(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193583
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】無線伝送チャネルの品質を評価するための方法、およびその方法を使用するレジデンシャルゲートウェイ
(51)【国際特許分類】
H04W 72/08 20090101AFI20170828BHJP
H04W 28/04 20090101ALI20170828BHJP
H04W 52/48 20090101ALI20170828BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20170828BHJP
【FI】
H04W72/08
H04W28/04
H04W52/48
H04W84/12
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-32257(P2013-32257)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-172461(P2013-172461A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2016年2月22日
(31)【優先権主張番号】12305191.4
(32)【優先日】2012年2月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】リュック ベルポーテン
【審査官】
田部井 和彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0059825(US,A1)
【文献】
特開2008−035174(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0135066(US,A1)
【文献】
特開2010−178068(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/067773(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
H04B 7/24− 7/26
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IEEE802.11ワイヤレスネットワークにおいて伝送チャネルの品質を評価するための方法であって、
a)第1のステーションが、第2のステーションからIEEE802.11プローブ要求メッセージを受信した場合に、前記伝送チャネルによって、第1のIEEE802.11プローブ応答メッセージを前記第2のステーションに送信するステップと、
b)前記第1のIEEE802.11プローブ応答メッセージの確認応答が前記第2のステーションから受信されない場合、前記第1のステーションが、より高い電力レベルでさらなるIEEE802.11プローブ応答メッセージを送信するステップと、
c)前記第1のIEEE802.11プローブ応答メッセージまたは任意のさらなるIEEE802.11プローブ応答メッセージの確認応答が前記第2のステーションから受信された場合、前記確認応答をトリガするのに必要とされたIEEE802.11プローブ応答メッセージの数(n)に基づいて前記伝送チャネルの品質を評価するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
ステップa)は、前記第2のステーションがプローブ要求メッセージを送信することによってトリガされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のステーションは、IEEE802.11ネットワークのアクセスポイントである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)は、前記第1のステーション内で生成されるタイムアウトによってトリガされる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)からステップc)は、チャネルの所定のセット内の各チャネルについて実行され、
d)ステップc)において最良の品質を記録する前記チャネルを識別するステップと、
e)ステップd)で識別された前記チャネルを使用して、前記第1のステーションから前記第2のステーションにメッセージを送信するステップと、
をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)で前記第1のユニキャストメッセージが送信される前記電力レベルは、ステップe)でメッセージが送信される前記電力レベルより低い、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップa)からステップc)は、ステップe)が実行された後ですべてのチャネルについて繰り返される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のステーションは、前記第1のIEEE802.11プローブ応答メッセージ内に、ステップe)で送られるメッセージ内に含む標準的なステーション識別子情報とは異なるエイリアスステーション識別子情報を含む、請求項5、6、または7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のステーションは、前記エイリアスステーション識別子情報によって識別されたステーションに向けて送られた関連付け要求を拒否する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記IEEE802.11ワイヤレスネットワークは複数の第2のステーションを含み、ステップa)からステップc)が前記第2のステーションのそれぞれについて実行され、各伝送チャネルの品質が、前記伝送チャネルによって前記第1のステーションと通信した前記第2のステーションの数(ns)に応じてさらに評価される、請求項5から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
IEEE802.11プローブ応答メッセージの確認応答が前記第1のステーションによって受信されない場合、所定の遅延後に前記第1のステーション内でタイムアウトが生成され、さらなるIEEE802.11プローブ応答メッセージが、前記第1のステーションによって、より高い電力レベルで、送信の指定された数に達するまで(nmax)、送信される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
最も高い電力レベルは、前記第1のステーションが供給することができる最大電力であり、ユニキャストメッセージの確認応答が最も高い電力レベルについて前記第1のステーションによって受信されない場合、確認応答が受信されたチャネルと受信されなかったチャネルとの区別を可能にするために、少なくとも1の値が最大送信の数に加算される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された、レジデンシャルゲートウェイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレスデータ伝送ネットワーク内の伝送チャネルの品質を評価するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなネットワークの広く使用されているタイプが、IEEE規格802.11に定義されている。このタイプのネットワークでは、ステーションが複数の伝送チャネルをサポートし、ネットワークがスタートアップするとき、ステーション間で通信するために、伝送チャネルの1つを選択しなければならない。使用可能な伝送品質は、様々な理由でチャネル間で異なる可能性がある。たとえば、あるチャネルが別のネットワークのステーションによってすでに占有されていることがあり、そのチャネルが非ネットワークソースからノイズを運ぶことがあり、複数の伝播経路の弱め合う干渉などにより、信号減衰が高いことがある。従来、ステーションは、サポートされているチャネルすべてのエネルギーレベルが検出されるスキャンに基づいて、ネットワーク通信に適したチャネルを決定する。次いで、あるチャネル上の他のソースからのノイズのレベルが所定の閾値未満である場合、または他のチャネルのノイズのレベルより低い場合、そのチャネルがネットワーク通信に適したものと認定され得る。
【0003】
そのような手法は実装するのが速く簡単であるかもしれないが、必ずしも満足のゆくものではない。というのは、十分にノイズのないチャネルが必ずしも使用可能であるとは限らず、チャネルのうちのノイズが最も少ないものが、必ずしも最良の通信品質をもたらすものとは限らないからである。複数の多少ノイズの多いチャネル間で選択することを可能にするために、チャネル内のノイズの、あるスペクトル特性を検出し、前記特性に基づいて、ノイズがネットワーク通信に対して有害である可能性が高いかどうか、またはそれがどの程度か判断することが提案されている。そのような方法の実装は、スペクトル特性の検出が、そのような方法を実施するステーションのコストを増大する特定の回路を必要とするので、コストがかかる傾向がある。さらに、チャネル上に存在するノイズの、あるプロファイルが、ネットワーク通信に対して有害であるかどうか、またはそれがどの程度か確実に判定することができるスペクトル特性または特性のセットは使用可能でないと思われる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本発明の目的は、実装するのが容易であり、専用のハードウェアがあるにしても最小限しか必要としないワイヤレスネットワーク内の伝送チャネルの品質を評価するための方法を提供することである。
【0005】
この目的は、
a)第1のステーションが、評価されることになる伝送チャネルによって、第1のユニキャストメッセージを第2のステーションに送信するステップと、
b)第1のユニキャストメッセージの確認応答が第2のステーションから受信されない場合、第1のステーションが、より高い電力レベルでさらなるユニキャストメッセージを送信するステップと、
