特許第6193600号(P6193600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193600
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   G01N35/10 C
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-78553(P2013-78553)
(22)【出願日】2013年4月4日
(65)【公開番号】特開2014-202588(P2014-202588A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】杉村 友弘
(72)【発明者】
【氏名】金山 省一
【審査官】 東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−083867(JP,A)
【文献】 特開平10−153601(JP,A)
【文献】 特開2010−169579(JP,A)
【文献】 特開2005−221392(JP,A)
【文献】 特開2012−007998(JP,A)
【文献】 特開2007−225604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
G01N 1/00− 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された試料又は試薬の液体を吸引して反応容器に吐出する分注を行う分注プローブを有し、前記反応容器に吐出された試料及び試薬の混合液を測定する自動分析装置において、
前記液体の液面を非接触的に検出する第1の検出器と、
前記第1の検出器により検出された液面をこの液面と前記分注プローブとの接触により検出する第2の検出器と、
前記分注プローブを作動させる分析制御部とを備え、
前記分析制御部は、
前記液体の1回目の吸引では、前記第1の検出器により検出される液面よりも上方の第1の位置まで第1の速度で下方向に移動させた後、前記第2の検出器により1回目に検出される位置まで前記第1の速度よりも低速の第2の速度で下方向に移動させ、
前記液体のn回目(nは2以上の整数)の吸引では、前記第2の検出器により(n―1)回目に検出される位置よりも上方かつ前記第1の位置よりも下方の位置まで前記第1の速度で下方向に移動させた後、前記第2の検出器によりn回目に検出される位置まで前記第2の速度で下方向に移動させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記第1の検出器は、前記容器に収容された液体の液面までの距離を非接触的に検出することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記分析制御部は、前記第1の検出器により検出された距離が予め設定された許容範囲から外れている場合、前記液体の吸引を停止させることを特徴とする請求項に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被検体から採取された試料に含まれる成分を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は生化学検査項目や免疫検査項目等を対象とし、被検体から採取された試料と各検査項目の試薬との混合液の反応によって生ずる色調や濁りの変化を、分光光度計や比濁計等の測光部で光学的に測定することにより、試料に含まれる各検査項目成分の濃度や酵素の活性等で表される分析データを生成する。
【0003】
この自動分析装置では、試料容器に収容された試料を吸引して反応容器に吐出するサンプル分注プローブ及び試料容器内の試料をサンプル分注プローブとの接触により検出する検出器と、試薬容器に収容された試薬を吸引して反応容器に吐出する試薬分注プローブ及び試薬容器内の試薬を試薬分注プローブとの接触により検出する検出器とを備えている。そして、サンプル分注プローブ及び試薬分注プローブの各分注プローブが試料及び試薬の各液体を吸引する際には、各分注プローブ外壁の液体との接触による汚染を抑えるために、下端部が液面から例えば数mm程度進入した吸引位置で各分注プローブを停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3664456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多数の試料及び検査項目の処理が可能なように各分注プローブを高速で移動させて吸引位置で停止させようとすると、停止時の衝撃により各液体の分注精度が低下するため、各分注プローブの移動速度が制限される問題がある。
