【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、疎水性粒子に対して良好な分散性を発揮することができる重合体について種々検討したところ、カルボン酸系単量体由来の構造単位と疎水性基含有単量体由来の構造単位とを特定の割合で有し、特定の重量平均分子量を有する共重合体が疎水性粒子に対する優れた分散性能を発揮することを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち本発明は、下記式(1);
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、R
0は、水素原子又はCH
3基を表す。R
aは、CH
2基、CH
2CH
2基又は直接結合を表す。R
bは、CH
2基、CH
2CH
2基又は直接結合を表す。X
1は、(O−CH
2−CH(OH))で表される単位の数を表し、0又は1の数である。X
2は、(O−CH
2−CH
2)で表される単位の数を表し、0〜5の数である。ただし、R
a及びR
bが直接結合、かつ、X
1が0である場合は、X
2は1〜5の数である。R
1は、炭素数1〜20の疎水性有機基を表す。)で表される疎水性基含有単量体由来の構造単位(A)とカルボン酸系単量体由来の構造単位(B)とを有する疎水性基含有共重合体であって、上記共重合体は、共重合体における構造単位(A)の割合が、全単量体由来の構造単位100質量%に対して16質量%以上、50質量%以下であり、共重合体の重量平均分子量が、10000〜1000000である疎水性基含有共重合体である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0013】
本発明の疎水性基含有共重合体は、上記式(1)で表される疎水性基含有単量体由来の構造単位(A)とカルボン酸系単量体由来の構造単位(B)とを有する共重合体である。
上記疎水性基含有単量体は、上記式(1)のR
1において、炭素数1〜20の疎水性有機基を有するため、本発明の疎水性基含有共重合体は、疎水性の相互作用により疎水性粒子とのなじみが良く、粒子の凝集を防いで、疎水性粒子を分散させることができる。これにより、疎水性の粒子の凝集を抑制することができる。また、上記疎水性基含有共重合体は、カルボン酸系単量体由来の構造単位(B)を有することによって、本発明の疎水性基含有共重合体の水溶性が良好になる。したがって、本発明の疎水性基含有共重合体は、構造単位(A)と構造単位(B)とを有することにより、水等の親水性溶媒中の疎水性粒子に対する良好な分散性能を発揮することができる。
【0014】
本発明の疎水性基含有共重合体における構造単位(A)の割合は、全単量体由来の構造単位100質量%に対して16質量%以上、50質量%以下である。構造単位(A)の割合が、16質量%以上であれば、本発明の共重合体の疎水性が充分なものとなり、50質量%以下であれば、本発明の共重合体の水溶性が充分なものとなる。
上記構造単位(A)の割合として好ましくは18〜50質量%であり、より好ましくは20〜49質量%であり、更に好ましくは21〜47質量%であり、一層好ましくは25〜45質量%であり、より一層好ましくは28〜42質量%であり、特に好ましくは30〜40質量%である。
【0015】
本発明の疎水性基含有共重合体における構造単位(B)の割合は、特に制限されないが、全単量体由来の構造単位100質量%に対して50〜84質量%であることが好ましい。より好ましくは50〜82質量%であり、更に好ましくは51〜80質量%であり、一層好ましくは53〜79質量%であり、より一層好ましくは55〜75質量%であり、特に好ましくは58〜72質量%であり、特に一層好ましくは60〜70質量%である。構造単位(B)の割合が、上記好ましい範囲であれば、本発明の共重合体の水溶性がより充分なものとなる。
本発明において、上記カルボン酸系単量体由来の構造単位(B)の割合を計算する場合は、対応する酸に換算して計算するものとする。例えば、上記構造単位(B)が、アクリル酸ナトリウム由来の構造単位−CH
2−CH(COONa)−であれば、対応する酸であるアクリル酸由来の構造単位−CH
2−CH(COOH)−として、質量割合(質量%)の計算をする。
なお、同様に、単量体成分におけるカルボン酸系単量体の質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸に換算して計算するものとする。例えば、アクリル酸ナトリウムであれば、対応する酸であるアクリル酸として質量割合(質量%)の計算をする。
【0016】
本発明の疎水性基含有共重合体の重量平均分子量は、10000〜1000000である。
重量平均分子量が10000以上であれば、疎水性基含有共重合体の分散性能を充分に発揮することができる。この理由としては、共重合体の重量平均分子量が10000以上であれば、ミクロ相分離が生じ、共重合体の疎水性が部分的により大きくなることによることが考えられる。
重量平均分子量として好ましくは10000〜500000であり、より好ましくは10000〜100000であり、更に好ましくは10000〜50000である。
