(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193638
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】回り込みキャンセラ及び中継装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/15 20060101AFI20170828BHJP
H04B 7/015 20060101ALI20170828BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
H04B7/15
H04B7/015
H04L27/26 100
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-129593(P2013-129593)
(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公開番号】特開2015-5864(P2015-5864A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年6月1日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、総務省、「情報通信ネットワークの耐災害性強化のための研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000113665
【氏名又は名称】マスプロ電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】日比 謙次
(72)【発明者】
【氏名】浦和 秀典
【審査官】
金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−103647(JP,A)
【文献】
特開2007−151097(JP,A)
【文献】
特開2004−266814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/15
H04B 7/015
H04L 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャリア信号を受信アンテナにて受信し、該受信信号を送信アンテナから再送信する中継装置において、前記送信アンテナからの送信電波が前記受信アンテナに回り込むことにより前記受信信号に重畳された回り込み信号を除去する回り込みキャンセラであって、
前記受信アンテナにて受信したマルチキャリア信号に基づき、前記回り込み信号の遅延プロファイルを算出する遅延プロファイル算出手段と、
前記遅延プロファイル算出手段にて算出された遅延プロファイルに基づき、前記受信信号から前記回り込み信号を除去するためのキャンセル信号を生成するキャンセル信号生成手段と、
前記キャンセル信号生成手段にて生成されたキャンセル信号を用いて、前記受信アンテナにて受信したマルチキャリア信号から前記回り込み信号を除去する回り込み信号除去手段と、
前記キャンセル信号生成手段が生成するキャンセル信号に対する前記遅延プロファイルの適用強度を調整することで、前記回り込み信号除去手段による前記回り込み信号のキャンセル度合いを調整する適用強度調整手段と、
を備え、
前記適用強度調整手段は、前記遅延プロファイル算出手段にて算出された遅延プロファイルに基づき、前記回り込み信号の合成電力を算出し、該合成電力が予め設定された適正範囲内になるよう、前記キャンセル信号生成手段が生成するキャンセル信号に対する前記遅延プロファイルの適用強度を調整することを特徴とする回り込みキャンセラ。
【請求項2】
前記適用強度調整手段は、
前記遅延プロファイル算出手段にて算出された遅延プロファイルのうち、しきい値以上の遅延プロファイルを、前記キャンセル信号生成用の遅延プロファイルとして前記キャンセル信号生成手段に出力する遅延プロファイルレベル調整部と、
前記遅延プロファイルレベル調整部から前記キャンセル信号生成手段に出力される全遅延プロファイルの合成電力を算出する合成電力算出部と、
前記合成電力算出部にて算出された合成電力が、予め設定された適正範囲内にあるか否かを判定して、合成電力が適正範囲よりも大きい場合には、前記しきい値を所定値だけ増加させ、合成電力が適正範囲よりも小さい場合には、前記しきい値を所定値だけ減少させることで、前記合成電力が前記適正範囲内となるよう、前記しきい値を調整するしきい値判定部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の回り込みキャンセラ。
