【文献】
FARIAS, Marcus Aurelius C. et al.,一人称シューティングゲーム用の足ナビゲーションテクニック,Game Programming Gems 7 日本語版,株式会社ボーンデジタル 石橋 俊雄,2008年12月25日,初版,pp. 67-76,ISBN 978-4-86246-076-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光を反射する反射面を有するマーカーが固着された移動体をカメラで撮像する工程と、撮像された前記マーカーに基づいて前記移動体の姿勢を検出する工程とを含む移動体の検出方法に用いられる移動体であって、
前記マーカーは、前記反射面が平面であるとともに、前記移動体の曲面部分に固着されており、
前記マーカーと前記移動体との間には、支持体が配されており、
前記支持体は、前記マーカー側を向きかつ平面からなるマーカー支持面と、前記移動体側を向く固着面とを有し、
前記固着面と前記移動体との間に接着剤が充填されていることを特徴とする移動体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
移動体の姿勢が計算される際、撮影された画像から各マーカーの輪郭が抽出され、各マーカーの特定の位置、例えば図心が計算される。マーカーの図心は、以後の計算の基準になるため、正確に特定されなければならない。
【0007】
しかしながら、例えば、
図12(a)に示されるように、球状の凸曲面部分に沿って貼り付けられたマーカーaを斜めから撮像した場合、実際のマーカーの図心b1と、画像処理で計算されたマーカーの図心b2とは大きくずれることがある。
【0008】
また、曲面部分に貼り付けられたマーカーaを斜めから撮像した場合、その一部が隠れる場合もある。このような場合にも、実際のマーカーの図心b1と、画像処理で計算されたマーカーの図心b2とは大きくずれることがある。
【0009】
上記のように、誤ったマーカーの図心情報に基づいて計算された移動体の姿勢にも、誤差が含まれる。
【0010】
特に、近年では、マーカーが、1台のカメラで撮像される場合がある。このような場合には、マーカーを撮像する向きが限定されるため、上記不具合が生じやすくなる。
【0011】
本発明は、以上のような問題点に鑑み、案出なされたもので、マーカーの反射面を平面とすることを基本として、精度よく移動体の姿勢を検出することができる移動体及び移動体にマーカーを固着する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のうち請求項1記載の発明は、光を反射する反射面を有するマーカーが固着された移動体をカメラで撮像する工程と、撮像された前記マーカーに基づいて前記移動体の姿勢を検出する工程とを含む移動体の検出方法に用いられる移動体であって、前記マーカーは、前記反射面が平面であることを特徴とする。
【0013】
また請求項2記載の発明は、前記マーカーは、前記移動体の曲面部分に固着されている請求項1記載の移動体である。
【0014】
また請求項3記載の発明は、前記マーカーと前記移動体との間には、支持体が配されており、前記支持体は、前記マーカー側を向きかつ平面からなるマーカー支持面を含む請求項1又は2に記載の移動体である。
【0015】
また請求項4記載の発明は、前記支持体は、前記移動体側を向く固着面を有し、前記固着面と前記移動体との間に接着剤が充填されている請求項3に記載の移動体である。
【0016】
また請求項5記載の発明は、前記支持体は、前記移動体側を向く固着面を有し、前記固着面は、該固着面が向き合う移動体の外面の反転形状を有している請求項3又は4に記載の移動体である。
【0017】
また請求項6記載の発明は、前記移動体は、プレーヤーの操作によって移動するスポーツ用具である請求項1乃至5のいずれかに記載の移動体である。
【0018】
また請求項7記載の発明は、光を反射する反射面を有するマーカーが固着された移動体をカメラで撮像する工程と、撮像された前記マーカーに基づいて前記移動体の姿勢を検出する工程とを含む移動体の検出方法に用いられる前記移動体に前記マーカーを固着するための方法であって、前記移動体の外面に、前記反射面が平面となるように前記マーカーを固着する工程を含むことを特徴とする。
【0019】
