(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る歯科用治療装置は、歯科用根管治療のハンドピースを組み込んだ根管拡大及び根管長測定システムを含む根管治療器である。しかし、本発明に係る歯科用治療装置は、根管治療器に限定されるものではなく、同様の構成を有する歯科用治療装置について適用することができる。
【0034】
図1は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器の外観の構成を示す概略図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器の機能の構成を示すブロック図である。
図1に示す根管治療器100は、歯科用根管治療のためのハンドピース1、モータユニット6、制御ボックス9を含んでいる。
【0035】
歯科用根管治療のハンドピース1は、ヘッド部2と、ヘッド部2に連接される細径のネック部3と、該ネック部3に連接され手指によって把持される把持部4とを備えている。そして、把持部4の基部には、ヘッド部2に保持される切削工具5(ファイル或いはリーマなど)を回転駆動させるためのモータユニット6が着脱自在に接続される。ハンドピース1にモータユニット6が連結された状態で歯科用のインスツルメント10を構成する。
【0036】
モータユニット6は、
図2に示すようにマイクロモータ7を内蔵し、該マイクロモータ7へ電源を供給する電源供給用リード線71および、後述する根管長測定回路12へ信号を伝送する信号用リード線8などを内装するホース61を介して、制御ボックス9に連結してある。ここで、信号用リード線8は、モータユニット6及びハンドピース1内を経て切削工具5と電気的に導通し、電気信号を伝達する導電体の一部である。なお、切削工具5は、根管長測定回路12の一方の電極となる。
【0037】
制御ボックス9は、制御部11、比較回路110、根管長測定回路12、モータドライバ13、設定部14、操作部15、表示部16および報知部17などを備えている。なお、制御ボックス9は、
図1に示すように、本体側部にインスツルメント10を不使用時に保持するためホルダ10aを取付けてある。また、制御ボックス9には、フートコントローラ18を制御部11に連結し、リード線19を根管長測定回路12に連結してある。リード線19は、制御ボックス9から引き出されているが、ホース61の途中から分岐するように引き出してもよい。リード線19の先端には、患者の唇に掛けられる口腔電極19aを電気的に導通する状態で取付けてある。なお、口腔電極19aは、根管長測定回路12の他方の電極となる。
【0038】
制御部11は、根管拡大及び根管長測定システム全体の制御を行なうもので、主要部はマイクロコンピュータで構成されている。制御部11には、比較回路110、根管長測定回路12、モータドライバ13、設定部14、操作部15、表示部16、報知部17およびフートコントローラ18を接続してある。制御部11は、切削工具5が切削対象物を切削する回転方向を正転、正転の逆回転方向を逆転とする場合に、正転の方向に切削工具5を回転させる駆動に制御する正駆動、逆転の方向に切削工具5を回転させる駆動に制御する逆駆動、および正転と逆転とを繰返して切削工具5を回転させる駆動に制御するツイスト駆動を行なうことができる。そして、制御部11は、正転での回転角度および回転角速度(回転数)、逆転での回転角度および回転角速度のそれぞれのパラメータを変更して、切削工具5を回転させる駆動を制御することができる。
【0039】
ここで、回転角速度は、切削工具5の回転の速さを表わす量であり、2πラジアンで割ることで時間あたりの回転数となる。以降の実施の形態では、回転角速度を用いる代わりに、回転数を用いて切削工具5の回転の速さを表わす。なお、回転数の単位には、回毎分(rpm:revolutions per minute)を用いる。
【0040】
比較回路110は、逆転の方向に予め定められた回転角度(以下、単に予め定められた逆転回転角度ともいう)、切削工具5を回転させる駆動を行なう度に切削工具5に加わる負荷と逆転基準負荷とを比較する。つまり、比較回路110は、切削工具5に加わる負荷と逆転基準負荷とを比較する間隔を、逆転の方向に予め定められた回転角度だけ切削工具5を回転させる毎としている。比較回路110は、たとえば切削工具5を正転の方向に160度、逆転の方向に40度それぞれ回転させるツイスト駆動を行なっている場合に予め定められた逆転回転角度を40度とすると、切削工具5が1回転する度に切削工具5に加わる負荷と逆転基準負荷とを3回比較することになる。なお、比較回路110において負荷の比較を行なう間隔を逆転回転角度で設定したが、これに限定されるものではなく逆転駆動期間などで設定してもよい。ここで、切削工具5の回転数および逆転回転数が一定であれば、逆転駆動期間を設定するとこは逆転回転角度で設定することと同じことと設定したことになる。たとえば、切削工具5の回転数および逆転回転数が120回毎分の場合、切削工具5が正転の方向に160度、逆転の方向に40度回転することと、切削工具5を約0.278秒駆動することとは同じことを設定したことになる。
【0041】
根管長測定回路12は、歯牙の根管内に挿入した切削工具5を一方の電極、患者の唇に掛けた口腔電極19aを他方の電極として閉回路を構成する。そして、根管長測定回路12は、切削工具5と口腔電極19aとの間に電圧を印加し、切削工具5と口腔電極19aとの間のインピーダンスを計測することによって、歯牙の根尖位置から切削工具5の先端までの距離を測定することができる。切削工具5の先端が根尖位置に到達したことを根管長測定回路12が検出したとき、切削工具の挿入量、すなわち根管口から切削工具の先端までの距離を根管長とすることができる。なお、切削工具5と口腔電極19aとの間のインピーダンスを計測して、根管長を測定する電気的根管長測定方法は公知のものであり、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100には、公知になっているすべての電気的根管長測定方法を適用することができる。
【0042】
モータドライバ13は、電源供給用リード線71を介してマイクロモータ7に接続し、制御部11からの制御信号に基づいて、マイクロモータ7に供給する電源を制御している。モータドライバ13は、マイクロモータ7に供給する電源を制御することで、マイクロモータ7の回転方向、回転数および回転角度など、つまり切削工具5の回転方向、回転数および回転角度などを制御することができる。
【0043】
設定部14は、切削工具5の回転方向、回転数および回転角度などを制御する基準を設定する。また、設定部14は、比較回路110で切削工具5に加わる負荷と比較する逆転基準負荷や、比較する間隔を示す逆転回転角度を設定したり、根管長測定回路12を用いて予め根尖位置や根尖位置から所定距離にある位置を基準位置として設定したりすることができる。なお、根管治療器100は、設定部14に予め基準位置を設定しておくことで、切削工具5の先端がこの基準位置に達したとき、切削工具5の回転方向、回転数および回転角度のパラメータを変更することができる。また、設定部14は、逆転基準負荷以外に負荷の基準となる値(たとえば、負荷が段階的に変化する様子を判断するための値(逆転基準負荷>負荷C>負荷B>負荷A))を設定してもよい。
【0044】
操作部15は、切削工具5の回転数および回転角度のパラメータを設定する他、根管長測定を行なうか否かの選択なども設定することができる。また、操作部15は、正転駆動と逆転駆動との切換えや、正転駆動とツイスト駆動との切換えを手動で行なうことができる。
【0045】
表示部16は、後述するように根管内での切削工具5の先端の位置や切削工具5の回転方向、回転数および回転角度などを表示する。さらに、報知部17が使用者に対して報知するための情報を、表示部16に表示することもできる。
【0046】
報知部17は、現在、制御部11で行なっている切削工具5の駆動状態を、光、音や振動などにより報知する。具体的に、報知部17は、切削工具5の駆動状態を報知するために、必要に応じてLED(Light Emitting Diode),スピーカーや振動子などを設け、正転の方向の駆動と逆転の方向の駆動とで発光するLEDの色を変えたり、スピーカーから出力する音を変えたりする。なお、報知部17は、表示部16で、使用者に対して切削工具5の駆動状態を表示することができる場合、LED,スピーカーや振動子など別途設けなくてもよい。