【0006】
実施形態は、上記問題点を解決するためになされたもので、分注プローブの移動に要する時間の短縮を図ることができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、実施形態の自動分析装置は、容器に収容された試料又は試薬の液体を吸引して反応容器に吐出する分注を行う分注プローブを有し、前記反応容器に吐出された試料及び試薬の混合液を測定する自動分析装置において、前記液体の液面を非接触的に検出する第1の検出器と、前記第1の検出器により検出された液面をこの液面と前記分注プローブとの接触により検出する第2の検出器と、前記分注プローブを作動させる分析制御部とを備え、前記分析制御部は、前記液体の1回目の吸引では、前記第1の検出器により検出される液面よりも上方の第1の位置まで第1の速度で下方向に移動させた後、前記第2の検出器により1回目に検出される位置まで前記第1の速度よりも低速の第2の速度で下方向に移動させ、前記液体のn回目(nは2以上の整数)の吸引では、前記第2の検出器により(n―1)回目に検出される位置よりも上方かつ前記第1の位置よりも下方の位置まで前記第1の速度で下方向に移動させた後、前記第2の検出器によりn回目に検出される位置まで前記第2の速度で下方向に移動させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る自動分析装置の構成を示すブロック図。
図2】実施形態に係る分析部の構成を示す斜視図。
図3】実施形態に係るサンプル分注アーム、サンプル分注プローブ、サンプラ部、並びに第1及び第2検出器の構成を示す図。
図4図3のA−A線矢視断面図。
図5】実施形態に係る試料を1回目に吸引するときのサンプル分注プローブの下方向への動作を示す図。
図6】実施形態に係る同一試料を2回目以降に吸引するときのサンプル分注プローブの動作を示す図。
図7】実施形態に係る被検試料を分注するサンプル分注工程の構成を示す図。
図8】実施形態に係る第1のサンプル分注工程の詳細を示すフローチャート。
図9】実施形態に係る第nのサンプル分注工程の詳細を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、各検査項目の標準試料や被検体から採取された被検試料と各検査項目の分析に用いる試薬との混合液を測定して標準データや被検データを生成する分析部24を備えている。また、分析部24の各分析ユニットを移動する移動機構部26と、移動機構部26を制御する分析制御部27とを備えている。
【0011】
また、自動分析装置100は、分析部24で生成された標準データや被検データを処理して検量データや分析データを生成するデータ処理部30と、データ処理部30で生成された検量データや分析データを印刷出力や表示出力する出力部40とを備えている。また、各検査項目の分析パラメータや検査を行う被検試料のID及び検査項目等の入力を行う操作部50と、分析制御部27、データ処理部30及び出力部40を統括して制御するシステム制御部60とを備えている。
【0012】
図2は、分析部24の構成を示した斜視図である。この分析部24は、標準試料や被検試料等の液状の試料を収容する試料容器17と、試料容器17を移動可能に保持するサンプルディスク5aを有するサンプラ部5とを備えている。また、試料に含まれる検査項目の成分と反応する成分を含有する1試薬系又は2試薬系の液状の第1試薬を収容する試薬容器6と、試薬容器6を移動可能に保持する試薬ラック1aとを備えている。
【0013】
また、試薬ラック1aに保持された試薬容器6を保冷する試薬庫1と、2試薬系の第1試薬と対をなす液状の第2試薬を収容する試薬容器7と、試薬容器7を移動可能に保持する試薬ラック2aとを備えている。また、試薬ラック2aに保持された試薬容器7を保冷する試薬庫2と、円周上に配置された複数の反応容器3と、各反応容器3を移動可能に保持する反応ディスク4とを備えている。
【0014】
また、サンプラ部5のサンプルディスク5aに保持された試料容器17内の試料を吸引して反応容器3内へ吐出する分注を行うサンプル分注プローブ16と、サンプル分注プローブ16を移動可能に保持するサンプル分注アーム10とを備えている。また、サンプルディスク5aに保持された試料容器17内の試料液面を検出する第1及び第2の検出器16a,16bと、サンプル分注プローブ16を同一試料の分注終了毎に洗浄する洗浄槽16cとを備えている。
【0015】
