(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(窓体の構成)
本発明の電動突き出し窓を、
図1〜6に示すような、枠体1に二枚の障子2を納めた突き出し窓の例を挙げて説明する。
本発明の電動突き出し窓(又は、横滑り出し窓)は、建物に設置される枠体1及び枠体1内に回動自在に嵌まる障子2とからなる開閉窓本体(以下、単に「窓」という。)、窓の開閉制御をする窓開閉制御機構及び外部の状況を検出する外部センサ6とからなる。
【0010】
窓開閉制御機構は障子2を突き出して窓を開閉する開閉手段3、開閉手段3の駆動を制御する制御ユニット5とからなり、制御ユニット5に、開閉手段3及びロック手段4を駆動操作するための操作手段7及び外部センサ6が接続されている。
【0011】
外部センサ6は、所定時間毎に風速を検出し、検出した風速を制御ユニット5に送信する風速センサ61、所定時間毎に外気温度を検出し、検出した外気温度を制御ユニット5に送信する温度センサ62、降雨を検知した時に降雨検知信号として制御ユニット5に送信する降雨センサ63、煙を検知したときに煙検知信号として制御ユニット5に送信する煙感知センサ64等からなる。
【0012】
操作手段7は、窓の開閉を自動制御で行うことを指示する自動開閉信号を制御ユニット5に送信する自動開閉スイッチ71、窓の開閉を手動操作するための手動操作信号を制御ユニット5に送信する手動操作スイッチ72、窓を強制的に全開放状態に操作する強制開放信号を制御ユニット5に送信する強制開放スイッチ73を備えている。
【0013】
制御ユニット5は、操作手段7及び外部センサ6により送信される各種信号を受信する受信部51、受信した各種信号に基づいて窓の開度を決定する制御部52、制御部52により決定された窓の開度を開閉信号として開閉手段3に送信する送信部53とからなる。
【0014】
そして、制御部52は、窓を閉鎖状態とする開閉信号を送信するときカウントダウンがスタートする閉鎖タイマ56a(フローチャートでは、「T0」と示す。)と、窓を小開放状態とする開閉信号を送信したときカウントダウンがスタートする小開タイマ56b(フローチャートでは、「T5」と示す。)と、窓を中開放状態とする開閉信号を送信したときカウントダウンがスタートする中開タイマ56c(フローチャートでは、「T15」と示す。)とを備えている。
【0015】
開閉手段3は、制御ユニット5の送信部53から送信される開閉信号を受信し、開閉信号に基づいて窓の開閉を行う。
【0016】
枠体1は、上下の横枠(上枠11及び下枠12)と、左右の縦枠13、13及び方立14を枠組みして形成されており、枠体1に支持された二枚の障子2は、何れも上下の横框(上框21及び下框22)と縦框(外側縦框23及び方立側縦框24)とを備え、左右の縦框の間に上下の横框を取り付けて四周框組みして、ガラス等のパネル25を嵌め込んで形成されている。
【0017】
上枠11及び下枠12の室内側部位には、障子2の閉鎖時に上框21、下框22の室内側面に当接するシール部材11a、シール部材12aが設けられており、縦枠13,13及び方立14の室内側部位には、障子2の閉鎖時に外側縦框23及び方立側縦框24の室内側部に当接するシール部材13a、及びシール部材14aが設けられている。
【0018】
上枠11の下面には、障子を回動自在に支持する回動軸11cが設けられ、上框21の上面に設けられた軸受21cにより、障子2が回動軸11cを中心に回動自在に支持され、突き出し自在に構成されている。上枠11の下面には、上框21の軸受21cに摺接するシール部材11bが設けられている。
【0019】
縦框(外側縦框23及び方立側縦框24)の室外側部位には、障子2の閉鎖時に左右の縦枠13及び方立14の見付け方向内側に当接するシール部材23a、24aが設けられている。
【0020】
(開閉手段の構成)
開閉手段3は、制御ユニット5の送信部53により送信される開閉信号に基づいてシリンダを伸縮させる開閉アクチュエータ31、開閉アクチュエータ31のシリンダの上方に左右方向に延びるように固定された連動バー32、連動バー32の左右両端部に一端が回動自在に連結される開閉アーム33とを備えている。
【0021】
開閉アクチュエータ31はシリンダを上方に向けて方立14内に設置されており、連動バー32の左右両端部が方立14の左右側面に形成された長孔より方立14外に突出している。方立14の左右側面には、前記長孔に沿って溝型のアームガイド34が配置されており、アームガイド34内を連動バー32に設けた駒部35が上下摺動するように構成されている。そのため、連動バー32が上下動する際に水平が維持され、安定して上下動することができる。
【0022】
