(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0013】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0014】
また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0015】
また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0016】
また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
(実施の形態1)
<関連技術の説明>
まず、実施の形態1におけるパワーMISFETについて説明する前に、関連技術におけるパワーMISFETについて説明する。
図1は、関連技術におけるパワーMISFETの構成例を示す断面図である。
【0018】
図1に示すように、関連技術におけるパワーMISFETでは、例えばシリコン(Si)からなる半導体基板1S上に、窒化物半導体層が形成される。窒化物半導体層には、例えば窒化ガリウム(GaN)からなるバッファ層BFが形成されており、このバッファ層BF上に、例えば窒化ガリウム(GaN)からなるチャネル層CHが形成されている。そして、チャネル層CH上に、例えば窒化アルミニウム・ガリウム(AlGaN)からなる電子供給層ESが形成されている。ここで、バッファ層BFは、半導体基板1Sを構成するシリコン(Si)の結晶格子間隔と、チャネル層CHを構成する窒化ガリウム(GaN)の結晶格子間隔との不整合を緩和する目的で形成される。
【0019】
電子供給層ESの表面から、電子供給層ESとチャネル層CHとの界面を超えて、チャネル層CHに達するトレンチ(溝とも言う)TRが形成されている。このトレンチTRの内壁には、例えば酸化シリコン(SiO
2)からなるゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOXを介して、トレンチTRの内部には、ゲート電極GEが埋め込まれている。ゲート電極GEは、例えば窒化チタン(TiN)からなる。
【0020】
さらに、ゲート電極GEを覆うように、例えば窒化シリコン(SiN)からなる保護膜PRO、および例えば酸化シリコン(SiO
2)からなる第1層間絶縁膜IL1が形成されている。保護膜PROおよび第1層間絶縁膜IL1内には、アクティブ領域の電子供給層ESの表面を露出するように、ソースコンタクトホールOP1およびドレインコンタクトホールOP2が形成されている。
【0021】
そして、ソースコンタクトホールOP1の内側にソース電極SEが埋設されている。同様に、ドレインコンタクトホールOP2の内側にドレイン電極DEが埋設されている。ソース電極SEおよびドレイン電極DEは、例えば下層よりチタン(Ti)膜、窒化チタン(TiN)膜、アルミニウム(Al)合金膜、および窒化チタン(TiN)膜が順次積層された積層膜からなる。
【0022】
さらに、第1層間絶縁膜IL1を覆うように、第2層間絶縁膜IL2が形成されている。第2層間絶縁膜IL2は、例えば酸化シリコン(SiO
2)からなる。そして、第2層間絶縁膜IL2上には、パワーMISFETを保護するための樹脂膜、例えば5μm〜7μmの厚さのポリイミド(Polyimido)膜PIが形成されている。
【0023】
ここで、本発明者らの検討によれば、上記構成の関連技術におけるパワーMISFETにおいては、以下に示す点で改善の余地があった。なお、以下に示す点は、上記特許文献1〜3のような背景技術には開示されておらず、本発明者らが初めて見出したものである。
【0024】
パワーMISFETに電流が流れる際には、ジュール熱によりパワーMISFET全体の温度が上昇して、ポリイミド膜PIと窒化物半導体層との熱膨張係数の差により、ポリイミド膜PIから窒化物半導体層に応力が印加される。また、アセンブリ工程(パッケージ組立て工程)において、ポリイミド膜PIを熱硬化(キュア)するために、170℃〜250℃程度の熱処理が行われることなどによっても、ポリイミド膜PIから窒化物半導体層に応力が印加される。熱硬化の際にポリイミド膜PIは縮むため、熱硬化後は、窒化物半導体層に常に応力が印加されることになる。
【0025】
ここで、窒化物半導体(例えばGaN)はウルツ鉱構造であり、反転対称を有しない結晶構造であるため、応力が印加されると分極電荷が発生する。この分極電荷は、窒化物半導体に印加される応力に応じて変化する。
【0026】
窒化物半導体層のうち、特に、電子供給層ESおよびチャネル層CHに応力が加わると、もともと窒化物半導体層の各層に形成されていた自発分極電荷に加え、応力による分極電荷が加わることになり、チャネル層CH内に発生する、2次元電子ガスを含むチャネル電子濃度が変化してしまう。このため、オン抵抗が変動する。
【0027】
特に、電子供給層ESおよびチャネル層CHのうち、ゲート電極GEの下にある領域に応力が加わると、チャネル層CHにおけるチャネル電子濃度が変化してしまうため、しきい値電圧が変動する。
【0028】
そこで、実施の形態1では、上述した関連技術におけるパワーMISFETを改善する工夫を施している。以下に、この工夫を施した実施の形態1における技術的思想について説明する。
【0029】
<実施の形態1におけるパワーMISFETの構成>
実施の形態1におけるパワーMISFETの構成例を
