まれると共に、固定部の弾性回復力にて波状凸部に固定部が係止するように構成したことを特徴とする合成樹脂製可とう電線管用パテ脱落防止具。
【請求項2】
前記電線管の外側面に形成された波状凸部に係止する係止爪片を固定部の内周面に沿うように複数突設し、該係止爪片にて前記固定部を前記電線管の端部の外周に係止するように構成した請求項1記載の合成樹脂製可とう電線管用パテ脱落防止具。
【請求項3】
前記固定部は前記包持体に向けて窄むテーパー状をなし、基端部側と先端部側とで高さの異なる突起状の係止爪片を形成し、該係止爪片を選択して直径が異なる電線管に前記固定部を適合させるように構成した請求項1記載の合成樹脂製可とう電線管用パテ脱落防止具。
【請求項4】
前記包持体の側面に、前記包持体にて保持した前記パテを確認する確認窓を形成した請求項1記載の合成樹脂製可とう電線管用パテ脱落防止具。
【請求項5】
前記包持体内に保持した前記パテの量が多くなると、前記確認窓からはみ出るように構成した請求項4記載の合成樹脂製可とう電線管用パテ脱落防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PF管・CD管と称する電線管のケーブル取出し口にパテ詰めされたパテの脱落を防止する合成樹脂製可とう電線管用パテ脱落防止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成樹脂製可とう電線管のケーブル取出し口には、防塵や防音の目的でパテが充填される。ところが、時間の経過によるケーブルの垂れ下がりなど、ケーブルが動くことでパテが脱落する虞があった。
【0003】
そこで、ケーブルの動きを防止するために吊りボルトにケーブルを固定し、あるいはパテの脱落を防止するために合成樹脂製可とう電線管の端部に詰めたパテをビニルテープで巻き付けて固定するなどの施工が行われている。
【0004】
一方、自動車等に配置するワイヤハーネスとして使用される可撓管に充填剤を保持する構成が特許文献1に記載されている。この可撓管は、ワイヤハーネスの形状を保持する部位に、硬化性の充填材を可撓管の内部に充填して可撓管の形状を保持するように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-186952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
合成樹脂製可とう電線管の端部に詰めたパテをビニルテープで巻き付けて固定する手段では、ビニルテープの巻き付け作業に多くの手間がかかる。特に、この工事は、電気・通信関係の配線用として各階を貫通するEPS(Electric Pipe Shaft)内で作業するので、暗く狭い環境で行う必要がある。したがって、このような環境において、電線管の端部に詰めたパテをビニルテープで巻き付けるなどの作業は極めて難しい作業になっている。そのため、作業後に電線管の端部からパテが脱落することもあり、工事終了後に再び手直しする必要があった。
【0007】
しかも、施工後の脱落が日常的なことから、施工終了後には施工箇所の全てをチェックしてパテの脱落の有無を確認する必要があった。この確認作業には、簡易作業台付の脚立(重量15Kg)を持ち運んでの作業になっており、パテ施工後における確認作業や不良部分の修正作業など、大掛かりな後工程が必要になっている。
【0008】
また、EPSを貫通するケーブルは、時間の経過や高温等によりケーブルの自重で垂れ下がりパテが外れることも多い。そのため、合成樹脂製可とう電線管の端部から突出しているケーブルを吊りボルトで固定し、ケーブルの垂れ下がりを防止する工事もある。しかしながら、電線管の端部に固定したパテの落下を防止するために、各所に吊りボルトを施工するのは、作業の効率化を著しく妨げる不都合があった。
【0009】
一方、特許文献1のように、特殊な可撓管に充填剤を充填して保持する構成は、一対の充填補助部品相互をボルトやクリップで強固に連結固定してから内部に充填剤を注入するものである。したがって、このような構成では、合成樹脂製可とう電線管の端部にパテを詰めた後で、このパテを固定することはできない。
【0010】
しかも、特殊な可撓管では、一対の充填補助部品相互をボルトやクリップで強固に連結固定した後で、充填材流通口から充填剤を注入する作業になるので、作業工程が極めて多くなる。ところが、合成樹脂製可とう電線管のケーブル取り出し口にパテを固定する作業は、一箇所のオフィスフロアでも約10数箇所もあるので、このような作業工程の多い固定具は全く適していない。
【0011】
EPSを貫通するケーブルを保護する合成樹脂製可とう電線管の端部に詰めたパテの脱落を防止する作業には、片手でも極めて簡単にパテを固定できる作業の容易性と、確実な落下防止効果を備えたパテ脱落防止具が求められている。
