特許第6193507号(P6193507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193507
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20170828BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20170828BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20170828BHJP
【FI】
   H01L25/04 C
   H02M1/00 Z
【請求項の数】21
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-551902(P2016-551902)
(86)(22)【出願日】2015年9月16日
(86)【国際出願番号】JP2015076226
(87)【国際公開番号】WO2016052183
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2017年1月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-201847(P2014-201847)
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-225322(P2014-225322)
(32)【優先日】2014年11月5日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-231297(P2014-231297)
(32)【優先日】2014年11月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-231298(P2014-231298)
(32)【優先日】2014年11月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高村 明男
【審査官】 石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−294362(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/145620(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/015031(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
23/34−23/36
23/373−23/427
23/44
23/467−23/473
25/00−25/07
25/10−25/11
25/16−25/18
H05K 5/00−5/06
H02M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状のベース板と、
このベース板上に半導体チップを駆動する駆動端子と前記半導体チップを含む回路を形成した基板と、
前記ベース板に取り付けられ、前記基板を内部に収納する直方体形状の樹脂製のケースと、
上端を前記ケースの上面に露出するようにして下端が前記基板に固定された複数の外部端子と、
前記ケースを覆う蓋体と、を備え、
前記ケースは、
長手方向に沿って前記ケースの前面を上辺から切り抜いた第1のケース開口部と、
長手方向に沿って前記ケースの背面を上辺から切り抜いた第2のケース開口部と
前記第1のケース開口部と前記第2のケース開口部の間の前記ケースの上面に設けられ、長手方向に沿って前記複数の外部端子を、その上端を露出させて保持する外部端子保持部と、
前記第1のケース開口部又は前記第2のケース開口部から前記基板上面に注入された封止材と、を備え、
前記蓋体は、
前記複数の外部端子が露出する複数の端子引出部を形成した上面と、
前記上面の前面側と背面側から下方に向けて伸び、前記第1のケース開口部と前記第2のケース開口部を覆うカバーとを備える、半導体モジュール。
【請求項2】
前記封止材は、ゲル及び樹脂の何れか一方又は両方を含む、請求項1記載の半導体モジュール
【請求項3】
前記ケースは、
前記基板が備えられる中央室と、
前記中央室の右側又は左側の一方に位置する第1の側部に、前記封止材の熱応力による体積膨張分以上の大きさの空間部を有する応力吸収室を備え、
前記中央室の右側又は左側の他方に位置する第2の側部に、前記駆動端子が引き回される駆動端子室を備える、請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記応力吸収室は上面又は側面、又は上面から側面にかけて形成された小孔を備え、前記駆動端子室は前記駆動端子を前記ケースの外部に引き出す端子開口を備える、請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記第1のケース開口部と前記第2のケース開口部と前記外部端子保持部は、前記ケースの前記中央室に備えられる、請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記蓋体は、前記上面において、前記複数の端子引出部のうち隣接する端子引出部間に下方に突出したU字形状の沿面部が形成されている、請求項1記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記蓋体は、前記カバーの下部に前記封止材に届く脚部を備えた請求項6記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記外部端子保持部の一部に凹部又は凸部を備え、前記蓋体の一部に前記凹部又は凸部と組み合わせられる凸部又は凹部を備える、請求項6に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記外部端子は、前記上端と前記下端の間に設けられた第1の垂直片を備え
前記外部端子保持部は、前記外部端子の前記第1の垂直片を水平方向への移動を規制して垂直方向に摺動案内する第1の垂直片保持部を備え、
前記外部端子は、前記ケースが前記ベース板に取り付けられる前の状態で、前記外部端子保持部を介して垂直方向に移動可能で且つ水平方向に移動規制されている、請求項1記載の半導体モジュール。
【請求項10】
前記外部端子は、前記第1の垂直片に連続して形成された前記第1の垂直片の幅より狭い幅の狭幅部を有し、
前記第1の垂直片保持部は、貫通孔の一面を開口して形成された挿入口と、前記挿入口の左右両側部に形成された第1の案内溝とを有し、
前記第1の案内溝間の幅は、前記外部端子の前記第1の垂直片が摺動案内可能な幅を備え、前記挿入口の幅は、前記第1の垂直片の幅より狭く前記狭幅部以上の幅を備えている、請求項9記載の半導体モジュール。
【請求項11】
前記狭幅部は、前記外部端子の前記第1の垂直片と前記下端との間に形成されている、請求項10記載の半導体モジュール。
【請求項12】
前記外部端子保持部は、前記外部端子の前記上端が露出される端子面を有し、
前記外部端子は、前記第1の垂直片の前記上端が折曲されて形成される端子部を有し、該端子部は前記端子面に沿って配置される請求項10記載の半導体モジュール。
【請求項13】
前記外部端子は、前記第1の垂直片に対向するように前記端子部が垂直方向に折り曲げられて形成された第2の垂直片を有し、
前記外部端子保持部は、前記第2の垂直片を水平方向への移動を規制して垂直方向に摺動案内する第2の垂直片保持部を備え、
前記第2の垂直片保持部は、前記第2の垂直片が摺動案内可能な幅の第2の案内溝を備えている、請求項12記載の半導体モジュール。
【請求項14】
前記外部端子は、前記第1の垂直片を折曲させた水平片に矩形孔を備え、前記外部端子保持部は、前記ケース内部に矩形突起を備え、
前記外部端子の前記第1の垂直片を前記第1の垂直片保持部に挿入したとき、前記矩形孔に前記矩形突起が係合することで、前記外部端子を前記外部端子保持部に保持する、請求項9記載の半導体モジュール。
【請求項15】
前記ケースは、