図2および
図3を用いて説明する。
図2は、実施の形態1におけるパワーMISFETの一部を拡大して示す平面図である。
図3は、
図2のA−A線で切断した断面図である。
【0030】
図3に示すように、実施の形態1におけるパワーMISFETでは、例えばシリコン(Si)からなる半導体基板1S上に、例えば窒化アルミニウム・ガリウム(AlGaN)と窒化ガリウム(GaN)とを積層したバッファ層BFが形成されており、このバッファ層BF上に、例えば窒化ガリウム(GaN)からなるチャネル層CHが形成されている。そして、チャネル層CH上に、例えば窒化アルミニウム・ガリウム(AlGaN)からなる電子供給層ESが形成されている。チャネル層CHの厚さは、例えば1μm、電子供給層ESの厚さは、例えば0.03μmである。
【0031】
ここで、バッファ層BFは、半導体基板1Sを構成するシリコン(Si)の結晶格子間隔と、チャネル層CHを構成する窒化ガリウム(GaN)の結晶格子間隔との不整合を緩和する目的で形成される。すなわち、シリコン(Si)からなる半導体基板1S上に、直接、窒化ガリウム(GaN)からなるチャネル層CHを形成すると、チャネル層CHに結晶欠陥が多数形成されることになり、パワーMISFETの性能低下を招くことになる。このことから、半導体基板1Sとチャネル層CHとの間に格子緩和を目的としたバッファ層BFを挿入している。このバッファ層BFを形成することにより、バッファ層BF上に形成されるチャネル層CHの品質を向上させることができ、これによって、パワーMISFETの性能向上を図ることができる。
【0032】
なお、実施の形態1では、半導体基板1Sとしてシリコン(Si)を使用する例について説明しているが、これに限らず、炭化シリコン(SiC)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化ガリウム(GaN)、またはダイヤモンド(C)などから構成される基板を使用してもよい。
【0033】
続いて、
図2および
図3に示すように、X軸方向に延在するアクティブ領域(活性領域とも言う)ACには、電子供給層ESの表面から、電子供給層ESとチャネル層CHとの界面を超えて、チャネル層CHに達するトレンチTRが形成されている。このトレンチTRは、平面視において、X軸方向と直交するY軸方向に延在しており、Y軸方向にアクティブ領域ACをはみ出して形成されている。ここで、平面視において、アクティブ領域ACの外側には、素子分離のためのイオン注入が行われている。このイオン注入により、窒化物半導体層に深い準位等が形成されてキャリアを不活性にすることができる。なお、素子分離方法としては、電子供給層ES等を除去して2次元電子ガスが発生しないようにするメサアイソレーションを行ってもよく、またはイオン注入とメサアイソレーションとを併用してもよい。
【0034】
トレンチTRの内壁には、例えば酸化シリコン(SiO
2)または酸化アルミニウム(Al
2O
3)からなるゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOXを介して、トレンチTRの内部に、ゲート電極GEが埋め込まれている。ゲート電極GEは、例えば窒化チタン(TiN)からなる。ゲート電極GEは、平面視において、Y軸方向にアクティブ領域ACをはみ出して形成されている。
【0035】
さらに、ゲート電極GEを覆うように、保護膜PROおよび第1層間絶縁膜IL1が形成されている。保護膜PROは、例えば窒化シリコン(SiN)からなり、その厚さは、例えば0.09μmである。また、第1層間絶縁膜IL1は、例えば酸化シリコン(SiO
2)からなり、その厚さは、例えば0.7μm〜1.0μm程度である。
【0036】
保護膜PROおよび第1層間絶縁膜IL1内には、ゲート電極GEから離れて(−X軸方向側)、電子供給層ESの表面に接するソースコンタクトホールOP1が形成されている。同様に、ゲート電極GEに対し、ソースコンタクトホールOP1と反対側(+X軸方向側)に、ゲート電極GEから離れて、電子供給層ESの表面に接するドレインコンタクトホールOP2が形成されている。ソースコンタクトホールOP1の内側にソース電極SEが埋設され、ドレインコンタクトホールOP2の内側にドレイン電極DEが埋設される。ソースコンタクトホールOP1およびドレインコンタクトホールOP2は、平面視において、Y軸方向にアクティブ領域ACをはみ出して形成されている。
【0037】
ソース電極SEおよびドレイン電極DEは、例えば下層よりチタン(Ti)膜、窒化チタン(TiN)膜、アルミニウム−銅(Al−Cu)合金膜、および窒化チタン(TiN)膜が順次積層された積層膜(以下、Ti/TiN/Al−Cu/TiN積層膜と記す場合もある)からなる。Ti/TiN/Al−Cu/TiN積層膜のチタン(Ti)膜の厚さは、例えば0.03μm、アルミニウム−銅(Al−Cu)合金膜下の窒化チタン(TiN)膜の厚さは、例えば0.1μm、アルミニウム−銅(Al−Cu)合金膜の厚さは、例えば4.5μm、アルミニウム−銅(Al−Cu)合金膜上の窒化チタン(TiN)膜の厚さは、例えば0.05μmである。
【0038】
Ti/TiN/Al−Cu/TiN積層膜を構成し、アルミニウム−銅(Al−Cu)合金膜下に形成されたチタン(Ti)膜および窒化チタン(TiN)膜は、銅(Cu)などの拡散を防止するためのバリア機能を有する。また、アルミニウム−銅(Al−Cu)合金膜上に形成された窒化チタン(TiN)膜は、ソース電極SEおよびドレイン電極DEのエレクトロマイグレーション耐性を向上させるために設けられている。