重量平均分子量が上記好ましい範囲であれば、共重合体の粘度をより好適な範囲とすることができ、取扱いに優れるものとなる。通常、共重合体の重量平均分子量が大きい方が、分散性能に優れる傾向があるが、上述の疎水性基含有共重合体における構造単位(A)の割合を上記好ましい範囲とすることにより、重量平均分子量を小さくした場合にも、充分な分散性能を発揮することができる。したがって、疎水性基含有共重合体における構造単位(A)の割合を上記好ましい範囲とすることと、重量平均分子量を上記好ましい範囲とすることとを組み合わせることにより、本発明の疎水性基含有共重合体は、取扱いに優れ、かつ、より充分な分散性能を発揮することができ、このような構造単位(A)の割合と重量平均分子量との組み合わせを有する疎水性基含有共重合体は、本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、本明細書中、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値であり、後述する測定条件にて測定することができる。
【0017】
本発明の疎水性基含有共重合体におけるカルボキシル基は、酸型であっても、塩型であってもよいが、当該疎水性基含有共重合体の全カルボキシル基100モル%に対して、30〜90モル%のカルボキシル基が、塩型であることが好ましい。塩型のカルボキシル基の割合としてより好ましくは40〜80モル%、更に好ましくは50〜70モル%である。後述する製造方法において、重合反応中若しくは重合反応後に中和工程を行うことにより、又は、カルボキシル基の一部が塩型であるカルボン酸系単量体を原料として用いることにより、塩型のカルボキシル基の割合を上記好ましい範囲とすることができる。
【0018】
(疎水性基含有単量体)
本発明の疎水性基含有共重合体は、上記式(1)で表される疎水性基含有単量体由来の構造単位(A)を有する。上記疎水性基含有単量体(以下、単量体(a)ともいう。)は、上記式(1)のR
1において、炭素数1〜20の疎水性有機基を有するため、疎水性の相互作用により疎水性粒子とのなじみが良く、粒子の凝集を防いで、疎水性粒子を分散させることができる。
【0019】
上記疎水性有機基としては特に制限されないが、例えば、炭化水素基等が挙げられる。
上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基 、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基が好ましく、より好ましくはアルキル基、アルケニル基であり、更に好ましくはアルキル基である。
また、上記疎水性有機基の炭素数としては、2〜18が好ましく、より好ましくは3〜12であり、更に好ましくは4〜6である。上記炭素数が4以上であれば疎水性をより充分に発揮することができ、6以下であれば、重合性をより充分に向上させることができる。
上記疎水性有機基は、疎水性である限り、ヘテロ原子を含んでいてもよく、例えば、上記炭化水素基において水素原子がハロゲン等によって置換されたものであってもよい。
【0020】
上記式(1)におけるX
2は、(O−CH
2−CH
2)で表される単位の数を表し、0〜5の数である。X
2が1〜5の場合、疎水性基含有単量体は、親水性をより向上させることができるため、水等の親水性溶媒を用いても共重合しやすいという特性を有する。
X
2としては、1〜3であることが好ましい。
また、X
2が0である場合、R
1で表される疎水性基の効果をより充分に発揮することができる。共重合体の疎水性の観点からは、X
2としては、0であることがより好ましい。
本発明の疎水性基含有共重合体は、親水性と疎水性とのバランスを良好なものとすることにより、親水性溶媒中の疎水性粒子に対する分散性能をより充分に発揮することができるため、共重合体における構造単位(B)の割合等に応じてX
2の値を調節することが好ましい。
【0021】
上記式(1)におけるR
0は、水素原子又はCH
3基であり、好ましくは水素原子である。
上記式(1)におけるR
aは、CH
2基、CH
2CH
2基又は直接結合であり、好ましくはCH
2基である。
上記式(1)におけるR
bは、CH
2基、CH
2CH
2基又は直接結合であり、好ましくはCH
2基である。
ただし、R
a及びR
bが直接結合、かつ、X
1が0である場合は、X
2は1〜5の数である。
【0022】
上記式(1)におけるX
1は、(O−CH
2−CH(OH))で表される単位の数を表し、0又は1の数である。X
1としては、1であることが好ましく、この場合、疎水性基含有単量体が水酸基を有することとなるため、疎水性基含有単量体の水溶性が向上し、重合性がより向上する。疎水性基含有単量体がこのような構造であれば、単量体成分において、疎水性基含有単量体の割合を増加させた場合であっても、より充分に重合反応を行うことができる。(O−CH
2−CH(OH))で表される構造は、例えば、グリシジル基とアルコール又はアルキレンオキシドの付加物等の水酸基とを反応させること等により形成される。
【0023】
