(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、継電器が配置されたシステムにおいて、システムの異常等によりシステムに大電流(例えば、5000A以上の大電流)が流れる場合がある。この予期しない大電流がシステムに流れた状態で、可動接点と固定接点とを引き離して大電流を遮断すると種々の不具合が生じる場合がある。よって、予期しない大電流が流れた場合は、システムに組み込まれたヒューズによって大電流の遮断が行なわれる場合がある。ここで、「種々の不具合」とは、例えば、大電流が流れている状態で継電器の接点を開くと、接点間に大きなアークが発生し、継電器が破損する不具合が該当する。
【0005】
よって、システムに予期しない大電流が流れた場合、ヒューズが溶断するまでの間、可動接点と固定接点との接触が維持される特性が継電器に求められる。
【0006】
ここで、継電器の可動接点と固定接点の間に電流が流れる場合、接点近傍を流れる電流によって、接点間を引き離す方向に力が発生する。この力は、例えば、特許第4258361号公報に記載のごとく「電磁反発力」とも呼ばれ、流れる電流の2倍に比例する。よって、継電器に大電流が流れた場合、可動接点と固定接点との接触を維持することが困難となる場合がある。
【0007】
従って本発明は、継電器のON状態において、可動接点と固定接点とが非接触状態となる可能性を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[形態1]
固定接点をそれぞれ有する複数の固定端子と、
前記複数の固定端子がそれぞれ挿通されると共に、前記複数の固定端子が取り付けられ内部に気密空間を形成する容器と、
前記気密空間内において前記複数の固定端子と接触し、前記複数の固定端子を電気的に接続する可動接触部材と、
前記可動接触部材を前記複数の固定端子に接触させるために前記可動接触部材を移動させる駆動機構と、
前記可動接触部材を前記複数の固定端子に向けて付勢するための弾性部材と、を備え、
前記可動接触部材は、
前記固定端子と接触する部分である可動接点を含む可動接点部分を前記各固定端子に対して2つ以上有し、
前記可動接触部材は、
前記複数の固定端子と接触して前記複数の固定端子を電気的に接続する複数の可動接触子を備え、
前記各可動接触子は前記各固定端子のそれぞれに対して接触する前記可動接点部分を有し、
前記駆動機構が動作していない非動作状態のときの、前記可動接触子の前記可動接点部分と前記可動接点部分と接触する前記固定端子との、前記可動接触部材が移動する移動方向における距離を接点間距離とした場合に、
前記複数の可動接触子のうちの1つの前記可動接触子である第1の可動接触子の前記接点間距離は、他の前記可動接触子である第2の可動接触子の前記接点間距離よりも小さく、
前記駆動機構が動作し、前記固定端子と前記可動接触部材とが接触している動作状態のときの、前記複数の可動接触子のそれぞれが前記複数の固定端子のうちの接触する部分に対して加える力を接圧力とした場合に、
前記第1の可動接触子の前記接圧力は、前記第2の可動接触子の前記接圧力よりも小さい、ことを特徴とする継電器。
形態1によれば、各固定端子に対して2つ以上の可動接点部分が設けられている。これにより、各固定端子と可動接触部材との接触が2箇所以上形成されることから、固定端子と可動接点部分との間や各接点近傍を流れる電流を低減できる。これにより、電磁反発力を低減でき、駆動機構が動作している状態(継電器のON状態)において、可動接点と固定接点とが非接触状態となる可能性を低減できる。また形態1によれば、接点間距離が大きい第2の可動接触子においてアーク発生による消耗を低減できる
[形態2]
固定接点をそれぞれ有する複数の固定端子と、
前記複数の固定端子がそれぞれ挿通されると共に、前記複数の固定端子が取り付けられ内部に気密空間を形成する容器と、
前記気密空間内において前記複数の固定端子と接触し、前記複数の固定端子を電気的に接続する可動接触部材と、
前記可動接触部材を前記複数の固定端子に接触させるために前記可動接触部材を移動させる駆動機構と、
前記可動接触部材を前記複数の固定端子に向けて付勢するための弾性部材と、
前記弾性部材のうちで少なくとも前記固定端子に近い側の端を取り囲むように、前記弾性部材の周囲に配置された保護部材と、を備え、
前記可動接触部材は、
前記固定端子と接触する部分である可動接点を含む可動接点部分を前記各固定端子に対して2つ以上有
し、
前記弾性部材は、複数の前記可動接点部分のそれぞれに対応して設けられている、ことを特徴とする継電器。
形態
2によれば、各固定端子に対して2つ以上の可動接点部分が設けられている。これにより、各固定端子と可動接触部材との接触が2箇所以上形成されることから、固定端子と可動接点部分との間や各接点近傍を流れる電流を低減できる。これにより、電磁反発力を低減でき、駆動機構が動作している状態(継電器のON状態)において、可動接点と固定接点とが非接触状態となる可能性を低減できる。また形態2によれば、固定端子と可動接触部材との間でアークが発生した場合でも、発生したアークが弾性部材に当たる可能性を低減できる。これにより、アークによって弾性部材が損傷する可能性を低減できる。
また、形態2によれば、複数の可動接点部分に対応して弾性部材が設けられていない場合に比べ、各固定端子に対して複数の可動接点部分が加える力を容易に調整できる。
【0009】
[適用例1]固定接点をそれぞれ有する複数の固定端子と、
前記複数の固定端子がそれぞれ挿通されると共に、前記複数の固定端子が取り付けられ内部に気密空間を形成する容器と、
前記気密空間内において前記複数の固定端子と接触し、前記複数の固定端子を電気的に接続する可動接触部材と、
前記可動接触部材を前記複数の固定端子に接触させるために前記可動接触部材を移動させる駆動機構と、
前記可動接触部材を前記複数の固定端子に向けて付勢するための弾性部材と、を備え、
前記可動接触部材は、
前記固定端子と接触する部分である可動接点を含む可動接点部分を前記各固定端子に対して2つ以上有する、ことを特徴とする継電器。
【0010】
適用例1に記載の継電器によれば、各固定端子に対して2つ以上の可動接点部分が設けられている。これにより、各固定端子と可動接触部材との接触が2箇所以上形成されることから、固定端子と可動接点部分との間や各接点近傍を流れる電流を低減できる。これにより、電磁反発力を低減でき、駆動機構が動作している状態(継電器のON状態)において、可動接点と固定接点とが非接触状態となる可能性を低減できる。
【0011】
[適用例2]適用例1に記載の継電器において、
前記可動接触部材は、
前記複数の固定端子と接触して前記複数の固定端子を電気的に接続する複数の可動接触子を備え、
前記各可動接触子は前記各固定端子のそれぞれに対して接触する前記可動接点部分を有する、ことを特徴とする継電器。
適用例2に記載の継電器によれば、可動接触部材はそれぞれが別体である複数の可動接触子を有する。これにより、可動接触部材が一体である場合と比較して、可動接触子の製造誤差が生じた場合でも、より確実に可動接点部分を固定端子に接触させることができる。
【0012】
[適用例3]適用例2に記載の継電器において、
前記駆動機構が動作していない非動作状態のときの、前記可動接触子の前記可動接点部分と前記可動接点部分と接触する前記固定端子との、前記可動接触部材が移動する移動方向における距離を接点間距離とした場合に、
前記複数の可動接触子のうちの少なくとも1つの前記可動接触子と、他の前記可動接触子とは前記接点間距離が異なる、ことを特徴とする継電器。
【0013】
適用例3に記載の継電器によれば、駆動機構の動作を開始し、可動接触部材を複数の固定端子に接触させる閉成動作時において、可動接触子の少なくとも1つを他の可動接触子よりも先に複数の固定端子に接触させることができる。これにより、バウンスによってアークが生じた場合でも、先に接触する可動接触子以外の可動接触子のアークによる消耗を抑制できる。すなわち、複数の可動接触子のうち、一番始めに複数の固定端子に接触する可動接触子(「第1の可動接触子群」ともいう。)よりも後に複数の固定端子に接触する可動接触子(「第2の可動接触子群」ともいう。)は、バウンスが発生した場合でも、以下の効果を奏する。すなわち、第2の可動接触子群にバウンスが発生した場合でも、既に第1の可動接触子群が複数の固定端子を電気的に接続しているため、第2の可動接触子群と固定端子との間でアークが発生することを抑制できる。これにより、アークによる第2の可動接触子群の消耗を抑制できる。ここで、「可動接触子群」とは複数の可動接触子のみならず1つの可動接触子も含む意味である。なお、「バウンス」とは、固定接点を形成する部材(固定端子)と可動接点を形成する部材(可動接触子)との閉成動作時に発生する跳ね返り現象である。換言すれば、「バウンス」とは、接点間の異常な間欠的開閉現象である。
【0014】
[適用例4]適用例2又は適用例3に記載の継電器において、
前記駆動機構が動作し、前記固定端子と前記可動接触部材とが接触している動作状態のときの、前記複数の可動接触子のそれぞれが前記複数の固定端子のうちの接触する部分に対して加える力を接圧力とした場合に、
前記複数の可動接触子のうちの少なくとも1つの前記可動接触子と他の前記可動接触子とは前記接圧力が異なる、ことを特徴とする継電器。
適用例4に記載の継電器によれば、複数の可動接触子のうちの少なくとも1つが他の可動接触子と接圧力が異なる継電器を提供できる。すなわち、継電器の設計の自由度が向上できる。
【0015】
[適用例5]適用例2乃至適用例4のいずれか一つに記載の継電器において、
前記複数の可動接触子のうちの少なくとも1つの前記可動接触子の前記可動接点部分と、他の前記可動接触子の前記可動接点部分とは異なる材料により形成されている、ことを特徴とする継電器。
適用例5に記載の継電器によれば、継電器の使用環境に応じて、可動接触子の材料を選択することができる。例えば、可動接点を含む可動接点部分の消耗が他の可動接点を含む可動接点部分よりも早い所定の可動接触子は、他の可動接触子よりも可動接点部分を耐消耗性に優れた材料で作製できる。また、例えば、突入電流が大きくなるような使用環境では、複数の可動接触子のうち、少なくとも1つの可動接触子の可動接点部分を耐摩耗性に優れた材料で作製し、他の可動接触子の可動接点部分を導体抵抗の低い材料で作製できる。導体抵抗の低い材料で作製した可動接点部分を含む可動接触子によって、主に複数の固定端子間の導通を図る。ここで、「耐消耗性に優れた材料」や「耐摩耗性に優れた材料」とは、例えば融点の高い材料をいう。
【0016】
[適用例6]適用例1乃至適用例5のいずれか一つに記載の継電器において、さらに、
前記弾性部材は、複数の前記可動接点部分のそれぞれに対応して設けられている、ことを特徴とする継電器。