【0039】
さらに、
図2および
図3に示すように、窒化物半導体層である電子供給層ESの上方にひずみ緩和層RFが形成されている。ひずみ緩和層RFは、Ti/TiN/Al−Cu/TiN積層膜からなり、第1層間絶縁膜IL1上に形成される。特に、ゲート電極GEの上方を覆うように、ひずみ緩和膜RFが形成されると、しきい値電圧の変動を効果的に抑制することができる。
【0040】
ひずみ緩和膜RFは、ソース電極SEおよびドレイン電極DEと同一層にすることができる。また、ひずみ緩和層RFはソース電極SEおよびドレイン電極DEと電気的に接続されないようにすることもできる。例えばひずみ緩和層RFは他の配線等から切り離され、電気的に孤立していてもよい。この場合、ひずみ緩和層RFとゲート電極GEとの間で容量結合が形成されるが、ゲート電極GEに均一に電位を加えることができるという効果が得られる。例えばゲート電極GEの配線抵抗の影響でRF信号が入力された時に、ゲート電極GEの延在する両端において電位が同じにならない場合でも、この容量結合により、両端の電位を同じにすることができる。
【0041】
また、ひずみ緩和層RFとゲート電極GEとをコンタクト等で接続させ、ひずみ緩和層RFをゲート電極GEの裏打配線として利用してもよい。ゲート電圧がより均等に加わるようになるため、パワーMISFETを均一動作させることができる。これは、特に、複数のパワーMISFETトランジスタが並列に接続されたマルチセル構成で有効である。
【0042】
なお、ソース電極SE、ドレイン電極DE、およびひずみ緩和膜RFは、Ti/TiN/Al−Cu/TiN積層膜に限定されるものではなく、例えば下層よりチタン(Ti)膜、アルミニウム−銅(Al−Cu)合金膜、および窒化チタン(TiN)膜が順次積層された積層膜(以下、Ti/Al−Cu/TiN積層膜と記す場合もある)によって形成してもよい。この場合、Ti/Al−Cu/TiN積層膜のチタン(Ti)膜の厚さは、例えば0.03μm、アルミニウム−銅(Al−Cu)合金膜の厚さは、例えば4.5μm、窒化チタン(TiN)膜の厚さは、例えば0.05μmである。
【0043】
また、ソース電極SE、ドレイン電極DE、およびひずみ緩和膜RFの主な導電体膜にアルミニウム−銅(Al−Cu)合金膜を用いたが、これに限定されるものではなく、例えばアルミニウム−シリコン−銅(Al−Si−Cu)合金膜を用いてもよい。
【0044】
ここで、ゲート電極GEがゲート絶縁膜GOXを介して埋め込まれたトレンチTRがチャネル層CHと電子供給層ESとの界面を超えて、チャネル層CHに達している理由について以下に説明する。
【0045】
例えばゲート電極GEが電子供給層ES上に配置されたパワーMISFETの場合は、ゲート電極GEに電圧を印加しない状態でも、電子供給層ESとチャネル層CHとの界面近傍に、電子供給層ESとチャネル層CHとのバンド不連続による2次元電子ガスが発生する。このため、しきい値電圧が負となるノーマリオン型デバイスになってしまう。
【0046】
しかし、実施の形態1におけるトレンチ構造をしたゲート電極GEを有するパワーMISFETの場合は、トレンチ構造によって、ゲート電極GE下の電子供給層ESが除去されている。そのため、電子供給層ESとチャネル層CHとの間のバンド不連続自体がなくなる。バンド不連続がないため、ゲート電極GE下のチャネル層CHには2次元電子ガスが発生しない。この結果、しきい値電圧が正である、ノーマリーオフ型デバイスを実現することができる。
【0047】
さらに、
図3に示すように、ソース電極SE、ドレイン電極DE、およびひずみ緩和膜RFを覆うように、第1層間絶縁膜IL1上に第2層間絶縁膜IL2が形成されている。第2層間絶縁膜IL2は、例えば下層から酸化シリコン(SiO
2)膜および酸窒化シリコン(SiON)膜を順次積層した積層膜からなる。酸化シリコン(SiO
2)膜の厚さは、例えば0.12μm、酸窒化シリコン(SiON)膜の厚さは、例えば0.9μmである。そして、第2層間絶縁膜IL2上には、パワーMISFETを保護するための樹脂膜、例えば5μm〜7μmの厚さのポリイミド膜PIが形成されている。
【0048】
<実施の形態1におけるパワーMISFETの特徴>
ここで、実施の形態1におけるパワーMISFETの特徴について以下に説明する。
【0049】
実施の形態1におけるパワーMISFETが、前述した関連技術におけるパワーMISFETと相違する主な点は、ポリイミド膜PIとゲート電極GEとの間に、Ti/TiN/Al−Cu/TiN積層膜からなるひずみ緩和膜RFを設けたことである。
【0050】
前述したように、パワーMISFETに電流が流れる際には、ジュール熱によりパワーMISFET全体の温度が上昇して、ポリイミド膜PIと窒化物半導体層との熱膨張係数の差により、ポリイミド膜PIから窒化物半導体層に応力が印加される。また、アセンブリ工程において、ポリイミド膜PIを熱硬化(キュア)するために、170℃〜250℃程度の熱処理が行われることなどによっても、ポリイミド膜PIから窒化物半導体層に応力が印加される。
【0051】