上記疎水性基含有単量体としては、例えば、ビニルアルコール、アリルアルコール及びイソプレノール等の不飽和二重結合を有するアルコールに炭素数4〜6のアルキルグリシジルエーテルを反応させた化合物;上記不飽和二重結合を有するアルコールのエチレンオキシド付加物に炭素数4〜6のハロゲン化アルキルを反応させた化合物;アリルグリシジルエーテルに炭素数4〜6のアルコール又は炭素数4〜6のアルコールのエチレンオキシド付加物を反応させた化合物等が挙げられる。
上記炭素数としては、上述の疎水性有機基における炭素数のとおりである。
【0024】
上記疎水性基含有単量体としては、下記式(2);
【化2】
【0025】
(式中、R
0は、水素原子又はCH
3基を表す。R
aは、CH
2基、CH
2CH
2基又は直接結合を表す。R
1は、炭素数1〜20の疎水性有機基を表す。)で表される化合物が好ましい。
上記R
0としては、水素原子であることが好ましく、R
aとしては、CH
2基であることが好ましい。
式(2)における疎水性有機基の具体例及び好ましい例としては、上述の通りである。
【0026】
(カルボン酸系単量体)
本発明の疎水性基含有共重合体は、カルボン酸系単量体由来の構造単位(B)を有する。
上記カルボン酸系単量体(以下、単量体(b)ともいう)は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、カルボキシ基及び/又はカルボン酸塩基とを含む単量体である。
本発明の疎水性基含有共重合体は、構造単位(B)を有することによって、水溶性が良好になる。
【0027】
ここで、カルボキシ基及び/又はカルボン酸塩基を含むとは、−COOZ(Zは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される基を、1分子中に1個以上有することを意味する。金属原子としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム、鉄等が挙げられる。また、有機アミン基としては、モノエタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基;モノエチルアミン基、ジエチルアミン基、トリエチルアミン基等のアルキルアミン基;エチレンジアミン基、トリエチレンジアミン基等のポリアミン基等が挙げられる。上記カルボン酸塩基としては、これらの中でも、より好ましくはアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩であり、更に好ましくはナトリウム塩である。
【0028】
上記カルボン酸系単量体としては、1分子内に不飽和二重結合と1つのカルボキシ基(又はカルボン酸塩基)とを含む不飽和モノカルボン酸系単量体や、1分子内に不飽和二重結合と2つのカルボキシ基(又はカルボン酸塩基)とを含む不飽和ジカルボン酸系単量体が好適である。
【0029】
上記不飽和モノカルボン酸系単量体として具体的には、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸及びその誘導体等の不飽和カルボン酸や、これらの塩等が挙げられる。
上記不飽和ジカルボン酸系単量体として具体的には、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸、これらの塩、及び、これらの無水物等が挙げられる。また、これら不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22個のアルコールとのハーフエステル、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22のアミンとのハーフアミド、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2〜4のグリコールとのハーフエステル、マレアミド酸と炭素数2〜4のグリコールとのハーフアミド等であってもよい。
【0030】
上記カルボン酸系単量体の中でも、アクリル酸、アクリル酸塩、マレイン酸、マレイン酸塩が好適である。中でも、アクリル酸、アクリル酸塩を必須とすることがより好ましい。
【0031】
本発明の疎水性基含有共重合体は、その他の単量体(上記カルボン酸系単量体及び疎水性基含有単量体以外の単量体)に由来する構造単位(E)を有していてもよい。上記疎水性基含有共重合体は、構造単位(E)を1種のみ有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0032】
上記その他の単量体(以下、単量体(e)ともいう)は、上記単量体(a)及び(b)と共重合可能なものであれば特に限定されず、所望の効果によって適宜選択可能である。
