特許第6193636号(P6193636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193636
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】昇降装置
(51)【国際特許分類】
   B43L 1/04 20060101AFI20170828BHJP
   A47B 97/06 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   B43L1/04 H
   A47B97/06
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-125458(P2013-125458)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2015-503(P2015-503A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】592112798
【氏名又は名称】株式会社シネマ工房
(74)【代理人】
【識別番号】100077470
【弁理士】
【氏名又は名称】玉利 冨二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067116
【弁理士】
【氏名又は名称】立川 登紀雄
(72)【発明者】
【氏名】奥村 惠一
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−208054(JP,A)
【文献】 特開2011−083921(JP,A)
【文献】 実開平05−070078(JP,U)
【文献】 特開2012−101405(JP,A)
【文献】 実開平05−058381(JP,U)
【文献】 実開平07−005789(JP,U)
【文献】 特開2001−113884(JP,A)
【文献】 特開2013−256112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 1/04
H04N 5/64−5/655
B66F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄型映像機器や黒板等のボード体を昇降機構にて昇降させる昇降装置において、
前記昇降機構は、構造物に固定設置するための固定片と一体となった垂直片の2つを横桟材で上下を接続して構成した固定枠と、
この固定枠の垂直片に外向きに取り付けられた、回転軸が水平かつ固定枠の主面に平行なローラと、固定枠の主面に垂直な回転軸を有するローラと、
この固定枠に外嵌装され、前記ローラに当接しながら昇降可能な昇降用溝を有する昇降自在な昇降枠と、
固定枠の両側垂直片にて軸承されて回動自在に設けられた円筒体と、
円筒体を可逆回転させるための何れかの垂直片付近に設置されたモータと、
円筒体の所定位置にて、一方端が円筒体に固定され、途中が昇降枠下辺付近に設けられた動滑車に180°巻回されて他方端が固定枠に固定されたベルト部材と、
前記昇降枠下辺の動滑車の付近に前方の突出して設けられた取付片とからなり、
円筒体の正逆回転によりベルト部材を円筒体表面に巻き取り及び巻き出すことにより、昇降枠の取付片上に下辺を載置して昇降枠に固定された薄型映像機器や黒板等のボード体を、昇降枠と共に昇降動させることを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
上記回転軸が水平かつ黒板の面に平行なローラは複数で、垂直片に直接軸承されており、当該ローラの少なくとも1つ以上が垂直片に対して位置調整して固定可能で、当該複数のローラのうちの一つが昇降用溝の一方側面に当接し、当該の複数ローラのうちの他の一つが昇降用溝の他方側面に当接していることを特徴とする請求項1に記載の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、教室や会議室に設置される昇降装置であって、液晶テレビや液晶モニターなどの薄型映像機器、或いは黒板や白ボードなどのボード体、を昇降させる昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、黒板を上下に昇降させる装置は、手動やモータ等の駆動による自動等各種のものが提案され実用化されているが、それらの殆どが、壁面等の構造物に固定されるいわゆる固定枠に対して、上下方向に昇降動可能な昇降枠を設けて、この昇降枠に黒板を取り付け、昇降枠と共に黒板を昇降させるようになっている。
