特許第6193504号(P6193504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193504
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】疎水性基含有共重合体
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/02 20060101AFI20170828BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20170828BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20170828BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   D21H21/02
   C09B67/20 L
   C09D17/00
   C08F220/06
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-549803(P2016-549803)
(86)(22)【出願日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】JP2016057510
(87)【国際公開番号】WO2016152547
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2016年8月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-63199(P2015-63199)
(32)【優先日】2015年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道尭 大祐
(72)【発明者】
【氏名】高橋 光
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/024448(WO,A1)
【文献】 特開2013−189586(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/024468(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/024469(WO,A1)
【文献】 特開2012−167407(JP,A)
【文献】 特開2016−065344(JP,A)
【文献】 特開平01−174511(JP,A)
【文献】 特表2015−522697(JP,A)
【文献】 特表2015−533860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 21/02
C08F 220/06
C09B 67/20
C09D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1);
【化1】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。Xは、(O−CH−CH(OH))で表される単位の数を表し、0又は1の数である。Xは、(O−CH−CH)で表される単位の数を表し、0〜5の数である。ただし、R及びRが直接結合、かつ、Xが0である場合は、Xは1〜5の数である。Rは、炭素数1〜20の疎水性有機基を表す。)で表される疎水性基含有単量体由来の構造単位(A)とカルボン酸系単量体由来の構造単位(B)とを有する疎水性基含有共重合体であって、
該共重合体は、共重合体における構造単位(A)の割合が、全単量体由来の構造単位100質量%に対して25質量%以上、49質量%以下であり、
共重合体の重量平均分子量が、10000〜1000000である疎水性基含有共重合体を含むことを特徴とするピッチコントロール剤。
【請求項2】
下記式(1);
【化2】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。Xは、(O−CH−CH(OH))で表される単位の数を表し、0又は1の数である。Xは、(O−CH−CH)で表される単位の数を表し、0〜5の数である。ただし、R及びRが直接結合、かつ、Xが0である場合は、Xは1〜5の数である。Rは、炭素数1〜20の疎水性有機基を表す。)で表される疎水性基含有単量体由来の構造単位(A)とカルボン酸系単量体由来の構造単位(B)とを有する疎水性基含有共重合体であって、
該共重合体は、共重合体における構造単位(A)の割合が、全単量体由来の構造単位100質量%に対して25質量%以上、49質量%以下であり、
共重合体の重量平均分子量が、10000〜1000000である疎水性基含有共重合体を含むことを特徴とする顔料分散剤。
【請求項3】
前記疎水性基含有単量体は、下記式(2);
【化3】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。Rは、炭素数1〜20の疎水性有機基を表す。)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のピッチコントロール
【請求項4】
前記疎水性基含有単量体は、下記式(2);
【化4】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。Rは、炭素数1〜20の疎水性有機基を表す。)で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の顔料分散剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性基含有共重合体に関する。より詳しくは、ピッチコントロール剤、顔料分散剤及び洗剤ビルダー等に有用な疎水性基含有共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙の工程において、原料木材に含まれる粘着樹脂成分や、パルプ中に混入した接着剤や合成樹脂などは「ピッチ」と呼ばれている。ピッチ粒子はパルプスラリー中でコロイド状に分散した状態となっているが、ピッチ粒子は疎水性が高いため、水中で、凝集し肥大化する。製紙工程では、このようなピッチが原因で発生する紙切れや穴あきなどの問題が発生する。このような問題に対して、従来から、ピッチを除去するために種々のピッチコントロール剤及びピッチ抑制方法が検討されている。
【0003】
