(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸入室と前記圧縮室とを区画する前記フレームの一壁面、および前記圧縮室前室と前記吐出室とを区画する前記フレームの一壁面のそれぞれに連通孔が形成され、該連通孔に鍔部と中心軸およびその先端にストッパ部が形成された弁部材が挿入されることにより、前記吸入弁および前記吐出弁が形成されてなる請求項1記載の電磁振動型流体ポンプ。
前記吐出室と連通して前記フレーム内にタンクが形成されると共に、前記ダイヤフラムおよび前記圧縮室を含むポンプ部が前記振動子の両端に形成され、前記振動子の両端部側に設けられる2個の吸入室を連通させる吸入連絡路、および前記振動子の両端部側に設けられる前記タンクを連通させる吐出連絡路が、前記フレームの1つの壁面を利用して形成され、吸入管および吐出管が、それぞれ一方側のみに形成されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁振動型流体ポンプ。
【背景技術】
【0002】
電磁振動型流体ポンプは、たとえば両側にダイヤフラムを有する流体ポンプの一例の断面説明図が
図8に示されるように、永久磁石などからなる2個の磁石111a、111bが支持部材112に固定された振動子110の両端にゴムなどからなるダイヤフラム120が固定され、磁石111a、111bと対向するように2個の電磁石130a、130bが設けられている。そして、電磁石130a、130bの部分がフレーム140により覆われている。振動子110の軸方向と直交する側のフレーム140の一対の壁面には開口部が形成され、前述のダイヤフラム120の外周が固定されている。このダイヤフラム120の外側には、圧縮室151が設けられ、圧縮室151の外側には、さらに吸入室152と吐出室153とが設けられ、ポンプケーシング150により被覆されている。圧縮室151と吸入室152との間には、吸入弁152aが設けられ、圧縮室151の圧力が低くなったら、吸入室152からエアーなどの流体が吸引され、また、圧縮室151と吐出室153との間には、吐出弁153aが設けられ、圧縮室151の圧力が高くなったら、吐出弁153aが開いてエアーなどの流体が吐出室153に吐出されるようになっている。(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
この吸入弁152aや吐出弁153aなどの弁155は、
図7(a)に示されるような鍔部155aとその中心軸部155bと中心軸部の先端部に太く形成されたストッパ部155cとからなっており、
図7(b)に示されるように、このストッパ部155cを、壁板156のストッパ部155cより細い貫通孔156aに挿入しなければならないため、ストッパ部155cの先端部を壁板156の反対側から引っ張って挿入し、挿入した後に弁155の先端部を切断線Tで切断することにより形成されている。その結果、壁板156の鍔部155a側から流体の圧力がかかると弁155は壁板156に密着して閉じられ、壁板156の鍔部155aと反対側から流体圧力がかかると弁155のストッパ部155cが壁板156に当たるまで弁155が浮き上がり、壁板156に設けられた連通孔156bから流体が通過する開状態になる。
【0004】
また、このように弁155を挿入する場合、反対側からその一端部を引っ張って挿入しなければならないが、前述の吸入弁152aと吐出弁153aのように、弁155の向きが逆方向であると、両側の方向から引っ張らなければならない。そのため、圧縮室、吸入室、および吐出室からなるポンプケーシング150を一体的に形成することができず、ヘッドカバー150aを後から設ける必要があり、部品点数が増加すると共に、このポンプケーシング150に取り付けられる吸入パイプや吐出パイプ(ともに図示せず)を取り付ける際に、パッキング(図示せず)を介して取り付けなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電磁振動型流体ポンプは、前述の吸入弁152aおよび吐出弁153aのような構造の弁を用いてポンプケーシング150が形成されている。しかし、吸入弁152aと吐出弁153aとはその向きが逆向きになっているため、