【0003】
まず、手動のものとしては、昇降に伴う労力の軽減のために、スプリングにより上昇方向の力を加えておき、少ない力で黒板の昇降動を可能とした物がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、自動昇降装置に関しては、壁面に取り付けられる支持枠に、横方向に長く延びる長尺の中空回転体を回転可能に軸支し、該長尺中空回転軸の一端部中空部にモータを収容してモータと一体に長尺中空回転軸が回転するようにしておき、この中空回転軸の巻取ドラムに巻取ベルトの一端部を、他端部を昇降枠に取り付け、昇降枠に設けた上下に延びるガイドロッドを支持枠のガイド孔に通じて昇降動をガイドしているものが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
他に、壁面に固定される固定基枠に対し、黒板等が取り付けられる取付フレームを構成する縦杆を上下に摺動可能に支持する摺動受け部を設けることで、固定基枠に対して取付フレームを上下昇降可能に支持し、更に電動モータにより横方向に軸支された回転ドラムを駆動することで、一方端が回転ドラムに巻き取られており、他方端が取付フレームに固定された長尺シートを、引き出し及び巻き取ることで、固定基枠に対して取付フレームを昇降動させる電動昇降ボードがある(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−137362号公報
【特許文献2】特開2001−113884号公報
【特許文献3】特開2010−208054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のような手動による昇降動を行うものは、スプリング等により労力を軽減できるが、大型で重量のある黒板等に対しては、スプリング等も大型化してしまう。
【0008】
これに対して特許文献2及び3のものは、固定側の枠体に設けた電動モータにより回転する回転体(円筒形状)にベルト等の柔軟な長尺体一端を固定して巻き取り引き出しを行うことで、ベルトの他端を接続した昇降側の枠体を昇降動させるもので、自動化に伴う構造が簡単である。
【0009】
しかしながら、壁面等へ固定した固定側の枠体に対して昇降する昇降側の枠体の保持は、昇降側に設けた上下に延びるガイド部材(特許文献2:ガイドロッド、特許文献3:縦杆)に固定側の保持部(特許文献2:ガイド孔、特許文献3:摺動受け部)で保持して摺動させて昇降可能としており、この部分で摺動抵抗が常に発生し、スムーズな昇降動が得にくい。
【0010】
また、黒板(昇降枠)の昇降可能範囲は、昇降枠の上辺が固定枠の上辺に接触した状態の最下降位置から、昇降枠の下辺が固定枠の下辺に接触した状態の最上昇位置までの範囲となるが、昇降側のガイド部材を固定側の上端と下端の保持部で支えるため、固定側の上端と下端の寸法が小さいと昇降枠の保持が不安定になるので、この距離をあまり小さくできない、すなわち、固定側の枠の上下寸法をあまり小さくできないため、結果として黒板の昇降距離をあまり大きく取れないことになる。
【0011】
更に、自動昇降のためにモータを用いているが、特許文献2や3のもののように、固定枠のモータを固定する部分が、左右の昇降ガイドの存在のために昇降枠の内側に寄り、そのため、固定枠が壁面と固定される部分(固定枠の両側端部)とモータとの設置位置が離れることになる。
【0012】
すると、固定枠自体は剛体であるが、応力を加えると多少の撓み等が生じるため、モータの駆動の際に固定枠と昇降枠の移動に伴う力により撓みや振動によるガタが生じてしまう。
【0013】
また、最近は、テレビやモニター等の映像機器が、旧来のブラウン管に変わって液晶に世代交代し、機器自体がかなり軽量・薄型になり、黒板等と同種の昇降装置にて昇降可能となってきており、黒板に変えて昇降機構付きの薄型映像機器も設置されてきている。
【0014】
しかしながら、映像機器は薄型になったとは言え、まだかなり重量があり、昇降用に駆動するモータも従来のものより強力なものが必要となってしまう。
しかし、現在、昇降用モータは、数多く出る汎用性のものが比較的低コストで調達できるのに対し、重量増に伴う専用モータは高価になるというコスト上の問題があった。
【0015】
また、低コストの汎用モータについては、全て回転速度が比較的速いものばかりであり、あまりに回転速度が速いと、昇降動も早くなり、それに伴う振動等は、映像機器を構成する素子の耐久性等に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0016】