c)第1のユニキャストメッセージまたは任意のさらなるユニキャストメッセージの確認応答が第2のステーションから受信された場合、その電力レベル、またはその確認応答をトリガするのに必要とされた再送信の数に基づいて伝送チャネルの品質を評価するステップとを含む方法によって達成される。
【0006】
この方法はチャネル品質を評価するためにネットワークメッセージを使用するので、評価の結果は、チャネル内に存在するノイズの電力レベルだけにもっぱら依存するのではなく、ノイズのネットワークメッセージとの両立性の度合いによって自動的に加重され、ノイズのどのスペクトル特性がその両立性に関連する可能性があるか判定する必要も、これらのスペクトル特性を検出するための専用ハードウェアを用意する必要もない。本発明の方法を実施するために必要な、またチャネルが選択された後はネットワーク通信に必要とされない可能性がある第1のステーションの唯一の技術的特徴は、第1のユニキャストメッセージが送信される電力レベルを修正する能力である。
【0007】
本発明の方法は、理想的には、IEEE802.11タイプのワイヤレスネットワークにおいて適用可能である。
【0008】
そのようなネットワークでは、第1のユニキャストメッセージは、従来、IEEE802.11の第1のステーションによって、第2のステーションからプローブ要求メッセージを受信したとき送信されるプローブ応答メッセージとすることができる。プローブ要求メッセージは、従来、第2のステーションによってアクティブスキャニングとして知られる手順で送信され、アクティブスキャニングは、IEEE802.11ネットワークに接続したいと望む第2のステーションによって、既存のネットワークを識別し、使用可能な伝送チャネルのうちどれをこのネットワークが使用しているか明らかにするために使用される。
【0009】
第1のステーションは、接続したいと望む第2のステーションがある場合だけ伝送チャネルの品質を評価する必要があるので、上記の方法のステップa)は、第2のステーションがプローブ要求メッセージを送信することによってトリガされ得る。
【0010】
ステップb)では、特に第2のステーションからの確認応答が第1のユニキャストメッセージの送信の所定の遅延内に受信されない場合、再送信が行われる。
【0011】
第1のステーションは、IEEE802.11ネットワークのアクセスポイントであることが好ましい。1つのアクセスポイントにはいくつかの第2のステーションが関連付けられてもよいので、1つのステーションだけが本発明の方法を実施するように適合されるが、これらの第1のステーションおよび第2のステーションすべてが本発明の方法から利益を得ることができる。これにより、本発明の方法は、実装するのが非常に容易かつ経済的なものになる。
【0012】
上述の品質評価が複数のチャネルについて実施に成功したとき、さらなる方法ステップd)で最良の品質を得点するチャネルを識別すべきであり、このチャネルを、前記第1のステーションから前記第2のステーションに、またそのチャネルが双方向である場合には第2のステーションから第1のステーションにもメッセージを送信する後続のステップe)のために使用すべきである。
【0013】
伝送品質を確実に評価するために、ステップa)でユニキャストメッセージが送信される電力レベルは、後からステップe)でメッセージが送信される電力レベルより低くすべきである。伝送チャネルの品質は、伝送チャネルの少なくとも1つにおいて少なくとも1つの伝送エラーが観察された場合だけ比較することができ、ユニキャストメッセージを低い電力レベルで送信することによって、単一のショートメッセージにおいてさえエラーが発生しそうな程度まで、伝送エラーの確率を高めることができる。
【0014】
最良のチャネルが選択され、しばらくの間ステップe)でメッセージを送信するために使用されたときでさえ、その間にも発生している可能性がある伝送品質の変化に対処するために、上述の方法を繰り返すことが適切であり得る。そのような繰返しは、定期的な間隔で実施されてもよく、またはネットワークへの関連付けを試みてプローブ要求を送信する第2のステーションによってトリガされてもよい。
【0015】
IEEE802.11ネットワークでは、プローブ要求およびプローブ応答は、それを送信するステーションに特有のステーション識別子情報を含む。第1のステーションが、ステップa)およびステップb)で送信されたプローブ応答メッセージ内に、SSIDとも呼ばれる標準的なステーション識別子情報を含めた場合、その第1のステーションのネットワークに関連付けられた第2のステーションは、それらのメッセージが受信された低い電力から、チャネル品質が劣化していたと結論を下す可能性があり、したがってそれらの近くの別のネットワークへの関連付けを不必要に試みる可能性がある。これを回避するために、第1のステーションは、ステップa)およびステップb)で送信するメッセージ内に、ステップe)で送信されるメッセージ内に含める標準的なステーション識別子情報とは異なるエイリアスステーション識別子情報を含めることが好ましい。
【0016】