この窒化物半導体層に印加される応力により、もともと窒化物半導体層の各層に形成されていた自発分極電荷に加え、この応力による分極電荷が加わることになり、チャネル層CH内に発生する、2次元電子ガスを含むチャネル電子濃度が変化してしまう。このため、オン抵抗が変動する。
【0052】
特に、電子供給層ESおよびチャネル層CHのうち、ゲート電極GEの下にある領域に応力が加わると、チャネル層CHにおけるチャネル電子濃度が変化してしまうため、しきい値電圧が変動する。
【0053】
しかし、実施の形態1におけるパワーMISFETでは、ポリイミド膜PIとゲート電極GEとの間にひずみ緩和膜RFを設けており、ポリイミド膜PIからゲート電極GE下の電子供給層ESおよびチャネル層CHに印加される応力が抑制される構成になっている。
【0054】
特に、ポリイミド膜PIを熱硬化させる工程では、ポリイミド膜PIは硬化により縮む(圧縮)のに対し、窒化物半導体層は膨張(伸張)するため、ポリイミド膜PIと窒化物半導体層との間には非常に強い応力差が発生する。実施の形態1におけるひずみ緩和層RFは、窒化物半導体層と同じく膨張するため、熱硬化工程において、窒化物半導体層とひずみ緩和層RFとの間での応力ひずみは小さい。一方、ポリイミド膜PIからの応力はひずみ緩和層RFに印加されることになり、ポリイミド膜PIから窒化物半導体層に印加される応力を効果的に抑制することができる。この結果、実施の形態1では、しきい値電圧の変動を抑制することが可能になる。
【0055】
Ti/TiN/Al−Cu/TiN積層膜を構成するアルミニウム−銅(Al−Cu)合金膜は、熱膨張する材料であることから、ポリイミド膜PIとゲート電極GEとの間にTi/TiN/Al−Cu/TiN積層膜を設けることは、電子供給層ESおよびチャネル層CHに生じる応力ひずみを緩和することに有効である。
【0056】
さらに、ソースコンタクトホールOP1およびドレインコンタクトホールOP2は、Y軸方向にアクティブ領域ACをはみ出して形成されている。ソースコンタクトホールOP1には、Ti/TiN/Al−Cu/TiN積層膜からなるソース電極SEが埋め込まれ、ドレインコンタクトホールOP2には、Ti/TiN/Al−Cu/TiN積層膜からなるドレイン電極DEが埋め込まれている。これによって、電子供給層ESおよびチャネル層CHに生じるY軸方向の応力ひずみを緩和することができる。
【0057】
上述したように、ポリイミド膜PIとゲート電極GEとの間にひずみ緩和膜RFを設け、さらに、ソースコンタクトホールOP1およびドレインコンタクトホールOP2を、Y軸方向にアクティブ領域ACをはみ出して形成することによって、電子供給層ESおよびチャネル層CHに、ポリイミド膜PIから印加される応力を抑制することができる。これにより、しきい値電圧の変動をより抑制することができる。
【0058】
<実施の形態1におけるパワーMISFETの製造方法>
実施の形態1におけるパワーMISFETの製造方法を
図4〜
図11を参照しながら説明する。
図4〜
図11は、パワーMISFETの断面図である。
【0059】
図4に示すように、例えば(111)面が露出しているシリコンからなる半導体基板1S上に、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)により、半導体層構造を形成する。
【0060】
この半導体層構造では、例えばアンドープの窒化ガリウム(GaN)からなるバッファ層BFを形成する。続いて、バッファ層BF上に、アンドープの窒化ガリウム(GaN)からなるチャネル層CHを形成する。チャネル層CHの厚さは、例えば1μmである。続いて、チャネル層CH上に、アンドープの窒化アルミニウム・ガリウム(AlGaN)からなる電子供給層ESを形成する。窒化アルミニウム・ガリウム(AlGaN)の厚さは、例えば0.03μmである。このようにして、半導体層構造が形成される。この半導体層構造は、[0001]結晶軸(C軸)方向に積層するIII族面成長((0001)面成長)により形成される。
【0061】
次に、
図5に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、電子供給層ESを貫通してチャネル層CHに達するトレンチTRを形成する。
【0062】
次に、
図6に示すように、トレンチTRの内壁から電子供給層ESの一部上にわたって、ゲート絶縁膜GOXを形成する。ゲート絶縁膜GOXは、例えば酸化シリコン(SiO
2)膜から形成することができるが、これに限らず、酸化シリコン(SiO
2)膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。
【0063】
例えば高誘電率膜として、酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜、ハフニウム酸化物の一つである酸化ハフニウム(HfO
2)膜が使用される。さらに、酸化ハフニウム(HfO
2)膜に変えて、ハフニウムアルミネート(HfAlO)膜、ハフニウムオキシナイトライド(HfON)膜、ハフニウムシリケート(HfSiO)膜、ハフニウムシリコンオキシナイトライド(HfSiON)膜のような他のハフニウム系絶縁膜を使用することもできる。さらに、これらのハフニウム系絶縁膜に酸化タンタル(Ta
2O
5)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、酸化チタン(TiO
