特許第6193476号(P6193476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6193476流動床反応器および粒状ポリシリコンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193476
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】流動床反応器および粒状ポリシリコンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/03 20060101AFI20170828BHJP
   C23C 16/24 20060101ALI20170828BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20170828BHJP
   B01J 8/24 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   C01B33/03
   C23C16/24
   C23C16/52
   B01J8/24 321
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-510986(P2016-510986)
(86)(22)【出願日】2014年4月15日
(65)【公表番号】特表2016-522778(P2016-522778A)
(43)【公表日】2016年8月4日
(86)【国際出願番号】EP2014057655
(87)【国際公開番号】WO2014177377
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2015年12月28日
(31)【優先権主張番号】102013208071.9
(32)【優先日】2013年5月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベックエッサー,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ヘルライン,ハラルト
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−515673(JP,A)
【文献】 特開2012−046412(JP,A)
【文献】 特表平11−510560(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/153181(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 33/193
B01J 8/24
C23C 16/24
C23C 16/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱装置(5)を介して850から1100℃の温度まで加熱された流動床内の水素ガス流によるシリコン種粒子の流動化、少なくとも1つの反応ガスノズル(20)によるシリコン含有反応ガスとしてのトリクロロシランの添加、ここで、該少なくとも1つの反応ガスノズル(20)の出口における局所ガス速度は0.5から200m/秒であり、およびシリコン種粒子上へのシリコンの蒸着を含む、流動床反応器内で粒状ポリシリコンを製造する方法であって、
反応器の断面積に対して標準化された各場合において、トリクロロシランの特定の質量流は1600から5500kg/(時×m)であり、特定の水素体積流は800から4000Nm(STP)/(時×m)であり、流動床の特定の床重量は800から2000kg/mであり、特定の種粒子測定速度は8から25kg/(時×m)であり、ならびに特定の反応器火力は800から3000kW/mであり、
トリクロロシランの質量流、水素体積流および反応器火力は、前記少なくとも1つの反応ガスノズル(20)のノズル開口の周りの軸対称領域の少なくとも56%において、
− 反応ガス濃度が10から50モル%の反応ガスの最大濃度の75%より高く、
− 流動床の温度が、850から1100℃の最大流動床温度の95%より高く、および
− 固体濃度が、55から90体積%の流動床の最大固体濃度の85%より高くなるように選択されることを特徴とし、
ノズル開口の周りの軸対称領域が、噴出領域における等値線の決定、すなわち
反応ガスの最大濃度の75%に等しい反応ガス濃度L
噴出領域の外側の流動床温度の95%に等しい温度L
流動床の縁の固体濃度の85%に等しい固体濃度L1−ε
噴出領域における等値線の表示、ここでノズル開口からの軸方向間隔がy方向においてプロットされ、ノズル開口からの半径方向間隔がx方向においてプロットされ、ここで間隔xは2つの隣接する反応ガスノズル(20)の間の間隔であり;
半径方向間隔=0の線での固体濃度L1−εと温度Lに関する等値線の交点の各点からのノズル開口の最小軸間隔hの決定、ここで、反応器壁と最も近く離間された反応ガスノズル(20)との間の間隔yが、1.5r<y<2.5rの関係を満たし;
軸対称領域の最大半径rを、軸方向間隔=2hの線と等値線Lとの交点の点からのノズル開口の半径方向間隔として規定し;
最大軸対称領域=r*2h
によって決定される、
方法。
【請求項2】
複数の反応ガスノズル(20)が存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各場合において2つの隣接する反応ガスノズル(20)の間の間隔xが、次の関係:2r<x<3.2rを満たす、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