方立側縦框24の室内側面には、開閉手段3の開閉アーム33を回動自在に支持するためのブラケット36が固定されている。ブラケット36は、固定部及びアーム取付部とからなる平面視L形をしており、固定部により方立側縦框24の室内側面に取り付けられ、アーム取付部が室内側に向かって突出して形成され、開閉アーム33を回動自在に取り付けるためのピン部材36aを支持している。
【0023】
連動バー32の駒部35よりも外側部は、アームガイド34より外方に突出してピン部材32aが設けられており、ピン部材32aとブラケット36に取り付けられたピン部材36aとが、開閉アーム33によって連結されている。
【0024】
そして、
図5に示す障子2の閉鎖状態から、開閉アクチュエータ31のシリンダが伸長すると、連動バー32のピン部材32aがアームガイド34に沿って垂直に上昇して開閉アーム33の下端が上方に移動し、開閉アーム33の上端が障子2の方立側縦框24に設けられたピン部材36aを外方へ押し出すように開閉アーム33が移動する。それにより、障子2は回動軸11cを中心にして、室外に突き出されて、
図6に示すように開放状態となる。
【0025】
(ロック手段の構成)
ロック手段4は、シリンダを有するロックモータ41、下枠12上を左右方向に摺動するロックアーム42、ロックアーム42上に設けられたロックピン43、ロックアーム42とシリンダとを連結する連結部材44、下框22の室内側面に固定されたロック受45とから構成されている。
【0026】
ロックモータ41は、方立14の右方の下枠12上に、シリンダを右方へ向け伸縮自在にして配置されており、シリンダの先端部には、連結部材44がねじ等により連結されている。そして、ロックアーム42が方立14を貫いて下枠12上を左右方向に延びており、ロックアーム42の左右の障子2の下方位置にロックピン43が固定されている。(
図4では、左側障子のロック手段は省略されている。)ロックアーム42の右端は、前記連結部材44がねじ等により連結され、ロックモータ41のシリンダとロックアーム42とが連結されている。
【0027】
下框22の室内側面には、ロック受45がビス等により固定されている。ロック受45は、下框22の室内側面に固定される固定部、固定部上部より室内側に水平に延びる水平部、水平部から下方に垂下されるロック部とから構成され、ロック部のロックピン43が挿入される側には室内方向に傾斜する導入部が形成され、ロックピン43の挿入をスムーズにしている。
【0028】
ロックモータ41を駆動することにより、シリンダが右方向に伸張し、それに伴って、シリンダに連結固定されているロックアーム42も右方向に摺動し、ロックピン43が下框22の室内側に設けたロック受45の導入部からロック部に係合し、窓の開閉を阻止することができる。
【0029】
(電動突き出し窓の制御)
本発明の電動突き出し窓を実施するに際しては、外気温度、風速、窓の開閉状態について、以下のように定義・設定がされている。
外気温度について、換気により快適な室内状況とすることができる温度範囲を「換気好適温度範囲」とし、冷暖房装置等空調設備により室内温度を調整する必要がある温度範囲を「換気不適温度範囲」と定義している。
本発明の電動突き出し窓を制御するに際して、換気好適温度範囲として12℃以上28℃未満が設定され、換気不適温度範囲として12℃未満もしくは28℃以上が設定されている。
【0030】
風速について、窓に対して負圧を生じさせる風速を「マイナス」、正圧を生じさせる風速を「プラス」とし、窓を開放すると風の吹き込みが強く、窓を閉鎖する基準となる大きさの風を「強風」とし、窓が全開の状態では風の吹き込みが強く、全開放状態から窓の開度を小さくする基準となる大きさの風を「小風」とし、風速に応じて窓の開閉制御を行う上で設定される強風と小風との間の大きさの風の一例を「中風」と定義している。
本発明の電動突き出し窓を制御するに際しては、強風値として風速15m/sが、中風値として風速5m/sが、小風値として風速3m/sが設定されている。
【0031】
そして、強風値以上の風域(15m/s〜)を「暴風域」と、中風以上強風未満の風域(5m/s〜15m/s)を「強風域」と、小風以上中風未満の風域(3m/s〜5m/s)を「中風域」と、無風以上小風未満の風域(0m/s〜3m/s)を「小風域」と定義している。
【0032】
窓の開閉状態について、窓の構造上の最大の開放状態を「全開放状態」、通常の使用における最大の開放状態を「大開放状態」、降雨時においても雨が吹き込まない開放状態を「小開放状態」とし、風速に応じて窓の開閉制御を行う上で設定される大開放状態と小開放状態との間の開放状態の一例を「中開放状態」と定義している。なお、大開放状態は、全開放状態と同じであってもよい。