上記その他の単量体(e)としては、具体的には、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸及、(メタ)アリルスルホン酸、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アリルオキシ−1−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらの塩等のスルホン酸(塩)基含有単量体;(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを付加した単量体、アルコキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル等のポリアルキレングリコール鎖含有単量体(単量体(a)に該当する単量体は除くものとする);ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環式芳香族炭化水素基を有するビニル芳香族系単量体;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアミン等のジアリルアルキルアミン等のアリルアミン等のアミノ基含有単量体及びこれらの四級化物;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のアミド系単量体;(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の水酸基含有単量体;ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体;スチレン、インデン、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;イソブチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
なお、上記四級化物は、上記アミノ基含有単量体に通常用いられる四級化剤を反応させることによって得られるものである。上記四級化剤としては、ハロゲン化アルキル、ジアルキル硫酸等が挙げられる。
【0033】
任意成分である上記その他の単量体(e)に由来する構造単位(E)の含有量としては、疎水性基含有共重合体を形成する全単量体に由来する構造単位の総量(すなわち構造単位(A)、(B)及び(E)の総量)100質量%に対して、0〜40質量%であることが好ましい。より好ましくは0〜20質量%であり、更に好ましくは0〜10質量%であり、特に好ましくは0質量%である。
なお、上記構造単位(E)がアミノ基含有単量体由来の構造単位である場合には、全単量体に由来する構造単位の総量に対する質量割合や、アミノ基含有単量体の、全単量体の総量に対する質量割合を算出する際には、対応する未中和アミンの質量割合として計算するものとする。例えば、その他の単量体(e)がビニルアミン塩酸塩の場合には、対応する未中和アミンであるビニルアミンの質量割合(質量%)を計算する。
また、四級化されたアミノ基を含有する単量体又はそれに由来する構造単位の質量割合(質量%)を計算する場合には、カウンターアニオンの質量は考慮しないで(含めないで)計算するものとする。
上記構造単位(E)が酸基含有単量体由来の構造単位である場合には、全単量体由来の構造単位の総量に対する質量割合(質量%)は、対応する酸に換算して計算するものとする。また、酸基含有単量体の、全単量体の総量に対する質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸に換算して計算するものとする。
【0034】
<疎水性基含有共重合体の製造方法>
本発明の疎水性基含有共重合体の製造は、特に制限されないが、例えば、上記単量体成分を重合する方法が挙げられる。
本発明の疎水性基含有共重合体の製造に用いる単量体成分は、上述のカルボン酸系単量体と疎水性基含有単量体とを必須として含み、任意に、その他の単量体を含んでいてもよい。
上記カルボン酸系単量体は、酸型であっても塩型(中和型)であってもよい。
上記単量体成分におけるカルボン酸系単量体、疎水性基含有単量体及びその他の単量体の含有割合は、上述のとおりである。
【0035】
(中和工程)
上記単量体成分に含まれるカルボン酸系単量体のすべてが酸型、又は、一部が塩型である場合、重合反応中及び/又は重合反応後に中和工程を行ってもよい。
好ましくは重合反応後において中和工程を行うことである。反応後にpHを中性付近に近づけることで、保存容器が金属の場合、腐食等をより充分に抑制することができる。
上記中和工程において、アルカリ成分を用いることが好ましい。
上記アルカリ成分としては、通常用いられているものを使用することができ、具体例としては、国際公開第2011/158945号に記載のものと同様のものが挙げられる。
上記アルカリ成分として好ましくはアルカリ金属の水酸化物であり、より好ましくは水酸化ナトリウムである。
上記中和工程で使用されるアルカリ成分の使用量は、上記疎水性基含有共重合体の全カルボキシル基に対するカルボキシル基の塩の割合が上述の範囲になるように設定することができる。
【0036】
(重合開始剤)
本発明のカルボン酸系水溶性重合体は、単量体成分を、重合開始剤(以下、開始剤ともいう)の存在下で重合して得ることが好ましい。
上記重合開始剤としては、通常重合開始剤として用いられているものを使用することができ、例えば、過硫酸塩;過酸化水素;アゾ系化合物;有機過酸化物等が好適である。これらの具体例としては、国際公開第2010/024448号に記載のものと同様のものが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。重合体の分子量分布が小さくなる傾向にあるので、1種のみを使用することが好ましい。上記重合開始剤として好ましくは過硫酸塩であり、より好ましくは過硫酸ナトリウムである。