また、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬を吸引して反応容器3内に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ14と、第1試薬分注プローブ14を移動可能に保持する第1試薬分注アーム8とを備えている。また、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬液面を検出する第1及び第2の検出器14a,14bと、第1試薬分注プローブ14を第1試薬の分注終了毎に洗浄する洗浄槽14cとを備えている。
【0016】
また、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬を吸引して第1試薬が吐出された反応容器3内に吐出する分注を行う第2試薬分注プローブ15と、第2試薬分注プローブ15を移動可能に保持する第2試薬分注アーム9とを備えている。また、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬液面を検出する第1及び第2の検出器15a,15bと、第2試薬分注プローブ15を第2試薬の分注終了毎に洗浄する洗浄槽15cとを備えている。
【0017】
また、反応容器3に光を照射して混合液を測定する測定部13と、測定部13で測定を終了した反応容器3内を洗浄する洗浄ノズル12とを備えている。そして、測定部13は、回転移動している測定位置の反応容器3に光を照射し、この照射により反応容器3内の試料及び第1試薬の混合液や、試料、第1試薬及び第2試薬の混合液を透過した光を検出する。そして、検出した信号を処理して例えば吸光度で表される標準データや被検データを生成してデータ処理部30に出力する。
【0018】
図1の移動機構部26は、分析部24の各分析ユニットを1サイクルタイム毎に移動する各機構を備えている。そして、サンプラ部5のサンプルディスク5a、試薬ラック1a及び試薬ラック2aを夫々回動駆動して、試料容器17、試薬容器6及び試薬容器7を移動する。また、反応ディスク4を回転駆動して各反応容器3を移動する。また、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8及び第2試薬分注アーム9を夫々回動及び上下駆動して、サンプル分注プローブ16、第1試薬分注プローブ14及び第2試薬分注プローブ15を水平方向及び上下方向に移動する。
【0019】
分析制御部27は、操作部50から入力された各検査項目の分析パラメータや被検試料のID及び検査項目等の入力情報に基づいて、移動機構部26を制御して分析部24の各分析ユニットを移動させる。また、分析部24の第1及び第2の検出器16a,16bにより検出される試料容器17内の試料液面の情報に基づいて、試料容器17内の試料の吸引を行わせるためにサンプル分注プローブ16を所定の位置から下方向に移動させる。また、第1及び第2の検出器14a,14bにより検出される試薬容器6内の第1試薬液面の情報に基づいて、試薬容器6内の第1試薬の吸引を行わせるために第1試薬分注プローブ14を所定の位置から下方向に移動させる。また、第1及び第2の検出器15a,15bにより検出される試薬容器7内の第2試薬試料液面の情報に基づいて、試薬容器7内の第2試薬を吸引させるために第2試薬分注プローブ15を所定の位置から下方向に移動させる。
【0020】
データ処理部30は、分析部24の測定部13で生成された標準データや被検データを処理して各検査項目の検量データや分析データを生成する演算部31と、演算部31で生成された標準データや分析データを保存するデータ記憶部32とを備えている。
【0021】
演算部31は、測定部13で生成された標準データ及び標準試料に予め設定された標準値の関係を示す検量データを生成し、生成した検量データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。また、測定部13で生成された被検データに対応する検量データをデータ記憶部32から読み出して濃度値や酵素の活性値として表される分析データを生成する。そして、生成した分析データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0022】
データ記憶部32は、ハードディスク等のメモリデバイスを備え、演算部31から出力された検量データを検査項目毎に保存する。また、演算部31から出力された各検査項目の分析データを被検試料毎に保存する。
【0023】
出力部40は、データ処理部30の演算部31から出力された検量データや分析データを印刷出力する印刷部41及び表示出力する表示部42を備えている。そして、印刷部41は、プリンタなどを備え、演算部31から出力された検量データや分析データを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷する。