【0033】
本発明の電動突き出し窓を制御するに際しては、大開放状態として45°開放が、中開放状態として15°開放が、小開放状態として5°開放が設定されている。
これらの定義・設定は、一例であり、設定の数や大きさ等は適宜設定できるものである。
【0034】
本発明の電動突き出し窓は、操作手段7の各スイッチにより、以下のように制御される。
使用者により、操作手段7の強制開放スイッチ73が操作されると、強制開放信号が制御ユニット5の受信部51に送信される。強制開放信号を受信した制御ユニット5は窓を全開放状態とする開閉信号を送信部53から開閉手段3に送信し、窓を全開放状態とする。
【0035】
使用者により、操作手段7の手動操作スイッチ72が操作されると、手動操作信号が制御ユニット5の受信部51に送信される。手動操作信号を受信した制御ユニット5は、風速センサ61により検出される風速が強風値未満(-15m/s〜15m/s)にあれば、手動操作信号に基づいて開度を決定し、開閉信号として送信部53から開閉手段3に送信して窓を開閉制御する。また、風速センサ61により検出される風速が暴風域(〜-15m/s、15m/s〜)にあれば、窓を閉鎖する開閉信号を送信部53から開閉手段3に送信して窓を閉鎖状態にし、その後所定時間(たとえば30分間)窓の閉鎖状態を維持する。
なお、窓を閉鎖状態とする開閉信号を送信するのに連動して、窓をロック状態とする信号をロック手段4に送信して施錠するように制御するとともに、窓を開放状態とする開閉信号を送信するのに連動して、窓をロック解除状態とする信号をロック手段4に送信して解錠するように制御することもできる。
【0036】
使用者により、操作手段7の自動開閉スイッチ71が押されると、自動開閉信号が制御ユニット5の受信部51に送信される。制御ユニット5が自動開閉信号を受信すると、風速センサ61、温度センサ62、降雨センサ63、煙感知センサ64等の外部センサ6により検出される情報に基づいて窓の自動開閉制御が行われる。
【0037】
(電動突き出し窓の自動開閉制御)
電動突き出し窓は、同一の意匠で、制御の方法を異ならせることにより、給気タイプの窓と排気タイプの窓のいずれの機能を持たせるかを自由に選択することができる。
以下に、電動突き出し窓を、給気タイプの窓としての機能を持たせるときの自動開閉制御と、排気タイプの窓としての機能を持たせるときの自動開閉制御を説明する。
【0038】
ア.給気タイプ
操作手段7の自動開閉スイッチ71が押され、自動開閉制御が行われると、制御ユニット5の制御部52は、各外部センサにより検出される情報に基づいて最適な窓の開度を決定する。決定された開度は開閉信号として送信部53から開閉手段3に出力されて、開閉手段3により窓の開閉動作が行われる。
【0039】
制御ユニット5は、煙感知センサ64により煙が検知され、煙検知信号が送信されると、他の外部センサ6から送信される情報に優先して窓を全開放状態とする開閉信号を開閉手段3に送信し、煙感知センサ64により煙が検知されなくなるまで全開放状態を維持する。
【0040】
煙感知センサ64により煙が検知されない通常時には、制御ユニット5は、温度センサ62により検出される外気温度が、換気好適温度範囲(12〜28℃)であるか否かを判定して、温度センサ62により検出される外気温度が換気好適温度範囲(12〜28℃)にはないとき、すなわち換気不適温度範囲(〜12℃、28℃〜)にあるときには、冷暖房装置等空調設備により調整されている室内に外気が侵入することを防止するために、窓を閉鎖状態とする開閉信号を開閉手段3に送信する。
【0041】
そして、温度センサ62により検出される外気温度が換気好適温度範囲(12〜28℃)にある場合には、制御ユニット5は、降雨センサ63と風速センサ61により検出される情報に基づいて窓の開度を決定し、開閉信号として開閉手段3に送信している。
【0042】
具体的には、温度センサ62により検出される外気温度が換気好適温度範囲(12〜28℃)にある場合には、制御ユニット5は、降雨センサ63により降雨が検知されているか否かを判定し、降雨センサ63により降雨が検知されていないときには、窓の開放を閉鎖状態から大開放状態(45°開放状態)の範囲に設定して、風速センサ61により検出される風速に基づいて窓の開度を決定し、開閉信号として開閉手段3に送信している。降雨センサ63により降雨が検知されているときには、窓の開放を閉鎖状態から小開放状態(5°開放状態)の範囲に制限して、風速センサ61により検出される風速に基づいて窓の開度を決定し、開閉信号として開閉手段3に送信している。
【0043】