図7に示される弁155のストッパ部155cを引っ張る作業を壁板156の反対側から行わなければならず、しかも挿入後にその先端部を切断しなければならない。そのため、組立作業が非常に複雑になり、製造コストが上昇するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、吸入弁と吐出弁を流体の圧力方向が同じ向きのときに「開」にすることができる構造の電磁振動型流体ポンプを提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、吸入弁や吐出弁をシール部材と一体で形成したり、さらにダイヤフラムも一体化したりして部品点数を減らすと共に、簡単に製造できて組立工数を大幅に減らすことができる構造の電磁振動型流体ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電磁振動型流体ポンプは、磁石が固定された振動子と、該振動子の少なくとも一端部に設けられるダイヤフラムと、前記振動子の磁石と対向して設けられる交流駆動の電磁石と、前記振動子および電磁石を覆うと共に、前記振動子の端部が貫通する開口部が前記ダイヤフラムにより閉塞されるフレームと、前記ダイヤフラムの前記電磁石側と反対側に該ダイヤフラムと接して形成される圧縮室と、該圧縮室と吸入弁を介して接続される吸入室と、前記圧縮室と吐出弁を介して接続される吐出室とを有し、前記振動子の振動により前記吸入室から流体を吸入して前記吐出室から前記流体を連続的に吐出する電磁振動型流体ポンプであって、
前記圧縮室は、第1の凹部が形成されたケーシングがシール部材を介して前記フレームに固定されることにより形成され、前記吸入室が前記フレームの内部に形成され、かつ、前記圧縮室と連通するように前記フレーム内に圧縮室前室が形成されると共に、前記ケーシング内に前記圧縮室と区分して吐出室とする第2の凹部が形成されていることにより、前記吸入弁と前記吐出弁とは、共に前記振動子の軸方向に沿って同じ方向に流体の圧力がかかるときに「開」となるように、前記吸入弁と前記吐出弁とが形成されている。
【0011】
前記シール部材が弾力性のある板状部材で形成され、該シール部材に前記吸入弁および前記吐出弁とするための可動蓋部が形成されていることにより、吸入弁および吐出弁を簡単に形成することができ、しかも簡単に組み込むことができるため好ましい。
【0012】
前記吸入室と前記圧縮室とを区画する前記フレームの一壁面、および前記圧縮室前室と前記吐出室とを区画する前記フレームの一壁面のそれぞれに連通孔が形成され、該連通孔に鍔部と中心軸およびその先端にストッパ部が形成された弁部材が挿入されることにより、前記吸入弁および前記吐出弁が形成されてもよい。このような従来構造の弁部材が用いられても、その挿入方向は吸入弁も吐出弁も同じであるため、簡単に組み立てることができる。
【0013】
前記シール部材の中央部に前記ダイヤフラムが一体に形成されていれば、部品点数が減ると共に、組立工数も大幅に減らすことができるため好ましい。
【0014】
前記吐出室と連通して前記フレーム内にタンクが形成されると共に、前記ダイヤフラムおよび前記圧縮室を含むポンプ部が前記振動子の両端に形成され、前記振動子の両端部側に設けられる2個の吸入室を連通させる吸入連絡路、および前記振動子の両端部側に設けられる前記タンクを連通させる吐出連絡路が、前記フレームの1つの壁面を利用して形成され、吸入管および吐出管が、それぞれ一方側のみに形成されることにより、小形化を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吸入室と圧縮室との間の吸入弁および圧縮室と吐出室との間の吐出弁を共に同じ方向への流体の圧力がかかるときに、「開」となるような構成にしているため、従来構造の弁部材を使用しても一方向から同時に挿入して製造することができ、さらには、両方の弁をタブ状の可動蓋部とすることにより、板状部材により一体的に形成することができ、非常に簡単に製造することができる。さらには、部品点数の減少により大幅に工数の削減を達成することができる。
【0016】