反応ガスの最大濃度の75%に等しい反応ガス濃度L、噴出領域の外側の流動床温度の95%に等しい温度L、および流動床の縁の固体濃度の85%に等しい固体濃度L1−εの等値線が、水素ガス流の代わりに流動床中の窒素を含むガス流によってシリコン粒子を流動化し、少なくとも1つのノズルによって、トリクロロシランを添加する代わりに窒素およびトレーサーガスとしてのヘリウムを含むガス混合物を添加し、これが測定中の反応ガスの広がりを特徴付け、少なくとも1つの反応ガスノズル(20)の軸対称領域内の固体濃度、トレーサーガス濃度および温度分布を、反応器内部に据付けられた測定プローブによって測定することによって決定され、軸対称領域の決定後、粒状ポリシリコンが生成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
蒸着によってその直径が成長した粒子が反応器から取り除かれ、新たなシリコン粒子が連続的に添加される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
粒状ポリシリコンを有する流動床用の内部反応器管(2)および反応器底部を有するコンテナ(1)と、内部反応器管(2)内で流動床を加熱するための加熱装置(5)と、流動化ガスを供給するための少なくとも1つの底部ガスノズル(19)と、反応ガスを供給するための少なくとも1つの反応ガスノズル(20)と、反応器オフガスを除去するための装置(9)と、ガスクロマトグラフ(10)が中に置かれたオフガス導管と、流動床の温度を決定するための高温計(18)と、シリコン粒子を供給するための供給装置(11)と、ならびに粒状ポリシリコンのための抜き取り導管(14)とを備え、反応器壁と最も近く離間された反応ガスノズル(20)との間の間隔yが1.5r<y<2.5rの関係を満たし、ここで、rはノズル開口の周囲の軸対称領域の最大半径であり、
ここで、rが、噴出領域における等値線の決定、すなわち
反応ガスの最大濃度の75%に等しい反応ガス濃度L
噴出領域の外側の流動床温度の95%に等しい温度L
流動床の縁の固体濃度の85%に等しい固体濃度L1−ε
噴出領域における等値線の表示、ここでノズル開口からの軸方向間隔がy方向においてプロットされ、ノズル開口からの半径方向間隔がx方向においてプロットされ;
半径方向間隔=0の線での固体濃度L1−εと温度Lに関する等値線の交点の各点からのノズル開口の最小軸間隔hの決定;
軸対称領域の最大半径rを、軸方向間隔=2hの線と等値線Lとの交点の点からのノズル開口の半径方向間隔として規定し決定される、
粒状ポリシリコンを製造するための流動床反応器。
【請求項7】
流動床反応器が、複数の反応ガスノズル(20)を備え、2つの隣接する反応ガスノズル(20)の間隔xは次の関係:2r<x<3.2rを満たす、請求項6に記載の流動床反応器。
【請求項8】
制御部(16)が、ガスクロマトグラフ(10)と供給装置(11)との間に位置する、請求項6または請求項7に記載の流動床反応器。
【請求項9】
制御部(17)が、ガスクロマトグラフ(10)と加熱装置(5)との間に位置する、請求項6から8のいずれか一項に記載の流動床反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床反応器および粒状ポリシリコンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコンの顆粒、すなわち、略してポリシリコン顆粒は、シーメンス法で製造されるポリシリコンの代替手段である。シーメンス法におけるポリシリコンは円筒状のシリコン棒として得られ、これは、さらなる処理の前に、時間および費用のかかる方法でチップポリと呼ばれるものに粉砕しなければならず、場合により再度浄化しなければならないのに対し、ポリシリコン顆粒はバルク材料特性を有し、例えば、太陽光発電およびエレクトロニクス産業用の単結晶製造のための原料として直接使用できる。
【0003】
ポリシリコン顆粒は流動床反応器で製造される。これは、加熱装置によって高温に加熱された流動床におけるガスの流れによってシリコン粒子を流動化して達成される。シリコン含有反応ガスを添加することにより、熱分解反応が高温の粒子表面で起こる。この方法では、元素シリコンがシリコン粒子上に蒸着され、個々の粒子の直径が成長する。成長した粒子を定期的に取り除き、より小さい粒子をシード粒子(本明細書の以降の記載で「シード」と名付けた)として添加することを介して、この方法はすべての関連する利点をもって連続的に操作することができる。シリコン含有反応ガスとしては、シリコン−ハロゲン化合物(例えば、クロロシランまたはブロモシラン)、モノシラン(SiH)、およびこれらのガスと水素との混合物が記載される。この目的のためのこのような蒸着方法および装置は、例えば、US4786477Aから知られている。
【0004】
US2008299291A1は、流動床反応器およびポリシリコン顆粒の製造方法を記載する。反応器は二つの区域に分割されている。第一区域はシリコンを含まない底部ガスを使用し弱く流動化される。反応ガスは後続の反応区域に注入される。この配置は、追加の垂直二次ガスの注入を有する気泡形成流動床と呼ばれる。反応ガスノズルの上には、局所反応ガス噴出口が生じ、その内部ではシリコン含有ガスが890と1400℃の間の温度でシード粒子上に蒸着される。
【0005】
反応ガス速度に対するある比で底部ガス速度を設定することは製品の品質と目標生成物であるポリシリコン顆粒の収率を最大にするためには決定的に重要であることが開示されている。
【0006】
速度比に加えて、反応剤ガスの質量流、温度、粒子サイズおよび反応区域の高さもまた最適に設定されなければならない。この関連で気泡形成は重要なパラメータである。また、ガス噴出口の最適な開発のため、お互いのノズル間隔および壁からのノズルの間隔の明確に定義された幾何学的配置が選択されなければならない。ノズル間の間隔は、ノズル間隔とノズル直径(流動床へのガスの出口の位置におけるノズルの内径)の比が7.5よりも大きくなるように、選択されるべきである。
【0007】
望ましくない副生成物は、均質な気相蒸着からのシリコンダスト、摩耗および壁堆積からのシリコンダストである。
【0008】
