(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193614
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】誘導加熱式加工装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H05B 6/10 20060101AFI20170828BHJP
H05B 6/36 20060101ALI20170828BHJP
H05B 6/06 20060101ALI20170828BHJP
B29C 33/02 20060101ALN20170828BHJP
【FI】
H05B6/10 341
H05B6/36 Z
H05B6/06 341
!B29C33/02
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-101402(P2013-101402)
(22)【出願日】2013年5月13日
(65)【公開番号】特開2014-44933(P2014-44933A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2016年4月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-169489(P2012-169489)
(32)【優先日】2012年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100113468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】外村 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤本 泰広
【審査官】
青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0303194(US,A1)
【文献】
特開2004−322323(JP,A)
【文献】
特開平06−126747(JP,A)
【文献】
特開平08−124665(JP,A)
【文献】
特開2009−220563(JP,A)
【文献】
特開昭51−024722(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0025428(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/10
H05B 6/06
H05B 6/36
B29C 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を挟むように設けられる非磁性金属体及び磁性金属体と、
前記非磁性金属体に対して前記磁性金属体とは反対側に設けられた誘導コイルとを具備しており、
前記誘導コイルにより発生した磁束が前記非磁性金属体を貫通するとともに前記磁性金属体の内部を通過することによって、前記非磁性金属体及び前記磁性金属体が加熱される誘導加熱式加工装置であって、
前記誘導コイルの中央部に磁路用鉄心が設けられており、
前記誘導コイルの外側周面及び前記誘導コイルの前記非磁性金属体とは反対側の面を覆い、前記誘導コイルにより発生した磁束が通過する磁束通路を形成する磁束通路形成部材が設けられており、
前記磁束通路形成部材が前記磁性金属体に接触している誘導加熱式加工装置。
【請求項2】
前記非磁性金属体及び前記磁性金属体が、下金型及び上金型である請求項1記載の誘導加熱式加工装置。
【請求項3】
前記非磁性金属体が前記磁束通路形成部材により支持されている請求項1又は2記載の誘導加熱式加工装置。
【請求項4】
前記磁性金属体に対して前記非磁性金属体側に非磁性金属体を前記磁性金属体に密着設置した請求項1乃至3の何れかに記載の誘導加熱式加工装置。
【請求項5】
前記非磁性金属体に対して前記磁性金属体とは反対側に、前記非磁性金属体よりも低抵抗率の非磁性体を前記非磁性金属体に密着又は、熱伝達部材を介して配置した請求項1乃至4何れかに記載の誘導加熱式加工装置。
【請求項6】
前記磁性金属体に対して前記非磁性金属体とは反対側に断熱部材が設けられている請求項1乃至5の何れかに記載の誘導加熱式加工装置。