このような技術として、例えば、特許文献1には、パルプ原料から水を用いてパルプを製造するパルプ製造設備を含む施設におけるピッチ抑制方法であって、前記パルプ製造設備内の対象箇所における水中のカルシウムに対するキレート剤のモル比(キレート剤/カルシウム)が1/5以下となるように、前記パルプ製造設備内のパルプ又はその中間体と水とが接触する箇所にキレート剤を添加する工程を含み、前記キレート剤が、エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン5酢酸及びその塩、トリエチレンテトラアミン6酢酸及びその塩、並びにグリコールエーテルジアミン4酢酸及びその塩の1種又は2種以上を含むものであるピッチ抑制方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、特定の(メタ)アクリロイロキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩由来の構成単位と、特定の(メタ)アクリル酸またはその塩由来の構成単位からなるポリマーを有効成分として含有することを特徴とする製紙工程用ピッチコントロール剤が開示されている。
【0005】
ところで、疎水性基を有する共重合体としては、疎水性基を有する単量体とカルボン酸系単量体との共重合体等が、洗剤ビルダー等として用いられている。このような技術として、例えば、特許文献3には、特定のエーテル結合含有単量体(A)由来の構造単位(a)と、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)とを含み、全ての単量体由来の構造単位100質量%に対し、構造単位(a)が1〜50質量%、構造単位(b)が50〜99質量%であることを特徴とする疎水基含有共重合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−28887号公報
【特許文献2】特開2003−221798号公報
【特許文献3】国際公開第2010/024448号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、製紙工程においてピッチを除去するための種々の技術が開示されているが、ピッチ等の疎水性の粒子を分散することができる重合体については、分散性の点で充分とはいえず、更なる重合体を開発する余地があった。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、疎水性粒子に対して良好な分散性を発揮することができる重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、疎水性粒子に対して良好な分散性を発揮することができる重合体について種々検討したところ、カルボン酸系単量体由来の構造単位と疎水性基含有単量体由来の構造単位とを特定の割合で有し、特定の重量平均分子量を有する共重合体が疎水性粒子に対する優れた分散性能を発揮することを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち本発明は、下記式(1);
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。Xは、(O−CH−CH(OH))で表される単位の数を表し、0又は1の数である。Xは、(O−CH−CH)で表される単位の数を表し、0〜5の数である。ただし、R及びRが直接結合、かつ、Xが0である場合は、Xは1〜5の数である。Rは、炭素数1〜20の疎水性有機基を表す。)で表される疎水性基含有単量体由来の構造単位(A)とカルボン酸系単量体由来の構造単位(B)とを有する疎水性基含有共重合体であって、上記共重合体は、共重合体における構造単位(A)の割合が、全単量体由来の構造単位100質量%に対して16質量%以上、50質量%以下であり、共重合体の重量平均分子量が、10000〜1000000である疎水性基含有共重合体である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0013】
本発明の疎水性基含有共重合体は、上記式(1)で表される疎水性基含有単量体由来の構造単位(A)とカルボン酸系単量体由来の構造単位(B)とを有する共重合体である。
上記疎水性基含有単量体は、上記式(1)のRにおいて、炭素数1〜20の疎水性有機基を有するため、本発明の疎水性基含有共重合体は、疎水性の相互作用により疎水性粒子とのなじみが良く、粒子の凝集を防いで、疎水性粒子を分散させることができる。これにより、疎水性の粒子の凝集を抑制することができる。また、上記疎水性基含有共重合体は、カルボン酸系単量体由来の構造単位(B)を有することによって、本発明の疎水性基含有共重合体の水溶性が良好になる。したがって、本発明の疎水性基含有共重合体は、構造単位(A)と構造単位(B)とを有することにより、水等の親水性溶媒中の疎水性粒子に対する良好な分散性能を発揮することができる。
【0014】
本発明の疎水性基含有共重合体における構造単位(A)の割合は、全単量体由来の構造単位100質量%に対して16質量%以上、50質量%以下である。構造単位(A)の割合が、16質量%以上であれば、本発明の共重合体の疎水性が充分なものとなり、50質量%以下であれば、本発明の共重合体の水溶性が充分なものとなる。
上記構造単位(A)の割合として好ましくは18〜50質量%であり、より好ましくは20〜49質量%であり、更に好ましくは21〜47質量%であり、一層好ましくは25〜45質量%であり、より一層好ましくは28〜42質量%であり、特に好ましくは30〜40質量%である。
【0015】
本発明の疎水性基含有共重合体における構造単位(B)の割合は、特に制限されないが、全単量体由来の構造単位100質量%に対して50〜84質量%であることが好ましい。より好ましくは50〜82質量%であり、更に好ましくは51〜80質量%であり、一層好ましくは53〜79質量%であり、より一層好ましくは55〜75質量%であり、特に好ましくは58〜72質量%であり、特に一層好ましくは60〜70質量%である。構造単位(B)の割合が、上記好ましい範囲であれば、本発明の共重合体の水溶性がより充分なものとなる。
本発明において、上記カルボン酸系単量体由来の構造単位(B)の割合を計算する場合は、対応する酸に換算して計算するものとする。例えば、上記構造単位(B)が、アクリル酸ナトリウム由来の構造単位−CH−CH(COONa)−であれば、対応する酸であるアクリル酸由来の構造単位−CH−CH(COOH)−として、質量割合(質量%)の計算をする。
なお、同様に、単量体成分におけるカルボン酸系単量体の質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸に換算して計算するものとする。例えば、アクリル酸ナトリウムであれば、対応する酸であるアクリル酸として質量割合(質量%)の計算をする。
【0016】
本発明の疎水性基含有共重合体の重量平均分子量は、10000〜1000000である。