たとえば、降雨センサ63により降雨が検知されておらず、風速センサ61により検出される風速が暴風域(〜-15m/s、15m/s〜)にある場合には窓を閉鎖状態となるように制御して、暴風による窓の脱落や破損を防止するとともに、強風が室内に入り込むことを防止するとともに、風速が強風値以下(〜15m/s)であっても、風速がマイナスの時(〜-0m/s)には窓を閉鎖状態となるように制御して、負圧により室内の空気が室外に排出されることを防止している。
【0044】
そして、風速がプラスで、風速センサ61により検出される風速が小風域(+0m/s〜3m/s)にある場合には窓を大開放状態(45°開放状態)となるように、同じく中風域(3m/s〜5m/s)にある場合には窓を中開放状態(15°開放状態)となるように、同じく強風域(5m/s〜15m/s)にある場合には窓を小開放状態(5°開放状態)となるように、風速に応じて窓の開度を細かく制御して、風の入り込みすぎを防止して室内環境を快適にしている。
【0045】
降雨センサ63により降雨が検知されているときも、風速センサ61により検出される風速が暴風域(〜-15m/s、15m/s〜)にある場合には窓を閉鎖状態となるように制御するとともに、風速が強風値以下(〜15m/s)であっても、風速がマイナスの時(〜-0m/s)には窓を閉鎖状態となるように制御している。
そして、風速センサ61により検出される風速がマイナス強風値〜プラス強風値の範囲(+0m/s〜15m/s)にある場合には窓を小開放状態(5°開放状態)となるように窓の開度を決定している。
【0046】
なお、上記の例では、窓の開度は、風速センサ61により検出される風速に応じて段階的に変化するように制御されているが、その段階は、さらに細かくすることもでき、また、連続的に開度が変化するように制御することもできる。
【0047】
上記のように窓の開度が決定され、開閉信号が送信されたときには、送信された開閉信号に応じて、閉鎖タイマ56a、小開タイマ56b、中開タイマ56cのカウントダウンがスタートし、タイマのカウントダウンが終了するまでの所定時間(たとえば30分間)は、その後風速センサ61により検出される風速が変わっても、窓を開放方向へ駆動する開閉信号の送信は行われない。ただし、風速が強くなった場合など窓の閉鎖方向へ駆動する開閉信号の送信は、随時行われる。
上記窓を開放方向へ駆動する開閉信号の送信の中止は、窓が閉鎖方向へ制御された場合にのみ行われるものとしてもよい。
【0048】
給気タイプの電動突き出し窓は、以上のように自動開閉制御が行われることにより、風速センサ61により送信される風速値が暴風域(〜-15m/s,15m/s〜)にある場合には窓を閉鎖して、暴風による窓の脱落や破損を防止するとともに、風速がマイナスであるときには窓が閉鎖状態とされ、換気経路を構成する給気窓から排気される逆流を防止することができ、換気経路の乱れを防止することができる。そして、風速がプラスであるときには風速センサ61により検出される風速が大きくなるに応じて開度が小さくなり、強風が室内に吹き込むことを防止でき、室内環境を良好にできる。
【0049】
さらに、降雨センサ63により降雨が検知されているときには、開度を小開放状態(5°開放状態)以下に制限して、雨が吹き込みにくい突き出し窓の特徴を生かして、雨の吹き込みを防止しながら給気が継続できる。
また、窓の開閉駆動が行われた後、その後風速が変わっても、窓の開放方向への回動は所定時間行われないので、窓が風の変化で頻繁に開閉することが防止され、開閉アクチュエータ31等開閉手段3の寿命を延ばすことができる。
【0050】
イ.排気タイプの窓
操作手段7の自動開閉スイッチ71が押され、自動開閉制御が行われると、制御ユニット5の制御部52は、各外部センサにより検出される情報に基づいて最適な窓の開度を決定する。決定された開度は開閉信号として送信部53から開閉手段3に出力されて、開閉手段3により窓の開閉動作が行われる。
【0051】
制御ユニット5は、煙感知センサ64により煙が検知され、煙検知信号が送信されると、他の外部センサ6から送信される情報に優先して窓を全開放状態とする開閉信号を開閉手段3に送信し、煙感知センサ64により煙が検知されなくなるまで全開放状態を維持する。
【0052】
煙感知センサ64により煙が検知されない通常時には、制御ユニット5は、風速センサ61により検出される情報に基づいて窓の開度を決定し、開閉信号として開閉手段3に送信している。
【0053】
たとえば、風速センサ61により検出される風速が暴風域(〜-15m/s、15m/s〜)にある場合には窓を閉鎖状態となるようにして、暴風による窓の脱落や破損を防止するとともに、風速が強風値以下(〜15m/s)であっても、風速がプラスの時(+0m/s〜)には窓を閉鎖状態となるように制御して、正圧により室内に空気が入り込むことを防止している。