上記重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、全単量体成分1モルに対して、10g以下であることが好ましく、より好ましくは1〜5gである。
【0037】
(連鎖移動剤)
本発明のカルボン酸系水溶性重合体の製造方法においては、重合開始剤の他に、連鎖移動剤を使用することも可能である。この際使用できる連鎖移動剤としては、分子量の調節ができる化合物であれば特に制限されず、通常連鎖移動剤として用いられているものを使用することができる。具体的には、チオール系連鎖移動剤;ハロゲン化物;第2級アルコール;亜リン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸、次亜リン酸塩等;亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びその塩(亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の、低級酸化物等が挙げられ、これらの具体例としては、国際公開第2010/024448号に記載のものと同様のものが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
上記連鎖移動剤の中でも、亜硫酸や亜硫酸塩を用いることが好適である。すなわち、連鎖移動剤として、亜硫酸及び/又は亜硫酸塩(以下、「亜硫酸(塩)」と称す。)を少なくとも用いることが好適である。
【0038】
上記亜硫酸(塩)としては、亜硫酸若しくは亜硫酸水素、又は、これらの塩をいい、亜硫酸/亜硫酸水素が塩である形態が好適である。亜硫酸/亜硫酸水素が塩である場合、上記した例に加えて、金属原子、アンモニウム又は有機アンモニウムの塩が好適である。上記金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の一価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の二価の金属原子;アルミニウム、鉄等の三価の金属原子等の塩が好ましい。また、有機アンモニウム(有機アミン)としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンや、トリエチルアミン等が好適である。更に、アンモニウムであってもよい。ゆえに、本発明で好ましく使用される亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられ、亜硫酸水素ナトリウムが特に好適である。
なお、上記亜硫酸(塩)は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0039】
上記連鎖移動剤の添加量は、特に制限されないが、全単量体成分1モルに対して、1〜20gであることが好ましい。より好ましくは2〜15gである。1g未満であると、分子量の制御ができないおそれがあり、逆に、20gを超えると、連鎖移動剤が残留したり、重合体純分が低下したりするおそれがある。
【0040】
(分解触媒、還元性化合物)
本発明の疎水性基含有共重合体の製造方法は、重合開始剤等の他に、重合開始剤の分解触媒や還元性化合物(反応促進剤ともいう)を使用(重合系に添加)してもよい。
上記重合開始剤の分解触媒や還元性化合物として作用する化合物としては、重金属イオン(又は重金属塩)が挙げられる。すなわち、本発明の疎水性基含有共重合体の製造方法は、重合開始剤等の他に、重金属イオン(又は重金属塩)を使用(重合系に添加)してもよい。なお、本明細書中、重金属イオンとは、比重が4g/cm
3以上の金属を意味する。
【0041】
上記重金属イオンとしては、これらの具体例としては、国際公開第2010/024448号に記載のものと同様のものが挙げられる。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。
上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe
2+であっても、Fe
3+であってよく、これらが組み合わされていてもよい。
上記重金属イオンとして鉄を用いる場合、モール塩(Fe(NH
4)
2(SO
4)
2・6H
2O)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の重金属塩等を用いることが好ましい。
【0042】
上記重金属イオンの含有量は、また、重合反応完結時(重合反応後に中和工程を行う場合には中和後)における重合反応液の全質量に対して0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm以上であると、重金属イオンによる効果をより充分に発現することができ、10ppm以下であれば、得られる重合体を色調により優れたものとすることができる。
【0043】
本発明の疎水性基含有共重合体(水溶液)の製造方法は、上記重合開始剤、連鎖移動剤、反応促進剤の他にも、必要に応じてpH調節剤、緩衝剤等を用いることができる。
【0044】