【0024】
表示部42は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、演算部31から出力された検量データや分析データを表示する。また、検査項目毎に分析パラメータを設定するための分析パラメータ設定画面、被検試料毎にこの被検試料を識別する氏名やID等の被検識別情報の設定及び検査に必要な検査項目を設定するための検査項目設定画面等を表示する。
【0025】
操作部50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、各検査項目の分析パラメータを設定するための入力、被検試料の被検識別情報及び検査項目を設定するための入力等を行う。
【0026】
システム制御部60は、CPU及び記憶回路を備え、操作部50から入力された各検査項目の分析パラメータ、被検識別情報及び検査項目等の入力情報を記憶回路に記憶した後、これらの入力情報に基づいて、分析制御部27、データ処理部30及び出力部40を統括してシステム全体を制御する。
【0027】
次に、図2乃至図6を参照して、分析部24の試料の分注に関るサンプル分注アーム10、サンプル分注プローブ16、サンプラ部5、並びに第1及び第2検出器16a,16bの構成と、サンプル分注プローブ16の動作を制御する分析制御部27とを説明する。
【0028】
図3は、サンプル分注アーム10、サンプル分注プローブ16、サンプラ部5、並びに第1及び第2検出器16a,16bの構成を示した図である。
サンプル分注アーム10は、回動軸が上死点における高さで矢印R1及び矢印R2方向に移動機構部26により回動駆動される、そして、サンプル分注プローブ16を図3に破線で示した円軌道に沿って水平方向へ移動し、円軌道上の位置である試料位置T1、試料位置T2、反応容器位置T3、及び洗浄位置T4の各位置の上停止位置で停止させる。また、移動機構部26により回動軸が上下駆動され、各位置の上停止位置から下方向へ移動する。
【0029】
サンプル分注プローブ16は、上端部がサンプル分注アーム10に保持され、試料位置T1又はT2と反応容器位置T3の間、反応容器位置T3と洗浄位置T4の間、洗浄位置T4と試料位置T1又はT2の間を移動した後、各位置の上停止位置で停止する。そして、各上停止位置で下方向へ移動した後、上方向に移動して各上停止位置で停止する。
【0030】
図4は、図3に示したサンプラ部5のA−A線矢視断面図である。このサンプラ部5は、試料容器17を移動可能に保持するサンプルディスク5a、サンプルディスク5aを収容する上側に開口部を有するサンプラケース5b及びサンプラケース5bの開口部を覆うサンプラカバー5cにより構成される。
【0031】
第1の検出器16aは、試料容器17に収容された試料に向けて超音波を送波する送信器及び試料から反射する超音波を受波する受信器を有する超音波センサを備え、サンプラ部5の例えばサンプラケース5内側に配置されている。そして、各検出位置T5,T6の試料容器17に収容された試料液面までの距離を検出し、検出した距離の情報を液面の情報として分析制御部27に出力する。
【0032】
なお、第1の検出器14aは、第1の検出器16aと同様に構成され、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬液面までの距離を検出する。また、第1の検出器15aは、第1の検出器16aと同様に構成され、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬液面までの距離を検出する。
【0033】
第2の検出器16bは、例えば静電容量センサを備え、各試料位置T1,T2の試料容器17に収容された試料の液面をこの液面にサンプル分注プローブ16が接触したときの例えば静電容量の変化により検出する。そして、液面を検出したタイミングで液面の情報を分析制御部27に出力する。
【0034】
このように、第2の検出器16bを用いて試料容器17内の試料液面をサンプル分注プローブ16との接触により検出することにより、第1の検出器16aで検出する場合よりも試料容器17内の試料液面の位置を精度よく検出することができる。
【0035】
なお、第2の検出器14bは、第2の検出器16bと同様に構成され、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬液面を第1試薬分注プローブ14との接触により検出する。また、第2の検出器15bは、第2の検出器16bと同様に構成され、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬液面を第2試薬分注プローブ15との接触により検出する。