前記ケース内に上下方向に形成された第1の仕切り壁と、
前記第1の仕切り壁によって仕切られた中央室と応力吸収室とを備え、
前記中央室には、前記基板が配置され、
前記応力吸収室は、前記封止材の熱応力による体積膨張分以上の大きさの空間部と、上方に設けられた外部と連通する小孔とを備える、請求項1記載の半導体モジュール。
【請求項16】
前記ケースは、前記第1の仕切り壁の下部に形成された封止材流入孔を備え、
前記封止材流入孔の高さは、前記封止材で形成される層の高さよりも低い、請求項15記載の半導体モジュール。
【請求項17】
前記複数の外部端子の各外部端子の前記上端には端子部が形成され、
前記外部端子保持部は、前記各外部端子の前記端子部が配置される複数の端子面と、前記複数の端子面のうち隣接する端子面間に形成された複数の領域とを備え、前記複数の領域の少なくとも1つの領域に小孔を備えた、請求項1記載の半導体モジュール。
【請求項18】
前記ケースは、
前記ケース内に上下方向に形成された第2の仕切り壁と、
前記第2の仕切り壁によって前記中央室と仕切られた駆動端子室とを備え、
前記駆動端子室は、駆動端子が引き回され、さらに前記駆動端子を外部に露出させる駆動端子開口を備えた、請求項15記載の半導体モジュール。
【請求項19】
前記ケースは、前記第2の仕切り壁の下部に形成され、前記駆動端子が引き回される駆動端子孔を備え、
前記駆動端子孔の高さは、前記封止材で形成される層よりも高い、請求項18記載の半導体モジュール。
【請求項20】
前記封止材の上方を覆う絶縁樹脂層を備える、請求項15記載の半導体モジュール。
【請求項21】
前記絶縁樹脂層は樹脂を熱硬化させて形成された樹脂層である、請求項20記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サイリスタ、トランジスタ等の電力用半導体チップを搭載した基板を樹脂性のケース内に収納し、ケース内をゲル剤やエポキシ樹脂で封止した半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電力用半導体チップを搭載した基板を樹脂性のケース内に収納し、ケース内をゲル剤やエポキシ樹脂で封止した半導体モジュール、の製造工程は次の工程を含む。
【0003】
すなわち、ベース上に載置した基板上に半導体チップ等を実装して半田リフローで半田付けを行う工程、位置合わせしたケースとベース板とを接着固定する工程、ケース内にシリコンゲルやエポキシ樹脂を注入して熱硬化させる工程、ケースに外部端子を挿入して折り曲げる工程等を含んでいる。そして、各工程の終了後に目視による検査が行われる。
【0004】
ケースの形状としては様々なものが提案されている。例えば、特許文献1には、上部全体が開口したケース本体と、このケース本体の上部開口部を覆う外部端子が取り付けられた蓋とで構成されるものが提案されている。このケース構造を備えるモジュール製造方法では、基板上にケース本体と蓋とを定位置に組み合わせた状態で、半田リフロー工程にて内部の回路を半田付けし、同時にケース本体と蓋を接着する。また、特許文献2には、上面が開口したケース本体と、このケース本体の開口部を覆い、基板から上方に伸びている外部端子を挿入する孔部が形成された蓋とで構成されるものが提案されている。このケース構造を備えるモジュール製造方法では、ケース本体や外部端子を冶具にて固定した状態で、半田リフロー工程にて内部の回路を半田付けし、次いでケース本体内にシリコンゲルやエポキシ樹脂を注入して熱硬化させ、その後に、蓋の孔部に外部端子を挿入して蓋を固定し、最後に外部端子を折曲加工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−160339号公報
【特許文献2】特開平3−178156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に示される半導体モジュールにおいては、基板上にケース本体と蓋とを定位置に組み合わせた状態で半田リフローを行うために、半田リフロー工程後に外部からケース内部を目視することができない。そのため、半田リフロー工程後の半田付け目視検査が殆ど不可能である。
【0007】
また、上記特許文献2に示される半導体モジュールにおいては、ケース本体上部が開口しているため、半田リフロー工程後の半田付け目視検査が容易であるが、外部端子を冶具で固定して半田付けすることが必要であり作業性が良くない。また、外部端子を基板に固定した状態で蓋が被せられるため、外部端子の取り付け位置の高い精度が要求される。すなわち、半田リフロー工程時に外部端子の位置が少しずれてしまったりすると、外部端子が蓋の孔部に挿入できないことが生じたり、外部端子を折曲加工するときにその端子と回路との接続部に大きな応力が生じて剥離したり接触不良を起こしたりすることがある。
【0008】
また、上記特許文献1に示される半導体モジュールにおいては、基板上にケース本体と外部端子が取り付けられた蓋とを定位置に組み合わせた状態で半田リフローを行うために、基板とケース本体と外部端子の各部品との取付け精度が高いことが要求される。もし、これらの取付け精度が悪いと、半田リフロー時に外部端子の半田付け部が基板に完全に半田付け出来なかったり、又は、半田付け部で基板を過度に押圧して回路にクラックを生じさせることがある。
【0009】
また、上記特許文献2に示される半導体モジュールにおいては、外部端子を基板に固定した状態で蓋が被せられるため、外部端子の取り付け位置の高い精度が要求される。すなわち、半田リフロー工程時に外部端子の位置が少しずれてしまったりすると、外部端子が蓋の孔部に挿入できないことが生じたり、外部端子を折曲加工するときにその端子と回路との接続部に大きな応力が生じて剥離したり接触不良を起こしたりすることがある。
【0010】
また、上記特許文献1に示される半導体モジュールにおいては、基板上にケース本体と外部端子が取り付けられた蓋とを定位置に組み合わせた状態で半田リフローを行うために、基板上をシリコンゲルやエポキシ樹脂で封止することが困難又は出来ない。このため、絶縁特性の経時的劣化が生じる問題がある。
【0011】
また、上記特許文献2に示される半導体モジュールにおいては、半田リフロー後に基板上をシリコンゲルやエポキシ樹脂で封止出来るが、モジュール使用時に封止材に加わる熱ストレスを原因とする、封止材自身の膨張を逃す構造でない。このため、封止材自身が膨張と収縮を繰り返す過程で、封止材と基板の界面が剥離したり、封止材上のエポキシ樹脂にクラックが発生する可能性がある。
【0012】
この発明の目的は、半田付けの目視が容易であり、且つ、ケースに外部端子が取り付けられた状態で半田リフロー工程が可能な半導体モジュールを提供することにある。
【0013】
この発明のさらなる目的は、外部端子の半田付け時の取付け精度が高い半導体モジュールを提供することにある。
【0014】
この発明のさらなる目的は、基板上を封止する封止材が熱ストレスによる膨張や収縮を繰り返しても、その物理的変化を吸収することのできる半導体モジュールを提供することにある。また、半田リフロー後の洗浄時に残存する洗浄剤が原因となって生じうる、封止材の硬化阻害を防止する半導体モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の半導体モジュールは、
矩形状のベース板と、このベース板上に半導体チップを駆動させる端子、例えばゲート端子と半導体チップを含む回路を形成したセラミック基板等の基板と、前記ベース板に取り付けられ、前記基板を内部に収納する直方体形状の樹脂製のケースと、上端を前記ケースの上面に露出するようにして下端が前記基板に固定された複数の外部端子と、を備えている。
【0016】
前記半導体チップは、例えば、電力制御用のサイリスタ、ダイオード、トランジスタのチップである。
【0017】
前記ケースはPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂材料で形成される。
【0018】
前記ケースは、
長手方向に沿って前記ケースの前面を上辺から切り抜いた第1のケース開口部と、
長手方向に沿って前記ケースの背面を上辺から切り抜いた第2のケース開口部と