(重合溶液)
本発明の疎水性基含有共重合体は、溶液重合で製造することが好ましい。この際使用できる溶媒は、全溶媒に対して50質量%が水である混合溶媒又は水であることが好ましい。溶媒としては水のみを使用することがより好ましい。ここで重合の際、水とともに使用できる有機溶剤としては、通常用いられているものを使用することができ、具体例としては、国際公開第2010/024448号に記載のものと同様のものが挙げられる。
【0045】
重合反応は、好ましくは、重合終了後の固形分濃度(溶液の内、不揮発分の濃度であり、後述する測定方法で測定される)が、重合溶液100質量%に対して10〜60質量%であり、15〜50質量%がより好ましく、20〜45質量%が更に好ましい。
【0046】
(その他の製造条件)
上記重合の際の温度は好ましくは70℃以上であり、より好ましくは75〜110℃であり、更に好ましくは80〜105℃である。
重合反応における反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよい。
反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気または不活性雰囲気でもよく、特に限定はなく、経済的には、空気雰囲気で行うことが好ましい。
【0047】
本発明の製造方法は、全ての使用原料の添加が終了した以後に、単量体の重合率を上げること等を目的として熟成工程を設けても良い。熟成時間は、通常1〜120分間、好ましくは10〜100分間、より好ましくは30〜60分間である。熟成時間が1分間未満の場合には、熟成不十分につき単量体成分が残ることがあり、残存単量体に起因する不純物を形成し性能が低下する傾向にある。
熟成工程における好ましい重合体溶液の温度は、上記重合温度と同様の範囲である。
【0048】
<疎水性基含有共重合体の用途>
本発明の疎水性基含有共重合体(又はそれを含む重合体組成物)としては、疎水性粒子の分散性能に優れるため、例えば、ピッチコントロール剤、顔料分散剤の用途に好適に用いることができ、また、洗剤ビルダー又は洗剤組成物等の用途にも好適に用いることができる。
以下では、ピッチコントロール剤、顔料分散剤、洗剤ビルダー・洗剤組成物の用途を例に挙げ、これらの用途に本発明の疎水性基含有共重合体を用いた場合について、説明する。
【0049】
<ピッチコントロール剤>
本発明は、本発明の疎水性基含有共重合体を含むピッチコントロール剤でもある。
上記ピッチコントロール剤における疎水性基含有共重合体の含有量は、特に制限されないが、ピッチコントロール剤100質量%に対して、好ましくは20〜100質量%であり、より好ましくは50〜100質量%である。
【0050】
上記ピッチコントロール剤は、上記疎水性基含有共重合体の他にその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、特に制限されないが、例えば、キレート剤、界面活性剤及び従来のピッチコントロール剤等が挙げられる。
【0051】
上記キレート剤としては、特に制限されないが、例えば、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)及びこれらの塩等のアミノカルボン酸(塩);ヒドロキシエチリデンジホスホン酸等のホスホン酸類;クエン酸、コハク酸、シュウ酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸及びこれらの塩等のカルボン酸(塩)等が挙げられる。
【0052】
上記界面活性剤としては、特に制限されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。
上記従来のピッチコントロール剤としては、特に制限されないが、例えば、タルク、カチオンポリマー、溶剤、酵素等が挙げられる。
【0053】
上記ピッチコントロール剤におけるその他の添加剤の含有量は、特に制限されないが、ピッチコントロール剤100質量%に対して、好ましくは0〜80質量%であり、より好ましくは0〜50質量%である。
【0054】
<顔料分散剤>
本発明は、本発明の疎水性基含有共重合体を含む顔料分散剤でもある。
上記顔料分散剤における疎水性基含有共重合体の含有量は、特に制限されないが、顔料分散剤100質量%に対して、好ましくは20〜100質量%であり、より好ましくは50〜100質量%である。
【0055】
上記顔料分散剤は、上記疎水性基含有共重合体の他にその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、特に制限されないが、例えば、縮合リン酸及びその塩、ホスホン酸及びその塩、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0056】
上記顔料分散剤におけるその他の添加剤の含有量は、特に制限されないが、顔料分散剤100質量%に対して、好ましくは0〜80質量%であり、より好ましくは0〜50質量%である。
【0057】
<洗剤ビルダー・洗剤組成物>
本発明は、本発明の疎水性基含有共重合体を含む洗剤ビルダー又は洗剤組成物でもある。