また請求項8記載の発明は、前記マーカーを固着する工程は、前記移動体の外面の曲面部分に、平面を含むマーカー支持面を設ける工程を含む請求項7記載の移動体にマーカーを固着する方法である。
【0020】
また請求項9記載の発明は、前記マーカー支持面は、前記マーカー及び前記移動体とは異なる別部材からなる支持体を前記移動体の曲面部分に固着することにより設けられる請求項8記載の移動体にマーカーを固着する方法である。
【0021】
また請求項10記載の発明は、前記マーカーは、前記マーカー支持面に予め形成されているか、又は、前記支持体が移動体に固着された後に、前記マーカー支持面に固着される請求項9記載の移動体にマーカーを固着する方法である。
【0022】
また請求項11記載の発明は、前記マーカー支持面は、前記移動体の前記曲面部分を切削加工又は塑性変形加工することにより設けられる請求項8記載の移動体にマーカーを固着する方法である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載された発明では、光を反射する反射面を有するマーカーが固着された移動体をカメラで撮像する工程と、撮像された前記マーカーに基づいて前記移動体の姿勢を検出する工程とを含む移動体の検出方法に用いられる移動体であって、前記マーカーは、前記反射面が平面であることを特徴とする。
【0024】
また、請求項8に記載された発明では、光を反射する反射面を有するマーカーが固着された移動体をカメラで撮像する工程と、撮像された前記マーカーに基づいて前記移動体の姿勢を検出する工程とを含む移動体の検出方法に用いられる前記移動体に、前記マーカーを固着するための方法であって、前記移動体の外面に、前記反射面が平面となるように前記マーカーを固着する工程を含むことを特徴とする。
【0025】
マーカーの反射面が平面とされることにより、マーカーが斜めから撮像された場合でも、実際のマーカーの図心と、画像処理で計算されたマーカーの図心とはほぼ一致する。また、マーカーの一部が隠されて撮像されることも少ない。従って、本発明の移動体又は方法を用いることにより、精度よく移動体の姿勢を検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本発明では、光を反射する反射面を有するマーカーが固着された移動体をカメラで撮像する工程(撮像工程)と、撮像された前記マーカーに基づいて前記移動体の姿勢を検出する工程(計算工程)とを含む移動体の検出方法に用いられる移動体が提供される。先ず、上記撮像工程及び計算工程が、簡単に説明される。
【0028】
図1には、撮像工程に用いられる計測装置10の全体構成図の一例が、
図2にはその正面図がそれぞれ示されている。この計測装置10は、移動体として、ゴルフクラブ1のクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある。)2が撮像される。ゴルフクラブ1のヘッド2は、それ自体では動かないが、ゴルファMのスイングによって移動体となり得る。移動体は、ヘッド2に限定されず、移動可能な物であれば、あらゆるものが対象となる。
【0029】
図1の実施形態では、右打ちのゴルファMが示されている。ゴルファMのスイングによって、ゴルフボール3は、
図1のアドレス姿勢にあるゴルファMの左向きに打ち出される。ただし、ゴルファMは、スイングロボット等で代用されても良い。
【0030】
計測装置10は、例えば、基台12、ゴルフクラブ1のヘッド2を撮影するための第1カメラ14、ゴルフボール3を撮影するための第2カメラ16、各カメラ14、16を制御する制御装置18、及び各カメラ14、16が撮像した情報を記録するコンピュータ20を含んで構成されている。
【0031】
基台12は、板状であり、例えば、計測室の床面に置かれている。本実施形態の基台12には、ゴルファMが立ってアドレスする床板21が置かれている。床板21には、ゴルフボール3を置くためのティー23が設けられている。
【0032】
基台12には、上方にのびる支柱24が設けられている。支柱24の上部には、ゴルフクラブ1のヘッド2に向けて発光するストロボ25が設けられている。
【0033】
なお、説明の便宜上、
図1及び
図2に示されるように、計測装置10に、X軸、Y軸及びZ軸を有する直交座標が定義される。X軸は、地面に平行であり、かつ、打球前のボール3と目標方向とを結ぶ直線に平行である。Z軸は、鉛直方向である。Y軸は、X軸及びZにともに垂直である。