適用例6に記載の継電器によれば、複数の可動接点部分に対応して弾性部材が設けられていない場合に比べ、各固定端子に対して複数の可動接点部分が加える力を容易に調整できる。
【0017】
[適用例7]適用例6に記載の継電器において、
前記可動接触部材は、前記複数の固定端子を単一の電流経路によって電気的に接続する単一経路部材を有し、
前記駆動機構が動作し、前記固定端子と前記可動接触部材とが接触している動作状態のときに、前記単一経路部材が有する複数の前記可動接点部分に対応して設けられた前記複数の弾性部材は、それぞれが同程度の力によって前記単一経路部材を前記固定端子に向けて付勢する、ことを特徴とする継電器。
適用例7に記載の継電器によれば、閉成動作時に発生する単一経路部材のバウンスを抑制できる。例えば、バウンスが生じている時間(「バウンス時間」ともいう。)を短縮又はゼロにできる。ここで、単一経路部材とは、例えば可動接触部材が一体に形成されている場合は可動接触部材自体を意味し、例えば可動接触部材がそれぞれ別体の複数の可動接触子によって形成されている場合は、可動接触子のそれぞれを意味する。
【0018】
[適用例8]適用例1乃至適用例7のいずれか1つに記載の継電器において、さらに、
前記可動接触部材が移動する移動方向と直交する面内における前記可動接触
部材の動きに合わせて動くと共に、前記移動方向における前記可動接触部材の動きとは独立して動く支持部材を備え、
前記弾性部材は、前記移動方向における一端部が前記可動接触部材に当接し、前記移動方向における他端部が前記支持部材に当接する、ことを特徴とする継電器。
適用例8に記載の継電器によれば、弾性部材の座面となる可動接触部材と支持部材が移動方向と直交する面内において連動して動くため、弾性部材が正しい姿勢を維持できない可能性を低減できる。これにより、弾性部材が所望とする付勢力を発揮できない可能性を低減できる。
【0019】
[適用例9]適用例8に記載の継電器において、
前記可動接触部材は、
前記移動方向に垂直な方向であり、かつ、前記複数の固定端子が配列される配列方向に延びる中央部と、
前記中央部から前記移動方向に沿って前記固定端子に向かって延び、前記可動接点部分を端部に有する延伸部と、を備え、
前記弾性部材の内側には、前記延伸部の少なくとも一部が配置されている、ことを特徴とする継電器。
適用例9に記載の継電器によれば、弾性部材の内側には移動方向に沿って延びる延伸部の少なくとも一部が配置されている。これにより、弾性部材が正しい姿勢を維持できない可能性を低減できる。よって、弾性部材が所望とする付勢力を発揮できない可能性を低減できる。
【0020】
[適用例10]適用例9に記載の継電器において、
前記可動接触部材の一部は、前記支持部材を挟んで前記可動接点部分とは反対の側に位置する、ことを特徴とする継電器。
適用例10に記載の継電器によれば、中央部と延伸部とを有する可動接触子を備える場合でも、弾性部材の他端部を容易に支持部材に当接させることができる。
【0021】
[適用例11]適用例10に記載の継電器において、
前記支持部材は、磁性体である、ことを特徴とする継電器。
適用例11に記載の継電器によれば、支持部材が磁性体であることから、固定接点と可動接点とが電気的に接続された場合に、可動接触部材のうち支持部材を挟んで可動接点部分とは反対の側に位置する部分に流れる電流に対して、第1の方向に沿ったローレンツ力を発生させることができる。ここで第1の方向とは、可動接触部材の移動方向のうち、可動接触部材から固定端子に向かう方向である。これにより、駆動機構の動作状態において、可動接触部材と固定端子との接触をさらに安定に維持できる。
【0022】
[適用例12]適用例8乃至適用例11のいずれか一つに記載の継電器において、
前記移動方向に垂直な面に前記継電器を垂直投影した場合に、
前記垂直投影された前記支持部材の輪郭線は、前記垂直投影された前記可動接触部材の輪郭線の外側に位置する外側部分を有し、
前記継電器は、さらに、前記外側部分と当接し前記支持部材の前記面内における動きを規制する規制部を有する、ことを特徴とする継電器。
適用例12に記載の継電器によれば、支持部材が外側部分を有することで、外側部分を有さない場合と比較して、支持部材や可動接触部材と規制部との間の空間を狭くできる。これにより、移動方向と直交する方向への可動接触部材と支持部材の移動を抑制できる。例えば、可動接触部材と支持部材が面内に沿った方向に移動した場合でも、支持部材が継電器を構成する規制部に当たる可能性を向上できる。また、垂直投影した場合に支持部材の外側部分が可動接触部材の外側に位置することで、可動接触部材に代えて支持部材を他の部材に当てることができる。これにより、可動接触部材が破損する可能性を低減できる。ここで、規制部としては、例えば、可動接触部材及び支持部材を収容する容器が挙げられる。
【0023】
[適用例13]適用例1乃至適用例12のいずれか一つに記載の継電器において、
前記可動接触部材は、
前記弾性部材を保持し、前記可動接触部材に対する前記可動接触部材の移動方向と直交する方向における前記弾性部材の位置ずれを抑制するための保持機構を備える、ことを特徴とする継電器。
適用例13に記載の継電器によれば、保持機構によって移動方向と直交する方向における弾性部材の可動接触部材に対する位置ずれを抑制できる。これにより弾性部材の付勢力の変動を抑制できる。ここで、保持機構は、例えば、可動接触部材に形成された溝によって構成できる。こうすることで、容易に保持機構を形成できる。
【0024】
[適用例14]適用例1乃至適用例13のいずれか一つに記載の継電器において、
前記弾性部材は、圧縮コイルばねである、ことを特徴とする継電器。
適用例14に記載の継電器によれば、弾性部材を容易に形成できる。
【0025】
[適用例15]適用例1乃至適用例14のいずれか一つに記載の継電器において、
前記容器は、
前記各固定端子にそれぞれ対応して設けられ、対応する前記各固定端子が挿通される複数の第1の容器と、
前記複数の第1の容器に接合される第2の容器と、を有し、
前記各固定端子が有する前記各固定接点は、対応する前記第1の容器に収容されている、ことを特徴とする継電器。
適用例15に記載の継電器によれば、固定端子に対応して複数の第1の容器が設けられることから、第1の容器が単一である場合に比べ、継電器の耐圧性を向上できる。また、第1の容器に固定接点が収容されていることから、第1の容器が障壁となることで、固定接点や可動接点を形成する部材の飛散粒子が原因で固定端子間が導通する可能性を低減できる。
【0026】
[適用例16]適用例1乃至適用例15のいずれか一つに記載の継電器において、さらに、前記弾性部材の少なくとも一部を取り囲むように、前記弾性部材の周囲に配置された保護部材を備える、ことを特徴とする継電器。
適用例16に記載の継電器によれば、固定端子と可動接触部材との間でアークが発生した場合でも、発生したアークが弾性部材に当たる可能性を低減できる。これにより、アークによって弾性部材が損傷する可能性を低減できる。
【0027】
[適用例17]適用例16に記載の継電器において、前記可動接触部材が前記保護部材に対して圧入されることによって、前記保護部材は前記可動接触部材に固定されている、ことを特徴とする継電器。
適用例17に記載の継電器によれば、可動接触部材に対する保護部材の位置を固定でき、保護部材が設計した位置からずれる可能性を低減できる。
【0028】
[適用例18]適用例16に記載の継電器において、前記保護部材は、自身の一部が前記弾性部材によって前記継電器を構成する他の部材に対して押し付けられている、ことを特徴とする継電器。
適用例18に記載の継電器によれば、弾性部材の弾性を利用することによって他の部材に対する保護部材の位置を固定でき、保護部材が設計した位置からずれる可能性を低減できる。
【0029】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、継電器、継電器の製造方法、継電器を装備した車両や船舶等の移動体等の態様で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A〜G.各種実施例及び各種実施態様:
H.変形例:
【0032】
A.第1実施例:
A−1.継電器の概略構成:
図1は、第1実施例に係る継電器5を備えた電気回路(「システム」ともいう。)1の説明図である。電気回路1は、例えば車両に搭載される。電気回路1は、直流電源としての蓄電池2と、継電器5と、電流変換装置3と、負荷としてのモータ4とを備える。電流変換装置3は、インバータとコンバータとしての機能を有する。蓄電池2からモータ4に電力が供給される電力供給時(蓄電池2の放電時)では、電流変換装置3により変換された交流電流がモータ4に供給されることでモータ4が駆動する。また、モータ4で回生したエネルギーを直流電源2に充電する充電時には、電流変換装置3により変換された直流電流が蓄電池2に蓄電される。
【0033】
図2は、継電器5の外観斜視図である。
図3は、継電器5の上面図である。
図2には、方向を特定するためにXYZ軸が図示されている。なお、他の図においても必要に応じてXYZ軸が図示されている。なお、本実施例では、Z軸方向を上下方向とし、Z軸正方向を上方向、Z軸負方向を下方向とする。
【0034】
図2及び
図3に示すように、継電器5は、継電器本体6と、一対の永久磁石800と、を備える。継電器本体6は、樹脂製のケース(図示せず)に収容されている。継電器本体6は、一対の固定端子10を備える。一対の固定端子10は、第1の容器20に接合されている。固定端子10は、電気回路1の配線を接続するための接続口12を有する。一対の固定端子10は、後述する可動接触部材によって電気的に接続され、直流電源2からモータ4に電流が供給される。永久磁石800は、接点間に生じるアークを引き伸ばすために用いられる。これにより、アークの消弧が促進される。また、継電器本体6が収容されるケースには、シリコンゴム等の弾性部材により形成された防振部材が配置されている。防振部材を備えることで継電器5の耐振動性を向上できる。ここで、直流電源2からモータ4に電流が供給される場合(電力供給時)において、一対の固定端子10のうち、電流が流入する側を「プラス固定端子10W」又は「入力用端子10W」とも呼び、電流が流出する側を「マイナス固定端子10X」又は「出力用端子10X」とも呼ぶ。また以下では、直流電源2からモータ4に電流が供給される場合の継電器5について説明する。
【0035】
A−2.継電器の詳細構成:
A−2−1.気密空間の構成:
図4は、
図3の継電器本体6の3−3断面図である。
図5は、
図4に示す継電器本体6の斜視図である。
図6は、可動接触部材50の関連部材の第1の斜視図である。
図7は、可動接触部材50と関連部材の第2の斜視図である。