さらに、エイリアスステーション識別子情報を含む第1のステーションからのメッセージを受信することは、第2のステーションからの関連付けのための要求をトリガする可能性がある。そのような要求は第1のステーションによって拒絶されるべきである。というのは、第1のステーションは、所与のチャネルの品質を評価し終わったとき、エイリアスステーション識別子情報を使用するのを止めることになり、その結果、第2のステーションがエイリアスステーション識別子情報によって識別されたステーションにペイロードメッセージを送ろうと試みた場合、それらのメッセージは失われることになるからである。
【0017】
ネットワークが複数の第2のステーションを含む場合、上記のステップa)からステップc)を、それぞれ各第2のステーションについて、および各伝送チャネルについて実施するのがよい。各伝送チャネルごとに第1のステーションと通信した第2のステーションの数が確立されると、各伝送チャネルについてこのようにして得られる品質評価を改善することができ、第2のステーションすべてが通信することができたわけではないチャネルがある場合、それに応じてその伝送チャネルの評価品質が低下する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について、例として、概略図を参照してより詳細に述べる。
【
図1】本発明が実装されるワイヤレス伝送システム、およびその動作環境のブロック図である。
【
図2】
図1のネットワークのステーション間で交換されるメッセージの図である。
【
図3】
図1のネットワークの2つのステーション間の伝送チャネルの品質を評価するための方法の流れ図である。
【
図4】
図3の方法を使用して収集されたデータに基づいて伝送チャネルを選択するための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明が実装されるIEEE802.11ワイヤレスネットワークの非常に概略的な図である。
図1では、このネットワークは、単一のアクセスポイント1、たとえばレジデンシャルゲートウェイと、複数のクライアントステーション2aから2dとを含む。アクセスポイント1、および複数のクライアントステーション2aから2dは、複数のワイヤレス通信チャネルをサポートし、アクセスポイント1は、関連付けられたクライアントステーションと通信するために、これらのチャネルの1つを使用している。したがって、アクセスポイント1は、その関連付けられたクライアントステーションに対して、インターネットなど有線ネットワーク6へのアクセスを提供し、それらのクライアントステーション間の通信を管理する。所与のクライアントステーションは、
図1に破線の円によって表されたアクセスポイント1の無線伝送範囲3内にある場合だけ、ワイヤレスネットワークへの関連付けを得ることができる。
【0020】
IEEE802.11タイプのワイヤレスネットワークでは、クライアントステーションの多数が移動性であり、クライアントステーションの任意の1つとその関連付けられたアクセスポイントとの間の伝送品質は、クライアントステーションが移動したとき変わる可能性がある。たとえば、
図1では、クライアントステーション2aはアクセスポイント1の範囲3内にあるだけでなく、別のアクセスポイント4の範囲内にもあり、その結果、
図1に示されている位置では、クライアントステーション2aは、アクセスポイント1のネットワークへの関連付けを得るか、それともアクセスポイント4のネットワークへの関連付けを得るか選択する可能性がある。ステーション2aが矢印5によって示されているように範囲3の外側の位置からその現在位置に移動したのであれば、ステーション2aは、現在、アクセスポイント4に関連付けられている可能性が高く、またアクセスポイント4の範囲の境界に到達しつつあるので、アクセスポイント4との通信の品質は劣化しつつある。
【0021】
そのような状況では、有線ネットワーク6への接続を維持することができる別のアクセスポイントを識別するために、ステーション2aは、関連付けを得ることができるその伝送範囲内の他のアクセスポイントがあるかどうか明らかにする必要がある。そのために、IEEE802.11によれば、2つの方法が使用可能である。
【0022】
パッシブスキャニングと呼ばれる第1のものによれば、クライアントステーション2aは、当該のチャネルに同調し、しばらくの間、ビーコン信号を受信するかどうかリッスンする。IEEE802.11の下では、アクセスポイントによって、それらがサービスを提供するチャネル上で、ビーコン信号が周期的に送信される。ステーション2aが各チャネル上で費やす必要がある待ち時間は、少なくともビーコン信号の周期と同程度の長さでなければならないので、この方法はかなり低速になりがちである。
【0023】
したがって、アクティブスキャニングと呼ばれる第2の方法によれば、ステーション2aは、ブロードキャストプローブ要求を送信し、ビーコン信号の周期より短い時間の間、いずれかのアクセスポイント、すなわち1または4からプローブ応答が受信されるかどうかを待つ。プローブ応答は、従来、発信元のアクセスポイントのステーション識別子情報SSIDを含んでおり、その結果、クライアントステーション2aは、所与のアクセスポイントからプローブ応答を受信したとき、プローブ応答内で受け取られたSSIDを使用してそのアクセスポイントにユニキャストメッセージをアドレッシングし、そのアクセスポイントのネットワークへの関連付けを要求することができる。
