特許第6193733号(P6193733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ IHI運搬機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6193733-クレーンのワイヤ振動抑制装置 図000002
  • 特許6193733-クレーンのワイヤ振動抑制装置 図000003
  • 特許6193733-クレーンのワイヤ振動抑制装置 図000004
  • 特許6193733-クレーンのワイヤ振動抑制装置 図000005
  • 特許6193733-クレーンのワイヤ振動抑制装置 図000006
  • 特許6193733-クレーンのワイヤ振動抑制装置 図000007
  • 特許6193733-クレーンのワイヤ振動抑制装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193733
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】クレーンのワイヤ振動抑制装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 15/00 20060101AFI20170828BHJP
   B66C 19/00 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   B66C15/00 B
   B66C19/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-232700(P2013-232700)
(22)【出願日】2013年11月11日
(65)【公開番号】特開2015-93743(P2015-93743A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 泰造
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−082506(JP,A)
【文献】 実開平07−035483(JP,U)
【文献】 特開2005−015108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 9/00−23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転休止時にブームを枢着点を中心に上方へ回動させて起立させるクレーンのワイヤ振動抑制装置であって、
前記起立したブームの側方に沿って延びる巻上ワイヤの長手方向中間部を押圧支持して該巻上ワイヤの固有振動数を変化させるガイドユニットを備え
前記ガイドユニットは、
前記ブームの起立位置近傍に立設される架構に対しブームが起伏する面と平行な面内における水平方向へ張り出すよう設置されるサポート部材と、
該サポート部材に対し前記水平方向へ位置調整自在に取り付けられるベースブラケットと、
該ベースブラケットの先端部に取り付けられ且つ前記ブームの起立時に巻上ワイヤを取り込むガイド受枠と、
該ガイド受枠の内面に取り付けられ且つ前記巻上ワイヤを押圧支持する弾性パッドと
を有することを特徴とするクレーンのワイヤ振動抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンのワイヤ振動抑制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は一般的なコンテナクレーンの一例を示すものであって、1はコンテナクレーンであり、該コンテナクレーン1は、港湾の岸壁2に敷設された走行レール3に沿って車輪4を介し走行可能となるよう、四本の脚部5を走行方向並びに該走行方向と直角方向へ離間配置し、該脚部5の上方に、該脚部5の走行方向と直角な水平方向へ延びるガーダ6と、該ガーダ6の先端部に枢着され且つ運転時はガーダ6の先端部から海側へ向け水平に張り出すように配設されるブーム7とを設け、前記ガーダ6とブーム7に沿ってトロリー8を、機械室9内の横行ドラム10による横行ワイヤ11の駆動により横行可能に配設すると共に、前記機械室9内の巻上ドラム12による巻上ワイヤ13の駆動により前記トロリー8からスプレッダ14を昇降自在に吊り下げ、該スプレッダ14によってコンテナ15を把持・解放することにより、該コンテナ15を搬送できるようになっている。
【0003】
前記ブーム7は、運転休止時は機械室9内の起伏ドラム16による起伏ワイヤ17の巻上げにより枢着点Oを中心に上方へ回動させて起立させるようになっている。
【0004】
海側に配設される前記脚部5の上端からは、前記ガーダ6の先端部上方へ向かって延びる架構18を立設し、該架構18の上端と前記ガーダ6の中間部所要位置とをバックステー19によって連結すると共に、前記架構18の上端と前記ブーム7の先端側所要位置とを、中途部で屈曲自在なテンションバー20によって連結し、運転時に水平方向へ張り出すブーム7の荷重を前記バックステー19で支えられる架構18により前記テンションバー20を介して支持するようになっている。
【0005】
尚、図7に示されるようなコンテナクレーン1と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−82506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記巻上ワイヤ13はブーム7に沿うように近接配置されており、運転休止時にブーム7を枢着点Oを中心に上方へ回動させて起立させた状態では、前記巻上ワイヤ13もブーム7に伴って上昇するが、この状態で強風が吹いた場合、該巻上ワイヤ13が強風に煽られて異常振動を起こし、ブーム7やその付帯物であるトロリー8横行用のレール押え駒(図示せず)等に接触することが繰り返され、巻上ワイヤ13が損傷したり、前記レール押え駒が摩耗したりするという不具合が生じていた。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、強風による巻上ワイヤの異常振動を抑えることができ、ブームやその付帯物に対する巻上ワイヤの接触を防止して、巻上ワイヤの損傷やブームの付帯物の摩耗を確実に防止し得るクレーンのワイヤ振動抑制装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、運転休止時にブームを枢着点を中心に上方へ回動させて起立させるクレーンのワイヤ振動抑制装置であって、