2)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ランタン(La
2O
3)、酸化イットリウム(Y
2O
3)などの酸化物を導入したハフニウム系絶縁膜を使用することもできる。ハフニウム系絶縁膜は、酸化ハフニウム(HfO
2)膜と同様、酸化シリコン(SiO
2)膜および酸窒化シリコン(SiON)膜より誘電率が高いので、酸化ハフニウム(HfO
2)膜を用いた場合と同様にリーク電流を低減することができる。
【0064】
続いて、このゲート絶縁膜GOX上であって、トレンチTRの内部を充填するように、例えば窒化チタン(TiN)からなるゲート電極GEを形成する。ゲート電極GEの厚さは、例えば0.2μmである。
【0065】
次に、
図7に示すように、ゲート電極GEを覆うように、電子供給層ES上に、保護膜PROおよび第1層間絶縁膜IL1を順次形成する。保護膜PROは、例えば窒化シリコン(SiN)からなり、その厚さは、例えば0.09μmである。また、第1層間絶縁膜IL1は、例えば下層より酸化シリコン(SiO
2)膜、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate;Si(OC
2H
5)
4)膜、および酸化シリコン(SiO
2)膜を順次積層した積層膜からなる。下層の酸化シリコン(SiO
2)膜の厚さは、例えば0.12μm、TEOS膜の厚さは、例えば0.4μm、上層の酸化シリコン(SiO
2)膜の厚さは、例えば0.5μmであり、これら膜は、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される。
【0066】
次に、
図8に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、第1層間絶縁膜IL1および保護膜PROを貫通するソースコンタクトホールOP1およびドレインコンタクトホールOP2を形成する。
【0067】
ソースコンタクトホールOP1は、ゲート電極GEの一方の側面側の電子供給層ESの表面の一部を露出するように、ゲート電極GEから互いに離間して形成される。ドレインコンタクトホールOP2は、ゲート電極GEの他方の側面側の電子供給層ESの表面の一部を露出するように、ゲート電極GEから互いに離間して形成される。さらに、ソースコンタクトホールOP1およびドレインコンタクトホールOP2は、平面視において、アクティブ領域が延在する方向であるX軸方向と直交するY軸方向に延在して形成され、Y軸方向にアクティブ領域をはみ出して形成される(前述の
図2参照)。
【0068】
次に、
図9に示すように、ソースコンタクトホールOP1およびドレインコンタクトホールOP2を形成した第1層間絶縁膜IL1上に、例えば下層よりチタン(Ti)膜、窒化チタン(TiN)膜、アルミニウム(Al)合金膜、および窒化チタン(TiN)膜を順次積層した積層膜MFを形成する。チタン(Ti)膜の厚さは、例えば0.03μm、アルミニウム(Al)合金膜下の窒化チタン(TiN)膜の厚さは、例えば0.1μm、アルミニウム(Al)合金膜の厚さは、例えば4.5μm、アルミニウム(Al)合金膜上の窒化チタン(TiN)膜の厚さは、例えば0.05μmであり、これら膜は、例えばスパッタリング法により形成される。アルミニウム(Al)合金膜は、例えばアルミニウム−銅(Al−Cu)膜またはアルミニウム−シリコン−銅(Al−Si−Cu)膜を用いることができる。
【0069】
次に、
図10に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、積層膜MFをパターニングする。
【0070】
これにより、ソースコンタクトホールOP1の内部を埋め込み、かつ、第1層間絶縁膜IL1の一部上にわたるソース電極SEを形成する。すなわち、ソース電極SEは、ゲート電極GEの一方の側壁側の電子供給層ESと電気的に接続し、ゲート電極GEと互いに離間して形成される。同様に、ドレインコンタクトホールOP2の内部を埋め込み、かつ、第1層間絶縁膜IL1の一部上にわたるドレイン電極DEを形成する。すなわち、ドレイン電極DEは、ゲート電極GEの他方の側壁側の電子供給層ESと電気的に接続し、ゲート電極GEと互いに離間して形成される。
【0071】
さらに、ゲート電極GEの上方の第1層間絶縁膜IL1上に、ソース電極SEおよびドレイン電極DEと互いに離間し、孤立したフローティング状態のひずみ緩和膜RFを形成する。
【0072】
次に、ソース電極SE、ドレイン電極DE、およびひずみ緩和膜RFを覆うように、第1層間絶縁膜IL1上に第2層間絶縁膜IL2を形成する。この第2層間絶縁膜IL2は、例えば下層より酸化シリコン(SiO
2)膜および酸窒化シリコン(SiON)膜を順次積層した積層膜からなる。酸化シリコン膜(SiO
2)の厚さは、例えば0.12μm、酸窒化シリコン(SiON)膜の厚さは、例えば0.9μmである。
【0073】
次に、
図11に示すように、第2層間絶縁膜IL2上に樹脂膜、例えばポリイミド膜PIを形成する。ポリイミド膜PIの厚さは、例えば5μm〜7μmである。以上のようにして、実施の形態1におけるパワーMISFETを形成することができる。
【0074】
このように、実施の形態1によれば、ポリイミド膜PIとゲート電極GEとの間にひずみ緩和膜RFを設けることにより、電子供給層ESおよびチャネル層CHに生じる応力ひずみを抑えて、チャネル層CHにおけるチャネル電子濃度の変化を抑制することができる。これにより、パワーMISFETのしきい値電圧またはオン抵抗の変動を防止することができる。
