特許第6193616号(P6193616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193616
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】X線発生装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/08 20060101AFI20170828BHJP
   H01J 35/16 20060101ALI20170828BHJP
   H01J 35/24 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   H01J35/08 D
   H01J35/08 E
   H01J35/16
   H01J35/24
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-104953(P2013-104953)
(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公開番号】特開2014-225402(P2014-225402A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直伸
(72)【発明者】
【氏名】石井 淳
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02922904(US,A)
【文献】 特開2009−301911(JP,A)
【文献】 特開2012−054045(JP,A)
【文献】 特開2011−077027(JP,A)
【文献】 特開2004−055325(JP,A)
【文献】 特表2007−525807(JP,A)
【文献】 特開2009−193934(JP,A)
【文献】 特開2004−165052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00− 6/14、
G21K 1/00− 3/00、 5/00− 7/00、
H01J 35/00−35/32、
H05G 1/00− 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料からなる基板と、当該基板に埋設されたターゲット部と、を有するターゲットユニットと、
前記ターゲット部に入射する電子ビームを発生する電子銃部と、当該電子銃部を収容し且つ前記電子銃部から出射された電子ビームが通過する電子通路を含む本体部と、を有する電子出射部と、
前記ターゲットユニットを移動させる移動機構と、を備えるX線発生装置であって、
前記本体部の前記電子通路の出射端部において前記電子通路を包囲するように、前記ターゲットユニットと前記出射端部との間に配置された気密封止部材と、
前記気密封止部材の外側に配置され、前記出射端部に対する前記ターゲットユニットの姿勢を保持する姿勢保持部材と、を備え、
前記ターゲットユニットと前記移動機構とが電気的に絶縁されていることを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
前記ターゲットユニットと前記移動機構との間に第1の絶縁部材が配置されていることを特徴とする請求項1記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記姿勢保持部材は、
前記本体部に固定される固定部と、
前記ターゲットユニットを前記出射端部側に押圧する押圧部と、
前記固定部と前記押圧部とを連結する連結部と、を備え、
前記連結部が前記ターゲットユニットと離間して配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記ターゲットユニットは、前記連結部が挿通される挿通孔を有し、
前記連結部と前記挿通孔とが所定の間隔を有して離間していることを特徴とする請求項3記載のX線発生装置。
【請求項5】
前記ターゲットユニットは、前記姿勢保持部材の前記押圧部を収容する収容部を有していることを特徴とする請求項3又は4記載のX線発生装置。
【請求項6】
前記気密封止部材は、絶縁性樹脂からなり、
前記姿勢保持部材と前記ターゲットユニット及び前記本体部の少なくとも一方との間に第2の絶縁部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のX線発生装置。
【請求項7】
前記第2の絶縁部材は、前記姿勢保持部材と前記ターゲットユニットとの間に配置されていることを特徴とする請求項6記載のX線発生装置。
【請求項8】
前記第2の絶縁部材は、前記姿勢保持部材と前記本体部との間に配置されていることを特徴とする請求項6又は7記載のX線発生装置。
【請求項9】
前記気密封止部材は、絶縁性樹脂からなり、
前記姿勢保持部材と前記ターゲットユニット及び前記本体部の少なくとも一方との間に第2の絶縁部材が設けられており、
前記固定部、前記押圧部及び前記連結部の少なくとも一つが前記第2の絶縁部材からなることを特徴とする請求項のいずれか一項記載のX線発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線発生装置として、電子ビームを出射する電子銃部と、電子銃部を収容し且つ電子銃部から出射された電子ビームが通過する電子通路を含むと共に真空状態が保持される本体部と、を有する電子出射部と、基板と該基板に埋設されており電子ビームの入射によりX線を発生する材料からなるターゲット部とを含むターゲットと、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
X線発生装置では、ターゲット上における電子ビームの入射位置を変更するために、電子ビームをターゲットに対して相対的に移動させる場合がある。例えば、特許文献2に記載のX線発生装置は、電子ビームの偏向コイルやターゲットを移動させるモータ(移動機構)を備えている。このX線発生装置では、偏向コイルによる電子ビームの偏向やターゲットをモータで移動させることで、ターゲット上における電子ビームの入射位置を変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−28845号公報