ポリシリコン生成物において確立された製品の品質、特に、塩素含有量は流動床反応器におけるプロセス条件に依存することが知られている。
【0009】
US6007869は6から47ppmwの塩素含有量を有するポリシリコン顆粒を請求する。塩素含有量が低いために、Cz−引き上げの間に悪影響、例えば、不十分な単結晶品質、スプレー効果、および腐食性ガスの形成が回避される。ポリシリコン顆粒を製造するには、900℃より高い反応ガス温度、および1000℃より高い粒子温度が選択されなければならない。
【0010】
US5037503は、15ppmw(トリクロロシランを用いた蒸着)未満の塩素含有量、または7.5ppmw(シランを用いた蒸着)の水含有量を有するポリシリコン顆粒を用いるシリコン単結晶の製造を開示する。このようなポリシリコン顆粒を使用する場合は、スプレー効果は結晶引上げ中に発生しない。
【0011】
US2012230903Alは、反応器の反応室へのガス分配のためのガス分配器を有し、第1のガス供給減、第2のガス供給源および反応室との間の流体連通を確保する複数の分配器開口を備え、分配器開口の各々が少なくとも1つの中央開口および1つの分散開口を有し、分散開口は第2のガス供給減ではなく、第1のガス供給減とのみ流体連通している流動床反応器を開示する。反応器壁上のシリコンの蒸着は記載された反応器によって回避可能であると言われる。
【0012】
US7927984B2では、下部が円錐形である流動床反応器が開示され、これは平面図の分配器プレートが反応ガスを供給するための中央のノズル開口に分割されている点で区別される。さらに、中央ノズルの周囲には、反応器へのエッチングガスを測定するさらなるノズルが配置される。複数の反応ガスノズルが存在し得、反応ガスノズルは必ずしも中央に配置する必要はないことが記載される。
【0013】
US2012269686A1は、ガス流路を含むベースプレートを有し、複数のガスノズルがベースプレート上に均一に分配され、ベースプレートは複数の領域にさらに分割され、各領域で各場合に、同じ数のガスノズルが存在する流動床反応器を開示する。領域の数は、ガス流路の数に対応することができる。
【0014】
これらの先行技術からは、様々なパラメータが、製品品質の点で改善されたポリシリコン顆粒の製造方法に関して最適化されなければならないことが知られている。流動床反応器の反応区域において最適な反応条件を達成すること、およびその条件を蒸着法の間に安定な方式で維持することが望ましい。
【0015】
この関連で、先行技術からは、反応ノズルおよび流動化ノズルの幾何学的配置が、ガス噴出口および媒体流および反応器に供給されるエネルギーを最適化する役割を果たすことが知られている。
【0016】
高い反応ガス濃度、高い固体濃度および反応区域における高温が同時に存在するべきである。
【0017】
さらなる最適化のためには、インサイチュの測定による反応区域内のパラメータおよびそれらの重ね合わせを知ることが本当に必要であろう。残念ながら、ポリシリコン顆粒の蒸着のための従来の流動床反応器は、対応するパラメータを度量衡学的に決定する可能性を有さない。これは、必要な測定機器が反応ガス混合物に耐えられないという事実に起因する。第二に、内部と接触する顆粒粒子の製品品質が損なわれるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第4786477号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/299291号明細書
【特許文献3】米国特許第6007869号明細書
【特許文献4】米国特許第5037503号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2012/230903号明細書
【特許文献6】米国特許第7927984号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2012/269686号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は上述された問題から生じた。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的は、加熱装置を介して850から1100℃の温度に加熱された流動床内のガス流によるシリコン粒子の流動化、少なくとも1つのノズルによるシリコン含有反応ガスの添加、およびシリコン粒子上へのシリコンの蒸着を含む、流動床反応器内で粒状ポリシリコンを製造する方法であって、前記少なくとも1つのノズルのノズル開口の周りの軸対称領域の少なくとも56%において、
− 反応ガス濃度は反応ガスの最大濃度の75%より高く(10から50モル%)、
− 流動床の温度は、前記軸対称領域の外側の流動床温度の95%より高く(850から1100℃)、および
− 固体濃度は、流動床の縁の固体濃度の85%より高い(55から90体積%)、
ことを特徴とする前記方法により達成される。
【0021】
前記目的はまた、粒状ポリシリコンを有する流動床用の内部反応器管(2)および反応器底部を有するコンテナ(1)と、内部反応器管(2)内で流動床を加熱するための加熱装置(5)と、流動化ガスを供給するための少なくとも1つの底部ガスノズル(19)および反応ガスを供給するための少なくとも1つの反応ガスノズル(20)と、反応器オフガスを除去するための装置(9)と、ガスクロマトグラフ(10)が中に配置されたオフガス導管と、流動床の温度を決定するための高温計(18)と、シリコン粒子を供給するための供給装置(11)と、粒状ポリシリコンのための抜き取り導管(14)とを備え、反応器壁と最も近く離間された反応ガスノズル(20)との間の間隔yが1.5r<y<2.5rの関係を満たし、ここでrはノズル開口の周囲の軸対称領域の最大半径である、粒状ポリシリコンを製造するための流動床反応器によって達成される。
【0022】
