特許第6193500号(P6193500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6193500裏面照射型CMOS検出器の保護のためのブロードバンドグラフェン系光学リミッタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193500
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】裏面照射型CMOS検出器の保護のためのブロードバンドグラフェン系光学リミッタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20170828BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20170828BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   H01L27/146 D
   H04N5/369
   H04N5/225 400
   H04N5/225 430
【請求項の数】17
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-535702(P2016-535702)
(86)(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公表番号】特表2017-502505(P2017-502505A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】US2014055098
(87)【国際公開番号】WO2015088607
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2016年6月9日
(31)【優先権主張番号】14/104,472
(32)【優先日】2013年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ウシンスキー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハエリ,ミッチェル
【審査官】 鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05153425(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0012074(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0304934(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0221219(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02541699(EP,A2)
【文献】 特表2016−505876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/339
H01L 27/14 −27/148
H01L 29/762
H04N 5/222− 5/257
H04N 5/30 − 5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のスペクトル範囲の電磁波放射線に応答して作動し、所定の損傷閾値を超えるレーザ放射線に応答して無効化される光学装置であって、
基板と、
前記所定の損傷閾値を超える前記レーザ放射線により破損されるように構成された犠牲リミッタフィルタと、
を有し、
前記犠牲リミッタフィルタは、前記基板に配置された少なくとも一つのグラフェンの層を有し、該少なくとも一つのグラフェンの層は、該少なくとも一つのグラフェンの層に入射される電磁放射線の少なくとも一部を、吸収し散乱するように構成され
前記少なくとも一つのグラフェンの層は、第1のグラフェンの層であり、
前記犠牲リミッタフィルタは、さらに、第2のグラフェンの層を有することを特徴とする光学装置。
【請求項2】
当該光学装置は、焦点面アレイ(FPA)または電荷結合装置(CCD)カメラであることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
当該光学装置は、裏面照射FPAまたはCCDカメラであることを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
さらに、前記少なくとも一つのグラフェンの層は、前記グラフェンを含有する少なくとも一つの高分子を有することを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つの高分子は、エポキシオリゴマーを含み、
前記エポキシオリゴマーは、光学接着剤および光学フォトレジストの少なくとも一つであることを特徴とする請求項4に記載の光学装置。
【請求項6】
前記少なくとも一つの高分子内のグラフェンの濃度は、質量比で、約0.2%から約3%の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の光学装置。
【請求項7】
さらに、前記少なくとも一つのグラフェンの層は、少なくとも一つの炭素同素体を有することを特徴とする請求項4に記載の光学装置。
【請求項8】
所定のスペクトル範囲における、前記少なくとも一つのグラフェンの層の光透過率は、少なくとも70%であることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項9】
さらに、前記第1および第2のグラフェンの層の間に挟まれた誘電体材料の層を有することを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項10】
前記基板は、当該光学装置に統合されたシリコン基板であることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項11】
さらに、当該光学装置は、開口を有し、
前記基板は、前記開口に近接して配置されたガラス基板であることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項12】
光学装置用の犠牲リミッタフィルタを製造する方法であって、
前記光学装置のシリコン基板の表面に、第1のグラフェンの層を成膜するステップと、
前記第1のグラフェンの層に、誘電体材料の層を成膜するステップと、
前記誘電体材料の層上に、第2のグラフェンの層を成膜するステップと、
を有し、
前記光学装置は、裏面照射焦点面アレイ(FPA)、または裏面照射電荷結合装置(CCD)カメラである、方法。
【請求項13】
前記第1のグラフェンの層を成膜するステップは、前記シリコン基板の表面に、第1のグラフェンの層を成長させるステップを有することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シリコン基板は、第1の基板であり、
前記第1のグラフェンの層を成膜するステップは、前記第1のグラフェンの層を、第2の基板から前記第1の基板に移送するステップを有することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記第1のグラフェンの層を成膜するステップは、少なくとも一つの高分子を成膜するステップを有し、