【請求項7】
前記誘導コイルに印加する交流電圧の周波数を50Hz〜1000Hzとしており、
前記非磁性金属体及び前記磁性金属体の発熱比を前記周波数によって制御している請求項1乃至6の何れかに記載の誘導加熱式加工装置。
【請求項8】
前記誘導コイルに交流電圧を印加する電源が、変圧器方式の3N(Nは1以上の奇数である。)倍周波数発生装置である請求項7記載の誘導加熱式加工装置。
【請求項9】
被加工物を挟むように非磁性金属体及び磁性金属体を設けるとともに前記非磁性金属体に対して前記磁性金属体とは反対側に誘導コイルを設けて、
前記誘導コイルにより発生した磁束を、前記非磁性金属体を貫通させるとともに前記磁性金属体の内部を通過させることによって、前記非磁性金属体及び前記磁性金属体を加熱する誘導加熱式加工方法であって、
前記誘導コイルの中央部に磁路用鉄心を設けており、
前記誘導コイルの外側周面及び前記誘導コイルの前記非磁性金属体とは反対側の面を覆い、前記誘導コイルにより発生した磁束が通過する磁束通路を形成する磁束通路形成部材を設けており、
前記磁束通路形成部材を前記磁性金属体に接触させている、前記被加工物を加工する誘導加熱式加工方法。
【請求項10】
前記誘導コイルに印加する交流電圧の周波数を50Hz〜1000Hzとしており、
前記非磁性金属体及び前記磁性金属体の発熱比を前記周波数によって制御している請求項9記載の誘導加熱式加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱を用いて被加工物を加熱して加工する誘導加熱式加工装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の加工装置としては、例えば特許文献1に示すように、被加工物を一対の金型で挟むとともに、当該一対の金型を加熱することによって被加工物の加工を行うものがある。そして、この加工装置では、一対の金型それぞれに加熱機構として誘導コイルが設けられており、当該誘導コイルそれぞれに交流電圧を印加することによって、一対の金型を加熱するように構成している。
【0003】
しかしながら、一対の金型それぞれに誘導コイルを設け、各誘導コイルそれぞれに電源を設けているので、装置構成が複雑化してしまうだけでなく、装置が大型化してしまう虞がある。
【0004】
なお、一方の金型のみに誘導コイルを設けて、当該一方の金型、さらには他方の金型を加熱することも考えられるが、これでは、一方の金型及び他方の金型の間で温度にばらつきが生じてしまい、被加工物に加える熱がアンバランスになり、被加工物の加熱効率が悪くなり、ひいては加工効率が低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−322323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、装置の構成を簡略化して大型化することなく、加熱効率に優れており、被加工物の両側に同時に熱を加えることのできる誘導加熱式加工装置を提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る誘導加熱式加工装置は、被加工物を挟むように設けられる非磁性金属体及び磁性金属体と、前記非磁性金属体に対して前記磁性金属体とは反対側に設けられた誘導コイルとを具備しており、前記誘導コイルにより発生した磁束が前記非磁性金属体を貫通するとともに前記磁性金属体の内部を通過することによって、前記非磁性金属体及び前記磁性金属体が加熱されることを特徴とする。
【0008】
また本発明に係る誘導加熱式加工方法は、被加工物を挟むように非磁性金属体及び磁性金属体を設けるとともに、前記非磁性金属体に対して前記磁性金属体とは反対側に誘導コイルを設けて、前記誘導コイルにより発生した磁束を、前記非磁性金属体を貫通させるとともに前記磁性金属体の内部を通過させることによって、前記非磁性金属体及び前記磁性金属体を加熱して前記被加工物を加工することを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、非磁性金属体及び磁性金属体の間に被加工物を挟み、非磁性金属体に対して磁性金属体とは反対側に誘導コイルを設けて、誘導コイルにより発生した磁束を、非磁性金属体に貫通させているので、非磁性金属体を加熱することができる。