【請求項3】
マルチキャリア信号を受信アンテナにて受信し、該受信信号を送信アンテナから再送信する中継装置において、
前記送信アンテナからの送信電波が前記受信アンテナに回り込むことにより前記受信信号に重畳された回り込み信号を除去する回り込みキャンセラとして、請求項1又は請求項2に記載の回り込みキャンセラを備えたことを特徴とする中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタル放送で無線送信されるOFDM信号等のマルチキャリア信号を中継する中継装置において、送信アンテナからの送信電波が受信アンテナに回り込むことにより受信信号に重畳される回り込み信号を除去するための回り込みキャンセラ、及び、この回り込みキャンセラを備えた中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地上デジタル放送等のOFDM信号を周波数変換(換言すればチャンネル変換)することなく中継する、SFN方式の中継装置が知られている。
そして、この種の中継装置には、送信信号が受信側に回り込むことにより、発振等の不具合が発生するのを防止するために、回り込み信号の遅延プロファイルを測定し、その測定した遅延プロファイルに従い受信信号から回り込み信号成分を除去する、回り込みキャンセラが設けられている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−271295号公報
【特許文献2】特開2004−80668号公報
【特許文献3】特開2011−103647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回り込みキャンセラにおいて、キャンセル範囲内に、遅延時間が異なる複数の回り込み信号やマルチパスが存在する場合、回り込み信号が1波であるときに比べて、回り込みキャンセラの発振限界DU比(DU比:Desired to Undesired signal ratio )が低下し、発振し易くなるという問題があった。
【0005】
つまり、回り込みキャンセラの発振限界DU比は、キャンセル範囲内の回り込み信号、マルチパスのピーク電力ではなく、回り込み信号、マルチパスの電力の総和できまることから、複数の回り込み信号、マルチパスが存在する環境下では、希望波(D)と不要波(U)との比(D/U)が、回り込みキャンセラの発振限界DU比を越えて、回り込みキャンセラが発振してしまうのである。
【0006】
また、この問題は、OFDM信号を中継する中継装置だけでなく、例えば、CDMAやFDM等、周波数の異なる複数のキャリアを利用して同時に無線送信されるマルチキャリア信号を中継する中継装置であれば、同様に発生する。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、回り込みキャンセラのキャンセル範囲内に回り込み信号やマルチパスが複数存在する環境下でも、回り込みキャンセラが発振することなく、これらの不要波を除去できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するためになされた
本発明の回り込みキャンセラは、マルチキャリア信号を受信アンテナにて受信し、該受信信号を送信アンテナから再送信する中継装置において、前記送信アンテナからの送信電波が前記受信アンテナに回り込むことにより前記受信信号に重畳された回り込み信号を除去する回り込みキャンセラであって、
前記受信アンテナにて受信したマルチキャリア信号に基づき、前記回り込み信号の遅延
プロファイルを算出する遅延プロファイル算出手段と、
前記遅延プロファイル算出手段にて算出された遅延プロファイルに基づき、前記受信信号から前記回り込み信号を除去するためのキャンセル信号を生成するキャンセル信号生成手段と、
前記キャンセル信号生成手段にて生成されたキャンセル信号を用いて、前記受信アンテナにて受信したマルチキャリア信号から前記回り込み信号を除去する
回り込み信号除去手段と、
前記キャンセル信号生成手段が生成するキャンセル信号に対する前記遅延プロファイルの適用強度を調整することで、前記
回り込み信号除去手段による前記回り込み信号のキャンセル度合いを調整する適用強度調整手段と、
を備え、前記適用強度調整手段は、前記遅延プロファイル算出手段にて算出された遅延プロファイルに基づき、前記回り込み信号の合成電力を算出し、該合成電力が予め設定された適正範囲内になるよう、前記キャンセル信号に対する前記遅延プロファイルの適用強度を調整することを特徴とする。
