(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
作業用手袋は手袋編機などの小型の横編機を用いて編成される。従来の左右兼用タイプの手袋は、通常は、
図1に示すように、小指7、薬指6、中指5、人差指4、親指3の指袋および5本胴の編成部が手の甲側または掌側において同一平面になるように編成されている。具体的には、手袋はまず小指7の指袋から編み始め、薬指6、中指5、人差指4の順に各指袋が編まれた後、小指7から人差指4までを一つの筒状体として四本胴を編成する。そして、四本胴の編成の後、親指3の編成が行われ、親指3と先に編まれた四本胴を一つにして五本胴が編成され、手首部の編成が行われて終了する。また、指袋を編成する際、例えば、手袋専用の手袋編機を用いて手袋を編成する場合には、通常は、カミソリと呼ばれる抑止杆を用い、このカミソリにより先に編成された指袋の編み目のうち、次に編成する指袋に近い側の2〜3目を抑えて編針に係止させた状態にし、この編み目が係止された編針を次の指袋の編成にも使用して次の指袋の編成を行う。この動作が小指7から人差指4までの各指股部で行われるようにカミソリの位置をその都度移動させていく。そして、親指3を除く全ての指袋の編成が行われた後に、不作用状態にしていた編み目を作用状態にし、指股部で編み目が重ね合わされた状態で編糸を周回させて四本胴の編成を行う。このような指股部の編成は四本胴と親指3との間でも行われる。従来の手袋の編成は、平編みと呼ばれる平面状の編み地の方法により編成されてきた(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
上記の手袋において、3〜9ゲージの範囲の太番手の綿糸を使用し、平編みで編成した編み手袋はいわゆる軍手と呼ばれる手袋であって、工場、農場等の作業現場で使用される。作業用手袋は、作業時の手の安全を考慮して太い綿糸により編成され、厚手の構成となっている(例えば、特許文献3)。
【0004】
しかし、従来の作業用手袋は、厚手の構成でありながら、現状、1枚では切創、熱、衝撃から手を守るのに不十分である場合が多く、2枚重ねで使用されることが多かった。2枚重ねで使用する場合には、耐切創、耐熱、耐衝撃が向上するが、通気性が損なわれるため、蒸れやすく、しかも屈曲し難いので、作業性が著しく減退するという問題点があった。
【0005】
上記の問題を解決するため、手袋を編成するための糸そのものの性能を高めた高機能繊維が知られている。耐切創性の点では、アラミド繊維(例えば、東レ・デュポン製「ケブラー(登録商標)」、帝人製「テクノーラ(登録商標)」、「トワロン(登録商標)」等)、ナイロン、ポリエステル繊維(例えば、インビスタ製「ダクロン(登録商標)」、帝人・東レ製「テトロン(商標登録)」等)、高強度ポリエチレン繊維(例えば、DSM製「ダイニーマ(登録商標)」、ハネウェル社製「スペクトラ(登録商標)」等)などの耐切創性を有する繊維が用いられる。また、耐熱性の点では、アラミド繊維(帝人製「コーネックス(登録商標)」等)などの耐熱性を有する繊維が用いられる。
【0006】
これらの材料で編成または縫製されて製造された手袋は、材料そのものが高価であるため、製パン業や自動車製造業など、汚れが激しい作業現場での使用は頻繁に交換することに適していないという問題点があった。そのため、繊維そのものを変更せず、手袋の編成方法に工夫を施し、上記耐切創性、耐熱性、耐衝撃性などの機能を持たせた作業用手袋が求められている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本願発明に係る作業用手袋の表面斜視図である。
【
図5】作業用手袋の切創実験をした密突条部を説明する平面図である。
【
図6】作業用手袋の切創実験をした疎突条部を説明する平面図である。
【
図7】本願発明に係る作業用手袋の切創実験データを示す図である。
【
図8】本願発明に係る作業用手袋の切創実験データを示す図である。
【
図9】本願発明に係る作業用手袋の耐熱実験データを示す図である。
【
図10】作業用手袋の実験をした普通突条部を説明する平面図である。
【