【特許文献2】特表平10−503618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ターゲットの移動機構を備えたX線発生装置において、効率よくX線を利用するためには、移動機構によるターゲットの移動を装置内部の気密状態を保持したままで行うことが好ましい。しかしながら、装置内部の負圧に引っ張られた状態のターゲットを装置内部の気密状態を保持したまま安定して移動させることは容易ではなく、X線発生装置の本体部に対してターゲットが傾くなどしてターゲットの姿勢が崩れるおそれがある。その結果、気密状態が保持できなくなるおそれがある。また、移動機構がターゲットに対して電気的な影響を与えるおそれがあり、ターゲットに入射した電子ビームに関する情報を正確に把握するのが困難となる。そのため、安定した動作制御が困難になるおそれがある。
【0006】
本発明は、気密状態を保持したままでのターゲットユニットの位置調整を確実に行うことができると共に、安定した動作制御を行うことができるX線発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るX線発生装置は、絶縁材料からなる基板と、当該基板に埋設されたターゲット部と、を有するターゲットユニットと、ターゲット部に入射する電子ビームを発生する電子銃部と、当該電子銃部を収容し且つ電子銃部から出射された電子ビームが通過する電子通路を含む本体部と、を有する電子出射部と、ターゲットユニットを移動させる移動機構と、を備えるX線発生装置であって、本体部の電子通路の出射端部において電子通路を包囲するように、ターゲットユニットと出射端部との間に配置された気密封止部材と、気密封止部材の外側に配置され、出射端部に対するターゲットユニットの姿勢を保持する姿勢保持部材と、を備え、ターゲットユニットと移動機構とが電気的に絶縁されていることを特徴とする。
【0008】
このX線発生装置では、ターゲットユニットと出射端部との間に気密封止部材が配置され、この気密封止部材の外側に、出射端部に対するターゲットユニットの姿勢を保持する姿勢保持部材が配置されている。これにより、X線発生装置では、ターゲットと出射端部との気密状態が気密封止部材により確保され、更に、姿勢保持部材によりターゲットユニットの姿勢が保持されているため、ターゲットユニットが移動機構に移動されるときに傾いたりすることが抑制され、気密封止部材による装置内部の気密状態が保持される。したがって、気密状態を保持したままでの移動機構によるターゲットの位置調整を確実に行うことができる。また、ターゲットユニットと移動機構とが電気的に絶縁されている。これにより、ターゲットユニットに入射した電子ビームに関する情報、例えばターゲットの吸収電子量を検出する際に、移動機構からの電気的な影響がターゲットユニットに与えられることを抑制できる。したがって、ターゲットユニットに入射した電子ビームに関する情報を正確に把握することができるため、安定した動作制御を行うことができる。
【0009】
一実施形態においては、ターゲットユニットと移動機構との間に第1の絶縁部材が配置されていてもよい。この構成により、X線発生装置では、ターゲットユニットと移動機構との電気的な絶縁をより確実に行うことができる。
【0010】
一実施形態においては、姿勢保持部材は、本体部に固定される固定部と、固定部と一体に設けられ、ターゲットユニットを出射端部側に押圧する押圧部と、固定部と押圧部とを連結する連結部と、を備え、連結部がターゲットユニットと離間して配置されていてもよい。このような構成により、X線発生装置では、ターゲットユニット(ターゲット部)が姿勢を保持した状態で移動可能とされている。
【0011】
一実施形態においては、ターゲットユニットは、連結部が挿通される挿通孔を有し、連結部と挿通孔とが所定の間隔を有して離間していてもよい。この構成により、X線発生装置では、ターゲットユニット(ターゲット部)が姿勢を保持した状態で移動可能とされている。
【0012】
一実施形態においては、ターゲットユニットは、姿勢保持部材の押圧部を収容する収容部を有していてもよい。この構成により、X線発生装置では、ターゲットユニットから押圧部が突出しないため、ターゲットユニット(ターゲット部)を被照射物に近接させることができる。
【0013】
一実施形態においては、気密封止部材は、絶縁性樹脂からなり、姿勢保持部材とターゲットユニット及び本体部との間の少なくとも一方に第2の絶縁部材が設けられていてもよい。その際、第2の絶縁部材は、姿勢保持部材とターゲットユニットとの間に配置されていてもよいし、姿勢保持部材と本体部との間に配置されていてもよいし、固定部、押圧部及び連結部の少なくとも一つが第2の絶縁部材からなっていてもよい。この構成により、X線発生装置では、ターゲットユニットと本体部とを電気的に絶縁できるため、ターゲットユニットに対して本体部が電気的な影響を与えることを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、気密状態を保持したままでのターゲットユニットの位置調整を確実に行うことができると共に、安定した動作制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係るX線発生装置を示す概略構成図である。
図2】ターゲットユニットを示す図である。
図3図2におけるIII−IIIでの断面構成を示す図である。
図4】第2実施形態に係るX線発生装置のターゲットユニットを示す図である。
図5図4におけるV−V線での断面構成を示す図である。
図6】第3実施形態に係るX線発生装置の断面構成を示す図である。
図7】第4実施形態に係るX線発生装置のターゲットユニットを示す図である。
図8図7におけるVIII−VIII線での断面構成を示す図である。
図9】他の形態に係るX線発生装置の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
[第1実施形態]