【0047】
フートコントローラ18は、マイクロモータ7による切削工具5の駆動制御を足踏操作によって行なう操作部である。なお、マイクロモータ7による切削工具5の駆動制御は、フートコントローラ18に限定されるものではなく、ハンドピース1の把持部4に操作スイッチ(不図示)を設け、この操作スイッチとフートコントローラ18とを併用して切削工具5の駆動制御を行なうようにしてもよい。また、たとえば、フートコントローラ18の足踏操作がなされている状態で、さらに切削工具5が根管内に挿入されたことを根管長測定回路12が検知したことで、切削工具5の回転を開始するようにしてもよい。
【0048】
なお、根管治療器100の制御ボックス9は、歯科用診療台の側部に設置するトレーテーブルやサイドテーブル上に載置して使用する構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、トレーテーブルやサイドテーブル内に制御ボックス9を組込んだ構成であっても良い。
【0049】
次に、切削工具5の駆動制御を行なう根管治療器100の回路構成について、さらに詳しく説明する。
図3は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100の回路構成を示す回路図である。
図3に示す根管治療器100には、切削工具5の駆動制御に関わるマイクロモータ7、制御部11、根管長測定回路12、モータドライバ13、および設定部14の部分について図示してある。
【0050】
さらに、モータドライバ13は、トランジスタスイッチ13a、トランジスタドライバ回路13b、回転方向切換スイッチ13c、および負荷検出用抵抗13dを含んでいる。設定部14は、基準負荷(正転基準負荷および逆転基準負荷)設定用の可変抵抗14a、デューティ設定用の可変抵抗14b、および基準位置設定用の可変抵抗14cを含んでいる。なお、設定部14には、比較回路110において検出した負荷と逆転基準負荷とを比較する間隔を示す逆転回転角度を設定する構成なども含まれるが、当該構成については
図3に図示していない。また、
図3に示す根管治療器100には、主電源20およびメインスイッチ21に接続してある。切削工具5は、図示していないが適宜の歯車機構等を介してマイクロモータ7に保持してある。
【0051】
トランジスタドライバ回路13bは、制御部11のポート11aから出力する制御信号で作動し、トランジスタスイッチ13aのオン・オフを制御してマイクロモータ7を駆動する。マイクロモータ7は、回転方向切換スイッチ13cの状態に応じて正転または逆転する。制御部11のポート11aから出力する制御信号が、たとえば一定の周期で繰返されるパルス波形である場合、そのパルス波形の幅、すなわちデューティ比は、設定部14のデューティ設定用の可変抵抗14bによって調整される。マイクロモータ7は、このデューティ比に対応した回転数で切削工具5を駆動する。
【0052】
回転方向切換スイッチ13cは、制御部11のポート11bから出力する制御信号で、切削工具5を正転の方向に駆動するか、逆転の方向に駆動するかを切換える。制御部11は、負荷検出用抵抗13dの端子での電圧値をポート11cに入力することで、切削工具5に加わる負荷を検出する。そのため、負荷検出用抵抗13dは、切削工具5に加わる負荷を検出する負荷検出部として機能している。なお、負荷検出部は、負荷検出用抵抗13dの端子での電圧値に基づいて切削工具5に加わる負荷を検出する構成に限定されるものではなく、たとえば切削工具5の駆動部分にトルクセンサを設けて切削工具5に加わる負荷を検出する構成などであってもよい。検出される負荷は、たとえば切削工具5に加わるトルク値に制御部11で換算され、表示部16に表示される。また、比較回路110では、負荷検出用抵抗13dの端子での電圧値をトルク値に換算し、基準負荷設定用の可変抵抗14aで設定した値と比較している。もちろん、比較回路110は、トルク値に換算せずに切削工具5に加わる負荷と基準負荷とを比較するように構成してもよい。
【0053】
さらに、制御部11は、根管長測定回路12で測定した根管長をポート11dに入力する。そのため、根管長測定回路12は、切削工具5の先端の根管内での位置を検出する駆動状態検出部として機能している。また、制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した切削工具5に加わる負荷をポート11eから比較回路110へ出力し、比較回路110が基準負荷と比較した比較結果をポート11eから入力する。そのため、比較回路110は、負荷検出部で検出した負荷と基準負荷とを比較する負荷比較部として機能している。
【0054】
図4は、切削工具5の回転方向を示した模式図である。
図4に示す駆動では、切削工具5の先端方向を向いて切削工具5を右回りに回転させる正転5aの方向の駆動と、左回りに回転させる逆転5bの方向の駆動とが図示されている。なお、正転5aの方向の駆動と、逆転5bの方向の駆動とを交互に行なう駆動が、ツイスト駆動である。
【0055】
次に、
図1に示す表示部16に設ける液晶表示パネルの表示について説明する。
図5は、
図1に示す表示部16に設ける液晶表示パネルの表示例を示す図である。
【0056】
図5に示す表示部16は、液晶表示パネルであり、測定した根管長を詳細に表示するための多数の要素を含むドット表示部52と、根管長を複数のゾーンに分けて段階的に表示するためのゾーン表示部54と、各ゾーンの境界を示す境界表示部56と、根尖までの到達率を表示する到達率表示部58とが設けてある。
【0057】
ドット表示部52は、切削工具5の先端が根尖に近づくにつれ、上から下に向かって要素が順に表示されるようになっている。目盛「APEX」の位置が根尖の位置を表わし、当該目盛まで要素が到達したとき、切削工具5の先端が根尖の位置にほぼ到達したことを示す。
【0058】
また、表示部16には、負荷検出用抵抗13d(
図3参照)で検出した負荷を表示するための多数の要素を含むドット表示部60と、負荷を複数のゾーンに分けて段階的に表示するためのゾーン表示部62とが設けてある。ドット表示部60は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が大きくなるに従って、上から下に向かって要素が順に表示される。
【0059】
たとえば、ドット表示部60には、歯牙を切削しているときに加わる切削工具5の負荷を、斜線で示した要素60aで表示する。なお、ドット表示部60は、表示が頻繁に切換わるのを防ぐため、ピークホールド機能を有し、所定時間内に検出した負荷の最大値を一定時間表示するようにしてもよい。
【0060】
また、ドット表示部60には、基準負荷設定用の可変抵抗14a(
図3参照)で設定した基準負荷に対応する要素60bを表示してもよい。要素60bをドット表示部60に表示することで、基準負荷に対して、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷にどの程度マージンが存在しているのかを視覚化することができる。
【0061】
さらに、表示部16には、切削工具5の回転数や切削工具5に加わる負荷を数値で表示する数値表示部64と、切削工具5の回転の向き(正転、逆転)および切削工具5の回転数の大小を表示する回転表示部68とが設けてある。
【0062】
次に、実施の形態1に係る根管治療器100の切削工具5の駆動について説明する。なお、実施の形態1に係る根管治療器100では、逆転の方向に予め定められた回転角度、切削工具5を回転させる駆動を行なう度に比較回路110が負荷検出用抵抗13dで検出した負荷と逆転基準負荷とを比較する。そのため、実施の形態1に係る根管治療器100は、正転方向の回転角度(以下、単に正転回転角度ともいう)を160度、逆転方向の回転角度(以下、単に逆転回転角度ともいう)を40度に設定して、切削工具5をツイスト駆動する場合について説明する。しかし、実施の形態1に係る根管治療器100は、これに限定されず、たとえば切削工具5の先端が根管内の所定の位置に達した場合に逆転の方向に切削工具5を駆動に対して、検出した負荷と逆転基準負荷とを比較してもよい。つまり、何らかの条件により逆転の方向に切削工具5を駆動する場合に、検出した負荷と逆転基準負荷とを比較する構成を適用することが可能である。
【0063】