図13】突条編み作業用手袋の通気量データを示す図である。
【
図16】突条編み作業用手袋の耐熱実験データを示す図である。
【
図19】突条編み作業用手袋の衝撃実験データを示す図である。
【
図23】突条編み作業用手袋の切創実験データを示す図である。
【
図24】突条編み作業用手袋の感覚評価試験データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
作業用手袋1は、
図1に示すように、5本の指袋3〜7と手の平袋2を備え、単層編地によって編成されている。
図2は作業用手袋1を、外面が内側に、内面が外側になるよう裏返した図であり、
図1に記載の作業手袋1の内面に突条部10が形成されていることを説明する図である。本発明では、指袋3〜7および手の平袋2の内面には、糸をパイプ状に編成した突条部10および平坦部15が形成されている。前記突条部10は、指の挿入方向Aと略直角の方向に複数列形成されており、平坦部15は前記各突条部10間に、突条部10と平行方向に設けられている。なお、前記突条部10および平坦部15は、指袋3〜7及び手の平袋2の内面に形成されていることが望ましいが、指袋3〜7の内側のみに設けるなど、部分的に設けることも可能である。
【0017】
作業用手袋1は、内面に手を差し込む方向Aと略直角の方向に向かって複数の突条部10が形成され、この突条部10により、手袋本体1aの厚みが増し、耐切創効果、耐熱効果、保温性が一段と向上し、手の保護を確実にすることができる作業用手袋である。さらに、この突条部10、10間に隙間11が形成されることにより、手の平袋2、指袋3〜7の通気性が確保され、手の蒸れを防止することができる。また、一つの糸により突条部10を形成しながら手袋本体1aを編成するので、安価且つ容易に、しかも短時間で製造することができる。また、手を差し込む方向Aと略直角の方向、即ち関節の屈曲方向と略直角の方向に、突条部10が連続して形成されているので、手首、指の関節が曲げやすくなり、作業性を向上する。さらに、突条部10が手を刺激してマッサージ効果を期待することもできる。
【0018】
作業用手袋1は、内面に突条部10を形成したが、外面に突条部10を形成しても良い。外面に突条部10を形成した場合、上記の耐切創効果、耐熱効果、保温性に加えて、突条部が物に直接接触するので、突条部10と接触物との摩擦力が向上し、作業手袋のグリップ力を向上させることができる。また、突起を有する物品を運搬する場合に、突条部10を対象物品の突起に引っ掛けて運搬し易くなる。
【0019】
さらに作業用手袋1について詳細に説明する。作業用手袋1は、
図1に示すように、手の平袋2と、5本の指袋、即ち親指袋3、人差し指袋4、中指袋5、薬指袋6、小指袋7とからなる。作業用手袋1は、平編み等の単層編地によって編成されている。
図2に示すように、作業用手袋1の内面、即ち、手の平袋2、親指袋3、人差し指袋4、中指袋5、薬指袋6、小指袋7の内面全周に略平行に突条部10が形成されている。
【0020】
作業用手袋1および突条部10は、次のようにして形成される。作業用手袋1は、多数の編針を装着したベッドを前後に対向して設けた横編機、例えば株式会社島精機製作所製のシームレス手袋編機(製品名:SFG)により編成され、本実施例は、手袋編み地全体に突条部10が形成された作業用手袋1を編成する場合を示す。通常編み(平編み)の作業用手袋の場合、手袋編機の前後ベッドに全て編み針を設置して(総針)編成したものであるため外面、内面ともに平面の編み地となるのに対し、本実施例の注目すべき点は、ベッドの1〜複数本の編み針を不作用位置に置いて1〜複数コース編成し、編成後前記不作用位置の編糸を芯に隣接する編み目を収縮させてパイプ状に編成した突条部10と、平編みで編成した平坦部15からなる編み地により、外面の編み地が立体的に凹凸を有する編み地になる点である。詳細には、
図4に示すように、全周面に亘って交互に編針を不作用位置P1〜P5に配置して、7コース程度編成し、編成後不作用位置の編み糸を芯に隣接する編み目を収縮して、