前記少なくとも一つの高分子は、該高分子に含有されたグラフェンを有することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも一つの高分子は、エポキシオリゴマーを含み、
前記エポキシオリゴマーは、光学接着剤および光学フォトレジストの少なくとも一つであることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも一つの高分子内のグラフェンの濃度は、質量比で、約0.2%から約3%の範囲であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
近年の電気光学機器およびレーザの進展により、例えば、焦点面アレイ(FPA)、CCD(電荷結合素子)カメラ、イメージャ(撮像素子)、および検出器のような光電子センサを保護するレーザ硬化部材の分野において、幅広い開発が容易になっている。パッシブフィルタは、通常、異なる薄い平面窓を有し、これらの窓は、高精度に体系化された二元系または三元系半導体から製造される。これらの中には、例えば、水銀カドミウムテルル化合物(MCTまたはHgCdTe)、および/またはガリウムインジウムヒ素化合物(GaInAs)系の材料がある。これらのタイプのフィルタは、赤外線センサ装置との併用に適する。これらの半導体は、しばしば、約2.5μmを超える波長を有する中赤外信号を透過し、約2μm未満の波長を有する放射線を遮蔽する。1mmの厚さの窓を介した作動信号の透過率は、通常、結晶/合金系統に応じて約40%から50%まで変化する。これらのフィルタの吸収および散乱特性は、連続波およびパルス信号の両方が含まれる、全ての種類の光信号による動作にわたって一定のままである。半導体平面窓に関して抑制された光透過率(50%未満)と、波面誤差の組み合わせにより、検出感度が劣化し、得られる処理情報の品質が低下する。また、これらのフィルタは、複雑な微細金属学的処理のため、および比較的限られた歩留まり(約10〜15%)のため、比較的高価となる場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明の態様および実施例は、全般に、光電気センサの保護に使用されるレーザ硬化部材、およびそのようなレーザ硬化部材の製造に関する。ある実施例は、1または2以上のコーティングされたフィルタ部材を含む、犠牲リミッタフィルタ(「SLF」、ここでは単に「フィルタ」または「リミッタフィルタ」とも称される)に関する。各種実施例では、SLFは、ブロードバンドグラフェン系光学リミッタ(BGBOL)を含んでも良い。ある実施例では、SLFは、作動信号を光電気センサに透過させ、好ましくない光ビームを遮蔽するように構成され配置されても良い。そうでなければ、センサが損傷を受け、あるいは偽の光信号が構成され、これにより、検出され解析されるべき信号が無効になる。
【0003】
1または2以上の実施例では、所定のスペクトル範囲の電磁波放射線に応答して作動し、所定の損傷閾値を超えるレーザ放射線に応答して無効化される光学装置が提供される。少なくとも一つの実施例では、当該光学装置は、基板と、犠牲リミッタフィルタと、を有する。犠牲リミッタフィルタは、前記所定の損傷閾値を超える前記レーザ放射線により破損されるように構成されても良い。1または2以上の実施例では、前記犠牲リミッタフィルタは、前記基板に配置された少なくとも一つのグラフェンの層を有しても良い。前記少なくとも一つのグラフェンの層は、該少なくとも一つのグラフェンの層に入射される電磁放射線の少なくとも一部を、吸収し散乱するように構成されても良い。
【0004】
ある実施例では、当該光学装置は、焦点面アレイ(FPA)または電荷結合装置(CCD)カメラである。ある実施例では、当該光学装置は、裏面照射FPAまたはCCDカメラである。
【0005】
ある実施例では、前記少なくとも一つのグラフェンの層は、さらに、前記グラフェンを含有する少なくとも一つの高分子を有する。前記少なくとも一つの高分子は、エポキシオリゴマーを含み、前記エポキシオリゴマーは、光学接着剤および光学フォトレジストの少なくとも一つであっても良い。少なくとも一つの実施例では、前記少なくとも一つのグラフェンの層は、さらに、少なくとも一つの炭素同素体を有する。ある実施例では、前記少なくとも一つの高分子内のグラフェンの濃度は、質量比で、約0.2%から約3%の範囲である。
【0006】
ある実施例では、所定のスペクトル範囲における、前記少なくとも一つのグラフェンの層の光透過率は、少なくとも70%である。
【0007】
ある実施例では、前記少なくとも一つのグラフェンの層は、第1のグラフェンの層であり、前記犠牲リミッタフィルタは、さらに、第2のグラフェンの層を有する。ある実施例では、前記第1および第2のグラフェンの層の間には、誘電体材料の層が配置されても良い。
【0008】
ある実施例では、前記基板は、当該光学装置に統合されたシリコン基板である。別の実施例では、さらに、当該光学装置は、開口を有し、前記基板は、前記開口に近接して配置されたガラス基板であっても良い。
【0009】
本発明の別の態様では、光学装置用の犠牲リミッタフィルタを製造する方法が提供される。当該方法は、前記光学装置のシリコン基板の表面に、少なくとも一つのグラフェンの層を成膜するステップを有する。1または2以上の実施例では、前記光学装置は、裏面照射焦点面アレイ(FPA)、または裏面照射電荷結合装置カメラである。
【0010】
ある実施例では、前記少なくとも一つのグラフェンの層を成膜するステップは、前記シリコン基板の表面に、少なくとも一つのグラフェンの層を成長させるステップを有する。
【0011】
ある実施例では、前記シリコン基板は、第1の基板であり、前記少なくとも一つのグラフェンの層を成膜するステップは、前記少なくとも一つのグラフェンの層を、第2の基板から前記第1の基板に移送するステップを有する。
【0012】
ある実施例では、さらに、前記少なくとも一つのグラフェンの層を成膜するステップは、少なくとも一つの高分子を成膜するステップを有する。ある態様では、前記少なくとも一つの高分子は、該高分子に含有されたグラフェンを有しても良い。
【0013】
添付図には、スケールは描かれていない。図面において、各図に示された各同一のまたはほぼ同様の部材は、同様の参照符号で表されている。明確化のため、各図において、必ずしも全ての部材に符号は付されていない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】光学装置の基板に成膜された単一層、ジュアル層、または多層のグラフェンの前方配置を有する、ブロードバンドグラフェン系光学リミッタ(BGBOL)の一例である。
図2】銅またはニッケルの基板から、シリコン基板のような光学装置の別個の基板に、CVD成長グラフェンを移送するプロセスの一例を示した図である。
図3】未保護の市販の裏面照射(BSI)センサに対するレーザ損傷部の暗視野顕微鏡像である。
図4図3からのレーザ損傷部の、3枚の別の走査型電子顕微鏡(SEM)像を含む図である。
図5A】エネルギー分散X線(EDX)分光分析におけるレーザ損傷クレータの内部の一例の詳細である。
図5B】エネルギー分散X線(EDX)分光分析のスペクトル応答の一例の詳細である。
図6A】グラフェンクラスタのそれぞれ異なる濃度を有する、ガラス基板上に成膜された、グラフェン-エポキシ層の2つの像を示した図である。
図6B】グラフェンクラスタのそれぞれ異なる濃度を有する、ガラス基板上に成膜された、グラフェン-エポキシ層の2つの像を示した図である。