【0034】
基台12には、トリガーセンサー26が設けられている。トリガーセンサー26は、スイングをするゴルファMの前方(腹側)に設けられた投光器26aと、ゴルファMの後方(背中側)に設けられかつ投光器26aの光を受ける受光器26bとの組み合わせである。トリガーセンサー26は、ダウンスイング時のゴルフクラブ1の通過により、投光器26aからY軸方向に発せられる光が遮られるように位置合わせされている。
【0035】
基台12には、さらに第1センサー27が設けられている。第1センサー27は、スイングをするゴルファMの前方に設けられた投光器27aと、ゴルファMの後方に設けられかつ投光器27aの光を受ける受光器27bとを具えている。第1センサー27は、トリガーセンサー26よりもX軸方向において、スイング前方(打撃されたゴルフボール3の飛球方向)に設けられている。従って、ダウンスイング時、第1センサー27は、トリガーセンサー26よりもわずかに遅れてスイング中のゴルフクラブ1を検出する。
【0036】
基台12には、さらに第2センサー28が設けられている。第2センサー28も、スイングをするゴルファMの前方に設けられた投光器28aと、ゴルファMの後方に設けられかつ投光器28aの光を受ける受光器28bとを具えている。第2センサー28は、第1センサー27よりもX軸方向において、スイング前方に設けられている。従って、第2センサー28は、ダウンスイング時、第1センサー27よりもわずかに遅れてスイング中のゴルフクラブ1を検出する。
【0037】
第1カメラ14は、ゴルフクラブ1のヘッド2の上面部であるクラウン部を撮影可能なように、ゴルファMの上方に設けられている。
【0038】
第2カメラ16は、打ち出されたゴルフボール3を側方から撮影可能なように、ティー23よりゴルファMの前方、かつ、X軸方向において、スイング前方に設けられている。第2カメラ16の周囲には、ストロボ29が設けられている。
【0039】
図3はクラブヘッド2の正面図、
図4はその平面図をそれぞれ示している。該ヘッド2は、ボールを打撃する面であるフェース2aと、該フェース2aに連なりヘッド上面部を構成するクラウン部2bとを含んでいる。
【0040】
該クラブヘッド2には、マーカー30が設けられている。マーカー30には、例えば、光を反射する反射テープが用いられる。ヘッド2には、複数のマーカー30、好ましくは1撮影フレーム内に3個以上のマーカー30が設けられているのが望ましい。マーカー30は、フェース3a以外の位置に設けられるのが望ましい。この実施形態では、4つのマーカー30a乃至30dが、ヘッド2のクラウン部2bに設けられている。
【0041】
各マーカー30a乃至30dは、白い矩形状の反射テープに、対角線が描かれている。各マーカー30a乃至30dの対角線の交点は、例えば、各マーカー30の特定の位置(代表点)として定義される。なお、この特定の位置は、各マーカー30の重心と一致している。マーカー30のサイズ等は、任意に定めることができる。
【0042】
制御装置18には、第1カメラ14、第2カメラ16、トリガーセンサー26、第1センサー27、第2センサー28、ストロボ25、ストロボ29及び情報処理装置20が接続されている。
【0043】
制御装置18の作用は次の通りである。ゴルファMによってゴルフスイングが開始されると、制御装置18には、トリガーセンサー26がダウンスイング中のゴルフクラブ1の検出したこと示す検出信号が入力される。この検出信号に基づき、制御装置18は、第1カメラ14及び第2カメラ16に撮影を開始させる撮影開始信号を出力する。
【0044】
この撮影開始信号に基づき、第1カメラ14のシャッターが、所定時間(例えば1/30秒)開かれる。シャッターが開いている間、制御装置18には、第1センサー27及び第2センサー28がゴルフクラブ1のヘッド2又はシャフトを検出したことを示す検出信号が順次入力される。制御装置18は、第1センサー27からの検出信号に基づいて、ストロボ25を発光させる信号を出力する。その後、制御装置18は、第2センサー28からの検出信号に基づき、ストロボ29を発光させる信号を出力する。
【0045】