また、誘導コイルにより発生した磁束は、非磁性金属体を貫通した後に磁性金属体の内部を通過するので、磁性金属体を加熱することができる。これにより、被加工物を非磁性金属体及び磁性金属体により加熱することができる。また、非磁性金属体側に誘導コイルを設けるだけで良いので装置の構成を簡略化して大型化することも無く、非磁性金属体を密着させた磁性金属体の開閉及び脱着が簡単となり、加工物の出し入れが容易となる。さらに、誘導加熱により非磁性金属体及び磁性金属体を加熱することから加熱効率に優れており、作業性を損なうこともない。
【0010】
具体的には、前記非磁性金属体及び前記磁性金属体が、下金型及び上金型であることが考えられる。この場合、誘導コイルは、下金型の下方に設けられる。そして、下金型を好適に加熱するためには、下金型における誘導コイルに対向する面が概略平面状をなし、誘導コイルにより発生する磁束を略垂直に貫通させることが望ましい。
【0011】
ここで、誘導コイルを流れる電流と非磁性金属体及び磁性金属体に発生する誘導電流とは逆向きであるため、互いに反発する力(反発力)が働くことになり、磁性金属体が不意に外れるといった問題が生じる場合がある。この問題を解決するためには、前記誘導コイルの中央部に磁路用鉄心が設けられていることが望ましい。このように、誘導コイルの中央部に磁路用鉄心を設けることによって、当該磁路用鉄心及び磁性金属体の厚み方向には同方向の磁束が流れるので、互いに引き合う力(吸引力)が発生する。このため、誘導コイルと非磁性金属体及び磁性金属体との間には合成力として大きな反発力が働かないため、磁性金属体が不意に外れるといったことを防止することができる。
【0012】
前記誘導コイルの外側周面及び前記誘導コイルの前記非磁性金属体とは反対側の面を覆い、前記誘導コイルにより発生した磁束が通過する磁束通路を形成する磁性体からなる磁束通路形成部材が設けられていることが望ましい。これならば、誘導コイルにより発生した磁束が非磁性金属体を貫通して磁性金属体に到達し、当該磁性金属体の内部を通過した後に磁束通路形成部材に流れるという磁路が形成される。その結果、誘導コイルにより発生した磁束を効果的に非磁性金属体及び磁性金属体に導くことができる。
【0013】
前記非磁性金属体が前記磁束通路形成部材により支持されていることが望ましい。これならば、非磁性金属体を支持する構造を磁束通路形成部材により構成することができ、装置構成を簡略化することができる。
【0014】
また、前記磁束通路形成部材が、前記磁性金属体に接触していることが望ましい。これならば、磁性金属体から磁束通路形成部材に磁束が流れ易くなり、その磁気抵抗を小さくすることができる。
【0015】
前記磁性金属体に対して前記非磁性金属体側に非磁性金属体を前記磁性金属体に密着設置したものが望ましい。このように磁性金属体の内側に非磁性金属体を密着設置すれば、非磁性金属体に誘導電流が流れて発熱し、密着設置した非磁性金属体と磁性金属体で構成された構造体(上金型)の温度を上昇させることができる。また、密着させる非磁性金属体の抵抗率や厚さを選択することで上金型の温度上昇値を調整することが可能となる。なお、非磁性金属体とは、例えば非磁性ステンレスや銅等である。
【0016】
前記非磁性金属体に対して前記磁性金属体とは反対側に、前記非磁性金属体よりも低抵抗率の非磁性体を前記非磁性金属体に密着又は、熱伝達部材を介して配置したものが望ましい。これならば、非磁性金属体に部分的な温度ムラが生じた場合、その比較的温度の低い箇所に非磁性金属体よりも低抵抗率の非磁性体を配置すれば、その配置箇所では誘導電流が流れ易くなり発熱量が増加して温度が上昇するので、温度ムラを解消することができる。なお、この低抵抗率の非磁性体は、非磁性金属体に密着して配置してもよいし、非磁性金属体に熱伝達部材を介して配置してもよい。
【0017】
非磁性金属体側の外側には誘導コイルが設けられるため、非磁性金属体からの放熱量は少ないが、磁性金属体側の外側は開放されており、磁性金属体からの放熱量が多く、磁性金属体が高温になるにしたがって温度上昇率が低下する。この問題を解決するためには、前記磁性金属体に対して前記非磁性金属体とは反対側に断熱部材が設けられていることが望ましい。