図7】溶融シリカガラス基板上に成膜された、約100μmの厚さの高分子膜を有するグラフェン高分子SLFの制限効果を示したグラフである。
図8A】2つの暗視野顕微鏡像を示した図である。従来のガラス基板上のレーザ損傷部(図8A)が、1または2以上のグラフェンの層でコーティングされた基板(図8B)と比較される。
図8B】2つの暗視野顕微鏡像を示した図である。従来のガラス基板上のレーザ損傷部(図8A)が、1または2以上のグラフェンの層でコーティングされた基板(図8B)と比較される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
光電子センサ、CCDカメラ、イメージャ、検出器、および他の感光装置には、好ましくないレーザ放射線に対する保護を容易にする機構が提供されることが望ましい。そうでなければ、レーザ放射線は、そのような装置に損傷を及ぼし、あるいはそのような装置の機能を損なう可能性がある。保護機構のいくつかの形態には、例えば、そのような装置の開口に導入される光放射線の経路に配置され得るフィルタが含まれる。フィルタは、ある波長の光を許容する一方、他の波長を遮蔽することにより、および/またはある強度未満の光放射線を許容する一方、より大きな強度の光放射線を遮蔽することにより、保護を提供しても良い。
【0016】
光の抑制は、半導体平面窓に加えて、複合窓を使用することにより達成されても良い。この複合窓は、例えば、微細なカーボンブラックサスペンション、フラーレン(例えばC60および他)のような炭素同素体、および1または2以上の異なるカーボンナノチューブ(CNT)製品を含有する。例えば、米国勅許出願公開第2011/0304934号(以降、「US‘934」と称する)においては、C60系溶液は、532nmでは適切な制限を提供するものの、低いレーザ損傷閾値の問題が生じ、ブロードバンド制限の要求特性に合致しない。カーボンブラックの微粒子サスペンションは、ブロードバンド制限の要求特性を満たすものの、これらの応答は、短い(ピコ秒タイプの)パルスには適さない。米国特許出願公開第2012/0175571(以降、US’571)号には、高分岐高分子の膜が示されており、この膜は、短いマルチ壁カーボンナノチューブ(sMWNT)フィラーを有する。この膜は、2つのガラス基板の間に挟まれ、窓が形成される。US’571号に記載された技術的解決策は、質量比で3%を超えない、ある最適な濃度のCNTフィラーを仮定している。米国特許出願公開第2011/0012074(以下、US’074)号に記載された技術的解決策は、CNT系高分子が、1もしくは2以上のマルチフォトン化学吸収剤(MPA)または反転飽和吸収剤(RSA)の発色団を含むことが示されている。CNT系光学リミッタは、非線形光吸収および散乱モードと関連する、組み合わされた制限機構の場合、C60フラーレンを含んでも良い。これらのモードは、光透過に影響を及ぼす上、CNTまたはC60クラスタの周囲の高分子複合マトリクスの材料劣化につながるような、局部的な熱流束を発生させる。フィルタは、所定の損傷閾値を超えるレーザ放射線により、損壊されるように構成される。従って、これらのリミッタは、実質的に犠牲的である。
【0017】
これらのフィルタ装置における単一のレーザ損傷スポットは、10から30μmの直径で変化し得る。標準的な25.4×50.8mm(顕微鏡スライド)のガラス基板で構成される犠牲フィルタは、約100の局部的な損傷に耐え得るものの、保護領域の1〜2%しか遮蔽しない。これを超えると、リミッタの交換が必要となる。また、これらの装置が光高分子マトリクスに埋設されると、CNT/C60リミッタは、50%を超える光透過率を示し、これはしばしば、70%に至る。高分子複合フィルムの比較的単純な製造と組み合わされた改良型の炭素同素体の市販のものは、これらのリミッタを安価にし、周期的な交換に適するようになる。例えば、通常、各々10μmの直径を有する100個のレーザ損傷クレータを有する、6.25×6.25mmのシリコンチップは、全領域の0.02%しか有しない。光学装置のシリコン基板に直接成膜される、BGBOLの場合、部分的に破損された領域における重要な情報の損失は、重要ではない。ガラス基板上に成膜されたグラフェンまたはグラフェン-高分子コーティングに関するBGBOL構成の場合、レーザ損傷の悪影響および信号ロスは、より小さくなる。これは、フィルタが該フィルタの並進運動または回転の動きを可能にするホルダを備えるためである。
【0018】
本発明の態様および実施例は、全般に、光電気センサの保護に使用され得る、SLFのようなレーザ硬化部材、およびそのようなレーザ硬化部材の製造に関する。レーザ硬化部材の実施例は、パッシブまたはアクティブに調整される中性濃度の光電気フィルタを含んでも良い。レーザ硬化部材の実施例は、SLFを有しても良い。本願に記載されたSLFの実施例は、好ましくない光の遮蔽を容易にする。そうでなければ、これは、不適切な光信号を構成し、および/または例えば、地上車、航空機、または人工衛星に使用される光電気センサで検出され解析される信号が無効になる。
【0019】
これらのフィルタは、リミッタであり、フラーレン、CNT、およびグラフェンのような、1または2以上の炭素の同素体を有する。グラフェンは、部分的に酸化されたグラフェンを含む。光路にフィルタ部材/リミッタ部材を導入することにより、光学特性および熱特性に変化が生じるが、グラフェン膜のある利点がその薄肉化(1nm未満)、特殊な光透過性、飽和非線形吸収性、ならびに優れた熱伝導性および電気伝導性に関与する。以下に示すように、低濃度のグラフェンを含む高分子-グラフェン層の場合、および例えば、高分子が低い光吸収性、散乱性を示す場合、形成される層は、歪みおよび光損失を最小限に抑制し得る。非線形粒子吸収剤を有するバルク半導体またはガラス基板フィルタ(ブラックグラファイト粒子、CNT、およびフラーレンフィラーを含む)に比べて、グラフェン内の炭素原子の平面ネットワークから得られた作動信号は、硬化欠陥を形成する好ましくないレーザ放射線を制限する一方、重要な情報を最小の損失で処理することができる。
【0020】
ある実施例では、SLFは、関心光の波長に対して透明なガラスまたは高分子のような材料で構成された基板を有しても良い。基板上には、1または2以上のナノコーティングが存在しても良い。ナノコーティングは、ある作動および遮蔽バンドに選択的に調製され、これにより、これらは、例えば、赤外作動信号を透過し、好ましくない光を遮蔽しても良い。ある実施例では、1もしくは2以上のナノコーティングまたは全体としてのSLFは犠牲的であり、これらは、使用中に損傷を受け、または破損しても良い。1または2以上の実施例では、ナノコーティングは、グラフェンで構成される。
【0021】
グラフェンの使用により、改良されたブロードバンド光学リミッタを設計することが可能となる。例えば、グラフェン系フィルタは、パルスレーザの損傷から、検出器およびセンサを保護することができても良い。また、優れた制限特性に加えて、グラフェンは、検出器基板の上に直接配置され、光制限効果を高めても良い。
【0022】
