特許第6193734号(P6193734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193734
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】粒子荷電排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/01 20060101AFI20170828BHJP
   F01N 3/025 20060101ALI20170828BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20170828BHJP
   B03C 3/02 20060101ALI20170828BHJP
   B03C 3/017 20060101ALI20170828BHJP
   B03C 3/01 20060101ALI20170828BHJP
   B03C 3/40 20060101ALI20170828BHJP
   B03C 3/49 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   F01N3/01
   F01N3/025 101
   F01N3/24 E
   B03C3/02 B
   B03C3/017 Z
   B03C3/01 Z
   B03C3/40 A
   B03C3/49
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-233607(P2013-233607)
(22)【出願日】2013年11月12日
(65)【公開番号】特開2015-94267(P2015-94267A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】水野 彰
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−320895(JP,A)
【文献】 特開2008−051037(JP,A)
【文献】 特開2006−144632(JP,A)
【文献】 特開2003−301711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/01 − 3/029
F01N 3/24
B03C 3/01 − 3/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気管途中にパティキュレートフィルタを配設してなる粒子荷電排気浄化装置であって、
前記パティキュレートフィルタの排ガス流通方向上流側に配設され、接地電極と交流電極との間に誘電体が介装され且つ排ガスの流通孔が穿設された沿面放電電極と、
該沿面放電電極より排ガス流通方向下流側における前記パティキュレートフィルタより排ガス流通方向上流側に配設され且つ排ガスの流通孔が穿設された直流電極と
を備え
前記沿面放電電極と直流電極との間に前段酸化触媒を配設し、
前記沿面放電電極は、前記交流電極が前段酸化触媒の上流側端面と対向するよう配設され、前記交流電極に交流電源から交流高電圧が印加され、
前記直流電極は、前記前段酸化触媒の下流側端面と対向するよう配設され、前記直流電極に直流電源から正極性の直流高電圧が印加されることを特徴とする粒子荷電排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子荷電排気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンの排気管の途中に後処理装置を装備して排気浄化を図ることが行われており、この種の後処理装置としては、ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレート(Particulate Matter:粒子状物質)を捕集するパティキュレートフィルタが知られている。
【0003】
前記パティキュレートフィルタは、コージェライト等のセラミックで製作された多孔質ハニカム構造のフィルタ本体を主構成とし、該フィルタ本体における格子状に区画された各流路の入口が栓体により交互に目封じされ、入口が目封じされていない流路については、その出口が栓体により目封じされるようになっており、各流路を区画する多孔質薄壁を透過した排ガスのみが下流側へ排出されて、前記多孔質薄壁の内側表面にパティキュレートが捕集されるようになっている。
【0004】
そして、前記排気管内でコロナ放電を発生させ、該コロナ放電によってパティキュレートを帯電させて、前記パティキュレートフィルタで捕集することにより、該パティキュレートフィルタの捕集率を向上させると共に、帯電させていないパティキュレートの捕集時に比べ圧力損失の増加を抑制することが提案されている。
【0005】
尚、前述の如くコロナ放電を利用した排気浄化装置と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【0006】