図8は、
図6の6−6部分断面図である。
図8は第1の可動接触子50A及び関連部材の断面図を示しているが、第2の可動接触子50Bも同様の構成である。
【0036】
図4に示すように、継電器本体6の内側に気密空間100が形成されている。気密空間100は、複数の固定端子10W,10Xと容器20,92によって形成されている。容器20,92は、上側に底部24を有する第1の容器20と、下側に底部82を有する第2の容器92とによって形成されている。第2の容器92は、接合部材30とベース部32と鉄心用容器80とが気密に接合されることで形成されている。
【0037】
図4及び
図5に示すように、固定端子10は2つ設けられている。固定端子10は、導電性を有する部材であり、例えば銅を含む金属材料により形成されている。固定端子10は、底部を有する略円筒状である。固定端子10のそれぞれは、第1の容器20の底部24に挿通されている。固定端子10は、下側(Z軸負方向側)に位置する底部に固定接触部19を有する。固定接触部19は、固定端子10の他の部分と同様に銅を含む金属材料で形成しても良いし、アークによる損傷をより抑制するために耐熱性のより高い材料(例えば、タングステン)で形成しても良い。固定接触部19のうち可動接触部材50と対向する端面には、可動接触部材50と接触する固定接点18が形成される。すなわち、固定接触部19は、固定端子10のうち可動接触部材50と接触する固定接点18を含む部分である。固定端子10の上側(Z軸正方向側)には、径方向外側に広がるフランジ部13が形成されている。
【0038】
第1の容器20は、絶縁性を有する部材であり、例えばアルミナやジルコニア等のセラミックにより形成され、耐熱性に優れる。第1の容器20は、上側に位置する底部24と、第1の容器20の側面を形成する側面部22と、を有する。また、第1の容器20は、底部24と対向する側は開口している。底部24には、固定端子10が通るための貫通孔26が形成されている。ここで、各固定端子10のフランジ部13は、第1の容器20の底部24の外側表面(外側に露出した面)に気密に接合されている。詳細には、以下の構成により固定端子10が第1の容器20に接合されている。フランジ部13の外表面のうち、第1の容器20の底部24と対向する面には、ダイヤフラム部17が形成されている。ダイヤフラム部17は、貫通孔26よりも内径が大きい円筒状である。ダイヤフラム部17は、例えばセラミックに近い熱膨張係数を有するコバール等の合金により形成され、第1の容器20の底部24にろう付けにより接合されている。ろう付けには、例えば銀ろう等を用いる。固定端子10とダイヤフラム部17とが別体である場合には、固定端子10のフランジ部13とダイヤフラム部17をろう付けする。なお、ダイヤフラム部17と固定端子10は一体としても構わない。ダイヤフラム部17は、材質が異なる固定端子10と第1の容器20との熱膨張差によって生じる接合部分の発生応力を緩和するために形成されている。ダイヤフラム部17により、固定端子10と第1の容器20との接合部分の破損を抑制できる。
【0039】
接合部材30は、例えば金属材料などで形成されている。接合部材30の下端部と上端部にはそれぞれ矩形状の開口が形成されている。接合部材30の上端部は第1の容器20の下側端面とろう付けにより気密に接合されている。また、接合部材30の下端部は、ベース部32とレーザー溶接等により気密に接合されている。また、接合部材30の側面は、下側から上側に向かう方向(Z軸方向)において、一部分がY軸方向に屈曲している。こうすることで、接合部材30が全体としてZ軸方向に容易に弾性変形可能となる。接合部材30の一部をY軸方向に屈曲させることで、異なる材質である接合部材30と第1の容器20との熱膨張差により発生する応力を緩和できる。
【0040】
ベース部32は、磁性体であり、例えば鉄等の金属磁性材料により形成されている。ベース部32は略矩形状であり、略中央には、貫通孔が形成されている。
【0041】
鉄心用容器80は、非磁性体である。鉄心用容器80は底部82を有する円筒状である。鉄心用容器80の上端部は、全周に亘ってベース部32の貫通孔周縁とレーザー溶接等により気密に接合されている。
【0042】
上記のように各部材10、20、30、32、80が気密に接合されることで、内側に気密空間100が形成されている。気密空間100には、アーク発生による固定接触部19や可動接触部材50の発熱を抑制するために、例えば、水素や窒素、又は、水素や窒素を主体とするガスが大気圧以上(例えば、2気圧)で封入されている。具体的には、各部材10、20、30、32、80を接合した後に、気密空間100の内側と外側とを連通するように配置された通気パイプ69を介して気密空間100内を真空引きする。そして、真空引きの後に通気パイプ69を介して気密空間100内に水素等のガスを所定圧になるまで封入する。水素等のガスを所定圧封入した後に、通気パイプ69を加締めて水素等のガスが気密空間100から外側に漏れ出さないようにする。
【0043】
A−2−2.可動接触部材及びその他の構成:
図4に示すように、継電器5は、さらに、可動接触部材50と、駆動機構90と、弾性部材としての圧縮コイルばね62と、支持部材37と、を備える。
【0044】
可動接触部材50は、導電性を有する部材である。可動接触部材50は、継電器5のON状態(駆動機構90の動作状態)において、一対の固定端子10W,10Xを電気的に接続する。可動接触部材50は、駆動機構90によって上下方向(Z軸方向)に沿って移動する。ここで、駆動機構90の動作によって可動接触部材50が移動する方向を「移動方向D1」ともいう。また移動方向D1と直交する方向を「水平方向」ともいう。
【0045】
図6及び
図7に示すように、可動接触部材50は、第1の可動接触子50Aと、第2の可動接触子50Bとから成る。第1の可動接触子50Aと第2の可動接触子50Bは、別体である。すなわち、第1の可動接触子50Aと第2の可動接触子50Bは、駆動機構90及び圧縮コイルばね62によって、それぞれ独立して移動方向D1に移動できるように構成されている。第1の可動接触子50Aと第2の可動接触子50Bのそれぞれは、継電器5のON状態において、一対の固定端子10W,10Xを電気的に接続する。
【0046】
第1の可動接触子50Aと第2の可動接触子50Bは、それぞれ水平方向であって、かつ、一対の固定端子10W,10Xが配列される配列方向(Y軸方向、対向方向)に並行に延びる接触子本体52A,52Bを有する。接触子本体52A,52Bはそれぞれ平板状である。なお、第1の可動接触子50Aと第2の可動接触子50Bとは、気密空間100内での配置位置が異なるだけで、構成は同じである。また、第1の可動接触子50Aと第2の可動接触子50Bについて、同様の構成部材については最後の一文字以外は同一符号を付け、第1の可動接触子50Aの構成部材には同一符号の最後に識別符号「A」を付け、第2の可動接触子50Bの構成部材には同一符号の最後に識別符号「B」を付けている。更に、第1の可動接触子50Aと第2の可動接触子50Bをまとめて説明する場合は「可動接触部材50」と呼ぶ。また、第1の可動接触子50Aと第2の可動接触子50Bの各構成部材について、まとめて説明する場合は識別符号を付さない。
【0047】
接触子本体52のうち固定接触部19と対向する部分(対向部分)には、接触子本体52から対応する固定端子10側に突出した可動接触部57が設けられている。固定端子10と接触する部分である可動接点58は、可動接触部57の端面によって形成される。可動接触部57は、可動接触部材50の他の部分と同様の材料(例えば、銅)により形成しても良いし、アークによる損傷をより抑制するために耐熱性のより高い材料(例えば、タングステン)で形成しても良い。ここで、可動接触部57が課題を解決するための手段に記載の「可動接点部分」に相当する。なお、可動接触部57は、接触子本体52から突出した形状であったが、接触子本体52自体によって形成しても良い。すなわち、可動接触部57を省略した場合、接触子本体52のうち固定接触部19と対向する部分が可動接触部となる。
【0048】
上記のごとく、可動接触部材50は継電器5のON状態において、入力用端子10Wと接触する2つの可動接触部57WA,57WBを有し、出力用端子10Xと接触する2つの可動接触部57XA,57XBを有する。各可動接触部57WA,57WB,57WA,57WBは、可動接点58を有する。ここで、継電器5のON状態において、第1の可動接触子50Aと第2の可動接触子50Bは、一対の固定端子10W,10Xを電気的に接続する並列の電流経路を形成する。すなわち、第1の可動接触子50Aと第2の可動接触子50Bはそれぞれ、一対の固定端子10W,10Xを電気的に接続する単一(直列)の電流経路を形成する。よって、第1の可動接触子50Aと第2の可動接触子50Bは、それぞれ「単一経路部材50A,50B」とも呼ぶことができる。
【0049】
図6〜
図8に示すように、第1と第2の可動接触子50A,50Bのうち、固定端子10が位置する側とは反対側には、保持機構としての溝51がそれぞれ形成されている。溝は各可動接触子50A,50Bの水平方向における略中央に設けられ、円環状である。また、
図8に示すように、溝51の中央部分には、円柱状の棒状部材130が挿通される貫通孔が形成されている。なお、棒状部材130のうち、第1の可動接触子50Aに挿通される一方を棒状部材130Aとも呼び、第2の可動接触子50Bに挿通される他方を棒状部材130Bとも呼ぶ。棒状部材130は、一端側に規制部131を有する。規制部131は、接触子本体52の面のうち固定端子10と対向する面側に位置し、継電器5のOFF状態において、可動接触部材50が固定端子10側に移動することを防止する。また、棒状部材130の他端側132は支持部材37に固定されている。
【0050】
支持部材37は、例えば、ステンレス等の金属により形成されている。支持部材37は、可動接触部材50よりも下側に位置する。支持部材37は、水平方向に延びる平板状である。
図8に示すように、支持部材37のうち溝51と対向する部分には、円環状の溝31が形成されている。また、支持部材37のうち、円環状の溝31の中央部分には2つの棒状部材130A,130Bが嵌挿され固定される2つの貫通孔が形成されている。
【0051】
圧縮コイルばね62は、移動方向D1に弾性変形可能であり、継電器5のON状態において可動接触部材50を固定端子10に向けて付勢する。圧縮コイルばね62は、各可動接触子50A,50Bに対応して2つ設けられている。ここで、圧縮コイルばね62のうち、可動接触子50Aを付勢する一方を圧縮コイルばね62Aとも呼び、可動接触子50Bを付勢する他方を圧縮コイルばね62Bとも呼ぶ。