【0054】
そして、風速センサ61により送信される風速値が、マイナスの強風値〜無風(-15m/s〜-0m/s)にあるときに、窓を大開放状態(45°開放状態)となるように制御している。
【0055】
上記のように窓の開度が決定され、窓を閉鎖状態とする開閉信号が送信されたときには、閉鎖タイマ56aのカウントダウンがスタートし、タイマのカウントダウンが終了するまでの所定時間(たとえば30分間)は、その後風速センサ61により検出される風速が変わっても、窓を開放方向へ駆動する開閉信号の送信は行われない。
上記窓を開放方向へ駆動する開閉信号の送信の中止は、窓が閉鎖方向へ制御された場合にのみ行われるものとしてもよい。
【0056】
排気タイプの電動突き出し窓は、以上のように自動開閉制御が行われることにより、風速センサ61により送信される風速値が暴風域(〜-15m/s,15m/s〜)にある場合には窓を閉鎖して、暴風による窓の脱落や破損を防止することができるとともに、建物外の風が窓に正圧を生じさせる場合には閉鎖状態に制御されて、排気窓から外部の空気が侵入する逆流を防止することができる。
そして、突き出し窓の雨が入り込み難いという特徴を利用して、建物外の風が窓に負圧を生じさせる場合であれば、風速が強風値未満までは窓を開放して最低限の排気をすることができる。
また、窓を閉鎖状態とする制御が行われた後、その後風速が変わっても、開放方向への回動は所定時間行われないので、窓が風の変化で頻繁に開閉することが防止され、開閉アクチュエータ31等開閉手段3の寿命を延ばすことができる。
【0057】
(制御形態)
本発明の電動突き出し窓装置は、個別制御、集中制御のいずれの形態においても使用することができる。
a.個別制御
図7に示されるように、風速センサ61、温度センサ62、降雨センサ63の外部センサ、開閉手段3、ロック手段4、操作手段7、及び、窓本体からなる電動突き出し窓を、他の電動突き出し窓に対して独立して設置する。図示はしていないが、外部センサとして、さらに煙感知センサ64を設置することも可能である。なお、
図7に示される風速センサ61は、室内外の気圧の差を検出する差圧センサにより構成されている。
各窓毎に外部センサを備えているので、各窓の状況に応じた細かい開閉制御を行うことができる。また、個々の窓で構成部材や制御が完結しているために建物への設置が比較的容易にでき、戸建て等の住宅にも設置することができる。
なお、操作手段7については、一つの操作手段7により複数の電動突き出し窓を操作できるようにしてもよい。
【0058】
b.集中制御
図8に示されるように、窓の開閉手段3及びロック手段4に接続された制御ユニット5を中継盤に接続し、中継盤を介して風速センサ61、温度センサ62、降雨センサ63等の外部センサ及び操作手段7が接続されている。建物の屋上などに設置した外部センサの情報等によりビル等の大型建造物全体の効率的な換気をすることができる。
【0059】
c.集中制御(管理システムとの連携)
図9に示されるように、集中制御においては、建物の管理システムに連携させて、たとえば煙感知センサ64等の建物の管理システムの各種センサや空調設備の駆動に連動させて窓を開閉制御させるなど、建築全体のエネルギー消費に対して効率のよい換気をすることができる。
【0060】
なお、煙感知センサ64を窓装置毎に設けたり、空調設備を制御ユニット5に直接連携させることにより、個別制御においても、煙感知センサや空調設備との連動制御を行うことができる。
【0061】
(窓の開閉制御のフローチャート)
図10に、本発明の電動突き出し窓を開閉制御するためのフローチャートを示す。
電源が入ると、まず、強制開放信号が受信されているか否かが判定され(ステップs101)、強制開放信号が受信されている場合には、窓を強制的に全開放状態にする(ステップs102)。
【0062】
強制開放信号が受信されていなければ、次に、手動操作信号が受信されているか否かが判定され(ステップs103)、手動操作信号が受信されていれば、ステップs104に進み、風速センサ61により送信される風速値が、マイナスの強風値〜プラスの強風値の範囲(-15m/s〜15m/s)にあるか否かが判定される。
【0063】
ステップs104で、風速センサ61により送信される風速値がマイナスの強風値〜プラスの強風値の範囲(-15m/s〜15m/s)にあると判定されれば、窓を使用者の開閉操作に応じて開閉制御して(ステップs105)、ステップs101に戻る。一方、ステップs104で、風速センサ61により送信される風速値がマイナスの強風値〜プラスの強風値の範囲(-15m/s〜15m/s)外にあると判定された場合、すなわち暴風域である場合には、窓を閉鎖状態とし、閉鎖タイマ56aのカウントダウンを開始させて(ステップs106)、ステップs101に戻る。