【0010】
また、
本発明の中継装置は、マルチキャリア信号を受信アンテナにて受信し、該受信信号を送信アンテナから再送信する中継装置
であって、
前記送信アンテナからの送信電波が前記受信アンテナに回り込むことにより前記受信信号に重畳された回り込み信号を除去する回り込みキャンセラとして、
上記本発明の回り込みキャンセラを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の回り込みキャンセラにおいては、まず、遅延プロファイル算出手段が、受信アンテナにて受信したマルチキャリア信号に基づき、回り込み信号の遅延プロファイルを算出する。
【0012】
すると、キャンセル信号生成手段が、その算出された遅延プロファイルに基づき、受信信号から回り込み信号を除去するためのキャンセル信号を生成し、回り込み信号除去手段が、その生成されたキャンセル信号を用いて、受信アンテナにて受信したマルチキャリア信号から回り込み信号を除去する。
【0013】
また、本発明の回り込みキャンセラには、キャンセル信号生成手段が生成するキャンセル信号に対する遅延プロファイルの適用強度を調整する適用強度調整手段が設けられている。
【0014】
このため、本発明の回り込みキャンセラによれば、適用強度調整手段により、周り込み信号除去手段による回り込み信号のキャンセル度合いを調整することができ、その調整により、回り込みキャンセラが回り込み信号やマルチパスを除去する際のDU比を、発振限界DU比以下に抑えて、回り込みキャンセラが発振するのを防止できる。
【0015】
また、適用強度調整手段
は、遅延プロファイル算出手段にて算出された遅延プロファイルに基づき回り込み信号の合成電力を算出し、その合成電力が予め設定された適正範囲内になるよう、キャンセル信号生成手段が生成するキャンセル信号に対する遅延プロファイルの適用強度を調整する。
【0016】
つまり、上述したように、回り込みキャンセラの発振限界DU比は、キャンセル範囲内の回り込み信号、マルチパスのピーク電力ではなく、これらの電力の総和できまる。
そこで、
本発明では、適用強度調整手段が、その電力を回り込み信号の合成電力として算出し、その合成電力に基づき、キャンセル信号生成手段が生成するキャンセル信号に対する遅延プロファイルの適用強度(換言すれば回り込み信号のキャンセル度合い)を自動調整するようにしている。
【0017】
このため、
本発明の回り込みキャンセラによれば、回り込みキャンセラを設置する際、作業者が、周囲環境に応じて、適用強度調整手段を手動設定する必要がなく、回り込みキャンセラの使い勝手を向上できる。
【0018】
また、
本発明の中継装置によれば、上述した本発明の回り込みキャンセラを備えているので、受信アンテナにて、希望波であるマルチキャリア信号と共に、回り込み信号やマルチパスからなる多数の不要波が受信されたとしても、回り込みキャンセラを発振させることなく、不要波を除去して、希望波を再送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の中継装置の構成を表すブロック図である。
【
図2】実施形態の回り込みキャンセラに設けられた制御部の構成を表す説明図である。
【
図3】
図2に示した制御部の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1に示すように、本実施形態の中継装置は、地上デジタル放送の一つのセグメント(所謂ワンセグ)を利用して行われるエリア放送の放送電波(つまり、OFDM信号)を、受信アンテナ2で受信し、その受信信号を増幅回路18にて増幅して送信アンテナ4に出力することで、放送信号を、放送チャンネル(換言すれば放送周波数)を変更することなく送信アンテナ4から再送信させる、SFN方式の中継装置である。
【0021】
そして、本実施形態の中継装置には、送信アンテナ4からの送信電波が受信アンテナ2に回り込むことにより受信信号に重畳された回り込み信号を除去するために、A/D変換部12、キャンセル信号生成部20、加算器14、及びD/A変換部16からなる回り込みキャンセラ10が設けられている。
【0022】
ここで、A/D変換部12は、受信アンテナ2にて受信された受信信号の中から、中継対象(換言すれば回り込み信号の除去対象)となるエリア放送の放送信号を選局することでベースバンドのOFDM信号に周波数変換し、OFDM信号をデジタルデータに変換するためのものである。
【0023】