【0012】
そこで本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、合成樹脂製可とう電線管のケーブル取出し口に、防塵や防音用のパテが充填された後、これらのパテを極めて容易に固定することができる合成樹脂製可とう電線管用パテ脱落防止具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、合成樹脂製可とう管からなる電線管Qのケーブル取出し口に詰められたパテPの脱落を防止するパテ脱落防止具であって、電線管Qの外側面に形成された波状凸部Q1に係止する固定部1と、該固定部1から連続してケーブル取出し口に詰められたパテPをケーブルRごと囲み込む包持体2と、該包持体2の先端に開口されケーブル取出し口から引き出されたケーブルRを通す挿通口3とを弾性材にて形成すると共に、固定部1から包持体2先端の挿通口3に至る側面に切欠開口部4を形成し、該切欠開口部4を強制的に開いてケーブルR側面から包持体2の内部にパテPを収納すると、包持体2の弾性回復力にてパテPが包持体2の内部に包み込まれると共に、固定部1の弾性回復力にて波状凸部Q1に固定部1が係止するように構成したことにある。
【0014】
第2の手段は、前記電線管Qの外側面に形成された波状凸部Q1に係止する係止爪片5を固定部1の内側面に沿うように複数突設し、該係止爪片5にて前記固定部1を前記電線管Qの端部の外周に係止するように構成したものである。
【0015】
第3の手段において、前記固定部1は前記包持体2に向けて窄むテーパー状をなし、基端部側と先端部側とで高さの異なる突起状の係止爪片5を形成し、該係止爪片5を選択して直径が異なる電線管Qに前記固定部1を適合させるように構成したことにある。
【0016】
第4の手段は、前記包持体2の側面に、前記包持体2にて保持した前記パテPを確認する確認窓6を形成したものである。
【0017】
第5の手段は、前記包持体2内に保持した前記パテPの量が多くなると、前記確認窓6からはみ出るように構成している。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1のごとく、固定部1から包持体2先端の挿通口3に至る側面に切欠開口部4を形成し、該切欠開口部4を強制的に開いてケーブルR側面から包持体2の内部にパテPを収納すると、包持体2の弾性回復力にてパテPが包持体2の内部に包み込まれると共に、固定部1の弾性回復力にて波状凸部Q1に固定部1が係止するように構成したことにより、合成樹脂製可とう電線管のケーブル取出し口に充填されたパテPを極めて容易に固定することができる。
【0019】
したがって、EPSを貫通するケーブルを保護する合成樹脂製可とう電線管の端部に詰めたパテを片手でも簡単に固定でき、固定後は、固定部1と包持体2とが長期間パテを保持するので、確実な落下防止効果が得られる。この結果、パテの落下を防止するために、各所に吊りボルトを施工する必要はなくなった。また従来のように、パテ施工後における簡易作業台付の脚立を持ち運んだ確認作業や修正作業などの大掛かりな後工程の必要もない。
【0020】
請求項2のように、電線管Qの外側面に形成された波状凸部Q1に係止する係止爪片5を固定部1の内側面に沿うように複数突設し、該係止爪片5にて固定部1を電線管Qの端部の外周に係止するように構成したことで、電線管Qの波状凸部Q1を利用して固定部1を簡単に固定することができる。
【0021】
請求項3のごとく、固定部1は包持体2に向けて窄むテーパー状をなし、基端部側と先端部側とで高さの異なる突起状の係止爪片5を形成し、該係止爪片5を選択して直径が異なる電線管Qに固定部1を適合させるように構成しているので、1個の固定部1で複数の電線管Qに固定することが可能になる。
【0022】
請求項4のように、包持体2の側面に、包持体2にて保持したパテPを確認する確認窓6を形成したことで、施工後において、ケーブル取出し口にパテPが詰められているか否かを目視で簡単に確認することができる。
【0023】
請求項5のごとく、包持体2内に保持したパテPの量が多くなると、確認窓6からはみ出るように構成しているので、この確認窓6がパテPの保持力を更に高めることができる。しかも、ケーブル取出し口に詰められたパテPの量が仮に多くなっている場合でも、包持体2を強く握り締めることで、余分なパテPを確認窓6押し出して、固定部1を係止させることができる。この結果、片手での作業効率を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明パテ脱落防止具は、PF管・CD管と称する合成樹脂製可とう管からなる電線管QからケーブルRを取り出す開口部に詰められたパテPの脱落を防止するものである(