図1を参照して、本実施形態に係るX線発生装置の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係るX線発生装置を示す概略構成図である。
【0018】
X線発生装置1は、開放型であり、使い捨てに供される密封型と異なり、真空状態を任意に作り出すことができ、ターゲットTや電子銃部3のカソード等の交換を可能にしている。X線発生装置1は、動作時に真空状態になり、導電性材料、例えばステンレスからなる円筒形状の筒状部(本体部)5を有している。X線発生装置1では、電子銃部3及び電子銃部3を内部に収容する筒状部5等が電子出射部2を構成している。
【0019】
筒状部5は、下側に位置する電子銃収容部5aと上側に位置するターゲット保持部5bとからなり、ターゲット保持部5bはヒンジ(不図示)を介して電子銃収容部5aに取り付けられている。従って、ターゲット保持部5bが、ヒンジを介して横倒しになるように回動することで、電子銃収容部5aの上部を開放させることができ、電子銃収容部5a内に収容されている電子銃部3(カソード)へのアクセスを可能にする。
【0020】
ターゲット保持部5b内には、集束レンズとして機能する筒状のコイル部7と、偏向コイルとして機能する筒状のコイル部9が設けられると共に、コイル部7,9の中心を通るよう、筒状部5の長手方向に電子通路11が延在している。電子通路11は、コイル部7,9で包囲される。ターゲット保持部5bの下端には、ディスク板13が蓋をするように固定され、ディスク板13の中心には、電子通路11の下端側に一致させる電子導入孔13aが形成されている。
【0021】
ターゲット保持部5bの上端部は、円錐台に形成されており、出射端部6となっている。出射端部6の上端面6aは、平坦面とされている。出射端部6と対向し且つ電子通路11の上端側には、X線出射窓を形成する透過型のターゲットTを含むターゲットユニットTUが配置されている。
【0022】
電子銃収容部5aには真空ポンプ17が固定されている。真空ポンプ17は、筒状部5内を高真空状態にするためのものである。
【0023】
筒状部5の基端側には、電子銃部3との一体化が図られたモールド電源部19が固定されている。モールド電源部19は、電気絶縁性の樹脂(例えば、エポキシ樹脂)でモールド成形させたものであると共に、金属製のケース内に収容されている。
【0024】
モールド電源部19内には、高電圧(例えば、−数十kV以下)を発生させるようなトランスを構成させた高圧発生部(不図示)が封入されている。モールド電源部19は、下側に位置して直方体形状をなすブロック状の電源本体部19aと、電源本体部19aから上方に向けて電子銃収容部5a内に突出する円柱状のネック部19bとからなる。高圧発生部は、電源本体部19a内に電気絶縁性の樹脂によって封入されている。ネック部19bの先端部には、電子通路11を挟むように、ターゲットTに対峙させるよう配置させた電子銃部3が装着されている。モールド電源部19の電源本体部19a内には、高圧発生部に電気的に接続させた電子放出制御部(不図示)が封入されている。電子放出制御部は、電子銃部3に接続されており、電子の放出のタイミングや管電流などを制御している。
【0025】
図2は、ターゲットユニットを示す図である。図3は、図2におけるIII−III線での断面構成を示す図である。なお、以降の説明においては、上方をX線出射側とし、下方を電子入射側とする。
【0026】
図2及び図3に示すように、ターゲットユニットTUは、ターゲットTと、支持部25と、を備え、ターゲット駆動部37に保持されている。ターゲットTは、図3に示すように、基板21と、基板21に埋設されているターゲット部23と、を有しており、X線出射窓を兼ねた透過型ターゲットとなっている。ターゲット部23は、電子の入射によりX線を発生する材料からなる。基板21は、電子入射によるX線の発生が少なく、X線透過性及び放熱性に優れた電気的な絶縁材料、例えばダイヤモンドからなる平板状部材である。基板21は、互いに対向する第1及び第2主面21a,21bを有しており、第1主面21aが電子入射側(下側)の面、第2主面21bがX線出射側(上側)の面となるよう配置されている。基板21の直径は、例えば3mm程度に設定されている。基板21の厚みは、例えば300μm程度に設定されている。
【0027】
ターゲット部23は、基板21の第1主面21a側に位置している。ターゲット部23は、基板21の第1主面21aの略中央部に形成され、第1及び第2主面21a,21bの対向方向に延びる孔部、より具体的には有底状の孔部に埋設されている。ターゲット部23は、基板21とは異なる材料からなる金属(例えば、タングステン、金、白金等)によって円柱状に形成されており、ナノメートルサイズ(例えば、外径が500nm程度)とされている。本実施形態では、ターゲット部23の金属として、タングステンを採用している。ターゲット部23の長さ(厚さ)は、例えば1μm程度に設定されている。ターゲット部23は、第1主面21a側の端面である電子入射面が電子銃部3と対向するように配置されている。つまり、ターゲットTにおいては、第1主面21a側に電子ビームEBが入射し、第2主面21b側から発生したX線が取り出されるため、第1主面21aが電子入射側面であり、第2主面21bがX線出射側面となる。また、図面ではターゲット部23は1つのみであるが、同様の構造のターゲット部23を複数備えていてもよい。
【0028】
ターゲットTは、支持部25に支持されている。支持部25は、基板21とは異なる導電性の材料からなり、例えば、オーステナイト系ステンレス、銅合金、Ti、Mo等の金属材料によって円盤状に形成されている。本実施形態では、支持部25にオーステナイト系ステンレスを採用している。支持部25は、基板21を保持する保持部26と、ねじ(姿勢保持部材)27が配置される固定孔28と、を有している。支持部25は、ねじ27により、筒状部5の出射端部6に固定される。なお、ターゲットTは、支持部25に対して気密かつ着脱不可に固定されているので、ターゲットTの交換の際は支持部25ごと交換される。
【0029】