図6は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100の切削工具5の駆動の一例を説明するためのフローチャートである。まず、制御部11は、切削工具5を正転の方向に160度回転し、その後逆転の方向に40度回転させるツイスト駆動に制御する(ステップS61)。なお、正転方向の回転数(以下、単に正転回転数ともいう)および逆転方向の回転数(以下、単に逆転回転数ともいう)は、制御部11で設定してある初期値を用い、
図6に示すフローチャート内の処理では変更しない。
【0064】
次に、負荷検出用抵抗13dで、切削工具5を逆転の方向に40度回転した時点の切削工具5に加わる負荷を検出する(ステップS62)。実施の形態1に係る根管治療器100では、負荷検出用抵抗13dで、切削工具5が逆転の方向に40度回転した後に切削工具5に加わる負荷を検出する構成について説明している。しかし、これに限定されず、負荷検出用抵抗13dで、切削工具5を逆転の方向に40度回転している間の何れかの時点の切削工具5に加わる負荷を検出してもよい。さらに、切削工具5に加わる負荷は、逆転の方向に40度回転している間(予め定められた逆転回転角度の間)に負荷検出用抵抗13dで検出した負荷の最大値、平均値、または検出した複数の負荷の値のうちの少なくとも一つの値を用いてもよい。これにより、切削工具の破損を防止するために必要となる、切削工具5に加わる負荷を適切に検出することができる。
【0065】
次に、比較回路110は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷と、設定部14の基準負荷(逆転基準負荷)設定用の可変抵抗14aに設定した逆転基準負荷と比較する(ステップS63)。これにより、切削工具5の破損の原因の一つである切削工具5の根管壁への食い込みを検出することができる。検出した負荷が逆転基準負荷以上となる場合(ステップS63:YES)、制御部11は、切削工具5を逆転の方向にさらに40度回転させる駆動に制御する(ステップS64)。これにより、切削工具5に加わる負荷をさらに軽減することができる。
【0066】
ここで、実施の形態1に係る根管治療器100では、切削工具5が逆転の方向に40度回転した後に切削工具5に加わる負荷を検出して、比較回路110が検出した負荷と逆転基準負荷との比較を行なう構成について説明している。しかし、これに限定されず、逆転の方向に40度回転している間(予め定められた逆転回転角度の間)に切削工具5に加わる負荷を検出して、逆転の方向に40度回転するまでに比較回路110が検出した負荷と基準負荷との比較する構成であってもよい。これにより、根管治療器100は、切削工具5を逆転の方向に40度回転する駆動を行なった後、直ちに比較回路110の比較結果に基づいて次の駆動を行なうことができ、効率よく切削工具5を駆動することができる。
【0067】
また、制御部11は、切削工具5を正転の方向に160度、逆転の方向に40度それぞれ回転させる駆動に制御する。つまり、正転の方向に回転させる回転角度は、逆転の方向に回転させる逆転回転角度より大きくしてある。これにより、根管治療器100は、歯牙の切削に寄与する正転の方向の回転角度を、歯牙の切削に寄与しない逆転の方向の回転角度より大きくしてあるので、歯牙の切削効率を向上させることができる。なお、歯牙の切削効率を犠牲にして、切削工具5に加わる負荷をより軽減するのであれば、逆転の方向に回転させる逆転回転角度を正転の方向に回転させる回転角度に近づける、または同じ回転角度にしてもよい。
【0068】
検出した負荷が逆転基準負荷未満となる場合(ステップS63:NO)、または切削工具5を逆転の方向に40度回転させた後、制御部11は、駆動を終了する操作が操作部15から入力されているか否かを判断する(ステップS65)。駆動を終了する操作が操作部15から入力されている場合(ステップS65:YES)、制御部11は駆動を終了する。駆動を終了する操作が操作部15から入力されていない場合(ステップS65:NO)、ステップS61の処理に戻り、切削工具5を正転の方向に180度回転するように駆動する。なお、制御部11は、ステップS64により切削工具5を逆転の方向に40度回転させた後、ステップS62の処理に戻り、検出した負荷が逆転基準負荷以上となる場合、切削工具5を逆転の方向にさらに40度回転させる構成でもよい。
【0069】
図6に示したフローチャートによる駆動を行なうことで、制御部11が、切削工具5をどのように駆動するかについて説明する。
図7は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100の切削工具5の駆動の一例を説明するための模式図である。
図7に示す時計回りの矢印は切削工具5を正転の方向に駆動することを示し、時計回りの矢印のなす角度は正転の方向に回転させる回転角度を示している。一方、反時計回りの矢印は切削工具5を逆転の方向に駆動することを示し、反時計回りの矢印のなす角度は逆転の方向に回転させる回転角度を示している。なお、
図7では、比較回路110で比較した結果に基づいて駆動を切替えるか否かの判断が行なわれるまでの駆動を1回の駆動として以下説明する。
【0070】
まず、1回目の駆動では、制御部11が、切削工具5を正転の方向に160度回転し、その後逆転の方向に40度回転させるツイスト駆動に制御する(
図6に示すステップS61に対応)。2回目の駆動では、検出した負荷tと逆転基準負荷sとを比較した比較回路110での結果により2通りの駆動に分岐する。具体的に、検出した負荷tが逆転基準負荷s未満の場合(t<s)、制御部11が、切削工具5を正転の方向に160度回転し、その後逆転の方向に40度回転させるツイスト駆動に制御する(
図6に示すステップS61に対応)。その結果、制御部11は、切削工具5に対して2回ツイスト駆動を行なう制御をしたことになる。一方、検出した負荷tが逆転基準負荷s以上の場合(t≧s)、制御部11が、切削工具5を逆転の方向に40度回転させる駆動に制御する(
図6に示すステップS64に対応)。その結果、制御部11は、切削工具5を正転の方向に160度回転し、逆転の方向に80度回転したツイスト駆動を行なう制御をしたことになる。なお、制御部11は、切削工具5を逆転の方向に回転させた後ツイスト駆動を行なう制御を行なっているが、検出した負荷tが逆転基準負荷s未満になるまで、切削工具5を逆転の方向に40度回転させる駆動に制御してもよい。
【0071】
3回目の駆動では、2回目の駆動で切削工具5をツイスト駆動したのか、切削工具5を逆転の方向に駆動したのかにより駆動が異なる。まず、2回目の駆動で切削工具5をツイスト駆動した場合、1回目の駆動の状況に戻ることになるので以降の説明を繰返さない。一方、切削工具5を逆転の方向に駆動した場合、制御部11が、切削工具5を正転の方向に160度回転し、その後逆転の方向に40度回転させるツイスト駆動に制御する(
図6に示すステップS61に対応)。3回目以降の駆動は、1回目の駆動の状況に戻ることになるので以降の説明を繰返さない。
【0072】
以上のように、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100では、逆転の方向に予め定められた逆転回転角度(たとえば40度)、切削工具5を回転させる駆動を行なう度に負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が逆転基準負荷以上となる場合に、制御部11がツイスト駆動に制御している切削工具5を逆転の方向に回転させる駆動に制御する。そのため、実施の形態1に係る根管治療器100では、切削工具5に加わる負荷が十分に減少しているのかを確認してからツイスト駆動のうちの正転方向の駆動を行なうことができ、加わる負荷による切削工具の破損を防止することができる。
【0073】
なお、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100では、逆転の方向に予め定められた逆転回転角度(たとえば40度)、切削工具5を回転させる駆動を行なう度に、負荷検出用抵抗13dで比較した結果に基づいてモータドライバ13を制御する。しかし、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100は、これに限られず、逆転の方向に切削工具5を回転させる駆動を行なう度に、負荷検出用抵抗13dで比較した結果に基づいてモータドライバ13を制御すればよい。
【0074】
また、実施の形態1に係る根管治療器100では、逆転の方向に予め定められた逆転回転角度、切削工具5を回転させる駆動を行なう度に、切削工具5に加わる負荷が十分に減少しているのかを確認することで、必要以上に逆転の方向に切削工具5を回転しないように制御して、歯牙の切削に寄与しない逆転の方向の駆動を減らして歯牙を効率よく切削する。