重量平均分子量が10000以上であれば、疎水性基含有共重合体の分散性能を充分に発揮することができる。この理由としては、共重合体の重量平均分子量が10000以上であれば、ミクロ相分離が生じ、共重合体の疎水性が部分的により大きくなることによることが考えられる。
重量平均分子量として好ましくは10000〜500000であり、より好ましくは10000〜100000であり、更に好ましくは10000〜50000である。
重量平均分子量が上記好ましい範囲であれば、共重合体の粘度をより好適な範囲とすることができ、取扱いに優れるものとなる。通常、共重合体の重量平均分子量が大きい方が、分散性能に優れる傾向があるが、上述の疎水性基含有共重合体における構造単位(A)の割合を上記好ましい範囲とすることにより、重量平均分子量を小さくした場合にも、充分な分散性能を発揮することができる。したがって、疎水性基含有共重合体における構造単位(A)の割合を上記好ましい範囲とすることと、重量平均分子量を上記好ましい範囲とすることとを組み合わせることにより、本発明の疎水性基含有共重合体は、取扱いに優れ、かつ、より充分な分散性能を発揮することができ、このような構造単位(A)の割合と重量平均分子量との組み合わせを有する疎水性基含有共重合体は、本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、本明細書中、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値であり、後述する測定条件にて測定することができる。
【0017】
本発明の疎水性基含有共重合体におけるカルボキシル基は、酸型であっても、塩型であってもよいが、当該疎水性基含有共重合体の全カルボキシル基100モル%に対して、30〜90モル%のカルボキシル基が、塩型であることが好ましい。塩型のカルボキシル基の割合としてより好ましくは40〜80モル%、更に好ましくは50〜70モル%である。後述する製造方法において、重合反応中若しくは重合反応後に中和工程を行うことにより、又は、カルボキシル基の一部が塩型であるカルボン酸系単量体を原料として用いることにより、塩型のカルボキシル基の割合を上記好ましい範囲とすることができる。
【0018】
(疎水性基含有単量体)
本発明の疎水性基含有共重合体は、上記式(1)で表される疎水性基含有単量体由来の構造単位(A)を有する。上記疎水性基含有単量体(以下、単量体(a)ともいう。)は、上記式(1)のRにおいて、炭素数1〜20の疎水性有機基を有するため、疎水性の相互作用により疎水性粒子とのなじみが良く、粒子の凝集を防いで、疎水性粒子を分散させることができる。
【0019】
上記疎水性有機基としては特に制限されないが、例えば、炭化水素基等が挙げられる。
上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基 、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基が好ましく、より好ましくはアルキル基、アルケニル基であり、更に好ましくはアルキル基である。
また、上記疎水性有機基の炭素数としては、2〜18が好ましく、より好ましくは3〜12であり、更に好ましくは4〜6である。上記炭素数が4以上であれば疎水性をより充分に発揮することができ、6以下であれば、重合性をより充分に向上させることができる。
上記疎水性有機基は、疎水性である限り、ヘテロ原子を含んでいてもよく、例えば、上記炭化水素基において水素原子がハロゲン等によって置換されたものであってもよい。
【0020】
上記式(1)におけるXは、(O−CH−CH)で表される単位の数を表し、0〜5の数である。Xが1〜5の場合、疎水性基含有単量体は、親水性をより向上させることができるため、水等の親水性溶媒を用いても共重合しやすいという特性を有する。
としては、1〜3であることが好ましい。
また、Xが0である場合、Rで表される疎水性基の効果をより充分に発揮することができる。共重合体の疎水性の観点からは、Xとしては、0であることがより好ましい。
本発明の疎水性基含有共重合体は、親水性と疎水性とのバランスを良好なものとすることにより、親水性溶媒中の疎水性粒子に対する分散性能をより充分に発揮することができるため、共重合体における構造単位(B)の割合等に応じてXの値を調節することが好ましい。
【0021】
上記式(1)におけるRは、水素原子又はCH基であり、好ましくは水素原子である。
上記式(1)におけるRは、CH基、CHCH基又は直接結合であり、好ましくはCH基である。
上記式(1)におけるRは、CH基、CHCH基又は直接結合であり、好ましくはCH基である。
ただし、R及びRが直接結合、かつ、Xが0である場合は、Xは1〜5の数である。
【0022】
上記式(1)におけるXは、(O−CH−CH(OH))で表される単位の数を表し、0又は1の数である。Xとしては、1であることが好ましく、この場合、疎水性基含有単量体が水酸基を有することとなるため、疎水性基含有単量体の水溶性が向上し、重合性がより向上する。疎水性基含有単量体がこのような構造であれば、単量体成分において、疎水性基含有単量体の割合を増加させた場合であっても、より充分に重合反応を行うことができる。(O−CH−CH(OH))で表される構造は、例えば、グリシジル基とアルコール又はアルキレンオキシドの付加物等の水酸基とを反応させること等により形成される。
【0023】
上記疎水性基含有単量体としては、例えば、ビニルアルコール、アリルアルコール及びイソプレノール等の不飽和二重結合を有するアルコールに炭素数4〜6のアルキルグリシジルエーテルを反応させた化合物;上記不飽和二重結合を有するアルコールのエチレンオキシド付加物に炭素数4〜6のハロゲン化アルキルを反応させた化合物;アリルグリシジルエーテルに炭素数4〜6のアルコール又は炭素数4〜6のアルコールのエチレンオキシド付加物を反応させた化合物等が挙げられる。
上記炭素数としては、上述の疎水性有機基における炭素数のとおりである。
【0024】
上記疎水性基含有単量体としては、下記式(2);
【化2】
【0025】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。Rは、炭素数1〜20の疎水性有機基を表す。)で表される化合物が好ましい。
上記Rとしては、水素原子であることが好ましく、Rとしては、CH基であることが好ましい。
式(2)における疎水性有機基の具体例及び好ましい例としては、上述の通りである。
【0026】
(カルボン酸系単量体)
本発明の疎水性基含有共重合体は、カルボン酸系単量体由来の構造単位(B)を有する。