具体的な構造として、圧縮室と連通して圧縮室前室を、ダイヤフラムを挟んで圧縮室と反対側、すなわちフレーム内に形成すると共に、吸入室もフレーム内に形成することにより、吸入室から圧縮室への通路に形成される吸入弁も、圧縮室前室(圧縮室)から吐出室への通路に形成される吐出弁も、共にフレーム内からケーシング内への通路に形成すれば良いことになる。そのため、フレームとケーシングの間に挟むシール部材に両方の弁を一体的に形成することができる。その結果、弁部材を挿入するという作業を行う必要もなく、打ち抜きまたは型成形で形成したシール部材をフレームとケーシングとの間にパッキングを挿入してねじで締め付けるという作業だけで、吸入弁および吐出弁を組み込むことができ、非常に簡単に電磁振動型流体ポンプを形成することができる。なお、シール部材は、もともとフレームとケーシングとの間のシールを目的とするもので、ゴムのような弾力性のある材料により形成されるため、ダイヤフラムと同じ材料を用いることができ、ダイヤフラムも一体に形成することができ、これらを一体化することにより、組立作業はさらに簡単になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに、本発明の電磁振動型流体ポンプについて、
図1〜5を参照しながら説明する。本発明の電磁振動型流体ポンプは、磁石11が固定された振動子1の少なくとも一端部にダイヤフラム2が設けられ、振動子1の磁石11と対向して交流駆動の電磁石3がフレーム4内に固定されている。フレーム4は、振動子1および電磁石3を覆うと共に、振動子1の端部が貫通する開口部がダイヤフラム2により閉塞されるように形成されている。ダイヤフラム2の、電磁石3側と反対側にダイヤフラム2と接して圧縮室51が形成されるようにケーシング5が設けられ、フレーム4の一壁面44にシール部材20を介してねじ58により固定されている。
図1に示される例では、シール部21と、吸入弁22と、吐出弁23と、ダイヤフラム2が一体化されたシール部材20の例が示されており、さらに圧縮室51と連通した圧縮室前室41および吸入室42がフレーム4内に形成されている。そして、圧縮室51と吸入室42とが吸入弁22を介して接続され、圧縮室前室41と吐出室53とが吐出弁23を介して接続されている。本発明では、この吸入弁22と吐出弁23とが、共に振動子1の軸方向に沿って同じ方向に流体の圧力がかかるときに「開」となるように、吸入弁22と吐出弁23とが形成されていることに特徴がある。
【0019】
すなわち、
図1〜5に示される例では、吸入弁22および吐出弁23は、たとえば
図5にシール部材20の平面図と断面図、および弁が開いたときの断面説明図が示されるように、板状のシール部材20の一部に、連通孔を閉鎖するタブ状の可動蓋部(吸入弁22、吐出弁23)を形成することにより、連通孔側から流体の圧力が加わった場合には、その圧力で簡単に曲がって連通孔を流体が通過できる構造に形成されている。しかも、吸入室42と圧縮室前室41がフレーム4側に形成されており、圧縮室51と吐出室53がダイヤフラム2を挟んでフレーム4と反対側に形成されているため、吸入室42から圧縮室51への流路を制御する吸入弁22、および圧縮室前室41から吐出室53への流路を制御する吐出弁23の両方が、フレーム4側からケーシング5側への同じ方向への流路を制御する構成になっている。そのため、全く同じ構造に形成することができ、板状体のシール部材20で簡単に形成することができる。その結果、振動子1の振動により吸入管42aを経て吸入室42から流体を吸入して圧縮室51に入り、圧縮室51と連通している圧縮室前室41から吐出室53に行き、
図1に示される例では、吐出室53から吐出タンク43を経て吐出管43aより流体を連続的に吐出する構造になっている。なお、
図5には、吸入弁22および吐出弁23がシール部21よりも肉薄に描かれているが、連通孔を流体が通過できるように流体の圧力で簡単に曲がりさえすれば、シール部21と同じ厚さに形成されていても良い。なお、フレーム4が密閉されていなくて、かつ、流体がエアーの場合には、吸入室42を別個に設ける必要はなく、フレーム4の内部全体を吸入室とみなすことができ、そのような場合には、吸入管42aも不要である。