【0075】
なお、実施の形態1に係る根管治療器100では、切削工具5を正転の方向に160度回転し、逆転の方向に40度回転したツイスト駆動を行ない、逆転の方向に40度(予め定められた逆転回転角度)回転する度に検出した負荷と逆転基準負荷とを比較している。しかし、これに限定されず、たとえば正転の方向に360度や720度回転し、逆転の方向に120度や240度回転したツイスト駆動を行ない、逆転の方向に120度や240度(予め定められた逆転回転角度)回転する度に検出した負荷と逆転基準負荷とを比較してもよい。
【0076】
また、実施の形態1に係る根管治療器100では、比較回路110の結果が検出した負荷が逆転基準負荷以上となる場合に、制御部11がツイスト駆動に制御している切削工具5を逆転の方向に回転させる駆動に制御する場合を説明した。しかし、実施の形態1に係る根管治療器100は、これに限定されず、比較回路110の結果が検出した負荷が逆転基準負荷以上となる場合に、制御部11がツイスト駆動に制御している切削工具5の逆転回転角度をより大きく変更して回転させる駆動に制御する場合であってもよい。
【0077】
(実施の形態2)
実施の形態1に係る根管治療器100では、切削工具5を逆転の方向に40度回転する度に検出した負荷と逆転基準負荷とを比較する構成について説明した。実施の形態2に係る根管治療器では、さらに切削工具を正転の方向に160度回転する度に検出した負荷と正転基準負荷とを比較する構成について説明する。
【0078】
なお、実施の形態2に係る根管治療器は、
図1〜
図3に示した実施の形態1に係る根管治療器100と同じ構成を用いるため、同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。
【0079】
図8は、本発明の実施の形態2に係る根管治療器100の切削工具5の駆動の一例を説明するためのフローチャートである。なお、本発明の実施の形態2に係る根管治療器100でも、切削工具5を正転の方向に160度回転し、その後逆転の方向に40度回転させるツイスト駆動に制御する。まず、制御部11は、ツイスト駆動のうち切削工具5を正転の方向に160度回転させる駆動に制御する(ステップS81)。なお、正転回転数および逆転回転数は、制御部11で設定してある初期値を用い、
図8に示すフローチャート内の処理では変更しない。
【0080】
次に、負荷検出用抵抗13dで、切削工具5を正転の方向に160度回転した時点の切削工具5に加わる負荷を検出する(ステップS82)。実施の形態2に係る根管治療器100では、負荷検出用抵抗13dで、切削工具5が正転の方向に160度回転した後に切削工具5に加わる負荷を検出する構成について説明している。しかし、これに限定されず、負荷検出用抵抗13dで、切削工具5を正転の方向に160度回転している間の何れかの時点の切削工具5に加わる負荷を検出してもよい。さらに、切削工具5に加わる負荷は、160度回転している間(予め定められた回転角度の間)に負荷検出用抵抗13dで検出した負荷の最大値、平均値、または検出した複数の負荷の値のうちの少なくとも一つの値を用いてもよい。
【0081】
次に、比較回路110は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷と、設定部14の基準負荷(正転基準負荷)設定用の可変抵抗14aに設定した正転基準負荷と比較する(ステップS83)。検出した負荷が正転基準負荷以上となる場合(ステップS83:YES)、制御部11は、切削工具5を逆転の方向に40度回転させる駆動に制御する(ステップS84)。ここで、実施の形態2に係る根管治療器100では、切削工具5が正転の方向に160度回転した後に切削工具5に加わる負荷を検出して、比較回路110が検出した負荷と正転基準負荷との比較を行なう構成について説明している。しかし、これに限定されず、160度回転している間(予め定められた正転回転角度の間)に切削工具5に加わる負荷を検出して、160度回転するまでに比較回路110が検出した負荷と正転基準負荷との比較する構成であってもよい。
【0082】
次に、負荷検出用抵抗13dで、切削工具5を逆転の方向に40度回転した時点の切削工具5に加わる負荷を検出する(ステップS85)。実施の形態2に係る根管治療器100では、負荷検出用抵抗13dで、切削工具5が逆転の方向に40度回転した後に切削工具5に加わる負荷を検出する構成について説明している。しかし、これに限定されず、負荷検出用抵抗13dで、切削工具5を逆転の方向に40度回転している間の何れかの時点の切削工具5に加わる負荷を検出してもよい。さらに、切削工具5に加わる負荷は、40度回転している間(予め定められた逆転回転角度の間)に負荷検出用抵抗13dで検出した負荷の最大値、平均値、または検出した複数の負荷の値のうちの少なくとも一つの値を用いてもよい。
【0083】
次に、比較回路110は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷と、設定部14の基準負荷(逆転基準負荷)設定用の可変抵抗14aに設定した逆転基準負荷と比較する(ステップS86)。検出した負荷が逆転基準負荷以上となる場合(ステップS86:YES)、制御部11は、ステップS84の処理に戻り、切削工具5を逆転の方向にさらに40度回転させる駆動に制御する。ここで、実施の形態2に係る根管治療器100では、切削工具5が逆転の方向に40度回転した後に切削工具5に加わる負荷を検出して、比較回路110が検出した負荷と逆転基準負荷との比較を行なう構成について説明している。しかし、これに限定されず、逆転の方向に40度回転している間(予め定められた逆転回転角度の間)に切削工具5に加わる負荷を検出して、逆転の方向に40度回転するまでに比較回路110が検出した負荷と逆転基準負荷との比較する構成であってもよい。また、実施の形態2に係る根管治療器100では、ステップS83で検出した負荷と比較する正転基準負荷と、ステップS86で検出した負荷と比較する逆転基準負荷とは同じ値であっても、異なる値に設定してもよい。これにより、実施の形態2に係る根管治療器100は、基準負荷の設定の自由度が高まり、多彩な駆動を行なうことが可能となる。
【0084】
検出した負荷が正転基準負荷未満または逆転基準負荷未満となる場合(ステップS83およびステップS86:NO)、制御部11は、駆動を終了する操作が操作部15から入力されているか否かを判断する(ステップS87)。駆動を終了する操作が操作部15から入力されている場合(ステップS87:YES)、制御部11は駆動を終了する。駆動を終了する操作が操作部15から入力されていない場合(ステップS87:NO)、ステップS81の処理に戻り、切削工具5を正転の方向に160度回転するように駆動する。
【0085】
図8に示したフローチャートによる駆動を行なうことで、制御部11が、切削工具5をどのように駆動するかについて説明する。
図9は、本発明の実施の形態2に係る根管治療器100の切削工具5の駆動の一例を説明するための模式図である。
図9に示す時計回りの矢印は切削工具5を正転の方向に駆動することを示し、時計回りの矢印のなす角度は正転の方向に回転させる回転角度を示している。一方、反時計回りの矢印は切削工具5を逆転の方向に駆動することを示し、反時計回りの矢印のなす角度は逆転の方向に回転させる回転角度を示している。なお、
図9では、比較回路110で比較した結果に基づいて駆動を切替えるか否かの判断が行なわれるまでの駆動を1回の駆動として以下説明する。
【0086】
まず、1回目の駆動では、制御部11が、切削工具5を正転の方向に160度回転するように駆動する(
図8に示すステップS81に対応)。2回目の駆動では、検出した負荷tと正転基準負荷saとを比較した比較回路110での結果により2通りの駆動に分岐する。具体的に、検出した負荷tが正転基準負荷sa未満の場合(t<sa)、制御部11が、切削工具5を正転の方向に160度回転させる駆動に制御する(
図8に示すステップS81)。その結果、制御部11は、切削工具5を正転の方向に連続で駆動することになり、歯牙の切削に寄与する正転の方向の駆動を増やすことができる。一方、検出した負荷tが正転基準負荷sa以上の場合(t≧sa)、制御部11が、切削工具5を逆転の方向に40度回転させる駆動に制御する(