前置きとして、ある実施例は、BGBOLに関し、これは、1または2以上のグラフェンコーティングされたフィルタ部材を含む、一例としてのSLFである。ある実施例では、BGBOLは、光学リミッタを構成するブロードバンドグラフェン複合膜を有しても良い。1または2以上の実施例では、このリミッタは、シリコン系CMOS(相補型金属酸化物半導体)FPA、またはCCDカメラに統合されても良い。BGBOLは、異なる作動信号(赤外など)を光電気センサに向かって透過させ、好ましくない光ビームを遮蔽するように構成される。そうでなければ、これにより、センサが損傷を受け、または検出され解析されるべき信号が無効になるような不正確な信号が構成される。本発明によるBGBOLの実施例は、異なる種類の市販のCCD焦点面において、好ましくない光の遮蔽を容易にする。これらの大面積焦点面は、高い解像度(最大8メガピクセル以上)のアレイを提供し得る。本発明によるBGBOLのある実施例では、市販のFPAの基板上に成膜された1または2以上のグラフェンの層を有するシリコン系CMOS FPA を有し、あるいは高分子-グラフェン保護層を有する、薄い基板を有しても良い。1または2以上の実施例では、BGBOLは、1または2以上のグラフェンの層の前面配置を有し、これらのグラフェン層は、市販のBSI CCDカメラまたはセンサ/検出器のシリコン基板上に成膜される。この構成は、グラフェン膜による効果的なレーザ硬化、およびセンサ保護を提供する。特に、この構成は、高量子効率(QE)BSIセンサ/検出器の特性のずれを最小限に抑制する。
【0023】
図1を参照すると、図1には、グラフェン系リミッタ100の前面配置を有するBGBOL10の一例が示されている。グラフェン系リミッタ100は、高分子-グラフェン層、または1もしくは2以上のグラフェンの層から形成されても良い。図1に示すように、グラフェン系リミッタ100は、FPA102のような光学装置のシリコン(Si)基板上に、成膜されまたは成長されても良い。例えば、この膜100は、シリコン系CMOS(相補型金属酸化物半導体)FPAと一体化されても良く、さらに対象検出センサに組み込まれても良い。別の実施例では、グラフェン系リミッタ100は、市販の裏面照射CCDのシリコン基板に成膜され、または取り付けられても良い。
【0024】
本発明によるBGBOLのある実施例は、FPAのシリコン基板の上に成膜された、単層、多層、または二層のグラフェンを有する、シリコン系CMOS FPAを有しても良い。再度図1を参照すると、本発明の実施例によるBGBOL10は、2次元グラフェンの1または2以上の層を含む膜を有しても良い。膜状コーティングは、CVD成長グラフェンから構成され、シリコンセンサ/検出器の前面に移送され、または高分子/グラフェン複合材の形態で、そのような表面に成膜される。
【0025】
グラフェンナノコーティングの成膜プロセスは、例えば蒸着法または電子ビーム物理気相成膜法のような、半導体装置の製造に使用される、いかなる物理気相成膜プロセスを有しても良い。各種例では、グラフェン膜の光透過率は、実質的に非線形的に厚さに依存し、グラフェンの物理的特性および膜厚に関する多くの因子に依存する。
【0026】
ある態様では、BGBOLは、化学気相成膜(CVD)法を用いて、シリコンウェハのようなシリコン基板上に成長したグラフェン膜を有し、これは、市販のBSICCDの半導体基板として機能しても良い。この構成では、界面欠陥が最小限に抑制され、プラズモン共鳴による、グラフェンコーティングに生じる熱流束の適切な断熱が可能となる。また、迅速な一時的熱輸送が可能になる。これらの成長膜は、マルチドメインの連続平面堆積物を形成しても良い。CVD成長グラフェンは、一旦形成されてから移送され、別の基板に取り付けられても良い。別の実施例では、適当な高分子マトリクス中に、グラフェンフレークが含浸(混合)され、形成された複合層が、シリコンセンサ/検出器の前面に、またはさらに検出器の前面に導入されたガラス基板に、設置されても良い。グラフェンのCVD成長に使用される好適な基板には、これに限られるものではないが、銅およびニッケルが含まれる。例えば、グラフェン層のCVDプロセスでは、銅またはニッケルの薄膜基板に、大面積の単層または2層のグラフェンを成長させることが容易となる。次に、これらの基板上に成長した膜は、シリコンまたはSi/SiO2対象ウェハに移送され、あるいはある例では、BSIセンサ/検出器のシリコン基板上に、直接移送される。従って、CCDカメラ、イメージャ、検出器、または他の任意の感光装置におけるシリコンチップの前面は、移送可能なグラフェン膜の対象基板となり得る。
【0027】
CVD成長グラフェンに、1または2以上の他の市販の安価な選択肢を関連付けても良い。例えば、CVD成長グラフェンは、シリコン半導体および/または誘電体ガラスチップに構造的に統合された、透明導電層であっても良い。この配置では、センサ/検出器のシリコン表面は、厚さが0.1〜1μmの範囲のSiO2の酸化層を有しても良い。ある例では、積層される原子層の数は、市販のグラフェン膜製品用に実証され、グラフェン積層のパラメータおよび特性は、実験的に構築されても良い。1または2以上の例では、グラフェン単層による白色光の光吸収は、約2.3%であり、従って、作動信号の75〜80%を透過できるスタックを得るには、約8〜11のグラフェン層が必要となる。この場合、グラフェン層の特性は、厚いグラフェン層(すなわち100層以上)により示されたものとは大きく異なる。
【0028】
センサ/検出器のシリコンチップは、CVDGraphene(登録商標)という商品名(ニューヨーク州カルバートン、Graphene Laboratories社)で利用可能な、予備コーティングされたグラフェンウェハから形成されても良い。この処理技術では、以下に詳しく示すように、グラフェン膜を移送する必要がなくなる。別の実施例では、SGLは、グラフェン膜が基板に接着剤によって取り付けられる構成を用いることにより、グラフェンが取り入れられる。
【0029】
1または2以上の実施例に使用されるグラフェンは、部分酸化されたグラフェンのクラスタ化された粉末フレークと、水または有機溶媒中の酸化グラフェンの別のサスペンションとを含んでも良い。例えば、Graphene Supermarket社(ニューヨーク州カルバートン)から販売されているグラフェンナノ粉末キットおよび導電性グラフェン分散溶液を利用することができる。これらの製品は、別の濃度で利用することもでき、従って、ある例では、グラフェンリミッタ層は、グラフェンのナノフィラーを含む高分子マトリクスを有しても良い。以下に示すように、グラフェン/高分子マトリクスは、光路マイクロ統合、およびマイクロリソグラフィを含む、別の技術的方法を用いて形成されても良い。
【0030】
ある実施例では、1または2以上のグラフェンの層は、高分子に含浸されても良い。ある実施例では、高分子-グラフェン保護層は、リソグラフィで、安価な薄いガラス基板にコーティングされ、このガラス基板が、さらにセンサの光路に導入されても良い。例えば、ガラス基板は、光学装置の開口(アパーチャ)の近傍に配置されても良い。別の実施例では、複合グラフェン/高分子層は、さらに、BSI光学装置のシリコン基板表面に設置されても良い。マイクロリソグラフィ技術を用いて、複合グラフェン/高分子層を設置しても良い。高分子マトリクスは、例えば酢酸塩またはエポキシオリゴマーのような、1または2以上の好適な高分子から構成されても良い。好適な市販製品は、別のエポキシ光レジスト、および光エポキシ接着剤である。例えば、高分子マトリクスは、酢酸塩またはデンドライトエポキシオリゴマーを含んでも良い。デンドライトエポキシオリゴマーは、ほぼ均一なマイクロ寸法の、デンドライトタイプのサブミクロンセルを形成し、セル状コーティングフィルム内に、炭素フィラーを均一に分配させることができる。
【0031】
ある態様では、グラフェン/高分子構造に使用される高分子は、高い屈折率を有するエポキシオリゴマーであっても良い。例えば、エポキシオリゴマーは、無機ガラスと同等の屈折率を有しても良い。ある例では、エポキシオリゴマーは、約1.45から約1.65の屈折率を有しても良い。また、エポキシオリゴマーは、低い光吸収率を有しても良い。