特許文献1に開示されている装置においては、針状の電極部の先端に負の高電圧を印加すると、該針状の電極部の先端近傍でコロナ放電が発生し弱電離のプラズマが形成される。プラズマ中では正イオンと電子が発生するが、発生した正イオンは針状の電極部の先端で電子と結合してすぐに中和される。残った電子は、特に電子付着性のよい酸素等に付着することでイオン化し、この酸素イオンによって、排ガス中のパティキュレートが負の電荷に帯電する。このようにして、正又は負の電荷に帯電したパティキュレートは、クーロン力によって極性の異なるパティキュレートに引き寄せられ、互いが結合することによって凝集する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−51037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている装置の場合、コロナ放電を行う電極部の形状は、針状であって先端が鋭く電界が集中する形状であるため、浮遊する粒子であるパティキュレートを広範囲に亘って均一に帯電させることが難しかった。
【0009】
又、前記パティキュレートを広範囲に亘って均一に帯電させるためには、前記針状の電極部を排気管内に多数配設する必要があり、構造が複雑化し、実用化は困難となっていた。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、構造を複雑化させることなくパティキュレートを広範囲に亘って均一に帯電させることができ、パティキュレートフィルタの捕集率を向上し得、且つ圧力損失の増加を抑制し得る粒子荷電排気浄化装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、エンジンの排気管途中にパティキュレートフィルタを配設してなる粒子荷電排気浄化装置であって、
前記パティキュレートフィルタの排ガス流通方向上流側に配設され、接地電極と交流電極との間に誘電体が介装され且つ排ガスの流通孔が穿設された沿面放電電極と、
該沿面放電電極より排ガス流通方向下流側における前記パティキュレートフィルタより排ガス流通方向上流側に配設され且つ排ガスの流通孔が穿設された直流電極と
を備え
前記沿面放電電極と直流電極との間に前段酸化触媒を配設し、
前記沿面放電電極は、前記交流電極が前段酸化触媒の上流側端面と対向するよう配設され、前記交流電極に交流電源から交流高電圧が印加され、
前記直流電極は、前記前段酸化触媒の下流側端面と対向するよう配設され、前記直流電極に直流電源から正極性の直流高電圧が印加されることを特徴とする粒子荷電排気浄化装置にかかるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粒子荷電排気浄化装置によれば、構造を複雑化させることなくパティキュレートを広範囲に亘って均一に帯電させることができ、パティキュレートフィルタの捕集率を向上し得、且つ圧力損失の増加を抑制し得るという優れた効果を奏し得る。
【0014】
又、前記粒子荷電排気浄化装置において、前記沿面放電電極と直流電極との間に前段酸化触媒が配設されるようにすることは、該前段酸化触媒の機能をアシストする上で非常に有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の粒子荷電排気浄化装置の実施例を示す全体概要構成図である。
図2】本発明の粒子荷電排気浄化装置の実施例における沿面放電電極と直流電極を示す要部拡大断面図であって、図1のII部拡大図である。
図3】粒子荷電を行った場合と行わない場合とで、時間に対するパティキュレートフィルタ差圧の変化を比較して示す線図である。
図4】粒子荷電を行った場合と行わない場合とで、パティキュレートフィルタ下流側における粒子径と粒子濃度との関係を比較して示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1及び図2は本発明の粒子荷電排気浄化装置の実施例であって、1はディーゼルエンジン、2はターボチャージャを示しており、該ターボチャージャ2を装備したディーゼルエンジン1においては、エアクリーナ3から導かれた吸気4が吸気管5を通し前記ターボチャージャ2のコンプレッサ2aへ送られ、該コンプレッサ2aで加圧された吸気4がインタークーラ6へ送られて冷却され、該インタークーラ6から更に吸気マニホールド7へ吸気4が導かれてディーゼルエンジン1の各気筒8(図1では直列6気筒の場合を例示している)に分配されるようになっている。又、前記ディーゼルエンジン1の各気筒8から排出された排ガス9は、排気マニホールド10を介しターボチャージャ2のタービン2bへ送られ、該タービン2bを駆動した後に排気管11へ送り出されるようになっている。
【0018】
前記排気管11の途中には、排ガス流通方向上流側から順次、ハニカム構造の前段酸化触媒12と、酸化触媒を一体的に担持したパティキュレートフィルタ13とが配設されていると共に、前記前段酸化触媒12の排気入側には、排ガス9に対して軽油等の燃料を添加供給するための燃料添加装置15が装備されている。
【0019】
前記燃料添加装置15は、軽油等の燃料が貯留される燃料タンク16と、該燃料タンク16に貯留された軽油等の燃料を圧送する燃料加圧ポンプ17と、該燃料加圧ポンプ17で圧送される軽油等の燃料を前記前段酸化触媒12の排気入側に噴霧する燃料添加ノズル18とを備え、前記燃料タンク16に貯留された軽油等の燃料を燃料加圧ポンプ17により燃料添加ノズル18へ圧送し、該燃料添加ノズル18から前記排気管11を流れる排ガス9に対して軽油等の燃料を噴霧し、前記前段酸化触媒12において酸化反応させ、その反応熱により昇温した排ガス9をパティキュレートフィルタ13へ導入して触媒床温度を上げ、これによりパティキュレートを燃やしてパティキュレートフィルタ13の再生を行うようになっている。