上記カルボン酸系単量体(以下、単量体(b)ともいう)は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、カルボキシ基及び/又はカルボン酸塩基とを含む単量体である。
本発明の疎水性基含有共重合体は、構造単位(B)を有することによって、水溶性が良好になる。
【0027】
ここで、カルボキシ基及び/又はカルボン酸塩基を含むとは、−COOZ(Zは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される基を、1分子中に1個以上有することを意味する。金属原子としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム、鉄等が挙げられる。また、有機アミン基としては、モノエタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基;モノエチルアミン基、ジエチルアミン基、トリエチルアミン基等のアルキルアミン基;エチレンジアミン基、トリエチレンジアミン基等のポリアミン基等が挙げられる。上記カルボン酸塩基としては、これらの中でも、より好ましくはアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩であり、更に好ましくはナトリウム塩である。
【0028】
上記カルボン酸系単量体としては、1分子内に不飽和二重結合と1つのカルボキシ基(又はカルボン酸塩基)とを含む不飽和モノカルボン酸系単量体や、1分子内に不飽和二重結合と2つのカルボキシ基(又はカルボン酸塩基)とを含む不飽和ジカルボン酸系単量体が好適である。
【0029】
上記不飽和モノカルボン酸系単量体として具体的には、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸及びその誘導体等の不飽和カルボン酸や、これらの塩等が挙げられる。
上記不飽和ジカルボン酸系単量体として具体的には、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸、これらの塩、及び、これらの無水物等が挙げられる。また、これら不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22個のアルコールとのハーフエステル、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22のアミンとのハーフアミド、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2〜4のグリコールとのハーフエステル、マレアミド酸と炭素数2〜4のグリコールとのハーフアミド等であってもよい。
【0030】
上記カルボン酸系単量体の中でも、アクリル酸、アクリル酸塩、マレイン酸、マレイン酸塩が好適である。中でも、アクリル酸、アクリル酸塩を必須とすることがより好ましい。
【0031】
本発明の疎水性基含有共重合体は、その他の単量体(上記カルボン酸系単量体及び疎水性基含有単量体以外の単量体)に由来する構造単位(E)を有していてもよい。上記疎水性基含有共重合体は、構造単位(E)を1種のみ有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0032】
上記その他の単量体(以下、単量体(e)ともいう)は、上記単量体(a)及び(b)と共重合可能なものであれば特に限定されず、所望の効果によって適宜選択可能である。
上記その他の単量体(e)としては、具体的には、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸及、(メタ)アリルスルホン酸、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アリルオキシ−1−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらの塩等のスルホン酸(塩)基含有単量体;(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを付加した単量体、アルコキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル等のポリアルキレングリコール鎖含有単量体(単量体(a)に該当する単量体は除くものとする);ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環式芳香族炭化水素基を有するビニル芳香族系単量体;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアミン等のジアリルアルキルアミン等のアリルアミン等のアミノ基含有単量体及びこれらの四級化物;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のアミド系単量体;(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の水酸基含有単量体;ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体;スチレン、インデン、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;イソブチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
なお、上記四級化物は、上記アミノ基含有単量体に通常用いられる四級化剤を反応させることによって得られるものである。上記四級化剤としては、ハロゲン化アルキル、ジアルキル硫酸等が挙げられる。
【0033】
任意成分である上記その他の単量体(e)に由来する構造単位(E)の含有量としては、疎水性基含有共重合体を形成する全単量体に由来する構造単位の総量(すなわち構造単位(A)、(B)及び(E)の総量)100質量%に対して、0〜40質量%であることが好ましい。より好ましくは0〜20質量%であり、更に好ましくは0〜10質量%であり、特に好ましくは0質量%である。
なお、上記構造単位(E)がアミノ基含有単量体由来の構造単位である場合には、全単量体に由来する構造単位の総量に対する質量割合や、アミノ基含有単量体の、全単量体の総量に対する質量割合を算出する際には、対応する未中和アミンの質量割合として計算するものとする。例えば、その他の単量体(e)がビニルアミン塩酸塩の場合には、対応する未中和アミンであるビニルアミンの質量割合(質量%)を計算する。
また、四級化されたアミノ基を含有する単量体又はそれに由来する構造単位の質量割合(質量%)を計算する場合には、カウンターアニオンの質量は考慮しないで(含めないで)計算するものとする。