図3に示すように、内面にパイプ形状の突条部10が交互に設けられている。突条部10は、横縞状に形成される。即ち、作業用手袋1は、平編み地(平坦部)15を基本として形成され、横方向(X方向)の2編み目位置P1〜P5毎に、縦方向(Y方向)に3個の編み目16毎に7個の編み目16を飛ばして環状の突起18が形成され、この環状の突起18,18が横方向に連続してパイプ形状の突条部10が形成される。なお、本実施例では平編み地(平坦部)15、不作用位置Pの数、ミスする編み目の数を例として設定したが、この数に限定する必要はなく、所望するパイプ編みの密度、厚みにあわせて随時変更できることは当然である。
【0021】
上記の編成方法では、編成時に突条部10は手袋の外側に形成される。そのため、
図1のように、内側に凸条部を設けた手袋を製造する際は、手首部の編成後そのままカフス部を編成し、最後に外面が内面に、内面が外面に来るように裏返して完成させる。また、外側に突条部を設けた手袋を製造する際は、手首部の編成後一度編機から手袋を外して、外面が内面に、内面が外面に来るように裏返した後再度編機に取り付け、カフス部分を編成することにより製造が可能である。
【0022】
前記突条部10は、ゴム、塩化ビニル、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、発泡樹脂等の合成樹脂の印刷によって形成することも考えられるが、作業用手袋1の編成工程に印刷工程が加わるため、作業用手袋の製造が面倒となり、作業用手袋が高価になる。また、突条部10は、他の糸の重ね編みによっても形成することができるが、他の糸を編み込む装置が必要となり、作業用手袋1の製造が面倒となり、作業用手袋が高価になる。
【0023】
作業用手袋1は、一つの糸により複数の突条部10を形成しながら手袋本体1aを編成するので、安価且つ容易に、しかも短時間で製造することができる。従来の厚手の作業用手袋は、手を挿入した場合、手袋本体が伸びているので、張力がかかっており、手や指が曲げ難くなっている。上記した作業用手袋1は、手を差し込む方向と略直角の方向、即ち関節の屈曲方向と略直角の方向に、突条部10が連続して形成されているので、手首、指の関節が曲げ易くなり、作業性が向上する。また、突条部10が手を刺激してマッサージ効果を期待することもできる。
【0024】
突条部を有する作業用手袋1が、通常編み(平編み)の作業用手袋と比べてどの程度、切創係数、耐熱効果が向上したかの実験を行った。突条編み作業手袋は、突条部密編み作業手袋と、突条部疎編み作業手袋を用意した。突条部密編み作業手袋は、
図5に示すように、横方向(X方向)の2編み目位置毎に、縦方向(Y方向)に2個の編み目16毎に5個の編み目16を飛ばして(2コースに一度5コース分挿入して)、パイプ形状の突条部を形成したものであって、突条部間を狭く2編み目分にしたものである。突条部疎編み作業手袋は、
図6に示すように、横方向(X方向)の2編み目位置毎に、縦方向(Y方向)に6個の編み目16毎に5個の編み目16を飛ばして(6コースに一度5コース分挿入して)、パイプ形状の突条部を形成したものであって、突条部間を広く6編み目分にしたものである。
【0025】
図7に示すように、綿糸により、7ゲージ編機で作業手袋を平編みのみで編成した場合は切創係数が2.0であるのに対し、同じく7ゲージ編機で作業手袋を密編み突状部を含む平編みで編成した場合は、切創係数が2.8と向上した。また7ゲージ編機で作業手袋を疎編み突状部を含む平編みで編成した場合であっても、切創係数が2.4と向上した。さらに、
図8に示すように、超高強力ポリエチレン繊維糸により、7ゲージ編機で作業手袋を平編みのみで編成した場合は切創係数が6.2であるのに対し、同じく7ゲージ編機で作業手袋を疎編み突状部を含む平編みで編成した場合は、切創係数が8.8と向上した。このように、作業用手袋1は、突状部を形成することにより、通常編み(平編み)のものに比べて切創係数が約3割向上した。なお、等級は、切創係数の値が大きい程、高い数値となる。
【0026】