前記起立したブームの側方に沿って延びる巻上ワイヤの長手方向中間部を押圧支持して該巻上ワイヤの固有振動数を変化させるガイドユニットを備え
前記ガイドユニットは、
前記ブームの起立位置近傍に立設される架構に対しブームが起伏する面と平行な面内における水平方向へ張り出すよう設置されるサポート部材と、
該サポート部材に対し前記水平方向へ位置調整自在に取り付けられるベースブラケットと、
該ベースブラケットの先端部に取り付けられ且つ前記ブームの起立時に巻上ワイヤを取り込むガイド受枠と、
該ガイド受枠の内面に取り付けられ且つ前記巻上ワイヤを押圧支持する弾性パッドと
を有することを特徴とするクレーンのワイヤ振動抑制装置にかかるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクレーンのワイヤ振動抑制装置によれば、強風による巻上ワイヤの異常振動を抑えることができ、ブームやその付帯物に対する巻上ワイヤの接触を防止して、巻上ワイヤの損傷やブームの付帯物の摩耗を確実に防止し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のクレーンのワイヤ振動抑制装置の実施例を示す側面図である。
図2図1のII部拡大図である。
図3図2のIII−III矢視図である。
図4図2のIV−IV矢視図である。
図5図4のV部拡大図である。
図6図5のVI−VI矢視図である。
図7】コンテナクレーンの一例を示す全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1図6は本発明のクレーンのワイヤ振動抑制装置の実施例であって、図中、図7と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図7に示す従来のものと同様であるが、本実施例の特徴とするところは、図1図6に示す如く、起立したブーム7の側方に沿って延びる巻上ワイヤ13の長手方向中間部を押圧支持して該巻上ワイヤ13の固有振動数を変化させるガイドユニット21を備えた点にある。
【0015】
本実施例の場合、前記ガイドユニット21は、前記ブーム7の起立位置近傍に立設される架構18に対し、ブーム7が起伏する面と平行な面内における水平方向へ張り出すようサポート部材22を設置し、該サポート部材22に対し前記水平方向へ位置調整自在にベースブラケット23を取り付け、該ベースブラケット23の先端部に、前記ブーム7の起立時に巻上ワイヤ13を取り込むガイド受枠24を取り付け、該ガイド受枠24の内面に、前記巻上ワイヤ13を押圧支持する弾性パッド25を取り付けてなる構成を有している。
【0016】
前記サポート部材22に取り付けられるベースブラケット23には、図5に示す如く、長孔23aを穿設し、該長孔23aに対してボルト・ナット等の調整用締結部材23bを締め付けることにより、ブーム7起立時における巻上ワイヤ13の長手方向中間部位置を海側(図1図2図4図5及び図6では右側)へ所要寸法(例えば、約50mm)だけ押した状態となるよう、前記サポート部材22に対するベースブラケット23の取付位置を調整可能とし、該ベースブラケット23をその取付位置決定後には固定用締結部材23cにて固定するようにしてある。
【0017】
又、前記ブーム7起立時における巻上ワイヤ13は完全に鉛直とはならず、図1及び図2に示す如く、僅かに前傾しているため、この前傾角度に合わせて、前記ガイドユニット21のガイド受枠24は、図6に示す如く、ベースブラケット23に対し前傾させる形で取り付けるようにしてある。
【0018】
更に又、前記弾性パッド25は、図6に示す如く、巻上ワイヤ13の長手方向中間部を押圧支持するための接触面を円弧状に形成し、巻上ワイヤ13に対して局部的に過大な負荷が作用しないようにしてある。
【0019】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0020】
運転休止時にブーム7を枢着点Oを中心に上方へ回動させて起立させると、ブーム7に沿うように近接配置されている巻上ワイヤ13もブーム7に伴って上昇するが、該巻上ワイヤ13は、ガイドユニット21のガイド受枠24の内側へ取り込まれ、弾性パッド25によって押圧支持される。
【0021】
前記ブーム7を起立させた状態で強風が吹くと、該ブーム7を通過する際の風の流れの乱れにより巻上ワイヤ13が振られ、該巻上ワイヤ13の振れとその固有振動数が一致することで振幅が増大し、巻上ワイヤ13の異常振動が発生するが、本実施例の場合、起立したブーム7の側方に沿って延びる巻上ワイヤ13の長手方向中間部が前記ガイドユニット21の弾性パッド25により押圧支持されて該巻上ワイヤ13の固有振動数が変化している。
【0022】
このため、前記巻上ワイヤ13の振れとその固有振動数が一致することが避けられて振幅が増大せず、巻上ワイヤ13の異常振動が発生しなくなり、ブーム7やその付帯物であるトロリー8横行用のレール押え駒(図示せず)等に巻上ワイヤ13が接触することが避けられ、該巻上ワイヤ13が損傷したり、前記レール押え駒が摩耗したりしなくなる。
【0023】
又、前記ブーム7起立時における巻上ワイヤ13の前傾角度に合わせて、前記ガイドユニット21のガイド受枠24は、図6に示す如く、ベースブラケット23に対し前傾させる形で取り付けるようにし、更に、前記弾性パッド25は、巻上ワイヤ13の長手方向中間部を押圧支持するための接触面を円弧状に形成してあるため、巻上ワイヤ13に対して局部的に過大な負荷が作用せず、該巻上ワイヤ13の損傷を防ぐ上で有効となっている。
【0024】
こうして、強風による巻上ワイヤ13の異常振動を抑えることができ、ブーム7やその付帯物に対する巻上ワイヤ13の接触を防止して、巻上ワイヤ13の損傷やブーム7の付帯物の摩耗を確実に防止し得る。
【0025】
尚、本発明のクレーンのワイヤ振動抑制装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、ガイドユニットはブームの一側面側だけでなく、両側面側に設けても良いこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
1 コンテナクレーン(クレーン)
6 ガーダ
7 ブーム
13 巻上ワイヤ
18 架構
21 ガイドユニット
22 サポート部材
23 ベースブラケット
23a 長孔
23b 調整用締結部材
23c 固定用締結部材
24 ガイド受枠
25 弾性パッド
O 枢着点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7