【0032】
市販のエポキシにおいて、2種類の材料を使用しても良い。第1の種類は、例えばEPOTEK 353 NDおよび327(Billerica MA、Epoxy Technology社から入手可能)のような、電気通信産業において使用されている光エポキシ接着剤に関する。これらのエポキシ材料は、グラフェンを有する硬化性高分子マトリクスを形成でき、低い吸収率を示す。第2の種類は、別のエポキシフォトレジスト化合物、すなわちSU-8(別のグレード)、および具体的な用途に依存する、他のマイクロリソグラフィプロセスにおいて使用されるような材料に関する。グラフェンは、1または2以上のこれらのエポキシと予備混合され、0.2%〜3%(質量比)の組成で製造される。形成された複合材は、約2〜3分間、超音波処理された後、脱ガス処理される。次に、混合物は、薄いガラス基板に成膜され、あるいは成膜の前にコンタミネーション除去されたCCDカメラのシリコンウェハ基板上に、直接成膜される。堆積物の厚さは、約50μmから約120μmであっても良く、これは、CCDの別のフォーマットおよび構造に依存する。また、特定の要求特性および用途に依存し得る。ある実施例では、グラフェン/高分子膜は、例えば、約30μmから約100μmの厚さであっても良い。
【0033】
各種態様では、高分子は、ゼラチン材料であっても良い。例えば、ゼラチン材料は、ゼラチンフォトレジスト材料であっても良い。ある実施例では、ゼラチンは、アルコール系材料であっても良い。ゼラチンは、本願におけるSTFの1または2以上の機能の発現に好適な、いかなる材料であっても良い。
【0034】
得られる層の光電気的、熱的、および幾何学的な特性は、予備実験により構築されても良い。例えば、ある実施例では、50〜150μmの厚さのSU-8フォトレジスト層に、0.2%〜2%の質量濃度でグラフェンフレークを混合したものが、1μmの波長バンドにおける望ましくない放射線のレーザ保護に適する場合がある。ある実施例では、グラフェン/高分子膜は、例えば、約2〜約8μmの間の波長を有する赤外作動信号を、約60%から約85%のレベルの範囲で透過し、望ましくない光ビーム、例えば、1μmバンドの波長を有する光を、約99%以上の減衰率で遮蔽しても良い。例えば、ある実施例では、グラフェン/高分子膜は、赤外作動信号の75〜85%を透過し、好ましくない光ビームを(約99%以上の減衰率で)遮蔽しても良い。
【0035】
高分子マトリクス担体の特性およびフィラー成分の濃度は、好ましくない放射線がフィルタ膜に照射された際に、飽和吸収特性、および散乱機構が得られるように選定されても良い。グラフェン/高分子膜における遮蔽/制限応答は、超高速であっても良い。例えば、グラフェン/高分子膜に含まれるグラフェンの光散乱および吸収機構は、フェムト秒の時間スケールで生じ、本願のグラフェン/高分子膜を含むフィルタの時間応答が超高速で行われても良い。
【0036】
ある態様では、グラフェンコーティングは、カーボンナノチューブ(CNT)および/またはフラーレン、例えば「バッキーボール」を含有する高分子膜と組み合わされても良い。ある実施例では、「バッキーボール」は、各々、60、70、74、80または他の数の炭素原子を含む。例えば、ある実施例では、BGBOLは、グラフェン/高分子組成物を用いて、グラフェンを取り込み、BGBOLは、1もしくは2以上の炭素同素体に充填または注入された高分子マトリクスを有しても良い。炭素同素体は、カーボンナノチューブ、フラーレン、および/またはグラフェンを含む。BGBOLの設計は、さらに、体系化ナノ複合材料の濃度および設置を最適化することを含み、例えば、マイクロリソグラフィおよび硬化プロセスを用いて、所望のパターン解像度が得られても良い。高分子マトリクスの超高速飽和で得られる条件の評価は、さらに、1または2以上の炭素同素体を有するリミッタの構成を精緻化することにより実施される。
【0037】
BGBOLは、さらに、体系化複合材料用の好適な成膜技術に応じて、別の濃度レベルで、1または2以上の追加のフィラーを最適化しても良い。例えば、BGBOLは、マイクロリソグラフィ技術を用いて、所望のパターンの解像度が得られるように構成されても良い。ある例では、評価は、1または2以上の炭素同素体を有する複合材料における超高速光飽和の条件を定め、さらに1または2以上の装置構成を高精度化するように実施されても良い。
【0038】
単一壁および多層壁のナノフィラーを含むCNT製品は、CNT凝集体の多分散性、および個々のCNTのナノ分散性により、動的な電気泳動散乱を示す。特定のCNTフィラー成分の寸法上のおよび質量上のパラメータは、多分散性およびナノ分散性に影響を及ぼし、これは、非線形飽和散乱に影響する。1μmバンドにおける光に反応するグラフェン/高分子コーティングのある実施例では、CNTフィラーのサイズは、グラフェン/高分子膜の質量濃度が0.5%から約2.5%の間の場合、約1μmに中心を有する近ガルシアン分布により特徴化される。グラフェン/高分子膜における別の高分子の場合、炭素同素体の質量パラメータは、所望の光放射線の周波数に反応するコーティングが得られるように変更されても良い。異なる数の壁を有する多層壁ナノチューブの場合、ナノ散乱チューブの寸法および質量パラメータは、所望の光放射線の周波数に応答する所望の度合いを得るため、同じ高分子マトリクスで、異なっても良い。
【0039】
また、好ましくないレーザ放射線は、好ましくない光を遮蔽するグラフェン層に存在する非線形吸収/散乱機構のトリガーとなっても良い。グラフェン/高分子コーティングにおけるフィラー成分の濃度および追加の高分子マトリクス担体の特性は、好ましくない光放射線がフィルタに入射された際に、非線形の飽和光吸収および散乱機構が得られるように選択される。フラーレン、CNT、およびグラフェンを含む、炭素同素体の非線形光特性は、マイクロ機構において異なっても良い。例えば、CNTフィラーは、非線形散乱を示し、フラーレンクラスタは、励起状態の吸収非線形性を示しても良い。グラフェン成分は、非線形散乱と、2光子吸収機構の両方を示しても良い。また、シート膜およびグラフェン酸化物を含むグラフェン材料は、別の種類の非線形性を示しても良い。
【0040】
フラーレン充填高分子は、共役高分子-フラーレンヘテロ接合ネットワークを形成し、これにより、ドナー高分子とアクセプタフラーレンの間における光電子輸送が十分になっても良い。光励起種は、高分子-フラーレン膜複合材で、比較的小濃度で解離される。これらの濃度は、異なるフラーレン同素体(異なる数の炭素原子を有する同素体)で変化し、異なる高分子マトリクスで変化しても良い。例えば、エポキシオリゴマー中に含浸されたC60フラーレンの濃度は、質量比で、約0%よりも大きく約2.5%よりも小さく、十分な光応答が提供される。ある態様では、グラフェンは、フィラー材料として高分子に取り込まれても良い。グラフェン吸収体の場合、所望の濃度は、構成に応じて変化し、例えば、フレークのサイズ分布、実際の層の数、およびグラフェンの折り畳み度合いで変化する。例えばグラフェンおよびフラーレンの、1または2以上のフィラーを含むある実施例では、満足な結果が得られ、前述の全炭素同素体濃度は、質量比で、約0%超、約2.5%未満である。グラフェンフレークの平面寸法のパラメータは、吸収に所望のVan Hoveピークを示すように構成されても良い。例えば、1μmバンドでの光放射線の吸収の場合、特徴的な寸法を有するグラフェンフレーク、例えば、約1.5μmから約3μmの間の直径を有するグラフェンフレークは、所望のレベルの特性を提供する。