好ましくは、流動床反応器は複数の反応ガスノズル(20)を備え、2つの隣接する反応ガスノズル(20)の間の間隔xは次の関係:2r<x<3.2rを満たす。
【0023】
好ましくは、制御部(16)がガスクロマトグラフ(10)と供給装置(11)との間に置かれる。
【0024】
制御部(17)がガスクロマトグラフ(10)と加熱装置(5)との間に置かれる場合も同様に好ましい。ノズル開口周囲の軸対称領域は、床重量に依存する反応区域の高さおよび反応器の直径に起因し、このため反応器ごとに異なる。反応器の中央にたった1つの中央ノズルがある場合、半径方向の軸対称領域の最大範囲は、反応器の直径により与えられる。軸方向において、この範囲は反応区域の高さによって与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明との関連で好ましく使用される流動床反応器のスケッチを示す。
図2】例として、1つの反応ガスノズルのみが存在する場合の実験データポイントからの等値線の構造を示す。
図3】実施例の噴出領域内の関係及び定義を示す。
図4】比較例の噴出領域内の関係及び定義を示す。
図5】別の比較例の噴出領域内の関係及び定義を示す。
図6】さらに別の比較例の噴出領域内の関係及び定義を示す。
図7】実施例の噴出領域内の関係及び定義を示す。
図8】ベースプレートの好ましい実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下は、軸対称領域を各反応器に対し決定することができる方法を詳しく説明している。
【0027】
しかし、最初に、本明細書で使用されるいくつかの用語を定義する。
【0028】
床(ベッド)は、一般的に流動床反応器における粒子の床を記載する。
【0029】
固定床は、動いていない流動床反応器における粒子の床を記載する。
【0030】
流動床または流動相は、流動床反応器における粒子の床を記載し、該床が流動化される。
【0031】
床の重量は、流動床内で流動化された粒子の集団の質量を記載する。
【0032】
床の高さは、流動化ノズルから、流動床上の固体を含まないフリーボード(freeboard)の開始場所までの流動床の軸方向の長さを記載する。
【0033】
好ましくは、流動床反応器は複数の反応ガスノズルを含み、2つの隣接する反応ガスノズルの間の間隔xは、2r<x<3.2rの関係を満たし、ここで、rはノズル開口の周囲の軸対称領域の最大半径である。
【0034】
好ましくは、反応器壁と、最も近く離間された反応ガスノズルの間の間隔yは、次の関係:1.5r<y<2.5rを満たす。
【0035】
好ましくは、反応ガスの最大濃度の75%に等しい反応ガス濃度、軸対称領域の外側の流動床温度の95%に等しい温度、および流動床の縁の固体濃度の85%に等しい固体濃度の等値線は、流動床中の、窒素を含むガス流によってシリコン粒子を流動化し、少なくとも1つのノズルによって窒素およびトレーサーガス、好ましくはヘリウムを含むガス混合物を添加し、少なくとも1つのノズルの軸対称領域内の固体濃度、トレーサーガス濃度および温度分布を、反応器内部に据付けられた測定プローブによって測定することによって決定される。
【0036】
本発明は、反応性ガスのない流動床反応器内で上記の測定を実行することができるという事実に基づいている。この目的のために、同じガス速度が実際の蒸着方法と同様に設定される。
【0037】
反応ガス濃度分布についての研究がトレーサーガスを用いて行われる。
【0038】
また、温度および固体濃度の測定が行われる。
【0039】
対応する測定方法が利用可能であり、詳細を後述する。
【0040】
測定結果から、最適な製造方法をもたらすパラメータ(体積測定流底部ガスおよび反応ガス、反応器の火力)の制御された変数が得られる。
【0041】
3つのパラメータ、すなわち、反応区域内の反応ガス濃度、固体濃度および温度のすべてが最大可能値を取るとは限らない領域では、望まれない副生成物、例えば、均質シリコンダストが生じる。
【0042】
また、測定結果に基づいて、ノズルの正確に規定された幾何学的な配置およびベースプレートの設計によってガスの供給を最適化することができる。結果は最適なベースプレートの設計に直接影響を及ぼす。
【0043】
流動化との相互作用において、最適な熱伝達のための反応器ヒーターの理想的な配置を決定することができる。
【0044】
決定的な利点として、前記方法および装置によって、追加の垂直二次ガス注入を有する気泡形成流動床内でポリシリコン顆粒を蒸着するための流動床反応器を製造するためのベースプレート配置の最適な設計が可能になる。
【0045】
得られた結果から、規定された製品パラメータを達成するために、当業者は、ノズルを介して反応器の反応室に注入されるガスの速度、反応器ヒーターの温度分布、および固体の分布を最適に設定することができる。
【0046】
以下に図を参照して本発明をさらに説明する。
【0047】
本発明との関連で、ポリシリコン顆粒は流動床法によって調製される。
【0048】
図1は、本発明との関連で好ましく使用される流動床反応器のスケッチを示す。
【0049】
流動床反応器は、コンテナ1からなり、コンテナには内部反応器管2が挿入されている。
【0050】
中間空間3が、反応器の内壁と内部管の外壁との間に位置する。
【0051】
ポリシリコン顆粒を有する流動床4が反応器管の内部に位置する。
【0052】
流動床は、加熱装置5によって加熱される。
【0053】
流動化ガス7および反応ガスの混合物6が反応器に供給ガスとして供給される。
【0054】
この場合、ガス供給物はノズルを介して目標とする方式で進む。
【0055】
流動化ガス7は、底部ガスノズル19を介して供給され、反応ガス混合物は二次ガスノズル(反応ガスノズル)20と呼ばれるものを介して供給される。
【0056】
二次ガスノズルの高さは、底部ガスノズルの高さとは異なっていてもよい。
【0057】
反応器内で、ノズルの配置を介して、気泡形成流動床が追加の垂直二次ガス注入によって形成される。