【0020】
シール部材20は、たとえば
図5に説明図が示されるように、たとえばポリエチレンプロピレンゴム(EPDM)やフッ素ゴムなどの弾力性のある材料により形成されている。
図5に示される例は、フレーム4とケーシング5との接合部をシールするためのパッキングの機能を果たすシール部21と、吸入弁22、吐出弁23、およびダイヤフラム2とを一体化して形成されている。ダイヤフラム2の、振動子1の取付け部13との接続部2aは、シール部21よりも厚く形成されている。なお、
図5において、25は圧縮室51と圧縮室前室41とを連通させるための連通貫通孔、26は、ケーシング5をフレーム4に取り付ける際のネジを貫通させる孔である。
【0021】
吸入弁22および吐出弁23は、たとえばフレーム4の一壁面44に形成された連通孔44aを閉塞するようにタブ状の可動蓋部が、流体圧力により容易に撓むように形成されている。すなわち、
図5(c)に示されるように、たとえばフレーム4の一壁面44に一面がぴったりと接触するようにシール部材20が設けられ、シール部材20側、すなわち圧縮室51側にダイヤフラム2が振れて圧縮室51の圧力が高くなると、吸入弁22は一壁面44に押し付けられ、連通孔44aは閉塞される。一方、ダイヤフラム2がフレーム4側に引っ張られると、圧縮室51が膨張して圧力が低くなるため、吸入室42の圧力の方が高くなる。その結果、
図5(c)に示されるような流体の圧力により吸入弁22が圧縮室51側に押されて矢印で示すように流体が圧縮室51側に流れ込み、弁作用を充分に発揮する。吐出弁23側も同様に作用する。
図5に示される例では、吸入弁22と吐出弁23とが同じ形状および大きさに形成されているが、このような弁作用を発揮できるものであれば、吸入弁22と吐出弁23とが、相互に異なる形状および/または厚さに形成されていてもよい。
【0022】
図5に示される例では、この吸入弁22、吐出弁23およびダイヤフラム2がシール部材20に一体に形成されているが、ダイヤフラムを個別に形成することもできる。すなわち、
図6(a)にシール部21、吸入弁22および吐出弁23を一体化した例のシール部材20の例が斜視説明図で示されている。
図6(a)に示される例では、吸入弁22および吐出弁23がシール部21よりも肉薄に形成されているが、この吸入弁22や吐出弁23は流体の圧力で撓みやすく形成されていればシール部21と同じ厚さに形成されていても良く、ダイヤフラム2を一体で形成しないのであれば、シール部材20全体を均一な厚さの材料で形成することも可能で、その場合には、型成形の方法を用いることなく、板状の材料を打抜きだけで形成することができる。
【0023】
また、別の実施形態として、この吸入弁22や吐出弁23も、シール部材20と一体に形成されるのではなく、
図7に示されるような従来と同様の弁部材を使用することもできる。このような弁部材を使用しても、その向きはいずれもフレーム4側の圧力が高い場合に「開」となるように挿入すればよいため、作業は従来の2種類の弁部材を逆方向から挿入しなければならないという問題はなく、簡単に製造することができる。この場合、シール部材20としては、
図6(b)に弁もダイヤフラムも形成しない場合の斜視説明図が示されるように、タブ状の可動蓋を形成する必要がなく、貫通孔として形成することができ、肉厚が一定の板状部材でよく、打ち抜きだけで簡単に形成することができるため、安価に製造することができる。
【0024】
このダイヤフラム2は、シール部材20と同様に、たとえばポリエチレンプロピレンゴム(EPDM)やフッ素ゴムなどの弾力性のある材料により、
図6(c)に示されるように、円形状の板状体に形成される。この中心部には、振動子1の端部の取付け部13と固定するために中心部に貫通孔2bが形成され、この貫通孔2bに振動子1の取付け部13が挿入されると共に、樹脂製または金属製の内側センタープレート14aと外側センタープレート(圧縮室51側)14bにより、それぞれスペーサ15a、15bを介して挟み付けて固定する構造になっている。そのため、ダイヤフラム2の中心部に振動子1の取付け部13とのリング状の接続部2aが形成されている。また、ダイヤフラム2の外周には、フレーム4またはシール部材20と固定するための突起部2c(