【0036】
分析制御部27は、第1及び第2の検出器16a,16bにより検出される液面の情報に基づいて、試料容器17内の試料を吸引させるためにサンプル分注プローブ16の移動動作を制御する。そして、サンプル分注プローブ16を試料位置T1又は試料位置T2の試料容器17の上方の所定の位置から試料容器17内の試料の液面よりも上方の第1の位置まで第1の速度で下方向に移動させた後、試料容器17内の試料の液面に接触する第2の位置まで第2の速度で下方向に移動させる。
【0037】
なお、分析制御部27は、第1及び第2の検出器14a,14bにより検出される液面の情報に基づいて、試薬容器6内の第1試薬を吸引させるために第1試薬分注プローブ14の移動動作を制御する。そして、第1試薬分注プローブ14を試薬容器6の上方の所定の位置から試薬容器6内の第1試薬の液面よりも上方の第1の位置まで第1の速度で下方向に移動させた後、試薬容器6内の第1試薬の液面に接触する第2の位置まで第1の速度よりも低速の第2の速度で下方向に移動させる。
【0038】
また、分析制御部27は、第1及び第2の検出器15a,15bにより検出される液面の情報に基づいて、試薬容器7内の第2試薬を吸引させるために第2試薬分注プローブ15の移動動作を制御する。そして、第2試薬分注プローブ15を試薬容器7の上方の所定の位置から試薬容器7内の第2試薬の液面よりも上方の第1の位置まで第1の速度で下方向に移動させた後、試薬容器7内の第2試薬の液面に接触する第2の位置まで第1の速度よりも低速の第2の速度で下方向に移動させる。
【0039】
図5は、試料を1回目に吸引するときのサンプル分注プローブ16の下方向への移動動作を示した図である。
第1の検出器16aは、図4に示すように、例えば検出位置T6の試料容器17に収容された試料の液面までの距離D1を検出する。分析制御部27は、第1の検出器16aにより検出された液面の情報である距離D1の情報及び予め設定された第1の検出器16aの検出誤差範囲である第1の距離D2に基づいて、図5(c)に示すように、第1の検出器16aより検出された試料容器17内の試料液面より第1の距離D2上方に下端が位置するときのサンプル分注プローブ16の上下方向における第1の位置H11を求める。
【0040】
試料の1回目の吸引では、分析制御部27は、図5(a)に示すように、試料位置T2における上停止位置を基準位置H0として停止したサンプル分注プローブ16を基準位置H0から加速させた後、図5(b)及び(c)に示すように、第1の位置H11まで第1の速度V1で下方向へ移動させる。次いで、第1の位置H11で減速させた後、図5(d)及び(e)に示すように、第2の検出器16bにより1回目に検出される第2の位置H12まで第1の速度V1よりも低速の第2の速度V2で下方向に移動させる。そして、第2の位置H12で減速させた後、図5(f)に示すように、サンプル分注プローブ16下端が液面から例えば数mm進入して試料の吸引が可能な位置である、第2の位置H12より第2の距離D3下方の第3の位置H13で停止させる。
【0041】
このように、サンプル分注プローブ16を第3の位置H13で停止させることにより、サンプル分注プローブ16外壁の試料との接触による汚染を低減することができる。
【0042】
図6は、同一試料を2回目以降に吸引するときのサンプル分注プローブ16の下方向への移動動作を示した図である。
分析制御部27は、図6(a)に示すように、試料の1回目の吸引時に求めた第1の位置H11、第2の検出器16bにより(n―1)回目(nは2以上の整数)に検出された第2の位置H(n−1)2に基づいて、図6(d)に示すように、第2の位置H(n−1)2より例えば第1の距離D2上方に位置する第1の位置H11より下方の第1の位置Hn1を求める。
【0043】
試料のn回目の吸引では、分析制御部27は、図6(b)に示すように、試料位置T2の基準位置H0で停止したサンプル分注プローブ16を基準位置H0から加速させた後、図6(c)及び(d)に示すように、第1の位置Hn1まで第1の速度V1で下方向へ移動させる。次いで、第1の位置Hn1で減速させた後、図6(e)及び(f)に示すように、第2の検出器16bによりn回目に検出される第2の位置Hn2まで第2の速度V2で下方向に移動させる。そして、第2の位置Hn2で減速させた後、図6(g)に示すように、第2の位置Hn2より第2の距離D3下方の第3の位置Hn3で停止させる。
【0044】
このように、サンプル分注プローブ16を第3の位置Hn3で停止させることにより、サンプル分注プローブ16外壁の試料との接触による汚染を低減することができる。