図8に示すステップS84に対応)。その結果、制御部11は、切削工具5を正転の方向に160度回転し、逆転の方向に40度回転させるツイスト駆動に制御することになる。
【0087】
3回目の駆動では、2回目の駆動で切削工具5を正転の方向に駆動したのか、切削工具5を逆転の方向に駆動したのかにより駆動が異なる。まず、2回目の駆動で切削工具5を正転の方向に駆動した場合、1回目の駆動と同じ状況に戻ることになるので以降の説明を繰返さない。
【0088】
2回目の駆動で切削工具5を逆転の方向に駆動した場合、検出した負荷tと逆転基準負荷sbとを比較した比較回路110での結果により2通りの駆動に分岐する。具体的に、検出した負荷tが逆転基準負荷sb未満の場合(t<sb)、制御部11が、切削工具5を正転の方向に160度回転させる駆動に制御する(
図8に示すステップS81に対応)。その結果、制御部11は、ツイスト駆動に制御した後に再び正転の方向に160度回転させる駆動に制御する。一方、検出した負荷tが逆転基準負荷sb以上の場合(t≧sb)、制御部11が、切削工具5を逆転の方向にさらに40度回転させる駆動に制御する(
図8に示すステップS84)。その結果、制御部11は、ツイスト駆動に制御した後にさらに逆転の方向に40度回転させる駆動に制御することになる。これにより、検出した負荷tが逆転基準負荷sb以上であるので、根管壁への食い込みが十分に緩和されていないとみなして、切削工具5を逆転の方向にさらに回転させて根管壁への食い込みが十分に緩和させる。
【0089】
4回目の駆動では、3回目の駆動で切削工具5を正転の方向に駆動した場合、1回目の駆動と同じ状況に戻ることになり、3回目の駆動で切削工具5を逆転の方向に駆動した場合、2回目の駆動で切削工具5を逆転の方向に回転した駆動と同じ状況に戻ることになるので以降の説明を繰返さない。
【0090】
以上のように、実施の形態2に係る根管治療器100では、さらに比較回路110が正転の方向に予め定められた正転回転角度(たとえば160度)、切削工具5を回転させる駆動を行なう度に負荷検出用抵抗13dで検出した負荷と正転基準負荷とを比較し、検出した負荷が正転基準負荷以上となる場合、制御部11が逆転の方向に切削工具5を回転させる駆動に制御する。そのため、実施の形態2に係る根管治療器100では、切削工具5に加わる負荷を十分に減少させてから正転の方向に回転するように駆動を制御でき、加わる負荷による切削工具の破損を防止することができる。
【0091】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る根管治療器では、比較回路で比較した結果に応じて、正転での回転角度および回転角速度、逆転での回転角度および回転角速度のうちの少なくとも1つのパラメータを変更する構成について説明する。
【0092】
図10は、本発明の実施の形態3に係る根管治療器100の切削工具5の駆動の一例を説明するためのフローチャートである。まず、制御部11は、正転回転角度を160度、逆転回転角度を40度(初期値)に設定して、切削工具5を駆動する(ステップS101)。なお、正転回転数および逆転回転数は、制御部11で設定してある初期値(たとえば120rpm)を用い、
図10に示すフローチャート内の処理では変更しない。
【0093】
次に、負荷検出用抵抗13dで、切削工具5を逆転の方向に40度回転した時点の切削工具5に加わる負荷を検出する(ステップS102)。実施の形態3に係る根管治療器100では、負荷検出用抵抗13dで、切削工具5が逆転の方向に40度回転した後に切削工具5に加わる負荷を検出する構成について説明している。しかし、これに限定されず、負荷検出用抵抗13dで、切削工具5を逆転の方向に40度回転している間の何れかの時点の切削工具5に加わる負荷を検出してもよい。さらに、切削工具5に加わる負荷は、逆転の方向に40度回転している間(予め定められた逆転回転角度の間)に負荷検出用抵抗13dで検出した負荷の最大値、平均値、または検出した複数の負荷の値のうちの少なくとも一つの値を用いてもよい。これにより、切削工具の破損を防止するために必要となる、切削工具5に加わる負荷を適切に検出することができる。
【0094】
次に、比較回路110は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷と、設定部14に設定した負荷Aと比較する(ステップS103)。検出した負荷が負荷A未満となる場合(ステップS103:YES)、制御部11は、正転回転角度を160度、逆転回転角度を40度(初期値)に設定して、切削工具5の駆動を制御する(ステップS104)。つまり、制御部11は、検出した負荷が負荷A未満で考慮するほどの負荷が切削工具5に加わっていないとして、初期値の正転回転角度および逆転回転角度を設定して、切削工具5の駆動する。ここで、実施の形態3に係る根管治療器100でも、切削工具5が逆転の方向に40度回転した後に切削工具5に加わる負荷を検出して、比較回路110が検出した負荷と逆転基準負荷との比較を行なう構成について説明している。しかし、これに限定されず、逆転の方向に40度回転している間(予め定められた逆転回転角度の間)に切削工具5に加わる負荷を検出して、逆転の方向に40度回転するまでに比較回路110が検出した負荷と基準負荷との比較する構成であってもよい。これにより、根管治療器100は、切削工具5を逆転の方向に40度回転する駆動を行なった後、直ちに比較回路110の比較結果に基づいて次の駆動を行なうことができ、効率よく切削工具5を駆動することができる。
【0095】
一方、比較回路110は、検出した負荷が負荷A以上となる場合(ステップS103:NO)、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷と、設定部14に設定した負荷B(>負荷A)と比較する(ステップS105)。検出した負荷が負荷B未満となる場合(ステップS105:YES)、制御部11は、正転回転角度を120度、逆転回転角度を40度に設定して、切削工具5の駆動を制御する(ステップS106)。つまり、制御部11は、検出した負荷が負荷B未満であるが小さい負荷が切削工具5に加わっているため、切削工具5に加わる負荷を考慮して正転回転角度を初期値より小さく設定して、切削工具5の駆動を制御する。
【0096】
一方、比較回路110は、検出した負荷が負荷B以上となる場合(ステップS105:NO)、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷と、設定部14に設定した負荷C(>負荷B)と比較する(ステップS107)。検出した負荷が負荷C未満となる場合(ステップS107:YES)、制御部11は、正転回転角度を80度、逆転回転角度を40度に設定して、切削工具5の駆動を制御する(ステップS108)。つまり、制御部11は、検出した負荷が負荷C未満であるが負荷B以上の負荷が切削工具5に加わっているため、正転回転角度をステップS106で設定した値より小さく設定して、切削工具5の駆動を制御する。
【0097】
一方、比較回路110は、検出した負荷が負荷C以上となる場合(ステップS107:NO)、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷と、設定部14の基準負荷(逆転基準負荷)設定用の可変抵抗14aに設定した逆転基準負荷(>負荷C)と比較する(ステップS109)。検出した負荷が逆転基準負荷未満となる場合(ステップS109:YES)、制御部11は、正転回転角度を40度、逆転回転角度を40度に設定して、切削工具5の駆動を制御する(ステップS110)。つまり、制御部11は、検出した負荷が逆転基準負荷未満であるが負荷C以上の負荷が切削工具5に加わっているため、正転回転角度をステップS108で設定した値より小さく設定して、切削工具5の駆動を制御する。
【0098】
一方、検出した負荷が逆転基準負荷以上となる場合(ステップS109:NO)、制御部11は、正転回転角度を0度、逆転回転角度を40度に設定して、切削工具5の駆動を制御する(ステップS104)。つまり、制御部11は、実施の形態1と同様、切削工具5を逆転の方向にさらに40度回転させる駆動に制御する。
【0099】