一方、昇降動がゆっくりであると、振動もあまり発生せず映像機器に悪影響を与えないことに加え、映像を映し出したままに昇降動させる演出において、ゆっくりと昇降動させることが可能であると、商品価値が高まることになる。これは黒板等のボード体の昇降装置においても言えることである。
【0017】
この発明は、上記のような課題を解決し、昇降枠に撓みが発生し難い構造により薄型映像機器や黒板等の昇降動に伴う昇降枠のがたつきを防止し、また、モーターに比較的安価な汎用のモータを用いた場合も従来のものより重量のあるものに使用でき、かつ昇降時の速度を抑制し、昇降動に伴う振動等を抑えて映像機器等への悪影響を抑えると共に、演出感の向上により商品価値を高めることができる昇降装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以上の課題を解決するため、請求項1の発明は、薄型映像機器や黒板等のボード体を昇降機構にて昇降させる昇降装置において、前記昇降機構は、構造物に固定設置するための固定片と一体となった垂直片の2つを横桟材で上下を接続して構成した固定枠と、この固定枠の垂直片に外向きに取り付けられた、回転軸が水平かつ固定枠の主面に平行なローラと、固定枠の主面に垂直な回転軸を有するローラと、この固定枠に外嵌装され、前記ローラに当接しながら昇降可能な昇降用溝を有する昇降自在な昇降枠と、固定枠の両側垂直片にて軸承されて回動自在に設けられた円筒体と、円筒体を可逆回転させるための何れかの垂直片付近に設置されたモータと、円筒体の所定位置にて、一方端が円筒体に固定され、途中が昇降枠下辺付近に設けられた動滑車に180°巻回されて他方端が固定枠に固定されたベルト部材と、前記昇降枠下辺の動滑車の付近に前方の突出して設けられた取付片とからなり、円筒体の正逆回転によりベルト部材を円筒体表面に巻き取り及び巻き出すことにより、昇降枠の取付片上に下辺を載置して昇降枠に固定された薄型映像機器や黒板等のボード体を、昇降枠と共に昇降動させる構成を採用したものである。
【0019】
請求項2の発明は、上記請求項1の昇降装置において、上記回転軸が水平かつ黒板の面に平行なローラは複数で、垂直片に直接軸承されており、当該ローラの少なくとも1つ以上が垂直片に対して位置調整して固定可能で、当該複数のローラのうちの一つが昇降用溝の一方側面に当接し、当該の複数ローラのうちの他の一つが昇降用溝の他方側面に当接している構成を採用したものである。
【発明の効果】
【0020】
この請求項1の発明によると、昇降枠に設けられた昇降用溝に、固定枠に固定された複数のローラにて昇降枠の昇降用溝の側壁面、底面と接触しつつ昇降動をガイドしているので、移動に伴うガタが生じないと共に、ローラの利用によりガイド部材への摺動抵抗がなく、ころがり抵抗のみの軽い力で昇降できる。
【0021】
また、薄型映像機器や黒板等のボード体(昇降枠)の昇降可能範囲は、昇降枠の上辺が固定枠の上辺に接触した状態の最下降位置から、昇降枠の下辺が固定枠の下辺に接触した状態の最上昇位置までの範囲となるが、複数のローラで昇降用溝の両壁及び底面が保持されてがたつきが防止されるので、固定枠の上下寸法を小さく取ることができる。すなわち、薄型映像機器等の昇降距離を大きく取ることができる。
【0022】
更に、昇降枠の両側部の杆材に設けた昇降用溝を利用して昇降し、左右の上下方向に延びる柱状のガイド部材が無いため、円筒体を固定枠の寸法一杯に設置でき、この固定枠の端部の円筒体を軸承している垂直片が壁面等の構造物との接続された固定片と一体となっているので、円筒体に加わる力が直接壁面で支えられ、固定枠に無理な力がかかって歪んだりしないので、スムーズな昇降が可能になる。
【0023】
また、円筒体の端部にあるモータの固定部分についても、固定片と一体となった垂直片付近にあるので、モータの駆動に伴う振動が軽減されてガタも生じない。
【0024】
更に、比較的重量のある薄型映像機器も、昇降のためのベルト部材の巻き取り巻き戻し速度を昇降枠に取り付けた動滑車により減速して行うので、モータでの昇降可能重量が増大されるので、従来昇降できなかった薄型映像機器も、モータを従来のまま用いて昇降動可能となった。
【0025】
また、動滑車の作用によりベルト部材の巻き取り巻き戻し速度の1/2の速度で昇降枠が昇降するので、従来から使用される比較的安価であるが速度が速い汎用モータを用いても、昇降速度がゆっくりとなり、昇降動作に伴う振動等も軽減され、映像機器を構成する素子への悪影響が少なくなる。
【0026】
更に、汎用モータであっても昇降速度がゆっくりとなるので、映像機器に映像を映したまま、また黒板等のボード体を見せながら、ゆっくり昇降動させる演出ができ、商品価値が向上する。