そして、このA/D変換部12にてデジタルデータに変換されたベースバンドのOFDM信号は、キャンセル信号生成部20に入力され、キャンセル信号生成部20にて、回り込み信号を除去するのに必要なキャンセル信号(デジタルデータ)を生成するのに用いられる。
【0024】
また、加算器14は、キャンセル信号生成部20で生成されたキャンセル信号をA/D変換部12でデジタルデータに変換されたベースバンドのOFDM信号に加算することで、OFDM信号から回り込み信号を除去するためのものであり、加算器14にて回り込み信号が除去されたOFDM信号は、D/A変換部16に入力される。
【0025】
そして、D/A変換部16では、加算器14にて回り込み信号が除去されたベースバンドのOFDM信号(デジタルデータ)をアナログ信号にD/A変換し、そのアナログ信号を元の放送チャンネルにアップコンバートすることで、回り込み信号除去後の放送信号を生成し、増幅回路18に出力する。
【0026】
次に、キャンセル信号生成部20内でベースバンドのOFDM信号をデジタル処理することによりキャンセル信号(デジタルデータ)を生成するのに用いられるデジタル処理回路について説明する。
【0027】
図1に示すように、キャンセル信号生成部20には、特許文献3に記載のものと同様、デジタル処理回路として、離散フーリエ変換部22、振幅スペクトル算出部24、逆数算出部26、逆離散フーリエ変換部28、補正処理部30、及び、キャンセル誤差算出部34が備えられている。
【0028】
すなわち、離散フーリエ変換部22は、A/D変換部12から入力されるA/D変換後のOFDM信号を離散フーリエ変換することで、OFDM信号の周波数軸上のスペクトルを抽出する。
【0029】
また、振幅スペクトル算出部24は、離散フーリエ変換部22にて抽出されたスペクトル毎に、各スペクトルの振幅S(n) を算出し、その絶対値を一定期間サンプリングして平均値(時間平均値)S(n)tavを算出する。
【0030】
そして、逆数算出部26は、振幅スペクトル算出部24にて算出されたスペクトル毎の時間平均値S(n)tavを、OFDM信号の周波数帯域内で平均化し、その平均化により得られた帯域内平均値Avを各スペクトルの時間平均値S(n)tavで除算することで、各スペクトルの時間平均値S(n)tavの逆数Av/S(n)tavを算出する。
【0031】
また、逆離散フーリエ変換部28は、逆数算出部26による算出結果を逆離散フーリエ変換することにより、回り込み信号の遅延プロファイルを算出する。
また、補正処理部30は、逆離散フーリエ変換部28にて算出されたN個のデータからなる遅延プロファイルの中から、0からN/2個までのデータを抽出し、その抽出した各データに所定の補正係数(本実施形態では値「2」)を乗じることで、遅延プロファイルを補正する。
【0032】
そして、キャンセル誤差算出部34は、補正処理部30にて補正された遅延プロファイルに基づき、受信信号から回り込み信号を除去するためのキャンセル信号(デジタルデータ)を生成する。
【0033】
また、キャンセル信号生成部20には、本発明の主要部として、補正処理部30とキャンセル誤差算出部34との間に、制御部32が設けられている。
制御部32は、逆離散フーリエ変換部28にて生成され、補正処理部30にて補正された遅延プロファイル(
図3参照)の中から、中継対象となる放送信号成分(つまり希望波:U)を除く不要波:Dの遅延プロファイルを抽出して、キャンセル誤差算出部34にキャンセル信号生成用の遅延プロファイルとして出力するものである。
【0034】
また、上述したように、この遅延プロファイルに含まれる不要波:D(つまり、回り込み信号やマルチパス等)の合成電力が大きいと、キャンセル誤差算出部34にて算出されるキャンセル信号が大きくなりすぎ、回り込みキャンセラ10の発振限界DU比を越えてしまう。
【0035】
このため、制御部32は、キャンセル誤差算出部34に出力する不要波:Dの遅延プロファイルが、発振限界DU比を越えることのないよう、キャンセル誤差算出部34に出力する遅延プロファイルの合成電力を調整することで、キャンセル信号に対する遅延プロファイルの適用強度(換言すれば、加算器14による回り込み信号のキャンセル度合い)を調整する。
【0036】
すなわち、制御部32には、
図2に示すように、補正処理部30にて補正された不要波:Dの遅延プロファイルのうち、しきい値以上の遅延プロファイルを、キャンセル信号生成用の遅延プロファイルとしてキャンセル誤差算出部34に出力する、遅延プロファイルレベル調整部42が設けられている。
【0037】
なお、この遅延プロファイルレベル調整部42は、しきい値をレベル:ゼロとして、遅延プロファイルの信号レベルをオフセットすることで、キャンセル誤差算出部34に出力する遅延プロファイルのレベル調整を行う。