【0041】
グラフェン/高分子膜におけるフィラー成分の濃度および高分子マトリクス担体の特性は、好ましくない光放射線がフィルタに照射された際に、非線形の飽和光吸収および散乱機構を示すように選択される。例えば、BGBOLにおいて、さらに、体系化複合材料の好適な成膜技術に応じて、異なる濃度レベルで、1または2以上の追加フィラーが最適化されても良い。ある実施例では、1または2以上の炭素同素体を有する複合材料において超高速光飽和の条件を定め、1または2以上の装置構成をさらに高精度化するための評価が実施されても良い。前述のように、フラーレン、CNT、およびグラフェンを含む炭素同素体の非線形の光学特性は、それらのマイクロ機構により変化する。例えば、CNTフィラーは、非線形散乱を示すのに対して、フラーレンクラスタは、励起状態の吸収の非線形性を示す。グラフェン成分は、非線形散乱と2光子吸収機構の両方、または主として2光子吸収機構を示しても良い。フィラー成分の濃度、および高分子マトリクス担体の特性は、好ましくない放射線がグラフェンおよび高分子コーティングに入射された際に、飽和吸収および散乱機構を用いるように選択されても良い。また、グラフェン酸化物を含む多シートフレーク膜を有するグラフェン同素体は、短パルスでの制限に影響する、異なる種類の非線形性を示しても良い。フラーレン、CNT、およびグラフェンナノフィラーは、各々が、例えば、約2から約8μmの間の波長を有する作動信号の、約70%から約80%の間の同様の光透過率を示しても良い。
【0042】
グラフェン/高分子膜の各種実施例は、ナノフィラーの異なる比により特徴付けられても良い。ナノフィラーの所望の濃度は、所望のレベルの飽和吸収性および光散乱性を提供するように選定される。ある実施例では、グラフェン/高分子膜における炭素同素体の総合計は、グラフェン/高分子膜の質量比で、約2.5%を超えない。特定の実施例では、応答基準に応じて、フラーレン、例えば、C60フラーレン、CNT、およびグラフェン成分の比は、質量比で(0.2〜0.5):(1〜1.4):(0.1〜0.5)のように変化し得る。濃度の選定の際、コーティング応答は、入射放射線の1または2以上の所望の周波数で、高強度のプラズモンが生じるように、あるバンドに選択的に調整される。
【0043】
一例として、SLFは、グラフェン/高分子マトリクス材料を含み、これは、約2%のグラフェンを有し、約50μmの厚さを有する。SLFは、1065nmのレーザからの光を遮蔽し、70%以上の透過率を有しても良い。SLFは、70〜100回以上、レーザからの衝突の繰り返しに耐えることができても良い。
【0044】
ある態様では、BGBOLは、CNTおよびフラーレンのような、1または2以上の種類の非線形飽和炭素同素体で埋設された高分子膜を含む、第2のコーティングを有しても良い。第2のコーティングは、第1の層/グラフェンのナノコーティングの上に形成されても良い。ある実施例では、第2のコーティングは、グラフェン膜の第1の層よりも厚くても良い。第2のコーティングは、例えば、赤外作動信号のような作動信号を透過し、例えば好ましくない周波数および/または強度を有する光ビームのような、好ましくない光ビームを遮蔽する、ナノコーティングであっても良い。第2のナノコーティングおよび/または第1のナノコーティングは、好ましくは1μmバンドにおける光放射線、例えば、約1064nmおよび/または約1030nmの波長を有する光、および/または軍事防衛用途に使用されるレーザ、例えばイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)系レーザの出力に一致するレーザ周波数、を遮蔽する材料および寸法で構成される。第2のナノコーティングにおけるフィラー成分の濃度および高分子マトリクス担体の特性は、コーティングに照射される好ましくない放射線を遮蔽する、飽和吸収および散乱機構を用いるように選定されても良い。高分子/炭素同素体コーティングのある実施例では、印加光信号に対する時間応答は、超高速である。ナノクラスター化炭素同素体における散乱および吸収機構は、フェムト秒の時間スケールで生じるためである。
【0045】
ある実施例では、BGBOLの設計は、作動光ビームが、スペクトルの再形成をせずに、あるいは十分に予想される透過および反射スペクトルの補正状態で、作動光を透過させるように、1または2以上のグラフェン保護コーティング材料および厚さを選択することを含む。ある例では、透過率は、70%を超える。ある例では、透過率は、80%を超えても良い。さらに別の例では、透過率は、85%を超えても良い。例えば、CNT/C60系組成物では、70%の透過率が得られても良い。透過率は、コーティング材料中のグラフェンの濃度または密度に依存し、高濃度または高密度では、低い透過率が得られる。また、シリコン半導体と相互作用する弾道タイプの導電体を形成する機能のような、二次元の炭素原子ネットワークの特殊な特性も、異なるバンドにおける光透過性に寄与する。これらの特殊な特性は、比較的ブロードバンドな表面プラズモンを形成する機能、および弾道共鳴導電体/抵抗体の条件を提供する機能である。特に、信号光透過率および熱発生は、共鳴バンドと非共鳴バンドでは、大きく異なる。制限応答は、特定のCCDのフォーマットおよび構造に適するようにされ、レーザ損傷の好適な局在化が提供される(得られるレーザ損傷クレータは、小さな直径がより望ましい)。その結果、入射レーザから複数のショットを受けた後も、リミッタを依然として使用することができる。
【0046】
1または2以上の炭素同素体を含む制限フィルタは、硬化の影響を受け得るが、これは、検出器が前面照射配置か裏面照射配置かに応じて異なる。裏面照射(BSI)センサ/検出器において、最も直接的な光路が画素に進入する場合、金属回路および誘電体層は、センサアレイの下に配置される。裏面照射は、高量子効率、大きな最適充填因子、最小の色ずれで特徴化され、主として低光感度用途に使用されても良い。前面照射(FSI)センサ/検出器では、光は、画素の前側から感光領域に移動する。そのため、まず、トランジスタ、誘電体層、および金属回路を通過する。これらは、隣接画素に入る光を遮蔽しまたはを偏向させる。従って、FSI構造は、充填因子および量子効率を低下させ、隣接する画素間のクロストークにつながる。また、積層構造および作動原理における差異も、好ましくないレーザビームからのレーザ損傷からのFSIおよびBSIシステムの保護に使用されるリミッタの、異なる抵抗に影響する。100から200μmの厚さのシリコンウェハの背後に配置された画素および回路を有するBSIの場合、レーザ損傷硬化機構は、シリコンとグラフェンの界面での表面プラズモン発生と、シリコン基板自体に対する損傷の、両方を含む。
【0047】
ある実施例では、グラフェンナノコーティングにおいて、および高分子/炭素同素体ナノコーティングにおいて、実質的に異なる光遮蔽機構により、光センサへの異なるレーザの進入が有効に制限され、遮蔽される。有効な光吸収、散乱、および相変化機構は、局部的に大きな熱流束を形成し、これにより、フィルタの実施例のナノコーティングおよび/または基板は、熱的に損傷する。フィルタのある実施例では、安価な基板およびコーティング材料が使用されても良い。従って、これは、犠牲フィルタおよび所望の回数の使用後に置換されるフィルタの実施例の場合、経済的に好ましい。本発明の実施例による安価なSLFは、部分的に損傷した画素に関する情報量の減少が、取得画像および解析プロセスに影響を及ぼすまで、数回使用される。