【0075】
(実施の形態2)
<実施の形態2におけるパワーMISFETの構成>
実施の形態2におけるパワーMISFETは、ひずみ緩和膜RFの形状が、前述の実施の形態1におけるパワーMISFETと相違する。すなわち、前述の実施の形態1では、ひずみ緩和膜RFはゲート電極GEの上方に孤立して、フローティング状態で形成されている。しかしながら、実施の形態2では、ひずみ緩和膜RFはゲート電極GEの上方に形成され、かつ、ソース電極SEと繋がっている。すなわち、ひずみ緩和膜RFとソース電極SEとは一体に形成されている。
【0076】
実施の形態2と前述の実施の形態1との相違点は、ひずみ緩和膜RFの構造であり、その他の構造は、前述の実施の形態1におけるパワーMISFETと同一または実質的に同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0077】
実施の形態2におけるパワーMISFETの構成例を
図12および
図13を用いて説明する。
図12は、実施の形態2におけるパワーMISFETの一部を拡大して示す平面図である。
図13は、
図12のB−B線で切断した断面図である。
【0078】
図12および
図13に示すように、ゲート電極GEの上方に、ひずみ緩和層RFが形成されている。ひずみ緩和層RFは、例えば下層よりチタン(Ti)膜、窒化チタン(TiN)膜、アルミニウム−銅(Al−Cu)合金膜、および窒化チタン(TiN)膜が順次積層された積層膜(以下、Ti/TiN/Al−Cu/TiN積層膜と記す場合もある)からなり、第1層間絶縁膜IL1上に形成されている。
【0079】
Ti/TiN/Al−Cu/TiN積層膜のチタン(Ti)膜の厚さは、例えば0.03μm、アルミニウム−銅(Al−Cu)合金膜下の窒化チタン(TiN)膜の厚さは、例えば0.1μm、アルミニウム−銅(Al−Cu)合金膜の厚さは、例えば4.5μm、アルミニウム−銅(Al−Cu)合金膜上の窒化チタン(TiN)膜の厚さは、例えば0.05μmである。
【0080】
このひずみ緩和膜RFとソース電極SEとは繋がっており、一体に形成されている。従って、このひずみ緩和膜RFはソース電極SEを介して電子供給層ESに接続されるので、ひずみ緩和膜RFの温度と、電子供給層SEおよびチャネル層CHの温度とを同じにすることができる。
【0081】
前述の実施の形態1で説明したように、ポリイミド膜PIとゲート電極GEとの間にひずみ緩和膜RFを設けることによって、ポリイミド膜PIからの応力はひずみ緩和層RFに印加されることになる。これにより、ポリイミド膜PIからゲート電極GE下の電子供給層ESおよびチャネル層CHに印加される応力を抑制することできる。さらに、実施の形態2では、この効果に加えて、ひずみ緩和膜RFと、電子供給層SEおよびチャネル層CHとの温度差がなくなるので、電子供給層SEおよびチャネル層CHに生じる応力ひずみをより一層抑制することができる。
【0082】
このように、実施の形態2によれば、ポリイミド膜PIとゲート電極GEとの間に、電子供給層ESおよびチャネル層CHと電気的に接続するひずみ緩和膜RFを設けることにより、電子供給層ESおよびチャネル層CHに生じる応力ひずみを抑えて、チャネル層CHにおけるチャネル電子濃度の変化を抑制することができる。これにより、パワーMISFETのしきい値電圧またはオン抵抗の変動を防止することができる。
【0083】
(実施の形態3)
<実施の形態3におけるパワーMISFETの構成>
実施の形態3におけるパワーMISFETは、平面視において、隣り合うアクティブ領域ACの間に、電子供給層ESおよびチャネル層CHに生じる応力ひずみを抑制することのできる膜を設ける。
【0084】
実施の形態3におけるパワーMISFETの構成例を
図14を用いて説明する。
図14は、実施の形態3におけるパワーMISFETの構成例を示す平面図である。
【0085】
図14に示すように、パワーMISFETにおいては、紙面の左端にソースパッドSPが配置され、紙面の右端にドレインパッドDPが配置されている。この左右に配置されたソースパッドSPとドレインパッドDPとの間に、X軸方向(ソースパッドSPとドレインパッドDPとが対向する方向)に延在する複数のアクティブ領域ACが、平面視において、X軸方向と直交するY軸方向に所定の間隔を有して設けられている。
【0086】
ソースパッドSPはY軸方向に延在して形成され、このソースパッドSPから突き出るように、ソースパッドSPからドレインパッドDPへ向かう方向(+X軸方向)に延在する複数の櫛形形状をしたソースバス電極(ソースバスバー、ソース配線とも言う)SLが形成されている。ソースパッドSPおよび複数のソースバス電極SLは一体として形成されており、例えば下層よりチタン(Ti)膜、窒化チタン(TiN)膜、アルミニウム−銅(Al−Cu)合金膜、および窒化チタン(TiN)膜が順次積層された積層膜(以下、Ti/TiN/Al−Cu/TiN積層膜と記す場合もある)からなる。このX軸方向に延在する複数のソースバス電極SLは、X軸方向に生じる電子供給層およびチャネル層の応力ひずみを緩和することのできる支柱として機能する。
【0087】