従って、シャッターが開いている間に、ストロボ25及びストロボ29が順次発光する。これにより、第1カメラ14には、第1センサー27で検出されたときのクラブヘッド2と、第センサー28で検出されたときのクラブヘッド2とが含まれる1枚の画像データを撮像しうる。従って、本実施形態では、移動体としてのクラブヘッド2は、1台のカメラで撮影される。また、第2カメラ29は、打撃されたボール3を撮影する。
【0046】
第1カメラ14及び第2カメラ16によって撮影した画像データは、コンピュータ20へと出力される。
【0047】
コンピュータ20には、プログラムが記憶されている。このプログラムは、撮像工程で得られた上記画像を処理し、ヘッド2の位置及び姿勢を計算する計算工程をコンピュータ20に実行させる。
【0048】
上記計算工程は、例えば、次のステップa乃至dを含む。
(a)得られたヘッド2の画像から各マーカー30を特定
(b)各マーカー30の三次元位置の算出
(c)上記三次元位置に基づき、ヘッド2の位置、姿勢等の計算
(d)計算結果の出力
【0049】
[ステップa]
ステップaは、手動又は自動で行われる。ステップaが手動で行われる場合、ユーザーは、画像の中からマーカー30を肉眼で判別し、マーカー30の位置情報等をコンピュータ20に入力する。ステップaが自動で行われる場合、一般的には、コンピュータ20が、画像の各画素に対して、輝度情報等を利用して周知のエッジ抽出処理等を行う。これにより、画像の中からマーカー30が抽出される。
【0050】
[ステップb]
ステップbでは、各マーカー30の三次元の座標が計算される。この計算方法の一例として、上で述べたDLT法が知られている。DLT法は、異なる方向から見た複数の画像を用いて特定の位置の三次元の空間座標を得る方法である。DLT法では、三次元座標が既知である点(コントロールポイント)の画像に基づき、その三次元座標が再構築される。
【0051】
図5には、実空間(Object space)にある点Pをカメラで撮影した場合において、実空間での座標(X,Y,Z)と、カメラのフィルム面上(Digitizing plane)の座標(U,V)との関係が示されている。点Oはカメラのレンズ中心点である。座標系X’Y’Z’は、点Oを原点とし、フィルム面上座標系UVとX’軸及びY’軸とが平行な座標系である。距離Lは、点Oから点PまでのZ’軸上の距離である。距離Fは、点Oから点Q(点Pの写像)までのZ’軸上の距離である。点(U,V)はZ’軸を含む直線とフィルム面との交点である。この場合、以下の説明及び式(F1)が成立する。
【0053】
上記式(F1)の11個のカメラ定数を求めるには、先ず、実空間座標(X,Y,Z)とフィルム面上座標(U,V)が既知である6点以上がカメラで撮影される。次に、各点の(X,Y,Z)と(U,V)を式(F1)に代入し、合計12個以上の方程式が設定される。そして、これらの方程式を最小二乗法によって解くことにより、11個のカメラ定数が求められる(キャリブレーション)。11個のカメラ定数が求まれば、実空間座標(X,Y,Z)が既知の点について、そのフィルム面上座標(U,V)を求めることができる。
【0054】
反対に、フィルム面上座標(U,V)から、実空間座標(X,Y,Z)を求めるには、カメラ定数が既知の2台以上のカメラを用いて同じ点を撮影し、得られた(U1,V1),(U2,V2)…を上式に代入することで4個以上の方程式を設定し、最小二乗法で(X,Y,Z)が求められる。
【0055】
上記の方法では、空間上の独立した1点の座標を求めるにはカメラが2台必要である。しかしながら、大きさのある物体に固定された複数点の座標については、各点間の位置関係(即ち、物体座標系における各点の座標)が既知であれば、その関係式が空間座標(X,Y,Z)を求めるための方程式に加わるので、複数点の座標を求めることができる。
【0056】
[ステップc]
物体座標系(クラブヘッド2の座標系)における各マーカー30の座標は、例えば、物体を三次元形状測定することで得られる。以下、物体の代表点の空間座標(X,Y,Z)と物体の姿勢(α,β,γ)とを未知数として解く場合について述べる。
【0058】
なお、上記式(F3)において、Ri(x)はRiのx成分、Ri(y)はRiのy成分、Ri(z)はRiのz成分をそれぞれ表している。
【0059】