【0064】
ステップs103で、手動操作信号が受信されていないと判定された場合には、ステップs107に進み、窓の自動開閉信号が受信されているか否かが判定される。自動開閉信号が受信されていれば、ステップs108に進んで窓の自動開閉制御を行う。自動開信号が受信されていなければ、ステップs101に戻る。
【0065】
(給気タイプの電動突き出し窓の自動開閉制御のフローチャート)
図11に、給気タイプの電動突き出し窓の自動開閉制御サブルーチン(ステップs108)のフローチャートを示す。
自動開閉制御サブルーチンにおいて、ステップs201では、煙感知センサ64により煙が検知され、煙検知信号が送信されているか否かが判定される。煙検知信号が送信されている場合には、窓を全開放状態として(ステップs202)、ステップs201に戻り、煙検知信号が送信されなくなるまで窓の強制開放状態が維持される。
【0066】
煙検知信号が送信されていないときには、ステップs203に進み、温度センサ62により検出される外気温度が換気好適温度範囲(12℃〜28℃)にあるか否かが判定される。
【0067】
ステップs203で、温度センサにより検出される外気温度が換気好適温度範囲(12℃〜28℃)にないと判定された場合、すなわち外気温度が換気不適温度範囲(〜12℃、28℃〜)にある場合には、ステップs204に進み、閉鎖タイマ56aがゼロであるか否かを判定する。ステップs204で閉鎖タイマ56aがゼロであると判定された場合には、窓を閉鎖状態として、閉鎖タイマ56aのカウントダウンをスタートさせて(ステップs205)、リターンする。
【0068】
ステップs204で閉鎖タイマ56aがゼロでないと判定された場合は、窓はすでに閉鎖状態にあるので、現状を維持してリターンする。
なお、現状を維持してリターンするに際して、各タイマのカウントダウンを初期値(たとえば30分)から再スタートさせるようにしてもよい。
【0069】
ステップs203で、温度センサ62により検出される外気温度が換気好適温度範囲(12℃〜28℃)にあると判定された場合には、ステップs206に進み、降雨センサ63により降雨が検知され、降雨検知信号が送信されているか否かが判定され、降雨検知信号が送信されている場合には、ステップs213に進む。
【0070】
ステップs213では、風速センサ61により検出される風速が無風〜プラス強風値の範囲(+0m/s〜15m/s)にあるか否かが判定され、風速が無風〜プラス強風値の範囲(+0m/s〜15m/s)にあると判定された場合はステップs214に進んで小開タイマ56bと閉鎖タイマ56aの両タイマがゼロであるか否かを判定する。ステップs214で両タイマがゼロであることが判定された場合は、窓を小開放状態(5°開放状態)とし、小開タイマ56bのカウントダウンをスタートさせて(ステップs215)、リターンする。ステップs214で、いずれかのタイマのカウンタがゼロでないと判定された場合には、窓はすでに小開放状態(5°開放状態)もしくは閉鎖状態にあるので、現状を維持してリターンする。
【0071】
ステップs213で風速センサ61により検出される風速が無風〜プラス強風値の範囲(+0m/s〜15m/s)にはないと判定された場合には、ステップs216に進み、閉鎖タイマ56aがゼロであるか否かを判定する。ステップs216で閉鎖タイマ56aがゼロであると判定された場合は、窓を閉鎖状態とし、閉鎖タイマ56aのカウントダウンをスタートさせて(ステップs217)、リターンする。
【0072】
ステップs216で閉鎖タイマ56aがゼロでないと判定された場合は、窓はすでに閉鎖状態であるので、現状を維持してリターンする。
【0073】
一方、ステップs206で、降雨センサ63により降雨が検知されず、降雨検知信号が送信されていないと判定された場合には、ステップs207に進み、風速センサ61により検出される風速がプラスの小風域(+0m/s〜3m/s)にあるか否かが判定され、プラスの小風域(+0m/s〜3m/s)にあると判定された場合には、ステップs208に進む。ステップs208では、中開タイマ56c、閉鎖タイマ56a、小開タイマ56bのカウンタがゼロであるか否かが判定され、すべてのタイマがゼロであることが判定された場合には、窓を大開放状態(45°開放状態)とし(ステップs209)、リターンする。ステップs208で、いずれかのタイマのカウンタがゼロでないと判定された場合には、窓はすでに中開放状態、小開放状態、閉鎖状態の何れかの開放状態であるので、窓の大開放状態への駆動は中止され、現状を維持してリターンする。
【0074】