保持部26は、支持部25の略中央部に配置されている。保持部26は、配置部29と、入射孔30と、を有している。配置部29は、支持部25の上面25a側から見て略円形形状を呈している。配置部29は、断面が凹形状の段差部を呈しており、側部29aと、側部29aの下部から内側に張り出す張出部29bとにより、基板21の収容空間を画成している。側部29aの内径は、基板21の外径と略同等とされている。
【0030】
張出部29bは、基板21の外縁部が配置される。張出部29bは、基板21が配置されたときに、支持部25の上面25aと基板21の第1主面21aとが略面一となるように、支持部25の上面25aから基板21の厚み分(例えば300μm)だけ下った位置に配置されている。
【0031】
入射孔30は、保持部26(配置部29)の略中央部に配置されており、配置部29の張出部29bにより画成される貫通孔である。入射孔30は、略円形形状を呈しており、電子ビームEBが入射する。入射孔30の内径は、基板21の外径よりも小さい。
【0032】
図2に示すように、固定孔28は、保持部26の外側に複数(ここでは4つ)配置されている。固定孔28は、保持部26を挟んだ位置に対向して配置されており、一対の固定孔28の対向方向は、互いに略直交している。固定孔28は、ねじ27の頭部27aが収容される収容部31と、ねじ27の軸部27bが挿通される挿通孔32と、を有している。ねじ27の一端側(上側)に設けられた頭部27aは、支持部25を出射端部6側に押圧する押圧部を構成し、ねじ27の軸部27bは、ねじ27の他端側(下側)であって出射端部6に固定される固定部、及び、押圧部と固定部とを連結する中間領域である連結部を構成している。なお、押圧部を構成する頭部27aの外径は、固定部と連結部を構成する軸部27bの外径よりも大きい。
【0033】
収容部31は、支持部25の上面25a側から見て略円形形状を呈している。収容部31は、断面が凹形状の段差部を呈しており、側部31aと、側部31aの下部から内側に張り出す張出部31bとにより、ねじ27の頭部27aを収容する空間を画成している。側部31aの内径は、ねじ27の頭部27aの外形よりも大きい。すなわち、側部31aの内径は、収容部31にねじ27の頭部27aが収容されたときに、側部31aと頭部27aとが離間して隙間(空隙)が形成されるように、頭部27aの外形よりも大きくされている。
【0034】
張出部31bは、ワッシャー(第2の絶縁部材)33を介してねじ27の頭部27aが配置される。ワッシャー33は、絶縁材料(例えば、有機樹脂素材、セラミックス等)によって円環状に形成されている。本実施形態では、ワッシャー33に有機樹脂素材を採用している。ワッシャー33の外径は、側部31aの内径と略等しい。ワッシャー33の略中央に配置された貫通孔である挿通孔33aの内径D1は、ねじ27の頭部27aの外径よりも小さく、挿通孔33aに挿通されるねじ27の軸部27bの外径D2よりも大きい(D1>D2)。すなわち、ワッシャー33の挿通孔33aとねじ27の軸部27bとは、所定の間隔を有して離間して配置され、軸部27bは、挿通孔33a内で移動可能とされている。
【0035】
張出部31bは、ワッシャー33を介してねじ27が固定されたときに、支持部25の上面25aよりも頭部27aが突出しないように、支持部25の上面25aから頭部27a及びワッシャー33の厚み分以上下った位置に配置されている。
【0036】
挿通孔32は、収容部31の略中央部に配置されており、収容部31の張出部31bにより画成される貫通孔である。挿通孔32は、略円形形状を呈しており、収容部31の張出部31b上にワッシャー33が載置されることでワッシャー33の挿通孔33aと連通する。そして、挿通孔32及び挿通孔33aにねじ27の軸部27bが挿通される。挿通孔32の内径D3は、軸部27bの外径D2よりも大きい(D3>D2)。すなわち、挿通孔32とねじ27の軸部27bとは、所定の間隔を有して離間して配置され、軸部27bは、挿通孔32内で移動可能とされている。
【0037】
支持部25は、Oリング(気密封止部材)35を介して、ねじ27により筒状部5の出射端部6に押圧されて保持されている。ねじ27の軸部27bは、出射端部6のねじ孔6bに螺合される。出射端部6に保持される支持部25では、ねじ27の軸部27bが挿通される挿通孔32の内径D3及びワッシャー33の挿通孔33aの内径D1は、軸部27bの外径D2よりも大きい。つまり、軸部27bと挿通孔32及び挿通孔33aとの間には、それぞれ径方向に最大で(D3−D2),(D1−D2)に相当する所定の離間空間を有する。一方で、挿通孔32の内径D3は、挿通孔33aの内径D1よりも大きい(D1<D3)。これにより、軸部27bが挿通孔33a内を移動した際にも、軸部27bが挿通孔32と接触することを抑制している。つまり、本実施形態においては、D2<D1<D3という関係を満たしている。これにより、支持部25は、出射端部6に保持された状態で、(D1−D2)を最大値として、径方向に、より詳細には電子銃部3の電子の出射方向と直交するX軸方向、並びに電子の出射方向及びX軸方向と直交するY軸方向に移動可能に設けられている。なお、ねじ27の頭部27aは、支持部25が移動した際であっても、収容部31の側部31aと接触しないように、離間関係を保つことができるような大きさ及び配置とされている。
【0038】
Oリング35は、支持部25と出射端部6との間で、且つ、ねじ27が配置される位置の内側(電子通路11側)に配置されている。なお、Oリング35は、支持部25もしくは出射端部6に設けられた溝部に、少なくともその一部が収容されていてもよい。Oリング35は、柔軟性(変形性)を有する絶縁性樹脂(例えばゴム)からなり、円環状をなしている。Oリング35は、支持部25の下面25bと出射端部6の上端面6aとの間に位置し、電子通路11の出射孔11aを包囲している。Oリング35は、ねじ27による押圧、及び真空ポンプ17により筒状部5内が高真空状態とされたときの負圧による作用により、支持部25と出射端部6との間で挟持され、支持部25(ターゲットユニットTU)と出射端部6との気密を保持する。さらに、Oリング35は、柔軟性(変形性)を有する樹脂からなるため、支持部25を出射端部6に対して移動させる際にも、両者の間の気密を保持しながら、その移動に追従することができる。換言すれば、支持部25の移動可能な範囲は、ねじ27の軸部27bと挿通孔32及び挿通孔33aとの間の離間空間の大きさと、Oリング35の追従性によって決定される。