図8に示すように、圧縮コイルばね62は、移動方向D1における一端部が可動接触部材50に当接し、移動方向D1における他端部が支持部材37に当接する。換言すれば、可動接触部材50と支持部材37とは、圧縮コイルばね62の座面となる。詳細には、圧縮コイルばね62の移動方向D1における両端部は、溝51,31に配置されている。また、圧縮コイルばね62の内側には、棒状部材130が配置されている。
【0052】
図4及び
図5に示すように駆動機構90は、可動接触部材50を固定端子10に接触させるために可動接触部材50を移動させる。すなわち、駆動機構90は、可動接点58と固定接点18とを開閉するために可動接触部材50を移動させる。駆動機構90は、ロッド60と、ベース部32と、固定鉄心70と、可動鉄心72と、鉄心用容器80と、コイル44と、コイルボビン42と、コイル用容器40と、弾性部材としての第1のばね64と、を有する。
【0053】
コイル44は、中空円筒状の樹脂製のコイルボビン42に巻き付けられている。コイル用容器40は、磁性体であり、例えば鉄等の金属磁性材料により形成されている。コイル用容器40は直方体状であり、内側にコイル44を収容する。
【0054】
鉄心用容器80は、底部82を有する筒状であり、底部には弾性体としてのゴム86が配置されている。
【0055】
固定鉄心70は、円柱状であり、上端から下端に亘って貫通孔70hが形成されている。固定鉄心70の一部は鉄心用容器80の内側に収容されている。固定鉄心70は、ベース部32に溶接等により固定されている。
【0056】
可動鉄心72は、円柱状であり、貫通孔72hが上端から下端近傍に亘って形成されている。可動鉄心72は、鉄心用容器80の底部上にゴム86を介して収容されている。また、可動鉄心72の上端面は、固定鉄心70の下端面と対向するように配置されている。コイル44に通電することで、可動鉄心72は固定鉄心70に吸引され上方向に移動する。
【0057】
第1のばね64は、移動方向D1における可動鉄心72と固定鉄心70との間に配置され、互いに離間する方向に両部材70,72を付勢する。
【0058】
ロッド60は、非磁性体である。ロッド60は円柱状の軸部60aと、軸部60aの一端に設けられた一端部60bと、軸部60aの他端に設けられた他端部60cとを有する。一端部60bは、支持部材37に嵌挿され固定されると共に、拡径部60d上に支持部材37が配置される。他端部60cは、可動鉄心72に固定される。なお、ロッド60と棒状部材130をあわせて、可動接触部材50を固定端子10に向けて移動させる「ロッド部材」と呼ぶこともできる。
【0059】
A−3.継電器の動作説明:
次に、継電器5のON状態(コイルに通電している時、駆動機構90の動作状態とも言う)及びOFF状態(コイルに通電していない時、駆動機構90の非動作状態とも言う)の説明を行う。コイル44に通電し駆動機構90を動作させると、可動鉄心72が固定鉄心70に吸引される。すなわち、可動鉄心72が第1のばね64の付勢力に抗して固定鉄心70に近づき、固定鉄心70に当接する。可動鉄心72が上方向に移動すると、ロッド60も上方向に移動する。ロッド60が上方向に移動すると支持部材37及び棒状部材130も上方向に移動する。支持部材37が上方向に移動すると、可動接触部材50も上方向(固定端子10に近づく方向)に移動し、固定端子10に接触する。可動接触部材50が固定端子10に接触した地点からさらに支持部材37が上方向に移動すると、圧縮コイルばね62がさらに圧縮され所定の付勢力によって可動接触部材50を固定端子10に向けて付勢する。
【0060】
一方、コイル44への通電を遮断し駆動機構90が非動作状態となると、ロッド60が下方向に移動し、ロッド60に固定された支持部材37も下方向に移動する。これにより、可動接触部材50も下方向に移動し、可動接触部材50と固定端子10とが非接触状態となる。これにより、2つの固定端子10W,10X間の導通が遮断される。
【0061】
A−4.効果:
上記のように、第1実施例の継電器5は、各固定端子10W,10Xに対してそれぞれ2つの可動接触部57が設けられている。これにより、各固定端子10W,10Xのそれぞれと、可動接触部材50との接触が2箇所となる。よって、1つの固定端子10に接触する可動接触部57が1つの場合に比べ、固定端子10と可動接触部57との間や各接点18,58近傍を流れる電流を約半分にできる。これにより、電磁反発力を低減でき、駆動機構90が動作している状態において、可動接点58と固定接点18とが非接触状態となる可能性を低減できる。
【0062】
また、第1実施例の継電器5は、気密空間100を形成する構成部材である固定端子10の数を増加させることなく、第1と第2の可動接触子50A,50Bを設けることで、接点18,58の数を増加させている。ここで、固定端子10は第1の容器20に気密に接合する必要があることから、固定端子10の数が増加すると、気密空間100の気密性を維持することが困難となる場合がある。しかしながら、上記のごとく、固定端子10の数を2つに維持しつつ、可動接触部材50が各固定端子10W,10Xに対してそれぞれ2つの可動接触部57を有することで、気密空間100の気密性を維持しつつ電磁反発力を低減できる。
【0063】
また、第1実施例の継電器5は、各固定端子10W,10Xにそれぞれ接触する可動接触部57を1ずつ有する第1と第2の可動接触子50A,50Bが別体である。これにより、第1と第2の可動接触子50A,50Bが一体である場合と比較して、第1と第2の可動接触子50A,50Bに製造誤差が生じた場合でも、可動接触部57のそれぞれを確実に一対の固定端子10W,10Xに接触させることができる。また、可動接触部材50の設計の自由度が向上できる。例えば、第1の可動接触子50Aと第2の可動接触子50Bとを異なる材料によって作製できる。
【0064】
また、第1実施例の継電器5は、可動接触部材50は、圧縮コイルばね62を保持し、可動接触部材50に対する水平方向における圧縮コイルばね62の位置ずれを抑制するための溝51を備える(
図8)。これにより、圧縮コイルばね62の可動接触部材50に対する位置ずれを抑制でき、圧縮コイルばね62の付勢力の変動を抑制できる。また、保持機構を溝51によって構成することで、容易に保持機構を形成できる。また、圧縮コイルばね62は、板ばね等の他の弾性部材に比べ、一般に、所定の荷重に対する変位量が大きい。よって、弾性部材として圧縮コイルばね62を用いることで、継電器5の設計自由度が向上する。例えば、限られた狭い空間内に弾性部材として圧縮コイルばね62を配置することができる。また、圧縮コイルばね62を用いることで弾性部材を容易に形成できる。
【0065】
また、第1実施例の継電器5は、圧縮コイルばね62の座面を形成する支持部材37を有する。そして、支持部材37にロッド60の一端部60bが固定されている。これにより、ロッド60に連動して移動可能な可動接触部材50を容易に継電器5の一部として組み付けることができる。
【0066】
B.第2実施例:
図9は、第2実施例の継電器5aを説明するための第1の図である。
図10は、第2実施例の可動接触部材50a及び関連部材の斜視図である。
図11は、第2実施例の継電器5aを説明するための第2の図である。なお、
図9は、
図4に示す断面図の斜視図に相当する図であり、固定端子10,可動接触部材50a,圧縮コイルばね62,及び,支持部材37aの斜視図を示している。また、
図11は、
図9に示す継電器本体6aのうち、X軸正方向側に位置する第2の可動接触子50aBを通る断面(Y軸とZ軸に平行な断面)の一部を示している。
【0067】
上記第1実施例の継電器5と異なる点は、可動接触部材50aの構成と、圧縮コイルばね62の配置数と、支持部材37aの構成と、ロッド60の一端側の取付構造である。その他の構成については第1実施例の継電器5と同様の構成であるため、同様の構成については同一符号を付すと共に説明を省略する。
【0068】
図10に示すように、第2実施例の可動接触部材50aは、第1の可動接触子50aAと、第2の可動接触子50aBとから成る。第1と第2の可動接触子50aA,50aBとは、別体である。換言すれば、第1と第2の可動接触子50aA,50aBとはそれぞれ、継電器5aのON状態において、一対の固定端子10W,10Xを電気的に接続する単一(直列)の電流経路を形成する。よって、上記第1実施例と同様に、第1と第2の可動接触子50aA,50aBは、それぞれ「単一経路部材50aA,50aB」とも呼ぶことができる。また、第1と第2の可動接触子50aA,50aBは、気密空間100内での配置位置が異なるだけで、構成は同じである。第1と第2の可動接触子50aA,50aBのうち、第1の可動接触子50aAを構成する部材には、符号の最後に「A」を付し、第2の可動接触子50aBを構成する部材には、符号の最後に「B」を付している。また、第1と第2の可動接触子50aA,50aBのうち、入力用端子10Wに対応して設けられている部材には、下2番目の符号に「W」を付し、出力用端子10Xに対応して設けられている部材には、下2番目の符号に「X」を付している。なお、第1と第2の可動接触子50aA,50aBを区別なく用いる場合は単に「可動接触部材50a」を用い、可動接触部材50aを構成する部材を区別なく用いる場合は、符号「A」、「B」、「W」、「X」は付さない場合もある。
【0069】
図9〜
図11に示すように、第1と第2の可動接触子50aA,50aBは、それぞれ、中央部52aA,52aBと、延伸部54aWA,54aWB,54aXA,54aXBとを備える。以下、中央部52aA,52aBを区別なく用いる場合は、単に「中央部52a」とも呼ぶ。また、延伸部54aWA,54aWB,54aXA,54aXBを区別なく用いる場合は、単に「延伸部54a」とも呼ぶ。
【0070】
中央部52aは、板状であり、一対の固定端子10W,10Xが配列される配列方向(Y軸方向)に延びる。延伸部54aは、中央部52aから対応する固定端子10に向かって移動方向D1に沿って延びる。詳細には、延伸部54aは、中央部52aから中央部52aの厚さ以上延びる。
図11に示すように、延伸部54aのうち固定端子10と対向する端面を含む部分が可動接触部57aとなる。すなわち、延伸部54aは、固定端子10と対向する端部に可動接触部57aを有する。また、延伸部54a(可動接触部57a)のうち、固定端子10と対向する端面には可動接点58が形成される。延伸部54aの下側部分は、中央部52aに取り付けられている。ここで、可動接触部57aが課題を解決するための手段に記載の「可動接点部分」に相当する。
【0071】
図9〜