【0058】
反応器の頂部8では、反応器オフガス9が引き出される。
【0059】
オフガス導管内には、オンライン分析のためのガスクロマトグラフ10が位置する。
【0060】
流動床の温度を測定する高温計18が反応器ヘッド8に装着されている。
【0061】
シード12がシード供給装置11を介して反応器の頂部で 反応器に供給される。
【0062】
ポリシリコン顆粒生成物13が反応器底部15で引き出し導管14を介して引き出される。
【0063】
ガスクロマトグラフ10とシード供給装置との間には、制御部16がある。
【0064】
ガスクロマトグラフと反応器ヒーターとの間にはさらなる制御部17がある。
【0065】
流動床反応器内でのポリシリコン顆粒の製造方法であって、加熱装置によって加熱された流動床内のガス流によるシリコンシード粒子の流動化を含み、シリコン含有反応ガスの添加により、熱分解で元素シリコンを高温のシード粒子表面に蒸着させて、それによりポリシリコン顆粒が形成される前記方法は、蒸着によってその直径が成長した粒子を反応器から取り除き、新たなシード粒子を添加することによって連続的に操作できる。
【0066】
反応区域内の流動床の温度は、好ましくは850℃から1100℃であり、特に好ましくは900℃から1050℃であり、非常に特に好ましくは920℃から970℃である。
【0067】
好ましくは、水素がシード粒子の流動化に用いられる。
【0068】
反応ガスは、1つ以上のノズルを介して流動床に注入される。
【0069】
ノズルの出口における局所ガス速度は、好ましくは0.5から200m/秒である。
【0070】
シリコン含有反応ガスの濃度は、流動床を流れる全ガス量に基づいて、好ましくは10モル%から50モル%であり、特に好ましくは15モル%から40モル%である。
【0071】
反応ガスノズル内のシリコン含有反応ガスの濃度は、反応ガスノズルを流れる全ガス量に基づいて、好ましくは20モル%から80モル%、特に好ましくは30モル%から60モル%である。
【0072】
反応器の圧力は、0から7バールゲージ、好ましく0.5から4.5バールゲージに及ぶ。
【0073】
例えば、400mmの直径を有する反応器の場合、トリクロロシランの質量流は、好ましくは、200から400kg/時である。
【0074】
水素体積流は、好ましくは100から300m(STR)/時である。
【0075】
より大きな反応器に対しては、より多量のTCSおよびHが好ましい。
【0076】
いくつかのプロセスパラメータが、理想的には、反応器のサイズに応じて選択されることは当業者には明らかである。また、反応器火力、シード粒子の測定速度および床重量は、より大きい反応器の場合、例えば、800mmの直径を有する反応器の場合、前述の値よりも大きいことが好ましい。
【0077】
このことを明らかに説明するために、本発明との関連で記載された方法が有効である、反応器の断面積に対して標準化された操作データの範囲を以下に要約する。
【0078】
トリクロロシランの特定の質量流は、好ましくは、1600から5500kg/(時×m)である。
【0079】
特定の水素体積流は、好ましくは、800から4000m(STP)/(時×m)である。
【0080】
特定の床重量は、好ましくは800から2000kg/mである。
【0081】
特定のシード粒子測定速度は、好ましくは、8から25kg/(時×m)である。
【0082】
特定の反応器火力は、好ましくは800から3000kW/mである。
【0083】
シード粒子の平均粒径は、好ましくは、少なくとも400μmである。
【0084】
ポリシリコン顆粒は150から10000μmの粒径を有し、粒径分布の質量−特定中央値は850から2000μmである。
【0085】
流動床内の反応ガスの滞留時間は、好ましくは0.1から10秒、特に好ましくは0.2から5秒である。
【実施例】
【0086】
測定方法
図1に記載した反応器を用いて、固体濃度、トレーサーガス濃度、および温度分布を決定するための測定を実行することができるためには、反応器は、ポリシリコンの蒸着に通常使用される反応性ガスではなく、窒素を用いて操作される。あるいは、十分な反応器パージがその後に行われるならば、装置はろ過された空気を使用して操作することもできる。
【0087】
測定は、侵襲的な測定プローブを用いて行われる。この目的のために、蒸着法の間に使用される反応器部分は、特別な反応器部分で置き換えられる。
【0088】
この方法では、種々のプローブが鋼パイプ内に留められており、それらはシステム内で調整ユニットによって水平方向および垂直方向において移動される。
【0089】
このようにして、噴出口の二次元または三次元プロファイルを記録することができる。これらの研究との関連で、二次元表現を使用することが好ましい。侵襲的方法は、二相流に影響を与え、このため条件付きで使用されなければならない。流れがプローブの完全に下に生じ、さらに下に位置するプローブによって偏向されないことを確保するように注意しなければならない。
【0090】
噴出領域で、実験点のグリッドが記録される。グリッドは、直角表面を通って伸長される。この表面では、反応器の半径は水平面のベクトルである。垂直方向において、この表面は、反応器の軸のベクトルにより規定される。
【0091】
トレーサーガス測定
トレーサーガスとして、測定における反応ガスの発散を特徴付けるヘリウムが使用される。
【0092】
ヘリウム濃度を決定するために、混合物が毛細管プローブを介して反応室から引き抜かれる。
【0093】
次いで、ヘリウム濃度が質量分析計を使用して決定される。
【0094】
流動床の断面にわたってヘリウムの分布を決定することができるために、ガスが、測定プローブを用いて反応器壁と反応器の中心との間の半径方向の複数の位置で引き抜かれ、質量分析計で分析される。
【0095】
各測定位置について、測定された強度cは平均断面強度cに関係する。
【0096】
この場合、断面は同心環状面にさらに分割される。
【0097】