同様に、ドレインパッドDPはY軸方向に延在して形成され、このドレインパッドDPから突き出るように、ドレインパッドDPからソースパッドSPへ向かう方向(−X軸方向)に延在する複数の櫛形形状をしたドレインバス電極(ドレインバスバー、ドレイン配線とも言う)DLが形成されている。ドレインパッドDPおよび複数のドレインバス電極DLは一体として形成されており、例えば上記Ti/TiN/Al−Cu/TiN積層膜からなる。このX軸方向に延在する複数のドレインバス電極DLは、X軸方向に生じる電子供給層およびチャネル層の応力ひずみを緩和することのできる支柱として機能する。
【0088】
そして、複数のソースバス電極SLのそれぞれと、複数のドレインバス電極DLのそれぞれとが、Y軸方向に沿って互い違いに配置されている。このとき、互い違いに配置されている複数のソースバス電極SLのそれぞれと、複数のドレインバス電極DLのそれぞれとの間に、X軸方向に延在するアクティブ領域ACが配置されている。
【0089】
さらに、パワーMISFETにおいては、ソースパッドSPおよびドレインパッドDPと互いに離間して、ゲートパッドGPが配置されており、このゲートパッドGPから突き出るように、Y軸方向に延在する第1ゲートバス電極(第1ゲートバスバー、第1ゲート配線とも言う)GL1が形成されている。ゲートパッドGPおよび第1ゲートバス電極GL1は一体として形成されており、例えば窒化チタン(TiN)からなる。
【0090】
第1ゲートバス電極GL1は、Y軸方向に延在するソースパッドSPの下方に絶縁膜(図示は省略)を介して配置されている。この絶縁膜は、例えば前述の実施の形態1において説明した保護膜PROおよび第1層間絶縁膜IL1である。
【0091】
また、第1ゲートバス電極GL1から突き出るように、ソースパッドSPからドレインパッドDPへ向かう方向(+X軸方向)に延在する複数の櫛形形状をした第2ゲートバス電極(第2ゲートバスバー、第2ゲート配線とも言う)GL2が形成されている。第2ゲートバス電極GL2は、ゲートパッドGPおよび第1ゲートバス電極GL1と一体に形成されている。
【0092】
複数の第2ゲートバス電極GL2は、X軸方向に延在する複数のソースバス電極SLの下方に絶縁膜(図示は省略)を介して配置されており、複数の第2ゲートバス電極GL2のそれぞれと、複数のソースバス電極SLのそれぞれとが、この絶縁膜を介して上下に重なるように配置されている。この絶縁膜は、例えば前述の実施の形態1において説明した保護膜PROおよび第1層間絶縁膜IL1である。
【0093】
さらに、X軸方向に延在する複数のソースバス電極SLのそれぞれからY軸方向に突き出るように複数の櫛形形状をしたソース電極SEが形成されている。複数のソース電極SEは、ソースパッドSPおよび複数のソースバス電極SLと一体に形成されている。同様に、X軸方向に延在する複数のドレインバス電極DLのそれぞれからY軸方向に突き出るように複数の櫛形形状をしたドレイン電極DEが形成されている。複数のドレイン電極DEは、ドレインパッドDPおよび複数のドレインバス電極DLと一体に形成されている。
【0094】
また、X軸方向に延在する複数の第2ゲートバス電極GL2のそれぞれからY軸方向に突き出るように複数の櫛形形状をしたゲート電極GEが形成されている。複数のゲート電極GEは、ゲートパッドGP、第1ゲートバス電極GL1、および第2ゲートバス電極GL2と一体に形成されている。
【0095】
そして、複数のソース電極SEのそれぞれと、複数のドレイン電極DEのそれぞれとが、X軸方向に沿って互い違いに配置されている。このとき、互い違いに配置されている複数のソース電極SEのそれぞれと、複数のドレイン電極DEのそれぞれとの間に、ゲート電極GEが配置されている。
【0096】
<実施の形態3におけるパワーMISFETの特徴>
ここで、実施の形態3におけるパワーMISFETの特徴について以下に説明する。
【0097】
ソースパッドSPとドレインパッドDPとの間に、X軸方向に延在して形成された複数のソースバス電極SLおよび複数のドレインバス電極DLは、Ti/TiN/Al−Cu/TiN積層膜からなり、X軸方向に生じる電子供給層およびチャネル層の応力ひずみを緩和することのできる支柱として機能する。特に、複数のソースバス電極SLの下方には、絶縁膜を介して複数の第2ゲートバス電極GL2が形成されており、複数のソースバス電極SLのそれぞれと、複数の第2ゲートバス電極GL2のそれぞれとは、この絶縁膜を介して上下に重なって形成されている。このように、複数のソースバス電極SLのそれぞれと、複数の第2ゲートバス電極GL2のそれぞれとを絶縁膜を介して上下に重ねて配置することによって、電子供給層およびチャネル層がたわみにくくなるので、X軸方向において、電子供給層およびチャネル層に生じる応力ひずみをより一層抑制することができる。
【0098】
このように、実施の形態3によれば、ソースパッドSPとドレインパッドDPとの間に、ソースパッドSPとドレインパッドDPとが対向する方向(X軸方向)に延在する、複数のソースバス電極SLおよび複数のドレインバス電極DLを設けることにより、これらが支柱となって、X軸方向に生じる電子供給層およびチャネル層のたわみを抑制して応力ひずみを低減することができる。さらに、複数のソースバス電極のそれぞれと、絶縁膜を介して上下に重なるように、複数の第2ゲートバス電極GL2のそれぞれを設けることによって、X軸方向に生じる電子供給層およびチャネル層のたわみをより一層抑制することができる。これにより、チャネル層におけるチャネル電子濃度の変化を抑制することができるので、パワーMISFETのしきい値電圧またはオン抵抗の変動を防止することができる。