前記第1のケース開口部と前記第2のケース開口部の間の前記ケースの上面に設けられ、長手方向に沿って前記複数の外部端子を、その上端を露出させて保持する外部端子保持部と、をさらに備えている。
【0019】
前記ケースを前記ベース板に取り付ける前に、前記複数の外部端子を前記外部端子保持部に保持させておく。これによって、ケースをベース板に取り付ける際に、同時に外部端子をベース上の基板に取り付けることができる。また、前記第1のケース開口部と第2のケース開口部があるため、半田リフロー工程後に、これらのケース開口部からケース内部にある基板上の半田付け状態を容易に目視できる。前記第1のケース開口部はケースの前面に配置され、前記第2のケース開口部はケースの背面に配置されているため、目視検査をするときには、ケースの前面と背面からケース内の基板上に十分な光が入り込む。このため、半田付け状態の目視検査が容易である。
【0020】
また、前記ケースを、モジュールの性能に関わる重要部品である半導体チップ等が搭載された基板が配置される中央室と、応力吸収室と、半導体チップを駆動する駆動端子が引き回される駆動端子室の3つの部屋に分けている。前記ケースを、各々の部屋に区画するので、応力吸収室又は駆動端子室に万一ゴミなどが侵入しても、中央室への影響を防止することができる。また、前記第1のケース開口部と前記第2のケース開口部と前記外部端子保持部とをこの中央室に形成することで、製造工程の中で目視検査が必要な部分のみ、外部からケース内部を開口しているため、目視検査を必要としない応力吸収室と駆動端子室は、ケースで覆った状態で製造することができる。
【0021】
また、前記ケース開口部から前記基板上面に封止材、例えばシリコンゲル等のゲルと樹脂がそれぞれ注入されるが、注入のための面積が大きいためそれぞれの注入が容易である。このように封止材で基板上を封止することにより、ベース板及び基板は外部に露出されることがなく、品質を保つことができる。なお、封止材はゲルと樹脂の何れか一方、又は夫々両方を用いることができる。
【0022】
この発明の好ましい実施態様では、さらに蓋体を備えている。
【0023】
前記蓋体は、上面に前記複数の外部端子が露出する端子引出部を形成した上面と、この上面から下方に向けて前面と背面に前記ケース開口部をカバーとを備える。
【0024】
この蓋体で前記ケース開口部を覆うため、前記外部端子保持部を補強し、ケース開口部から内部にゴミや塵等が侵入するのを防止できる。基板上を封止材で封止した場合でも、この蓋体でケース開口を覆うことで、外部端子保持部、ひいては半導体モジュールの強度を高めることができる。
【0025】
前記蓋体は、前記カバーの下部に前記封止材に届く脚部を備えることができる、このような脚部を備えることで、封止材を硬化する工程で脚部を固定して蓋体をケースに固定することができる。
【0026】
この発明のさらに別の実施態様では、
前記外部端子は、前記上端と前記下端の間に設けられた第1の垂直片を備え
前記外部端子保持部は、前記外部端子の前記第1の垂直片を水平方向への移動を規制して垂直方向に摺動案内する第1の垂直片保持部を備え、
前記外部端子は、前記ケースが前記ベース板に取り付けられる前の状態で、前記外部端子保持部を介して垂直方向に移動可能で且つ水平方向に移動規制されている。
【0027】
以上の構成で、外部端子は、半田付け工程の前に外部端子保持部に保持されている。このとき、外部端子は、外部端子保持部を介して垂直方向に移動可能で且つ水平方向に移動規制されている。したがって、半田付け前では、外部端子の下端の半田付け部は半田ペーストを介して基板の回路上に当接し、外部端子は半田ペーストの厚みだけ上方に浮いた状態である。このとき、外部端子の上下方向には全く外力が加わっていない。また、水平方向には外部端子の位置がずれないように移動規制される。次に、半田付けの工程に入ると(半田リフロー)、上記半田ペーストが溶けることにより、外部端子が自重で下降し、下端の半田付け部が回路上に半田付けされる。
【0028】
このように、外部端子を上下方向に自由な状態にし、自重による下降を利用して半田付けを行うため、半田付け時に外部端子に不要な外力が加わらない。また、外部端子は半田付け前に折り曲げることが出来るため、半田付け時に外部端子に内部応力が生じることがなく、折り曲げ加工自体も外部端子単独で出来るため容易である。外部端子の自由落下を利用して半田付けを行うことにより、外部端子の下端の半田付け部と基板上の回路との半田付けが確実となり、下端と回路(半導体チップ等)との接続部に大きな応力が生じて破損したり接触不良を起こすことがない。
【0029】
この発明の好ましい実施態様では、前記外部端子は、前記第1の垂直片に連続して形成された前記垂直片の幅より狭い幅の狭幅部を有し、
前記第1の垂直片保持部は、貫通孔の一面を開口して形成された挿入口と、前記挿入口の左右両側部に形成された複数の第1の案内溝とを有し、
前記複数の第1の案内溝間の幅は、前記外部端子の前記第1の垂直片が摺動案内可能な幅を備え、前記挿入口の幅は、前記第1の垂直片の幅より狭く前記狭幅部以上の幅を備えている。
【0030】
外部端子を取り付けるとき、前記第1の垂直片を第1の案内溝に通しながら下方に移動させる。このとき、狭幅部は挿入口の幅よりも狭いため、狭幅部が垂直片から折り曲げられていても、外部端子全体が下方に移動することが出来る。したがって、外部端子は予め折り曲げ加工しておくことが可能である。
【0031】
この発明のさらに好ましい実施態様では、前記外部端子は、前記第1の垂直片を折曲させた水平片に矩形孔を備え、前記外部端子保持部は、前記ケース内部に矩形突起を備え、
前記外部端子の前記第1の垂直片を前記垂直片案内部に挿入したとき、前記矩形孔に前記矩形突起が係合することで、前記外部端子を前記外部端子保持部に保持する。
【0032】
以上の構成のように、外部端子の矩形孔をケース内部の矩形突起に契合することで、外部端子のケースへの固定が確実となる。
【0033】
この発明のさらに別の実施態様では、
前記ケースは、
前記ケース内に上下方向に形成された第1の仕切り壁と、
前記第1の仕切り壁によって仕切られた中央室と応力吸収室とを備え、
前記中央室には、前記基板が配置され、
前記応力吸収室は、前記封止材の熱応力による体積膨張分以上の大きさの空間部と、上方に設けられた外部と連通する小孔とを備える。
【0034】
前記応力吸収室を設ける理由は以下の通りである。
【0035】
封止材、例えばシリコンゲル等のゲルは、通常使用時に半導体チップや基板から受ける熱ストレスで膨張と収縮を繰り返すため、その体積変化を吸収する空間部を予め設けておくことが必要である。前記応力吸収室はその機能を発揮する。
【0036】
また、前記応力吸収室が外部と連通する小孔を備える理由は以下のとおりである。
【0037】
上記小孔は、封止材の熱硬化時に発生するガスを外部に完全に排出する。ガスの残存がないため、応力吸収室内壁面の経時的な特性劣化がなくなる。また、半田リフロー後の洗浄時に洗浄液がこの小孔を流通することが出来るため、洗浄時のケース内での循環が良くなり、応力吸収室内に洗浄液が残存しない。このため、洗浄液が残存して封止材が熱硬化しにくくなる硬化阻害現象を防ぐことが出来る。さらに洗浄時のケース内での循環が良くなるため、基板の洗浄性が向上する。
【発明の効果】
【0038】
この発明では、ケースをベース板に接着する前に外部端子を外部端子保持部に保持させておくことで、ケースをベース板に取り付ける際に、同時に外部端子をベース板上の基板に取り付けることができる。また、第1のケース開口部と第2のケース開口部があるため、半田リフロー工程後に、これらのケース開口部からケース内部にある基板上の半田付け状態を容易に目視できる。これらのケース開口部は前面と背面にあるため、目視検査をするときには、前面と背面から基板上に十分な光が入り込む。このため、ケース内部に十分に光を取り込むことができ、半田付け状態の目視検査が可能である。
【0039】
また、前記これらのケース開口部から基板上面に封止材として、例えばシリコンゲル等のゲルと樹脂の一方又は両方が注入されるが、注入のための面積が大きいためそれぞれの注入が容易であり、作業性が極めてよい。