評価のために、面積−ノルムヘリウム濃度C/Cが使用される。
【0098】
温度測定
温度測定のために、金属管に適合されたNiCr/Niの熱電対が用いられる。
【0099】
評価のために、それぞれの位置で測定された温度と、噴出口の外側の流動床の温度(最高温度Tmaxと準等価である)との比の無次元プロットが使用される(T/Tmax)。温度比が形成されると、ケルビンの絶対温度スケールが使用される。
【0100】
固体濃度測定
反応器中の固体濃度分布は容量性測定プローブを用いて決定される。
【0101】
容量測定は種々の相の誘電特性に基づく。それぞれの相の画分を決定するために、規定された体積の容量が測定される。
【0102】
流体相の誘電率は、典型的には、測定された誘電性から、測定体積内の体積分率を決定することを可能にする個体の誘電率とは異なる。
【0103】
固体の体積分率、略すると固体濃度は、(1−ε)によって表され、ここでεは多孔率である。
【0104】
測定の開始前に、容量測定プローブを調整しなければならない。
【0105】
評価のために、無次元表現が選択される。
【0106】
規定された位置での測定された個体濃度(1−ε)と、流動床の縁での個体濃度(1−ε)との比が形成される。
【0107】
測定結果の評価
最適な反応を発見するために、確立されるべきガス噴出口の範囲および設定は、それにより、互いに並列に考慮すべき3つのすべての測定方法(トレーサーガス測定、温度測定および個体濃度測定)を可能にする評価方法が必要である。
【0108】
軸方向および半径方向の噴出展開の研究において、噴出口の寸法が、流入する二次ガスおよび底部ガスの異なる速度比について考慮される。
【0109】
変化したパラメータは、底部ガスノズルUのガス速度および二次ガスノズルUのガス速度である。
【0110】
測定から以下のデータが得られる。
− ノズル開口に対する半径方向距離および反応ガスノズルの上の軸方向高さの関数としての面積−ノルムヘリウム濃度c/c
− ノズル開口に対する半径方向距離および反応ガスノズルの上の軸方向高さの関数としての無次元温度T/Tmax
− ノズル開口に対する半径方向距離および反応ガスノズルの上の軸方向高さの関数としての無次元固体濃度(1−ε)/(1−ε)
【0111】
軸方向の広がりは制限基準を参照して決定され、無次元半径に対してプロットされる。限界濃度および/または限界温度を確立するために、方法について最悪の場合のシナリオを想定し、すなわち、適用される基準は、最も好ましくない条件を考慮する。化学反応の場合、高い固体濃度のみならず、高い二次ガス濃度および高温が反応区域に存在すべきである。
【0112】
噴出口の外側のヘリウム濃度は周囲の濃度に急激に低下しないので、濃度限度が導入されなければならない。化学流動床反応器において、二次ガス濃度の低下は2つの過程で引き起こされる。分散により流動床の流動相内の反応ガスが希釈され、一方で、化学反応において、反応ガスを同時に最後まで反応させ、従って濃度が減少する。測定が実施される場合不活性ガスが二次ガスとして使用されるので、何の化学反応も起こらない。トレーサーガス濃度は、流動現象によってのみ影響される。したがって、周囲の濃度よりもはるかに高い半径方向の噴出口展開を決定するために限界濃度を設定することが適切である。
【0113】
最大濃度に基づくヘリウムの限界濃度は、最大濃度の25%に設定されている。何故なぜならば、前記濃度は化学反応においてすら十分に高いことが判明するからである。したがって、図2の左側に、トレーサーガスの75%が分配される反応器の領域がある。限界線によってそこから分離されているが、右側に25%未満の濃度を有する反応器の領域が見出せる。
【0114】
温度限界を確立するために、ヘリウム濃度の場合に比べて他の方策が適用されなければならない。
【0115】
適用の大部分について、流動床はホットウォール方式で加熱される。この場合、充填の間の二次ガスの温度は、供給ラインにおける望ましくない副反応を防止するために、反応温度未満である。このことは、充填の間に、ノズルガスは最初に流動床によって反応温度に到達されなければならず、その結果温度は噴出領域において低下されることを意味する。
【0116】
第一に、固体濃度が10%未満であるノズル開口の真上の反応に対して要求される温度未満の温度の低下が有利である。何故ならば、望ましくない均質な気相反応が低下されるためである。
【0117】
第二に、できるだけ大きい反応領域に対し低い温度ギャップを形成することが重要である。流動床内の温度平衡が非常に迅速に完了されるので、できるだけ高い温度限界が採用されるべきである。
【0118】
温度に対する限界基準は、噴出口の外側の流動床温度Tmaxの95%である。
【0119】
限界線は、このように、より高い温度が存在する反応器の区域から、温度が流動床温度Tmaxの95%未満である領域を分離する。
【0120】
化学プロセスの観点から、固体の、二次ガス、この場合、反応ガスへの迅速な混合が望ましい。
【0121】
したがって、固体濃度限界は、縁での固体濃度(1−ε)の85%で確立される。
【0122】
典型的な図では、ノズル開口からの半径方向の距離がx軸にプロットされ、反応ガスノズル上の軸方向の位置がy軸にプロットされる。測定結果および誘導された限界基準から、25%のトレーサーガス濃度、95%の温度、および85%の固体濃度について等値線が引かれる。等値線は区切られた面積を規定する。互いに対するおよび研究された測定領域の面積に対するこれらの面積の比が、どの速度の組み合わせおよびどのベースプレートの幾何学的構成が好ましかるべきかを評価するために使用される。
【0123】
図2では、例として、1つの反応ガスノズルのみが存在する場合の実験データポイントからの等値線の構造が示される。
【0124】
塩素含有量の決定
塩素含有量が、ポリシリコンのバルク中で、中性子活性分析機器(INAA)(SEMI PV10)によって決定される。
【0125】