図11に示すように、支持部材37aは平板状である。支持部材37aは、移動方向D1において、可動接触部57aと中央部52aとの間に位置する。詳細には、支持部材37aは、中央部52aの2つの面のうち固定接点18と対向する面上に配置されている。支持部材37aには、4つの延伸部54aが挿通されている。また、ロッド60の上側一端部は、支持部材37aに圧入や溶接等により取り付けられている。
【0072】
上記構成の支持部材37aと可動接触部材50aとは以下の関係を有する。すなわち、支持部材37aは、移動方向D1と直交する面内における可動接触部材50aの動きに合わせて動く。詳細には、ロッド60の中心軸を軸として、可動接触部材50aと支持部材37aとは連動して回転する。また、支持部材37aはロッド60に固定され、可動接触部材50aはロッド60に固定されていない。また、支持部材37aは可動接触部材50aに固定されていない。よって、支持部材37aは、移動方向D1における可動接触部材50aの動きと独立して動くことが可能である。すなわち、駆動機構90の動作状態において、ロッド60によって支持部材37aが持ち上げられ、中央部52aから支持部材37aが引き離されることが可能となる。
【0073】
圧縮コイルばね62は、各可動接触部57aに対応して4つ設けられている。詳細には、延伸部54aの外側に圧縮コイルばね62が配置されている。すなわち、
図11に示すように、可動接触部材50aと支持部材37aが圧縮コイルばね62の座面をそれぞれ構成する。また、継電器5aを移動方向D1と垂直な面に垂直投影した場合に、各圧縮コイルばね62の輪郭線の内側に、対応する可動接点58が位置するように、各圧縮コイルばね62は配置されている。
【0074】
圧縮コイルばね62のそれぞれは、駆動機構90の動作状態において、それぞれが同程度の付勢力によって可動接触部材50aを固定端子10に向けて付勢している。ここで、「同程度の付勢力」とは、「同一の付勢力」のみならず、圧縮コイルばね62等の継電器5aの製造誤差によるばらつきも許容する意味で用いている。例えば、「同程度の付勢力」とは、目的とする付勢力に対して±30%の範囲内の誤差を含む。すなわち、目的とする付勢力をPrとし、実際の圧縮コイルばね62の付勢力をPzとするとき、0.7×Pr≦Pz≦1.3×Prの関係が成り立つ。なお、閉成動作時のバウンスをさらに抑制するために、「同程度の付勢力」は、誤差を目的とする付勢力に対して±10%の範囲内とすることが好ましい。すなわち、0.9×Pr≦Pz≦1.1×Prの関係が成り立つ。ここで、本実施例の場合、4つの圧縮コイルばね62のばね定数が同程度、かつ、駆動機構90の動作状態における圧縮コイルばね62の変位量が同程度となるように、継電器5aは構成されている。但し、ばね定数は±10%のばらつき、変位量は±20%のばらつきも許容する。
【0075】
継電器5aがON状態になると、ロッド60が上方向に移動すると共に、支持部材37aも上方向に移動する。支持部材37aが上方向に移動すると、可動接触部材50aも上方向に移動し、固定端子10に接触する。可動接触部材50aが固定端子10に接触した地点からさらに支持部材37aが上方向に移動すると、圧縮コイルばね62がさらに圧縮され所定の付勢力によって可動接触部材50aを固定端子10に向けて付勢する。継電器5aがOFF状態になると、ロッド60が下方向に移動し、ロッド60に固定された支持部材37aも下方向に移動する。これにより、可動接触部材50aも下方向に移動し、可動接触部材50aと固定端子10とが非接触状態となる。
【0076】
上記のように、第2実施例の継電器5aは、上記第1実施例の継電器5と同様に、各固定端子10W,10Xに対してそれぞれ2つの可動接触部57aが設けられている。これにより、第2実施例の継電器5aは、第1実施例の継電器5と同様の効果を奏する。例えば、第2実施例の継電器5aは、電磁反発力を低減でき、駆動機構90が動作している状態において、可動接点58と固定接点18とが非接触状態となる可能性を低減できる。
【0077】
また、第2実施例の継電器5aは、各可動接触部57aに対応して圧縮コイルばね62が設けられている(
図9)。これにより、上記第1実施例の継電器5に比べ各固定端子10に対して複数の可動接点58が加える力を容易に調整できる。また、第2実施例の継電器5aは、圧縮コイルばね62のそれぞれが、同程度の付勢力によって可動接触部材50aを固定端子10に向けて付勢している。詳細には、第1の可動接触子50aAの2つの可動接触部57aに対応して設けられた2つの圧縮コイルばね62の付勢力が同程度であり、また、第2の可動接触子50aBの2つの可動接触部57aに対応して設けられた2つの圧縮コイルばね62の付勢力が同程度である。これにより、閉成動作時に発生する第1と第2の可動接触子50aA,50aBのバウンスを抑制できる。これにより、バウンスによって生じるアークに起因する継電器5aの種々の不具合を低減できる。「種々の不具合」とは、例えば、アーク発生によって固定接点18や可動接点58を形成する部材が溶け、固定端子10と可動接触部材50aとが固着することを指す。また例えば、接点を形成する部材(「接点形成部材」ともいう。)の転移が生じることを指す。転移が生じると、接点形成部材に突起が形成される場合がある。この突起の形成により接点間の接触抵抗が増加したり、ロッキングが生じたりする場合がある。
【0078】
また、第2実施例の継電器5aは、圧縮コイルばね62の座面となる可動接触部材50aと支持部材37aとが移動方向と直交する面内において連動して動く。これにより、可動接触部材50aや支持部材37aがロッド60の中心軸を軸として回転した場合でも、圧縮コイルばね62が正しい姿勢を維持できない可能性を低減できる。すなわち、圧縮コイルばね62が捩れる等により芯ズレが生じる可能性を低減できる。これにより、圧縮コイルばね62のそれぞれが所望とする付勢力を発揮できない可能性を低減できる。すなわち、各圧縮コイルばね62のそれぞれの付勢力をより安定して同程度に設定でき、継電器5aの閉成動作時に発生するバウンスを更に抑制できる。
【0079】
また、第2実施例の継電器5aは、可動接触部材50aの一部である中央部52aが支持部材37aを挟んで可動接触部57aとは反対の側に位置する。これにより、圧縮コイルばね62の他端部を容易に支持部材37aに当接させることができる。
【0080】
また、第2実施例の継電器5aは、圧縮コイルばね62の内側には延伸部54aの一部が配置されている。これにより、圧縮コイルばね62が正しい姿勢を維持できない可能性をさらに低減できる。
【0081】
ここで、支持部材37aの材質は特に限定されないが、ステンレス等の磁性体を用いることが好ましい。
図12は、支持部材37aに磁性体を用いた場合の効果を説明するための図である。
図12は、中央部52aと支持部材37aとロッド60を模式的に記載している。
図12に示すように、継電器5aのON状態では、中央部52aの奥側から手前側に向かう方向(+Y軸方向)に電流が流れている。この電流を中心に反時計回りの磁束Baが発生する。ここで、中央部52a上に磁性体である支持部材37aが配置されていると、磁束Baが支持部材37a側に引き寄せられる。これにより、
図12に示すように、中央部52aを通る磁束Baのうち、左向き(X軸正方向向き)の磁束密度が減少し、右向き(X軸負方向向き)の磁束密度が増加する。右向きの磁束密度が増加することで、中央部52aを流れる電流に対し上向きのローレンツ力Fp(「吸引力Fp」ともいう。)が発生する。このローレンツ力Fpは、可動接触部材50aを固定接点18に近づける方向に作用するため、固定端子10と可動接触部材50aとの接触をより安定に維持できる。特に、可動接触部材50aに大電流(例えば、5000A以上)が流れた場合、いわゆる電磁反発力が大きくなり固定端子10と可動接触部材50aとの接触を維持することが困難となる場合がある。しかしながら、支持部材37aを磁性体とし、吸引力Fpを生じさせることで圧縮コイルばね62の付勢力を大きくすることなく,固定端子10と可動接触部材50aとの接触をさらに安定に維持できる。特に本実施例では、吸引力Fpを発生する部材と圧縮コイルばね62の座面を形成する部材とが同一部材である支持部材37aによって構成されている。これにより、継電器5aの部品点数の低減を図りながら、固定端子10と可動接触部材50aとの接触をさらに安定に維持できる。
【0082】
C.第3実施例:
図13は、第3実施例の継電器5bを説明するための図である。
図14は、可動接触部材50bとその関連部材の斜視図である。
図13は、継電器本体6bのうち
図3に示す断面図に相当する断面図である。第3実施例の継電器5bと第1実施例の継電器5との異なる点は、可動接触部材50bの構成と、支持部材37bの構成と、圧縮コイルばね62の配置個数と、新たに装着部材164を設けた点である。その他の構成については第1実施例と同様の構成であるため、同様の構成について同一符号を付すと共に説明を省略する。
【0083】
図14に示すように、可動接触部材50bは、上記第1実施例と同様に、別体である第1の可動接触子50bAと第2の可動接触子50bBとから成る。第1の可動接触子50bAと第2の可動接触子50bBとの間には、ロッド60が通されている。ロッド60の一端部60bは接触子本体52よりも上側に配置される。継電器5bのOFF状態において、一端部60bが可動接触部材50bを下側に押し付けることで、可動接触部材50bの固定端子10側への移動が規制される。第1と第2の可動接触子50bA,50bBの面のうち、可動接触部57が形成された面とは反対側の面には、下側に延びる円柱状の突起部59b(
図13)と、突起部59bの周囲に形成された保持部材としての溝(図示せず)が形成されている。突起部59bの外側には、圧縮コイルばね62の一端部が配置される。突起部59bも課題を解決するための手段に記載の「保持機構」の少なくとも一部を構成する。
【0084】
土台部37bは、ベース部32に固定されている。土台部37bは、例えば合成樹脂により成形されている。土台部37bのうち突起部59bと対向する部分には、可動接触部材50bに向かって延びる突起部37b1(
図13)が形成されている。土台部37bのうち突起部37b1の周囲に形成された部分には円環状の溝(図示せず)が形成されている。土台部37bの溝には、圧縮コイルばね62の他端部が配置される。また、突起部37b1の外側には圧縮コイルばね62の他端部が配置される。
【0085】
圧縮コイルばね62は、第2実施例と同様に、各可動接触部57に対応して4つ設けられている。詳細には、第2実施例と同様に、継電器5bを移動方向D1に垂直な面に垂直投影した場合に、各圧縮コイルばね62の輪郭線の内側に、対応する可動接点58が位置する。また、継電器5bのON状態において、各圧縮コイルばね62は、可動接触部材50bを同程度の付勢力によって固定端子10に向けて付勢する。
【0086】
装着部材164は、