【0040】
また、この発明では、自重による下降を利用して半田付けを行うことが出来るため、外部端子に内部応力が生じない。また、外部端子の下端の半田付け部と基板上の回路との半田付けが確実となり、下端と回路との接続部に大きな応力が生じて剥離したり接触不良を起こすことがない。
【0041】
また、この発明では、封止材の熱応力による体積膨張分以上の大きさの空間部を有する応力吸収室を設けたため、封止材の熱ストレスによる体積変化は、応力吸収室で吸収される。また、応力吸収室の上方に外部と連通する小孔を形成したため、封止材の硬化時に発生するガスは完全に外部に排出される。これにより、前記中央室にある基板と前記封止材との界面は物理的に安定な状態を維持し、残存ガスによる応力吸収室の壁面の物理的変化の悪影響はなくなる。また、半田リフロー後の洗浄時に使用する洗浄液が小孔から外部に排出されるため、残存洗浄液を原因として封止材の硬化阻害が生じるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】この発明の実施形態の半導体モジュールの斜視図
図2】半導体モジュールの分解斜視図
図3】ケースに外部端子を取り付けるときの様子を示す斜視図
図4】半田リフロー工程前の半導体モジュールの断面図
図5】半田リフロー工程後の半導体モジュールの断面図
図6】外部端子が取り付けられたケースの斜視図
図7】シリコンゲル10の注入量とエポキシ樹脂11の注入量を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、この発明の実施形態の半導体モジュールの斜視図、図2はその分解斜視図、図3はケースに外部端子を取り付けるときの様子を示す斜視図、図4は半田リフロー工程前の半導体モジュールの断面図を示す。図5は、半田リフロー工程後の半導体モジュールの断面図を示す。図6は、外部端子が取り付けられたケースの斜視図を示す。図7は、シリコンゲル10の注入量とエポキシ樹脂11の注入量を模式的に示す図である。
【0044】
図1において、半導体モジュール1は、全体として直方体形状にあり、上部に3つの外部端子の上端である端子部30a〜30cが露出している。同モジュール1は、その下部に位置する金属製のベース板2(図2参照)と、このベース板2を含むモジュール内部の全体を覆う、上面,前面,背面,左側面及び右側面からなるケース4と、上部からケース4に覆い被せられる蓋体5とを備えている。
【0045】
図4に示すように、本例では半導体モジュール1は、中央室9aと、応力吸収室9bと、ゲート端子室9cとの3つの部屋に仕切られている。
【0046】
中央室9aには、駆動端子としてのゲート端子と、半導体チップと、回路パターン等が配置されている。これらは、製品としての品質に関わる重要部品である。中央室9aの左側には応力吸収室9bが配置されている。中央室9aの右側にはゲート端子7が引き回されたゲート端子室9cが配置されている。
【0047】
蓋体5は中央室9aを覆う。中央室9aと応力吸収室9bとの間には、仕切り壁15aが設けられている。この仕切り壁15aの下部には、シリコンゲル流入孔12aが設けられている。中央室9aとゲート端子室9cとの間には、仕切り壁15bが設けられている。この仕切り壁15bの下部には、ゲート端子7が配線されるゲート端子孔12bが設けられている。これらシリコンゲル流入孔12aとゲート端子孔12bの詳細については、後述する。
【0048】
蓋体5は、後述の製造工程で詳述するように、エポキシ樹脂を硬化させる工程で接着される脚部50を備えている。
【0049】
ケース4と蓋体5とは、熱可塑性で環境に優しく、高温硬化が可能で高い熱伝導性を持つPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂材料で形成される。
【0050】
図2において、金属製のベース板2上には、ベース板との電気的絶縁のためのセラミック基板6に銅回路パターンが形成されている。セラミック基板6は非常に薄く、このため、セラミック基板6の熱はベース板2を介して容易に拡散される。セラミック基板6に、電力制御用の半導体チップを含む回路素子と回路パターンと内部端子60等を実装する。半導体チップは、例えば、電力制御用のサイリスタ、ダイオード、トランジスタのチップである。
【0051】
セラミック基板6には、ケース4に保持された3つの外部端子3a〜3cの各下端部である半田付部32a〜32cが半田付される。各外部端子3a〜3cの上端部は折曲されて端子部30a〜30cを形成している。
【0052】
左右の外部端子3a,3cと中央の外部端子3bとは、ケース4への取り付け方が異なり、そのためそれらの端子は異なる形状をしている。
【0053】
外部端子3a,3cは、垂直片31a,31cと、これらの垂直片31bの上方を水平に折曲させた端子部30a,30cと、これらの垂直片31a,31cの中央より下方で水平に折曲させた水平片33a,33cと、これらの水平片33a,33cを下方に折曲させた下部垂直片34a,34cと、これらの下部垂直片34a,34cの最下端を折曲させた、半田付けに用いられる半田付部32a,32cとを備える。また、水平片33a,33cの中央部には、矩形の嵌合孔36a,36cを備えている。水平片33a,33cの少なくとも下面は、セラミック基板6に半田付部32a,32cを半田付した際に、ケース開口下辺部40L(図4図5参照)の高さ以下となるように形成されている。
【0054】
中央の外部端子3bは、垂直片31bと、この垂直片31bの上方を水平に折曲させた端子部30bと、この垂直片31bの中央より下方で水平に折曲させた水平片33bと、この水平片33bを下方に折曲させた下部垂直片34bと、この下部垂直片34bの最下端を折曲させた、半田付けに用いられる半田付部32bとを備える。また、前記端子部30bの背面側を下方に折曲させ、垂直片31bに対向させた第2垂直片36を備える。
【0055】
前記下部垂直片34bは、前記垂直片31bを一旦前面側に折り曲げてから、これを下方に折り曲げて形成している。このため、下部垂直片34bの面は、垂直片31bの面よりも前面側に配置されている。また、垂直片31bと水平片33bの間の垂直片31bの下端には、垂直片31bよりも幅の狭い狭幅部35(図3参照)が形成されている。
【0056】
図4に示すように、ケース4は、左右の第1及び第2仕切り壁15a,15bを有し、これら仕切り壁15a,15bによって、ケース4を中央室9a,応力吸収室9b,ゲート端子室(駆動端子室)9cに仕切っている。第1仕切り壁15aの下部には、シリコンゲル流入孔12aが形成され、中央室9aと応力吸収室9bとはこのシリコンゲル流入孔12aを通じて連通している。第2仕切り壁15bの下部には、中央室9aからゲート端子室9cにゲート端子7を引き回すための、ゲート端子孔12bが形成され、中央室9aとゲート端子室9cとはこのゲート端子孔12bを通じて連通している。ゲート端子孔12bは、複数のゲート端子7を夫々離間させて引き回すことが出来るように、側面から見て櫛歯状に複数本の突出部からなる。シリコンゲル流入孔12aとゲート端子孔12bの高さに付いては、後述する。
【0057】
ケース4の一方の端部、本例では左側部には、応力吸収室9bが備えられている。応力吸収室9bの上面又は側面、又は上面から側面にかけて、小孔90、91が形成されている。また、ケース4の他方の端部、本例では右側部には、ゲート端子室9c(駆動端子室)が備えられている。ゲート端子室9cの上面には、ゲート開口41が形成されている。中央室9aからゲート端子孔12bを通じて引き回されたゲート端子7は、このゲート開口41から外部に露出される。中央室9aは、応力吸収室9bとゲート端子室9cの間に形成され、第1及び第2仕切り壁15a,15bと、ケース4の前面,背面,上面で囲まれている。
【0058】
ケース4は、その長手方向に沿って前記ケース4の前面を上辺から切り抜いた第1のケース開口部40aと、長手方向に沿って前記ケース4の背面を上辺から切り抜いた第2のケース開口部40bとを備えている(図2図6参照)。これらの第1のケース開口部40a、第2のケース開口部40bは、長手方向には仕切り壁15aと15b間の長さに設定されている。また、上下方向にはケース4の上面からケース開口下辺部40Lの高さに設定されている。