作業用手袋の耐熱実験は、特定温度に設定したホットプレート上に作業用手袋を置き、作業用手袋の上に温度測定用の金属板を設置する。作業用手袋の上に置いた金属板の温度変化を調べ、その温度変化を高熱の物体を掴む作業における作業用手袋内部の温度上昇具合とした。ホットプレート温度を200℃前後とし、その上に平編み作業用手袋と、突状部密編み作業用手袋と、突状部疎編み作業用手袋を順に置いて80度に到達する時間を測定したところ、平編み作業用手袋が25秒ともっとも早く、突状部密編み作業用手袋が39秒、突状部疎編み作業用手袋が40秒かかった。この実験結果から明らかなように、突状部を備えた作業用手袋は、通常の作業用手袋と比べて、約6割程度、熱伝達率が低く、耐熱性が向上していることが理解できる。
【0027】
次に突条部普通編み作業手袋が、通常編み(平編み)の作業用手袋と比べてどの程度、通気性、耐熱性、耐衝撃性、切創係数が向上したかの試験を行った。突条部普通編み作業手袋は、
図10に示すように、横方向(X方向)の2編み目位置毎に、縦方向(Y方向)に4個の編み目16毎に5個の編み目16を飛ばして(4コースに一度5コース分挿入して)、パイプ形状の突条部を形成したものであって、突条部間を4編み目分にしたものである。即ち、突状部普通編み作業手袋は、前記した突条部密編み作業手袋と、前記した突条部疎編み作業手袋の略中間の構成となっている。突状部普通編み作業手袋は、綿糸により、7ゲージ編機で普通編み突状部を含む平編みで編成している。通常編み(平編み)作業手袋は、綿糸により、7ゲージ編機で平編みのみで編成している。
【0028】
通気性試験は、フラジール形方(JIS L 1096:2010 織物及び編物の生地試験方法 8.26.1 通気性 A法)によって行った。
図11,
図12に示すように、フラジール形試験機の円筒の片側に試験片をかぶせ、傾斜形圧力計が一定圧力(125Pa)で吸引する状態において、垂直形圧力計の値と計測装置の空気孔の種類により、試験片を通過する空気量(cm^3/(cm^2・s))を求める。その試験結果を
図13に示す。
図13の上段が突条編み作業手袋のデータであり、下段が平編み作業手袋のデータである。この試験結果から明らかなように、突条編み作業手袋は、通常の平編み作業手袋と比較して、通気量が多く、通気性が高いことが理解できる。
【0029】
なお、パイプ編みとは突条編みのことをいい、非パイプ編みとは平編みのことをいう。裏側とは、凹凸部側をいい、
図3のO側のことである。表側とは、非凹凸部側をいい、
図3のP側のことである。表側と裏側とは、実験の時に仮に付けた表現で、凹凸部側を表側、非凹凸部側を裏側と表現しても構わない。また、純綿編みの方が混紡編みよりも通気量が多いことがわかった。一重とは一枚で測定したことであり、二重とは二枚重ねで測定したことである。説明するまでもないが、一重の方が二重よりも通気量が多い。通常編み(平編み)は、平面だけで構成されているのに対し、突条(パイプ)編みは、平面と凹凸面とで構成され、この特徴的凹凸形状により表面積が増加していることによって、通常編み(平編み)より通気量が増加し通気性を向上させている。
【0030】
耐熱性試験は、
図14,
図15に示すように、手のひら部に熱伝対(センサー)を取り付けた金属製手型に手袋を装着させ、当該手袋をホットプレートにより200−250度に熱したステンレス板上に静かに置き、ステンレス板と手袋が接触してから手型の温度が40度及び50度に達する時間を調べる。軍手と純綿パイプ編み(突条編み)作業手袋を測定した。なお、軍手とは、純綿非パイプ編み(平編み)作業手袋である。純綿パイプ編み(突条編み)作業手袋は、非凹凸部側(
図3のP側)を表側となるようにして、金属製手型に被せ、非凹凸部側(平面部側)をステンレス板に接触させる場合と、凹凸部側(
図3のO側)を表側となるようにして、金属製手型に被せ、凹凸部側(突状部側)をステンレス板に接触させる場合に分けて試験を行った。
【0031】
その試験結果を