図14に示すように、底面部164aと底面部164aから下側に延びる第1の側面部164b及び第2の側面部164cとを備える。第1の側面部164bと第2の側面部164cは互いに対向する。底面部164aは、可動接触部材50bのうち、固定端子10と対向する面上に配置されている。底面部164aには、ロッド60が挿通される貫通孔が形成されている。装着部材164の材質は特に限定されないが、非磁性体を用いることが好ましい。
【0087】
継電器5bのコイル44に通電されると、ロッド60が上方向に移動することで一端部60bによる規制が解除され、可動接触部材50bが圧縮コイルばね62の付勢力によって上方向に移動する。これにより、可動接触部材50bが固定端子10と接触する。一方、継電器5bがOFF状態になると、ロッド60が下方向に移動し、一端部60bに押されて可動接触部材50bが下方向に移動する。これにより、可動接触部材50bが固定端子10から離れ、非接触状態となる。
【0088】
上記のように、第3実施例の継電器5bは、上記第1実施例の継電器5と同様に、各固定端子10W,10Xに対してそれぞれ2つの可動接触部57が設けられている。これにより、第3実施例の継電器5bは、第1実施例の継電器5と同様の効果を奏する。例えば、第3実施例の継電器5bは、電磁反発力を低減でき、駆動機構90が動作している状態において、可動接点58と固定接点18とが非接触状態となる可能性を低減できる。
【0089】
また、第3実施例の継電器5bは、圧縮コイルばね62が可動接触部57に対応して設けられ、継電器5bのON状態において、圧縮コイルばね62の可動接触部材50bに対する付勢力はそれぞれ同程度である。これにより、第2実施例の継電器5aと同様に、閉成動作時に発生する第1と第2の可動接触子50bA,50bBのバウンスを抑制できる。
【0090】
また、第3実施例の継電器5bは、装着部材164を有することで、第1と第2の可動接触子50bA,50bBの位置が不安定となる可能性を低減できる。これにより、移動方向D1と垂直な面内において、第1と第2の可動接触子50bA,50bBの面内の捩れ(ズレ)を防止することができる。よって、圧縮コイルばね62が正しい姿勢を維持できない可能性を低減できる。
【0091】
D.第4実施例:
図15は、第4実施例の継電器5cを説明するための図である。
図16は、可動接触部材50bとその関連部材の斜視図である。
図15は、継電器本体6cのうち
図3に示す断面図に相当する断面図である。第4実施例の継電器5cと第3実施例の継電器5bとの違いは、支持部材37cがロッド60の上方向への移動に伴って移動する点である。その他の構成については、第3実施例と同様の構成であるため、同様の構成については同一符号を付すと共に説明を省略する。
【0092】
図15に示すように、支持部材37cはロッド60に固定されたE型リング169上に配置されている。これにより、ロッド60の上方向への移動に連動して支持部材37cも上方向に移動する。なお、E型リング169の材質は特に限定されないが、非磁性体を用いることが好ましい。
【0093】
上記のように、第4実施例の継電器5cは、上記第1実施例の継電器5と同様に、各固定端子10W,10Xに対してそれぞれ2つの可動接触部57が設けられている。これにより、第4実施例の継電器5cは、第1実施例の継電器5と同様の効果を奏する。例えば、第4実施例の継電器5cは、電磁反発力を低減でき、駆動機構90が動作している状態において、可動接点58と固定接点18とが非接触状態となる可能性を低減できる。
【0094】
また、第4実施例の継電器5cは、圧縮コイルばね62が可動接触部57に対応して設けられ、継電器5cのON状態において、圧縮コイルばね62の可動接触部材50bに対する付勢力はそれぞれ同程度である。これにより、第2実施例の継電器5aと同様に、閉成動作時に発生する第1と第2の可動接触子50bA,50bBのバウンスを抑制できる。
【0095】
E.第5実施例
図17は、第5実施例の継電器5dを説明するための図である。
図18は、可動接触部材50bとその関連部材の斜視図である。
図17は、継電器本体6cのうち
図3に示す断面図に相当する断面図である。第5実施例の継電器5dと第4実施例の継電器5cとの違いは、ロッド60の上端部60bの位置と、E型リング169に代えてロッド60が拡径部60dを有する点と、新たに調整部材160を設けた点である。その他の構成については第4実施例の継電器5cと同様の構成であるため、第4実施例の構成と同様の構成については同一符号を付すと共に説明を省略する。
【0096】
調整部材160は、Y軸方向に開口する筒状である。筒状の調整部材160の内側を通るように、可動接触部材50bと支持部材37cとが配置されている。調整部材160は、可動接触部材50bを押さえ付け、継電器5dのOFF状態における可動接触子50dの移動方向D1の動きを規制する。また、本実施例では、調整部材160は、継電器5dのOFF状態において、圧縮コイルばね62を圧縮した状態で保持するために用いられる。すなわち、継電器5dのOFF状態において、圧縮コイルばね62が圧縮した状態となるように、圧縮コイルばね62の座面を形成する可動接触部材50b及び支持部材37cの移動方向D1における間隔を調整している。調整部材160の材質は特に限定されないが、非磁性体を用いることが好ましい。
【0097】
図17に示すように、ロッド60の一端部60bは、支持部材37cに固定されている。また、拡径部60d上に調整部材160を介して支持部材37cが配置されている。
【0098】
継電器5dがON状態になると、ロッド60が上方向に移動する。これにより支持部材37c及び可動接触部材50bも上方向に移動する。可動接触部材50bが固定接触部19に接触した状態で、さらにロッド60が上方向に移動することで支持部材37cがさらに上方向に移動する。これにより、支持部材37cと可動接触部材50bとの移動方向D1における間隔が短くなり圧縮コイルばね62がさらに圧縮される。
【0099】
上記のように、第5実施例の継電器5dは、上記第1実施例の継電器5と同様に、各固定端子10W,10Xに対してそれぞれ2つの可動接触部58が設けられている。これにより、第5実施例の継電器5dは、第1実施例の継電器5と同様の効果を奏する。例えば、第5実施例の継電器5dは、電磁反発力を低減でき、駆動機構90が動作している状態において、可動接点58と固定接点18とが非接触状態となる可能性を低減できる。
【0100】
また、調整部材160によって、第5実施例の継電器5dが備える可動接触部材50bと支持部材37cとは、移動方向D1と直交する面内においてロッド60の中心軸を軸とした動きが連動する。これにより、移動方向D1と垂直な面内において、圧縮コイルばね62の座面を形成する第1と第2の可動接触子50bA,50bBと支持部材37cとの面内の捩れ(ズレ)を防止できる。これにより、圧縮コイルばね62が正しい姿勢を維持できない可能性を低減できる。また、調整部材160を有することで、駆動機構90が動作していない状態において、圧縮コイルばね62を容易に圧縮状態にできる。また、可動接触部材50bは、第1と第2の可動接触子50bA、50bBが別体である。これにより、上記他の実施例と同様に、第1と第2の可動接触子50bA,50bBが一体である場合と比較して第1と第2の可動接触子50bA,50bBを確実に一対の固定端子10W,10Xに接触させることができる。
【0101】
F.第6実施例:
図19は、第6実施例の継電器5eを説明するための図である。
図19は、継電器本体6eのうち
図3に示す断面図に相当する断面図である。第6実施例の継電器5eと第2実施例の継電器5a(
図9)との違いは、第1の容器20eの個数と、接合部材30eの構成である。その他の構成については、第2実施例の継電器5aと同様の構成であるため、同様の構成については同一符号を付すと共に説明を省略する。
【0102】
第1の容器20eは、各固定端子10のそれぞれに対応して設けられている。第1の容器20eは、上側に底部を有する筒状である。本実施例では、第1の容器20は、固定端子10の数に対応して2つ設けられている。上記各実施例と同様に、継電器本体6eは、固定端子10と第1の容器20eと第2の容器92によって内側に気密空間100を形成する。固定接点18と可動接点58は、内部空間である気密空間100のうち、第1の容器20eの内側に収容されている。詳細には、可動接触部材50aの移動に拘わらず、固定接点18と可動接点58は、気密空間100のうち、対応する第1の容器20eの内側に収容されている。
【0103】
接合部材30eは、第1の接合部材301と第2の接合部材303とを備える。第1と第2の接合部材301,303は、例えば金属材料などで形成されている。本実施例では、アルミナ製の第1の容器20eに接合される第2の接合部材303は、第1の接合部材303よりも熱膨張率が小さい。例えば、第1の接合部材301はステンレスを用いて作製され、第2の接合部材303はコバールや42アロイを用いて作製される。ステンレス製の第1の接合部材301とセラミック製の第1の容器20eとの間に、セラミックと同程度の熱膨張率係数を有する第2の接合部材303を介在させることで、第1の容器20eと第1の接合部材301間の熱膨張差により生じる応力を緩和できる。これにより、継電器本体6eが破損する可能性を低減できる。
【0104】
第1の接合部材301の一面(上面)には、可動接触部材50aの一部分が通るための2つの開口が形成されている。また、第1の接合部材301の一面と対向する面(下面)には、開口が形成されている。第2の接合部材303は、第1の容器20eに対応して設けられている。本実施例では、第2の接合部材303は2つ設けられている。第2の接合部材303は、円筒形状である。第2の接合部材303は第1の容器20eと第1の接合部材301にそれぞれ接合されている。具体的には、第1と第2の接合部材301,303とはレーザー溶接や抵抗溶接等により気密に接合されている。また、第2の接合部材303と第1の容器20eとはろう付けにより接合されている。
【0105】
上記のように、第6実施例の継電器5eは、上記第2実施例の継電器5aと同様の効果を奏する。例えば、各固定端子10W,10Xに対してそれぞれ2つの可動接触部57aが設けられていることから、電磁反発力を低減できる。これにより、コイル44に通電されている状態において、可動接点58と固定接点18とが非接触状態となる可能性を低減できる。
【0106】