図6(c)参照)が形成されているが、この構造には限定されず、固定できる構造であれば良い。
【0025】
ダイヤフラム2の外側(振動子1と反対側)には、前述のように、ケーシング5がシール部材20を介してフレーム4にネジ58などにより固定されている。このケーシング5は、
図3にその内面の斜視説明図が示されるように、圧縮室51とする第1の凹部51aおよびその圧縮室と隔壁55により仕切られた吐出室53とする第2の凹部53aが形成されている。また、圧縮室前室41と連通させるための連通部51bが設けられており、フレーム4の一壁面44に形成された連通孔44b(
図1参照)を経て圧縮室前室41と連通されるようになっている。その結果、
図2に示されるようにこのケーシング5がフレーム4に取り付けられると、
図4に示されるように、ダイヤフラム2の外側に隣接して圧縮室51が形成され、その圧縮室51と隣接して吐出室53が形成されている。さらに、
図1および
図3に示される例では、圧縮室51を、吸入室42と吸入弁22を介して連通させるため、第1の凹部51aと連通した第3の凹部51cが形成され、吸入弁22の「開」のときに、吸入室42が圧縮室51の第3の凹部51cと連通するように形成されているが、このような構造には限定されない。すなわち、従来のこの種のポンプでは、この第1の凹部51aと第2の凹部53aとの隔壁55に連通孔を形成して吐出弁を挿入する構造になっているが、本発明では、この隔壁55には連通孔と吐出弁を設けないで、圧縮室51と連通させた圧縮室前室41をフレーム4内に設けて、その圧縮室前室41から吐出室53に送り出す構造に形成されている。
【0026】
図1に示されるように、フレーム4内のダイヤフラム2側には、圧縮室前室41と、吸入室42と、吐出タンク43とが形成されている。圧縮室前室41は、圧縮室51からの流体を直接吐出室52に送り出すのではなく、吐出弁23を吸入弁22と同じ方向の流体の圧力で「開」になるようにするために形成されている。また、吸入室42は、圧縮室51に流体を送り込むための部屋で、前述のように、流体がエアーで、フレーム4が密封されていなければ、敢えて吸入室42を形成することなく、フレーム4の内部を吸入室として使用することができる。すなわち、圧縮室51との境界となるフレーム4の一壁面44に連通孔44aと吸入弁22を設けておくだけでも良い。
【0027】
図1〜5に示される例では、吐出室53に吐出された流体を吐出室53から直接吐出させないで、フレーム4内に吐出タンク43が設けられており、吐出室53から連通孔44cを経由して一旦吐出タンク43に送り出し、その吐出タンク43から吐出管43aを介して流体を吐出させる構造になっている。これは、
図4に示されるように、振動子1の両端部にダイヤフラム2が設けられ、両端部から流体が送り出される構造の場合、その両方を合流させて送り出すことが必要であり、この吐出タンク43で両端部から吐出される流体を合流させるためである。従って、片側だけにダイヤフラムを設ける構造のポンプまたは両端部から吐出された流体を外部タンクで合流させて供給する場合には、この吐出タンク43を形成する必要はなく、吐出室53から直接流体を吐出させることができる。なお、
図1〜5に示される例では、振動子1の両端部にダイヤフラム2が設けられる構造であるが、反対側のポンプ構造は、上述の説明と全く同じであり、その説明を省略する。
【0028】
なお、この圧縮室51、吸入室42、吐出室53およびダイヤダイヤフラム2からなるポンプ部が振動子1の両端部に設けられる場合、吸入管42aや吐出管43aは、両側それぞれに形成することもできるが、吸入管42aおよび吐出管43aをそれぞれ1個ずつで共有して形成することもできる。この1個ずつで形成する場合、
図1に示されるように、両側の吸入室42同士を連結する吸入側連通路45および両側の吐出タンク43を連結する吐出側連通路46がフレーム4のいずれかの壁面側、たとえば底面47を利用して形成されている。なお、48はその連通路45、46を閉塞する蓋部である。なお、
図1において、61は脚部であり、
図2は、
図1の分解図が組み立てられた状態の斜視図で、
図1と上下が逆になっている。