制御部11は、ステップS104、ステップS106、ステップS108、ステップS110、およびステップS111で設定した正転回転角度および逆転回転角度で、切削工具5の駆動を制御した後、駆動を終了する操作が操作部15から入力されているか否かを判断する(ステップS112)。駆動を終了する操作が操作部15から入力されている場合(ステップS112:YES)、制御部11は駆動を終了する。駆動を終了する操作が操作部15から入力されていない場合(ステップS112:NO)、ステップS102の処理に戻り、負荷検出用抵抗13dで、切削工具5を逆転の方向に40度回転した時点の切削工具5に加わる負荷を検出する。
【0100】
ステップS101〜ステップS111において、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷が負荷A、負荷B、負荷C、逆転基準負荷の順に大きくなるにつれて、正転回転角度のパラメータを段階的に小さくして切削工具5の駆動する例を示した。しかし、これに限定されるものではなく、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷に応じて、正転回転角度のパラメータを連続して変更してもよい。たとえば、制御部11は、切削工具5に加わる負荷が負荷Aから逆転基準負荷までの変化に応じて、正転回転角度のパラメータを160度から0度まで連続して変更する。さらに、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷に応じて、逆転回転角度のパラメータも変更してもよい。ここで、逆転回転角度のパラメータの変更に応じて、負荷検出用抵抗13dが切削工具5に加わる負荷を検出するタイミングである予め定められた逆転回転角度も変更することになる。また、正転回転角度、逆転回転角度それぞれの上限値は160度に限定されるものではなく、160度以上の回転角度とそれに応じた負荷の設定を行ってもよい。
【0101】
図10に示すフローチャートでは、制御部11が切削工具5に加わる負荷に応じて、回転角度のパラメータを変更する例を説明したが、制御部11が切削工具5に加わる負荷に応じて、回転数のパラメータを変更してもよい。
【0102】
図11は、本発明の実施の形態3に係る根管治療器100の切削工具5の駆動の別の一例を説明するためのフローチャートである。まず、制御部11は、正転回転数を120rpm、逆転回転数を120rpm(初期値)に設定して、切削工具5を駆動する(ステップS201)。なお、正転回転角度および逆転回転角度は、制御部11で設定してある初期値(たとえば、正転回転角度を160度、逆転回転角度を40度)を用い、
図11に示すフローチャート内の処理では変更しない。
【0103】
次に、負荷検出用抵抗13dで、切削工具5を逆転の方向に40度(予め定められた逆転回転角度)回転した時点の切削工具5に加わる負荷を検出する(ステップS202)。ステップS202での切削工具5に加わる負荷の検出は、ステップS102での切削工具5に加わる負荷の検出と同じであるため、詳細な説明を繰返さない。
【0104】
次に、比較回路110は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷と、設定部14に設定した負荷Aと比較する(ステップS203)。検出した負荷が負荷A未満となる場合(ステップS203:YES)、制御部11は、正転回転数を120rpm、逆転回転
数を120rpmに設定して、切削工具5の駆動を制御する(ステップS204)。つまり、制御部11は、検出した負荷が負荷A未満で考慮するほどの負荷が切削工具5に加わっていないとして、初期値の正転回転数および逆転回転数を設定して、切削工具5の駆動を制御する。ここで、ステップS203での検出した負荷と逆転基準負荷と比較は、ステップS103での検出した負荷と逆転基準負荷と比較と同じであるため、詳細な説明を繰返さない。
【0105】
一方、比較回路110は、検出した負荷が負荷A以上となる場合(ステップS203:NO)、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷と、設定部14に設定した負荷B(>負荷A)と比較する(ステップS205)。検出した負荷が負荷B未満となる場合(ステップS205:YES)、制御部11は、正転回転数を90rpm、逆転回転
数を120rpmに設定して、切削工具5の駆動を制御する(ステップS206)。つまり、制御部11は、検出した負荷が負荷B未満であるが小さい負荷が切削工具5に加わっているため、切削工具5に加わる負荷を考慮して正転回転数を初期値より小さく設定して、切削工具5の駆動を制御する。
【0106】
一方、比較回路110は、検出した負荷が負荷B以上となる場合(ステップS205:NO)、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷と、設定部14に設定した負荷C(>負荷B)と比較する(ステップS207)。検出した負荷が負荷C未満となる場合(ステップS207:YES)、制御部11は、正転回転数を60rpm、逆転回転
数を120rpmに設定して、切削工具5の駆動を制御する(ステップS208)。つまり、制御部11は、検出した負荷が負荷C未満であるが負荷B以上の負荷が切削工具5に加わっているため、正転回転数をステップS206で設定した値より小さく設定して、切削工具5の駆動を制御する。
【0107】
一方、比較回路110は、検出した負荷が負荷C以上となる場合(ステップS207:NO)、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷と、設定部14の基準負荷(逆転基準負荷)設定用の可変抵抗14aに設定した逆転基準負荷(>負荷C)と比較する(ステップS209)。検出した負荷が逆転基準負荷未満となる場合(ステップS209:YES)、制御部11は、正転回転数を30rpm、逆転回転
数を120rpmに設定して、切削工具5の駆動を制御する(ステップS210)。つまり、制御部11は、検出した負荷が逆転基準負荷未満であるが負荷C以上の負荷が切削工具5に加わっているため、正転回転数をステップS208で設定した値より小さく設定して、切削工具5の駆動を制御する。
【0108】
一方、検出した負荷が逆転基準負荷以上となる場合(ステップS209:NO)、制御部11は、正転回転数を0rpm、逆転回転
数を120rpmに設定して、切削工具5の駆動を制御する(ステップS211)。つまり、制御部11は、実施の形態1と同様、切削工具5を正転の方向に回転させずに逆転の方向にさらに40度回転させる駆動にする。
【0109】
制御部11は、ステップS204、ステップS206、ステップS208、ステップS210、およびステップS211で設定した正転回転数および逆転回転数で、切削工具5の駆動を制御した後、駆動を終了する操作が操作部15から入力されているか否かを判断する(ステップS212)。駆動を終了する操作が操作部15から入力されている場合(ステップS212:YES)、制御部11は駆動を終了する。駆動を終了する操作が操作部15から入力されていない場合(ステップS212:NO)、ステップS202の処理に戻り、負荷検出用抵抗13dで、切削工具5を逆転の方向に40度回転した時点の切削工具5に加わる負荷を検出する。
【0110】
ステップS201〜ステップS211において、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷が負荷A、負荷B、負荷C、逆転基準負荷の順に大きくなるにつれて、正転回転数のパラメータを段階的に小さくして切削工具5の駆動する例を示した。しかし、これに限定されるものではなく、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷に応じて、正転回転数のパラメータを連続して変更してもよい。たとえば、制御部11は、切削工具5に加わる負荷が負荷Aから逆転基準負荷までの変化に応じて、正転回転数のパラメータを120rpmから0rpmまで連続して変更する。さらに、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷に応じて、逆転回転数のパラメータも変更してもよい。また、正転回転数、逆転回転数それぞれの上限値は120rpmに限定されるものではなく、120rpm以上の回転数とそれに応じた負荷の設定を行ってもよい。
【0111】
図10に示すフローチャートでは、制御部11が切削工具5に加わる負荷に応じて、回転角度のパラメータのみを変更する例を、
図11に示すフローチャートでは、制御部11が切削工具5に加わる負荷に応じて、回転数のパラメータのみを変更する例をそれぞれ説明した。しかし、実施の形態3に係る根管治療器100は、これに限定されず、