【0048】
フィルタの実施例は、好ましくない光放射線に対するコーティング膜の暴露による局部的な熱損傷のため、犠牲的であっても良い。しかしながら、フィルタの実施例は、例えば、フィルタを透過してCCDカメラまたは他のセンサに至る情報の減少量が、画像取得プロセスに影響を及ぼすまで、数回にわたって使用されても良い。ある実施例では、本願に示されたフィルタは、好ましくない放射線に晒され、最大100回以上の不可逆的な損傷に耐え、依然として、最大約96%の情報を透過することができ、この情報は、新たな未損傷のフィルタを介して透過させることができる。この特徴は、本願に記載のSLFを、点検の機会の前に、光センサが好ましくない放射線の複数回の照射に晒される戦場での使用に、特に好適なものにする。
【0049】
好ましくない光ビームがフィルタに照射され、および/または外部電流が印加されると、誘導電磁場によって、グラフェンナノコーティングにおいて表面プラズモン共鳴が生じる。グラフェンナノコーティングにおける共鳴電流および弾道導電性機構により、ナノコーティングの温度上昇が生じる。上昇温度は、グラフェンナノコーティングを構成する1または2以上の材料の融点に速やかに到達する。ある実施例では、防衛分野で使用されるあるレーザシステムに一致するパワーレベル、例えば約0.1Wから約10Wの間のパワーレベルを有する好ましくない光ビームは、プラズモン共鳴を誘導し、ナノコーティングを溶融させる上で、十分に強力である。低および中程度のパワーレーザビーム、例えば約1Wのパワーを有するビームにおいても、ある周波数でプラズモン共鳴が生じ得る。これは、グラフェンナノコーティングの溶融および相転移に十分である。
【0050】
溶融およびこれに伴う再結晶化による、グラフェンナノコーティングにおける相転移により、フィルタの光吸収係数(屈折率の虚部)が、2〜3桁上昇する。これは、光の波長およびSLFの材料に依存する。この相転移の効果により、好ましくない光が有意に遮蔽される。
【0051】
グラフェン膜界面は、弾道熱および電気の輸送特性を有し、この界面で、表面プラズモンを発生することができる。これにより、好ましくないレーザ放射線から、さらに保護される。プラズモンは、強い拘束を生じさせ、グラフェンナノコーティングの近傍において、電場の増強が生じる。また、この増強は、ラマンスペクトル応答、プラズモン誘導蛍光、ならびに表面プラズモン増強吸収および散乱を刺激する。これらのエネルギー分散機構は、BSIタイプのセンサ/検出器に関連するものを含むレーザ硬化処理および光制限プロセスにおいて、特異な役割を果たす。ある予想バンドにおける好ましくないレーザ放射線からのプラズモン共鳴は、BSI保護構造において反射される。特に、特定のグラフェン膜のシリコンウェハとの界面は、エネルギー増強および損失が最大化されるように調整される。ある態様では、調整は、少なくとも2つの順次取り付けられた膜を形成することにより行われても良い。これらの膜は、誘電ナノ酸化物層(例えばSiO2)により分離されても良い。ナノスペーサにより分離されたグラフェン層は、ダイポール導電構造を形成することができる。基本設計のこれらのおよび他の最適な方法は、振動プラズモンダイポールの発生につながる。これは、次に、BGBOLの硬化に影響を及ぼす。
【0052】
また、本願に示されたSLFの実施例は、低いおよび高い屈折率の誘電膜材料の交互層の積層コーティングを有しても良い。この種の構造では、ある種の画像センサと併用した際に、より良い画像化ができる。
【0053】
積層コーティングは、ある市販のセンサとの互換性を高めるため、スペクトル的に作動信号を修正しても良い。各種実施例では、これらの誘電体コーティングは、グラフェン膜とともに成膜されても良い。誘電体コーティングは、SLF内の他の材料の間、例えば、酸化物コーティング材料または基板と、共晶合金との熱的ミスマッチを最小限に抑制するように選択されても良い。各種光電気センサおよびCCDカメラは、ある商業用の光バンド用に設計されても良い。例えば、地上対象物、戦術ソース、および/または地形から反射する作動信号は、例えば予備処理され、ゲインの平坦化、スペクトルの形状化、または、例えば誘電体の交互スタックを有するある他の機能、が提供されることが好ましい。SLFの実施例は、別のバンドにおけるレーザ硬化/保護と組み合わされる作動信号のこの予備処理に好適な部材である。
【0054】
図2には、グラフェンをシリコンチップに移送する処理のある例を示す。移送プロセスは、ステップ205で開始され、例えば、1または2以上のグラフェンの層で予備コーティングされた基板を得ることにより、CVD処理されたグラフェン膜が成長または取得される。次に、犠牲(例えばPMMA)高分子膜をドロップ成形するステップを有する、ステップ210が行われる。ステップ215では、酸または他の好適なエッチング溶媒を用いて、金属薄膜の化学的「除去」が実施される。ステップ220では、高分子(PMMA)成形グラフェンが対象シリコンチップに水性接着される。ステップ225では、アセトンのような溶媒による犠牲高分子層(PMMA)の最終除去が実施される。前述の4ステップの工程によるグラフェンの移送は、単なる一例であり、他の同等の効果が得られる、または従来の移送プロセスが、代わりに使用されても良い。また、好適なグラフェン移送キットも市販されており、これには、CheapTubes.com(VT、Brattleboro)およびGraphene Laboratories社(ニューヨーク州カルバートンNY)によって販売されている、1または2以上の製品が含まれる。
【0055】
移送プロセスの実施例は、グラフェン膜とシリコンチップの上部表面との強い構造一体性を提供しても良い。グラフェン単層の格子パラメータが約1.4Åであり、グラフェンの2つの積層層の間の距離が約3.4Åであると仮定すると、移送膜の全厚さは、約5.2Åから約15Åまで変化し得る。これらの薄い寸法の場合、マルチレイヤグラフェンにおいて得られる炭素原子の平面ネットワークを介して取得される作動信号は、硬化欠陥を形成し得る好ましくないレーザ放射線の通過の制限が維持されたまま、最小限の情報の損失で処理され得る。
【0056】
ある態様では、SLFは、マイクロリソグラフィ技術を用いて製作されても良い。ある実施例では、高分子-グラフェン保護層は、安価な薄いガラス基板上に、リソグラフィ技術でコーティングされ、このガラス基板は、さらに、センサの光路に導入されても良い。例えば、ガラス基板は、まず清浄化され、次に、グラフェン/高分子フォトレジスト材料の1または2以上の層が成膜される。グラフェン/高分子材料の成膜に好適な技術には、基板上に材料をスピンコーティングする方法が含まれる。次に、得られる基板および材料は、UV、UV/熱、またはRTエネルギーで露光され、材料が硬化される。任意の予備熱処理/冷却処理および/またはポスト熱処理/冷却処理を実施しても良い。
【0057】
別の態様では、SLFは、湿式化学プロセスを用いて製作されても良い。例えば、最初にガラス基板が清浄化され、次にグラフェン/高分子材料の層が成膜されても良い。次に、基板および材料は、所定の温度で所定の時間、熱的に硬化される。例えば、硬化処理は、125℃で約1時間実施されても良い。
【0058】