【0018】
ここで、誘導コイルに印加する交流電圧の周波数を50Hz未満の低周波とした場合、非磁性金属体が加熱されにくく、また、磁性金属体の磁束密度が高くなり過ぎて飽和してしまう。一方、前記周波数を1000Hzを超える高周波とした場合、非磁性金属体が加熱されすぎて磁性金属体よりも温度が高くなり過ぎてしまう。このため、前記誘導コイルに印加する交流電圧の周波数を50Hz〜1000Hzとし、前記非磁性金属体及び前記磁性金属体の発熱比を前記周波数によって制御していることが望ましい。
【0019】
また、非磁性金属体は、電流浸透度が高く、内外面ともに加熱される。一方、磁性金属体のため、周波数500Hz、温度300℃において2mm程度の電流浸透度であり、被加工物に接触する内面が加熱されるため、被加工物の加工には効率が良い。
【0020】
また、前記誘導コイルに交流電圧を印加する電源が、変圧器方式の3N(Nは1以上の奇数である。)倍周波数発生装置であることが望ましい。ここで、3N倍周波数発生装置は、商用電源周波数が50Hzの場合には、150Hz、450Hz、750Hzの中周波を出力し、商用電源周波数が60Hzの場合には、180Hz、540Hz、900Hzの中周波を出力する。なお、汎用インバータを用いることが考えられるが、汎用インバータは一般的に出力電圧をV、出力周波数をFとすると、V/F=一定で変化するように構成されている。このため、負荷温度を出力の増減で制御すると、電圧の変化に伴って周波数も常に変化することとなり、非磁性金属体及び磁性金属体は周波数の変化に伴って振動が激しくなる。一方、変圧器方式の3N倍周波数発生装置では、常に周波数が一定で、出力電圧のみを変化させる制御方式であり、非磁性金属体及び磁性金属体の周波数変動による振動が少なく、加工に悪影響を与えることが少ない。
【発明の効果】
【0021】
このように構成した本発明によれば、装置を大型化することなく、加熱効率に優れており、作業性を損なうことなく、被加工物の両側に同時に熱を加えることのできる誘導加熱式加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る誘導加熱式加工装置の構成を模式的に示す断面図。
【
図2】下金型の重量:上金型の重量=1:1.045、周波数150Hz、断熱部材無しの場合の誘導加熱テストの結果を示す図。
【
図3】下金型の重量:上金型の重量=1:1.045、周波数150Hz、断熱部材有りの場合の誘導加熱テストの結果を示す図。
【
図4】下金型の重量:上金型の重量=1:1.451、周波数450Hz、断熱部材無しの場合の誘導加熱テストの結果を示す図。
【
図5】下金型の重量:上金型の重量=1:1.451、周波数150Hz、断熱部材無しの場合の誘導加熱テストの結果を示す図。
【
図6】下金型の重量:上金型の重量=1:2.746、周波数150Hz、断熱部材無しの場合の誘導加熱テストの結果を示す図。
【
図7】本実施形態の変形例に係る誘導加熱式加工装置の構成を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明に係る誘導加熱式加工装置の実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態に係る誘導加熱式加工装置1は、被加工物Wに熱を加えて加工するものであり、
図1に示すように、被加工物Wを挟むように設けられる非磁性金属体2及び磁性金属体3と、非磁性金属体2に対して磁性金属体3とは反対側に設けられた誘導コイル4とを具備している。なお、
図1においては、便宜上、各部材を離間した状態で示した部分がある。
【0025】
本実施形態の非磁性金属体2及び磁性金属体3は、対をなす下金型及び上金型であり、それらの対向面には、被加工物Wの加工形状に合わせた凹凸形状が形成されている。これら非磁性金属体2及び磁性金属体3を重ね合わせることにより、内部に被加工物Wが収容される収容空間が形成される。なお、上金型である磁性金属体3が、被加工物Wの脱着を行うために移動可能に構成されている。
【0026】