【0027】
請求項2の発明によれば、ローラは構造物に固定設置するための固定片と一体となった垂直片に直接軸承されているので、取付強度が向上しガタも生じない。また、少なくとも1つ(一部)のローラを取付位置を微調整しながら固定枠に取付可能としてあるので、複数のローラのうちの一つが昇降用溝の一方側面に当接し、当該の複数ローラのうちの他の一つが昇降用溝の他方側面に当接させることができ、昇降に伴うガタを防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】この発明の実施形態の黒板の昇降装置を示す一部透過正面図である。
図2】(A)はこの発明の実施形態の要部の一部透過正面図、(B)は一部透過側面図である。
図3】この発明の実施形態のローラの取付部を示す要部拡大側面図である。
図4】(A)は昇降溝を示す昇降枠の杆材の断面平面図、(B)は昇降溝に固定枠のローラが接触した状態の断面平面図である。
図5】この発明の昇降枠の昇降動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態を添付図面を参考にして説明する。
図1乃至3に示すのは、この発明の昇降装置の実施形態であり、長尺状の柱材やL字材を長方形の外形となるよう組み上げた固定枠1が、壁面等に固定されている。
【0030】
この固定枠1を形成する長尺状の柱材は、長さ方向が横方向の横杆材2と長さ方向が縦方向の垂直片3とからなり、黒板等の重量物が取り付けられた後述の昇降枠を支える程度の強度、剛性を有するものであれば特に材質は限定されないが、通常は剛性と重量のバランスから主としてアルミニウム合金、スチールなどの金属製が選ばれている。
【0031】
まず、横杆材2は、重量の点から押し出し成形等で内部中空の断面が四角形やコ字状の長尺体とし、これら長尺体を単独または組み合わせて長尺状の杆材としたものである。
【0032】
また、垂直片3は、金属片を断面L字形になるように長さ方向で直角に折り曲げたもので、折り曲げ部分は固定片3bを一体に構成しており、この固定片3bを建物の構造部となる壁面や柱に対し、ネジ止め等により締め付けて固定枠1を固定している。
【0033】
垂直片3は、前記横杆材2よりも前後方向の寸法が大きな幅広で(図2(B)、図3参照)、この垂直片3と一体に形成された固定片3bの上下寸法は、図1図2に示すように、垂直片3の上下寸法より大きくなっており、断面L字形材の垂直片3となる方の上下を折り曲げて寸法を固定片3bより小さくし、折り曲げた部分を横杆材2との接続部分に利用することができる。
【0034】
こうすることにより、従来例から用いられていた固定枠用のL字形材を利用して、壁面との取付部分の大きさを小さくせず、すなわち取付強度を低下させずに、固定枠1の上下寸法を小さくすることができる。
【0035】
また長さ方向が水平となる円筒体4が両側部の垂直片3に回転自在に軸承されており、この円筒体4は、その一方端部(図示左側)の垂直片3近辺に内蔵されたモータ5の駆動により自在に正逆回転するようになっている。
【0036】
前記円筒体4の長さ方向両端部付近には、長尺なテープ状のベルト部材6が、その一方端部が固定され、円筒体4の回動に伴い巻き取られたり引き出されるような状態となるようになっており、ベルト部材6の円筒体4に巻回されていない余剰部分は、前方から下方に垂れ下がっている。
【0037】
ベルト部材6の材質としては、液晶テレビ等の薄型映像機器や黒板の重量に耐えて昇降動を行う引っ張り強度と、前記円筒体4に巻回可能な柔軟性が必要であり、薄板状の金属製からなるベルトが好ましい。
【0038】
円筒体4のベルト部材6が巻回されている部分の後ろ側には、上下の横杆材2に亘って取り付けられた平板状の補強杆材7が設けられ、この補強杆材7には、ベルト部材6と略同幅のロール状の押さえ部材8が、スプリングや板バネの力で、前記ベルト部材6の巻回された部分を押圧するように設けられている。
【0039】
固定枠1を構成する前記両側部の垂直片3には、外向きに複数個のローラ9a、9bが設けられている。
【0040】
まず、回転軸が水平かつ設置される薄型モニターM(図2参照)の正面と平行となるローラ9aが上下に2つずつ合計4つ、回転軸が設置される薄型モニターMの面に垂直方向となるローラ9bがローラ9aに挟まれた部分に2個、それぞれの両側の垂直片3に回転自在に軸承されている。
【0041】
なお、ローラ9aは、全てその回転軸が壁面と接続された固定片3bと一体となった垂直片3に直接軸支されており、ローラ9aの取付強度が高く、また垂直片3に対するローラ9aのガタつきも無い。