【0059】
上記外部端子保持部42は、第1のケース開口部40aと第2のケース開口部40b間に位置している。
【0060】
したがって、ケース4を上から見ると以下のようになる。
【0061】
左右に応力吸収室9bとゲート端子室9cがあり、それらに挟まれた中間に中央室9aがある。中央室9aの上には、その前面側と背面側に第1のケース開口部40aと第2のケース開口部40bがあり、第1のケース開口部40aと第2のケース開口部40bの間にI字状の外部端子保持部42がある。第1のケース開口部40aと第2のケース開口部40bからは、ケース開口下辺部40Lが見える。また、ケース4を前面側から見ると、応力吸収室9bとゲート端子室9cの前面で挟まれた位置に中央室9aの前面がある。中央室9aは、第1のケース開口部40aと第2のケース開口部40bから、内部が見える。
【0062】
外部端子保持部42は、上面に端子面48a〜48cが設けられている。この端子面48a〜48cには、外部端子の端子部30a〜30cが配置される。端子面48aと48bの間、及び端子面48bと48cの間には、直線距離を長くして絶縁を図るための凹状の窪みが形成されている。これらの窪みには、小孔47(図4図5参照)が形成されている。端子面48aと第1仕切り壁15a(応力吸収室9b)との間の上面にも小孔92(図4図5参照)が形成されている。左右の端子面48a、48cの端部には、外部端子3a,3cの垂直片31a,31cが上下方向に摺動可能な矩形状の貫通孔44a、44cが形成されている。また、外部端子保持部42の端子面48a,48cの反対面には、下方に突出する矩形突起42a,42cが形成されている(図4参照)。矩形突起42a,42cの下端の高さは、ケース開口下辺部40Lの高さ以下の高さになるように、設定されている。これら貫通孔44a,44cと矩形突起42a,42cにより左右の垂直片保持部43a,43cが構成されている。中央の垂直片保持部43bには、挿入口45が形成されている。この挿入口45は、矩形状の貫通孔の前面側を開口させ、外部端子3bの垂直片31bが上下方向に摺動可能な幅と厚みに形成されている。この挿入口45の左右端部には案内溝44bが形成されている。
【0063】
ケース4の背面側にも、背面が開口された垂直片保持部43bが同様に形成されている。前記案内溝44bは、外部端子保持部42の上面から、ケース開口下辺部40Lの高さ以下の高さまで、形成されている。案内溝44bの幅は外部端子3bの垂直片31bが上下方向に摺動可能な幅に設定され、挿入口45の幅は垂直片31bよりも狭く、狭幅部35よりも広く設定されている。一般に、外部端子3bを折曲させて、垂直片31bに水平片33bを有する状態では、水平片33bが挿入口45を通過することができない。このため、垂直片保持部43bに垂直片31bを挿入して取り付けることはできない。しかし本例では、外部端子3bに狭幅部35を形成したため、最終形態に折り曲げた状態でも、その垂直片31bを垂直片保持部43bに取り付けることができる。すなわち、狭幅部35を垂直片保持部43b上端に位置させると、狭幅部35から下の部分は挿入口45の前面側に突出した状態になる。この状態で、狭幅部35を挿入口45の上部から挿入すると、垂直片31bが案内溝44bに挿入される。このとき、狭幅部35から下の部分は挿入口45の前面側に突出しているため、垂直片31bの上下動を阻害しない。また垂直片31bの幅は挿入口45より広いため、垂直片31bが案内溝44bの前面から抜けることなく保持され、案内溝44bに沿って上下動させることができる。
【0064】
したがって、中央の外部端子3bに端子部30bを折曲させた状態で、すなわち、外部端子3bを最終形状に完成させた状態で、中央の外部端子3bを垂直片保持部43bに取り付けて保持することができる。垂直片31bを上方から案内溝44bに沿って押し下げると、外部端子3bの上部付近で第2垂直片36が背面側の案内溝44bに挿入される。その後、さらに垂直片31bを押し下げると、外部端子保持部42の端子面48bに端子部30bが当接し、それ以上下には移動することができない。このように垂直片31bを垂直片保持部43bに保持させた状態では、垂直片31bは案内溝44bによって前後左右の水平方向への移動ができないように規制されている。
【0065】
尚、本例では垂直片31bの下部に狭幅部35を形成しているが、水平片33b自体を狭幅部35としてもよい。また背面側の第2垂直片36と案内溝44bは、外部端子3bを垂直片保持部43bにより強固に安定して保持する為に設けられているが、これらは省略する事もできる。また、外部端子3bに、水平片33bと下部垂直片34bを形成したが、下部垂直片34bを省略し、水平片33bを狭幅部35兼半田付部32bとして用いることもできる、
外部端子3a,3cは、垂直片31a,31cを折曲して水平片33a,33cを形成し、これを下方に折曲して下部垂直片34a,34cを形成し、次いで最下端を折曲して半田付部32a,32cを形成している。
【0066】
貫通孔44a,44cに外部端子3a,3cを取り付ける手順を説明する。
【0067】
端子部30a,30cを折曲させる前に、1直線になっている垂直片31a,31cを貫通孔44a,44c下方から貫通させて押し上げる。
【0068】
次に、端子面48a,48cの反対面において下方に突出するように設けられている矩形突起42a,42cに、外部端子3a,3cの水平片33a,33cの嵌合孔36a,36c嵌合させ(図4参照)る。これにより、外部端子3a,3cを垂直片保持部43a,43cに保持させる。
【0069】
この状態では、外部端子3a,3cは、矩形突起42a,42cと嵌合孔33a,33cにより垂直片保持部43a,43cに位置決めされているが、固定されてはいない。そこで、外部端子3a,3cを垂直片保持部43a,43cに保持させた後、端子部30a,30cを折曲する。
【0070】
このように、矩形突起42a,42cに嵌合孔36a,36cを嵌合させることにより、外部端子3a,3cの前後左右の水平方向への移動ができないように規制している。外部端子3a,3cは、水平片33a,33cと下部垂直片34a,34cを形成しているが、下部垂直片34a,34cを半田付部32a,32cに兼用させ、水平片33a,33cを省略することも可能である。
【0071】
以上の構造で、外部端子3a,3cは嵌合孔36a,36cと矩形突起42a,42cにより水平方向の移動が規制され、外部端子3bは、案内溝44bにより水平方向の移動が規制される。一方、これらの外部端子3a〜3cは、完全に固定されることなく位置決めされており、その垂直片31a〜31cが垂直片保持部43a〜43cに沿って、上下方向に数ミリ程度だけ移動自在となっている。したがって、予めケース4に取り付けた外部端子3a〜3cを、ベース板2の上に置くと、外部端子3a〜3cの半田付部32a〜32cがベース板2のセラミック基板に当接する弱い力によって上に移動し、高さ方向に若干の誤差等があったとしても、その誤差を吸収することができる。そのため、外部端子3a〜3cが半導体チップなどを強く押し付けてこれを破損したり、外部端子3a〜3cが傾いたり曲がったりするなどの不具合を防止できる。
【0072】
図3は、このようにして、ケース4に3つの外部端子3a〜3cを取り付けるときの様子を示している。
【0073】
第1に、外部端子3a,3cについては、次の通りである。
【0074】
端子部30a,30cを折曲する前の状態で、この外部端子3a,3cを下方から貫通孔44a,44cに挿入して、嵌合孔36a,36cに矩形突起42a,42cを嵌合させる。この状態では、外部端子3a,3cは完全に固定されてはいない。外部端子3a,3cを垂直片保持部43a,43cに位置決め保持させ、端子部30a,30cを折曲形成する。この状態では外部端子3a,3cは、少しの力で垂直方向に移動可能である。
【0075】
第2に、外部端子3bについては、次の通りである。
【0076】