【0045】
以下、図1乃至図9を参照して、操作部50からID及びこのIDの検査項目が入力された被検試料Aの分注に関る自動分析装置100の動作の一例を説明する。図7は、被検試料Aを分注するサンプル分注工程の構成を示す図である。また、図8及び図9は、被検試料Aを分注する動作を示すフローチャートである。
【0046】
図7において、サンプル分注工程S1は、試料容器17に収容された被検試料Aを1回目に分注する第1のサンプル分注工程S10と、被検試料Aをn回目に分注する第nのサンプル分注工程S20により構成される。そして、システム制御部60からの指示に基づいて、分析制御部27は移動機構部26の各機構を制御して反応ディスク5、サンプル分注アーム10などの各分析ユニットを駆動させる。
【0047】
図8は、第1のサンプル分注工程S10の詳細を示したフローチャートである。
分析制御部27は、移動機構部26及び分析部24を制御する。移動機構部26は、分析部24のサンプラ部5におけるサンプルディスク5aを回動する。第1の検出器16aは、サンプルディスク5aに保持された検出位置T6における試料容器17内の被検試料Aの液面を検出する(ステップS11)。
【0048】
ここでは、図4に示すように、試料容器17内の被検試料Aの液面までの距離D1を検出し、検出した液面の情報である距離D1の情報を分析制御部27に出力する。移動機構部26は、サンプルディスク5aを回動して、被検試料Aを収容する試料容器17を試料位置T2で停止させる。
【0049】
なお、分析制御部27は、距離D1が予め設定された許容範囲を外れている場合、被検試料Aの吸引を停止させ、試料容器17内の被検試料Aが例えば不足している異常情報を出力部40から出力させる。
【0050】
分析制御部27は、第1の検出器16aにより検出された距離D1の情報及び第2の検出器16bにより検出される液面の情報に基づいてサンプル分注プローブ16を作動させる。サンプル分注プローブ16は、ホームポジションである例えば洗浄位置T4から水平方向へ移動して、図5(a)に示すように、試料位置T2の基準位置H0で停止する(ステップS12)。
【0051】
サンプル分注プローブ16は、図5(b)及び(c)に示すように、基準位置H0から加速して第1の位置H11まで第1の速度V1で下方向へ移動する(ステップS13)。
【0052】
サンプル分注プローブ16は、第1の位置H11で減速した後、図5(d)及び(e)に示すように、第2の速度V2で下方向に移動する(ステップS14)。
【0053】
第2の検出器16bは、サンプル分注プローブ16が試料容器17に収容された被検試料Aに1回目に接触したときの被検試料Aの液面を検出する(ステップS15)。
【0054】
このように、被検試料Aの1回目の吸引では、試料容器17内の被検試料Aの液面よりも上方の第1の位置H11まで第1の速度V1で下方向に移動させた後、第1の位置H11で減速させて第2の検出器16bにより検出される第2の位置H12まで第2の速度V2で移動させることにより、サンプル分注プローブ16の下降に要する時間の短縮を図ることができる。
【0055】
サンプル分注プローブ16は、第2の検出器16bにより試料容器17内の被検試料Aの液面が検出された第2の位置H12で減速して、図5(f)に示すように、第3の位置H13で停止する(ステップS16)。
【0056】
このように、第1の位置H11で減速した後に第2の速度V2でサンプル分注プローブ16を下方向に移動させ、試料容器17内の被検試料Aに接触したときに減速させて第3の位置H13で停止させることにより、サンプル分注プローブ16を停止させるときの衝撃を低減することができる。これにより、被検試料Aの分注精度の低下を防ぐことができる。
【0057】
サンプル分注プローブ16は、第3の位置H13で試料容器17内の被検試料Aを吸引してから、上方に移動して試料位置T2の基準位置H0で停止する。次いで、試料位置T2から水平方向へ移動して反応容器位置T3で停止した後、下方向へ移動してサンプル分注プローブ16の下端部が反応容器3内へ進入した吐出位置で停止する。そして、反応容器3内へ被検試料Aを吐出する。被検試料Aを吐出してから、上方に移動して反応容器位置T3の上停止位置で停止する。次いで、反応容器位置T3から水平方向へ移動して洗浄位置T4で停止する(ステップS17)。
【0058】