未知数が6個でありかつ式の数が2n個である連立方程式(F3)は、ニュートンラフソン法(非線形連立方程式の解法)で解くことができる。これにより、6個の未知数、即ち、物体代表点の位置と物体の姿勢を求めることができる。なお、上記α、β及びγは、空間座標系から物体座標系への座標変換角度を示す。本実施形態では、空間座標系XYZを、そのZ軸回りにα°回転させて座標系Cs1が得られ、この座標系Cs1を、そのY軸回りにβ°回転させて座標系Cs2が得られ、この座標系Cs2を、そのX軸回りにγ°回転させて座標系Cs3が得られるとき、この座標系Cs3が、物体座標系に一致する。
【0060】
上述の2n個の連立方程式を式(F3)とする。式(F3)をニュートンラフソン法によって解く方法は、以下の通りである。
【0062】
以上の方法は、いわゆる勾配法の一例である。この勾配法は、例えば、上記特許文献3で用いられている遺伝的アルゴリズムと比較して計算が簡便である。このように、物体座標系における座標が既知である点同士の相対関係に基づいて、1つのヘッド画像から、そのヘッドの代表点の空間座標と、三次元姿勢(例えば、フェース角、ライ角など)とを算出することができる。そして、計算結果が出力される。
【0063】
上述のような検出方法では、マーカー30の代表点(本実施形態ではマーカーの図心)が、計算の基準になるため、正確に特定されなければならない。そこで、本実施形態では、移動体としてのゴルフクラブ1のヘッド2には、反射面が平面であるマーカー30が固着されていることを特徴としている。
【0064】
マーカー30の反射面が平面とされることにより、
図12(b)に示されるように、マーカー30が斜めから撮像された場合でも、実際のマーカー30の図心b1と、画像処理で計算されたマーカーの図心b2とはほぼ一致する。また、マーカーの一部が隠されて撮像されることも少ない。従って、本実施形態の移動体を用いることにより、精度よく移動体の姿勢を検出することができる。
【0065】
一方、マーカー30が設けられるヘッド2のクラウン部2bは、ヘッド外方に凸となる滑らかな曲面部分として構成されている。このような曲面部分をなすクラウン部2bに、平面の反射面を有するマーカー30を固着するためには、種々の態様がある。以下、いくつかの代表的な実施形態が説明される。
【0066】
[第1実施形態]
第1の実施形態では、
図6(a)に示されるように、マーカー30は、支持体32を介してヘッド2のクラウン部2bに固着されている。
【0067】
クラウン部2bの外面は、ヘッド外方に向かって凸となる曲面部分として構成されている。
【0068】
支持体32は、マーカー30及び移動体とは異なる別の部材で構成されている。支持体32は、小さい厚さを有する板状であり、マーカー30側を向くマーカー支持面34と、移動体であるヘッド2のクラウン部2b側を向く固着面36とを有している。
【0069】
本実施形態のマーカー支持面34は、実質的にその全面が平面で形成されている。このマーカー支持面34に、反射テープからなるマーカー30が貼り付けられている。マーカー30は、マーカー支持面34に予め形成されているか、又は、支持体32がヘッド2に固着された後に、マーカー支持面34に固着されても良い。
【0070】
本実施形態では、マーカー30が柔軟性を有する反射テープからなるので、支持体32の少なくともマーカー支持面34は、スイング中に、その平面の状態が容易に変形しない程度の剛性が必要である。このような観点より、支持体32は、ゴム、樹脂又は金属材料で構成されるのが望ましい。
【0071】
本実施形態において、支持体32の固着面36も、実質的に全面が平面で形成されている。固着面36と、クラウン部2bの外面との間には、接着剤38が充填されている。接着剤38は、
図6(a)に示されるように、固着面36と、クラウン部2bの外面との間の隙間を埋める。即ち、接着剤38の厚さは、中央部から端部に向かって漸増することにより、平面の固着面36が曲面部分のクラウン部2bと強固に接着されている。
【0072】
このような実施形態では、移動体(ヘッド2)の曲面部分に、簡単な構成で、反射面30Aが平面をなすマーカー30を固着することができる。
【0073】
[第2実施形態]
第2実施形態も、