【0024】
パッシブスキャニングとアクティブスキャニングとは共に、アクセスポイントが動作しており、少なくともビーコン信号、最終的にはプローブ応答メッセージを送信するチャネルを選択済みであることを必要とする。しかし、4など他のアクセスポイントがすでに動作中であり、IEEE802.11の下で使用可能な伝送チャネルの少なくともいくつかを占有している環境、また他の無線ノイズ源が存在し得る環境で、アクセスポイント1がスタートアップしているとき、アクセスポイント1は、使用可能なチャネルのうちのどれが最良の通信品質を提供するか判断する必要がある。以下では、この判断をするための方法について述べる。
【0025】
この方法は、アクセスポイント1と、その範囲3内のクライアントステーション2のいずれかとの間での、
図2に概略的に示されているメッセージの交換に依拠する。アクセスポイント1は、サポートしている様々なチャネルのうちの所与のチャネルに同調しており、このチャネルをリッスンしている。アクティブスキャニング手順の過程で、クライアントステーション、たとえばステーション2aは、「要求」と表記されたプローブ要求メッセージを、その同じチャネル上で送信する。アクセスポイント1はそのメッセージを受信し、ネットワークが適正にセットアップされた後でその範囲3内のクライアントステーションと通信するために後で使用していることになる電力レベルより実質的に低い電力レベルで、プローブ応答メッセージ「応答1」を送信する。アクティブスキャンを実施するステーション2aは、アクセスポイント1にあまり近くない場合、「応答1」を受信しないことになる。アクセスポイント1が指定された時間間隔内にステーション2aから何らかの応答を受信しない場合、アクセスポイント1内でタイムアウトが生成され、アクセスポイント1は、「応答1」の電力レベルより高い所定の電力レベルで、プローブ応答メッセージ「応答2」を送信する。
図2の例では、「応答2」の電力レベルは、ステーション2aに到達するのに依然として十分なものでない。したがって、ステーション2aは、指定された時間間隔内にアクセスポイント1から「応答2」に対する何らかの応答、特に確認応答を受信しない。次いで、さらなるステップにおいて、アクセスポイント1は、さらに高い電力レベルで「応答3」メッセージを送信し、この電力レベルは、最終的にクライアントステーション2aによって受信され、クライアントステーション2aにアクセスポイント1へ確認応答を送信させるのに十分なものである。確認応答を受信する前にアクセスポイント1によって送信された応答の数は、アクティブなチャネルの伝送品質を直接表すものである。
【0026】
図3は、
図2に示されているメッセージの交換と共にアクセスポイント1内で実施される処理ステップの流れ図である。最初の処理ステップS1では、アクセスポイント1が、その品質が評価されることになるチャネルを選択する。ステップS2では、選択されたチャネル上でプローブ要求を待つ。所定の待ち時間内に何も受信されない場合、手順を打ち切ることができ、別のチャネルを選択することができる。ステップS2でプローブ要求が受信されたとき、ステップS3で繰返しカウンタnが1に設定され、ステップS4では、低い電力レベルでのプローブ応答が、プローブ要求を発行したクライアントステーション、たとえばステーション2aに送信される。次いで、アクセスポイント1は、要求中のクライアントステーション2aからの確認応答を待つ。アクセスポイント1が指定された時間間隔内にステーション2aから確認応答を受信しない場合(ステップS5)、タイムアウトが生成され、アクセスポイント1は、ステップS6で、繰返しカウンタnが所定の最大カウントnmaxに達したかどうかチェックする。達していない場合、繰返しカウンタnが増分され、送信電力が増大される(ステップS7)。さらなるステップにおいて、方法はS4に戻り、そこで別のプローブ応答が、増大された電力レベルで送信される。この電力レベルがクライアントステーション2aからの確認応答をトリガするのに十分である場合、ステップS8により、繰返しカウンタの値nがクライアントステーション2aの識別子情報iに関連付けられて記憶される。
【0027】
確認応答がアクセスポイント1によって受信されない場合、およびステップS6で繰返しカウンタがnmaxに達した場合、これはアクセスポイント1が供給することができる最も高い電力で最新のプローブ応答が送信されたことを反映している可能性があり、アクセスポイントは、ステップS9でデータ対i,n+xを記憶する。xの値は、少なくともnmax回の試行後に確認応答が受信された場合とそうでなかった場合との区別を可能にするために、少なくとも1とすることが好ましい。1より大きいxの値は、クライアントステーションの1つとの通信が失敗したチャネルでアクセスポイント1がネットワーク動作を開始するのを防止するために有用となり得る。
【0028】