【0039】
支持部25は、ターゲット駆動部37に保持されている。ターゲット駆動部37は、例えばオーステナイト系ステンレス、銅合金、Ti等によって略矩形形状に形成された金属材料からなる板状部材であり、強度や精度といった構造的安定性に優れている。本実施形態では、ターゲット駆動部37にオーステナイト系ステンレスを採用している。ターゲット駆動部37は、貫通孔37aを有している。貫通孔37aは、略円形形状を呈しており、ターゲット駆動部37の一端側(図2では左側)寄りに配置されている。貫通孔37aの内径は、支持部25の外径と略同等とされている。ターゲット駆動部37は、貫通孔37aに支持部25を嵌め込むことで、支持部25を保持している。なお、別途の固定構造を用いてターゲット駆動部37に支持部25を保持してもよい。
【0040】
X線発生装置1は、移動機構としてのXYステージ38を備えている。XYステージ38は、X軸方向及びY軸方向に、ターゲット駆動部37ごとターゲットユニットTU(ターゲットT)を移動させる。つまり、ターゲットT(ターゲット部23)の位置は、XYステージ38により調整することが可能となる。図1に示すように、XYステージ38は、固定部Fにより筒状部5に固定されている。
【0041】
ターゲットユニットTUを保持するターゲット駆動部37は、XYステージ38に対して、間に絶縁スペーサ39(第1の絶縁部材)を介して固定されている。絶縁スペーサ39は、ターゲット駆動部37の下面37SとXYステージ38の上面との間に挟まれている。絶縁スペーサ39により、XYステージ38と、ターゲット駆動部37及びターゲットユニットTU(ターゲットT)とが電気的に絶縁されている。絶縁スペーサ39は、例えば有機樹脂素材、セラミックス等である。本実施形態では、絶縁スペーサ39に有機樹脂素材を採用している。絶縁スペーサ39により、支持部25とXYステージ38とは、互いに独立して接地されている。
【0042】
このように、ねじ27は、その一端側が支持部25(ターゲットユニットTU)を出射端部6(筒状部5)に押圧し、他端側が出射端部6(筒状部5)に固定される。さらに、軸部27bは、支持部25に設けられた挿通孔32及びワッシャー33に設けられた挿通孔33aを挿通すると共に、軸部27bと挿通孔32及び挿通孔33aとの間に、その径の違いに応じた所定の離間空間を有する。そのため、支持部25(ターゲットユニットTU)を出射端部6(筒状部5)に固定しつつ、当該離間空間の分、支持部25(ターゲットユニットTU)を出射端部6(筒状部5)に対して移動することができる。
【0043】
さらに、移動に際しては、ねじ27によって支持部25(ターゲットユニットTU)の移動姿勢を安定に保持すると共に、Oリング35が備える柔軟性(変形性)によって、支持部25(ターゲットユニットTU)の移動に対して追従することが出来るので、支持部25(ターゲットユニットTU)と出射端部6(筒状部5)の間の気密を安定に保持することができる。よって、装置内部の気密状態を保持したままでXYステージ38によるターゲットT(ターゲット部23)の位置調整を確実に行うことができる。
【0044】
一方、ねじ27は、その頭部27aがワッシャー33を介して支持部25の収容部31に収容されると共に、その軸部27bが挿通孔32とは所定の離間空間を有するため接触しない。このように、ねじ27は、支持部25とは非接触状態に保たれることで、ねじ27と支持部25とは電気的に切断されている。つまり、支持部25(ターゲットユニットTU)と出射端部6(筒状部5)とが、ねじ27を介して電気的に接続されることが抑制されている。さらに、支持部25(ターゲットユニットTU)と出射端部6(筒状部5)との間は絶縁性樹脂からなるOリング35を介しているため、同じく電気的に切断されている。そして、支持部25(ターゲットユニットTU)は、XYステージ38に対して、絶縁スペーサ39を間に介して固定されているために、XYステージ38とも電気的に切断されている。
【0045】
このように、支持部25(ターゲットユニットTU)は出射端部6(筒状部5)及びXYステージ38と電気的に切断されているので、ターゲットTに入射した電子ビームに関する情報、例えば吸収電流を検出する際に、出射端部6(筒状部5)やXYステージ38からの電気的な影響がターゲットT(ターゲットユニットTU)に与えられることを抑制できる。したがって、ターゲットT(ターゲットユニットTU)に入射した電子ビームに関する情報を正確に把握することができるため、安定した動作制御を行うことができる。
【0046】
図1に戻って、X線発生装置1は、反射電子検出器としての反射電子検出器40と、吸収電子検出部としての吸収電流検出器41と、制御部としてのコントローラ42と、を備えている。反射電子検出器40は、図示しない経路を介して、又は電子通路11中における、ターゲットTに向かう電子ビームEBに対して互いに影響を受けないような位置に、ターゲット部23を臨むようにターゲット保持部5bの上端側に配置されており、ターゲットT(ターゲット部23)で反射された電子(反射電子)を検出する。
【0047】
吸収電流検出器41は、支持部25に接続されており、ターゲットTで吸収された電子(吸収電子)の電子量を検出する。なお、反射電子検出器としての反射電子検出器40と、吸収電子検出部としての吸収電流検出器41とは必ずしも両方を備える必要は無く、いずれか一方のみを備えていてもよい。また、制御部としては、単一のコントローラ42でX線発生装置1に関する制御を行ってもよいし、複数のコントローラ42を備え、それらの協働によってX線発生装置1に関する制御を行ってもよい。
【0048】