なお、分析部24で測定が開始されてから第1試薬の1回目の吸引では、第1の検出器14aは試薬器6に収容された第1試薬液面までの距離を検出する。分析制御部27は、第1の検出器14aより検出された試薬容器6内の第1試薬液面より第1の距離上方に下端が位置するときの第1試薬分注プローブ14の1回目の第1の位置を求める。そして、第1試薬分注プローブ14を第1の速度で下方向へ移動させて1回目の第1の位置で減速させた後、第2の検出器14bにより検出される1回目の第2の位置まで第2の速度で下方向に移動させて、1回目の第2の位置より第2の距離下方の第3の位置で停止させる。
【0059】
このように、第1試薬の1回目の吸引では、試薬容器6内の第1試薬の液面よりも上方の第1の位置まで第1の速度で下方向に移動させた後、第2の位置まで第2の速度で下方向に移動させることにより、第1試薬分注プローブ14の下降に要する時間の短縮を図ることができる。また、第1の位置から減速して第2の速度で第1試薬分注プローブ14を下方向に移動させ、第2の位置で減速させて第3の位置で停止させることにより、第1試薬分注プローブ14を停止させるときの衝撃を低減することができる。これにより、第1試薬の分注精度の低下を防ぐことができる。
【0060】
また、分析部24で測定が開始されてから第2試薬の1回目の吸引では、第1の検出器15aは試薬器7内の第2試薬液面までの距離を検出する。分析制御部27は、第1の検出器15aで検出された試薬容器7内の第2試薬液面より第1の距離上方に下端が位置するときの第2試薬分注プローブ15の1回目の第1の位置を求める。そして、第2試薬分注プローブ15を第1の速度で下方向へ移動させて1回目の第1の位置で減速させた後、第2の検出器15bで検出される1回目の第2の位置まで第2の速度で下方向に移動させて、1回目の第2の位置より第2の距離下方の第3の位置で停止させる。
【0061】
このように、第2試薬の1回目の吸引では、試薬容器7内の第2試薬の液面よりも上方の第1の位置まで第1の速度で下方向に移動させた後、第2の位置まで第2の速度で下方向に移動させることにより、第1試薬分注プローブ14の下降に要する時間の短縮を図ることができる。また、第1の位置から減速して第2の速度で第2試薬分注プローブ15を下方向に移動させ、第2の位置で減速させて第3の位置で停止させることにより、第2試薬分注プローブ15を停止させるときの衝撃を低減することができる。これにより、第2試薬の分注精度の低下を防ぐことができる。
【0062】
図9は、第nのサンプル分注工程S20の詳細を示したフローチャートである。
サンプル分注プローブ16は、洗浄位置T4から水平方向へ移動して、図6(b)に示すように、試料位置T2の基準位置H0で停止する(ステップS21)。
【0063】
サンプル分注プローブ16は、図6(c)及び(d)に示すように、基準位置H0から加速して第1の位置Hn1まで第1の速度V1で下方向に移動する(ステップS22)。
【0064】
サンプル分注プローブ16は、第1の位置Hn1まで移動した後、図6(e)に示すように、第1の位置Hn1で減速して第2の速度V2で下方向に移動する(ステップS23)。
【0065】
第2の検出器16bは、サンプル分注プローブ16が試料容器17に収容された被検試料Aにn回目に接触したときの被検試料Aの液面を検出する(ステップS24)。
【0066】
サンプル分注プローブ16は、第2の検出器16bにより試料容器17内の被検試料Aの液面が検出された第2の位置Hn2で減速して、図6(g)に示すように、被検試料Aの吸引が可能な第3の位置Hn3で停止する(ステップS25)。
【0067】
このように、被検試料Aのn回目の吸引では、試料容器17内の被検試料Aの液面よりも上方の第1の位置Hn1まで第1の速度V1で下方向に移動させた後、第1の位置Hn1で減速させて第2の検出器16bにより検出される第2の位置Hn2まで第2の速度V2で移動させることにより、サンプル分注プローブ16の下降に要する時間の短縮を図ることができる。また、第1の位置Hn1で減速した後に第2の速度V2でサンプル分注プローブ16を下方向に移動させ、第2の位置Hn2で減速させて第3の位置Hn3で停止させることにより、サンプル分注プローブ16を停止させるときの衝撃を低減することができる。これにより、被検試料Aの分注精度の低下を防ぐことができる。
【0068】
サンプル分注プローブ16は、第3の位置Hn3で試料容器17内の被検試料Aを吸引してから、上方に移動して試料位置T2の基準位置H0で停止する。次いで、試料位置T2から水平方向へ移動して反応容器位置T3で停止した後、下方向へ移動して吐出位置で停止する。そして、反応容器3内へ被検試料Aを吐出する。被検試料Aを吐出してから、上方に移動して反応容器位置T3の上停止位置で停止する。次いで、反応容器位置Tから水平方向へ移動して洗浄位置T4で停止する(ステップS26)。
【0069】