図16に示す。軍手一枚の時の40度到達時間は3秒、50度到達時間は57秒かかった。軍手二枚を重ねた時の40度到達時間は19秒、50度到達時間は104秒かかった。これに対し、純綿パイプ編み(突条編み)作業手袋は、非凹凸部側を表側にした場合、40度到達時間が37秒、50度到達時間が227秒かかり、凹凸部側を表側にした場合、40度到達時間が59秒、50度到達時間が319秒かかり、軍手の時と比べて、熱の伝達が遅いことがわかった。純綿パイプ編み(突条編み)作業手袋は、パイプ編み(突条編み)の特徴的凹凸形状により、通常編み(平編み)と比べて、空気を比較的多く含むことになり、その断熱効果が働いたため熱の伝わり方が低くなり、通常の平編み手袋(軍手)より耐熱性を向上させている。
【0032】
耐衝撃性試験は、
図17,
図18に示すように、衝撃吸収性試験機の模型の上に試験片を置き、その試験片の上方10mmの高さから平板ストライカー(5kg)を落下させ、その衝撃値を求める。その試験結果を
図19に示す。前述したように、パイプ編みとは突条編みのことをいい、非パイプ編みとは平編みのことをいう。凹凸部側は、
図3のO側のことである。一重とは一枚のことであり、二重とは二枚重ねのことである。説明するまでもないが、二重の方が厚みが増すため、一重よりも衝撃値が低い。
【0033】
直接模型に平板ストライカー(5kg)を落下させた衝撃値が最も高く、次に純綿及び混紡の非パイプ編みが高くなっている。純綿及び混紡のパイプ編みは、非パイプ編みより、衝撃値が低くなっている。この試験結果から明らかなように、パイプ編み(突条編み)作業手袋は、特徴的凹凸形状により、通常編み(平編み)作業手袋と比べて、衝撃を緩和することが理解できる。
【0034】
切創試験は、
図20,
図21に示すように、EU規格(EN388)の切創試験機(STM−611)によって行った。試験片を台の上に置き、円形の刃を試験片の上を走行方向と逆方向に回転させながら走行させて試験片を切断し、試験片を切断するのに要する円形の刃の走行距離と、同じ円形の刃で規格に定められた綿布帛を切断するのに要した走行距離から切創係数を求める。切創係数は、
図22に示すように、その数値に対応して5段階の等級が与えられる。
【0035】
その試験結果を
図23に示す。純綿パイプ編み(突条編み)は、平編み(パイプ無し)と比べて、特徴的凹凸構造により糸の量が増えているため切創係数の値が増えており、耐切創性が向上している。このように、突条部普通編み作業手袋は、通常編み(平編み)の作業用手袋と比べ、通気性、耐熱性、耐衝撃性、切創係数が向上している。
【0036】
作業手袋は、手に装着して作業を行うものであり、上記したように各機能が向上したとしても、作業し難くなっている場合には、実際の使用に適さないので、使用感について試験を行った。平編み作業手袋とパイプ編み作業手袋を用意し、一枚の平編み作業手袋、二枚重ねの平編み作業手袋、突状部を外側にしたパイプ編み作業手袋、突状部を内側にしたパイプ編み作業手袋の順に、複数の作業者に装着して手の開閉動作を行ってもらい、使用感について評価してもらった。二枚重ねの平編み作業手袋は、一枚の平編み作業手袋よりも硬いという評価がほとんどであった。突状部を外側にしたパイプ編み作業手袋は、一枚の平編み作業手袋より柔らかいという評価が約6割弱あり、変わらないという評価が約2割あり、硬いという評価が約2割あった。また、突状部を内側にしたパイプ編み作業手袋は、一枚の平編み作業手袋より柔らかいという評価が約3割あり、変わらないという評価が約5割あり、硬いという評価が約2割であった。この結果から、パイプ編み作業手袋は、二枚重ねの平編み作業手袋より使用しやすく、一枚の平編み作業手袋と略同等に使用できるものとの思料できる。
【0037】
また、上記した突条編み(パイプ編み)は、従来の太番手の糸素材による軍手のみならず細番手(10〜18ゲージ)の糸を使用した手袋にも応用可能である。
【0038】
本件突条部を備える手袋については、グリップ力や強度を向上させるために、手袋の表面に、ゴム、塩化ビニル、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、発泡樹脂等の合成樹脂のコーティングを施して実施することも考えられる。この点において、コーティング手袋のように手袋表面の通気性を損ねる加工をした場合であっても、突条部を有する部分はコーティング剤が手袋内部まで浸透せず、手袋内部に通気する空間をもうけることができ、コーティング手袋の通気性を向上させることが可能である。