バルク中の塩素含有量は、単位「ppmw」で測定される。また、RFAを使用する測定も可能である。
【0126】
均質な気相蒸着からのダスト濃度の決定
製造されたポリシリコン顆粒上のダスト濃度は、顆粒の製品試料を測定用の篩に置いて、流動体によってバルク材料から細かいダスト粒子を完全に分離し、分離された細かいダスト粒子を含む懸濁液を、ポンプによって、粒子測定装置に連続して輸送し、そこでそれらを測定し、次いでそれらを試料に戻すことによって決定される。
【0127】
蒸着速度の決定
蒸着速度は、物質収支を介して正味の蒸着速度として計算される。正味の蒸着速度は、引き取り速度からシード測定速度を引いたものである。したがって、蒸着速度は、反応器から除去されたポリ顆粒充填の質量を決定し、シードとして反応器に供給されたポリ顆粒充填の質量を決定することにより計算される。
【0128】
単一ノズルの噴出口における研究
最適なプロセスの設計のために、まず流動床反応器内の単一ノズルが考えられる。
【0129】
境界条件として、研究されたすべての例において、反応ガスおよび流動化ガスの同じ質量流が使用された。さらに、ノズル出口の直径は一定に保たれた。得られた結果は、異なる質量流およびノズル径にも適用可能であり、したがって標準化された値が使用される。
【0130】
噴出領域内の関係及び定義は、図3を参照して説明される。
【0131】
反応ガスは、ノズル開口を介してノズルから流れ出る。底部ガスは流動化ノズルを介して添加される。底部ガスは、分配器プレート、焼結プレート、または均等に配置された複数の個々のノズルを介して添加できる。底部ガスは、示された噴出領域内で、反応器の断面全体にわたって対応する表面的なガス速度で、既に完全かつ均一に分配される。したがって、どの方法で底部ガスが添加されるかは関係ない。どちらのガスも追加の垂直二次ガス注入を有する気泡形成流動床を形成する。
【0132】
示された噴出領域では、ノズル開口からの軸方向間隔がy方向においてプロットされ、ノズル開口からの半径方向間隔がx方向においてプロットされる。
【0133】
ガス噴出口での条件により、温度L、固体濃度L1−εおよび反応ガスLの等値線が生じる。
【0134】
図示されているものは対称プロファイルの右半分である。
【0135】
対称軸は、反応ガスノズルの水平方向の中心を表す。
【0136】
対称線および等値線Lの間に、ある領域が区切られる。この領域では、温度は、噴出口の外側の流動床温度の5%未満である。等値線Lの右側では、温度は噴出口の外側の流動床温度の95%を超える。
【0137】
同様に、対称線および個体濃度L1−εの等値線の間に、ある領域が区切られる。この領域では、固体濃度は、流動床の周縁における固体濃度の15%未満である。等値線L1−εの右側では、固体濃度は周縁の固体濃度の85%より高い。
【0138】
同様に、対称線および反応ガスLの等値線の間に、ある領域が区切られる。この領域では、反応ガス濃度は最大濃度の75%より高い。等値線Lの右側では、反応ガス濃度は最大濃度の25%未満である。
【0139】
対称線、および等値線Lならびに/またはL1−εは、AおよびA1−εで表される2つの領域を区切る。
【0140】
さらなる手順との関連では、これらの2つの領域のより小さな領域が使用される。
【0141】
より小さい領域の等値線と対称線との交点およびノズル開口によって形成される部分はhである。
【0142】
図3は、例として、温度噴出の浸透深さを表す。
【0143】
この部分は、上に向かって2倍化される(2・h)。次に、水平線L1が右に向かって引かれる。
【0144】
この水平線と等値線Lの交点で、垂直線L2が下に向かって引かれる。
【0145】
線L2との交点S2がノズル開口から進む水平線rによって形成される。
【0146】
この方法では、辺の長さ(2・h)およびrを有し、領域Agesを有する長方形が規定される。
【0147】
最適な反応手順のために決定的な領域はAである。この領域は幾何学的データから容易に計算することができる。
【0148】
上記の手順に従って、ガウス台形公式に従って多角形に近似することによって、この領域を、等値線を有するグラフから計算することができる。
【0149】
それは、頂部においてL1、右側および底部においてL、左側において対称線およびさらに右側に位置する2つの等値線LおよびL1−εによって境界される。
【0150】
領域A内に、高い固体濃度および高い反応ガス濃度と同時に高温が存在する。
【0151】
多数の測定の結果、以下の場合にのみ最適な反応手順が期待できることが、驚くべきことに見出された。
【0152】
【数1】
【0153】
さらに領域が以下の状態を満足する場合も有利であることがわかる。
【0154】
【数2】
【0155】
この場合は、図3において本発明に従った実施例を表す。
【0156】
この場合は、底部ガスの速度がU=0.6m/秒であり、反応ガスの速度がU=75m/秒であることによって達成された。400mmの直径を有する反応器中で、12kg/時というポリシリコン顆粒の蒸着速度が達成された。この場合、均質な気相蒸着によるダスト形成は<2%であった。生成物において、20ppmwの塩素含有量が達成された。
【0157】
最適な反応プロファイルとは対照的に、比較例として、図4に示されるシナリオが得られた。ここでは、底部ガスの速度はU=0.7m/秒であり、反応ガスの速度がU=80m/秒である。領域Aは、本発明による実施例の領域よりも著しく小さい(A<0.56・Ages)。したがって、最適な反応条件を有する領域は小さくなる。その原因は、異なる速度に起因する、ガス噴出口での偏位している等値線である。400mmの直径を有する反応器中で、10kg/時というポリシリコンの蒸着速度が達成された。この場合、均質な気相蒸着によるダスト形成は<2%であった。生成物において、25ppmwの塩素含有量が達成された。より低い蒸着速度およびより高い塩素含有量の原因は、急速な粒子成長をもたらす、高い過飽和を有するより小さな領域が存在することである。