【0038】
また、制御部32には、この遅延プロファイルレベル調整部42が遅延プロファイルのレベル調整に用いるしきい値を設定するしきい値設定部48と、しきい値設定部48が設定するしきい値を増・減させる(
図2参照)ことで、しきい値を最適値に制御する、合成電力算出部44及びしきい値判定部46が備えられている。
【0039】
つまり、合成電力算出部44は、遅延プロファイルレベル調整部42からキャンセル誤差算出部34に出力される全遅延プロファイル(換言すれば
回り込み信号、マルチパス等の全不要波成分)の合成電力を算出する。
【0040】
また、しきい値判定部46は、合成電力算出部44にて算出された合成電力が、予め設定された適正範囲内にあるか否かを判定して、合成電力が適正範囲からずれると、合成電力が適正範囲よりも大きい場合には、しきい値を所定値だけ増加させ、合成電力が適正範囲よりも小さい場合には、しきい値を所定値だけ減少させることで、合成電力が適正範囲内となるよう、しきい値を調整する。
【0041】
この結果、制御部32により、補正処理部30から出力される遅延プロファイルのキャンセル信号に対する適用強度、延いては、加算器14による回り込み信号のキャンセル度合いを、回り込みキャンセラ10の発振限界DU比に対応した最適値に制御することができるようになる。
【0042】
よって、本実施形態の回り込みキャンセラ10によれば、回り込みキャンセラ10の発振限界DU比を越えることのない適正範囲内で、回り込み信号(詳しくは、回り込み信号やマルチパス等の不要波)を除去することができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、キャンセル信号生成部20内の離散フーリエ変換部22、振幅スペクトル算出部24、逆数算出部26、逆離散フーリエ変換部28、及び、補正処理部30が、本発明の遅延プロファイル算出手段に相当し、制御部32が、本発明の適用強度調整手段に相当し、キャンセル誤差算出部34が、本発明のキャンセル信号生成手段に相当する。また、加算器14は、本発明の回り込み信号除去手段に相当する。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて、種々の態様をとることができる。
例えば、上記実施形態では、適用強度調整手段としての制御部32は、キャンセル誤差算出部34に出力される遅延プロファイルの合成電力が適正範囲内になるよう、遅延プロファイルレベル調整部42が遅延プロファイルのレベル調整に用いるしきい値を自動調整するものとした。
【0045】
しかし、適用強度調整手段としては、例えば、遅延プロファイルレベル調整部42が遅延プロファイルのレベル調整に用いるしきい値を外部操作によって手動で調整することにより、使用者が、キャンセル信号に対する遅延プロファイルの適用強度(換言すれば、加算器14による回り込み信号のキャンセル度合い)を任意に設定できるようにしてもよい。
【0046】
また例えば、上記実施形態では、ワンセグによるエリア放送の放送信号を中継する中継装置に本発明を適用する場合について説明したが、本発明は、OFDM信号を中継する中継装置であれば、上記実施形態と同様に適用して、同様の効果を得ることができる。
【0047】
また、本発明は、OFDM信号を中継する中継装置だけでなく、例えば、CDMAやFDM等、周波数の異なる複数のキャリアを利用して同時に無線送信されるマルチキャリア信号を中継する中継装置であれば、上記実施形態と同様に適用して、同様の効果を得ることができる。
【0048】
また、上記実施形態では、キャンセル信号生成部20は、本発明の主要部である制御部32を除き、特許文献3に記載のものと同様に構成されているものとして説明した。しかし、キャンセル信号生成部20は、受信信号から、回り込み信号(詳しくは、回り込み信号やマルチパス等の不要波)の遅延プロファイルを生成し、その遅延プロファイルに基づきキャンセル信号を生成するものであれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
2…受信アンテナ、4…送信アンテナ、10…
回り込みキャンセラ、12…A/D変換部、14…加算器、16…D/A変換部、18…増幅回路、20…キャンセル信号生成部、22…離散フーリエ変換部、24…振幅スペクトル算出部、26…逆数算出部、28…逆離散フーリエ変換部、30…補正処理部、32…制御部、34…キャンセル誤差算出部、42…遅延プロファイルレベル調整部、44…合成電力算出部、46…しきい値判定部、48…しきい値設定部。