【0020】
本実施例の場合、前記パティキュレートフィルタ13の排ガス流通方向上流側に、図2に示す如く、接地電極19aと交流電極19bとの間に誘電体19cが介装され且つ排ガス9の流通孔19dが穿設された沿面放電電極19を配設し、該沿面放電電極19より排ガス流通方向下流側における前記パティキュレートフィルタ13より排ガス流通方向上流側に、排ガス9の流通孔20aが穿設された直流電極20を配設し、前記沿面放電電極19と直流電極20との間に前記前段酸化触媒12が配設されるようにしてある。
【0021】
前記接地電極19aはアース接続し、前記交流電極19bには交流電源21を接続して交流高電圧(3〜4kV)を印加し、前記直流電極20には直流電源22を接続して直流高電圧(5〜10kV)を印加するようにしてある。
【0022】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0023】
沿面放電電極19の交流電極19bに交流電源21から交流高電圧を印加すると、バリア放電(沿面放電)が行われて、接地電極19aとの間で正イオンと負イオンが混在したプラズマが発生し、この状態で直流電極20に直流電源22から正極性の直流高電圧を印加すると、それとは逆極性の負イオンが前段酸化触媒12におけるハニカム内を前記直流電極20に引き寄せられるように移動する。
【0024】
ここで、浮遊する粒子であるパティキュレートが強く帯電する条件は、
1.高い電界
2.高い電荷(イオン)密度
3.イオンと粒子の接触時間が長い
という三点が挙げられるが、本実施例では、これら全ての条件を満たしている。
【0025】
これにより、前記前段酸化触媒12を排ガス9が通過する際に、該排ガス9中に含まれるパティキュレートは帯電し、パティキュレートフィルタ13の内部へ導かれる。
【0026】
前記帯電したパティキュレートは、パティキュレートフィルタ13の内部における表層で凝集することで、捕集率の増加、堆積時のパティキュレートフィルタ13の圧力損失上昇抑制が可能となる。
【0027】
本実施例のように粒子荷電を行った場合、時間に対するパティキュレートフィルタ13の差圧の変化は、図3に示すように、粒子荷電を行わない場合と比較して低く抑えられる。この理由は、凝集せずに粒子径の小さいままのパティキュレートがパティキュレートフィルタ13に捕集されると、パティキュレート間の隙間が小さく、目詰まりが起こりやすいのに対し、凝集して粒子径の大きくなったパティキュレートがパティキュレートフィルタ13に捕集されると、該捕集されたパティキュレート間に隙間が生じ、それ自体がフィルタとして機能し、目詰まりが起こりにくくなるためである。
【0028】
又、本実施例のように粒子荷電を行った場合、パティキュレートフィルタ13の下流側における粒子径と粒子濃度との関係は、図4に示すように、粒子荷電を行わない場合と比較して、特に粒子径が大きいほど粒子濃度が低く抑えられる。この理由は、凝集して粒子径の大きくなったパティキュレートがパティキュレートフィルタ13に捕集されることから、パティキュレートフィルタ13の下流側では粒子径の大きいパティキュレートの濃度が低くなるためである。因みに、粒子濃度は、単位体積当たりの粒子の個数で表される。
【0029】
この結果、特許文献1に開示されている装置のように、コロナ放電を行う電極部の形状が針状であって電界が集中する形状であるものとは異なり、本実施例では、バリア放電(沿面放電)が沿面放電電極19から面で発生し、更に、前段酸化触媒12におけるハニカム内放電を用いることでガス流断面に電荷が一様に広がるため、浮遊する粒子であるパティキュレートを広範囲に亘って均一に帯電させることが可能となる。
【0030】
又、前記パティキュレートを広範囲に亘って均一に帯電させるために、特許文献1に示されるような針状の電極部を排気管11内に多数配設しなくて済むことから、構造が複雑化せず、実用化も可能となる。
【0031】
こうして、構造を複雑化させることなくパティキュレートを広範囲に亘って均一に帯電させることができ、パティキュレートフィルタ13の捕集率を向上し得、且つ圧力損失の増加を抑制し得る。
【0032】
しかも、低温で前段酸化触媒12の活性が低い時に、沿面放電電極19の交流電極19bに交流電源21から交流高電圧を印加し、バリア放電(沿面放電)を行って、接地電極19aとの間で正イオンと負イオンが混在したプラズマを発生させると、反応性の高いオゾンが生成されるため、該オゾンによりHCやNOの酸化を効率良く行うことが可能となり、前記沿面放電電極19と直流電極20との間に前記前段酸化触媒12が配設されるようにすることは、該前段酸化触媒12の機能をアシストする上で非常に有効となる。
【0033】
尚、本発明の粒子荷電排気浄化装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 ディーゼルエンジン(エンジン)
9 排ガス
11 排気管
12 前段酸化触媒
13 パティキュレートフィルタ
19 沿面放電電極
19a 接地電極
19b 交流電極
19c 誘電体
19d 流通孔
20 直流電極
20a 流通孔
図1
図2
図3
図4