図6(b)に示されるように、マーカー30は、支持体32を介してヘッド2のクラウン部2bに固着されている。第2実施形態では、支持体32の固着面36は、該固着面36が向き合うクラウン部2bの外面の反転形状を有している点で第1実施形態とは異なる。即ち、固着面36は、クラウン部2bの凸の曲面部分の反転形状である凹の曲面部分で構成されている。このような固着面36は、クラウン部2bに置いたとき、その位置が安定し、かつ、固着面36とクラウン部2bとの間に配される接着剤36の厚さも均一にすることができる。このため、固着面36とクラウン部2bとの接着強度が高められる。
【0074】
上記「反転形状」とは、移動体(ヘッド2)の外面に支持体32の固着面36を嵌め合わせたときに、両者の位置が安定する程度で足りる趣旨であり、移動体(ヘッド2)の外面と支持体32の固着面36とが完全に密着しなければならないものと解釈されてはならない。
【0075】
第2実施形態は、上記の相違点を除いて、第1実施形態と同一である。また、
図6(b)の実施形態では、ヘッド2の外面が凸の曲面部分からなり、これに対応する支持体32の固着面36が凹の曲面部分からなるが、このような組み合わせに限定されるものではない。即ち、ヘッド2の外面が凹の曲面部分からなり、支持体32の固着面36が凸の曲面部分からなるものでも良い。さらに、各々の面は、凸面と凹面とが混在する曲面であっても良い。
【0076】
[第3実施形態]
第3実施形態も、
図6(c)に示されるように、マーカー30は、支持体32を介してヘッド2のクラウン部2bに固着されている。第3実施形態も、支持体32の固着面36は、該固着面36が向き合うクラウン部2bの外面の反転形状を有している点で第2実施形態と共通する。ただし、第3実施形態では、支持体32の固着面36は、ヘッド2のクラウン部2bに設けられた凹部40に嵌合する点で第2実施形態とは異なっている。
【0077】
この実施形態によれば、移動体と支持体32との位置がより安定し、かつ、より強固な固着状態が得られる。接着剤36を併用するか否かは、嵌合力に応じて任意に定められる。その他の点については、第2実施形態と同一である。
【0078】
[第4実施形態]
第4実施形態では、
図7(a)に示されるように、曲面部分をなすヘッド2のクラウン部2bの外面が切削加工又は塑性変形加工される。これにより、クラウン部2bの外面に、平面からなるマーカー支持面42が形成される。そして、
図7(b)に示されるように、平面からなるマーカー支持面42に、マーカー30が接着剤又は粘着剤等で固着されることにより、反射面30Aが平面からなるマーカー30を移動体に固着することができる。なお、上記切削加工には、研磨加工が含まれるのは言うまでもない。また塑性変形加工には、プレスや鍛造等が含まれ得る。
【0079】
第4実施形態によれば、別部材からなる支持体32を不要とすることができるため、部品点数を減らすことができる。
【0080】
[移動体の変形例]
前記実施形態では、移動体として、ウッド型のゴルフクラブ1のヘッド2が示されたが、移動体には、様々な物が採用可能である。特に、移動体として、以下のようなスポーツ用具が好ましく用いられる。
【0081】
図8(a)には、マーカー30が固着される移動体として、ゴルフクラブのシャフト44の斜視図が示されており、
図8(b)はそのA−A断面図である。シャフト44には、支持体32を介してマーカー30が固着されている。支持体32は、平面からなるマーカー支持面34と、シャフト44の円筒外面に沿うようその反転形状を有した凹曲面からなる固着面36とを有している。このような実施形態では、シャフトの動きを検出することができる。
【0082】
図9(a)には、マーカー30が固着される移動体として、アイアン型ゴルフクラブのヘッド48の斜視図が示されており、
図9(b)には、そのB−B断面図が示されている。ヘッド48のトップブレード48aには、支持体32を介してマーカー30が固着されている。支持体32は、平面からなるマーカー支持面34と、トップブレード48aの凸曲面に沿うようその反転形状を有した凹曲面からなる固着面36とを有している。このような実施形態では、アイアン型ゴルフクラブのヘッド48の動きを検出することができる。
【0083】
図10(a)には、マーカー30が固着される移動体として、テニスラケット50の正面図が示されており、
図10(b)には、そのC−C断面図が示されている。テニスラケット50のフレーム52の頂部には、支持体32を介してマーカー30が固着されている。支持体32は、