誘導コイル4は、概略円筒形状をなすものであり、非磁性金属体2の下方に設けられている。つまり、誘導コイル4は、非磁性金属体2に対して磁性金属体3とは反対側に設けられている。また、誘導コイル4の外径は、非磁性金属体2の外径と略同一となるように構成されており、少なくとも被加工物Wの幅寸法よりも大きくなるように構成されている。また、誘導コイル4の回転中心軸は、前記非磁性金属体2の中心軸と略一致するように設けられている。このように設けられた誘導コイル4によって発生する磁束は、非磁性金属体2の下面に対して略垂直に貫通することになる。なお、非磁性金属体2における誘導コイル4に対向する面(本実施形態では下面全体)が概略平面状とされている。さらに、誘導コイル4の中央に形成された中空部には、磁路用鉄心5が設けられている。
【0027】
そして、誘導コイル4の周囲には、磁束通路形成部材6が設けられている。
【0028】
磁束通路形成部材6は、前記誘導コイル4及び磁路用鉄心5を収容して、誘導コイル4の周囲に磁路を形成するものである。この磁束通路形成部材6は、誘導コイル4の外側周面及び誘導コイル4の下面(非磁性金属体2とは反対側の面)を覆い、上部に開口を有する概略有底筒形状をなすものである。なお、この磁束通路形成部材6は、磁性金属から形成されている。
【0029】
そして、この磁束通路形成部材6の底壁に誘導コイル4が載置されるとともに、当該誘導コイル4の中央部に磁路用鉄心5が配置される。この磁路用鉄心5は、固定ボルト7によって磁束通路形成部材6の底壁に締結固定される。
【0030】
また、磁束通路形成部材6の内部において、誘導コイル4の上面には、平板状の絶縁断熱部材8が設けられている。この絶縁断熱部材8を設けることによって、誘導コイル4及び磁路用鉄心5と非磁性金属体2との間で短絡が生じないようにするとともに、非磁性金属体2からの放熱を抑え、当該非磁性金属体2からの伝熱によって誘導コイル4及び磁路用鉄心5が加熱されないようにしている。
【0031】
また、磁束通路形成部材6は、非磁性金属体2を支持するものであり、当該磁束通路形成部材6の内面に非磁性金属体2を支持するための支持部61が形成されている。この支持部61は、非磁性金属体2の下面に接触することによって、非磁性金属体2を支持するものであり、磁束通路形成部材6の内面において周方向全体に形成されていても良いし、内面において周方向に間欠的に形成されていても良い。さらに、磁束通路形成部材6の支持部61に非磁性金属体2が支持された状態において、当該非磁性金属体2の下面は、絶縁断熱部材8に接触する。
【0032】
さらに、磁束通路形成部材6の上端面は、非磁性金属体2に重ね合わされた磁性金属体3の下面に接触するように構成されている。つまり、磁束通路形成部材6の上端面は、非磁性金属体2に重ね合わされた磁性金属体3の下面において、非磁性金属体2よりも外側に延出した下面に接触するように構成されている。これにより、磁性金属体3の内部を通過した磁束が磁束通路形成部材6に流れ易くし、又その際の磁気抵抗を小さくすることができる。
【0033】
また、本実施形態では、磁束通路形成部材6に周方向に短絡電流が流れることによる磁束通路形成部材6の発熱を避けるために、磁束通路形成部材6に、磁束が流れる方向に沿って、短絡電流防止用のスリット(不図示)を形成している。その他、磁束通路形成部材6の発熱を避けるために、磁束通路形成部材6を、珪素鋼鉄等の絶縁薄板磁性体を積層して構成しても良い。
【0034】
さらに、磁性金属体3の上面には、当該磁性金属体3により発生した熱が磁性金属体3の上面から放熱しないようにするため、断熱部材9を接触して設けても良い。このように断熱部材9を設けているので、磁性金属体3の上部が開放されていることにより生じる磁性金属体3の高温域における温度上昇率の低下を防止することができる。
【0035】
次に誘導コイル4によって発生した磁束の流れ及び非磁性金属体2及び磁性金属体3の同時加熱について説明する。
【0036】
誘導コイル4に交流電圧を印加することによって磁束が発生する。この磁束は、磁路用鉄心5を通り、非磁性金属体2を略垂直に貫通する。このとき、非磁性金属体2に誘導電流が生じて非磁性金属体2がジュール発熱する。非磁性金属体2を貫通した磁束は、被加工物Wの収容空間を通過する。そして、この磁束は磁性金属体3に到達し、当該磁性金属体3の内部を中央部から外側に向かって流れる。このとき、磁性金属体3に誘導電流が生じて磁性金属体3がジュール発熱する。この磁性金属体3の内部を通過した磁束は、当該磁性金属体3の周縁部において、磁束通路形成部材6に向かって流れる。磁束通路形成部材6に到達した磁束は、当該磁束通路形成部材6の内部を通過して、磁路用鉄心5に流れる。このような経路によって誘導コイル4によって発生した磁束が循環する。磁束が逆向きの場合には、前記経路が反対となる。