上記洗剤組成物における疎水性基含有共重合体の含有量は、特に制限されないが、優れたビルダー性能を発揮しうるという観点からは、疎水性基含有共重合体の含有量は、洗剤組成物の全量に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、更に好ましくは0.5〜5質量%である。
【0058】
洗剤用途で用いられる洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。これらの界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗剤分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
【0059】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群から選択される1種又は2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
【0060】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸又はエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステル又はその塩、アルケニルリン酸エステル又はその塩等が好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0061】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0062】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0063】
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して10〜60質量%であり、好ましくは15〜50質量%であり、更に好ましくは20〜45質量%であり、特に好ましくは25〜40質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、十分な洗浄力を発揮できなくなる虞があり、界面活性剤の配合割合が多すぎると、経済性が低下する虞がある。
【0064】
添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
【0065】
上記洗剤組成物は、本発明の疎水性基含有共重合体に加えて、他の洗剤ビルダーを含んでもよい。他の洗剤ビルダーとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩などのアルカリビルダーや、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、(メタ)アクリル酸の共重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体、フマル酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシル誘導体等が挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニウム、アミン等が挙げられる。
【0066】
上記添加剤と他の洗剤ビルダーの合計の配合割合は、通常、洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.2〜40質量%であり、更に好ましくは0.3〜35質量%であり、特に好ましくは0.4〜30質量%であり、最も好ましくは0.5〜20質量%である。添加剤/他の洗剤ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなる虞があり、50質量%を超えると経済性が低下する虞がある。
【0067】
なお、上記洗剤組成物の概念には、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含まれる。
【0068】
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物の全量に対して0.1〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜70質量%であり、更に好ましくは0.5〜65質量%であり、更により好ましくは0.7〜60質量%であり、特に好ましくは1〜55質量%であり、最も好ましくは1.5〜50質量%である。
【0069】
上記洗浄剤組成物に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。
【0070】
上記酵素の添加量は、洗浄剤組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
【0071】
上記洗剤組成物は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの濃度が高い硬水(例えば、100mg/L以上)の地域中で使用しても、塩の析出が少なく、優れた洗浄効果を有する。この効果は、洗剤組成物が、LASのようなアニオン界面活性剤を含む場合に特に顕著である。