上記構造単位(E)が酸基含有単量体由来の構造単位である場合には、全単量体由来の構造単位の総量に対する質量割合(質量%)は、対応する酸に換算して計算するものとする。また、酸基含有単量体の、全単量体の総量に対する質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸に換算して計算するものとする。
【0034】
<疎水性基含有共重合体の製造方法>
本発明の疎水性基含有共重合体の製造は、特に制限されないが、例えば、上記単量体成分を重合する方法が挙げられる。
本発明の疎水性基含有共重合体の製造に用いる単量体成分は、上述のカルボン酸系単量体と疎水性基含有単量体とを必須として含み、任意に、その他の単量体を含んでいてもよい。
上記カルボン酸系単量体は、酸型であっても塩型(中和型)であってもよい。
上記単量体成分におけるカルボン酸系単量体、疎水性基含有単量体及びその他の単量体の含有割合は、上述のとおりである。
【0035】
(中和工程)
上記単量体成分に含まれるカルボン酸系単量体のすべてが酸型、又は、一部が塩型である場合、重合反応中及び/又は重合反応後に中和工程を行ってもよい。
好ましくは重合反応後において中和工程を行うことである。反応後にpHを中性付近に近づけることで、保存容器が金属の場合、腐食等をより充分に抑制することができる。
上記中和工程において、アルカリ成分を用いることが好ましい。
上記アルカリ成分としては、通常用いられているものを使用することができ、具体例としては、国際公開第2011/158945号に記載のものと同様のものが挙げられる。
上記アルカリ成分として好ましくはアルカリ金属の水酸化物であり、より好ましくは水酸化ナトリウムである。
上記中和工程で使用されるアルカリ成分の使用量は、上記疎水性基含有共重合体の全カルボキシル基に対するカルボキシル基の塩の割合が上述の範囲になるように設定することができる。
【0036】
(重合開始剤)
本発明のカルボン酸系水溶性重合体は、単量体成分を、重合開始剤(以下、開始剤ともいう)の存在下で重合して得ることが好ましい。
上記重合開始剤としては、通常重合開始剤として用いられているものを使用することができ、例えば、過硫酸塩;過酸化水素;アゾ系化合物;有機過酸化物等が好適である。これらの具体例としては、国際公開第2010/024448号に記載のものと同様のものが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。重合体の分子量分布が小さくなる傾向にあるので、1種のみを使用することが好ましい。上記重合開始剤として好ましくは過硫酸塩であり、より好ましくは過硫酸ナトリウムである。
上記重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、全単量体成分1モルに対して、10g以下であることが好ましく、より好ましくは1〜5gである。
【0037】
(連鎖移動剤)
本発明のカルボン酸系水溶性重合体の製造方法においては、重合開始剤の他に、連鎖移動剤を使用することも可能である。この際使用できる連鎖移動剤としては、分子量の調節ができる化合物であれば特に制限されず、通常連鎖移動剤として用いられているものを使用することができる。具体的には、チオール系連鎖移動剤;ハロゲン化物;第2級アルコール;亜リン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸、次亜リン酸塩等;亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びその塩(亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の、低級酸化物等が挙げられ、これらの具体例としては、国際公開第2010/024448号に記載のものと同様のものが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
上記連鎖移動剤の中でも、亜硫酸や亜硫酸塩を用いることが好適である。すなわち、連鎖移動剤として、亜硫酸及び/又は亜硫酸塩(以下、「亜硫酸(塩)」と称す。)を少なくとも用いることが好適である。
【0038】
上記亜硫酸(塩)としては、亜硫酸若しくは亜硫酸水素、又は、これらの塩をいい、亜硫酸/亜硫酸水素が塩である形態が好適である。亜硫酸/亜硫酸水素が塩である場合、上記した例に加えて、金属原子、アンモニウム又は有機アンモニウムの塩が好適である。上記金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の一価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の二価の金属原子;アルミニウム、鉄等の三価の金属原子等の塩が好ましい。また、有機アンモニウム(有機アミン)としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンや、トリエチルアミン等が好適である。更に、アンモニウムであってもよい。ゆえに、本発明で好ましく使用される亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられ、亜硫酸水素ナトリウムが特に好適である。
なお、上記亜硫酸(塩)は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0039】
上記連鎖移動剤の添加量は、特に制限されないが、全単量体成分1モルに対して、1〜20gであることが好ましい。より好ましくは2〜15gである。1g未満であると、分子量の制御ができないおそれがあり、逆に、20gを超えると、連鎖移動剤が残留したり、重合体純分が低下したりするおそれがある。
【0040】
(分解触媒、還元性化合物)
本発明の疎水性基含有共重合体の製造方法は、重合開始剤等の他に、重合開始剤の分解触媒や還元性化合物(反応促進剤ともいう)を使用(重合系に添加)してもよい。
上記重合開始剤の分解触媒や還元性化合物として作用する化合物としては、重金属イオン(又は重金属塩)が挙げられる。すなわち、本発明の疎水性基含有共重合体の製造方法は、重合開始剤等の他に、重金属イオン(又は重金属塩)を使用(重合系に添加)してもよい。なお、本明細書中、重金属イオンとは、比重が4g/cm以上の金属を意味する。
【0041】
上記重金属イオンとしては、これらの具体例としては、国際公開第2010/024448号に記載のものと同様のものが挙げられる。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。
上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe2+であっても、Fe3+であってよく、これらが組み合わされていてもよい。