ステップs207で、風速センサ61により検出される風速がプラスの小風域(+0m/s〜3m/s)にないと判定された場合には、ステップs210に進み、風速センサ61により検出される風速がプラス中風域(3 m/s〜5 m/s)にあるか否かが判定される。
【0075】
ステップs210で、風速センサにより検出される風速がプラス中風域(3 m/s〜5 m/s)にあると判定された場合には、ステップs211に進み、中開タイマ56c、閉鎖タイマ56a、小開タイマ56bのカウンタがゼロであるか否かが判定される。ステップs211で、すべてのタイマがゼロであることが判定された場合には、窓を中開放状態(15°開放状態)とし、中開タイマ56cのカウントダウンをスタートして、リターンする(ステップs212)。ステップs211で、いずれかのタイマのカウンタがゼロでないと判定された場合には、窓はすでに中開放状態、小開放状態、閉鎖状態の何れかの開放状態であるので、現状を維持してリターンする。
【0076】
ステップs210で、風速センサ61により検出される風速がプラス中風域(3 m/s〜5 m/s)にないと判定された場合には、ステップs213に進み、風速センサ61により検出される風速が無風〜プラス強風値の範囲(+0m/s〜15m/s)にあるか否かが判定される。
【0077】
ステップs213で、風速センサ61により検出される風速が無風〜プラス強風値の範囲(+0m/s〜15m/s)にあると判定された場合には、ステップs214に進み、小開タイマ56bと閉鎖タイマ56aのカウンタがゼロであるか否かが判定される。ステップs214で両タイマがゼロであることが判定されたら、窓を小開放状態(5°開放状態)とし、小開タイマ56bのカウントダウンをスタートして、リターンする(ステップs215)。ステップs214で、小開タイマ56bと閉鎖タイマ56aのいずれかのカウンタがゼロでないと判定された場合には、窓はすでに小開放状態と閉鎖状態の何れかの開放状態であるので、現状を維持してリターンする。
【0078】
ステップs213で、風速センサ61により検出される風速が無風〜プラス強風値の範囲(+0m/s〜15m/s)にないことが判定された場合には、ステップs216に進み、閉鎖タイマ56aがゼロであるか否かを判定する。ステップs216で閉鎖タイマ56aがゼロであると判定された場合には、窓を閉鎖状態として、閉鎖タイマ56aのカウントダウンをスタートさせて(ステップs217)、リターンする。
【0079】
ステップs216で閉鎖タイマ56aがゼロでないと判定された場合は、窓はすでに閉鎖状態にあるので、現状を維持してリターンする。
【0080】
(排気タイプの自動開閉制御のフローチャート)
図12に、本発明の実施形態の排気タイプの自動開閉制御サブルーチン(ステップs108)のフローチャートを示す。
【0081】
自動開閉制御サブルーチンにおいて、ステップs301では、煙感知センサ64により煙が検知され、煙検知信号が送信されているか否かが判定される。煙検知信号が送信されている場合には、窓を全開放状態として(ステップs302)、ステップs301に戻り、煙検知信号が送信されなくなるまで窓の強制開放状態が維持される。
【0082】
煙検知信号が送信されていないときには、ステップs303に進み、風速センサ61により検出される風速がマイナス強風値〜無風の範囲(-15m/s〜0 m/s)にあるか否かが判定され、風速がマイナスの強風値〜無風の範囲(-15m/s〜0 m/s)にあると判定された場合はステップs304に進んで閉鎖タイマ56aがゼロであるか否かを判定する。ステップs304で閉鎖タイマ56aがゼロであることが判定された場合は、窓を大開放状態としてリターンする(ステップs305)。ステップs304で、閉鎖タイマ56aのカウンタがゼロでないと判定された場合には、窓は閉鎖状態にあるので、窓の大開放状態への駆動は中止され、現状を維持してリターンする。
【0083】
ステップs303で、風速センサ61により検出される風速がマイナス強風値〜無風の範囲(-15m/s〜0 m/s)にないと判定された場合には、ステップs306に進み、風速センサ61により検出される風速が無風〜プラス強風値の範囲(+0m/s〜15m/s)にあるか否かが判定される。
【0084】
ステップs306で、風速センサ61により検出される風速が無風〜プラス強風値の範囲(+0m/s〜15m/s)にあると判定された場合には、ステップs307に進み、閉鎖タイマ56aのカウンタがゼロであるか否かが判定される。ステップs307で閉鎖タイマ56aがゼロであることが判定されたら、窓を閉鎖状態とし、閉鎖タイマ56aのカウントダウンをスタートして、リターンする(ステップs308)。ステップs307で、閉鎖タイマ56aのカウンタがゼロでないと判定された場合には、窓はすでに閉鎖状態であるので、現状を維持してリターンする。