端子部30bを折曲した状態で、水平片33bを前面側にしてその垂直片31bの狭幅部35を垂直片保持部43bの案内溝44bの上端から挿入する。このとき、外部端子3bの狭幅部35よりも下の部分が、挿入口45から前面側に突出した状態となり、垂直片31bが案内溝44bを移動できる。垂直片31bを上方からさらに押し下げると、外部端子3bの上部付近で第2垂直片36も背面側の案内溝44bに挿入される。さらにこの垂直片31bを押し下げることにより、端子部30bが端子面48bに当接して下降が停止する。このようにして前面側の垂直片31bと背面側の第2垂直片36の両側が、案内溝44bに保持される。すなわち、外部端子3bが垂直片保持部43bに保持されることで、外部端子3bの前後左右の移動が規制される。この状態では外部端子3bも完全に固定されてはおらず、少しの力で垂直方向に移動可能である。
【0077】
図3において、外部端子3aは、垂直片保持部43aに挿入前の状態、外部端子3bは、垂直片保持部43bに挿入前の状態、外部端子3cは、垂直片保持部43cに挿入して端子部30cを折曲した状態を示している。
【0078】
以上のようにして、ケース4に3つの外部端子3a〜3cが取り付けられた状態を図4に示す。
【0079】
図2に示すように、半導体モジュール1は、ケース4を覆う蓋体5を設けることもできる。
【0080】
蓋体5は、ケース4の中央室9aに形成したケース開口部40を覆う。蓋体5の上面には、端子間の電気的な沿面距離を確保する為に、沿面部53a〜53dが設けられている。沿面部53b、53cは、下方に突出したU字形状にある。沿面部53bは外部端子保持部42の端子面48a−48b間の窪みにはまる形状であり、隣接する後述の端子引出部54aと54b間に設けられている。沿面部53cは外部端子保持部42の端子面48b−48c間の窪みにはまる形状であり、隣接する後述の端子引出部54bと54c間に設けられている。。左右両端の沿面部53a,53dは、端子面48a,48cの両外側に配置される。
【0081】
蓋体5の上面には、蓋体5をケース4に被せた際に、端子部30a〜30cを露出させる端子引出部54a〜54cが形成されている。また、蓋体5の上面には、それぞれの端子を表す番号が刻印されており、蓋体5をケース4に被せる方向が定められている。そこで、蓋体5を被せる方向を間違わないように、ケースの外部端子保持部42と蓋体5とに、相互に嵌合する凹部と凸部を形成すると良い。図2に示すように、本例では、外部端子保持部42の右側の端子面48cの右側部に凸部46を設け、蓋体5の端子引出部54cの右側の沿面部53dに凹部52を設けている。蓋体5をケース4に対して正しい向きに被せた場合には、蓋体5の凹部52が外部端子保持部42の凸部46に嵌る。これに対して、蓋体5をケース4に対して正しくない向きに被せた場合には、蓋体5の凹部52が外部端子保持部42の凸部46に嵌らない。つまり、蓋体5が180℃逆向きに配置されるため、外部端子保持部42の凸部46上に、蓋体5の逆向きの沿面部53aが対向配置される。このため、凸部46に蓋体5の沿面部53aが乗り上げて、その右側が浮き上がる。
【0082】
以上の構造より、蓋体5を間違った向きに被せる事が防止される。
【0083】
蓋体5の前面と背面には、長方形状のカバー51が形成され、このカバーの四隅には、ケース4の前面及び背面の内側に入り込めるよう、少し内側の位置で下方に向けて脚部50が形成されている。蓋体5は、図2のように、複数の外部端子が露出する複数の端子引出部54a〜54cを形成した上面と、前記上面の前面側と背面側から下方に向けて垂直に伸び、前記第1のケース開口部40aと前記第2のケース開口部40bを覆うカバー51とを備えている。蓋体5をケース4に被せると、蓋体5の沿面部53a,54dが外部端子保持部42の端子面48a,48cの外側上面に配される。また、沿面部52b,52cが外部端子保持部42の端子面48b−48c間の窪みに嵌る。また、蓋体5の端子引出部54a〜54cから外部端子3a〜3cが引き出される。その結果、ケース開口部40が覆われて、密閉される。
【0084】
なお、蓋体5の脚部50は、ケース4に蓋体5を被せた状態で、ケース開口下辺部40Lよりも下方に位置する。この脚部50は、矩形突起42a,42cの下端の位置と同じになるような長さに形成されている。
【0085】
従来の半導体モジュールの蓋体は薄い平らな形状をしており、薄い側面を指で持ち上げて、ケース上に組み立てていた。しかし、蓋体を指で持ち上げることが難しく、また、蓋体をケース上に置いても、後に蓋体が横方向にずれてしまうことがある。このように、組立時の作業性が悪かった。
【0086】
これに対して、本例では、蓋体5は、ケース開口部40を被うカバー51がある為に、蓋体5を広い面積を持つカバー51の前面と背面を横方向から持てる。このため、蓋体5を片手で容易に掴むことができ、ケース4に被せるのも容易である。また、脚部50をケース4の中央室9aの内側に挿入させてから蓋体5をケース4に被せるので、蓋体5の位置合わせも容易である。脚部50には脚部50とケース4を嵌合させる為の爪を設け、ケース4にはこの爪と嵌合させる為の凹部を設けてもよい。また、ケース4には、ケースの定位置に脚部を案内できるように脚部に沿った案内溝を設けてもよい。このようにすれば、蓋体5とケース4との位置合わせがより容易になり、作業効率が向上する。
【0087】
後述するように、ケース開口部40には、蓋体5を被せる前に、封止材であるシリコンゲル10などのゲルや、エポキシ樹脂11などの樹脂を充填させて硬化させる。この為、中央室9a、応力吸収室9b、ゲート端子室9cは封止されて、半導体チップ等の回路素子や回路パターンは外部に露出しない。そのため蓋体5は、半導体モジュールの機能を左右するものでなく、必ずしも必要でない。しかし、本例の場合には、封止材で封止した状態では、外部端子保持部42が左右と下が空洞の状態で橋渡しされているため、十分な強度にない。しかし、蓋体5により外部端子保持部42を補強することができる。また、蓋体5は、封止材上に隙間にゴミや塵等が侵入するのを防ぐ。
【0088】
次に、半導体モジュールの製造工程について説明する。
【0089】
図2において、セラミック基板6、半導体チップ、内部端子60が、ベース板2上に所定の位置合わせをして載せられる。セラミック基板6、半導体チップ、内部端子60の上には、後の半田リフロー工程で溶融することによって半田付けに供される半田ペーストや導電性接着剤が塗布されている。このとき、内部端子60の上面にも、外部端子3a〜3cの半田付部32a〜32cを半田付けする為の半田ペースト8a〜8c(図4参照)が塗布される。
【0090】
図3を参照して説明したように、上述した方法により、ケース4に3つの外部端子3a〜3cを取り付ける。なお、このとき、3つの外部端子3a〜3cのそれぞれは完全に固定されておらず、垂直方向に若干移動自在である。すなわち、垂直片31a〜31cは、垂直片保持部43a〜43cによって前後左右への動きを規制されているが、垂直方向に若干移動自在である。
【0091】
次に、図4において、ベース2に熱硬化性接着剤を塗布してケース4を被せる。図4では外部端子3bの垂直片31bより下側を省略している。
【0092】
図4に示すように、半田付部32a〜32cを半田ペースト8a〜8c上に配置させてケース4を被せると、半田付部32a〜32cは半田ペースト8a〜8cに押し上げられて、外部端子3a〜3cが長さtだけ上に移動する。この長さtによって、外部端子3a〜3cの上下方向の高さ位置を調整し、誤差が吸収される。ここで、半田ペースト8a〜8cの厚みは300μm〜500μm程度である。半田ペースト8a〜8cには、外部端子3a〜3cの自重がかかっており、ベース板2にケース4を被せると、その自重により外部端子3a〜3cの位置が定まる。
【0093】