【0158】
さらなる比較例が図5に示される。ここで、底部ガスの速度がU=0.8m/秒であり、反応ガスの速度がU=130m/秒である。
【0159】
400mmの直径を有する反応器中で、7.5kg/時というポリシリコンの蒸着速度が達成された。この場合、均質な気相蒸着によるダスト形成は>20%であった。生成物において、38ppmwの塩素含有量が達成された。
【0160】
領域Aはこの例では非常に小さい。このシナリオのさらなる欠点は、等値線Lと等値線L1−εの位置が非常に異なることである。等値線L1−εが等値線Lのさらに右側にある場合、高い反応ガス濃度および高温は存在するが、不十分な固体濃度が記録されているに違いない領域が形成される。この結果は、全反応における均質な気相蒸着の割合が増加することである。高い過飽和は固体粒子シード上の成長によって低減させることはできない。
【0161】
さらなる比較例が図6に示される。ここで、底部ガスの速度はU=0.3m/秒であり、反応ガスの速度はU=130m/秒である。噴流流動床が存在する。400mmの直径を有する反応器中で、8kg/時というポリシリコンの蒸着速度が達成された。この場合、均質な気相蒸着によるダスト形成は<10%であった。生成物において、35ppmwの塩素含有量が達成された。
【0162】
3つのすべての等値線は、流動床の床高さhbedを超えている。ノズルの上に、反応が起こらない、固体を含有しない冷たい領域が生じている。低い底部ガス速度のために、縁領域において下方に移動する粒子の動きが停滞しており、局部過熱が起こっている。
【0163】
複数のノズルからの噴出口における研究
ポリシリコン顆粒の蒸着のための規定された反応器内径を有する流動床反応器の容量は、様々な境界条件に依存する。
【0164】
重要なパラメータは、反応器に供給されるシリコン含有反応ガスの質量流である。単一ノズルと比較して反応ガスノズルのガス噴出口での条件を一定に維持するために、この容量は単一ノズルにおける質量流を増加させることでは増加させることができない。また、ノズル出口直径を広げて質量流を増加させることは直ちにはできない。何故ならば、これは大きな気泡をもたらすからである。
【0165】
個々のノズルがすべて、ガス噴出において可能な限り同一の条件を有する反応器底部に、複数の個々のノズルが作られなければならない。したがって、前記容量は、ノズルを密に配置する方法によって制限される。
【0166】
この方法では、ノズル間の、およびノズルと反応器壁との間の相互作用ができるだけ小さくあるべきである。
【0167】
2つのノズルの噴出領域間に強力な相互作用が起こるはずである場合には、これは温度ギャップの大きな広がりと、反応温度未満の温度を有する広い領域とをもたらす可能性がある。また、不十分な固体濃度を有する領域が発生し、さらにまた不十分な反応ガス濃度を有する領域も発生する。
【0168】
達成されるべき容量がある場合、および規定された反応器直径の場合、前記の測定方法およびその評価により、反応器底部上の反応ガスノズルの最適な配置、および必要数のノズルの設定が可能である。
【0169】
単一ノズルの研究に関する記述と同様に、底部ガスを反応器の底部に供給する方法、または底部ガスノズル、分配器プレートまたは焼結プレートの配置方法は関係ない。図示された噴出領域において、底部ガスは、対応する表面的なガス速度で全反応器断面に対し既に完全かつ均一に分配される。記載された噴出領域内で両ガスは、追加の垂直二次ガス注入を有する気泡形成流動床を形成する。
【0170】
図7では、本発明の実施例の場合が単一のノズルに関する研究から再考される。
【0171】
ノズル中心間の規定された間隔xに配置される2つのノズルが示されている。反応ガスノズルの周りに、単一ノズルについての研究から設定された、規定された半径rが存在する場合、驚くべきことに、1つのノズルとこれに最も近いノズルとの間の相互作用を排除するために、間隔xは条件:2・r・s<x<2・r・(s+t)を満たさなければならないことが見出された。ここで、パラメータsおよびtはs=1.0およびt=0.6という値を典型的に有すべきである。
【0172】
ノズルと反応器壁との間の相互作用を除外するために、配置は、壁と壁に最も近いノズルの間の最短間隔yが次の条件:r・s<y<r・(s+t)を満たように選択されるべきである。ここでパラメータsおよびtはs=1.5およびt=1.0という値を典型的に有すべきである。
【0173】
ベースプレートの好ましい実施形態
図8は、ベースプレートの好ましい実施形態を示し、その設計は噴出測定の結果から生じた。
【0174】
反応ガスノズルは、上記に定義された条件が満たされるように配置される。簡略化のため、可能な流動化ノズルは図示されない。これらは、焼結ベース、分配器プレートによって、または個々のノズルによって実現できることを当業者は知っている。
【0175】
この場合のノズルは、1つの円上のノズル間の半径方向の角度が一定となるように、反応器中心点の周りを走る1つ以上の同心円上に均一に分配配置されることができる。この変形例では、固体のローラが反応器容積にわたって均一に分配される。
【0176】
他の好ましい可能性は、少なくとも3つの個々のノズル、および反応器の中心点の周りにこれらのクラスターの均一な分布を有するクラスターを形成するためのノズルの配置である。
【0177】
クラスター配置の利点は、異なるクラスターを介して異なる組成(クロロシランの濃度、クロロシランの種類)の反応ガス混合物を好ましく測定できる可能性である。
【0178】
この場合の個々のクラスターには、供給ポートを介して、規定された反応ガス混合物が供給される。
【0179】
クラスター配置のさらなる利点は、重複し、相互に干渉するガス噴出領域に関し相互に独立した配置のために、開発され簡略化された高級化の可能性である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8