図10(b)に示されるように、平面からなるマーカー支持面34と、フレーム52の曲面に沿うようその反転形状を有した曲面からなる固着面36とを有している。このような実施形態では、プレー中のテニスラケットの動きを検出することができる。
【0084】
以上本発明の実施形態が、詳細に説明されたが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施され得る。例えば、移動体としては、スポーツ用具に限定されることなく、様々な物が用いられる。
【実施例】
【0085】
本発明の効果を確認するために、ウッド型ゴルフクラブのヘッドのクラウン部にマーカーを固着し、該クラブヘッドのシャフト角、フェース角及びライ角が計測された。
【0086】
[実施例]
実施例のヘッドは、第1実施形態で示した支持体を用いて白色の反射テープからなるマーカーが固着された。各マーカーの反射面はいずれも平面であった。なお、マーカーは、
図11に示されるように、クラウン部に固着された。
【0087】
[比較例]
一方、比較例では、白色の反射テープからなるマーカーがヘッドに直接固着された。各マーカーの反射面はいずれもクラウン部の外面に沿って凸曲面であった。マーカーの固着位置は、実施例と同じである。
【0088】
[ヘッドの姿勢を固定するための固定冶具]
実施例及び比較例の各ヘッドを所望の姿勢に固定するために、固定冶具が用いられた。固定冶具とは、ヘッドを、固定冶具に固有の座標系(以下、「固定冶具座標系」という。)に対して、任意の姿勢(α、β、γ)に設置できる冶具である。なお、上記α、β及びγは、上記発明を実施するための形態の説明において、実空間座標系を固定冶具座標系とし、物体座標系をヘッド固有の座標系(以下、「ヘッド座標系」という。)とした場合の角度である。
【0089】
[キャリブレーション方法]
カメラ定数を求めるキャリブレーションは、固定冶具を用いて行われた。固定冶具座標系における座標が既知である6点をカメラで撮影し、キャリブレーションが行われた。即ち、本実施例においては、固定冶具座標系が上記発明を実施するための形態に記載された実空間座標系に相当し、ヘッド固有座標系が上記発明を実施するための形態に記載した物体座標系に相当する。
【0090】
[ヘッドの姿勢検出方法]
ヘッドの姿勢の検出は、固定治具で予め既知の姿勢に固定されたヘッドが上方から撮影され、その撮影画像からコンピュータを使用して各マーカーを特定し、各マーカー代表点間の位置関係(ヘッド座標系における各マーカー代表点の座標)に基づき、ヘッドのシャフト角、フェース角及びライ角が上記ニュートンラフソン法に従って計算された。
【0091】
本実施例におけるヘッド座標系は、
図3に示されるように、複数フェースラインのうち一番下側に位置するフェースラインFLのヒール側の端点が原点Oとされ、原点Oを通り、フェースラインFLのトウ側の端点を通る軸がX軸とされ、原点Oを通りかつX軸及びシャフト軸に垂直なフェースバック方向にのびる軸がZ軸とされ、原点を通りかつX軸及びZ軸に垂直なヘッド上部にのびる軸がY軸とされている。これより、シャフト角は、上記姿勢(α、β、γ)のγを、フェース角はβを、ライ角はαをそれぞれ示す。
テストの結果は表1及び表2に示される。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
表1及び表2において、設定値とは、上記固定治具で保持されたときのヘッドのシャフト角、フェース角及びライ角を示している。計測誤差は、設定値と計算値(ヘッドの撮影画像から上記DLT法で求められたヘッドのシャフト角、フェース角及びライ角の値)との差の絶対値である。また、表1、表2の左側の欄の「打点」とは、フェースのトウ側又はヒール側のいずれかの打点を想定していることを示している。即ち、打点が「トウ」と記載されているものは、フェースのトウ側でボールを打撃した状態が想定されており、撮影画像の下部分にヘッドが位置するように設置される。逆に、打点が「ヒール」と記載されているものは、フェースのヒール側でボールを打撃した状態が想定されており、撮影画像の上部分にヘッドが位置するように設置される。
【0095】
テストの結果から明らかなように、実施例、比較例ともに計測誤差を含んではいる。しかし、実施例の計測誤差は、比較例に対し、シャフト角で55%、フェース角で26%、ライ角で66%である。従って、本発明は、移動体の検出精度を大幅に向上させることが確認された。