なお、分析部24で測定が開始されてから同一第1試薬のn回目の吸引では、第1試薬の1回目の第1の位置、第2の検出器14bにより検出された(n―1)回目の第2の位置に基づいて、(n―1)回目の第2の位置より例えば第1の距離上方に位置し、1回目の第1の位置より下方に位置するn回目の第1の位置を求める。そして、第1試薬分注プローブ14を第1の速度で下方向へ移動させてn回目の第1の位置で減速させた後、第2の検出器14bによりn回目に検出される第2の位置まで第2の速度で下方向に移動させて、n回目に検出される第2の位置より第2の距離下方の第3の位置で停止させる。
【0070】
このように、同一第1試薬のn回目の吸引では、試薬容器6内の第1試薬液面よりも上方のn回目の第1の位置まで第1の速度で下方向に移動させた後、第2の検出器14bによりn回目に検出される第2の位置まで第2の速度で移動させることにより、第1試薬分注プローブ14の下降に要する時間の短縮を図ることができる。また、n回目の第1の位置で減速させて第2の速度で第1試薬分注プローブ14を下方向に移動させ、n回目に検出される第2の位置で減速させて第3の位置で停止させることにより、第1試薬分注プローブ14を停止させるときの衝撃を低減することができる。これにより、第1試薬の分注精度の低下を防ぐことができる。
【0071】
また、分析部24で測定が開始されてから同一第2試薬のn回目の吸引では、第2試薬の1回目の第1の位置、第2の検出器15bにより検出された(n―1)回目の第2の位置に基づいて、(n―1)回目の第2の位置より例えば第1の距離上方に位置し、1回目の第1の位置より下方に位置するn回目の第1の位置を求める。そして、第2試薬分注プローブ15を第1の速度で下方向へ移動させてn回目の第1の位置で減速させた後、第2の検出器15bによりn回目に検出される第2の位置まで第2の速度で下方向に移動させて、n回目に検出される第2の位置より第2の距離下方の第3の位置で停止させる。
【0072】
このように、第2試薬のn回目の吸引では、試薬容器7内の第2試薬液面よりも上方のn回目の第1の位置まで第1の速度で下方向に移動させた後、第2の検出器15bによりn回目に検出される第2の位置まで第2の速度で移動させることにより、第2試薬分注プローブ15の下降に要する時間の短縮を図ることができる。また、n回目の第1の位置で減速させて第2の速度で第2試薬分注プローブ15を下方向に移動させ、n回目に検出される第2の位置で減速させて第3の位置で停止させることにより、第2試薬分注プローブ15を停止させるときの衝撃を低減することができる。これにより、第2試薬の分注精度の低下を防ぐことができる。
【0073】
以上述べた実施形態によれば、試料容器17内の試料の液面を検出する第1及び第2の検出器16a,16bを設け、被検試料Aの1回目の吸引では、試料容器17内の被検試料Aの液面よりも上方の第1の位置H11まで第1の速度V1で下方向に移動させた後、第1の位置H11で減速させて第2の検出器16bにより1回目に検出される第2の位置H12まで第2の速度V2で移動させることにより、サンプル分注プローブ16の下降に要する時間の短縮を図ることができる。そして、サンプル分注プローブ16を第1の位置H11で減速させて第2の速度V2で下方向に移動させ、第2の位置H12で減速させて第3の位置H13で停止させることにより、サンプル分注プローブ16を停止させるときの衝撃を低減することができる。これにより、被検試料Aの分注精度の低下を防ぐことができる。
【0074】
また、被検試料Aのn回目の吸引では、試料容器17内の被検試料Aの液面よりも上方の第1の位置Hn1まで第1の速度V1で下方向に移動させた後、第1の位置Hn1で減速させて第2の検出器16bによりn回目に検出される第2の位置Hn2まで第2の速度V2で移動させることにより、サンプル分注プローブ16の下降に要する時間の短縮を図ることができる。そして、サンプル分注プローブ16を第1の位置Hn1で減速させて第2の速度V2で下方向に移動させ、第2の位置Hn2で減速させて第3の位置H13で停止させることにより、サンプル分注プローブ16を停止させるときの衝撃を低減することができる。これにより、被検試料Aの分注精度の低下を防ぐことができる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
H0 基準位置
H11,Hn1 第1の位置
H12,H(n−1)2,Hn2 第2の位置
H13,Hn3 第3の位置
T1,T2 試料位置
V1 第1の速度
V2 第2の速度
16 サンプル分注プローブ
16a 第1の検出器
16b 第2の検出器
17 試料容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9