コントローラ42は、X線発生装置1に関する各種の制御を行い、例えばモールド電源部19の高圧発生部及び電子放出制御部を制御する。これにより、電子銃部3とターゲットT(ターゲット部23)との間に所定の電流・電圧が印加され、電子銃部3から電子ビームEBが出射する。電子銃部3から出射された電子ビームEBは、コントローラ42により制御されたコイル部7にて適切に集束されて、ターゲットT(ターゲット部23)に入射する。このとき、ターゲットTに垂直な方向(電子入射方向)から見て、電子ビームEBのターゲットT上での照射野内にターゲット部23が含まれるように、例えば電子ビームEBのターゲットT上での照射野の径は、ターゲット部23の径よりも大きくされる。ターゲット部23に電子ビームEBが入射すると、ターゲット部23からX線XRが放射され、このX線XRは、基板21を透過して外部に出射される。
【0049】
また、コントローラ42は、反射電子検出器40が検出する反射電子の強度、及び、吸収電流検出器41が検出する吸収電子量をリアルタイムに監視し、ターゲットTからの反射電子の強度、及び、ターゲットTにおける吸収電子量と、ターゲットTにおいて設定された位置情報に基づいて、コイル部9を制御する。このとき、コイル部9は、電子銃部3からの電子ビームEBを、電子ビームEBの照射野がターゲットT上で二次元的に走査するように偏向する。
【0050】
電子ビームEBを物質に照射した時、物質の原子番号に依存する量の反射電子が放出される(原子番号が大きいほど、多くの反射電子を放出する)。本実施形態では、ダイヤモンドからなる基板21中にタングステンからなるターゲット部23を埋設しているので、より多くの反射電子を検出した場所をターゲット部23と判定することができる。そこで、コントローラ42は、例えば、より多くの反射電子を得られるように電子ビームEBの偏向を制御する。
【0051】
一方で、電子ビームEBを物質に照射した時には、物質の原子番号に依存する量の電子の吸収も生じる。すなわち、原子番号が大きいほどターゲット電流値は小さく、原子番号が小さいほどターゲット電流値は大きい。本実施形態では、ダイヤモンドからなる基板21に、タングステンからなるターゲット部23を埋設しているので、ターゲット電流値が小さい場所をターゲット部23と判定することができる。そこで、コントローラ42は、ターゲット電流値がより小さくなるように電子ビームEBの偏向を制御する。このように、反射電子検出器40や吸収電流検出器41を用いて、ターゲットT(基板21)上において配置された微小なターゲット部23の位置を特定することができる。
【0052】
コントローラ42は、XYステージ38を制御する。コントローラ42は、電子ビームEBの走査範囲内でターゲット部23を検出できない場合には、XYステージ38を駆動させ、ターゲットTを移動させる。つまり、電子ビームEBのターゲット上への入射領域をさらに大きく移動させたい場合には、コントローラ42の制御に基づき、XYステージ38によってターゲット部23自体をターゲット保持部5bに対して移動させる。このように、コイル部9による電子ビームEBの偏向と、XYステージ38によるターゲット部23自体の移動とを組み合わせることで、よりターゲット部23をより広範囲に活用することができる。
【0053】
続いて、X線発生装置1の動作について説明する。まず、X線発生装置1は、電子銃部3、コイル部7及びコイル部9を制御し、電子ビームEBをターゲットTに入射させる。X線発生装置1は、電子ビームEBをターゲットTに入射させると、例えば反射電子検出器40により検出される反射電子の強度、及び、吸収電流検出器41により検出される吸収電子量に基づいて、ターゲット部23を検索する。X線発生装置1は、電子ビームEBの走査範囲内にターゲット部23が存在していない場合には、XYステージ38を制御し、ターゲットTを移動させる。X線発生装置1は、ターゲットTを移動させた後、上記の方法で再度ターゲット部23を検索する。そして、ターゲット部23の位置を特定できるまで当該動作を繰り返した後、特定したターゲット部23に電子ビームEBを入射させる。
【0054】
なお、X線発生装置1は、ターゲットTにおいて複数のターゲット部23が配置されている場合、一のターゲット部23が劣化した場合には、XYステージ38を制御し、上記の方法により他のターゲット部23を検出して、このターゲット部23に電子ビームEBを入射させる。また、X線発生装置1は、電子ビームEB形状の悪い周辺部にターゲット部23がある場合には、XYステージ38を制御し、電子ビームEBの中心付近にターゲット部23が位置するように、ターゲットTを移動させる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態のX線発生装置1では、支持部25がねじ27により筒状部5の出射端部6にOリング35を介して保持されている。これにより、X線発生装置1では、XYステージ38によりターゲットTを移動させたときにも、ターゲットTの姿勢を保持できる。したがって、X線発生装置1では、ターゲットTをXYステージ38により移動させときに、ターゲットTが傾いたりすることを抑制でき、出射端部6に対するターゲットTの姿勢を維持できる。これにより、X線発生装置1では、ターゲットTと筒状部5との気密状態(真空状態)を保持できる。その結果、X線発生装置1では、気密状態を保持したままでのXYステージ38によるターゲットTの位置調整を確実に行う。
【0056】
また、本実施形態では、XYステージ38とターゲット駆動部37とが絶縁スペーサ39により電気的に絶縁されている。これにより、X線発生装置1では、XYステージ38の電気的な影響をターゲットTが受けないので、ターゲットTに入射した電子ビームEBに関する情報、例えばターゲットTにおける反射電子量や吸収電子量を正確に検出することができる。これにより、X線発生装置1では、ターゲットTに入射した電子ビームEBに関する情報を正確に把握することができるため、安定した動作制御を行うことができると共に、ターゲット部23の位置の特定を精度良く行うことができる。
【0057】
本実施形態では、支持部25と出射端部6との間に絶縁性樹脂からなるOリング35が配置されていると共に、ねじ27が絶縁材料からなるワッシャー33を介して収容部31に配置されている。これにより、X線発生装置1では、筒状部5の電気的な影響がターゲットユニットTU(ターゲットT)に及ぶことを抑制できる。