【0029】
その他の構造は、従来の電磁振動型のポンプと同じであるが簡単に説明する。振動子1は、たとえば非磁性体材料からなる板状体により形成された支持部材12に、永久磁石などからなる磁石11a、11bが固定され、両端部には、ダイヤフラム2を固定するための取付け部13が支持部材12内に一端部が埋め込まれて固定されることにより形成されている。
図1および
図4に示されるように、2個の磁石11a、11bがそれぞれ支持部材12を貫通して一面側にS極とN極を呈する(反対面はN極とS極を呈する)ように固定されているが、支持部材12の両面に、それぞれ2個ずつ設けることもできる。また、両面に設けられず、一面だけで、電磁石3も片方だけにすることもできる。
【0030】
この磁石11a、11bと対向するように電磁石3が設けられている。電磁石3は、鉄心(コア)31の周りに電線が巻回されることにより励磁コイル32が形成されており、交流電流がその励磁コイル32に流されることにより、コアに現れる極性が交流電流の位相により変化する。
図4に示される断面説明図で、図の左側の電磁石3aと、右側に示される電磁石3bとは、電流を励磁コイル32に供給する励磁コイル32の端部を逆方向にするか、巻き線の巻き方向を変えるか、励磁コイルに印加する交流電流の位相を180度ずらして印加することなどにより、左右の電磁石3a、3bの先端は、逆の極性となるように形成されている。これは、磁石11a、11bの極性が
図4の左右で異なる極性になっているためである。
【0031】
つぎに、この電磁振動型流体ポンプの動作について説明をする。振動子1に固定される磁石11a、11bの極性を
図4に示されるような極性で固定した場合、電磁石3a、3bに交流電流を流し、図で左側の電磁石3aと右側の電磁石3bとで、逆方向の極性が中心のコア31に現れるように両電磁石3a、3bが形成されている。
【0032】
このような左側の電磁石3aに交流電流を印加すると、交流電流の位相に応じてコア31の先端にS極およびN極が交互に現れ、図で右側の電磁石3bには、その逆の極性N極およびS極が交互に現れる。
図4に示されるように、左側の電磁石3aの先端の極性がS極の場合、振動子1の磁石11bのS極が反発し、磁石11aのN極が吸引されるため、振動子1が図の下側に動く。そうすると、
図1の下側のポンプ部に注目すると、ダイヤフラム2は、振動子1に固定されているため、同様に下側に動き、圧縮室51が狭まる。その結果、圧縮室51の圧力が上がり、吐出弁23aが「開」となり、圧縮室前室41から流体が吐出室53に流入する。
【0033】
交流電流の位相が180度変って電流の向きが逆方向になると、図で左側の電磁石3aのコア先端の極性がN極となる。そうすると、磁石11bのS極が吸引され、磁石11aのN極が反発されるため、振動子1は上側に移動する。その結果、図の下側のポンプ部のダイヤフラム2は上側に振れ、圧縮室51の容積が大きくなる。その結果、圧縮室51内の圧力が低くなり、吸入弁22が「開」となり、吸入室42内の流体が圧縮室51に吸引される。この一連の動作が交流電源の1サイクルで行われ、交流電源の周波数に応じてエアーなどの流体の吐出が行われる。なお、図で下側のポンプ部のみについて説明したが、上側のポンプ部も、ダイヤフラム2が下側のダイヤフラム2と同じように振れるため、圧縮室51の膨張、収縮が下側の圧縮室51の動作と逆になるが、同様の動作をする。さらに、電磁石3に関しても、図で左側の電磁石3aについてのみ説明したが、右の電磁石3bも前述のように左の電磁石3aと同期して逆極性を呈するように構成されているので、永久磁石11a、11bの極性も左側と逆になっていることから、同じ振動子1の動作を行う。
【0034】
以上説明したように、本発明によれば、吸入弁と吐出弁の両方を振動子の軸方向で同じ方向に流体の圧力がかかったときに両方とも「開」となるように、吸入弁および吐出弁が形成されているため、これらの弁を板状のシール部材に可動蓋部として簡単に形成することができ、さらにはダイヤフラムと一体に形成することもでき、非常に部品点数を減らすことができると共に、組立工数も大幅に減らすことができる。その結果、小形で、かつ、安価な電磁振動型流体ポンプを得ることができる。