図3の方法がアクセスポイント1とアクセスポイント1の範囲3内の各クライアントステーション2aから2dとによってサポートされているチャネルのそれぞれについて実行されたとき、アクセスポイント1には、各チャネルに関連付けられて、各クライアントステーションiについて前記チャネル上で送信されたプローブ応答の数nを示す対(i,n)のリストが記憶されている。そのような対の数は、チャネル間で異なる可能性がある。というのは、あるチャネルが激しく外乱を受けるために、クライアントステーションがそのチャネル上でプローブ要求をブロードキャストしている可能性があるにもかかわらずアクセスポイント1がそれらの要求を受信しないからである。このことは、
図4を参照して述べるチャネル選択方法の第1段階で考慮される。この方法の最初のステップS11では、クライアントステーションカウントnsがゼロに設定される。次に、アクセスポイント1は、サポートしている伝送チャネルの1つを選択し(ステップS12)、このチャネルに関連付けられたデータ対(i,n)のリストを取り出し(ステップS13)、リスト内のそのような対の数npを決定する。ステップS14では、npがnsより高い場合、nsがnpに等しく設定され、それ以外の場合は、nsがそのまま変更されない。S15で、そのまま選択されていないチャネルがある場合、プロセスはS12に戻る。その結果、ステップS13、S14がすべてのチャネルについて実行されたとき、nsは、アクセスポイント1が任意の所与のチャネル上で通信することができるクライアントステーションの最大数であり、理想的には、範囲3内のクライアントステーション2a〜2dの数に等しくなるはずである。
【0029】
ステップS16では、アクセスポイントが再びチャネルを選択し、ステップS17で、このチャネルに関連付けられた対の数npを数nsと比較する。np<nsである場合、ステップS18で、そのチャネルが破棄される。すなわち、このチャネルによって通信することができない少なくとも1つのクライアントステーションがあるため、このチャネルはネットワーク動作に不適格として表記される。チャネルすべてがこのようにしてチェックされているわけではない限り、プロセスはS19からS16に戻り、それ以外は、S20に続き、そこで再びチャネルが選択される。ステップS21により、選択されたチャネルについてすべてのクライアントステーションiにわたって繰返しカウントnの和Qが計算される。再度、ステップS20、S21が、すべてのチャネルについて実行されるまで繰り返される。最後に、S23において、Qの最低値を有するチャネルが、ネットワークを動作させるために選択される。xを大きな正の値に設定することにより、クライアントステーションへのプローブ応答の送信が失敗したチャネルを選択することに対する強い偏り(bias)を生み出すことができることは容易に明らかである。
【0030】
アクセスポイント1とその関連付けられたクライアントステーション2aから2dが通信するチャネルを変更する必要が、たとえばクライアントステーションの移動により、または他のソースからのノイズの変動するレベルにより、それらのネットワークが動作している間にも生じることがある。原理的には、上述の方法は、ネットワークが現在使用しているチャネルより良好な伝送品質をもたらすチャネルがあるかどうか明らかにするために、そのような状況においても適用可能である。そのような状況においてアクセスポイント1が、低い電力レベルにあり、かつアクセスポイント1のSSIDを含むプローブ応答によってクライアントステーションからのプローブ要求に応答した場合、アクティブスキャンを実行するクライアントステーションによってそのようなメッセージが検出されると、このクライアントステーションは、アクセスポイント1との通信のための条件が悪いと想定することになり、そのクライアントステーションが実際には別のアクセスポイント、たとえば
図1のアクセスポイント4よりアクセスポイント1に近いにもかかわらず、アクセスポイント4への関連付けを得ようとする可能性がある。
【0031】
そのような効果を回避するために、本発明の好ましい実施形態によれば、アクセスポイント1は、2つの識別、すなわち標準的なSSIDとエイリアスSSIDを使用する。標準的なSSIDは、
図3のステップS4においてアクセスポイント1の最大定格送信電力未満の電力レベルで送信されるプローブ応答を除いて、アクセスポイント1によって送信されるメッセージすべてに使用される。このようにして、アクティブスキャンを実行しているどのステーションも、最大定格電力、したがってアクセスポイント1がもたらすことができる最良の信号ノイズ割当て量(signal−noise ration)では、アクセスポイント1からその標準的なSSIDを含むメッセージを受信することになり、一方、エイリアスSSIDを含むプローブ応答メッセージは、より低い品質で受信されることになる。したがって、クライアントステーションは、その受信する信号レベルに基づいて、標準的なSSIDによって識別されたアクセスポイントは強力な信号を有しており、関連付けられる価値があり、一方、エイリアスSSIDを使用するアクセスポイントは、幾分劣った信号品質を有しており、関連付けられない方がよいと結論を下すことになる。
【0032】