【0085】
ステップs306で、風速センサ61により検出される風速が無風〜プラス強風値の範囲(+0m/s〜15m/s)にないことが判定された場合には、ステップs309に進み、閉鎖タイマ56aがゼロであるか否かを判定する。ステップs309で閉鎖タイマ56aがゼロであると判定された場合には、窓を閉鎖状態として、ロック手段4をロック状態とするとともに、閉鎖タイマ56aのカウントダウンをスタートさせて(ステップs310)、リターンする。
【0086】
ステップs309で閉鎖タイマ56aがゼロでないと判定された場合は、窓はすでに閉鎖状態にあるので、現状を維持してリターンする。
【0087】
(電動突き出し窓の設置)
図13に、給気タイプの電動突き出し窓及び本発明の排気タイプの電動突き出し窓を、体育館・アトリウム等の大空間に設置した例を示す。一般に、体育館・アトリウム等の大空間では、空間内で暖められた空気が上方へ移動するという作用が生じる。そのため、給気窓を建物の下方位置に、排気窓を建物の上方位置に配置することにより、上記作用を利用した効率的な換気をすることができる。
【0088】
図13(a)に示す無風時には、給気タイプの電動突き出し窓及び排気タイプの電動突き出し窓が共に開放されることにより、上記作用を利用して建物の下方に配置された給気窓より涼しい外気を取り入れて、上方に配置された排気窓より室内で暖められた空気を排気する換気ができる。
【0089】
図13(b)に示す有風時には、電動突き出し窓の逆流防止機能により、風上にある排気タイプの電動突き出し窓、及び、風下にある給気タイプの電動突き出し窓がともに閉鎖される。したがって、風上の排気タイプの電動突き出し窓より外気が侵入したり、風下の給気タイプの電動突き出し窓から排気されるなど、上記作用による空気の流れを乱すことがない。
すなわち、風は、風上の下方の給気タイプの電動突き出し窓から取り入れられて建物内を上昇し、風下の上方の排気タイプの電動突き出し窓から排気されることになり、上記作用と相まって効率的な換気を行うことができる。
【0090】
図14に、給気タイプの電動突き出し窓及び本発明の排気タイプの電動突き出し窓を、ボイド空間を有する建物に配置した例を示す。ボイド空間を利用した換気の場合、逆流を防止する上では給気側及び排気側の窓は、共に逆流防止機能を有することが望ましいが、排気側の効率を上げることにより、給気側の窓をたとえば引き違い窓のような一般窓としても、換気経路を形成することができる。
【0091】
図14(a)に示す無風時には、給気タイプの電動突き出し窓及び排気タイプの電動突き出し窓が共に開放されるので、上記作用を利用して建物の下方に配置された給気窓より涼しい外気を取り入れて、上方に配置された排気窓より室内で暖められた空気を排気することができる。
【0092】
図14(b)に示す有風時には、電動突き出し窓の逆流防止機能により、風上側にある排気タイプの電動突き出し窓が閉鎖され、風下側にある排気タイプの電動突き出し窓が開放される。ボイド空間を使用した換気の場合は、各階の窓より給気した空気は暖められ、その温度差を利用してボイドを上方へ抜けようするので、建物の上方に設けた排気窓によって効率よく排気するためには、排気の上方への流れを妨げることのないように、風上側にある排気タイプの電動突き出し窓を閉鎖する必要がある。
【0093】
そして、暖められた空気は、開放状態に維持された風下側の排気窓に向かい、建物の上に行くに従い風は強くなる。その風が引き起こす負圧により、室内空気を誘引させるために、給気窓が一般窓であっても、十分な換気経路を形成することができる。
【0094】
以上のように、本発明の排気タイプの電動突き出し窓は、風速センサにより検出される風速が窓に正圧を生じさせる風であるときに閉鎖されるように制御されるので、空気の逆流を防止することができ、建物に想定される換気経路を効率よく形成することができる。
また、風速センサにより検出される風速が暴風域にある時には閉鎖して窓の脱落や破損を防止するとともに、強風が吹き込んで居住者が不快を感じることなく、心地よい効率的な換気をすることができる。
【0095】
そして、排気タイプの電動突き出し窓を建物の上方に配設し、給気タイプの電動突き出し窓を建物の下方に配設することにより、室内で暖められた空気が上方に移動する作用を利用した換気を行うことができるとともに、特に、排気タイプの窓の逆流防止機能により、排気窓からの空気の流入を防止することができるので、空気の上方への移動を妨げること無く、自然風を利用した換気を併用して、建物全体の効率的な換気を行うことができ、換気用ファン等の空調設備の駆動を停止させて、建物全体の省エネルギー化に貢献できる。