図10に示す処理と
図11に示す処理とを組合わせて、制御部11が切削工具5に加わる負荷に応じて、回転角度および回転数のパラメータをともに変更してもよい。
【0112】
図12は、切削工具5に加わる負荷に応じて、変更するパラメータの組合わせを示した図である。
図12に示す設定1(
図10に示すフローチャートの場合)では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角度のみ小さくする。設定2(
図11に示すフローチャートの場合)では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転数のみ小さくする。設定3では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角度および正転回転数を小さくする。
【0113】
設定4では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、逆転回転角度のみ大きくする。設定5では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、逆転回転数のみ大きくする。設定6では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、逆転回転角度および逆転回転数を大きくする。
【0114】
設定7では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角度のみ小さくし、逆転回転角度のみ大きくする。設定8では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角度のみ小さくし、逆転回転数のみ大きくする。設定9では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角度のみ小さくし、逆転回転角度および逆転回転数を大きくする。
【0115】
設定10では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転数のみ小さくし、逆転回転角度のみ大きくする。設定11では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転数のみ小さくし、逆転回転数のみ大きくする。設定12では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転数のみ小さくし、逆転回転角度および逆転回転数を大きくする。
【0116】
設定13では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角度および正転回転数を小さくし、逆転回転角度のみ大きくする。設定14では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角度および正転回転数を小さくし、逆転回転数のみ大きくする。設定15では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角度および正転回転数を小さくし、逆転回転角度および逆転回転数を大きくする。
【0117】
前述の説明では、制御部11は、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角度および正転回転数のうちの少なくとも1つのパラメータが小さくなるように、あるいは逆転回転角度および逆転回転数のうちの少なくとも1つのパラメータが大きくなるように変更すると説明した。
【0118】
しかし、制御部11は、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角度に対して逆転回転角度が大きくなるように、および/または正転回転数に対して逆転回転数が大きくなるように、正転回転角度および正転回転数、逆転回転角度および逆転回転数のうちの少なくとも1つのパラメータを変更してもよい。たとえば、制御部11は、
図10に示したステップS111(正転回転角度=0度、逆転回転角度=40度)、
図11に示したステップS206(正転回転数=90rpm、逆転回転数=120rpm)のようにパラメータを変更することで、切削工具5に加わる負荷を小さくすることができる。
【0119】
図13は、切削工具5に加わる負荷に応じて、変更するパラメータの関係を示した図である。
図13に示す設定Aでは、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角度に対して逆転回転角度が大きくなるように、正転回転角度および逆転回転角度のうちの少なくとも1つのパラメータを変更する。たとえば、制御部11は、正転回転角度が60度、逆転回転角度が30度で切削工具5の駆動を制御している場合、正転回転角度に対して逆転回転角度が大きくなれば、正転回転角度を20度に変更しても、逆転回転角度を70度に変更しても、正転回転角度を30度および逆転回転角度を70度に変更してもよい。
【0120】
設定Bでは、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転数に対して逆転回転数が大きくなるように、正転回転数および逆転回転数のうちの少なくとも1つのパラメータを変更する。たとえば、制御部11は、正転回転数が200rpm、逆転回転数が100rpmで切削工具5の駆動を制御している場合、正転回転数に対して逆転回転数が大きくなれば、正転回転数を100rpmに変更しても、逆転回転数を300rpmに変更しても、正転回転数を100rpmおよび逆転回転数を300rpmに変更してもよい。
【0121】
設定Cでは、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角度に対して逆転回転角度が大きくなるように、および正転回転数に対して逆転回転数が大きくなるように、正転回転角度および逆転回転角度、正転回転数および逆転回転数のうちの少なくとも1つのパラメータを変更する。たとえば、制御部11は、正転回転角度が60度、逆転回転角度が30度、正転回転数が200rpm、逆転回転数が100rpmで切削工具5の駆動を制御している場合、正転回転角度に対して逆転回転角度が大きくなり、および正転回転数に対して逆転回転数が大きくなれば、正転回転角度を20度および正転回転数を100rpmに変更しても、逆転回転角度を70度および逆転回転数を300rpmに変更しても、正転回転角度を30度および逆転回転角度を70度、正転回転数を100rpmおよび逆転回転数を300rpmに変更してもよい。
【0122】
以上のように、本発明の実施の形態3に係る根管治療器100は、負荷検出用抵抗13dで検出した切削工具5に加わる負荷に応じて、正転回転角度および正転回転数、逆転回転角度および逆転回転数のうち少なくとも1つのパラメータを変更する。そのため、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷を減少させて切削工具5をツイスト駆動することができ、加わる負荷による切削工具の破損を防止することができる。
【0123】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係る根管治療器では、根管長測定回路で得られる切削工具の先端の根管内での位置(以下、単に検出した位置、または切削工具の位置ともいう)に応じて、正転での回転角度および回転角速度、逆転での回転角度および回転角速度のうちの少なくとも1つのパラメータを変更する。
【0124】
図14は、本発明の実施の形態4に係る根管治療器100の切削工具5の駆動の一例を説明するためのフローチャートである。なお、実施の形態4に係る根管治療器は、
図1〜
図3に示した実施の形態1に係る根管治療器100と同じ構成を用いるため、同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。また、実施の形態4に係る根管治療器100では、切削工具5が基準位置(たとえば根尖の位置)に近づくにつれて、検出した位置から基準位置までの距離(|検出した位置−基準位置|)が距離A、距離B、距離C、距離D(距離A>距離B>距離C>距離D)の順に変化するものとする。
【0125】
まず、制御部11は、正転回転角度を160度、逆転回転角度を40度、および正転回転数を120rpm、逆転回転数を120rpm(初期値)に設定して、切削工具5の駆動を制御する(ステップS301)。