【0058】
本実施形態では、ねじ27の頭部27aは、支持部25の固定孔28の収容部31内に収容されている。これにより、X線発生装置1では、ねじ27の頭部27aが支持部25の上面25aから突出しない。そのため、X線発生装置1では、ターゲットTを被照射物に近接して配置できる。
【0059】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態について説明する。図4は、第2実施形態に係るX線発生装置のターゲットユニットを示す図である。図5は、図4におけるV−V線での断面構成を示す図である。
【0060】
図4及び図5に示すように、ターゲットユニットTU1は、ターゲットTと、支持部25と、照射窓部48と、を備えている。
【0061】
支持部25は、基板21及び照射窓部48を保持する保持部26と、ねじ27が配置される固定孔28と、有している。ねじ27の軸部27bは、支持部25の収容部31の略中央部に配置された挿通孔32及びワッシャー33の略中央に配置された挿通孔33aに挿通されている。軸部27bの外径D2は、挿通孔32の内径D3よりも小さく、ワッシャー33の挿通孔33aの内径D1と略等しい。一方、ワッシャー33の外径D4は、挿通孔32の内径D3よりも大きく、ねじ27の頭部27aが収容される収容部31の内径D5よりも小さい(D3<D4<D5)。これにより、ワッシャー33の外縁部と収容部31の側部31aとが、所定の間隔を有して離間して配置され、ねじ27がワッシャー33と一体になって、収容部31内で移動可能とされる。
【0062】
ねじ27の頭部27aは、ワッシャー33の外径D4よりもよりも小さく、支持部25が移動した際であっても、収容部31の側部31aと接触しないように、離間関係を保つことができるような大きさ及び配置とされている。さらに、収容部31とワッシャー33Aとの間、及び軸部27bと挿通孔32との間には、それぞれ径方向に最大で(D5−D4),(D3−D2)に相当する所定の離間空間を有し、軸部27bと挿通孔32との間の離間空間は、収容部31とワッシャー33との間の離間空間よりも大きい。これにより、ねじ27が収容部31内で移動した際にも、絶縁部材であるワッシャー33が先に収容部31の側部31aに当たるために、軸部27bが挿通孔32と接触することがない。よって、支持部25は、出射端部6に保持された状態で、ねじ27と支持部25との電気的絶縁を保ちつつ、(D5−D4)を最大値として、径方向に、より詳細には電子銃部3の電子の出射方向と直交するX軸方向、並びに電子の出射方向及びX軸方向と直交するY軸方向に移動可能に設けられている。
【0063】
保持部26は、配置部29と、保持孔30aと、を有している。配置部29には、照射窓部48が配置されている。照射窓部48は、例えばダイヤモンド、Be、Al等により円盤状に形成されている。
【0064】
保持孔30aには、基板21が保持されている。保持孔30aの内径は、基板21の外径と略同等されている。基板21は、保持孔30aに嵌め込まれて保持孔30aに保持されている。
【0065】
本実施形態では、支持部25に照射窓部48が配置されており、X線出射窓がターゲットTと照射窓部48の2つの部材によって構成されている。そのため、ターゲットユニットTU1では、照射窓部48とターゲットTとでX線出射窓としての役割を分担させることができる。例えば照射窓部48においては確実な真空封止能を、ターゲットTにおいてはより高い放熱性を持たせることで、真空封止能と放熱性に優れたX線出射窓を実現することができる。
【0066】
[第3実施形態]
続いて、第3実施形態について説明する。図6は、第3実施形態に係るX線発生装置の断面構成を示す図である。
【0067】
図6に示すように、ターゲットユニットTU2は、基板21と、支持部25と、ターゲット駆動部37と、を備えている。支持部25における固定孔28の挿通孔32の内径は、ねじ27の軸部27bの外径D2と略同等とされている。
【0068】
ねじ27は、ワッシャー(第2の絶縁部材)33Aを介してナットNにより出射端部6Aに固定されている。出射端部6Aには、貫通孔である端部孔6cが設けられている。端部孔6cの内径D6は、ねじ27の軸部27bの外径D2よりも大きい(D6>D2)。すなわち、ねじ27の軸部27bと端部孔6cとは、所定の間隔を有して離間している。これにより、ねじ27の軸部27bは、端部孔6c内で移動可能とされている。
【0069】
ワッシャー33Aの外径は、端部孔6cの内径D6よりも大きく、ねじ27の軸部27bが挿通するワッシャー33Aの挿通孔の内径は、ねじ27の軸部27bの外径D2と略等しい。そして、筒状部5内の高真空を保持するために、ワッシャー33Aの外径は、ねじ27の移動を考慮して端部孔6cの内径D6よりも十分に大きく、かつ、ワッシャー33Aの挿通孔はねじ27の軸部27bと気密に結合しているのが好ましい。ワッシャー33Aは、絶縁材料(例えば、有機樹脂素材、セラミックス等)によって円環状に形成されている。ワッシャー33Aにより、ねじ27(支持部25)と出射端部6Aとが絶縁されている。ねじ27の軸部27bは、端部孔6cに挿通され、出射端部6Aの内側(真空側)に突出している。ねじ27は、出射端部6Aの内側に突出した部分にワッシャー33Aが挿通されて、ナットNが螺合されている。これにより、支持部25が出射端部6Aに保持されると共に、ねじ27が支持部25を出射端部6A側に押圧する。
【0070】
[第4実施形態]
続いて、第4実施形態について説明する。図7は、第4実施形態に係るX線発生装置のターゲットユニットを示す図である。図8は、図7におけるVIII−VIII線での断面構成を示す図である。
【0071】
図7及び図8に示すように、ターゲットユニットTU3は、ターゲットTと、ターゲットTを支持するとともに、XYステージ38に固定されたターゲット駆動部(支持部)37Aと、を備えている。
【0072】
ターゲット駆動部37Aは、基板21を保持する保持部50と、ねじ27が配置される固定孔54と、を有している。
【0073】