【0042】
固定枠1の構成は上記のようなものであり、この固定枠1に対して、液晶ディスプレイを利用した薄型モニターMと略同等の大きさの外形四辺形の昇降枠11が昇降自在に取り付けられる。
【0043】
昇降枠11は、長さ方向が横方向の杆材12aと長さ方向が縦方向の杆材12bを組み合わせた枠体であり、これら杆材12aと杆材12bは、薄型モニターM等の重量物が取り付けられ、強度、剛性を有するものであれば特に材質は限定されないが、前述の固定枠1の横杆材2と同様に、強度と重量の点からアルミニウムの押し出し成型による杆材が用いられる。
【0044】
両側の杆材12b部分には、杆材12bを構成する柱材を適宜組み合わせて、内側に杆材12bの上下長さ方向に沿う、昇降用溝13が形成されている(図4参照)。
【0045】
また、昇降枠11を構成する下側の杆材12aにおいて、円筒体4のベルト部材6が巻回されている位置の直下には、動滑車14が上記円筒体4と平行に配置されており、ベルト部材6はこの動滑車14の前方から下側に180°巻回されて動滑車14の後方から上方に導かれ、ベルト部材6の他端側は固定枠1の下側の横桟材2の固定部15にて接続固定されている(図2参照)。
【0046】
なお、動滑車14の直径は、前記円筒体4の直径より小さくしておき、動滑車14で折り返されて固定部15に接続されるベルト部材6が固定枠1に干渉しないようにする。
【0047】
さらに、昇降枠11の前記動滑車14が取り付けられた付近には、取付片16が前方に突出して取り付けられており、薄型モニターMを昇降枠11に取り付けた際、この取付片16の部分が、薄型モニターMを下方から支えることになる。
【0048】
更に、下側の杆材12aの中央部には、モータ5による薄型モニターM(昇降枠11)の昇降動を操作するリモコンの受光部および昇降動用スイッチを兼ねた受光・操作部17が薄型モニターMに干渉しない杆材12aの下側に設けられており、この受光・操作部17で受けた信号は、昇降枠11の下側の杆材12aの中央と、固定枠1の下側の横杆材2の中央を、折り曲げ自在により固定枠1に対する昇降枠11の昇降を妨げないようなパンタグラフ状リンク18内に配した配線19により固定枠1側に送られ、モータ5の制御等に使用される。
【0049】
なお、固定枠1の横杆材2の前後方向の幅は、昇降枠11の杆材12aの幅より小さくなっているので、杆材12aの横杆材2より前方に突出した部分の上にパンタグラフ状リンク18が位置しており、昇降枠11の最上昇位置においても、パンタグラフ状リンク18が固定枠1に干渉しないようになっている。
【0050】
昇降枠11の構成は以上の通りであり、この昇降枠11の固定枠1への組み込みは、まず、図4(A)、(B)に示すように、昇降枠11を形成する前の状態の左右の杆材12bを、その昇降用溝13を固定枠1両側の垂直片3に設けてあるローラ9a、9bを収容するように嵌め込み、その後、上下の杆材12aを左右の杆材12bに接続固定して昇降枠11が固定枠1に外嵌装されるようにする。
【0051】
また、固定枠1の円筒体4に巻回されているベルト部材6の他端を、昇降枠11の下側の杆材12aに設けられている動滑車14の前方から後方に下部を通して180°巻回し、上側に引き戻し、固定枠1の固定部15にネジ止め等の適宜手段で接続固定する。
【0052】
更に、固定枠1の垂直片3の内側から、ネジ止めされたローラ9aを一旦緩めてローラ9a、9aがそれぞれ昇降枠11の昇降用溝13の左右両壁面に当接するように調整した状態で、ローラ9aの取付ネジを締め付けて固定する。
【0053】
この際、図3に示すように、4つのローラ9aの取付のために垂直片3に開けられた4つの取付孔20、21のうちの片方(図示では取付孔21)を少し大き目にしておき、この部分のローラ9aの取付位置の微調整ができるようにしておけば、取付孔20にて軸承されたローラ9aが昇降枠11の内側にある昇降用溝13の一方側面に当接した状態で、取付孔21にて軸承されたローラ9aを昇降用溝13の他方端部に押し付けるように位置調整してから強固に固定すれば、昇降用溝13の両側壁に2つのローラ9aがぴったり接触する状態で固定可能となる。
【0054】
また、垂直片3内で出来るだけ最上部および最下部に取付孔20を設けるようにすれば、複数のローラ9aが昇降枠11の昇降用溝13に接触する上下距離が長くなり、昇降枠11を安定的に保持できるようになる。
【0055】
上記のようなローラ9aの取り付け方法により、2つのローラ9a、9aが常に昇降枠11の昇降用溝13の左右壁面に当接した状態で昇降できるので、昇降に伴うガタが生じずに、ローラによるスムーズな昇降動が可能となる。