従来の構造では、外部端子3a〜3cをケース4に完全に固定してからベース板2にケース4を被せていた。しかし、この従来の構造では、もし外部端子3a〜3cの高さに誤差があると、問題が生じる。すなわち、半田付部32a〜32cが半田ペースト8a〜8cに届かずに接続不良を起こす。半田ペースト8a〜8cを介して半導体チップを外部端子3a〜3cで強く押圧してこれを割ってしまう。また、外部端子3a〜3c自身が傾いたり歪む。これに対して本例では、第1に、ケース4に外部端子3a〜3cを上下に移動可能に取り付けている。第2に、ベース板2にケース4を被せると、自重により下方に移動していた外部端子3a〜3cが長さtだけ上昇する。このとき、外部端子3a〜3cの半田付部32a〜32cは半田ペースト8a〜8cに確実に接する。すなわち、外部端子3a〜3cの垂直方向の位置合わせを自動的に行うことができる。また、外部端子3a〜3cは半導体チップを破損したり、外部端子が折れ曲がるなどの不具合を防止することができる。
【0094】
次に、半導体モジュール全体を半田リフロー工程に移動させて半田付けの処理をする。
【0095】
この工程では、半田ペーストが溶融して各要素の半田付けが行われると同時に、ケース4はベース2に接着固定される。
【0096】
図4において、半田ペースト8a〜8cが溶融し、その結果、外部端子3a〜3cは自重により下降する。外部端子3a〜3cは、半田接合層の高さをαとして、t−αだけ下降する。このとき、外部端子3a〜3cは、垂直片保持部43a〜43cで水平方向への移動が規制されているため、水平方向へずれたりしない。その結果、半田付部32a〜32cがセラミック基板6上に半田付けされて図5のように外部端子3a〜3cが所定の位置に固定される。このように、外部端子3a〜3cは精度よく、所定の位置に取り付けられる。なお、端子部30a〜30cは半田付け前に、予めケース4に取り付けられて折曲加工されているため、従来のように、半田付け後に折曲することによって半田付部が折曲加工時の応力で剥離したり接触不良を起こしたりする不具合がない。
【0097】
以上のように、本実施形態の半導体モジュールの構造では、外部端子3a〜3cがベース板2に高精度に取り付けられる。
【0098】
次に、半田付けの終了した図5の状態の半導体モジュールを超音波洗浄機等で洗浄する。
【0099】
前述のように、外部端子保持部42には、端子面48a−48b間及び、端子面48b−48c間に孔47が形成され、端子面48aと応力吸収室9bとの間の上面に小孔92が形成されている。また、ゲート端子室9cの上面にはゲート開口41が開口している。洗浄工程において、洗浄液の大半は、中央室9aのケース開口部40(第1のケース開口部40a、第2のケース開口部40b)から出し入れされ、シリコンゲル流入孔12aとゲート端子孔12bを通じて応力吸収室9b,ゲート端子室9cにも洗浄液が循環する。また、洗浄液は、孔47と小孔92やゲート開口41からも、ケース4内部に入り込洗浄液が隅々に対流されて、ケース内部での洗浄液がスムーズに循環される。
【0100】
本実施形態の半導体モジュールは、図5に示すように、ケース4は、一方の側部(図の左側)に、応力吸収室9bを設けている。基板封止のためのシリコンゲルを用いているが、応力吸収室9bは、後述のように、そのシリコンゲルの熱応力による体積膨張分、以上の十分な大きさの空間部を有している。また、この応力吸収室9bは、前述のように上面に小孔90、91(図2参照)を備えている。
【0101】
洗浄工程後の乾燥工程において、ケース4を図と上下逆さまにすると、ケース4内部の洗浄液は、ケース開口部40と小孔92から排出される。ゲート端子室9cの洗浄液は上面の大きなゲート開口41から排出されるとともに、ゲート端子孔12bを通じて中央室9aのケース開口部40からも排出される。応力吸収室9bの洗浄液は、上面に形成された小孔90,91から排出されるとともに、シリコンゲル流入孔12aで中央室9aを通じてケース開口部40から排出される。応力吸収室9bの小孔90,91は、上面以外の面、例えば側面に形成しても良く、上面から側面にかけて、ケース開口部40を小さくしたような形状の孔を形成しても良い。小孔90,91は、乾燥工程でケース4が下向きになる位置に形成すると、最も効率よく乾燥することができる。もし、応力吸収室9bに洗浄液が残存すると、この後に注入されるシリコンゲルの硬化工程時に完全に硬化しなくなる現象(硬化阻害)が生じる。洗浄工程を終えると、半導体モジュールの目視検査と電気的特性検査の検査工程に入る。
【0102】
目視検査工程では、作業者の目視で、半田の馴染みや端子位置の確認などの半田付けが完全であるかどうか等のチェックを行う。目視は、図6のケース開口部40から内部を覗くことで行う。ケース開口部40(第1のケース開口部40a、第2のケース開口部40b)は、垂直方向には、ケース4の上辺から下方に向けてケース開口下辺部40Lの高さまで開口するように、長手方向には、第1及び第2仕切り壁15a−15b間まで開口するように、ケース4の前面と背面切り抜いて形成される。このため、ケース開口部40は、目視には十分な開口面積にある。したがって、通常姿勢でケース開口部40から内部を確認でき、半田付不良等を目視確認で容易に判断することができる。さらに、外部端子保持部42の上面には孔47が形成されているため、目視時に外部光が入る面積を大きくすることができる。このため、光はケース4の前面と背面の両側から内部に十分に届き、基板上の半田付け状態等を容易にチェックすることができる。また、半田付け終了後の目視による検査が可能になった為に、従来のように電気特性を検査してから不良を判断しなくてもよい。つまり、電機検査前の早い段階で半田の馴染み不良や端子位置のずれなどの不良品を判別して、不良品の除去を確実に行う事ができる。
【0103】
検査工程が終了すると、基板封止工程に入る。
【0104】
本例では、封止材としてシリコンゲル10とエポキシ樹脂11を用いる。シリコンゲル10はエポキシ樹脂11に比べて粘度が小さい。このためシリコンゲル10の注入時のケース4内への回り込みが良く、また、シリコンゲル10は熱サイクル時に基板と剥離しにくい。このため、シリコンゲル10を注入してこれを硬化し、次いでエポキシ樹脂11による封止が行われる。基板封止工程では、図6の半導体モジュール1のケース開口部40(第1のケース開口部40a、第2のケース開口部40b)から、中央室9aに配置されたセラミック基板6上に第1にシリコンゲル10が注入され、このシリコンゲル10は中央室9aからシリコンゲル流入孔12a及びゲート端子孔12bを通じて、応力吸収室9b及びゲート端子室9cにも流れ込む。その後加熱によりシリコンゲル10が硬化される。次いで後述するように、エポキシ樹脂11が注入されて加熱により硬化される。図7は、シリコンゲル10の注入量とエポキシ樹脂11の注入量を模式的に示している。
【0105】
ここで、本実施形態の半導体モジュールでは、図7に示すように、中央室9aと応力吸収室9bの間の第1仕切り壁15aの下部に設けられたシリコンゲル流入孔12aの高さは、セラミック基板6上に半田付けされた外部端子3a〜3cの半田付部32a〜32cの上面の高さよりも低く設定されている。中央室9aとゲート端子室9cの間の第2仕切り壁15bの下部に設けられたゲート端子孔12bは、ゲート端子7を中央室9aから引き出すもので、ゲート端子孔12bの高さはシリコンゲル流入孔12aよりも高い位置で、且つ外部端子3a,3cの水平片33a,33bと同程度の高さに設定されている。言い換えれば、シリコンゲル10の注入量は、外部端子3a〜3bの半田付部32a〜32cの上面までを埋める程度の量とされ、シリコンゲル流入孔12aの高さは、シリコンゲル10の上面よりも低い位置に設定される。このため、図7のように、シリコンゲル10を注入すると、シリコンゲル流入孔12aはシリコンゲル10で埋まる。シリコンゲル10の上面高さは、シリコンゲル流入孔12aよりも上に位置し、且つ、外部端子3a〜3bの半田付部32a〜32cの上面以上の高さとなる。このとき、ゲート端子孔12bの高さは、シリコンゲル10よりも高い位置にあるので、ゲート端子孔12bは埋まっていない状態にある。
【0106】
シリコンゲル10の注入後、加熱により、シリコンゲル10が硬化する。この硬化時に際に発生するガスは、中央室9aにおいてはケース開口部40,小孔92から排出される。同ガスは、ゲート端子室9cにおいてはゲート開口41から排出される。中央室9aとゲート端子室9cはゲート端子孔12bのシリコンゲル10上で連通しているので、ケース開口部40(第1のケース開口部40a、第2のケース開口部40b)からも排出される。