上記重金属イオンとして鉄を用いる場合、モール塩(Fe(NH(SO・6HO)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の重金属塩等を用いることが好ましい。
【0042】
上記重金属イオンの含有量は、また、重合反応完結時(重合反応後に中和工程を行う場合には中和後)における重合反応液の全質量に対して0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm以上であると、重金属イオンによる効果をより充分に発現することができ、10ppm以下であれば、得られる重合体を色調により優れたものとすることができる。
【0043】
本発明の疎水性基含有共重合体(水溶液)の製造方法は、上記重合開始剤、連鎖移動剤、反応促進剤の他にも、必要に応じてpH調節剤、緩衝剤等を用いることができる。
【0044】
(重合溶液)
本発明の疎水性基含有共重合体は、溶液重合で製造することが好ましい。この際使用できる溶媒は、全溶媒に対して50質量%が水である混合溶媒又は水であることが好ましい。溶媒としては水のみを使用することがより好ましい。ここで重合の際、水とともに使用できる有機溶剤としては、通常用いられているものを使用することができ、具体例としては、国際公開第2010/024448号に記載のものと同様のものが挙げられる。
【0045】
重合反応は、好ましくは、重合終了後の固形分濃度(溶液の内、不揮発分の濃度であり、後述する測定方法で測定される)が、重合溶液100質量%に対して10〜60質量%であり、15〜50質量%がより好ましく、20〜45質量%が更に好ましい。
【0046】
(その他の製造条件)
上記重合の際の温度は好ましくは70℃以上であり、より好ましくは75〜110℃であり、更に好ましくは80〜105℃である。
重合反応における反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよい。
反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気または不活性雰囲気でもよく、特に限定はなく、経済的には、空気雰囲気で行うことが好ましい。
【0047】
本発明の製造方法は、全ての使用原料の添加が終了した以後に、単量体の重合率を上げること等を目的として熟成工程を設けても良い。熟成時間は、通常1〜120分間、好ましくは10〜100分間、より好ましくは30〜60分間である。熟成時間が1分間未満の場合には、熟成不十分につき単量体成分が残ることがあり、残存単量体に起因する不純物を形成し性能が低下する傾向にある。
熟成工程における好ましい重合体溶液の温度は、上記重合温度と同様の範囲である。
【0048】
<疎水性基含有共重合体の用途>
本発明の疎水性基含有共重合体(又はそれを含む重合体組成物)としては、疎水性粒子の分散性能に優れるため、例えば、ピッチコントロール剤、顔料分散剤の用途に好適に用いることができ、また、洗剤ビルダー又は洗剤組成物等の用途にも好適に用いることができる。
以下では、ピッチコントロール剤、顔料分散剤、洗剤ビルダー・洗剤組成物の用途を例に挙げ、これらの用途に本発明の疎水性基含有共重合体を用いた場合について、説明する。
【0049】
<ピッチコントロール剤>
本発明は、本発明の疎水性基含有共重合体を含むピッチコントロール剤でもある。
上記ピッチコントロール剤における疎水性基含有共重合体の含有量は、特に制限されないが、ピッチコントロール剤100質量%に対して、好ましくは20〜100質量%であり、より好ましくは50〜100質量%である。
【0050】
上記ピッチコントロール剤は、上記疎水性基含有共重合体の他にその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、特に制限されないが、例えば、キレート剤、界面活性剤及び従来のピッチコントロール剤等が挙げられる。
【0051】
上記キレート剤としては、特に制限されないが、例えば、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)及びこれらの塩等のアミノカルボン酸(塩);ヒドロキシエチリデンジホスホン酸等のホスホン酸類;クエン酸、コハク酸、シュウ酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸及びこれらの塩等のカルボン酸(塩)等が挙げられる。
【0052】
上記界面活性剤としては、特に制限されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。
上記従来のピッチコントロール剤としては、特に制限されないが、例えば、タルク、カチオンポリマー、溶剤、酵素等が挙げられる。
【0053】
上記ピッチコントロール剤におけるその他の添加剤の含有量は、特に制限されないが、ピッチコントロール剤100質量%に対して、好ましくは0〜80質量%であり、より好ましくは0〜50質量%である。
【0054】
<顔料分散剤>
本発明は、本発明の疎水性基含有共重合体を含む顔料分散剤でもある。
上記顔料分散剤における疎水性基含有共重合体の含有量は、特に制限されないが、顔料分散剤100質量%に対して、好ましくは20〜100質量%であり、より好ましくは50〜100質量%である。
【0055】
上記顔料分散剤は、上記疎水性基含有共重合体の他にその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、特に制限されないが、例えば、縮合リン酸及びその塩、ホスホン酸及びその塩、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0056】
上記顔料分散剤におけるその他の添加剤の含有量は、特に制限されないが、顔料分散剤100質量%に対して、好ましくは0〜80質量%であり、より好ましくは0〜50質量%である。
【0057】
<洗剤ビルダー・洗剤組成物>
本発明は、本発明の疎水性基含有共重合体を含む洗剤ビルダー又は洗剤組成物でもある。
上記洗剤組成物における疎水性基含有共重合体の含有量は、特に制限されないが、優れたビルダー性能を発揮しうるという観点からは、疎水性基含有共重合体の含有量は、洗剤組成物の全量に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、更に好ましくは0.5〜5質量%である。
【0058】
洗剤用途で用いられる洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。これらの界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗剤分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