【0056】
その後、パンタグラフ状リンク18を固定枠1と昇降枠11の間で接続し、薄型モニターM、又は黒板、白ボード等のボード体を、昇降枠11の前面に取り付ける。取り付け方法はネジ止め、金具を用いて昇降枠11と薄型モニターM等を締め付ける等適宜手段が取られるが、昇降枠11の下方の杆材12aの前方に突出した取付片16の上面によって薄型モニターM等の下辺を支えるようにして固定する。
【0057】
そして、薄型モニターMの昇降動は、固定枠1に設けられた円筒体4のモータ5による回転を、ベルト部材6と動滑車14を通じて昇降枠11を上下動させることにより行われる。
【0058】
その上昇時の動作原理を図5に基づいて説明すると、モータ5の正回転による円筒体5の回転により、ベルト部材6は円筒体4に巻き付いてゆき上昇し、動滑車14もそれにつれて回転しながら上昇するが、その速度はベルト部材6の上昇速度の1/2となる。
【0059】
そのため、動滑車14と一体の昇降枠11もベルト部材6の1/2の速度で上昇することとなり、速度が速い汎用モータを用いた場合も上昇速度をゆっくりさせることができ、昇降機構付きの薄型モニター(又は黒板等)としての商品価値が高まる。
【0060】
また、動滑車14を用いて上昇速度を1/2にしてあるため、その分、同じモータを使っても、より重量のある(略2倍)物に使用することができるようになる。
なお、下降時は、図5で示す矢印の反対方向に動作して、下降動作が行われる。
【0061】
上記上昇および下降時、昇降をガイドする固定枠1側のローラ9aは、2つのローラ9aがそれぞれ昇降枠11側の昇降用溝13の両側壁面に当接してガタが生じず、ローラのころがり抵抗のみによるスムーズな昇降が保証される。
【0062】
また、昇降体11の昇降を行う作用力は、ベルト部材6を通じて昇降体11の動滑車14に加わるが、この動滑車14の付近にある取付片16が薄型モニターMの下辺を直接支えているので、ベルト部材6を通じて加わる力が直接的に薄型モニターMに伝わり、昇降枠11が昇降に伴う力で歪んだりしないので、その結果、昇降枠11の昇降用溝13と固定枠1のローラ9a、9bとに予想外の歪みによる抵抗等が生じたりせず、この点でもスムーズな昇降が可能になる。
【0063】
更に、本願の構成では、円筒体4の軸承部分やモータ5が壁面への固定部分(固定片3b)付近にあるので昇降作動による枠体の歪みやガタが発生しにくいので、昇降枠11を支える上下ローラ9a、9aの間隔が小さくてもスムーズな昇降が可能である。即ち、従来の装置では固定枠の上下寸法が500mm程度であったが、これを上下50mmずつ小さく400mm程度に小さくすることができ、その分、昇降枠が昇降する範囲を大きくすることができる。
【0064】
なお、薄型モニターMの下降作用の最中に、薄型モニターM(又は昇降枠11)が障害物にぶつかって、下降が停止した場合は、モータ5の駆動により円筒体4から更に繰り出されるベルト部材6が円筒体4から離れて緩んでしまうが、対応策として薄型モニターMを持ち上げて障害物を取り除いて元に戻す際や、薄型モニターMを一端上昇させようとする際、円筒体4に完全に密着しないで不完全に巻回されて緩んでいたベルト部材6が張力が加わり密着状態となるまで、ベルト部材6同士の重なり部分で摩擦して不安定な動き(ベルト部材6の上下動による振動)をしてしまうことがある。
【0065】
そこで本発明の実施形態では、図示のような押さえ部材8を設けて、円筒体4に巻回されている最外層のベルト部材6を円筒体4に押圧して巻回部のベルト部材6が円筒体4から緩んだりしないようにし、弛んで余ったベルト部材6は円筒体4から離れて垂れ下がるようにしておき、弛みを矯正する際に円筒体4に不安定な動きをしないようにしている。
【0066】
なお、本願発明は上記各実施形態や図示のものに限定されるものではなく、この発明の目的の範囲内で適宜設計変更されるものである。例えば、実施形態ではベルト部材6の本数は図示では2本としたが、薄型モニターMや黒板の大きさ、重量によってはそれ以上の本数でよいし、ローラ9a、9bの数も、薄型モニターMや黒板の大きさ、重量によって適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 固定枠
2 横杆材
3 垂直片
3b 固定片
4 円筒体
5 モータ
6 ベルト部材
7 補強杆材
8 押さえ部材
9a、9b ローラ
11 昇降枠
12a、12b 杆材
13 昇降用溝
14 動滑車
15 固定部
16 取付片
17 受光・操作部
18 パンタグラフ状リンク
19 配線
20、21 取付孔
M 薄型モニター
図1
図2
図3
図4
図5