保持部50は、配置部51と、入射孔52と、を有している。配置部51は、ターゲット駆動部37Aの上面37Aa側から見て略円形形状を呈している。配置部51は、断面が凹形状の段差部を呈しており、側部51aと、側部51aの下部から内側に張り出す張出部51bとにより、基板21の収容空間を画成している。側部51aの内径は、基板21の外径と略同等とされている。
【0074】
張出部51bは、基板21の外縁部が配置される。張出部51bは、基板21が配置されたときに、ターゲット駆動部37Aの上面37Aaと基板21の第1主面21aとが略面一となるように、ターゲット駆動部37Aの上面37Aaから基板21の厚み分だけ下った位置に配置されている。
【0075】
入射孔52は、保持部50(配置部51)の略中央部に配置されており、配置部51の張出部51bにより画成される貫通孔である。入射孔52は、略円形形状を呈しており、電子ビームEBが入射する。入射孔52の内径は、基板21の外径よりも小さい。
【0076】
固定孔54は、保持部50の外側に複数(ここでは4つ)配置されている。固定孔54は、保持部50を挟んだ位置に対向して配置されており、一対の固定孔54の対向方向は、互いに略直交している。固定孔54は、ねじ27の頭部27aが収容される収容部55と、ねじ27の軸部27bが挿通される挿通孔56と、を有している。
【0077】
収容部55は、ターゲット駆動部37Aの上面37Aa側から見て略円形形状を呈している。収容部55は、断面が凹形状の段差部を呈しており、側部55aと、側部55aの下部から内側に張り出す張出部55bとにより、ねじ27の頭部27aを収容する空間を画成している。側部55aの内径は、ねじ27の頭部27aの外形よりも大きい。すなわち、側部55aの内径は、収容部55にねじ27の頭部27aが収容されたときに、側部55aと頭部27aとが離間して隙間(空隙)が形成されるように、頭部27aの外形よりも大きくされている。
【0078】
張出部55bは、突状部材57(第2の絶縁部材)を介してねじ27の頭部27aが配置される。張出部55bは、突状部材57を介してねじ27が固定されたときに、ターゲット駆動部37Aの上面37Aaよりも頭部27aが突出しないように、ターゲット駆動部37Aの上面37Aaから頭部27a及び突状部材57の厚み分以上下った位置に配置されている。
【0079】
挿通孔56は、収容部55の略中央部に配置されており、収容部55の張出部55bより画成される貫通孔である。挿通孔56は、略円形形状を呈しており、ねじ27の軸部27bが挿通される。
【0080】
突状部材57は絶縁材料(例えば、有機樹脂素材、セラミックス等)によって形成されており、張出部55b上に配置され、頭部27aと張出部55bに挟まれて配置される環状部58aと、挿通孔56内に突出する突出部58bとを有する。突出部58b(突状部材57の挿通孔57a)の内径D7は、軸部27bの外径D2よりも大きい(D7>D2)。すなわち、突出部58b(突状部材57)とねじ27の軸部27bとは、所定の間隔を有して離間して配置され、軸部27bは、突出部58b(挿通孔57a)内で移動可能とされている。
【0081】
また、ねじ27の頭部27aは、ターゲット駆動部37A(ターゲットユニットTU3)が移動した際であっても、収容部55の側部55aと接触しないように、離間関係を保つことができるような大きさとされている。そして、ねじ27は突状部材57によって、頭部27aにおいても軸部27bにおいてもターゲット駆動部37A(ターゲットユニットTU3)と接触することが抑制された状態で、軸部27bと突出部58b(挿通孔57a)との間に、径方向に最大で(D7−D2)に相当する所定の離間空間を有している。よって、ターゲット駆動部37A(ターゲットユニットTU3)は、出射端部6に保持された状態で、ねじ27とターゲット駆動部37A(ターゲットユニットTU3)との電気的絶縁を保ちつつ、(D7−D2)を最大値として、径方向に、より詳細には電子銃部3の電子の出射方向と直交するX軸方向、並びに電子の出射方向及びX軸方向と直交するY軸方向に移動可能に設けられている。
【0082】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。図9は、他の形態に係るX線発生装置の断面構成を示す図である。図9に示すように、XYステージ38と固定部Fとの間に絶縁スペーサ39が配置されてもよいし、絶縁材料からなるワッシャー33に代わって、収容部31及び挿通孔32の壁面上に絶縁材料からなる絶縁膜61(第2の絶縁部材)を形成したり、絶縁膜61に代わって、ねじ27と対向する側の表面が絶縁材料からなるシール材を貼り付けたりしてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、絶縁部材からなるワッシャー33により、ターゲットユニットTUと筒状部5とを電気的に絶縁しているが、頭部27a(押圧部)及び軸部27b(連結部、固定部)の少なくとも一つが絶縁部材からなるねじ(第2の絶縁部材)を用いて、ターゲットユニットTUと筒状部5とを電気的に絶縁してもよく、各実施例構造を組み合わせた複合構造でもよい。また、ターゲット駆動部37を絶縁材料により形成(第1の絶縁部材)することで、ターゲットユニットTUとXYステージ38とを絶縁してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…X線発生装置、2…電子出射部、3…電子銃部、5…筒状部(本体部)、6…出射端部、11…電子通路、21…基板、23…ターゲット部、25…支持部、27…ねじ(姿勢保持部材)、27a…頭部(押圧部)、27b…軸部(連結部、固定部)、31,55…収容部、33,33A…ワッシャー(第2の絶縁部材)、35…Oリング(気密封止部材)、37,37A…ターゲット駆動部(支持部)、38…XYステージ(移動機構)、39…絶縁スペーサ、57…突状部材(第2の絶縁部材)、61…絶縁膜(第2の絶縁部材)、EB…電子ビーム、TU,TU1,TU2,TU3…ターゲットユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9