【0099】
<実施の形態3におけるパワーMISFETの変形例>
前述の実施の形態3におけるパワーMISFETにおいても、前述した実施の形態1、2と同様にして、複数のゲート電極GEの上方に複数のひずみ緩和膜RFを形成することができる。
【0100】
図15は、実施の形態3の変形例におけるパワーMISFETの構成例を示す平面図である。
【0101】
図15に示すように、Y軸方向に延在する複数のゲート電極GEの上方に、絶縁膜(図示は省略)を介して複数のひずみ緩和膜RFが形成されており、複数のゲート電極GEのそれぞれと、複数のひずみ緩和膜RFのそれぞれとは、この絶縁膜を介して上下に重なって形成されている。複数のひずみ緩和膜RFは、ソースパッドSP、複数のソースバス電極SL、および複数のソース電極SE、ならびにドレインパッドDP、複数のドレインバス電極DL、および複数のドレイン電極DEと同一層であり、例えばTi/TiN/Al−Cu/TiN積層膜からなる。また、上記絶縁膜は、例えば前述の実施の形態1において説明した保護膜PROおよび第1層間絶縁膜IL1である。
【0102】
すなわち、実施の形態3の変形例で示したひずみ緩和膜RFは、前述の実施の形態1において説明したひずみ緩和膜RFと同様であって、ポリイミド膜PIとゲート電極GEとの間に設けられている(前述の
図3参照)。
【0103】
また、実施の形態3の変形例で示したひずみ緩和膜RFは、前述の実施の形態1において説明したひずみ緩和膜RFと同様に、ゲート電極GEの上方に孤立して、フローティング状態で形成されているが、前述の実施の形態2において説明したひずみ緩和膜RFと同様に、ソース電極SEと繋がっていてもよい。すなわち、ひずみ緩和膜RFとソース電極SEおよびソースバス電極SLとを一体に形成してもよい。
【0104】
(実施の形態4)
<実施の形態4におけるパワーMISFETの構成>
実施の形態4におけるパワーMISFETは、複数のドレインバス電極DLの下方に複数のダミーパタンを設けた点が、前述の実施の形態3におけるパワーMISFETと相違する。
【0105】
実施の形態4と前述の実施の形態3との相違点は、ダミーパタンを設けた点であり、その他の構造は、前述の実施の形態3におけるパワーMISFETと同一または実質的に同一であるので、ここではダミーパタンについてのみ説明する。
【0106】
実施の形態4におけるパワーMISFETの構成例を
図16を用いて説明する。
図16は、実施の形態4におけるパワーMISFETの構成例を示す平面図である。
【0107】
図16に示すように、パワーMISFETにおいては、前述の実施の形態3において説明したパワーMISFETと同様に、ドレインパッドDPはY軸方向に延在して形成され、このドレインパッドDPから突き出るように、ドレインパッドDPからソースパッドSPへ向かう方向(−X軸方向)に延在する複数の櫛形形状をしたドレインバス電極DLが形成されている。さらに、X軸方向に延在する複数のドレインバス電極DLのそれぞれからY軸方向に突き出るように複数の櫛形形状をしたドレイン電極DEが形成されている。
【0108】
ドレインパッドDP、複数のドレインバス電極DL、および複数のドレイン電極DEは一体として形成されており、例えば下層よりチタン(Ti)膜、窒化チタン(TiN)膜、アルミニウム−銅(Al−Cu)合金膜、および窒化チタン(TiN)膜が順次積層された積層膜(以下、Ti/TiN/Al−Cu/TiN積層膜と記す場合もある)からなる。
【0109】
さらに、複数のドレインバス電極DLの下方には、絶縁膜(図示は省略)を介して複数のダミーパタンDUMが形成されており、複数のドレインバス電極DLのそれぞれと、複数のダミーパタンDUMのそれぞれとが、この絶縁膜を介して上下に重なるように形成されている。この絶縁膜は、例えば前述の実施の形態1において説明した保護膜PROおよび第1層間絶縁膜IL1である。
【0110】
複数のダミーパタンDUMは、ゲートパッドGP、第1ゲートバス電極GL1、および複数の第2ゲートバス電極GL2と同一層であるが、複数のドレインバス電極DLのそれぞれの下方に孤立して、フローティング状態で形成されている。このように、複数のドレインバス電極DLのそれぞれと、複数のダミーパタンDUMのそれぞれとを絶縁膜を介して上下に重ねて配置することによって、電子供給層およびチャネル層がたわみにくくなるので、X軸方向において、電子供給層およびチャネル層に生じる応力ひずみをより一層抑制することができる。
【0111】
このように、実施の形態4によれば、ソースパッドSPとドレインパッドDPとの間に、複数のドレインバス電極DLのそれぞれと、絶縁膜を介して上下に重なるように、複数のダミーパタンDUMのそれぞれを設けることによって、ソースパッドSPとドレインパッドDPとが対向する方向(X軸方向)に生じる電子供給層およびチャネル層のたわみをより一層抑制することができる。これにより、チャネル層におけるチャネル電子濃度の変化を抑制することができるので、パワーMISFETのしきい値電圧またはオン抵抗の変動を防止することができる。
【0112】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。