【0037】
なお、本実施形態では誘導コイル4の中空部に磁路用鉄心5を設けているので、誘導コイル4を流れる電流と非磁性金属体2及び磁性金属体3に発生する誘導電流とは逆向きであるため、互いに反発する力(反発力)が働くものの、磁路用鉄心5及び磁性金属体3の厚み方向には同方向の磁束が流れるので、互いに引き合う力(吸引力)が発生する。このため、誘導コイル4と非磁性金属体2及び磁性金属体3との間には合成力として大きな反発力が働かないため、磁性金属体3が不意に外れるといったことを防止することができる。
【0038】
本実施形態において、誘導コイル4に交流電圧を印加する電源(不図示)は、誘導コイル4に周波数50Hz〜1000Hzの交流電圧を印加するものであり、本実施形態では、変圧器方式の3N(Nは1以上の奇数である。)倍周波数発生装置により構成している。また、この3N倍周波数発生装置を用いて、非磁性金属体2及び磁性金属体3の発熱比を前記周波数を調整することによって制御している。例えば非磁性金属体2及び磁性金属体3の昇温特性が同一になるように周波数を調整することができるし、非磁性金属体2及び磁性金属体3の温度が同一になるように周波数を調整することができる。なお、3N倍周波数発生装置の構成としては、例えば、3組の単相変圧器の1次巻線をY結線するとともに、2次巻線をΔ結線して、そのΔ結線の一端を開放して、この開放部から高調波成分を取り出すものが考えられる。
【0039】
次に、本実施形態の誘導加熱式加工装置1の誘導加熱テストの結果を示す。
【0040】
図2は、下金型が板厚1.5mmのSUS304であり、上金型が板厚2.3mmのSS400であり、下金型の底面と上金型の下面との距離(以下、クリアランスという。)が17mmであり、下金型及び上金型の重量比が1:1.045である場合に、交流電圧の周波数を150Hzとして、上金型の上面に断熱部材を設けないときの、下金型及び上金型の昇温特性を示すテスト結果である。
【0041】
一方、
図3は、
図2の場合において、上金型の上面に断熱部材を設けたときの、下金型及び上金型の昇温特性を示すテスト結果である。
【0042】
図2に示すように、断熱部材を設けない場合には、下金型及び上金型は、最初同等の昇温特性であるが、上金型が高温になると放熱量が多くなり、上金型の温度低下が発生する。一方、
図3に示すように、断熱部材を設けた場合には、最初断熱部材に熱が吸収されて上金型を昇温しにくい現象があるが、時間が経過するに連れて断熱部材が温められると、上金型と下金型とは同等温度になる。
【0043】
図4は、下金型が板厚1.5mmのSUS304であり、上金型が板厚3mmのSS400であり、クリアランスが17mmであり、下金型及び上金型の重量比が1:1.451である場合に、交流電圧の周波数を450Hzとして、上金型の上面に断熱部材を設けないときの、下金型及び上金型の昇温特性を示すテスト結果である。
【0044】
一方、
図5は、下金型が板厚1.5mmのSUS304であり、上金型が板厚3mmのSS400であり、クリアランスが17mmであり、下金型及び上金型の重量比が1:1.451である場合に、交流電圧の周波数を150Hzとして、上金型の上面に断熱部材を設けないときの、下金型及び上金型の昇温特性を示すテスト結果である。
【0045】
また、
図6は、下金型が板厚1.5mmのSUS304であり、上金型が板厚5.8mmのSS400であり、クリアランスが17mmであり、下金型及び上金型の重量比が1:2.746である場合に、交流電圧の周波数を150Hzとして、上金型の上面に断熱部材を設けないときの、下金型及び上金型の昇温特性を示すテスト結果である。
【0046】
図4及び
図5から分かるように、交流電圧の周波数によって磁性金属体製の上金型と非磁性金属体製の下金型との発熱比が変化している。この場合には、周波数150Hzにおいて下金型及び上金型の昇温特性がほぼ同特性となっている。
図5において、高温域において上金型の温度が低くなっているのは、上金型の放熱量が多くなるためである。