また、第6実施例の継電器5eは、2つの固定端子10にそれぞれ対応して2つの第1の容器20eが設けられている。これにより、2つの固定端子10に対して1つの第1の容器20が設けられる場合に比べ、第1の容器20eの耐圧性を向上できる。これにより、継電器5bが破損する可能性を低減でき、気密空間100を安定に維持できる。また、固定接点18及び可動接点58は、気密空間100のうち第1の容器20eの内側に配置されている。これにより、第1の容器20eが障壁となることで、固定接触部19や可動接触部材50aの飛散粒子が原因で一対の固定端子10間が導通する可能性をより低減できる。なお、上記第6実施例において、気密空間100のうち、第1の容器20eの内側に少なくとも固定接点18が配置される構成でも良い。このようにしても、固定接触部19や可動接触部材50aの飛散粒子が原因で一対の固定端子10間が導通する可能性を低減できる。
【0107】
G.その他の実施態様:
G−1.第1実施態様:
図20は、第1実施態様の可動接触部材50a1とその関連部材の斜視図である。上記第2実施例において、可動接触部材50a(
図10)に代えて第1実施態様に記載の可動接触部材50a1を採用しても良い。可動接触部材50a1は、それぞれが別体の第1と第2の可動接触子50a1A,50a1Bを備える。中央部52aには、磁性体の補助部材135が配置されている。詳細には、中央部52aの一部分が移動方向D1において支持部材37aと補助部材135とによって挟まれるように補助部材135が配置されている。
【0108】
図21は、第1実施態様の効果を説明するための図である。
図21は、
図20の支持部材37a、中央部52a、補助部材135の位置関係を模式的に示した図である。
図21に示すように、駆動機構90が動作状態になり、固定接点18と可動接点58とが接触すると、可動接触部材50a1に電流が流れる。ここで、中央部52aには紙面奥側から手前側に電流が流れるとする。中央部52の周囲には反時計回りの磁束(磁場)Baが発生する。磁束Baのうち支持部材37aと補助部材135とを通る磁束によって両部材37a,135が磁化される。これにより、両部材37a,135は互いに吸着する方向に磁化する。すなわち、補助部材135に対し固定接点18に近づく方向(上方向)に力(吸引力)が発生し、補助部材135が固定された中央部52aに対し上方向の力が加えられる。これにより、固定端子10と可動接触部材50a1の接触をより安定に維持できる。なお、第1実施態様において、移動方向D1における支持部材37aの厚さを、移動方向D1における補助部材135の厚さよりも厚くすることが好ましい。支持部材37aの方が補助部材135よりも固定端子10に対し近い位置に配置されているため、支持部材37aの方が補助部材135よりも固定端子10からの磁束をより強く受けることによって、磁束密度が高くなっている。よって、支持部材37aの厚さを厚くすることで吸引力を効率的に増大させることができる。
【0109】
G−2.第2実施態様:
図22は、第2実施態様の可動接触部材50j及びその関連部材の側面図である。
図22では、コイル44に通電していない状態を示している、また、
図22では、理解の容易にために、固定端子10が模式的に示されている。上記第1実施例において、可動接触部材50(
図6)の構成に変えて第2実施態様の可動接触部材50jを採用しても良い。可動接触部材50jは、第1実施例の可動接触部材50と異なり、第1の可動接触子50jAと固定端子10との移動方向D1における距離DA(「接点間距離DA」ともいう。)と、第2の可動接触子50jBと固定端子10との移動方向D1における距離DB(「接点間距離DB」ともいう。)とが異なる。具体的には、接点間距離DA<接点間距離DBの関係を満たす。
【0110】
こうすることで、継電器5の閉成動作時に、第1の可動接触子50jAを第2の可動接触子50jBよりも先に一対の固定端子10に接触させることができる。これにより、バウンスによって第2の可動接触子50jBと固定端子10との間にアークが生じた場合でも、第2の可動接触子50jBと対応する固定接点18近傍の消耗を抑制できる。すなわち、第2の可動接触子50jBにバウンスが発生した場合でも、既に第1の可動接触子50jAが一対の固定端子10と電気的に接続しているため、第2の可動接触子50jBと固定端子10との間で発生するアークの電流の大きさを低減できる。これにより、第2の可動接触子50jBや、固定端子10のうち第2の可動接触子50jBと接触する部分のアークによる消耗を抑制できる。これにより、継電器5を繰り返し使用した場合でも、継電器5のON状態における一対の固定端子10間の抵抗の変化を抑制できる。
【0111】
また、継電器5の開成動作時(固定端子10から可動接触子50jA,50jBが離れる時)においても、固定端子10と可動接触子50jA,50jBとの間にアークが発生する場合がある。ここで、継電器5の開成動作時では、第2の可動接触子50jBが第1の可動接触子50jAよりも先に固定端子10から離れる。この際、第1の可動接触子50jAによって一対の固定端子10は電気的に接続されているため、第2の可動接触子50jBと固定端子10との間でアークが発生することを抑制することができる。これにより、継電器5のON状態、OFF状態を繰り返し使用した場合でも、継電器5のON状態における一対の固定端子10間の抵抗の変化を抑制できる。
【0112】
ここで、上記のごとく、第1の可動接触子50jAは、第2の可動接触子50jBに比べアークにより部材消耗が起きやすい。よって、第1の可動接触子50jAのうち少なくとも可動接点58を含む可動接触部57は、第2の可動接触子50jBの可動接触部57よりも耐熱性の優れた材料で形成することが好ましい。例えば、第1の可動接触子50jAの可動接触部57をタングステンで形成し、第2の可動接触子50jBの可動接触部57をタングステンよりも融点が低く、かつ、一般にタングステンよりも導体抵抗の低い銅により形成することが好ましい。このように、継電器5の使用環境に応じて、第1と第2の可動接触子50jA,50jBの可動接触部57を、それぞれ異なる材料によって形成することができる。また、アークによる消耗を低減した第2の可動接触子50jBをタングステンよりも導体抵抗の低い銅により作製できることから、継電器5の耐久性を維持しつつ継電器5の使用による一対の固定端子10間の抵抗の上昇を抑制できる。
【0113】
上記第2実施態様のように、第1と第2の可動接触子50jA、50jBの接点間距離DA,DBを異ならせること、及び、第1と第2の可動接触子50jA,50jBのうち、可動接点58を含む部分である可動接点部分(本実施形態では、可動接触部57)を異なる材料により形成することは、他の実施例にも適用できる。
【0114】
G−3.第3実施態様:
上記実施例では、継電器のON状態において、第1の可動接触子50A,50aA,50bAと第2の可動接触子50B,50aB,50bBの固定端子10に加える力である接圧力は同じでも異なっても良い。なお、接圧力が異なる場合の詳細及び効果を以下に説明する。
【0115】
図23は、第3実施態様を説明するための図である。
図23は、第1実施例の継電器5を用いて説明するが、他の実施例や他の実施態様の継電器にも本実施形態は適用できる。
図23に示すように、第1の可動接触子50Aの可動接触部57XA,57WAのそれぞれは、接触する固定端子10X,10Wに対してそれぞれ接圧力FAを加える。一方で、第2の可動接触子50Bの可動接触部57XB,57WBのそれぞれは、接触する固定端子10X,10Wに対してそれぞれ接圧力FBを加える。ここで、接圧力FAと接圧力FBとは異なる値である。詳細には、接圧力FB>接圧力FAの関係を満たす。この関係は、例えば、第1の可動接触子50Aに対応して設けられた圧縮コイルばね62のばね定数を第2の可動接触子50Bに対応して設けられた圧縮コイルばね62のばね定数よりも小さくすれば達成できる。
【0116】
上記のように、第3実施形態では、第1と第2の可動接触子50A,50Bの固定端子10に対する接圧力が異なる継電器を提供でき、継電器5の設計の自由度が向上する。例えば、第2実施形態において(
図22)、第1と第2の可動接触子50jA,50jBのうち、接点間距離DAが小さい第1の可動接触子50jAの接圧力FAを、接点間距離DBが大きい第2の可動接触子50jBの接圧力FBよりも小さくする。ここで、接圧力が大きくなる程、固定端子10と可動接触子50との接触抵抗は低くなる。よって、継電器5において、(i)接触抵抗を低くして電流を安定的に流す電流経路(第2の可動接触子50jB)と、(ii)継電器5のOFF時において、後に固定端子10から離れる電流経路(第1の可動接触子50jA)であって他の電流経路(第2の可動接触子50jB)でのアーク発生による消耗の可能性を低減するための電流経路(第1の可動接触子50jA)とを設けることができる。これにより、第1の可動接触子50jAでは、接圧力を低減できることから、接圧力に抗して可動接触子50を固定端子10から引き離すための第1のばね64の力も小さく設定できる。よって、第1のばね64の付勢力に抗して可動鉄心72を固定鉄心70側に押上げるための吸引力も小さく設定できる。すなわち、コイル44の巻き数を低減でき、継電器5の小型化を図ることができる。
【0117】
H.変形例:
本発明は、上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0118】
H−1.第1変形例:
図24は、第1変形例を説明するための図である。上記第2実施例では、第1と第2の可動接触子50aA,50aBのうち、延伸部54aは移動方向D1と直交する断面形状が略円形であったが(
図10、
図11)、形状はこれに限定されるものではない。ここで、延伸部54aのうち、中央部52aに挿入され取り付けられる部分(「取付部分」ともいう。)の移動方向D1と直交する断面形状は、所定の形状を有することが好ましい。所定の形状とは、一対の取付部分のうち対向する部分は対向方向(Y軸方向)に垂直な辺545を形成する形状である。例えば、第1変形例では、取付部分の断面形状は、矩形状である。なお、
図24の左下に記載したように、取付部分の断面形状は矩形状に限定されるものではなく、例えば三角形でも良い。こうすることで、延伸部54a1から中央部52aとの境界部分における電流集中を緩和できるので、境界部分における電流密度の増加を抑制できる。これにより、境界部分の温度上昇等の不具合の発生を抑制できる。
【0119】
H−2.第2変形例:
図25は、第2変形例を説明するための図である。
図25は、第1実施例の継電器5を移動方向D1に垂直な面に垂直投影した場合の、好ましい支持部材37と可動接触部材50の輪郭線37p,50pの関係を図示している。上記第1実施例の継電器5において、支持部材37と可動接触部材50の形状は特に限定されてないが、
図25に示すように、支持部材37aの輪郭線37pの少なくとも一部が可動接触部材50の輪郭線50pの外側に位置することが好ましい。こうすることで、可動接触部材50と支持部材37がロッド60(