【0126】
次に、根管長測定回路12は、ステップS301での駆動を行なった後の切削工具5の位置を検出する(ステップS302)。比較回路110は、検出した位置から基準位置までの距離が距離Aより大きいか否かを判定する(ステップS303)。比較回路110が、根管長測定回路12で検出した位置から基準位置までの距離が距離Aより大きいと判定した場合(ステップS303:YES)、制御部11は、正転回転角度を160度、逆転回転角度を40度、および正転回転数を120rpm、逆転回転数を120rpm(初期値)に設定して、切削工具5の駆動を制御する(ステップS304)。つまり、制御部11は、検出した切削工具5の位置が位置Aに達していないため、初期値の設定を維持して切削工具5の駆動を制御する。
【0127】
一方、比較回路110は、根管長測定回路12で検出した位置から基準位置までの距離が距離A以下であると判定した場合(ステップS303:NO)、検出した位置から基準位置までの距離が距離Bより大きいか否かを判定する(ステップS305)。比較回路110が、根管長測定回路12で検出した位置から基準位置までの距離が距離Bより大きいと判定した場合(ステップS305:YES)、制御部11は、正転回転角度を120度、逆転回転角度を40度、および正転回転数を90rpm、逆転回転数を120rpmに設定して、切削工具5の駆動を制御する(ステップS306)。つまり、制御部11は、検出した切削工具5の位置が位置Aに達したので、切削工具5に加わる負荷を小さくするべく初期値に比べて正転回転角度および正転回転数を小さく設定して、切削工具5の駆動を制御する。
【0128】
一方、比較回路110は、根管長測定回路12で検出した位置から基準位置までの距離が距離B以下であると判定した場合(ステップS305:NO)、検出した位置から基準位置までの距離が距離Cより大きいか否かを判定する(ステップS307)。比較回路110が、根管長測定回路12で検出した位置から基準位置までの距離が距離Cより大きいと判定した場合(ステップS307:YES)、制御部11は、正転回転角度を80度、逆転回転角度を40度、および正転回転数を60rpm、逆転回転数を120rpmに設定して、切削工具5の駆動を制御する(ステップS308)。つまり、制御部11は、検出した切削工具5の位置が位置Bに達したので、切削工具5に加わる負荷を小さくするべく位置Aの設定値に比べて正転回転角度および正転回転数を小さく設定して、切削工具5の駆動を制御する。
【0129】
一方、比較回路110は、根管長測定回路12で検出した位置から基準位置までの距離が距離C以下であると判定した場合(ステップS307:NO)、検出した位置から基準位置までの距離が距離Dより大きいか否かを判定する(ステップS308)。比較回路110が、根管長測定回路12で検出した位置から基準位置までの距離が距離Dより大きいと判定した場合(ステップS309:YES)、制御部11は、正転回転角度を40度、逆転回転角度を40度、および正転回転数を30rpm、逆転回転数を120rpmに設定して、切削工具5の駆動を制御する(ステップS310)。つまり、制御部11は、検出した切削工具5の位置が位置Cに達したので、切削工具5に加わる負荷を小さくするべく位置Bの設定値に比べて正転回転角度および正転回転数を小さく設定して、切削工具5の駆動を制御する。
【0130】
一方、比較回路110が、根管長測定回路12で検出した位置から基準位置までの距離が距離D以下であると判定した場合(ステップS309:NO)、制御部11は、正転回転角度を0度、逆転回転角度を40度、および正転回転数を0rpm、逆転回転数を120rpmに設定して、切削工具5の駆動を制御する(ステップS310)。つまり、制御部11は、検出した切削工具5の位置が位置Dに達して基準位置に近づいたので、正転の方向への回転を停止して、逆転の方向にのみ回転するように切削工具5の駆動を制御する。
【0131】
制御部11は、ステップS304、ステップS306、ステップS308、ステップS310、およびステップS311で設定した正転回転角度および逆転回転角度、ならびに正転回転数および逆転回転数で切削工具5の駆動を制御した後、駆動を終了する操作が操作部15から入力されているか否かを判断する(ステップS312)。駆動を終了する操作が操作部15から入力されている場合(ステップS312:YES)、制御部11は駆動を終了する。駆動を終了する操作が操作部15から入力されていない場合(ステップS312:NO)、ステップS302の処理に戻り、根管長測定回路12が、ステップS301での駆動を行なった後の切削工具5の位置を検出する。
【0132】
ステップS301〜ステップS311において、根管治療器100は、切削工具5の位置が距離A、距離B、距離C、距離Dの順に基準位置に近づくにつれて、正転回転角度および正転回転数のパラメータを段階的に小さくして切削工具5の駆動する例を示した。しかし、これに限定されるものではなく、根管治療器100は、切削工具5の位置に応じて、正転回転角度および正転回転数のパラメータを連続して変更してもよい。たとえば、制御部11は、切削工具5の位置が距離Aから距離Dまでの変化に応じて、正転回転角度のパラメータを160度から0度まで、および正転回転数のパラメータを120rpmから0rpmまで連続して変更する。さらに、根管治療器100は、切削工具5の位置に応じて、逆転回転角度および逆転回転数のパラメータも変更してもよい。ここで、逆転回転角度のパラメータの変更に応じて、負荷検出用抵抗13dが切削工具5に加わる負荷を検出するタイミングである予め定められた逆転回転角度も変更する。また、正転回転角度、逆転回転角度それぞれの上限値は160度に限定されるものではなく、160度以上の回転角度とそれに応じた
位置の設定を行ってもよい。さらに、正転回転数、逆転回転数それぞれの上限値は120rpmに限定されるものではなく、120rpm以上の回転数とそれに応じた
位置の設定を行ってもよい。
【0133】
以上のように、実施の形態4に係る根管治療器100では、切削工具の位置に応じて、正転での回転角度および回転角速度、逆転での回転角度および回転角速度のうちの少なくとも1つのパラメータを変更するので、切削工具5に加わる負荷を適切な範囲に制御して切削工具5の破損や過剰な切削を防止することができる。
【0134】
なお、実施の形態4に係る根管治療器100は、実施の形態1〜3と組み合わせることができる。たとえば、実施の形態4に係る根管治療器100は、実施の形態1と組み合わせることで切削工具5を逆転の方向に40度回転させた後に、検出した負荷が基準負荷以上となるか否かにより、次の回転の方向を決めるとともに、切削工具の位置に応じて、次の回転の回転角度および回転角速度のパラメータを変更してもよい。また、実施の形態4に係る根管治療器100は、実施の形態3と組み合わせることで、切削工具5に加わる負荷に基づき回転角度等のパラメータを変更するとともに、切削工具の位置に応じて回転角度等のパラメータを変更してもよい。
【0135】
さらに、実施の形態1〜4に係る根管治療器100では、ハンドピース1が、ホース61を介して、制御ボックス9に連結されている構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、コードレスタイプの根管治療器として構成しても良い。
図15は、コードレスタイプの根管治療器の構成を示す概略図である。
図15に示すコードレスタイプの根管治療器は、ハンドピース1の把持部4にバッテリーパック、マイクロモータ及び制御ボックスに相当する制御系を組み込み、各種操作部を把持部4の表面に設けてある。さらに、コードレスタイプの根管治療器には、把持部4に表示部16が設けてある。そのため、使用者は、視線を大きく変えることなく、切削工具5を正転駆動で駆動しているのか、逆転駆動で駆動しているのか、現在の切削工具5の位置はどの程度か、切削工具5にかかっている負荷はどの程度か、回転数はいくらか、といった情報を確認することができる。図示していないが、口腔電極19a用のリード線19を把持部4より導出するよう構成してもよい。
【0136】
また、実施の形態1〜4に係る根管治療器100では、切削工具5を駆動する動力源にマイクロモータ7を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、エアタービンなどの別の駆動源であってもよい。
【0137】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。