ある実施例では、グラフェンまたはグラフェン/高分子のコーティング処理は、ミクロのおよび/またはマクロのパターン処理を有しても良く、これにより、非パターン化ナノコーティングに比べて、プラズモン共鳴の動作が大きくなる。パターン化処理は、SLFに組み込まれるCNTまたはフラーレン上で実施され、ある波長バンドに対する共鳴応答の調整に使用されても良い。ある実施例では、グラフェン膜は、周期的にパターン化された壁を有しても良い。グラフェンナノコーティングのパターン処理では、光放射線の所望の周波数に暴露された際に、表面プラズモン共鳴を示すように、グラフェンナノコーティングを微調整しても良い。誘導プラズモン共鳴は、今度は、共鳴電流および弾道導電性機構のトリガーとなり、これにより、グラフェンコーティングに温度上昇が生じる。例えばジュアル周期パターンを有するグラフェンナノコーティングのパターン処理は、例えば、プラズモン共鳴を強め、光放射線の適用の際の熱発生を促進する。設計パターン処理は、好ましくない放射線の低〜中程度のパワービームに対する作動の保護を容易にする。パターンは、リソグラフィ技術、および/または化学的エッチング、および/または他の方法により形成されても良い。パターンは、曲線状または直線状のセグメントのジュアル周期システムを有しても良い。パターンは、開放され、対称であっても良い。
【0059】
(実施例)
各種実施例の機能および利点は、以下の非限定的な例からさらに理解することができる。これらの例は、一例を示すことを目的としており、示された実施例の範囲を限定するものではない。
【0060】
(実施例1−SLFを使用しない際に生じる損傷)
図3には、市販の未保護のBSIセンサ上に、532nmから1064nmのレーザによって生じた熱誘導レーザ損傷部を示す。図4には、図3におけるレーザ損傷部の形態の3つの別個のSEM像(倍率430倍)を示す。SEM像は、図3に印付けられた3つの最大損傷スポットで撮影された。最も顕著な場合、BSIシリコンウェハは、レーザ損傷抵抗に寄与し、主要な損傷モードは、(1)熱的に誘導されたレーザアブレーション、(2)放射状破砕、(3)中心領域の溶融、(4)シリコン基板の大面積熱燃焼を含む。SEM像は、図3に印付けられた3つの最大損傷スポットにおいて採取された。画像に存在する主要損傷モードは、熱誘導レーザアブレーション、放射状破砕、中心領域の溶融、およびシリコン基板の大面積燃焼を含む。
【0061】
図5Bには、図5Aに示したレーザ損傷クレータの内部からのEDXスペクトル応答の一例を、詳細に示す。スペクトル応答の詳細は、以下の表1に示されている。結果は、高温化および破損は、シリコン基板に影響を及ぼすのみならず、回路および画素の損傷につながることを示す。例えば、前面EDX走査の結果から、マグネシウムおよびニッケルのような溶融金属が観測された。
【0062】
【表1】
(実施例2−グラフェン/高分子SLF)
示された1または2以上のSLFの使用により、前述の一部または全ての損傷が軽減された。例えば、図6Aおよび6Bには、ガラス基板上に成膜されたグラフェン-エポキシ層の2つの画像を示す。これらの2つの画像では、EPOTEK接着剤に埋設されたグラフェンの、2つの別個のランダムに分布するクラスタが定められる。画像は、62.5倍の倍率でオリジナルから取得され、その後2倍に拡大されている。図6Aの画像は、2%のナノ粉末グラフェン/エポキシ混合物から取得された。この混合物は、必須のエポキシとして、EPOTEK353NDおよび327を含む。図6Bの画像では、エポキシ中のナノ粉末グラフェンの濃度を伝達し、70%の透過率を得た。
【0063】
(実施例3−SLFの特性結果の一例)
図7には、溶融シリカガラス基板上に成膜された約100μmの厚さの高分子膜を有する、グラフェン/高分子SLFの制限効果のチャートを示す。高分子中のグラフェンの質量濃度は、約2%であった。得られた透過率は、約80%である。この結果は、グラフェン/高分子SLFにより、検出器に対する損傷の制限が可能となることを示している。例えば、好ましくない放射線の強度が増加すると、リミッタは、検出器の機能(Y軸のエネルギースケールに対する出力エネルギーで示されている)を、あるレベル(X軸のエネルギースケールにおいて、約400以下から)まで保護することができる。
【0064】
図8Aおよび8Bには、2つの異なる基板上に生じたレーザ損傷の結果を比較して示す。図8Aには、検出器の上に300μm設置されたCNT/C60の層でコーティングされた、従来のガラス基板上のレーザにより生じる損傷を示す。図8Bには、FPA検出器に直接設置された1または2以上のグラフェンの層がコーティングされた、従来のガラス基板上に生じるレーザ損傷を示す。図に示すように、グラフェンリミッタが使用された場合、損傷は、大きく低減されている。グラフェンリミッタの材料は、例えば溶融により、犠牲的機能を示す。グラフェンの溶融により、レーザのエネルギーの減衰が助長され、これにより、検出器への損傷が制限される。
【0065】
本願に記載のSLF装置は、他の半導体系フィルタを超える1または2以上の利点を提供しても良い。例えば、SLFのガラス基板は、光センサおよび検出器のような光学装置の焦点面に近接して配置されても良い。SLFは、優れた光品質を提供し、パルスレーザの損傷から、検出器を保護することができても良い。また、SLFは、自発的に機能し、これは、光学装置の全体的な機能において、パッシブな役割を示すことを意味する。SLFは、異なる種類の市販のCCD焦点面において、好ましくない光ビームの適当な遮蔽を提供し、高解像度アレイを提供しても良い。また、SLFを統合するいくつかの構成の選択肢も利用できる。例えば、市販のFPA、CCDカメラ、または他の検出器/センサ装置のシリコン基板上に、1または2以上のグラフェンの層を直接成膜しても良い。別の例では、高分子/グラフェン保護層は、センサの光路に挿入される安価なガラス基板の上に、リソグラフィ技術でコーティングしても良い。また、SLFは、高い量子効率および作動感度を提供しても良い。また、SLFの使用により、高い光透過率が得られ、例えば80〜85%の値が得られる。また、SLFは安価であり、センサ製造プロセスに統合する上でコスト効率が高い。例えば、低い歩留まりおよび高い製造コストとなる通常の半導体フィルタに比べて、一回の製造ランにおいて、低製造コストおよび高歩留まりで、数ダースのSLFフィルタを製造することができる。
【0066】
このように、本発明の少なくとも一つの主要グラフェンネットワーク系実施例の示されたいくつかの態様に関し、当業者には、各種変更、変形および改良が容易に生じることが想定される。そのような変更、変形および改良は、本発明の一部であることが意図される。本発明は、明細書に記載されまたは図面に示された部材の配置および構成の細部の適用に限定されるものではない。本発明は、他の実施例または各種方法で実施することができる。また、本願に使用された用語および専門用語は、限定的なものとみなしてはならない。「含む」、「有する」、「持つ」、「含有する」、「包含する」という用語、およびこれらの変化形は、その後記載された事項、その等価物、および追加の事項を包含することを意図するものである。記載された実施例が光電気構造およびBGBOLの製造技術に関する場合であっても、これらの実施例は、単に、一例を示すために提供されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。BGBOL部材および製造技術の他のおよび各種詳細な構成は、本発明の範囲に属することが考慮される。本発明の態様および実施例は、いくつかの追加のレーザ硬化サブ部材(層、スペーサなど)を含み、これらは、光電気センサのより良好な保護のために使用され、BGBOLの光電気サブ部材内に統合されても良い。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B