【0059】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群から選択される1種又は2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
【0060】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸又はエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステル又はその塩、アルケニルリン酸エステル又はその塩等が好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0061】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0062】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0063】
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して10〜60質量%であり、好ましくは15〜50質量%であり、更に好ましくは20〜45質量%であり、特に好ましくは25〜40質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、十分な洗浄力を発揮できなくなる虞があり、界面活性剤の配合割合が多すぎると、経済性が低下する虞がある。
【0064】
添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
【0065】
上記洗剤組成物は、本発明の疎水性基含有共重合体に加えて、他の洗剤ビルダーを含んでもよい。他の洗剤ビルダーとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩などのアルカリビルダーや、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、(メタ)アクリル酸の共重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体、フマル酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシル誘導体等が挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニウム、アミン等が挙げられる。
【0066】
上記添加剤と他の洗剤ビルダーの合計の配合割合は、通常、洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.2〜40質量%であり、更に好ましくは0.3〜35質量%であり、特に好ましくは0.4〜30質量%であり、最も好ましくは0.5〜20質量%である。添加剤/他の洗剤ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなる虞があり、50質量%を超えると経済性が低下する虞がある。
【0067】
なお、上記洗剤組成物の概念には、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含まれる。
【0068】
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物の全量に対して0.1〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜70質量%であり、更に好ましくは0.5〜65質量%であり、更により好ましくは0.7〜60質量%であり、特に好ましくは1〜55質量%であり、最も好ましくは1.5〜50質量%である。
【0069】
上記洗浄剤組成物に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。
【0070】
上記酵素の添加量は、洗浄剤組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
【0071】
上記洗剤組成物は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの濃度が高い硬水(例えば、100mg/L以上)の地域中で使用しても、塩の析出が少なく、優れた洗浄効果を有する。この効果は、洗剤組成物が、LASのようなアニオン界面活性剤を含む場合に特に顕著である。
【発明の効果】
【0072】
本発明の疎水性基含有共重合体は、上述の構成よりなり、疎水性粒子の分散性に優れるため、ピッチコントロール剤、顔料分散剤及び洗剤ビルダー・洗剤組成物等に好適に用いることができる。また、水処理剤、スケール防止剤、RO膜用スケール防止剤、油田用スケール防止剤などの用途にも好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0074】
<重量平均分子量の測定条件>
装置:東ソー社製高速GPC装置(HLC−8320GPC)
検出器:RI
カラム:昭和電工社製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ、GF−710−HQ、GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min
検量線:創和科学株式会社製 POLYACRYLIC ACID STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)
【0075】
<実施例1>
(単量体の合成)
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製4つ口フラスコに、n−ブチルアルコール370.0gと、ペレット状の水酸化ナトリウム4.27gを仕込み、攪拌しながら60℃まで昇温した。次に、アリルグリシジルエーテル(以下、「AGE」とも称する。)57.0gを30分かけて添加し、その後、5時間反応させた。この溶液を1,000mlのナスフラスコへ移し、ロータリーエバポレーターで脱溶媒した。ここに、20質量%塩化ナトリウム水溶液200.0gを加え、この水溶液を500mlの分液ロートへ移し、よく振り混ぜた後、分層するまで静置し、下層を取り除いた。残った上層を300mlのナスフラスコへ移し、ロータリーエバポレーターで脱溶媒した。析出してきた塩を濾過により取り除き、単量体(1)を得た。
【0076】
(重合)