しかし、クライアントステーションがエイリアスSSIDに対して関連付けのための要求を発行することは、完全には排除し得ない。そのような要求はアクセスポイント1によって受信されることになるが、適正なSSIDに向けたものではないので、アクセスポイント1は、関連付けを認めないことになり、その結果、クライアントステーションは、さらなる試行において標準的なSSIDに関連付け要求を送ることになり、次いでこれが認められる可能性がある。
【0033】
また、本発明の範囲から逸脱することなしに、本発明の他の実施形態が当業者によって使用され得る。ワイヤレスネットワークは、特にIEEE802.11規格の1つによるネットワークであるが、任意の他のワイヤレスネットワークをも本方法でテストすることができる。したがって、本発明は、以下に添付された特許請求の範囲にある。
(付記1)
ワイヤレスネットワークにおいて伝送チャネルの品質を評価するための方法であって、
a)第1のステーション(1)が、前記伝送チャネルによって、第1のユニキャストメッセージ(応答1)を第2のステーション(2a)に送信する(S4)ステップと、
b)前記第1のユニキャストメッセージ(応答1)の確認応答(ACK)が前記第2のステーション(2a)から受信されない場合、前記第1のステーション(1)が、より高い電力レベルでさらなるユニキャストメッセージ(応答2、応答3、...)を送信する(S4)ステップと、
c)前記第1のユニキャストメッセージまたは任意のさらなるユニキャストメッセージ(応答1、応答2、応答3、...)の確認応答(ACK)が前記第2のステーション(2a)から受信された場合、前記電力レベル、または前記確認応答(ACK)をトリガするのに必要とされた再送信の数(n)に基づいて前記伝送チャネルの品質を評価する(S21)ステップと、
を含む、前記方法。
(付記2)
前記ワイヤレスネットワークはIEEE802.11ネットワークである、付記1に記載の方法。
(付記3)
前記第1のユニキャストメッセージまたは任意のさらなるユニキャストメッセージ(応答1、応答2、応答3、...)は、プローブ応答メッセージである、付記2に記載の方法。
(付記4)
ステップa)は、前記第2のステーション(2a)がプローブ要求メッセージ(要求)を送信することによってトリガされる、付記3に記載の方法。
(付記5)
前記第1のステーション(1)は、IEEE802.11ネットワークのアクセスポイントである、付記2、3、または4に記載の方法。
(付記6)
ステップb)は、前記第1のステーション(1)内で生成されるタイムアウトによってトリガされる、付記1から5のいずれか一項に記載の方法。
(付記7)
ステップa)からステップc)は、チャネルの所定のセット内の各チャネルについて実行され、
d)ステップc)において最良の品質を記録する前記チャネルを識別する(S23)ステップと、
e)ステップd)で識別された前記チャネルを使用して、前記第1のステーションから前記第2のステーションにメッセージを送信するステップと、
をさらに含む、付記1から6のいずれか一項に記載の方法。
(付記8)
ステップa)で前記第1のユニキャストメッセージ(応答1)が送信される前記電力レベルは、ステップe)でメッセージが送信される前記電力レベルより低い、付記7に記載の方法。
(付記9)
ステップa)からステップc)は、ステップe)が実行された後ですべてのチャネルについて繰り返される、付記7または8に記載の方法。
(付記10)
前記第1のステーションは、前記第1のユニキャストメッセージ内に、ステップe)で送られるメッセージ内に含む標準的なステーション識別子情報とは異なるエイリアスステーション識別子情報を含む、付記7、8、または9に記載の方法。
(付記11)
前記第1のステーションは、前記エイリアスステーション識別子情報によって識別されたステーションに向けて送られた関連付け要求を拒否する、付記10に記載の方法。
(付記12)
前記ネットワークは複数の第2のステーション(2a、2b、2c、2d)を含み、ステップa)からステップc)が前記第2のステーションのそれぞれについて実行され、各伝送チャネルの品質が、前記伝送チャネルによって前記第1のステーション(1)と通信した前記第2のステーション(2a、2b、2c、2d)の数(ns)に応じてさらに評価される(S18)、付記7から11のいずれか一項に記載の方法。
(付記13)
ユニキャストメッセージ(応答1、応答2、応答3、...)の確認応答(ACK)が前記第1のステーション(1)によって受信されない場合、所定の遅延後に前記第1のステーション(1)内でタイムアウトが生成され、さらなるユニキャストメッセージ(応答2、応答3、...)が、前記第1のステーション(1)によって、より高い電力レベルで、送信の指定された数に達するまで(nmax)送信される(S4)、付記1から5のいずれか一項に記載の方法。
(付記14)
最も高い電力レベルは、前記第1のステーション(1)が供給することができる最大電力であり、ユニキャストメッセージ(応答1、応答2、応答3、...)の確認応答(ACK)が最も高い電力レベルについて前記第1のステーション(1)によって受信されない場合、確認応答が受信されたチャネルと受信されなかったチャネルとの区別を可能にするために、少なくとも1の値が最大送信の数に加算される、付記13に記載の方法。
(付記15)
付記1から14のいずれか一項に記載の方法を使用する、レジデンシャルゲートウェイ。