図1参照)。
【0026】
本発明の主な構成として、固定部1、包持体2、挿通口3、切欠開口部4、係止爪片5、確認窓6を備えている(
図2参照)。これらの各部は、例えば難燃性ポリプロピレンなど、弾性のある合成樹脂材等で一体に形成されている。
【0027】
固定部1は、電線管Qの端部に固定する略筒状の部位で、固定部1の内側面には、電線管Qの外側面に形成された波状凸部Q1に係止する係止爪片5を設けている(
図4参照)。係止爪片5は、固定部1の内部に複数突設すると共に、内周壁に沿うように複数配置したものである(
図5参照)。
【0028】
この係止爪片5は、電線管Qの外側面に形成された波状凸部Q1に係止する部位で、この係止爪片5が電線管Q端部の波状凸部Q1の間に係合することで、固定部1を電線管Qの端部に固定する。図示の係止爪片5は、包持体2に向けて窄むテーパーを有する筒状の固定部1内面に突設している(
図4参照)。そして、基端部側と先端部側とで高さの異なる突起状の係止爪片5を形成し、この係止爪片5を選択して直径が異なる電線管Qに固定部1を適合させるように構成している(
図5参照)。
【0029】
すなわち、径の太い電線管Qに係止する大径係止爪片5Aを固定部1の基端部がわに突設し、径の細い電線管Qに係止する小径係止爪片5Bを固定部1の先端部がわに突設している(
図4参照)。そして、大径係止爪片5Aが波状凸部Q1に係止すると、この大径係止爪片5Aの先が包持体2となる(
図6参照)。また、小径係止爪片5Bが波状凸部Q1に係止すると、この小径係止爪片5Bの先でパテPを保持するものである(
図7参照)。更に、固定部1の径を変えたパテ脱落防止具を複数形成すると、大径係止爪片5Aと小径係止爪片5Bとで固定可能になる電線管Qの径の種類を、より多くすることができる。
【0030】
包持体2は、固定部1から連続している部位で、ケーブル取出し口に詰められたパテPをケーブルRごと囲み込むように形成されている(
図1参照)。図示の包持体2は、側面に確認窓6を形成している。この確認窓6は、包持体2にて保持したパテPを確認する開口部位で、ケーブル取出し口に装着した包持体2内部にパテPが詰められているか否かを確認することができる。
【0031】
また、包持体2内に保持したパテPが確認窓6からはみ出るように構成しているので、この確認窓6がパテPの保持力を更に高めることができる。しかも、ケーブル取出し口に詰められたパテPの量が仮に多くなっている場合には、固定部1の弾性回復力にて波状凸部Q1に固定部1が係止できなくなるおそれもある。この場合でも、包持体2を強く握り締めることで、余分なパテPを確認窓6押し出して固定部1を係止させることができる。
【0032】
包持体2の先端には、挿通口3を形成してあり、ケーブル取出し口から引き出されたケーブルRをこの挿通口3に通している。そして、固定部1から包持体2先端の挿通口3に至る側面に切欠開口部4が形成されている(
図2参照)。本発明落下防止具を装着する場合、この切欠開口部4を開いてケーブル取出し口に固定部1を固定する。
【0033】
このとき、切欠開口部4を強制的に開いてケーブルR側面から包持体2の内部にパテPを収納して手を離すと、切欠開口部4が弾性回復力によって自然に閉じた状態になる(
図8参照)。そうすると、包持体2の弾性回復力にてパテPが包持体2の内部に包み込まれると共に、固定部1の弾性回復力にて波状凸部Q1に固定部1が係止するものである。図示例では、固定部1の基端部に補強帯部1Aを形成し、固定部1の固定力を高めている(
図6、
図7参照)。
【0034】
尚、本発明の構成は図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での設計変更は自由である。
【符号の説明】
【0035】
P パテ
Q 電線管
Q1 波状凸部
R ケーブル
1 固定部
1A 補強帯部
2 包持体
3 挿通口
4 切欠開口部
5 係止爪片
5A 大径係止爪片
5B 小径係止爪片
6 確認窓
【要約】
【課題】合成樹脂製可とう管からなる電線管のケーブル取出し口にパテ詰めされたパテの脱落を防止する合成樹脂製可とう電線管用パテ脱落防止具を提供する。
【解決手段】電線管Qの端部に取付ける固定部1を設ける。ケーブル取出し口に詰められたパテPを囲み込む包持体2を設ける。包持体2の先端に挿通口3を形成する。固定部1から包持体2先端の挿通口3に至る側面に切欠開口部4を形成する。切欠開口部4を開いてケーブル取出し口に固定部1を固定する。
パテPが包持体2の内部に保持されるように構成する。
【選択図】
図1