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1,000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水100.0g及びモール塩0.0116gを仕込み、攪拌しながら85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する。)175.0g、単量体(1)60.0g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する。)49.8g、及び、35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(以下、「35%SBS」とも称する。)19.4gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、単量体(1)については120分間、15%NaPSについては210分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。滴下終了後、更に30分間、前記反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、「48%NaOH」とも称する。)137.8gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、固形分濃度46%の重合体水溶液を得た。重合体の重量平均分子量は55,000であった。
【0077】
<実施例2>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1,000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水100.0g及びモール塩0.0126gを仕込み、攪拌しながら85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%AAを159.4g、単量体(1)を85.0g、15%NaPSを88.9g、35%SBSを38.1g、実施例1と同様に滴下した。滴下終了後、更に30分間、前記反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOHを125.4g徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、固形分濃度46%の重合体水溶液を得た。重合体の重量平均分子量は18,000であった。
【0078】
<比較例1>
重量平均分子量50,000のポリアクリル酸ナトリウム(株式会社日本触媒製)45%水溶液を比較重合体(1)とした。
【0079】
<比較例2>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1,000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水146.8g、及びモール塩0.0186gを仕込み、攪拌しながら、85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%AA 270.0g、単量体(1)11g、15%NaPS 60g、及び、35%SBS 20gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、単量体(1)については140分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。80%AAの滴下終了後、更に30分間、前記反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH 197.5gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、固形分濃度45%の重合体水溶液を得た。重合体の重量平均分子量は35,000であった。
【0080】
<比較例3>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1,000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水146.8g、及びモール塩0.0186gを仕込み、攪拌しながら、85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%AA 270.0g、単量体(1)24g、15%NaPS 80g、及び、35%SBS 30gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、単量体(1)については140分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。80%AAの滴下終了後、更に30分間、前記反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH 197.5gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、固形分濃度45%の重合体水溶液を得た。重合体の重量平均分子量は60,000であった。
【0081】
<カーボンブラック分散能の測定>
上記実施例1〜2及び比較例1〜3で得られた重合体について、以下の方法により、カーボンブラック分散能の測定を行った。
カーボンブラック分散能の測定においては、まず、緩衝溶液、及び、0.1%重合体水溶液を調製した。上記緩衝溶液は、グリシン6.76g、塩化ナトリウム5.26gおよび48%水酸化ナトリウム0.50gに純水を加えて全量を60.0gとした後、塩化カルシウム・2水和物0.123g、塩化マグネシウム6水和物0.056gを加え、以上に純水を加えて1000.0gとした。上記0.1%重合体水溶液は、上記実施例1〜2又は比較例1〜3で得られる重合体を適量の水で希釈して固形分濃度0.1質量%に調製したものを用いた。
次に、上記各溶液及びカーボンブラック粉末を所定の順序及び所定の量で30mlの試験管に仕込んだ。この所定の順序及び所定の量は以下の通りである:第一番目としてカーボンブラック粉末0.03gを仕込み、第二番目として緩衝溶液27.0gを仕込み、最後に0.1%重合体水溶液3.0gを仕込んだ。
各溶液及びカーボンブラック粉末をこの順序で仕込んだ後、試験管に蓋をし、ゆっくり上下60往復反転させ、内容物を撹拌した。その後、常温で20時間静置し、20時間経過後、直ちに上澄み液を1cmの石英セルに入れ、分光光度計(測定装置;島津製作所社製 UV−1800)により、UV波長380nmにおける吸光度を測定した。結果を表1に示した。なお、吸光度が高い方が、カーボンブラック粉末を良く分散していることを示す。
【0082】
【表1】