図5)の中心軸を軸として回転した場合でも、支持部材37が継電器5を構成する部材(例えば、支持部材37を内側に収容する容器20,92)に当たることで回転移動を抑制できる。また、可動接触部材50ではなく支持部材37を容器20,92に当てて回転移動を抑制できるため、電流が流れる部材である可動接触部材50が破損する可能性を低減できる。ここで、例えば容器20,92が課題を解決するための手段に記載の「他の部材」に相当する。なお、本変形例は他の実施例及び実施形態に適用しても良い。
【0120】
H−3.第3変形例:
図26〜
図29は、第3変形例を説明するための図である。上記実施例に記載の継電器5〜5eは、さらに、弾性部材としての圧縮コイルばね62の少なくとも一部を取り囲むように、圧縮コイルばね62の周囲に配置された保護部材95〜95cを配置しても良い。保護部材95〜95cは、固定端子10と可動接触部材50,50a,50b,50j,50a1との間で発生するアークが圧縮コイルばね62に当たることを抑制する。保護部材95〜95cの具体的構成を
図26〜
図29を用いて説明する。ここで、
図26は第3変形例の第1の例を説明するための図であり、
図27は第3変形例の第2の例を説明するための図であり、
図28は第3変形例の第3の例を説明するための図であり、
図29は第3変形例の第4の例を説明するための図である。以下では、第2実施例の継電器5a(
図9〜12)を用いて保護部材95〜95cの具体的構成について説明する。
【0121】
H−3−1.第1の例:
図26に示すように、保護部材95は圧縮コイルばね62の周囲の一部を取り囲んでいる。保護部材95は円筒状である。保護部材95は、金属や樹脂やセラミックなどによって形成できる。保護部材95は、各圧縮コイルばね62に対応して設けられている。第1の例では、4つの保護部材95(
図26では2つのみ図示)が設けられている。可動接触部材50a(詳細には、可動接触部57a)が保護部材95に圧入されることで、保護部材95は可動接触部材50aに固定(接合)されている。なお、保護部材95は、可動接触部材50aへの固定(接合)のし易さの観点から、金属で形成することが好ましい
【0122】
ここで、移動方向D1について、圧縮コイルばね62のうち可動接点58の最も近くに位置する部分を第1端部97と呼び、可動接点58の最も遠くに位置する部分を第2端部98と呼ぶ。第1の例において、保護部材95は、少なくとも第1端部97を含む第1端部側部分99の周囲を取り囲んでいる。第1端部側部分99は、少なくとも第1端部97を含めば良いが、以下に記載する範囲であっても良い。すなわち、移動方向D1に沿った圧縮コイルばね62の長さをDとした場合、第1端部側部分99は、継電器5aのOFF状態において、第1端部97を起点としてD/3以上に位置する地点までの範囲であることが好ましく、第1端部97を起点としてD/2以上に位置する地点までの範囲であることがより好ましい。こうすることで、圧縮コイルばね62のより多くの部分を保護部材95によって取り囲むことができ、アークが圧縮コイルばね62に当たる可能性をより一層低減できる。さらに、移動方向D1に沿った保護部材95の長さの上限は、接点18,58の開閉動作を阻害しない程度の長さに設定することが好ましい。こうすることで、接点18,58の開閉動作を阻害することを防止しつつ、保護部材95によって圧縮コイルばね62のより多くの部分を取り囲むことができる。なお、本例において、第1端部97は、圧縮コイルばね62の一端部に相当し、第2端部98は圧縮コイルばね62の他端部に相当する。
【0123】
継電器5aがON状態からOFF状態に切り替わるとき、固定端子10と可動接触部材50aとの間にアークが発生する場合がある。この発生したアークが、圧縮コイルばね62に当たる場合がある。例えば、以下の場合が発生し得る。発生したアークは永久磁石800によって引き伸ばされる。アークが引き伸ばされる過程において、アークは可動接触部材50aの表面を移動する特性を有する。可動接触部材50aの表面をアークが移動する際に、圧縮コイルばね62にアークが当たる。しかしながら、継電器5aが保護部材95を有することで、発生したアークが圧縮コイルばね62に当たる可能性を低減できる。これにより、アークによって圧縮コイルばね62が損傷する可能性を低減できる。圧縮コイルばね62の損傷の可能性を低減することで、継電器5aの動作不良の発生を低減できる。また、第1の例では、保護部材95は圧縮コイルばね62の第1端部側部分99を取り囲んでいる。これにより、圧縮コイルばね62のうちでアークが最も到達しやすい第1端部97を含む第1端部側部分99にアークが当たる可能性を低減できる。また、第1の例では、可動接触部材50aが保護部材95に対し圧入されることで、保護部材95と可動接触部材50aの相対的な位置が固定されている。これにより、可動接触部材50aに対する保護部材95の位置を固定でき、保護部材95が設計した位置からずれる可能性を低減できる。
【0124】
上記第1の例において、保護部材95の内径は、可動接触部57aの径と等しいことが好ましい。こうすることで、アークを引き伸ばすための気密空間100内のスペースを十分に確保できる。
【0125】
H−3−2.第2の例:
図27に示すように、第2の例では、保護部材95aは可動接触部材50aと一体に形成されている。例えば、保護部材95aと可動接触部材50aとは同一の原料を用いて一体成型される。保護部材95aは、可動接触部57aから下側(Z軸負方向、固定端子10に対して離れる方向)に伸びる。また、保護部材95aは、圧縮コイルばね62の周囲の一部を取り囲んでいる。
【0126】
上記のように、第2の例では、第1の例と同様の構成を備える点については、第1の例と同様の効果を奏する。例えば、保護部材95によって圧縮コイルばね62の少なくとも一部を取り囲むことで、アークが圧縮コイルばね62に当たる可能性を低減できる。また、保護部材95aが可動接触部材50aと一体に形成されていることから、保護部材95aが設計した位置からずれる可能性をより低減できる。
【0127】
H−3−3.第3の例:
図28に示すように、第3の例では、保護部材95bは、自身の一部が圧縮コイルばね62によって支持部材37aに対して押し付けられている。すなわち、保護部材95aは、圧縮コイルばね62と支持部材37aによって挟持されている。保護部材95aは、有底筒状であり、底部93に圧縮コイルばね62が当接している。また、保護部材95aは、圧縮コイルばね62の周囲全体を取り囲む。
【0128】
上記のように、第3の例では、第1の例と同様の構成を備える点については、第1の例と同様の効果を奏する。例えば、保護部材95bによって圧縮コイルばね62を取り囲むことで、アークが圧縮コイルばね62に当たる可能性を低減できる。また、第3の例では、保護部材95bが圧縮コイルばね62によって支持部材37aに対し押し付けられる。これにより、保護部材95bの位置ずれを防止するための特別な部材を用いることなく、継電器5aの構成部材を用いて保護部材95bの位置を固定できる。さらに、第3の例では、保護部材95bの上側(Z軸正方向側)が開口している。これにより、支持部材37aが可動接触部材50aと独立して移動方向D1に動いた場合でも、保護部材95bが可動接触部57aに当たることを防止できる。これにより、保護部材95bの設計の自由度を増加させることができる。例えば、保護部材95bによって圧縮コイルばね62の周囲全体を取り囲むことができ、アークが圧縮コイルばね62に当たる可能性をより一層低減できる。
【0129】
H−3−4.第4の例:
図29に示すように、第4の例では、保護部材95cは、自身の一部が圧縮コイルばね62によって可動接触部材50a(詳細には、可動接触部57a)に対して押し付けられている。すなわち、保護部材95cは、圧縮コイルばね62と可動接触部材50aによって挟持されている。保護部材95cは、有底筒状であり、底部93に圧縮コイルばね62が当接している。第1、第2の例と同様に、保護部材95cは圧縮コイルばね62の周囲の一部を取り囲んでいる。
【0130】
第4の例では、第1の例と同様の構成を備える点については、第1の例と同様の効果を奏する。例えば、保護部材95cによって圧縮コイルばね62を取り囲むことで、アークが圧縮コイルばね62に当たる可能性を低減できる。また、第4の例では、保護部材95cが圧縮コイルばね62によって可動接触部材50aに対し押し付けられている。これにより、保護部材95cの位置ずれを防止するための特別な部材を用いることなく、継電器5aの構成部材を用いて保護部材95cの位置を固定できる。
【0131】
H−4.第4変形例:
上記実施例及び実施形態では、別体の第1と第2の可動接触子50A,50Bによって可動接触部材50が形成されていたが、1つの固定端子10に対して複数の可動接触部57,57aを有する構成であれば可動接触部材50は一体として形成しても良い。
【0132】
H−5.第5変形例:
上記実施例及び実施形態では、各固定端子10に対してそれぞれ2つの可動接触部57,57aが形成されていたが、3つ以上の可動接触部57,57aが形成されていても良い。1つの固定端子10に対して3つ以上の可動接触部57,57aを形成することで、固定端子10と可動接触部57,57aとの間や各接点近傍を流れる電流を更に低減できる。これにより、電磁反発力を更に低減でき、駆動機構が動作している状態(継電器のON状態)において、可動接点と固定接点とが非接触状態となる可能性を更に低減できる。例えば、1つの固定端子10に対して3つの可動接触部57,57aを形成する場合、第1と第2の可動接触子50A,50Bに加え、第3の可動接触子を設ければ良い。第3の可動接触子は第1と第2の可動接触子50A,50Bと同様の構成にすれば良い。
【0133】
H−6.第6変形例:
上記実施例及び実施形態では、可動接触部材50によって電気的に接続される固定端子10は2つであったが、3つ以上であっても良い。例えば、固定端子10が3つの場合、入力用端子10Wを2つとし、出力用端子10Xを1つにすることができる。
【0134】
H−7.第7変形例:
上記実施例では、弾性部材として圧縮コイルばね62を用いたが、移動方向D1に弾性変形可能な部材であれば圧縮コイルばね以外の部材を採用可能である。例えば、皿ばねや板ばね等の各種ばね部材や、ゴム等の部材を採用できる。このようにしても、上記実施例や実施形態と同様の効果を奏する。
【0135】
H−8.第8変形例:
上記第3変形例の第1の例では、可動接触部材50aが保護部材95に圧入されることで、保護部材95は可動接触部材50aに固定されていたが、保護部材95の固定方法はこれに限定されない。例えば、保護部材95を可動接触部材50aに溶接することで、可動接触部材50aに対して固定しても良い。