【0047】
また、
図6に示すように、下金型及び上金型の発熱比は、それらの重量比によっても変化するため、下金型及び上金型の重量比を考慮しつつ、それらの発熱比を周波数で制御することが考えられる。
【0048】
さらに、上記の実験結果から、また、下金型及び上金型3の重量比は、下金型の重量を1とした場合、下金型の重量:上金型の重量=1.0:0.5〜3.0が適当であると考えられる。
【0049】
磁気回路には、非磁性金属体製の下金型の板厚と、下金型及び上金型の間の非磁性体層(食品収容空間)を含み磁気抵抗が高い。このため、磁性金属体製の上金型の磁束は飽和しにくく、薄くして重量を減らすほど昇温速度が速くなる。下金型と上金型の重量比を1.0:1.0〜1.5に設定すると、ほぼ昇温温度が等しくなる。ここで、昇温温度を略等しくするための重量比に幅があるのは、中身によって下金型及び上金型の距離が多少異なり、上金型と下金型の厚さで調整するためである。さらに、周波数の制御と断熱部材の材質や板厚等の種類によって、昇温温度を略等しくするための重量比を、その半分(0.5)から3倍(3.0)程度の範囲までは調整が可能であると考えられる。
【0050】
このように構成した本実施形態に係る誘導加熱式加工装置1によれば、非磁性金属体2及び磁性金属体3により形成された収容空間に被加工物Wを収容して、非磁性金属体2の下方に誘導コイル4を設けて、誘導コイル4により発生した磁束を、非磁性金属体2に貫通させているので、非磁性金属体2を加熱することができる。また、誘導コイル4により発生した磁束は、非磁性金属体2を貫通した後に磁性金属体3の内部を通過するので、磁性金属体3を加熱することができる。これにより、被加工物Wを非磁性金属体2及び磁性金属体3により加熱することができる。また、非磁性金属体2側に誘導コイル4を設けるだけで良いので装置の構成を簡略化して大型化することもない。さらに、誘導加熱により非磁性金属体2及び磁性金属体3を加熱することから加熱効率に優れており、周囲温度が高くなりにくく作業性を損なうこともない。
【0051】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0052】
例えば、電源は、3N倍周波数発生装置の他に、インバータ及び可飽和リアクトルを用いて構成しても良い。具体的には、インバータによって一定電圧かつ一定周波数の交流電圧を出力させて、インバータと誘導コイル4との間に可飽和リアクトルを入れて電流制御する。これにより、周波数の変動による負荷振動を低減することができる。可飽和リアクトルを使用するのは、高周波を半導体素子で制御することは技術的に難しく、高コストであること、マグネット等によるON/OFF制御ではなく比例積分制御による高精度制御が可能になるからである。
【0053】
また、磁性金属体である上金型の下金型側の内面に非磁性金属体を密着設置したものであっても良い。このように上金型の内面に非磁性金属体を密着設置することで、非磁性金属体に誘導電流が流れて発熱し、密着設置した非磁性金属体と磁性金属体で構成された上金型の温度を上昇させることができる。また、密着させる非磁性金属体の抵抗率や厚さを選択することで上金型の温度上昇値を調整することが可能となる。
【0054】
さらに、非磁性金属体に温度ムラが生じる場合には、
図7に示すように、非磁性金属体2と絶縁断熱部材8との間であって、非磁性金属体2の比較的温度の低い部分(本図においては、固定ボルト7の上部であって非磁性金属体2に埋め込まれている部分)に、非磁性金属体2よりも低抵抗率の非磁性体62を密着配置してもよい。この低抵抗率の非磁性体62は、例えば銅鍍金等からなる。これならば、その配置箇所では誘導電流が流れ易くなって発熱量が増加し温度が上昇するので、非磁性金属体2の温度ムラを解消することができる。なお、この低抵抗率の非磁性体62は、非磁性金属体2に図示しない熱伝達部材を介して配置されてもよい。
【0055】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1・・・誘導加熱式加工装置
W・・・被加工物
2・・・下金型(非磁性金属体)
3・・・上金型(磁性金属体)
4・・・誘導コイル
5・・・磁路用鉄心
6・・・磁束通路形成部材
9・・・断熱部材