【0107】
シリコンゲル流入孔12aがシリコンゲル10で埋まっているため、第1仕切り15aとシリコンゲル10により、中央室9aと応力吸収室9bは隔絶されて、応力吸収室9bは独立した部屋になっている。シリコンゲル10の硬化時に応力吸収室内で発生したガスは、小孔90,91から排出され、ケース4内に残存することがない。このように、応力吸収室9bに形成された小孔90,91は、洗浄乾燥工程に使用されるとともに、封止工程にも用いられる。
【0108】
次いで、エポキシ樹脂11をシリコンゲル10と同様にケース開口部40(第1のケース開口部40a、第2のケース開口部40b)から中央室9aに適当量注入すると、エポキシ樹脂11はシリコンゲル10上で広がり、中央室9aからゲート端子孔12bを通って、ゲート端子室9cにも流入する。しかし、前述のようにシリコンゲル流入孔12aはシリコンゲル10で埋まっているため、エポキシ樹脂11は応力吸収室9bには流入しない。エポキシ樹脂11の注入量は、本例ではエポキシ樹脂11がケース開口部40からこぼれ落ちない程度の、ケース開口下辺部40L以下の高さになる量であり、本例では外部端子3a〜3cの水平片33a,33cの下面までの高さにされている。なお、エポキシ樹脂11の注入量は、水平片33a,33cを埋める高さにしてもよい。
【0109】
エポキシ樹脂11の注入後、これが硬化する前にケース4に蓋体5を被せる。
【0110】
ケース4のケース開口部40(第1のケース開口部40a、第2のケース開口部40b)の内面に蓋体5の脚部50を沿わせて下降させ、外部端子保持部42の端子面48a−48b,48b−48c間の窪みに、下に凸状の蓋体5の沿面部53b,53cを嵌めこみ、外部端子保持部42の窪みに形成された孔47を沿面部53,53cで閉塞させる。同時に蓋体の左右両端の沿面部53a,53dが外部端子保持部42の端子面48a,48cの両外側に被さり、小孔92を沿面部53aで閉塞させる。このとき、外部端子保持部42の凸部46と蓋体5の凹部52が組み合わされるため、蓋体5はケース4上面に平らに被せられる。蓋体5を被せたとき、外部端子3a〜3cの端子部30a〜30cは、蓋体5の端子引出部54a〜54cから露出した状態になる。
【0111】
この様にケース4に蓋体5を被せると、カバー51でケース開口部40が完全に覆れて、中央室9aは密閉状態となる。ケース4に蓋体5を被せたとき、その脚部50の下端は、外部端子3a,3cの水平片33a,33cと同じ程度の高さに位置する。また、前述のように水平片33a,33cの嵌合孔36a,36cに挿入される矩形突起42a,42cの下端も、脚部50の下端と同程度の高さにある。また、垂直片保持部43bの案内溝44bは、ケース開口下辺部40Lよりも下の高さまで形成されており、その下端は水平片33a,33cよりも下の高さにある。その為、蓋体5の脚部50の下端及び、外部端子3a,3cの嵌合孔36a,37aに挿入された状態の外部端子保持部42の矩形突起42a、42cの下端、及び案内溝44bの下部は、エポキシ樹脂11に浸った状態になる。
【0112】
エポキシ樹脂11は、蓋体5(図2参照)をケース4に被せてから加熱により硬化される。エポキシ樹脂11を硬化させることにより、中央室9aとゲート端子室9cが封止される。このとき、蓋体5の下部の4隅に備えた脚部50の下端までエポキシ樹脂11が注入されているので、エポキシ樹脂11が硬化する事によって、脚部50はケース4に接着される。矩形突起42a,42cの下端も硬化したエポキシ樹脂11と一体化されるので、外部端子3a,3cが固定され、案内溝44bの下部も硬化したエポキシ樹脂11と一体化され、挿入口45の下部が埋められて、外部端子3bが固定される。このようにして外部端子3a〜3cを完全に固定するので、外部端子がガタついて半田が剥離する等の不具合を防止できる。
【0113】
尚、ゲート端子室9cにおいても、ゲート端子7の下部はエポキシ樹脂11で固められ、第2仕切り壁15bの下部で、櫛歯状のゲート端子孔12bがエポキシ樹脂11と一体化されるので、ゲート端子室9cが封止されると同時に、ゲート端子7も固定される。本例によれば、ケース4内部を封止する工程で、ケース4に蓋体5の接着もできるので、工程を減らし、接着剤等の別部品も削減できる。
【0114】
この様にして、半導体モジュール1内部の中央室9aの半導体チップ等の回路本体と、ゲート端子はエポキシ樹脂11で埋め固められ、外部からの干渉が防止できる。また、応力吸収室9bはシリコンゲル10で充填され、同様に外部からの干渉を防止できる。
【0115】
このように、封止材であるシリコンゲル10とエポキシ樹脂11によって、応力吸収室9b,中央室9a,ゲート端子室9cが封止されるとともに、封止材により3つの部屋を夫々隔離された独立した部屋に区分けすることができる。したがって、例えば応力吸収室9bに、小孔90,91からゴミや埃が侵入しても、隣の中央室9aにこれが移動することはなく、応力吸収室9b自体も、封止材であるシリコンゲル10でベース板2の面を封止されている為、ゴミや埃に影響されない。ゲート端子室9cも同様に、封止材であるエポキシ樹脂でその表面が封止され、ゴミや埃に影響されず、隣り合う中央室9aに悪影響を及ぼすこともない。
【0116】
本例では封止材としてシリコンゲル10とエポキシ樹脂11を用いたが、封止材は何れか一方のみでも良く、別の封止材を用いることもできる。封止材により、ゴミや塵による半導体モジュール1の電気的なショートなどの故障を防ぐ事ができるので、蓋体5が無くても製品としては使用する事ができる。しかし本例の構成の場合、中央室9aの上面部分に、左右及び下が空洞の状態で外部端子保持部42が露出するので、外部端子保持部42の強度がそれ程強くない。そこで、本例のように蓋体5でケース4を被うことにより、半導体モジュール1の中央室9aを密閉し、外部端子保持部42の左右を補強することで、半導体モジュール1の安全性を増す事ができる。また、ゴミや塵が外部から半導体モジュール1内のエポキシ樹脂11上に侵入するのを防ぐことができる。したがって、樹脂量の少ない外部端子保持部42を補強する事ができ、外観を保つこともできる。
【0117】
なお、図7では、モジュール使用時に基板が熱ストレスを受けると、シリコンゲル10に熱膨張応力が生じるが、シリコンゲル10は応力吸収室9b内で膨張することができるため、基板封止部でのシリコンゲル10自身や、シリコンゲル10と基板の界面に物理的変化は生じない。このため、ゲルが膨張してケース4にクラックが発生したり、シリコンゲル10と基板の界面の接合状態が劣化して隔離等の現象を生じることがない。
【0118】
以上の工程後、最終目視、電気的特性検査を含む最終検査工程を終えて図1の半導体モジュールが完成する。
【0119】
本実施形態では、ケース4の中央の垂直片保持部43bが、貫通孔の前面側を開口させた挿入口45と、その左右を残して形成した案内溝44bで構成されている。また、中央の外部端子3bに、案内溝44bに挿入される垂直片と、挿入口45から突出する狭幅部35を形成している。このため、中央の外部端子3bは、端子部30bを折曲形成した後であっても、この垂直片保持部43bに上方から挿入することができる。このように予め端子部30bを折曲させておくことができるから作業性が良い。これに対して、左右の外部端子3a、3cについては、ケース4の左右の垂直片保持部43a、43cが貫通孔44a,44cで構成されているため、垂直片31a,31cを真っ直ぐにした状態でこれらの貫通孔44a,44cを貫通させて位置決め保持した後に、これを折曲して端子部30a,30cを形成する必要がある。そこで、作業性の見地から、これらの垂直片保持部43a,43cについても垂直片保持部43bと同様な構造とし、外部端子3a,3cについても、外部端子3bと同じ形状にしても良い。
【符号の説明】
【0120】
1−半導体モジュール
2−ベース板
3(3a、3b、3c)−外部端子
4−ケース
5−蓋体
6−セラミック基板
7−ゲート端子
9a−中央室
9b−応力吸収室
9c−ゲート端子室
40−ケース開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7